JP2008302584A - 延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び延伸熱可塑性樹脂フィルム及び光学フィルム - Google Patents

延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び延伸熱可塑性樹脂フィルム及び光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂フィルムに、所望のレターデーションを発現させることのできる熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び熱可塑性樹脂フィルム及び光学シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂から作製された未延伸セルロースアシレートフィルムAを準備し、未延伸セルロースアシレートフィルムAを該フィルムの結晶化温度Tc−10℃以上Tc+70℃以下の温度範囲で設定された加熱炉内で幅方向を自由端とし、未延伸セルロースアシレートフィルムAの幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸セルロースアシレートフィルムBの幅、の関係式を満たすように所定の縦延伸倍率で縦方向に延伸し、延伸熱可塑性樹脂フィルムBを製造する。
【選択図】 図1

Description

本発明は延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、延伸熱可塑性樹脂フィルム及び光学フィルムに係り、特に、自由端一軸縦延伸に関する延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び延伸熱可塑性樹脂フィルム及び光学フィルムに関する。
熱可塑性樹脂フィルムの製造は大きく分けて、溶液製膜法と溶融製膜法とに分類される。溶液製膜法は熱可塑性樹脂を溶剤に溶解したドープをダイから支持体、例えば冷却ドラム上に流延してフィルム状にする方法である。一方、溶融製膜法は熱可塑性樹脂を押出機で溶融した後、ダイから支持体、例えば冷却ドラム上に押し出してフィルム状にする方法である。これらの方法により製膜された熱可塑性樹脂フィルムを、縦(長手)方向、横(幅)方向の二軸延伸することにより、面内レターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)が発現する。レターデーションのRe及びRthが発現した熱可塑性樹脂フィルムは液晶表示素子の位相差フィルムとして、視野角拡大を図るため使用される。(例えば特許文献1、及び特許文献2参照)。
特表平6−501040号公報 特開2001−42130号公報
ところで、液晶表示装置の液晶方式としては、VA方式(Vertical Alignment),OCB方式(Optical Compensated Bend),IPS(In-Plane Switching)等があり、それぞれの液晶方式に適したReやRthのレターデーションを有する位相差フィルムが要求されている。特に、Reが高く、Rthの小さい位相差フィルムが求められている。
具体的には、面内レターデーションReが100nm以上で且つ厚み方向のレターデーションRthとReとの関係が、Rth<Re/2を満足する延伸セルロースアシレートフィルムが要望されている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、面内レターデーションReが100nm以上で且つ厚み方向のレターデーションRthとReとの関係が、Rth<Re/2を満足する延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び延伸熱可塑性樹脂フィルム及び光学フィルムを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂から作製された未延伸熱可塑性樹脂フィルムを準備する工程と、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムを該フィルムの結晶化温度Tc−10℃以上Tc+70℃以下の温度範囲で設定された加熱炉内で幅方向を自由端とし、以下の関係式、未延伸熱可塑性樹脂フィルム幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸熱可塑性樹脂フィルム幅、を満たすように所定の縦延伸倍率で縦方向に延伸する工程とを含むことを特徴とするものである。
本発明においては、比較的高温下で、未延伸熱可塑性樹脂フィルムの幅方向を自由端、つまりウェブの移動方向と垂直方向の両端をテンター等で把持しないで未延伸熱可塑性樹脂フィルムを縦方向に延伸させている。未延伸熱可塑性樹脂フィルムの幅方向を自由端としながら、未延伸熱可塑性樹脂フィルム幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸熱可塑性樹脂フィルム幅、の関係を満たすよう縦方向に延伸することで、面内レターデーション(Re)を高め、厚み方向のレターデーション(Rth)を小さくできることを見出した。
未延伸熱可塑性樹脂フィルムの幅方向を自由端とすることで、テンター等で把持しながら縦方向の延伸をするのに比べて、幅方向の収縮をより大きくすることができた。
その結果、面内レターデーション(Re)を高め、厚み方向のレターデーション(Rth)を小さくできる、未延伸熱可塑性樹脂フィルム幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸熱可塑性樹脂フィルム幅、の関係を見出すことができた。尚、本発明は、溶液製膜法又は溶融製膜法のいずれで製造された熱可塑性樹脂フィルムにも適用できる。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、延伸工程は少なくとも一対のローラを1m以上100m以下で離間し、ローラの周速差で延伸するものであることが好ましい。
ローラ間の距離を1m以上100m以下としているので、ロール間の熱可塑性樹脂フィルムに均一に熱をかけることができる。その結果、熱可塑性樹脂フィルムの幅を所望の比率に収縮させることができる。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、縦延伸倍率は、1.0〜2.0の範囲であることが好ましい。縦方向の延伸倍率が1.0より大きく2.0以下の範囲であるときに、好適に延伸倍率の制御をすることができ、所望のレターデーション値を得ることができる。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、延伸工程は加熱炉内で1秒以上100秒以下の加熱時間をかけて延伸を行うことが好ましい。未延伸熱可塑性樹脂フィルムをあまりに短い時間で延伸すると、レターデーションの制御が難しくなる。そこで、加熱炉内で1秒以上100秒以下の加熱時間をかけて延伸することで、延伸熱可塑性樹脂フィルムに所望のレターデーションを発現させることができる。より好ましい延伸時間は15秒以上90秒以下、さらに好ましくは30秒以上60秒以下である。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、未延伸熱可塑性樹脂フィルムの厚みは60〜120μmであり、該未延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法にかかる応力は、0.4MPa以上8MPa以下であることが好ましい。未延伸熱可塑性樹脂フィルムの厚みが120μmより厚いと液晶表示装置としたときの全体の厚みが厚くなる。また、未延伸熱可塑性樹脂フィルムの厚みが60μmより薄いと取り扱いが困難となる。未延伸熱可塑性樹脂フィルムの応力を、0.4MPa以上8MPa以下の範囲とすることで、延伸倍率の制御が容易になり、延伸熱可塑性樹脂フィルムに所望のレターデーションを発現させることができる。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂は、セルロースアシレート樹脂であることが好ましい。光学フィルムに用いられることが多いセルロースアシレート樹脂である場合に本発明を好適に利用できる。特に、セルロースアシレート樹脂の場合、高温で熱処理することにより、結晶化が進み、側鎖が主鎖に対して横方向に並ぶため、Reが高く、Rthが小さいフィルムを得ることができる。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、延伸熱可塑性樹脂フィルムは、Reが100nm以上であり、Rthが−70nm以上70nm以下であることが好ましい。Re≧100nm、−70nm≦Rth≦70nmとすることで、液晶方式に対応した位相差フィルムを得ることができる。
本発明の延伸熱可塑性樹脂フィルムは、上述の製造方法により得られたことを特徴とするものである。上述の製造方法により得られた延伸熱可塑性樹脂フィルムは、光学フィルムに特に好適に使用される。
本発明の光学フィルムは、上述の製造方法により得られた延伸熱可塑性樹脂フィルムを用いたことを特徴とするものである。上述の製造方法により得られた延伸熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、好ましい光学特性の光学フィルム得ることができる。
本発明によれば、比較的高温下で、未延伸熱可塑性樹脂フィルムの幅方向を自由端とし、延伸前ウェブ幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸後ウェブ幅の関係を満たすよう縦方向に延伸することで、面内レターデーション(Re)を高め、厚み方向のレターデーション(Rth)を小さくできる。従って、本発明によって製造された延伸熱可塑性樹脂フィルムは光学特性が優れているので光学フィルムに好適に使用することができる。
以下添付図面に従って本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法及び熱可塑性樹脂フィルム及び光学フィルムの好ましい実施の形態を説明する。
本実施の形態では、溶液製膜法によって未延伸のセルロースアシレートフィルムを製造する例を示すが、本発明はこれに限定するものではなく、溶融製膜法により未延伸のセルロースアシレートフィルムを製造してもよい。さらにポリカーボネート樹脂フィルムや飽和ノルボルネン系樹脂フィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムの製造にも適用することができる。
[フィルムの製造方法及び製造装置]
図1は、セルロースアシレートフィルムの製造装置の概略構成の一例を示したものである。尚、延伸する前の未延伸のセルロースアシレートフィルムを溶液製膜法で製造する方法については後記する。
図1に示すように、製造装置10は、主として、未延伸のセルロースアシレートフィルムAを送り出す送出機12と、一対の延伸ローラ14、16と、一対の延伸ローラ14、16の間に配置された加熱炉18と、加熱炉18の後段に配置された冷却炉20と、製造された延伸セルロースアシレートフィルムBを巻き取る巻取機22とで、構成される。
一対の延伸ローラ14、16は、それぞれ14a,14b、16a,16bからなるニップローラ構造に形成され、加熱炉18の下流側に配置された延伸ローラ16は、上流側に配置された延伸ローラ14よりも回転周速が速くなるように構成される。そして、未延伸のセルロースアシレートフィルムAが、一対の延伸ローラ14、16の周速差でフィルムの長手方向に縦延伸倍率が1〜2倍になるように、且つ未延伸熱可塑性樹脂フィルム幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸熱可塑性樹脂フィルム幅の関係式を満たすように縦方向(ウエブの走行方向)に延伸される。
セルロースアシレートフィルムAは基本的には縦方向のみの延伸で、目標とするレターデーションが得られる。但し、フィルムのしわを伸ばす等の目的で必要に応じて横方向にも延伸される。
この場合、加熱炉18内での延伸時間は1秒以上100秒以下であることが好ましく、一対の延伸ローラ間の距離は1m以上100m以下であることが好ましい。これにより、従来の縦延伸のようにフィルムを一瞬(通常0.5秒程度)のうちに引っ張る瞬間的な縦延伸ではなく、長い延伸時間及び長い延伸距離をかけてフィルムAをゆっくりと引っ張りながら縦延伸させる長スパン延伸を行うことができる。
また、一対の延伸ローラ14、16間でセルロースアシレートフィルムAの長手方向にかかる応力は、0.4MPa以上8MPa以下の範囲に設定されることが好ましい。また、そのときの未延伸のセルロースアシレートフィルムAの厚みは60〜120μmであることが好ましい。
加熱炉18内には、搬送されるセルロースアシレートフィルムAの上下位置に、且つフィルム搬送方向(長手方向)に複数の加熱用ノズル24、24…が配置され、加熱用ノズル24から熱風がセルロースアシレートフィルムAに向けて吹き出される。そして、加熱炉18内は、セルロースアシレートフィルムAの結晶化温度をTcとしたときに、Tc−10℃〜Tc+70℃の範囲の延伸温度を満足するように、且つフィルム幅方向の温度差が10℃以内になるように加熱される。この場合、加熱炉18内でセルロースアシレートフィルムAを延伸温度に昇温させる昇温速度は10〜400℃/分にすることが好ましい。
上記のTcは熱可塑性樹脂の結晶化温度を意味し、より具体的には示差走査熱量計(DSC)を用い10℃/minで昇温しながら測定した結晶化による発熱ピークの温度とした。
更には、セルロースアシレートフィルムAの上下に配置された加熱用ノズル24から吹き出される熱風の圧力で、加熱炉18内を通過するセルロースアシレートフィルムAは、浮上搬送される。これにより、セルロースアシレートフィルムAを、その幅方向に自由端を形成した状態での自由端一軸延伸を行うことができる。この場合、セルロースアシレートフィルムAを浮上搬送する際の浮上量は30mm以内であることが好ましい。
図2に示すように、加熱用ノズル24は、フィルム幅方向に長いスリット形状のノズルとして形成される。加熱用ノズル24の熱風を吹き出す吹出口24Aの幅W(フィルム幅方向の長さ)はフィルム幅と同等か、それ以上に形成される。また、吹出口24Aのスリット幅Dは2〜10mmに形成されることが好ましい。更には、吹出口からセルロースアシレートフィルムAの面までの距離Hは20〜500mmの範囲であることが好ましい。そして、かかる加熱用ノズル24からセルロースアシレートフィルムAの面に向けて風速0.5〜20m/秒の風速で熱風を吹き付けることが好ましい。加熱用ノズル24から吹き出される熱風の温度は、フィルム品温をTc−10℃〜Tc+70℃の範囲に加熱できる温度である。
冷却炉20内には、加熱炉18内で縦延伸されて搬送される延伸セルロースアシレートフィルムBの上下位置に、且つフィルム搬送方向(長手方向)に複数の冷却用ノズル26、26…が配置され、冷却用ノズル26から冷風が延伸セルロースアシレートフィルムBに向けて吹き出される。冷却用ノズル26も上記図2で説明した加熱用ノズル24と同様の構造を採用できる。このように、加熱炉18の後段に冷却炉20を配置することで、自由端一軸延伸が終了した延伸セルロースアシレートフィルムBは浮上搬送された状態で速やかに延伸温度以下に冷却される。これにより、延伸が止まるので上記RthやReが変動しにくいと共に、浮上搬送するので、搬送ローラがある場合に比べてフィルム面に傷がつきにくい。
冷却炉20で略室温まで冷却された延伸セルロースアシレートフィルムBは巻取機22に巻き取られる。これにより、面内レターデーションReが100nm以上で且つ厚み方向のレターデーションRthとReとの関係が、Rth<Re/2を満足する延伸セルロースアシレートフィルムBを製造できる。従って、この延伸セルロースアシレートフィルムBを液晶表示装置の例えば位相差フィルムとして用いれば、それぞれの液晶方式に適したReやRthのレターデーションを有する位相差フィルムを望んでいる業界の要望に答えることができる。
延伸セルロースアシレートフィルムBは、Reが100nm以上、より好ましくは150nm以上300nm以下、さらに好ましくは180nm以上250nm以下、Rthが−70nm以上70nm以下、より好ましくは−50nm以上50nm以下、さらに好ましくは−20nm以上20nm以下である。
次に、上記した加熱炉18内での縦延伸を行う前の未延伸のセルロースアシレートフィルムAを、溶液製膜方法で製造する際の原料であるセルロースアシレートの好ましい条件、及び溶液製膜法の工程の好ましい態様を以下に説明する。
[セルロースアシレート(原料)]
セルロースアシレートフィルムAは、主成分としてのポリマーがセルロースアシレートである。ここで、「主成分としてのポリマー」とは、単一のポリマーからなる場合には、そのポリマーのことを示し、複数のポリマーからなる場合には、構成するポリマーのうち、最も質量分率の高いポリマーのことを示す。
セルロースアシレートフィルムを製造する際に用いるセルロースアシレートとしては、粉末や粒子状のものを使用することができ、また、ペレット化したものも用いることができる。また、セルロースアシレートの含水率は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。また、含水率は場合により0.2質量%以下であることが好ましい。セルロースアシレートの含水率が好ましい範囲内にない場合には、加熱などにより乾燥してから使用することが好ましい。
これらのポリマーは単独で用いてもよいし、2種類以上のポリマーを併用してもよい。
セルロースアシレートとしては、セルロースアシレート化合物、及びセルロースを原料として生物的或いは化学的に官能基を導入して得られるアシル置換セルロース骨格を有する化合物が挙げられる。
セルロースアシレートは、セルロースとカルボン酸とのエステルである。エステルを構成するカルボン酸としては、炭素原子数が2〜22の脂肪酸がさらに好ましく、炭素原子数が2〜4の低級脂肪酸が最も好ましい。
セルロースアシレートは、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位及び6位に存在するヒドロキシル基の水素原子の全部または一部が、アシル基で置換されている。アシル基の例としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、へプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、および、シンナモイル基が挙げられる。前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が最も好ましい。
セルロースアシレートは、複数のアシル基で置換されていてもよく、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートプロピオネート、セルロースブチレートプロピオネート等が挙げられる。
セルロースアシレートフィルムを構成するセルロースアシレートとしては、酢酸とのエステルを有するセルロースアセテートが特に好ましく、溶媒への溶解性の観点から、アセチル置換度が2.70〜2.87のセルロースアセテートがより好ましく、2.80〜2.86のセルロースアセテートが最も好ましい。ここでいう置換度とは、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位および6位に存在するヒドロキシル基の水素原子が置換されている程度を表すもので、2位、3位および6位に存在するヒドロキシル基の水素原子が置換されている場合の置換度は3である。
セルロースアシレートの合成方法について、基本的な原理は、右田仲彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。セルロースアシレートの代表的な合成方法としては、カルボン酸無水物−カルボン酸一硫酸触媒による液相アシル化法が挙げられる。具体的には、まず、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸などのカルボン酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。アシル化混液は、一般に溶媒としてのカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物および触媒としての硫酸を含む。また、カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。
次いで、アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰カルボン酸無水物の加水分解を行うために、水または含水酢酸を添加する。さらに、エステル化触媒を一部中和するために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)を含む水溶液を添加してもよい。さらに、得られた完全セルロースアシレートを少量のアシル化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、20〜90℃に保つことにより鹸化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を中和剤などを用いて完全に中和するか、或いは、触媒を中和することなく水若しくは希酢酸中にセルロースアシレート溶液を投入(或いは、セルロースアシレート溶液中に、水または希酢酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理により目的物であるセルロースアシレートを得ることができる。
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で150〜500が好ましく、200〜400がより好ましく、220〜350がさらに好ましい。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)の記載に従って測定することができる。粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
また、低分子成分が少ないセルロースアシレートは、平均分子量(重合度)が高いが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低い値になる。このような低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより行うことができる。また、低分子成分の少ないセルロースアシレートを合成により得ることもできる。低分子成分の少ないセルロースアシレートを合成する場合、アシル化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースエステルの原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁にも記載がある。
《溶液製膜方法の工程》
セルロースアシレートフィルムAは、セルロースアシレートや各種添加剤を含有する溶液から溶液製膜方法によって作製することができる。
[セルロースアシレート溶液]
(溶媒)
セルロースアシレートフィルムAを溶液製膜方法で作製する場合、セルロースアシレート溶液を調製する。このとき用いられるセルロースアシレート溶液用の主溶媒としては、該セルロースアシレートの良溶媒である有機溶媒を好ましく用いることができる。このような有機溶媒としては、沸点が80℃以下の有機溶媒が乾燥負荷低減の観点からより好ましい。有機溶媒の沸点は、10〜80℃であることがさらに好ましく、20〜60℃であることが特に好ましい。また、場合により沸点が30〜45℃である有機溶媒も主溶媒として好適に用いることができる。
このような主溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アルコール及び炭化水素などが挙げられ、これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。また、主溶媒は、エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。更に、エステル、ケトン、エーテル及びアルコールの炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。尚、主溶媒とは、単一の溶媒からなる場合には、その溶媒のことを示し、複数の溶媒からなる場合には、構成する溶媒のうち、最も質量分率の高い溶媒のことを示す。
ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素がより好ましく、例えば、ジクロロメタンおよびクロロホルムなどが挙げられ、ジクロロメタンがさらに好ましい。
エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチルーtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。
炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記2種類以上の官能基を有する有機溶媒としては、例えば、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルアセトアセテートなどが挙げられる。
セルロースアシレートフィルムAでは、全溶媒中に好ましくは5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%のアルコールを含有することがバンドからの剥離荷重低減の観点から望ましい。
セルロースアシレートフィルムAの作製に用いられるセルロースアシレート溶液の溶媒として好ましく用いられる有機溶媒の組み合せの例を以下に挙げるが、本発明で採用することができる組み合わせはこれらに限定されるものではない。尚、比率の数値は、質量部を意味する。
(1)ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/10/5/5
(2)ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/5/5/10
(3)ジクロロメタン/イソブチルアルコール=90/10
(4)ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/5/5/10
(5)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/8/10/2
(6)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5
(7)ジクロロメタン/ブタノール=90/10
(8)ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/ブタノール=68/10/10/7/5
(9)ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/ペンタノール=80/2/15/3
(10)ジクロロメタン/メチルアセテート/エタノール/ブタノール=70/12/15/3
(11)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/5/5/10
(12)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/ペンタノール=50/20/15/5/10
(13)ジクロロメタン/1,3−ジオキソラン/メタノール/ブタノール=70/15/5/10
(14)ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/ブタノール=75/5/10/5/5
(15)ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブチルアルコール/シクロヘキサン=60/18/3/10/7/2
(16)ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/イソブチルアルコール=70/10/10/10
(17)ジクロロメタン/アセトン/エチルアセテート/ブタノール/ヘキサン=69/10/10/10/1
(18)ジクロロメタン/メチルアセテート/メタノール/イソブチルアルコール=65/15/10/10
(19)ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=85/7/3/5
(20)ジクロロメタン/メタノール/ブタノール=83/15/2
(21)ジクロロメタン=100
(22)アセトン/エタノール/ブタノール=80/15/5
(23)メチルアセテート/アセトン/メタノール/ブタノール=75/10/10/5
(24)1,3−ジオキソラン=100
また、非ハロゲン系有機溶媒を主溶媒とした場合の詳細については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載があり、適宜、本発明において適用することができる。
(溶液濃度)
調製するセルロースアシレート溶液中のセルロースアシレート濃度は、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましく、15〜30質量%が最も好ましい。
セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
(添加剤)
セルロースアシレート溶液は、各調製工程において用途に応じた各種の液体または固体の添加剤を含むことができる。添加剤の例としては、可塑剤(好ましい添加量はセルロースアシレートに対して0.01〜10質量%、以下同様)、紫外線吸収剤(0,001〜1質量%)、平均粒子サイズが5〜3000nmである微粒子粉体(0.001〜1質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)が含まれる。
可塑剤や光学異方性制御剤は、分子量3000以下の有機化合物であり、好ましくは疎水部と親水部とを併せ持つ化合物である。これらの化合物は、セルロースアシレート鎖間で配向することにより、レターデーション値を変化させる。更に、これらの化合物は、フィルムの疎水性を向上させ、レターデーションの湿度変化を低減させることができる。また、紫外線吸収剤や赤外線吸収剤を併用することで、効果的にレターデーションの波長依存性を制御することもできる。添加剤は、いずれも乾燥過程での揮散が実質的にないものが好ましい。
レターデーションの湿度変化低減を図る観点からは、これらの添加剤の添加量は多いほうが好ましいが、添加量の増大に伴い、セルロースアシレートフィルムAのガラス転移温度(Tg)低下や、フィルムの製造工程における添加剤の揮散問題を引き起こしやすくなる。従って、本発明においてより好ましく用いられるセルロースアセテートを用いる場合、分子量3000以下の添加剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.01〜30質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
セルロースアシレートフィルムAに好適に用いることのできる可塑剤については、特開2001−151901号公報に記載がある。また、赤外吸収剤については、特開平2001−194522号公報に記載がある。添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。また、添加剤については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)16貢〜22頁にも記載がある。
(セルロースアシレート溶液の調製)
セルロースアシレート溶液の調製は、例えば、特開2005−104148号公報の106〜120貢に記載されている調製方法に準じて行うことができる。具体的には、セルロースアシレートと溶媒とを混合攪拌し膨潤させ、場合により冷却や加熱等を実施して溶解させた後、これをろ過してセルロースアシレート溶液を得ることができる。
[流延工程、乾燥工程]
セルロースアシレートフィルムAは、従来の溶液製膜方法に従い、従来の溶液流延製膜装置を用いて製造できる。具体的には、溶解機(釜)で調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を、ろ過後、貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製することができる。ドープは30℃に保温し、ドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプにより、図3に示す送出配管27を通ってダイ28に送られる。そして、ドープをダイ28の口金28A(スリット)からエンドレスに走行している流延部30の金属支持体32(流延バンド)の上に均一に流延する(流延工程)。金属支持体32は、無端状に形成され、離間した一対のローラ34、34に懸け渡される。金属支持体32に流延されたドープは、金属支持体32がほぼ一周した剥離点で、剥離ローラ36により生乾きのドープ膜W(ウェブとも呼ぶ)として金属支持体32から剥離される。続いて乾燥部38、40へ搬送して乾燥する(乾燥工程)。乾燥部38、40としては、例えば図3に示すように、ドープ膜Wの幅方向両端を把持しながら乾燥するテンター型乾燥装置42、複数のロール44Aで搬送しながら乾燥するロール乾燥装置44を好ましく使用できる。
上記の流延工程、乾燥工程の詳細については、特開2005−104148号公報の120〜146頁にも記載があり、適宜本発明にも適用することができる。
乾燥の終了したフィルム中の残留溶剤量は0〜2質量%が好ましく、より好ましくは0〜1質量%である。乾燥終了後、フィルムを巻取機46で一旦巻き取ってから、図1で示した加熱炉18内での縦延伸工程を実施してもよいし、一旦巻き取らずに図3から図1の加熱炉18内での縦延伸工程を連続的に実施してもよい。
縦延伸前のセルロースアシレートフィルムAの好ましい幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3mである。また、一旦フィルムを巻き取る場合には、好ましい巻長は300〜30000mであり、より好ましくは500〜10000mであり、さらに好ましくは1000〜7000mである。
[加熱炉内での縦延伸]
図1で説明した如く、上記作成された未延伸のセルロースアシレートフィルムAを一対の延伸ローラ14、16の周速差で引っ張ることにより長手方向に縦延伸するときに、一対の延伸ローラ14、16間に設けた加熱炉18内において、セルロースアシレートフィルムAを、該フィルムAの結晶化温度Tc−10℃〜Tc+70℃の範囲の延伸温度で且つフィルム幅方向の温度差が10℃以内になるように加熱しながら、未延伸熱可塑性樹脂フィルム幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸熱可塑性樹脂フィルム幅の関係式を満たすよう縦延伸倍率が1〜2倍になるように自由端一軸延伸する。尚、更なる好ましい条件等は、既に説明し重複するので、ここでの説明は省略する。
[冷却炉内での冷却]
加熱炉18内で自由端一軸延伸された延伸セルロースアシレートフィルムは、冷却炉20を通過して室温程度まで強制的に冷却され、巻取機22に巻き取られる。これにより、面内レターデーションReが100nm以上で且つ厚み方向のレターデーションRthとReとの関係が、Rth<Re/2を満足する延伸セルロースアシレートフィルムBを製造できる。
[透湿度]
かかる延伸セルロースアシレートフィルムBは、40℃・相対湿度90%における透湿度が100〜400g/(m2・day)であり、60℃・相対湿度95%で1000時間保持した後の透湿度変化が−100g/(m2・day)〜10g/(m2・day)であることが好ましい。
ここで、「透湿度」とは、塩化カルシウムを入れたカップをフィルムで蓋をし、全体を密閉器内に入れて40℃・相対湿度90%の条件で24時間保持したときの保持前後の質量変化(g/(m2・day))である。透湿度は、温度の上昇に伴い上昇し、また、湿度の上昇に伴い上昇するが、いずれの温度や湿度を採用した場合であっても、フィルム間における透湿度の大小関係は不変である。そのため、本発明においては40℃・相対湿度90%における前記質量変化の値を基準として用いた。
延伸セルロースアシレートフィルムBの透湿度は、100〜400g/(m2・day)が好ましく、120〜350g/(m2・day)がより好ましく、150〜300g/(m2・day)がさらに好ましい。
また、フィルムBを60℃・相対湿度95%で1000時間保持したときの保持前後の透湿度を前述の方法に従って測定し、保持後の透湿度から保持前の透湿度を引いた値を「60℃・相対湿度95%で1000時間保持した後の透湿度変化」とした。
延伸セルロースアシレートフィルムBの60℃・相対湿度95%で保持した後の透湿度変化は−100g/(m2・day)〜10g/(m2・day)であり、−50〜5g/(m2・day)が好ましく、−20〜0g/(m2・day)がより好ましい。
更に、透湿度は、膜厚の上昇に伴い低下し、膜厚の低下に伴い上昇するため、まず実測した透湿度に実測した膜厚を乗じ、それを80で割った値を本発明では「膜厚80μm換算の透湿度」とした。
延伸セルロースアシレートフィルムBの膜厚80μm換算の透湿度は、100〜420g/(m2・day)が好ましく、150〜400g/(m2・day)がより好ましく、180〜350g/(m2・day)がさらに好ましい。
このような透湿度に関する条件を満たす延伸セルロースアシレートフィルムBを使用すれば、湿度もしくは湿熱に対する耐久性に優れた偏光板や、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
[表面処理]
延伸セルロースアシレートフィルムBには、適宜、表面処理を行うことにより、各機能層(例えば、下塗層、バック層、光学異方性層)との接着を改善することが可能となる。表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、鹸化処理(酸鹸化処理、アルカリ鹸化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリ鹸化処理が好ましい。ここでいう「グロー放電処理」とは、プラズマ励起性気体存在下でフィルム表面にプラズマ処理を施す処理である。これらの表面処理方法の詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載があり、適宜、使用することができる。
フィルム表面と機能層との接着性を改善するため、表面処理に加えて、或いは表面処理に代えて、延伸セルロースアシレートフィルムB上に下塗層(接着層)を設けることもできる。下塗層については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32貢に記載があり、これらを適宜、使用することができる。また、延伸セルロースアシレートフィルムB上に設けられる機能性層については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に記載があり、これに記載のものを適宜、使用することができる。
《光学補償フィルム》
このように製造された本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、光学補償フィルムとして用いることもできる。尚、「光学補償フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差フィルム、位相差板、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、光学補償フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、そのまま光学補償フィルムとして用いることもできる。また、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBを複数枚積層したり、延伸セルロースアシレートフィルムBと本発明以外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して光学補償フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
また、場合により、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBを光学補償フィルムの支持体として用い、その上に液晶等からなる光学異方性層を設けて光学補償フィルムとして使用することもできる。光学補償フィルムに適用される光学異方性層は、例えば、液晶性化合物を含有する組成物から形成してもよいし、複屈折を持つセルロースアシレートフィルムから形成してもよい。
液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物が好ましい。
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明において液晶性化合物として使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(例えば、C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。また、ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子については、特開2001−4387号公報に開示されている。
[棒状液晶性化合物]
液晶性化合物として使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロへキシルベンゾニトリル類が含まれる。また、前記棒状液晶性化合物としては、以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例は、例えば、Makromol.Chem.,190巻、2255貢(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4,683,327号明細書、同5,622,648号明細書、同5,770,107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同95/24455号パンフレット、同97/00600号パンフレット、同98/23580号パンフレット、同98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報等に記載の化合物が含まれる。
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
光学異方性層は、ポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成することができる。光学異方性を発現し得るポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、および、セルロースエステル(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、ポリマーとしては、これらポリマーの共重合体若しくはポリマー混合物を用いてもよい。
《偏光板》
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムB、及びそれを用いた光学補償フィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いることができる。偏光板は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(セルロースアシレートフィルム)からなり、延伸セルロースアシレートフィルムBまたは光学補償フィルムは少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、接着剤を用いて偏光膜とロールツーロールで貼合することができる。
延伸セルロースアシレートフィルムBを偏光板保護フィルムとして用いる場合、フィルムには表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、または、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましく、特に、表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
また、偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面に延伸セルロースアシレートフィルムBの表面処理面を直接貼り合わせることができる。
本発明においては、このように延伸セルロースアシレートフィルムBが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。接着剤としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。延伸セルロースアシレートフィルムBは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれにも好適に用いることができる。中でも、延伸セルロースアシレートフィルムBを液晶表示装置における偏光膜と液晶層(液晶セル)との間に配置されない外側の保護フィルムとして用いることが特に好ましく、この場合、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができる。
《液晶表示装置》
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムB、それを用いた光学補償フィルム及び偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。延伸セルロースアシレートフィルムB、及びそれを用いた光学補償フィルムは透湿度が低く、この透湿度は湿熱下にさらされても上昇しないため、これを用いた偏光板では、長期に渡って偏光度の低下を抑制することができる。したがって、信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。
(TN型液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いることができる。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号および特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
(STN型液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
(VA型液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償フィルムや光学補償フィルムの支持体として用いることができる。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償フィルムや光学補償フィルムの支持体、または偏光板の保護フィルムとして特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置或いはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
(反射型液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
(その他の液晶表示装置)
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スぺ−サーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置とについては、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest l089(1998))に記載がある。
《ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム》
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムBは、場合により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいても好ましく用いることができる。
本発明の実施例では、溶液製膜法によりセルローストリアセテート(TAC)及びセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のフィルムを製膜し、このフィルムについて自由端一軸延伸条件で縦延伸することにより延伸セルローストリアセテートフィルムを製造した。
図4の表は、本発明の実施例(1〜8)と比較例(1〜3)についての延伸条件、フィルム加熱条件、フィルムの未延伸幅と延伸後幅の関係、及び製造された延伸セルローストリアセテートフィルムの評価(Re,Rth)をまとめて一覧表としたものである。
図4において、「ロール間距離」とは一対の延伸ローラの距離を意味し、「Tc」とはTAC及びCAPの結晶化温度である。
実施例1〜8は、図4の表の延伸条件、フィルム加熱条件、フィルムの未延伸幅と延伸後幅の関係の全てを満足する場合である。
比較例1は本発明の必須条件である加熱温度(下限の185℃よりも低い)と、好ましい条件である延伸応力(上限の8MPaより高い)を満足しない場合である。
比較例2は本発明の必須条件である加熱温度(上限の265℃よりも高い)と、好ましい条件である延伸応力(下限の0.4MPaより低い)を満足しない場合である。
比較例3は本発明の必須条件であるフィルムの未延伸幅と延伸後幅の関係を満足しない場合である。
その結果、実施例1〜8は、Reが本発明の目標としている100nm以上となった。更に、実施例1〜8は、図4のReとRthの関係から計算すると、すべて本発明の目標としているRth<Re/2を満足した。
これに対して、比較例1はReが93nmであり本発明の目標である100nm以上にならなかった。また、比較例2はフィルムを延伸する際に破断してしまった。また、比較例3はReが100nm以上を満足するものの、Rth<Re/2を満足しなかった。
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムの製造方法の装置を説明する構成図 加熱炉内に設けられた加熱用ノズルを説明する説明図 延伸する前の未延伸セルロースアシレートフィルムを作製する溶液製膜方法の説明図 実施例の条件及びフィルム評価をまとめた表図
符号の説明
10…延伸セルロースアシレートフィルムの製造装置、12…送出機、14…低速側の延伸ローラ、16…高速側の延伸ローラ、18…加熱炉、20…冷却炉、22…巻取機、24…加熱用ノズル、26…冷却用ノズル、28…ダイ、30…流延部、32…金属支持体、34…金属支持体用のローラ、36…剥離ローラ、38、40…乾燥部、42…テンター型乾燥装置、44…ローラ型乾燥装置、46…巻取機、A…縦延伸前及び縦延伸中のセルロースアシレートフィルム、B…縦延伸後の延伸セルロースアシレートフィルム

Claims (9)

  1. 延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、
    熱可塑性樹脂から作製された未延伸熱可塑性樹脂フィルムを準備する工程と、
    前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムを該フィルムの結晶化温度Tc−10℃以上Tc+70℃以下の温度範囲で設定された加熱炉内で幅方向を自由端とし、以下の関係式を満たすように所定の縦延伸倍率で縦方向に延伸する工程と、を含む延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
    未延伸熱可塑性樹脂フィルム幅/(縦延伸倍率)1/2>延伸熱可塑性樹脂フィルム幅
  2. 前記延伸工程は、少なくとも一対のローラを1m以上100m以下で離間し、該ローラの周速差で延伸するものである請求項1に記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記縦延伸倍率は、1.0〜2.0の範囲である請求項1又は2記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記延伸工程は、前記加熱炉内で1秒以上100秒以下の加熱時間をかけて延伸を行うものである請求項1〜3の何れか1に記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムは、その厚みが60〜120μmであり、該未延伸熱可塑性樹脂フィルムの長手方向にかかる応力が、0.4MPa以上8MPa以下の範囲である請求項1〜4の何れか1に記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
  6. 前記熱可塑性樹脂は、セルロースアシレート樹脂である請求項1〜5の何れか1に記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  7. 前記延伸熱可塑性樹脂フィルムは、Reが100nm以上であり、Rthが−70nm以上70nm以下である請求項1〜6の何れか1に記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜6の何れか1に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする延伸熱可塑性樹脂フィルム。
  9. 請求項8記載の延伸熱可塑性樹脂フィルムを用いたことを特徴とする光学フィルム。
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