JP2008293959A - 触媒層、膜電極接合体、該膜電極接合体を有する燃料電池および膜電極接合体の製造方法 - Google Patents

触媒層、膜電極接合体、該膜電極接合体を有する燃料電池および膜電極接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】発電効率を向上させることができる触媒層、膜電極接合体、膜電極接合体を用いた燃料電池および膜電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを少なくとも有する触媒層であって、前記第一の触媒材料がチオール基を有するポリ酸からなり、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料がチオール結合によって結合している触媒層、該触媒層を有する膜電極接合体、該膜電極接合体を有する燃料電池、触媒層の製造方法、膜電極接合体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、触媒層、膜電極接合体、燃料電池、触媒層の製造方法および膜電極接合体の製造方法に関する。
固体高分子型燃料電池の触媒層を構成する材料としては、一般的に、水素酸化反応及び酸素還元反応を促進する触媒として活性化過電圧が低い白金微粒子が用いられることが多い。一方で、白金はコストがかかるため、その使用量を削減し、且つ性能を向上するために、助触媒を用いる技術およびその方法が公開されている。そのような、助触媒を有効に使用した例として、ポリ酸を触媒層内に導入した例がある(特許文献1)。
特開2002−134122号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法で、固体高分子型燃料電池が有する触媒層を形成する場合、触媒層中のポリ酸と、触媒層を構成するその他の材料(具体的には白金担持カーボン)が結合していなかった。そのため、発生した水によって、ポリ酸が容易に溶出する等の問題があった。また、特許文献1に記載の方法では、電解質溶液、白金担持カーボンおよびポリ酸を混合し、そのペーストを塗布して触媒層を形成するため、ポリ酸が助触媒としての機能を果たす触媒近傍だけではなく、触媒層全体に不規則に存在し、ポリ酸の利用効率が問題視されていた。そのため、従来の固体高分子型燃料電池の優位点を保持し、且つポリ酸の優位点も保持した燃料電池用膜電極接合体の開発が強く求められていた。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、触媒層を構成する第一の触媒材料であるポリ酸を、触媒層を構成する別の材料である第二の触媒材料に結合させることで、ポリ酸が所望の位置で固定化でき、発電効率を向上させることができる触媒層、膜電極接合体、その製造方法およびそれを用いた燃料電池を提供するものである。
本発明は、第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを少なくとも有する触媒層であって、前記第一の触媒材料がチオール基を有するポリ酸からなり、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料が前記チオール結合によって結合していることを特徴とする触媒層である。
また、別の本発明は、触媒層と、固体高分子電解質膜と、を少なくとも有する膜電極接合体であって、前記触媒層が、第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを少なくとも有し、前記第一の触媒材料がチオール基を有するポリ酸からなり、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料がチオール結合によって結合していることを特徴とする膜電極接合体である。
前記第二の触媒材料が、白金からなることが好ましい。
前記ポリ酸がオルガノシリル基を有することが好ましい。
また、本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を有する燃料電池である。
また、別の本発明は、チオール基を有するポリ酸からなる第一の触媒材料と前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを混合して混合物を作製し、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とをチオール結合によって結合させる工程を有することを特徴とする触媒層の製造方法である。
また、別の本発明は、固体高分子電解質膜と、第一の触媒材料と第二の触媒材料を含有する触媒層と、を少なくとも有する膜電極接合体の製造方法であって、チオール基を有するポリ酸からなる第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを混合して混合物を作製し、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とをチオール結合によって結合させる工程と、前記混合物を固体高分子電解質膜表面に設置する工程と、を有することを特徴とする膜電極接合体の製造方法である。
前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料との混合物は固体高分子電解質を含むことが好ましい。
本発明によれば、発電効率を向上させることができる触媒層、膜電極接合体、膜電極接合体を用いた燃料電池および膜電極接合体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを少なくとも有する触媒層であって、前記第一の触媒材料がチオール基を有するポリ酸からなり、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料が前記チオール結合によって結合していることを特徴とする触媒層である。
以下、図面を用いて本発明について説明する。
図1は、本発明の触媒層、膜電極接合体、および燃料電池の構成の一例を示す模式図である。図1(a)および(b)は、第一の触媒材料12と、第二の触媒材料14とからなる触媒層16と、2つの触媒層16と固体高分子電解質膜13とで構成される膜電極接合体11とを示している。
ここで、第一の触媒材料はチオール基を有するポリ酸であり、第二の触媒材料は第一の触媒材料とは異なる材料からなる。また、第一の触媒材料と第二の触媒材料とは第一の触媒材料が有するチオール基の硫黄原子を介して結合している。このような構成とすることで、第一の触媒材料であるポリ酸を第二の触媒材料に強固に固定することが可能となる。
なお、触媒層は、第一の触媒材料12と、第二の触媒材料14のみで構成されている必要はなく、他の材料を含んでいても良い。例えば、図1(b)のように第二の触媒材料を担持する担体15を含んでいても良い。
以下、触媒層、膜電極接合体および膜電極接合体の一部である固体高分子電解質膜について詳細に説明する。
(触媒層)
触媒層は、少なくとも、第一の触媒材料と、第二の触媒材料とを有している。
第一の触媒材料(ポリ酸)について
第一の触媒材料は、チオール基(−SH基)を有するポリ酸からなる化合物である。
ここで、ポリ酸とは、一般的には、オキソ酸といわれるバナジウム、モリブデン、タングステンなどの遷移金属イオンに酸化物イオンが4乃至6配位してできる四面体、四角錐、八面体などの多面体が縮合して出来た陰イオン種のことである。化学式としては[Mn−(Mは遷移金属、x、y、nは任意の正の整数を表す。)で表され、ポリオキソメタレート(POM)や金属オキソ酸と呼ばれることもある。さらに、遷移金属と酸素のみで構成されるポリ酸はイソポリ酸、ヘテロ原子を取り込んだ化合物はヘテロポリ酸と呼ばれる。ポリ酸の中でもよく用いられる基本骨格が、ケギン型と呼ばれる[PW12403−に代表される構造体や、ドーソン型と呼ばれる[P1862n−である。
ポリ酸は、上記したように多くの遷移金属元素、オキソ酸の配置、ヘテロ原子の種類、更にはオキソ酸が数箇所欠損している欠損種などの組み合わせにより、多種多様な構造を取り得る。
一方、本発明におけるポリ酸とは、ポリ酸骨格を有する化合物とする。すなわち、ポリ酸は、前記陰イオン種に別の分子が結合した化合物も含む概念とする。したがって、「チオール基を有するポリ酸」は、前記陰イオン種にチオール基が結合した化合物であっても良く、前記陰イオン種にチオール基を含む分子が結合した化合物であっても良い。
下記の化学式(1)にチオール基を有するポリ酸を示す。
Figure 2008293959
(Aはポリ酸のうちのチオール基以外の部分、Sはポリ酸が有するチオール基の硫黄原子、Hはポリ酸が有するチオール基の水素原子)
このようなチオール基を有するポリ酸の具体例としては、例えば、Chem. Eur. J.,10号、(2004年)、5517ページに示されているオルガノシリル基を導入したポリ酸のチオール誘導体などが挙げられる。ポリ酸のチオール誘導体である((CHNH)5H[α−P1761{(HS(CHSi)O}]・6HOの構造式を図2に示す。このポリ酸は、炭素鎖の長さを変えて合成することが可能で、ポリ酸自身の安定性からも本発明の触媒層および膜電極接合体に好適に用いることができる。しかし、チオール基を有するポリ酸であれば良く、上記限定される物では無い。
第一の触媒材料を構成するポリ酸と第二の触媒材料は、前記ポリ酸が有するチオール基によって第二の触媒材料と結合することができる。ポリ酸は、一般的に、触媒としての機能、例えば固体高分子電解質(イオノマー)と3相界面を形成した際に電子と電荷を分離できる機能を有する一方、第二の触媒材料の助触媒としても機能する。ポリ酸が第二の触媒材料の助触媒として機能することによって活性化分極が減少し、第二の触媒材料の活性を向上させる。したがって、ポリ酸を第二の触媒材料に結合させた触媒材料を触媒層として用いることで、燃料電池の発電効率を向上させることができる。また、チオール結合によってポリ酸が第二の触媒材料と結合するため、高い発電効率を維持することができる。
したがって、ポリ酸を第二の触媒材料に結合させることによって、燃料電池としての出力の向上を実現すると供に、燃料電池の耐久性も向上することができる。
第二の触媒材料について
第二の触媒材料は、第一の触媒材料であるポリ酸が有するチオール基の硫黄原子と結合し、触媒としての機能を有する材料であれば何でも良い。このような材料としては、白金からなる構造体であることが好ましい。ここで、白金からなる構造体には、白金の構造体、白金とその他の金属との合金で構成されている構造体、複数の層の積層構造からなり最表面の層の少なくとも一部が白金からなる層である構造体、などが含まれるものとする。白金とその他の金属との合金からなる構造体におけるその他の金属の例としては、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、レニウム、コバルト、リチウム、ランタン、セリウム、ストロンチウム、イットリウム、およびオスミウムなどが挙げられる。また、白金の構造体の一部が金で被覆される構造であっても良い。
また、第一の触媒材料、第二の触媒材料からなる触媒の形状は限定されるものではなく、例えば、球状(微粒子)、樹枝状、ワイヤ状などの形状としても良い。
ここで、本発明において、樹枝状とは、触媒粒子が集まって構成されるフレーク(薄片)状組織が、分岐点を有して多数集まった構造を指す。一つのフレーク状組織は、その短手方向の長さが5nm以上200nm以下であることが好ましい。なお、ここでの短手方向の長さとは、一つのフレークの面内における最小の寸法を意味する。樹枝状形状の白金ナノ粒子の集合体に関しては、例えば、特開2006−49278号公報に開示されている技術を本発明に適用することが可能である。
第一の触媒材料と第二の触媒材料との結合について
第一の触媒材料であるポリ酸が有するチオール基の硫黄原子と、第二の触媒材料とは、下記の化学式に示す様に、チオール結合によって結合している。
Figure 2008293959
(Dはポリ酸のうちのチオール基以外の部分、Sはポリ酸が有するチオール基の硫黄原子、Eは第二の触媒材料が有する原子を表す。)
上記の第一の触媒材料と、第二の触媒材料との間の結合であるチオール結合とは、チオール基の水素原子が脱離することにより生じる硫黄原子と白金などの特定の材料との間の結合である。
また、触媒層には、第一の触媒材料および第二の触媒材料に加えて、固体高分子電解質が含まれていることが好ましい。
触媒層は、前記第一の触媒材料および第二の触媒材料を混合して混合物を作製することで、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とをチオール結合によって結合させて製造することができる。
また、膜電極接合体には、基本的にカチオンをアノード側に輸送できる固体高分子膜と、アノード及びカソードで発生した電子を取り出すことが出来る触媒電極が存在すれば発電が可能となるため、担体は必ずしも必要な材料ではない。しかし、主として白金の使用量を削減することを目的として、電子移動が可能な担体材料を更に触媒層が有していても良い。
このよう担体材料の例としては、第二の触媒材料を担持する担体などが挙げられる。この担体は、炭素を主として用いることが出来るが、電子伝導材料ならばこれらに限られるものでは無い。炭素の担体として、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が挙げられ、これらが単独あるいは混合されて使用される。
(固体高分子電解質膜)
本発明の膜電極接合体の構成成分である固体高分子電解質膜は、プロトン伝導性基を有し、アノード側で発生したプロトンをカソード側に移動させる機能を有する。このようなプロトン伝導性を有する基としては、具体的には、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、水酸基などが挙げられる。また、固体高分子電解質膜の例としては、これらのプロトン伝導性基を有する有機高分子が好ましく、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、ポリスチレンスルホン酸樹脂、スルホン化ポリアミドイミド樹脂、スルホン化ポリスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルイミド半透膜、パーフルオロホスホン酸樹脂、パーフルオロスルホン酸樹脂等が挙げられる。
次に、本発明の膜電極接合体の製造方法について説明する。
本発明の膜電極接合体の製造方法は、少なくとも、固体高分子電解質膜と、第一の触媒材料および第二の触媒材料を含有する触媒層と、を有する膜電極接合体の製造方法であって、チオール基を有するポリ酸からなる第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを混合して混合物を作製し、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とをチオール結合によって結合させる工程と、前記混合物を固体高分子電解質膜表面に設置する工程と、を有することを特徴とする。
なお、前記混合物は固体高分子電解質を含むことが好ましい。
第一の触媒材料と第二の触媒材料とを含む触媒材料と固体高分子電解質とを接触させる方法としては、大きく分けて以下の2つの方法がある。一つ目の方法としては、第一の触媒材料および第二の触媒材料を含む触媒材料と固体高分子電解質とをあらかじめ混合し、それらの混合物を固体高分子電解質膜表面に付与する方法である。二つ目の方法は、第二の触媒材料を固体高分子電解質で被覆した後に、第一の触媒材料と混合させ、それらを固体高分子電解質膜表面に付与する方法である。
いずれの方法であっても、本発明においては、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とを混合することで、第一の触媒材料を構成する前記ポリ酸が有する前記チオール基を介して前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とを結合させる。なお、第一の触媒材料と第二の触媒材料の混合条件としては、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料が分解されずに接触する条件であればいかなる混合条件であっても良い。
次に、本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、前述した膜電極接合体を有する燃料電池である。
本発明の燃料電池を構成する燃料電池セルの例を図5に示す。図5に示す燃料電池セルは、固体高分子電解質膜51、アノード触媒層52、カソード触媒層53、アノード側集電体54、カソード側集電体55、外部出力端子56、燃料導入ライン57、燃料排出ライン58、アノード側燃料拡散層59、カソード側燃料拡散層60から構成されている。触媒層表面の3相界面で化学反応が起こることで電力が発生する。
燃料電池の構成としては、前記セルを一つ有する構成としても良いが、複数のセルをスタッキングさせた構成とすることが好ましい。そのような構成とすることで、発生電圧値及び電流値を高めることができる。
拡散層には、撥水処理した高気孔率を有する導電性部材を用いることが好ましく、例えば、炭素繊維織物やカーボンペーパー等を好適に用いることが出来る。
また、前記拡散層と前記触媒層の間に、前記拡散層より小さい孔径有するカーボン製のマイクロポーラス層を介在せしめても良い。
なお、本発明の燃料電池は、前述したような燃料電池セルを一つ有する構成であっても良いし、複数の燃料電池セルが積層した構成であっても良い。
なお、本発明の燃料電池に用いる燃料は、アノード側の触媒電極と固体高分子電解質膜の作用によって電子とカチオンが発生する燃料なら何でも良い。このような燃料の例としては、水素、改質水素、メタノール、ジメチルエーテル等が挙げられる。また、カソード側では空気や酸素等のカチオンを受け取り、電子を取り込む燃料なら何でも用いられ得る。一般的には、アノード側では水素若しくはメタノール、カソード側では空気を用いることが、反応効率的にも実用的にも適している。
以下、実施例を示し本発明の一例を具体的に説明する。
実施例1
本実施例は、第一の触媒材料であるポリ酸と第二の触媒材料である微粒子形状の白金からなる構造体(白金微粒子)と固体高分子電解質であるナフィオン(登録商標、デュポン社)溶液を同時に混合して触媒シートを作製し、その触媒層をナフィオン膜の表面に転写することにより膜電極接合体を作製した例である。
先ず、第一の触媒材料として、((CHNH)5H[α−P1761{(HS(CHSi)O}]・6HOに示すチオール基含有のポリ酸を合成した。合成方法は、例えばChem. Eur. J.,10号、(2004年)、5517ページによる。
このポリ酸を純水中に溶解させることで0.5mmol/Lの水溶液を作製した。次に、平均結晶子径が5nmの白金微粒子1.0gをるつぼに入れ、マイクロピペットでポリ酸水溶液を0.4cc、5%ナフィオン溶液を1.5cc、イソプロピルアルコールを0.2ccを順次加えた。そして、そのるつぼを5分間超音波撹拌した。さらに、ルツボ内に撹拌子を入れ、マグネチックスターラーを用いて200rpmで撹拌した。以上により、白金微粒子の表面にポリ酸を結合させた。
このように作製された白金微粒子−ポリ酸混合溶液をドクターブレード法によってポリテトラフルオロエチレンシートの表面に塗布して高分子電解質を含む触媒層を形成した。その後、ナフィオン膜の表面に、ホットプレスを使用することにより転写させ、膜電極接合体を作製した。
この膜電極接合体を図5に示したように組み込み、燃料電池セルとした。
この燃料電池セルのアノード側に水素、カソード側に空気を燃料として注入して測定を行った。
比較例1として、実施例1における触媒層においてポリ酸を添加しない触媒層(白金微粒子とナフィオンからなる触媒層)を用いて、同様に膜電極接合体を作製し、それを用いてセルを作製した。
これらのセルを用いて、燃料電池単セルの電流−電位特性を評価した。なお、セル温度は40℃とし、アノード側に50%で加湿した水素を、カソード側に同様に加湿した空気を使用した。流量として、それぞれ500mL/分、2000mL/分で供給し、作製した単セルを運転した。測定結果を図3に示す。400mA/cmにおける実施例1で作製したセルと比較例1で作製したセルの電位差は120mVであり、実施例1のセルの性能が比較例1のセルの性能を大きく上回った。また、同じ膜電極接合体を繰り返し使用したときも実施例1のセルの性能は比較例1のセルの性能まで低下することは無かった。したがって、本実施例の膜電極接合体は、ポリ酸を白金微粒子に固定することによって、ポリ酸による酸素還元反応の促進や保湿効果を長時間持続させることができ、発電効率が向上したものと考えられる。
実施例2
本実施例は、第二の触媒材料として樹枝状形状の白金からなる構造体を作製し、その白金からなる構造体の表面に第一の触媒材料であるポリ酸を結合させて修飾電極を作製した例である。
まず、樹枝状形状の白金からなる構造体を作製した。作製方法として、チャンバー内にポリテトラフルオロエチレンシートを設置し、スパッタ室内圧力を1.0×10−4Paまで排気した後、Ar、Oを其々2.5、20.0sccm導入し、オリフィスにて全圧を6.0Paに調整した。RF投入パワー4.0W/cmにて反応性スパッタを行い、シート上に樹枝状形状を有する酸化白金の構造体を膜厚約100nmで成膜した。
次に、酸化白金構造体を表面に形成した基体を、10kPaの2%H/Heに10分間暴露し、酸化白金の還元を行った。
その後、シート上に作製された樹枝状形状を有する触媒層にイソプロピルアルコールで濃度を調整したナフィオン溶液を滴下し、乾燥させて、直径5mmのディスク電極上に、直径5mmの円形に切り抜いた触媒担持シートをホットプレスにより転写して修飾電極を得た。そして、実施例1で作製した1.0mmol/Lのポリ酸水溶液中に修飾電極を10秒程度浸漬し、水洗後乾燥した。
本実施例の修飾電極の活性を調べるために、回転電極法を用いて、回転数を1600rpmとして電位を掃引し、測定を行った。測定方法は、0.1mol/Lの指示塩中に作用電極として修飾電極を設置した。このとき、参照電極は銀/塩化銀電極、対極として白金線をもちいた。
比較例2として、ポリ酸水溶液に浸漬するプロセスを省いた以外は実施例2と同様の方法で修飾電極を作製し、それを用いて測定を行った。
実施例2、比較例2の測定結果を図4に示す。本実施例2で作製した修飾電極は、比較例2の修飾電極に比べて、酸素還元能が上昇する結果が得られ、ポリ酸を固定化することにより活性化が向上することが確認できた。ここで、酸素還元電流が流れ始める電位は、修飾電極の反応触媒活性であり、より正電位で酸素還元電流が流れる電極ほど、高活性であることを示している。また、同じ修飾電極を繰り返し使用した場合も、実施例2の修飾電極の性能が比較例2の修飾電極の性能まで低下することは無かった。したがって、樹枝状形状の白金からなる構造体にポリ酸を固定化することにより、ポリ酸による酸素還元反応の促進を長時間持続させることが可能になったものと考えられる。
実施例3
本実施例は第二の触媒材料である樹枝状形状の白金からなる構造体をナフィオン溶液で被覆した後に、第一の触媒材料であるポリ酸を結合させることにより、膜電極接合体を作製した例である。
まず、樹枝状形状の白金からなる構造体を作製した。作製方法は、チャンバー内にポリテトラフルオロエチレンシートを設置し、スパッタ室内圧力を1.0×10−4Paまで排気した後、Ar、Oを其々2.5、20.0sccm導入し、オリフィスにて全圧を6.0Paに調整した。RF投入パワー4.0W/cmにて反応性スパッタを行い、シート上に樹枝状構造を有する酸化白金を膜厚約2.0μm成膜した。酸化白金の成膜が終了した基体は、10kPaの2%H/Heに10分間暴露することによって容易に還元された。次に、この触媒上にイソプロピルアルコールで濃度を調整したナフィオン溶液を滴下し乾燥させ、その後、実施例1で作製した0.5mmol/Lのポリ酸水溶液中に10秒程度浸漬し、水洗後乾燥させた。このように作製したポリ酸含有触媒層をナフィオン膜上にホットプレスにより転写させ、膜電極接合体を作製した。
この膜電極接合体を実施例1と同様に、アノード側に水素、カソード側に空気を燃料として注入するセルを作製した。
比較例3として、実施例3における触媒層においてポリ酸を添加しない触媒層(樹枝状形状の白金からなる構造体とナフィオンからなる触媒層)を用いて、同様に膜電極接合体を作製し、それを用いてセルを作製した。
これらのセルを用いて、燃料電池単セルの電流−電位特性を評価した。なお、セル温度は40℃とし、アノード側に40%で加湿した水素を、カソード側に同様に加湿した空気を使用した。流量として、それぞれ500mL/分、2000mL/分で供給し、作製した単セルを運転した。測定結果を図6に示す。400mA/cmにおける実施例3で作製したセルと比較例2で作製したセルの電位差は50mVであり、実施例3のセルの性能が比較例2のセルの性能を大きく上回った。また、同じ膜電極接合体を繰り返し使用したときも実施例3のセルの性能は比較例2のセルの性能まで低下することは無かった。したがって、本実施例の膜電極接合体は、ポリ酸を樹枝状形状の白金からなる構造体に固定させて触媒として用いることによって、ポリ酸による酸素還元反応の促進や保湿効果を長時間持続させることができ、発電効率が向上したものと考えられる。
本発明の触媒層は、発電効率を向上させることができるので、膜電極接合体、膜電極接合体を用いた燃料電池に利用することができる。
本発明の膜電極接合体の構成の一例を示す模式図である。 チオール基を有するポリ酸の一例を示した構造図である。 本発明の実施例1および比較例1の電流−電位特性の測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例2おおよび比較例2の触媒活性の測定結果を示すグラフである。 燃料電池の一般的な模式図である。 本発明の実施例3および比較例3の電流−電位特性の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
11 膜電極接合体
12 第一の触媒材料
13 固体高分子電解質膜
14 第二の触媒材料
15 担体
16 触媒層
51 固体高分子電解質膜
52 アノード触媒層
53 カソード触媒層
54 アノード側集電体
55 カソード側集電体
56 外部出力端子
57 燃料導入ライン
58 燃料排出ライン
59 アノード側燃料拡散層
60 カソード側燃料拡散層

Claims (8)

  1. 第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを少なくとも有する触媒層であって、前記第一の触媒材料がチオール基を有するポリ酸からなり、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料が前記チオール結合によって結合していることを特徴とする触媒層。
  2. 前記第二の触媒材料が、白金からなることを特徴とする請求項1に記載の触媒層。
  3. 前記ポリ酸がオルガノシリル基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の触媒層。
  4. 触媒層と、固体高分子電解質膜と、を少なくとも有する膜電極接合体であって、前記触媒層が請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒層であることを特徴とする膜電極接合体。
  5. 請求項4に記載の膜電極接合体を有する燃料電池。
  6. チオール基を有するポリ酸からなる第一の触媒材料と、前記第一の触媒材料とは異なる第二の触媒材料とを混合して混合物を作製し、前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料とをチオール結合によって結合させる工程を有することを特徴とする触媒層の製造方法。
  7. 前記第一の触媒材料と前記第二の触媒材料との混合物が固体高分子電解質を含むことを特徴とする請求項6に記載の触媒層の製造方法。
  8. 膜電極接合体の製造方法であって、請求項6または7に記載の触媒層の製造方法によって製造した触媒層を固体高分子電解質膜表面に設置する工程を有することを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
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