JP2008279352A - リーンバーン自動車排NOx用浄化触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来困難であったディーゼル排NOxを効率的に浄化処理するために有効な自動車排NOx浄化用触媒を提供する。
【解決手段】下層部分のNOx酸化触媒と上層部分のNOx選択還元触媒から成る二層構造の触媒によって排ガス中のNOxを浄化処理する。従来困難であったリーンバーン雰囲気(通常、5%以上の酸素濃度雰囲気)にあるNOxを180℃〜500℃の範囲で効率的に浄化処理できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、リーンバーン自動車が排出するNOxを浄化するための自動車排NOx用の浄化触媒に関する。
従来、ガソリン車の排ガスに含まれるNOx、一酸化炭素、及び炭化水素は、白金族元素から成る三元触媒によって浄化されている(特許文献1参照)。三元触媒の主成分である白金族触媒は、酸素濃度が1%以下であるリッチバーン排ガス中のNOをNOに酸化する能力が高く、NOを還元性物質によってNO及び窒素に還元する能力も高く、又、還元性物質を酸素によって完全酸化する能力も高い。三元触媒は、通常、触媒支持体としてコージェライト製のモノリス成形体を用い、該成形体のガス流路内壁に数μm〜数十μmの大きさの活性アルミナ粒子を塗布し、該塗布層に数10nm〜数100nmの大きさの白金−パラジウム−ロジウム粒子を担持させた構造となっている。三元触媒による浄化方法は、空気:燃料の重量混合比である空燃比を理論空燃比(=14.7)近傍に制御することで(この燃焼はリッチバーンと呼ばれている)排ガスに含まれる酸素濃度を1%以下に維持できるので、排ガスに含まれる一酸化炭素及び炭化水素をNOxの還元剤として利用できるという利点を持つが、排ガス中の酸素濃度が数%以上になると触媒の著しい酸化劣化が生じるという問題がある。
また、軽油燃料で走行するトラック、バス等の大型ディーゼル車の排ガス処理は、触媒として遷移金属化合物及び又は白金族元素を用い還元剤として尿素水を用いる、所謂尿素SCR法が検討されている(特許文献2参照)。この方法は、100℃付近の比較的低温領域から600℃付近の比較的高温領域に渡ってNOxを効率的に浄化できるという利点を持つが、還元剤として高価な尿素水の搭載が必要であるという問題と、200℃付近以下の低温排NOxの多くが硝酸アンモニウムとして排出されるので水質環境汚染を招くという問題がある。
尿素水以外の還元剤を用いる方法としては、自動車燃料(燃料に少量含有されるエチレン、プロピレン等の炭化水素が還元性を有する)を還元剤として用いるハイドロカーボンSCR法が検討されており、この方法はリッチバーン排NOxに対しては高い浄化率が得られるが、リーンバーン排NOxに対しては浄化率が低いという問題がある。また、メタノールを還元剤として用いる方法が提案されているが(非特許文献1参照)、反応開始温度が300℃以上であるという問題がある。さらに、最近では、燃料を改質触媒で改質後に、排ガスに導入して排ガス浄化用触媒によって排NOxを処理する方法が提案されているが(特許文献4及び非特許文献2参照、)、反応開始温度が300℃以上であるという問題がある。また、ディーゼル排ガス等の排NOx浄化用に研究されているゼオライト担持触媒は、水熱条件下での水分及び酸素によって著しく活性が低下するという問題がある。
一方、ディーゼル乗用車等の小型ディーゼル車の排NOx処理には三元触媒が使用できない。それは、空燃比がガソリンの空燃比の数倍以上であるので(ディーゼル燃料の燃焼はリーンバーンである)ディーゼル排ガス中の酸素濃度が通常5%以上であり還元性物質がほとんど含まれていないためである。同様の理由でリーンバーンガソリン車の排ガスも三元触媒だけでは浄化が難しい。三元触媒の主成分である白金族触媒は、前述の如く、NOをNOに酸化する能力が高いが、NOを還元性物質によってNO及び窒素に還元する能力も高く、又、還元性物質を酸素によって完全酸化する能力も高いので、従来の白金を主体とした触媒を酸素濃度の高いリーンバーンの排ガスと直接接触させると、リーン
バーン排ガスに燃焼しやすい水素、一酸化炭素、ハイドロカーボン等の還元性物質を供給した場合でもNOxの処理温度帯域がおよそ200℃〜250℃の非常に狭い領域に限定されるという問題があった。一方、遷移金属酸化物触媒は実用に供されていないが、酸化還元力が白金よりも低いので、250℃〜400℃の範囲がNOxの処理温度帯域であることが報告されている。従来、処理温度帯域を拡大するために上記白金族触媒と遷移金属酸化物触媒を混合することが検討されているが、単に混合するだけでは目的を達成ことはできなかった。その理由として、混合触媒における白金触媒の酸化力が強すぎるために排ガス成分に含まれる還元性物質の殆どが白金触媒によって消費されてしまうからであると考えられる。リーンバーンガソリン車及び小型ディーゼル車の排NOx処理には、現在、触媒として白金族触媒にNOx吸蔵剤を添加した所謂NOx吸蔵還元触媒が検討されている(特許文献3参照)。この方法は、リーンバーンだけでは排NOx浄化が困難であるので、リーンバーンとリッチバーンを交互に繰り返す燃焼方式を行っている。この方法でのNOx浄化は、リーンバーン排NOxをNOx吸蔵剤で吸収し、吸収NOxをリッチバーン雰囲気下で放出させ、放出NOxをリッチバーン排ガス中に供給した燃料もしくはリッチバーン排ガス中に存在する多量の一酸化炭素、水素、炭化水素等の還元性物質を用い白金族触媒で還元処理するという考えに立脚している。リーンバーンとリッチバーンを交互に繰り返す燃焼方式とNOx吸蔵還元触媒を用いた浄化方法は、ガソリン乗用車の排ガス処理に用いられている三元触媒が使用できないような高濃度の酸素雰囲気中でも250℃付近から600℃付近に渡ってNOxを浄化できるという利点を持つが、200℃付近以下でのNOx浄化は非常に困難であるという問題がある。また、排ガス中の水分及び少量のSOxによってNOx吸蔵剤が著しく劣化するので、通常750℃以上での定期的な高温処理による触媒再生が必要であり、再生処理によって触媒は著しく熱劣化する。
リーンバーン雰囲気でNOを吸収するためのNOx吸蔵剤は、強塩基性のアルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩等であるので、NOもしくは硝酸はこれらのアルカリ性の金属化合物とマイルドな温度で容易に反応して硝酸塩として吸収される。リッチバーン雰囲気では、これらの硝酸塩が分解して元の金属化合物と遊離のNOを発生する。そのため排ガスの処理温度はNOx吸蔵剤である金属化合物の硝酸塩の分解温度に完全に依存している。公知のNOx吸蔵剤の分解温度は250℃以上であり、200℃以下で作動するようなアルカリ性の金属化合物は知られていない。また、上記金属化合物は水溶性でありSOxとも容易に反応して不活性な硫酸塩になる。それゆえ、上記のような様々の弊害を起こすNOx吸蔵剤の使用を避けることが望まれている。
また、上記リーンバーンとリッチバーンを交互に繰り返す燃焼方式は、内燃機関における燃焼と酸素濃度を精密に制御するための高度で複雑な制御システムの搭載を必要とするので、リーンバーンだけの排ガスでもNOx浄化ができるのであれば上記の制御システムが簡略化できるので、このようなリーンバーン専用車のためのNOx浄化用触媒が望まれている。
ところで、国内ではディーゼル乗用車の排出する排ガスの温度は過渡走行時でおよそ120℃〜200℃であり安定走行時でおよそ200℃〜400℃であるが、排出されるNOxの約80%が過渡走行時に排出されている。
以上のことから、ディーゼル乗用車の排ガス処理に要求される触媒は、リーンバーンだけの燃焼方式で排出される排ガスに対して、上記120℃〜200℃の低温領域のリーンバーン排NOxに対して高活性であり尚且つ200〜400℃の中温領域のリーンバーン排NOxに対しても高活性であることが望まれているが、現在の所、250℃以下のリーンバーン排NOxに対して有効なNOx浄化用触媒は見出されていない。また、低温から中温領域でのNOx浄化の大部分が、非常に大きな温暖化係数をもつ一酸化二窒素(NO)の段階で止まっているという問題も解決されていない。
一般に、工業的な触媒は多孔性材料に担持した状態で使用されることが多い。多孔性材料の細孔は、IUPAC(国際純正及び応用化学連合)によると、細孔直径が2nm以下のミクロ細孔、2〜50nmのメソ細孔、及び50nm以上のマクロ細孔に分類されている。ミクロからメソの範囲にわたる広い分布をもつような単一の多孔性材料は活性炭以外には知られていない。
近年、細孔径が数nmの細孔が規則的に配列し、比表面積が400〜1100m/gという非常に大きな値を有するシリカ、アルミナ、及びシリカアルミナ系のメソポーラス分子篩が開発された。これらは、例えば、特許文献1、2、及び3等に開示されており、細孔の細孔配列があたかも結晶性物質の原子配列に類似していることから結晶性メソポーラス分子篩と命名されている。
触媒反応は表面反応であるので触媒の比表面積が大きいほど触媒活性が高い。また、触媒を担持するための担体は比表面積が大きいほど触媒活性を発現しやすい。このような観点から自動車用三元触媒をみると、支持体としてのモノリス成形体は成形体の断面が網目状で、軸方向に平行に互いに薄い壁によって仕切られたガス流路を設けている成形体であり、比表面積が約0.2m/g、担体としてのアルミナ粒子の比表面積が110〜340m/gであり、触媒の比表面積は粒径から20〜40m/g程度であると推定される。したがって、従来の触媒粒子の粒径よりも一桁から二桁小さいナノサイズの触媒粒子を上記のようなメソポーラス材料の細孔内に担持することによって触媒の表面積は従来の三元触媒の10〜10倍大きくなるので、これをモノリス成形体に塗布することによって自動車排ガスに対する触媒活性の向上を図ることが考えられ、この考えは、例えば、特許文献5〜10に開示されている。しかし、ディーゼル乗用車等が排出する120℃〜200℃付近の低温排NOxを効果的に除去することは困難であった。
特開平5−254827号公報 特表平5−503499号公表 特表平6−509374号公表 WO2005/103461号公報 米国特許第 5,143,707号明細書 特開平8−257407号公報 特開2001−9275号公報 特開2002−210369号公報 特開2002−320850号公報 特開2003−135963号公報 Applied Catalysis B:Environmental 17(1998)115−129. Applied Catalysis B:Environmental 17(1998)333−345.
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、従来困難であったリーンバーン排NOxを低温領域から中温領域にわたって効率的に浄化するための自動車排NOx浄化用触媒を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、NOx酸化触媒層とNOx選択還元触媒層から成る二層構造のNOx浄化用触媒がリーンバーン排NOxに対して非常に有効であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
1.モノリス成形体の内壁上に、(1)メソポーラス材料に白金族元素を担持した触媒を主成分とするNOx酸化触媒と、(2)陽イオン交換ゼオライトを主成分とするNOx選択還元触媒とを、上記(1)〜(2)の順に積層してなることを特徴とするリーンバーン自動車排NOx用浄化触媒。
2.該陽イオンが、遷移金属イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンから選ばれた少なくとも1種類以上の陽イオンであることを特徴とする上記1.に記載のリーンバーン自動車排NOx用浄化触媒、に関する。
本発明の自動車排NOx浄化用触媒は、従来達成できなかったリーンバーン排NOx処理を低温領域から中温領域にわたって極めて効率よく行うことができる。例えば、三元触媒では酸素濃度10%の雰囲気下におけるNOxはほとんど浄化できないが、本発明触媒であるモノリス成形体のガス流路の内壁にNOx酸化触媒とNOx選択還元触媒を順番に塗布した二層構造の触媒は、酸素濃度10%のリーンバーン排NOxの80%以上を180℃〜500℃において浄化できる。また、NOx浄化における窒素の選択率も高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
従来の三元触媒は、酸素濃度が1%よりも低い雰囲気で還元性物質がNOxのモル濃度の10倍程度あれば160℃付近から600℃に渡ってNOxをほぼ100%浄化できる。しかし、酸素濃度が数%以上の雰囲気では還元性物質が豊富でも250℃以上の温度領域では高温であるほどNOx浄化率が激減する。これは、三元触媒が酸素によって被毒されるという原因では十分に説明できない。おそらく、温度が250℃を超えたあたりから触媒上での還元性物質の完全燃焼反応がNOx還元反応よりも著しく早くなるからであろうと考えられる。
本発明におけるNOx酸化還元触媒は、従来の三元触媒に比べてこのような好ましくない触媒反応が幾分改善されているが、本質的には白金族触媒であることから酸化力は三元触媒とあまり変わらないので、触媒構造を工夫することによってリーンバーン排NOxを効率的に浄化するものである。
すなわち、本発明は、リーンバーン排ガス中のNOxを浄化するための自動車排NOx浄化用触媒であり、具体的には、モノリス成形体のガス流路の内壁にNOx酸化触媒とNOx選択還元触媒を順番に塗布した二層構造の触媒である。本発明におけるリーンバーンとは、排ガス中の酸素濃度が1%以上であることを言い、通常、酸素濃度が5%以上であることを言う。該NOx酸化触媒の役割は、低温領域のリーンバーン雰囲気でNOをNOに酸化することである。NOx選択還元触媒の役割は、主としてNOx酸化触媒で生成したNOを還元処理することである。下層にNOx酸化触媒を設けるのは、リーンバーン雰囲気に共存する還元剤が該触媒層によって無駄に燃焼消費されることを抑制するためである。また、上層にNOx選択還元触媒を設けるのは、リーンバーン雰囲気に共存する還元剤を無駄に燃焼することなくNOの効率的な還元に利用するためである。NOx酸化触媒は酸化力が非常に高く、一方、NOx選択還元触媒は還元剤を吸着する能力が高く、還元剤の酸化力は低いがNOの還元力が高いという特徴があるので、上記のような二層構造にすることによって、これらの触媒の特徴を共に活かすことができる。すなわち、リーンバーン雰囲気のNOは上層のNOx選択還元触媒を通過して下層のNOx酸化触媒でNOに酸化される。NOの一部は下層のNOx酸化触媒上で上層のNOx選択還元触媒を通過した一部の還元剤によって還元されるが、大部分のNOは上層のNOx選択還元触媒上で高濃度の吸着還元剤によって還元される。還元力が高いので中温領域ではNOの大部分はNに還元される。また、NOx選択還元触媒は、排ガス中に含まれるSOxによる触媒被毒が殆ど無いので、従来のNOx吸蔵還元触媒にみられるようなNOx
吸蔵剤による弊害が殆どない。
本発明におけるNOx酸化触媒としてはメソポーラス材料に白金族元素を担持した触媒を用いる(但し、上記三元触媒は除く)。白金族元素とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金の6元素の総称であるが、これらの中で、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金から選択される1種又は2種が好ましく、中でも白金が最も好ましい。通常、本発明では、白金主体の触媒を用いるが、その理由は、触媒の主成分である白金が排NOxの主成分であるNOをNOに酸化する能力が高く、NOを還元剤によってNO及び窒素に還元する能力が高く、高濃度の酸素雰囲気中でも化学的に安定であるからであり、又、白金族元素の中では白金が比較的低温高活性であるからでもある。白金主体の触媒に異なる機能をもつ助触媒的成分を添加することによってシナジー効果による触媒性能の向上をはかることもできる。このような成分として、例えば、遷移金属及びその酸化物を用いることができる。遷移金属元素としては、周期律表における3族〜11族の元素が挙げられるが、これらの中でバナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、タングステン、レニウム、が好ましく、中でも鉄、コバルト、タングステンが最も好ましい。これらの助触媒的成分の添加質量は、通常、白金の0.01倍から100倍程度であるが、必要に応じて100倍以上であってもよい。
触媒の担体として用いるメソポーラス材料は、高比表面積を有し細孔径がナノサイズであるので、そこに担持される触媒の比表面積を飛躍的に高められること、触媒を細孔内に担持することで触媒粒子の再凝集を抑制し触媒の均一高分散を図れること、などの優れた効果がある。メソポーラス材料の比表面積は、特別な事情がない限り高ければ高いほどよい。本発明に用いることのできるメソポーラス材料の比表面積は100〜4000m/gであり、好ましくは200〜3000m/g、さらに好ましくは、400〜2000m/gである。比表面積が100m/g未満では、触媒の担持量が少なくなるので担持触媒の触媒性能を引き出す上で100m/g以上であることが好ましい。一方、材料強度上の面からは比表面積が4000m/g以下であることが好ましい。また、本発明におけるメソポーラス材料の細孔の大部分は、細孔径(直径表示)が1〜50nmの範囲にあり、好ましくは2〜20nmの範囲にあり、より好ましくは2〜10nmの範囲にある。ここでいう細孔の大部分とは1〜50nmの細孔が占める細孔容積が全細孔容積の60%以上であることをいう。細孔径が1nm未満であっても触媒の担持は可能であるが還元剤の流通や不純物等による汚染の影響を考えると1nm以上が好ましい。50nmを越えると分散担持された触媒が水熱高温条件などによるシンタリング(=燒結)によって巨大粒子に成長しやすくなるので50nm以下が好ましい。メソポーラス材料の細孔に担持される触媒の粒径は、細孔径とほぼ同程度ないしそれ以下であるので、前記の細孔径の範囲は、高活性を発現する触媒の粒径範囲とも一致している。一般に、ナノサイズに微粒化された触媒粒子は、活性を示すエッジ、コーナー、ステップなどの高次数の結晶面を多量にもつので、触媒活性が著しく向上するだけでなく、バルクでは触媒活性を示さないような不活性金属でも予期しなかった触媒活性を発現する場合があることが知られている。したがって、触媒能力の観点からは触媒は小さいほど好ましいのであるが、反面、微粒化による表面酸化、副反応などの好ましくない性質もでてくるので、微粒子の粒子径には最適範囲が存在する。本発明における目的のNOx浄化処理に対して効果的な活性を示す触媒の平均粒径は1〜50nmの範囲にあり、1〜20nmの範囲が好ましく、1〜10nmの範囲が特に好ましい。
以上のような比表面積と細孔分布を併せ持ったメソポーラス材料としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、カルシア、セリア、ニオビア、活性炭、多孔質黒鉛などを挙げることができ、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、カルシア、セリア、活性炭、及びこれらの複合材料が好ましく、シリカ、アルミナ、
マグネシア、活性炭、及びこれらの複合材料がさらに好ましい。
なお、上記メソポーラス材料の比表面積は、吸脱着の気体として窒素を用いたBET窒素吸着法によって測定される値であり、細孔径は、吸脱着の気体として窒素を用いた窒素吸着法によって測定される値でありBJH法によって求められる1〜200nmの範囲の細孔分布(微分分布表示)で示される。
メソポーラス材料に白金主体の触媒を担持する時の白金の担持量は0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%であるが、量的な問題がなければ、通常は、1ないし数質量%の担持量で用いる。担持量は20質量%以上でも可能であるが、担持量が過剰になると反応にほとんど寄与しない細孔深部の触媒が増えるので20質量%以下が好ましい。0.01質量%未満では活性が十分ではないので0.01質量%以上が好ましい。
本発明におけるNOx選択還元触媒としては、陽イオン交換ゼオライトを用いる。陽イオンは、遷移金属イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの中から選ばれる少なくとも1種類以上の陽イオンである。遷移金属イオンとしては、4族から11族の金属イオンが好ましく、中でも鉄イオン、及び銅イオンがさらに好ましい。ゼオライトとしては、天然ゼオライト、合成ゼオライト、これらに類するゼオライト様の性質・構造をもつ化合物、及びこれらの陽イオン交換ゼオライトを用いる。現在、天然ゼオライトについては、30種類以上の天然ゼオライトが知られており、例えば、方沸石、リョウ沸石、毛沸石、ソーダ沸石、モルデン沸石、輝沸石、束沸石、濁沸石、などを挙げることができる。また、合成ゼオライトについては、現在、80種類以上の合成ゼオライトが知られており、例えば、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、L型ゼオライト、エリオナイト、モルデナイト、ベータゼオライト、ZSM−5ゼオライト、等を挙げることができる。これらに類するゼオライト様の性質・構造をもつ化合物としては、例えば、チタノシリケートTS−1を挙げることができる。陽イオン交換ゼオライトとしては、例えば、アルカリイオン交換ゼオライト、アルカリ土類イオン交換ゼオライト、遷移金属イオン交換ゼオライト、希土類イオン交換ゼオライトを挙げることができる。
ゼオライトはアンモニア等を吸着する陽イオン交換能を持つので、その陽イオンにNOが吸着するものと考えられる。また、還元剤として働くプロピレン等の低級オレフィンを細孔内の吸着サイトに蓄えることができる。
本発明で用いるメソポーラス材料の製造は、従来の方法である界面活性剤のミセルをテンプレートとして用いるゾル−ゲル法を応用することによって所用の材料を製造することができる。メソポーラス材料の前駆物質には、メソポーラスシリカの場合、通常、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のアルコキシドを用いる。メソポーラスアルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、カルシア、セリア、ニオビアについても、通常、アルコキシドを用いて製造することができる。ミセル形成の界面活性剤は、例えば、長鎖のアルキルアミン、長鎖の4級アンモニウム塩、長鎖のアルキルアミンN−オキシド、長鎖のスルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のいずれであってもよい。溶媒として、通常、水、アルコール類、ジオールの1種以上が用いられるが、水系溶媒が好ましい。反応系に金属への配位能を有する化合物を少量添加すると反応系の安定性を著しく高めることができる。このような安定剤としては、アセチルアセトン、テトラメチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ピリジン、ピコリンなどの金属配位能を有する化合物が好ましい。前駆物質、界面活性剤、溶媒及び安定剤からなる反応系の組成は、前駆物質のモル比が0.01〜0.60、好ましくは0.02〜0.50、前駆物質/界面活性剤のモル比が1〜30、好ましくは1〜10、溶媒/界面活性剤のモル比が1〜1000、好ましくは5〜50
0、安定化剤/主剤のモル比が0.01〜1.0、好ましくは0.2〜0.6である。反応温度は、20〜180℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。反応時間は5〜100時間、好ましくは10〜50時間の範囲である。反応生成物は通常、濾過により分離し、十分に水洗、乾燥後、500〜1000℃の高温焼成によってテンプレートを熱分解除去し、メソポーラス材料を得ることができる。必要に応じて、焼成前に界面活性剤をアルコールなどで抽出することもできる。
メソポーラス材料に白金族元素を担持した触媒を主成分とするNOx酸化触媒は、例えば、イオン交換法又は含浸法によって製造することができる。これらの二つの方法は、担体への触媒の沈着化について、イオン交換法が担体表面のイオン交換能を利用し、含浸法が担体のもつ毛管作用を利用しているという違いはあるが、基本的なプロセスはほとんど同じである。すなわち、メソポーラス材料を触媒原料の水溶液に浸した後、濾過、乾燥し、必要に応じて水洗を行い、還元剤で還元処理することによって製造することができる。白金の触媒原料としては、例えば、HPtCl、(NHPtCl、HPtCl、(NHPtCl、Pt(NH(NO、Pt(NH(OH)、PtCl、白金のアセチルアセトナート、等を用いることができる。必要に応じて助触媒的成分を添加した触媒は、例えば、助触媒的成分の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩などの水溶性塩類を白金触媒原料に混合して同様にして製造することができる。触媒活性成分の還元剤としては、水素、ヒドラジン水溶液、ホルマリン、等を用いることができる。還元は、それぞれの還元剤について知られている通常の条件で行なえばよい。例えば、水素還元は、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈した水素ガス気流下にサンプルを置き、通常、300〜500℃で数時間処理することによって行なうことができる。還元後、必要に応じて、不活性ガス気流下500〜1000℃で数時間熱処理してもよい。
陽イオン交換ゼオライトを主成分とするNOx選択還元触媒は、例えばイオン交換法によって製造することができる。すなわち、交換したい陽イオンを含む水溶液にゼオライトを浸した後、濾過、乾燥し、必要に応じて水洗を行うことによって製造することができる。
本発明で用いるモノリス成形体とは、成形体の断面が網目状で、軸方向に平行に互いに薄い壁によって仕切られたガス流路を設けている成形体のことであり、モノリス成形体に触媒を付着させて成る触媒を以下ではモノリス触媒という。成形体の外形は、特に限定するものではないが、通常は、円柱形である。NOx酸化触媒及びNOx選択還元触媒をモノリス成形体のガス流路内壁に付着させる時の触媒の付着量は、それぞれ3〜30質量%が好ましい。担体内部に存在する触媒へのガス拡散の面から30%未満が好ましい。また、十分な触媒性能を引き出す上で3%以上が好ましい。モノリス成形体への触媒の塗布量相当の付着量は、成形体の0.03〜3質量%が好ましい。
上記のモノリス触媒は、自動車用三元触媒を付着したモノリス成形体の製造方法に準じて製造することができる。例えば、下層部分のNOx酸化触媒の塗布は、NOx酸化触媒とバインダーとしてのコロイダルシリカを、通常、1:(0.01〜0.2)の質量割合で混合した混合物を調整し、これを水分散することによって通常10〜50質量%のスラリーを調整した後、該スラリーにモノリス成形体を浸漬してモノリス成形体のガス流路の内壁にスラリーを付着させ、乾燥後、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下500〜1000℃で数時間熱処理することによって行うことがきる。あるいは、モノリス成形体にメソポーラス材料を塗布したのち、触媒原料を該メソポーラス材料に含浸し、還元処理、熱処理することによって行うことができる。上層部分のNOx選択還元触媒の塗布は、上記NOx酸化触媒を塗布したモノリス成形体を用いて行う。すなわち、NOx選択還元触媒とバインダーとしてのコロイダルシリカを、通常、1:(0.01〜0.2)の質量割合で混合した混合物を予め調整し、これを水分散することによって通常10〜50質量%のスラリーを調整した後、該スラリーにNOx酸化触媒を塗布したモノリス成形
体を浸漬してNOx酸化触媒層の上にスラリーを付着させ、乾燥後、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下300〜1000℃で数時間熱処理することによって行うことがきる。
コロイダルシリカ以外のバインダーとしては、メチルセルロース、アクリル樹脂、ポリエチレングリコールなどを適宜用いることもできる。モノリス成形体に付着させるNOx酸化触媒及びNOx選択還元触媒の厚みは、前記のスラリーを付着させる方法では、通常、1μm〜100μmであるのが好ましく、10μm〜50μmの範囲が特に好ましい。100μmを超えると反応ガスの拡散が遅くなるので100μm以下が好ましい。触媒性能の劣化を抑制するためには1μm以上が好ましい。
本発明浄化用触媒は、自動車、特にディーゼル自動車及びリーンバーンガソリン自動車に搭載することによって、自動車が排出するリーンバーン排ガス中のNOxを180℃〜500℃の領域において極めて効果的に除去することができる。また、トラックなどの大型車用の排NOx浄化方法としても用いることができる。
以下に実施例などを挙げて本発明を具体的に説明する。
比表面積及び細孔分布は、脱吸着の気体として窒素を用い、カルロエルバ社製ソープトマチック1800型装置によって測定した。比表面積はBET法によって求めた。細孔分布は1〜200nmの範囲を測定し、BJH法で求められる微分分布で示した。製造したメソポーラス材料の多くは指数関数的に左肩上がりの分布における特定の細孔直径の位置にピークを示した。このピークを与える細孔直径が細孔径である。
自動車排NOxのモデルガスとして、ヘリウム希釈一酸化窒素と酸素の混合ガスを用いた。減圧式化学発光法NOx分析計(日本サーモ株式会社製造:モデル42i−HL及び46C−H)によって処理前と処理後のガスに含まれるNOx(NOとNOの合計)とNO(NOxの仲間ではない)の濃度を測定し、NOx浄化率と窒素の選択率を、それぞれ式(1)及び式(2)によって算出した。
Figure 2008279352
Figure 2008279352
「製造例1」排ガス浄化用触媒としての三元触媒類似の触媒の合成
0.538gのPtCl・5HO、0.2065gのPdCl・2HO、及び0.405gのRh(NO・2HOを20mlの蒸留水に溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに10gの活性アルミナ(日揮化学株式会社製造:比表面積250m/g、平均細孔径6.2nm、粒径2〜3μmの微粒子)を加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃で3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れヘリウム希釈水素ガス(10%v/v)気流下500℃で3時間還元し、貴金属の含有量
が約5重量%の触媒を合成した。これを、三元触媒を模した貴金属触媒として比較実験に用いた。
「製造例2」NOx酸化触媒としてのメソポーラスシリカに担持した白金触媒の製造
1リットルのビーカーに、蒸留水300g、エタノール240g、及びドデシルアミン30gを入れ、溶解させた。攪拌下でテトラエトキシシラン125gを加えて室温で22時間攪拌した。生成物を濾過、水洗し、110℃で5時間温風乾燥した後、空気中で550℃−5時間焼成して含有するドデシルアミンを分解除去し、メソポーラスシリカ材料を得た。該メソポーラスシリカ材料を小角X線回折測定した結果、1本のブロードな回折ピークを示した。また、透過型電気顕微鏡観察の結果、細孔の配列には規則的な配列が観測されず無秩序に分散している状態が観測された。これらの結果から、製造したメソポーラスシリカ材料は非晶性であることが確認された。また、細孔分布及び比表面積測定の結果、約3.2nmの位置に細孔ピークがあり、比表面積が933m/g、細孔容積が1.35 cm/g、1〜50nmの細孔が占める容積は1.34cm/gであった。蒸留水20gに塩化白金酸HPtCl・6HOを0.668gと硝酸ロジウムRh(NO・2HOを0.004g溶解した水溶液を蒸発皿に入れ、これに上記のメソポーラスシリカ材料5gを加え、スチームバスで蒸発乾固した後、真空乾燥機に入れ100℃−3時間真空乾燥を行った。この試料を石英管に入れ、ヘリウム希釈水素ガス(10v/v%)気流下500℃で3時間還元し、白金−ロジウムの担持量が約5質量%の[Pt−Rh/メソポーラスシリカ]触媒を合成した。メソポーラス触媒に坦持された白金−ロジウム粒子の平均粒径は約3.0nmであった。
「製造例3」NOx選択還元触媒としての陽イオン交換ゼオライトの製造
ベータゼオライト(住友化学株式製造:JRC−HB−25)100gを2Lの蒸留水に入れ、これに20質量%の硝酸第二鉄水溶液50gを加え、室温で一昼夜攪拌した。減圧濾過、100mLの蒸留水で洗浄後、100℃で真空乾燥することによって、鉄イオン交換ゼオライトを製造した。鉄イオンの含有量は約5gであった。
「製造例4」モノリス成形体に三元触媒を塗布した従来のモノリス触媒の製造
製造例1の三元触媒を模した貴金属触媒160g、及びコロイダルシリカ16gを蒸留水2Lに加え、攪拌して、スラリーを調整した(調整液1)。調整液1に、市販のコージェライトモノリス成形体(4.5mil/400cpsi、直径143.8mm×長さ118mm)を浸漬した後、風乾、窒素気流下で500℃−3時間熱処理した。この操作を3回繰り返して三元触媒を模した貴金属触媒を塗布したモノリス触媒を製造した。該モノリス触媒における三元触媒を模した貴金属触媒の付着量は約80gであった。このモノリス触媒からミニ成形体(直径20mm×長さ12.7mm)を切り出した。
「製造例5」モノリス成形体に二層構造の触媒を塗布したモノリス触媒の製造
製造例2のNOx酸化触媒160g、及びコロイダルシリカ16gを蒸留水2Lに加え、攪拌して、スラリーを調整した(調整液1)。また、製造例3のNOx選択還元触媒160g、及びコロイダルシリカ16gを蒸留水2Lに加え、攪拌して、スラリーを調整した(調整液2)。調整液1に、市販のコージェライトモノリス成形体(4.5mil/400cpsi、直径143.8mm×長さ118mm)を浸漬した後、風乾、窒素気流下で500℃−3時間熱処理した。この操作を3回繰り返してNOx酸化触媒を塗布した。該NOx酸化触媒を塗布したモノリス成形体を調整液2に浸漬した後、風乾、窒素気流下で300℃−3時間熱処理した。この操作を3回繰り返してNOx酸化触媒層の上にNOx選択還元触媒を塗布した二層構造のモノリス触媒を製造した。該モノリス触媒におけNOx酸化触媒の付着量は約80gであり、鉄イオン交換ゼオライトの付着量は約80gであった。このモノリス触媒からミニ成形体(直径10mm×長さ12.7mm)を切り出した。
「実施例1」、「比較例1」リーンバーン模擬ガスの浄化処理
製造例4及び5のモノリス触媒のミニ成形体をそれぞれ石英製の流通式反応管に充填した。それぞれの反応管を外部ヒーターによって150℃〜500℃までの任意の温度に調整した。次に、それぞれの反応管に、プロピレン濃度の低いリーンバーン模擬ガスとプロピレン濃度の高いリーンバーン模擬ガスを交互に流通し、NOx処理を行った。プロピレン濃度の低いリーンバーン模擬ガスは、ヘリウムで濃度調整した一酸化窒素250ppm、酸素10%、水蒸気10%、プロピレン400ppm含有ガスであり流量は毎分500mLとした。プロピレン濃度の高いリーンバーン模擬ガスは、ヘリウムで濃度調整した一酸化窒素250ppm、酸素10%、水蒸気10%、プロピレン4000ppm含有ガスであり流量は毎分100mLとした。そして、プロピレン濃度の低いリーンバーンの模擬ガスとプロピレン濃度の高いリーンバーンの模擬ガスの供給サイクルは、10分:1分とした。排ガスをサンプリングし、NOx浄化率と窒素の選択率を測定した。結果を表1に示した。
Figure 2008279352
表1に示すように180℃から500℃に渡って、80%以上の高いNOx浄化率が得られた。また、窒素の選択率は、180〜200℃で約10%、250〜500℃で約90%であった。
以上のことから、本発明浄化用触媒は、リーンバーン排ガス中のNOxを低温領域から中温領域に渡って効率よく浄化できることがわかる。
本発明浄化用触媒は、ディーゼル排NOx浄化方法として有用である。

Claims (2)

  1. モノリス成形体の内壁上に、(1)メソポーラス材料に白金族元素を担持した触媒を主成分とするNOx酸化触媒と、(2)陽イオン交換ゼオライトを主成分とするNOx選択還元触媒とを、上記(1)〜(2)の順に積層してなることを特徴とするリーンバーン自動車排NOx用浄化触媒。
  2. 該陽イオンが、遷移金属イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンから選ばれた少なくとも1種類以上の陽イオンであることを特徴とする請求項1に記載のリーンバーン自動車排NOx用浄化触媒。
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