以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態1を説明するのに先立って、本発明者が本発明をするのに検討した2種のゲート絶縁膜プロセスおよびその課題を説明する。
図58(a)は、その製造工程中における半導体基板50の部分断面図を示している。まず、半導体基板50に溝を掘り、その溝内に酸化シリコン膜等からなる絶縁膜を埋め込むことにより、半導体基板50の主面に、例えば溝型の分離部51を形成する。続いて、半導体基板50に対して熱酸化処理等を施すことにより、半導体基板50の主面(活性領域)上に第1の酸化シリコン膜52を形成した後、その酸化シリコン膜52上にそれに直接接した状態で、厚膜部が覆われ、薄膜部が露出されるようなフォトレジスト膜53を形成し、さらに、そのフォトレジスト膜53をエッチングマクスとして、薄膜部の第1の酸化シリコン膜52を除去する。
続いて、フォトレジスト膜53をアッシング法によって除去することにより、図58(b)に示す断面構造を得る。その後、洗浄処理を施す。この洗浄処理においては、例えば第1洗浄処理(SC1)および第2洗浄処理(SC2)が施される。第1洗浄処理(SC1)は、主として異物の除去を目的とした洗浄処理であって、洗浄液として、例えばNH3/H2O2が使用される。また、第2洗浄処理(SC2)は、主として金属の除去を目的とした洗浄処理であって、洗浄液として、例えばHCl/H2O2が使用される。
その後、半導体基板50の主面を含む全体に前洗浄処理を施す。この前洗浄処理は、例えば薄膜部における半導体基板50の主面上に形成された自然酸化膜やフォトレジスト膜除去時のダメージを低減または無くし、厚膜部における第1の酸化シリコン膜のフォトレジスト膜汚染を低減または無くすための重要な処理である。本発明者の検討結果によれば、このような前洗浄処理は、薄膜部に酸化シリコン膜が存在すると仮定した場合にその酸化シリコン膜を、例えば厚さ1nm程度以上、好ましくは2nm程除去するのに必要な程度施すことが信頼性を向上させる上で必要であることが見出された。本発明者が検討した技術によれば、この前洗浄処理においては、第1洗浄処理および第3洗浄処理(DHF)が施される。第3洗浄処理(DHF)は、主として自然酸化膜の除去を目的とした洗浄処理であって、洗浄液として、例えば希フッ酸が使用される。このような前洗浄処理を施すと、図58(c)に示すように、厚膜部の第1の酸化シリコン膜52の上部も削れてしまう。Δdoxは、その酸化シリコン膜52の削れ量を示している。
このような前洗浄処理の後、半導体基板50に対して第2の熱酸化処理を施すことにより、図58(d)に示すように、半導体基板50の薄膜部に第2の酸化シリコン膜53を形成し、厚膜部の第1の酸化シリコン膜52を薄膜部の第2の酸化シリコン膜53よりも相対的に厚く形成する。その後、通常の電界効果トランジスタの形成方法と同様にして第1,第2の酸化シリコン膜上にゲート電極を形成する。
ところで、本発明者は、上述の2種ゲート絶縁膜プロセスにおいて、以下の課題があることを実験結果に基づいて見出した。すなわち、上記前洗浄処理に際し、第1の酸化シリコン膜52の上部が削れ、第1の酸化シリコン膜52に潜在すると思われるウィークスポットが表出し、さらには拡大されて極めて微細な孔が形成される。この微細な孔は、完成後の第2の酸化シリコン膜52上にゲート電極が形成されるとその応力によってさらに拡大される。これらにより、高耐圧が必要とされる第1の酸化シリコン膜52の膜質が劣化し、耐圧が確保できなくなってしまう課題がある。
そこで、本発明においては、2種ゲート絶縁膜プロセスにおいて、上記高耐圧が要求される厚膜部の酸化シリコン膜と、これをパターニングするためのフォトレジスト膜との間に他の絶縁膜を介在させるようにした。これにより、前洗浄処理時における厚膜部の酸化シリコン膜の削れ量を極めて少なくすることができる。このため、その厚膜部の酸化シリコン膜に潜在すると思われるウィークスポットの表出を低減または防止できる。また、フォトレジスト膜が厚膜部の酸化シリコン膜に直接接触しないので、フォトレジスト膜による厚膜部の酸化シリコン膜の汚染を低減または防止できる。さらに、フォトレジスト膜の下において厚膜部の酸化シリコン膜の上に、他の絶縁膜が形成されていることからフォトレジスト膜を除去する際に下地膜(厚膜部の酸化シリコン膜)へのダメージを低減することができる。
次に、このような本発明の技術思想を図1(a)〜(d)によって説明する。なお、図1(a)〜(d)は同じ位置の半導体基板の要部断面図を示している。
まず、図1(a)に示すように、半導体基板1に浅溝2を掘り、その浅溝2内に酸化シリコン膜3等を埋め込むことにより、半導体基板1の主面に、例えば溝型の素子分離領域(トレンチアイソレーション)を形成する。続いて、半導体基板1に対して熱酸化処理等を施すことにより、半導体基板1の主面(活性領域)上に酸化シリコン膜6を形成した後、その酸化シリコン膜6上にそれに直接接した状態で、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition )法等によって酸化シリコン膜7を堆積し、さらに、その上に直接接した状態で、厚膜部が覆われ、薄膜部が露出されるようなフォトレジストパターン(マスキング膜、マスキングパターン)を形成し、さらに、そのフォトレジストパターン8をエッチングマクスとして、薄膜部の酸化シリコン膜6および7を除去する。
続いて、フォトレジストパターン8をアッシング法によって除去することにより、図1(b)に示す断面構造を得る。この際、フォトレジストパターン8の下において酸化シリコン膜6上に酸化シリコン膜7が形成されているので、酸化シリコン膜6へのダメージを低減できる。洗浄処理を施す。この裏面洗浄処理においては、例えば第1洗浄処理(SC1)および第2洗浄処理(SC2)が施される。第1洗浄処理および第2洗浄処理は、上記発明者検討の2種ゲート絶縁膜プロセスと同様なので説明を省略する。
次いで、半導体基板1の主面を含む全体に対して、上記発明者検討の2種ゲート絶縁膜プロセスと同様(上記第1洗浄および第3洗浄(DHF))の前洗浄処理を施す。これにより、例えば薄膜部における半導体基板1の主面上に形成された自然酸化膜やフォトレジスト膜除去時のダメージを低減または無くすことができる。本発明の技術思想では、厚膜部の酸化シリコン膜6がフォトレジストパターン8に直接接触しないので、フォトレジスト膜による酸化シリコン膜6の汚染を低減または防止できる。したがって、前洗浄処理に際して酸化シリコン膜6のフォトレジスト膜汚染はあまり考慮しなくて済む。
このような前洗浄処理を施すと、CVD法によって形成された酸化シリコン膜7の方が、熱酸化法で形成された酸化シリコン膜6よりもエッチング速度が速いことから酸化シリコン膜7を主にエッチング除去することが可能となる。この場合の前洗浄処理に際しても図1(c)に示すように、厚膜部の酸化シリコン膜6の上部がΔdox程度削れてしまうが、この場合、その削れ量を、上記したウィークスポットが表出しない程度となるように極めて小さくすることができる。したがって、高耐圧が要求される厚膜部のゲート絶縁膜の耐圧を確保することが可能となる。
このような前洗浄処理の後、半導体基板1に対して第2の熱酸化処理を施すことにより、図1(d)に示すように、相対的に厚い酸化シリコン膜9aを厚膜部に形成し、それよりも相対的に薄い酸化シリコン膜9bを薄膜部に形成する。この酸化シリコン膜9a、9bはいずれも電界効果トランジスタのゲート絶縁膜として使用される。その後、通常の電界効果トランジスタの形成方法と同様にして酸化シリコン膜9a、9b上にゲート電極を形成する。
次に、図1に示す本発明の技術思想の2種ゲート絶縁膜プロセスを用いた場合の酸化シリコン膜9aの耐圧測定結果を図2(a)、(b)に示す。また、比較のため、図58に示す上記本発明者検討の2種ゲート絶縁膜プロセスを用いた場合の酸化シリコン膜52の耐圧測定結果を図3(a)、(b)、(c)、(d)に示す。図3の(a)、(b)は酸化シリコン膜6の削れ量Δdox=1nmの結果であり、(c)、(d)はΔdox=2nmの結果である。図3より酸化シリコン膜9aの耐圧は酸化シリコン膜6の削れ量Δdoxが少ないほど良好であると言える。さらに、比較のため1種ゲート絶縁膜プロセスで形成された酸化シリコン膜の耐圧測定結果を図4(a)、(b)に示す。図2(a)、図3(a)、(c)および図4(a)の横軸は厚膜部に形成された酸化シリコン膜の破壊電界強度を示し、縦軸は欠陥度数を示している。また、図2(b)、図3(b)、(d)および図4(b)の横軸は厚膜部に形成された酸化シリコン膜の電界強度を示し、縦軸はゲート電極と半導体基板との間に流れるゲート電流を示している。
ここでは、上記した酸化シリコン膜9a、52上に、多結晶シリコン膜およびタングステンシリサイド膜を順次成膜し、専用のフォトマスクを用いて酸化シリコン膜9a、52の面積Sが1cm2となるキャパシタを形成した。酸化シリコン膜9aの厚さdoxは、例えば8.9nm程度、上記削れ量Δdoxは、例えば1nm程度である。また、酸化シリコン膜52の厚さdoxは、例えば、8.2〜8.3nm程度、上記削れ量Δdoxは、例えば1〜2nm程度である。さらに、1種ゲート絶縁膜プロセスで形成された酸化シリコン膜の厚さdoxは、例えば8.5nm程度である。この図2〜図4から分かるように、本発明の技術思想を用いることにより、酸化シリコン膜9aの耐圧が1種ゲート絶縁膜プロセスで形成した酸化シリコン膜と同等にまで向上することが分かる。すなわち、図2に示すように、図1に示す本発明の技術思想を用いると、図58に示すプロセスに比べて厚膜部の削れ量Δdoxを小さく(〜0.2nm)できるので、本発明の技術思想によれば、前洗浄処理時に酸化シリコン膜6中のウィークスポットの表出し、さらにはそれが拡大され微細な孔が形成されるのを低減または防止することができ、厚膜部の酸化シリコン膜9aの膜質を向上させることができる。
また、図5は、本発明者の実験結果によって得られた図であって、前洗浄処理(前記第1洗浄)後の薄膜部における酸化シリコン膜の厚さ方向のエッチング量(洗浄時間と等価)と、半導体基板上に残される酸化シリコン膜の膜厚との関係を示している。この図5から分かるように、上記前洗浄処理は、薄膜部に酸化シリコン膜が存在すると仮定した場合にその酸化シリコン膜を、例えば厚さ1nm程度以上、好ましくは2nm程度除去するのに必要な程度施すことが信頼性を向上させる上で必要であることが分かる。
また、図6および図7は、それぞれ上記酸化シリコン膜6上に酸化シリコン膜7が残されない場合(本発明の技術思想)と残される場合とでゲート電流とゲート電圧との関係(I−V特性)を測定した結果である。酸化シリコン膜6上に酸化シリコン膜7が残されていない図6においては、I−V特性が変動しない。これに対し、酸化シリコン膜6上に酸化シリコン膜7が残されている図7においては、I−V特性が変動し、電界効果トランジスタの動作安定性が低下することが分かる。したがって、酸化シリコン膜7を残さないようにすることが好ましいことが分かる。
また、図8は、上記前洗浄処理時における厚膜部の酸化シリコン膜のエッチング削れ量と欠陥密度との関係を示している。黒丸は、本発明の技術思想の2種ゲート絶縁膜プロセスにおける厚膜部の酸化シリコン膜の欠陥密度の測定点を示し、白丸は、1種ゲート絶縁膜プロセスにおける酸化シリコン膜の欠陥密度の測定点を示している。この図8から分かるように、本発明のプロセスを用いて実質的に酸化シリコン膜6のエッチング削れ量を少なくすることが可能になるため、欠陥密度も低減することが分かる。本発明者の検討によれば、その削れ量は、1nmよりも小さい量、好ましくは、0.2〜0.5nm程度が良い。すなわち、本発明によれば、厚膜部の酸化シリコン膜の削れ量を1nm以下にすることができるので、厚膜部のゲート絶縁膜の信頼性を向上させることができる。
また、図9は、前洗浄処理に際して酸化シリコン膜を1nm程度の厚さ相当削った場合における薄膜部側の酸化シリコン膜の破壊電界強度と欠陥度数との関係を示しており、同図(a)は1種ゲート絶縁膜プロセス、(b)は本発明の技術思想である2種ゲート絶縁膜プロセスの場合を示している。この図9から分かるように、薄膜部の酸化シリコン膜の破壊電界強度に関して、本発明の技術思想を用いた場合は、1種ゲート絶縁膜プロセスを用いた場合と同程度の結果が得られることが分かる。
また、図10および図11は、本発明の技術思想を、電界効果トランジスタのゲート電極の上部およびソース・ドレイン用の半導体領域の上部にシリサイド層を形成する、いわゆるサリサイドプロセスに適用した場合における酸化シリコン膜9aの耐圧測定結果と、上記本発明者検討の2種ゲート絶縁膜プロセスをサリサイドプロセスに適用した場合における酸化シリコン膜52の耐圧測定結果とをそれぞれ示している。図10および図11の(a)は、ゲート電極がサリサイド構造の場合のみを示し、図10および図11の(b)は、ゲート電極がサリサイド構造の場合(測定点を三角印で示す)と、ポリサイド構造(多結晶シリコン膜上にシリサイド層が形成された構造)の場合(測定点を丸印または四角印で示す)との両方を示している。なお、ポリサイド構造のゲート電極において、シリサイド層は、例えばタングステンシリサイドとした。
図11から本発明者が検討した2種ゲート絶縁膜プロセスをサリサイドプロセスやポリサイドプロセスに適用すると、厚膜部における酸化シリコン膜52の耐圧が劣化することが分かる。一方、図10から本発明の技術思想においては、サリサイドプロセスやポリサイドプロセスに適用した場合であっても、厚膜部における酸化シリコン膜9aの耐圧を向上させることができる。特に、サリサイドプロセスの場合は、その効果が顕著である。
また、図12はゲート絶縁膜に定電界強度のストレスを印加し続けたとき破線までの時間を測定したTDDP(Time Dependence Dielectric Breakdown)評価結果を示す。図12には上記前洗浄処理による厚膜部における酸化シリコン膜6の削れ量Δdox毎の破壊時間(破壊が発生するまでの時間)と累積破壊率との関係を示している。丸印は、Δdoxが1nm程度の場合、三角印は、Δdoxが0.4nm程度、四角印は、Δdoxが0.2nm程度の場合を示している。この図12から削れ量Δdoxが小さい程、破壊時間が長い、すなわち、寿命が長いことが分かる。
さらに、図13は、厚膜部に酸化シリコン膜6が残った状態で半導体基板に対して酸化処理を施したときの完成膜厚(酸化シリコン膜9a)における酸化シリコン膜6の膜厚依存性を示している。この図13から酸化シリコン膜6が残っている状態で半導体基板に対して酸化処理を施した場合は、厚膜部の酸化シリコン膜9aの方が、半導体基板上に形成された薄膜部の酸化シリコン膜9bよりも必ず厚くなることが分かる。すなわち、最初に酸化シリコン膜6を形成した領域は厚膜部になる。
次に、本発明の一実施の形態であるCMOSデバイスの製造方法を図14〜図26を用いて説明する。図中、QnはnチャネルMISFET、QpはpチャネルMISFETを示し、A領域は厚いゲート絶縁膜が形成される領域、B領域は薄いゲート絶縁膜が形成される領域を示す。
まず、図14に示すように、比抵抗が10Ωcm程度のシリコン単結晶で構成された半導体基板1を用意し、この半導体基板1の主面に浅溝2を形成する。浅溝2の深さは、例えば約0.35μm程度である。その後、半導体基板1に熱酸化処理を施し、酸化シリコン膜(図示せず)を形成する。さらに酸化シリコン膜3を堆積した後、これを化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing :CMP)法により研磨して浅溝2内にのみ酸化シリコン膜3を残すことにより素子分離領域(トレンチアイソレーション)を形成する。
CMP法による研磨を行う際、活性領域が研磨されるのを防止したり、酸化シリコン膜3の表面が活性領域の表面よりも低くなるのを防止したりするために、各種工夫が必要であるが、ここではその説明を省略する。
次に、nチャネルMISFETを形成する領域にp形不純物、例えばB(ホウ素)をイオン打ち込みしてp形ウエル4を形成し、pチャネルMISFETを形成する領域にn形不純物、例えばP(リン)をイオン打ち込みしてn形ウエル5を形成する。
続いて、図15に示すように、半導体基板1に対して熱酸化処理等を施すことにより、半導体基板1の主面に、例えば酸化シリコン膜からなる犠牲酸化膜20を形成した後、次のようにしてnチャネルMISFETおよびpチャネルMISFETのしきい値電圧を調整する。
まず、図16に示すように、半導体基板1の主面上に、nチャネルMISFETの形成領域が露出され、それ以外が覆われるフォトレジストパターン21aを形成した後、これをマクスとして、例えばBF2(フッ化ホウ素)をpウエル4のチャネル領域に打ち込む。続いて、フォトレジストパターン21aを除去した後、図17に示すように、半導体基板1の主面上に、pチャネルMISFETの形成領域が露出され、それ以外が覆われるフォトレジストパターン21bを形成した後、これをマクスとして、例えばP(リン)をnウエル5のチャネル領域に打ち込む。その後、フォトレジストパターン21b除去し、半導体基板1に対して熱処理を施すことにより、図18に示すように、半導体基板1にしきい値電圧制御層22a、22bを形成する。しきい値電圧制御層の厚さは、例えば約20nm程度である。
次に、図19に示すように、半導体基板1の表面をHF(フッ酸)系の水溶液を用いて洗浄した後、半導体基板1に熱酸化処理を施して半導体基板1の表面に約7〜8nm程度の厚さの酸化シリコン膜6を形成する。
次に、図20に示すように、酸化シリコン膜6の上層に約630℃の温度による低圧の化学的気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法によって、約5〜15nm程度の酸化シリコン膜7を堆積する。この酸化シリコン膜7は有機ソース(例えば、Si(OC2H5)4)の熱分解反応によって形成される。酸化シリコン膜7を堆積する前に、酸化シリコン膜6の表面をフッ酸系の水溶液を用いて洗浄して、酸化シリコン膜6を約1nm程度除去してもよい。なお、酸化シリコン膜7は、無機ソース(例えば、SiH4、SiH2Cl2)を用いたCVD法によって形成してもよい。
次に、図21に示すように、フォトレジストパターン8をマスクとして薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bの酸化シリコン膜7および酸化シリコン膜6を順次除去する。上記フォトレジストパターン8は、通常のフォトリソグラフィ技術によって形成されている。すなわち、フォトレジストパターン8は、フォトレジスト膜を塗布した後、そのフォトレジスト膜に対して露光および現像処理を施すことによりパターニングされている。
次に、図22に示すように、上記フォトレジストパターン8を除去した後、続いて、例えば、70℃のNH3:H2O2:H2O=2:5:100の水溶液を用いて5分程度の洗浄を行ない、次いで希フッ酸液によって、主として酸化シリコン膜7を除去する。この際、CVD法によって形成された酸化シリコン膜7のエッチング速度が熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜6のエッチング速度の約15倍程度と大きいことから酸化シリコン膜7を選択的に除去することが可能となる。なお、酸化シリコン膜6は膜中に欠陥を作り込まない程度に除去してもよい。
次に、図23に示すように、半導体基板1に熱酸化処理を施して、酸化シリコン膜6が形成されている領域Aに厚いゲート絶縁膜を構成する厚さ約8nm程度の酸化シリコン膜9aを形成し、半導体基板1の表面が露出している領域Bに薄いゲート絶縁膜を構成する厚さ約3〜4nm程度の酸化シリコン膜9bを形成する。ここで、上記熱酸化処理後にNOまたはN2O雰囲気で酸窒化処理を施すことにより、酸化シリコン膜9a,9bの膜中に窒素を導入してもよい。これにより、ホットキャリア効果に対する耐性が向上する。
次に、図24に示すように、半導体基板1上に、例えばPなどのn形不純物がドープされた多結晶シリコン膜をCVD法で堆積した後、フォトレジストパターンをマスクとしてこの多結晶シリコン膜をエッチングし、多結晶シリコン膜によって構成されるゲート電極10を形成する。
次に、ゲート電極10をマスクとしてp形ウエル4にn形不純物(例えば、P)を導入し、nチャネルMISFETQnのソース、ドレインの一部を構成する低濃度のn−形半導体領域11aを形成する。同様に、ゲート電極10をマスクとしてn形ウエル5にp形不純物(例えば、BF2)を導入し、pチャネルMISFETQpのソース、ドレインの一部を構成する低濃度のp−形半導体領域12aを形成する。
次いで、図25に示すように、半導体基板1上にCVD法で堆積した酸化シリコン膜をRIE(Reactive Ion Etching)法でエッチンングして、ゲート電極10の側壁にサイドウォールスペーサ13を形成する。
次に、ゲート電極10およびサイドウォールスペーサ13をマスクとして、p形ウエル4にn形不純物(例えば、As(砒素))を導入し、nチャネルMISFETQnのソース、ドレインの他の一部を構成する高濃度のn+形半導体領域11bを形成する。同様に、ゲート電極10およびサイドウォールスペーサ13をマスクとして、n形ウエル5にp形不純物(例えば、BF2)を導入し、pチャネルMISFETQpのソース、ドレインの他の一部を構成する高濃度のp+形半導体領域12bを形成する。
次に、自己整合法によって低抵抗のチタンシリサイド膜14をnチャネルMISFETQnのゲート電極10の表面およびn+形半導体領域11bの表面、ならびにpチャネルMISFETQpのゲート電極10の表面およびp+形半導体領域12bの表面に形成する。すなわち、n+形半導体領域11b、p+形半導体領域12bおよびゲート電極10の上面を露出させた状態で、半導体基板1の主面上に、例えばチタン等のような金属膜をスパッタリング法またはCVD法等によって堆積した後、半導体基板1に対して熱処理を施すことにより、上記金属膜とn+形半導体領域11b、p+形半導体領域12bおよびゲート電極10との接触部にチタンシリサイド膜14を形成する。ただし、ここで形成するシリサイド膜は、チタンシリサイド膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばコバルトシリサイド膜でもよい。
その後、図26に示すように、半導体基板1上に層間絶縁膜15を形成した後、層間絶縁膜15をエッチングしてコンタクトホール16を開孔した後、層間絶縁膜15上に堆積した金属膜(図示せず)をエッチングして配線層17を形成することにより、CMOSデバイスが完成する。
なお、酸化シリコン膜7の膜厚、および酸化シリコン膜7のエッチング量は重要であるため、必要に応じて酸化シリコン膜7を成膜する際のモニターダミーによる膜厚管理、および上記モニターダミーを用いたエッチング量の定期的な管理を行ってもよい。
図27は、酸化シリコン膜9aの耐圧測定結果を示すグラフ図である。前記図14〜図23に示した製造工程によって作成した酸化シリコン膜9a上に多結晶シリコン膜およびタングステンシリサイド(WSi)膜を順次成膜し、専用のフォトマスクを用いて酸化シリコン膜9aの面積が100mm2となるキャパシタを作製した。ただし、nチャネルMISFETを形成する領域のみの評価のため、p形ウエル4のみを形成し、n形ウエル5は形成していない。図27の上段には酸化シリコン膜6の上層に7.5nm、10nm、15nmの酸化シリコン膜7を成膜した積層膜の耐圧を示し、下段には酸化シリコン膜7を成膜する前に酸化シリコン膜6を洗浄したときの耐圧を示す。なお、上記洗浄により酸化シリコン膜6は約1nm程度除去される。
図27に示すように、酸化シリコン膜7を積層することにより、耐圧が著しく向上して、良好な酸化シリコン膜9aが作製されることが分かる。また、酸化シリコン膜7を成膜する前であれば、酸化シリコン膜6を洗浄しても同等な耐圧が得られており、酸化シリコン膜6を成膜した後または酸化シリコン膜7を成膜する前に洗浄しても良いことがわかる。
図28に、酸化シリコン膜7の膜厚と酸化シリコン膜9aの膜厚との関係を示す。ここでは、酸化シリコン膜6に適用すると約1nmエッチングされる洗浄をフォトレジストパターン8の除去後に行っている。
7nmの酸化シリコン膜6を形成した後、洗浄を行わずに基板上4nmの酸化シリコン膜が形成される熱酸化処理を施すと酸化シリコン膜9aの厚さは9.1nmである。従って、この値と酸化シリコン膜7を積層しないときの酸化シリコン膜9aの膜厚との差が洗浄によって酸化シリコン膜6がエッチングされた量となる。酸化シリコン膜7を形成しない場合には、酸化シリコン膜9aの厚さは8.1nmであり、上記値9.1nmとの差である1nmが洗浄による酸化シリコン膜6の削れ量となる。同様に、酸化シリコン膜7が7.5nmの時は削れ量が0.4nm、酸化シリコン膜7が10nmの時は削れ量が0.2nm、酸化シリコン膜7が15nmの時は削れ量が0nmとなる。
前記図27に示したように、7.5〜10nmの酸化シリコン膜7を積層したとき良好な耐圧が得られることから、酸化シリコン膜6はの削れ量Δdoxは0.2〜0.4nmの削れ量であれば、欠陥は殆ど発生しないことが分かる。このように、フォトレジストパターン8を除去した後の洗浄量を減らすことなく良好な酸化シリコン膜9a,9bが得られる。
図29は、本発明の技術思想を用いたDRAM(Dynamic Random Access Memory)が形成された半導体チップ1Cの平面図である。この半導体チップ1Cの主面には、その主面を4等分するように平面十字状の周辺回路部23が配置されている。この周辺回路部23によって分けられた4つの領域はメモリセル部24となっている。このような半導体チップ1Cにおいてゲート絶縁膜が相対的に厚い電界効果トランジスタが形成された厚膜部にハッチングが付してある。厚膜部の領域Aは、周辺回路部23の一部およびメモリセル部24を占有している。これに対し、ゲート絶縁膜が相対的に薄い電界効果トランジスタが形成された薄膜部の領域Bは、周辺回路部23のみを占有しており、面積比では厚膜部の領域Aの方が薄膜部の領域Bよりも約30倍大きい。
このように、本実施の形態によれば、厚さの異なる2種類のゲート絶縁膜を形成する際、酸化シリコン膜6上に直接フォトレジストパターン8が形成されず、CVD法によって形成された酸化シリコン膜7を介在して形成されるので、フォトレジスト膜からの汚染はCVD法によって形成された酸化シリコン膜7に付着することになる。この後、上記酸化シリコン膜7を選択的に除去することにより、酸化シリコン膜6に及ぼすフォトレジスト膜による汚染および酸化シリコン膜7中の固定電荷等の影響を回避することができ、さらに、レジスト除去工程とその後の洗浄工程におけるダメージ等の影響も避けることができる。また、酸化シリコン膜9a,9bの膜中に窒素を導入することにより、ホットキャリア効果に対する耐性を向上させることができる。
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を図30〜図33を用いて説明する。
まず、前記実施の形態1において前記図16〜図18を用いて説明した製造方法と同様に、しきい値電圧制御層を形成する。
次に、図30に示すように、半導体基板1の表面をフッ酸系の水溶液を用いて洗浄した後、CVD法によって酸化シリコン膜6aを成膜する。なお、酸化シリコン膜6aを成膜する際には、半導体基板1への汚染の巻き込み防止または酸化シリコン膜6aと半導体基板1との間の界面特性を良好にするため、1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。上記下地膜の成膜方法としては、酸化シリコン膜6aを成膜する前に700℃程度の低温短時間枚葉酸化処理を施す、または酸化シリコン膜6aの成膜時のシーケンスを高温酸化雰囲気中で放置した後に成膜を開始するように変更する等が考えられる。この後、酸化シリコン膜6aの上層に、酸化シリコン膜6aと組成の異なる酸化シリコン膜7aをCVD法によって成膜する。
次に、図31に示すように、フォトレジストパターン8をマスクとして薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bの酸化シリコン膜7aおよび酸化シリコン膜6aを順次除去する。
次に、図32に示すように、上記フォトレジストパターン8を除去した後、主として酸化シリコン膜7aを除去する。次いで、図33に示すように、CVD法によって半導体基板1上に酸化シリコン膜9cを成膜する。なお、酸化シリコン膜9cを成膜する前に、露出している半導体基板1の表面に1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。これにより、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aには酸化シリコン膜6aと酸化シリコン膜9cとからなる積層膜が形成され、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bには酸化シリコン膜9cのみが形成される。
(実施の形態3)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を説明する。
本実施の形態3では、まず、前記実施の形態1に記載した製造方法で前記図22に示したように、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aに酸化シリコン膜6を設け、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bの半導体基板1の表面を露出させる。
この後、酸化シリコン膜以外の絶縁膜、例えば窒化シリコン(SiN)系の膜、酸化タンタル(Ta2O5)系の膜または酸化チタン(TiO2)系の膜などを半導体基板1上に成膜する。これらの各種膜の成膜方法としては、CVD法、プラズマCVD法またはJVD(Jet Vapor Deposition)法などがある。なお、絶縁膜を成膜する前に、露出している半導体基板1の表面に1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。これにより、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aには酸化シリコン膜6と上記絶縁膜とからなる積層膜が形成され、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bには上記絶縁膜のみが形成される。
すなわち、厚膜部の領域Aのゲート絶縁膜の一部および薄膜部の領域Bのゲート絶縁膜の全部を、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い材料によって形成することにより、ゲート絶縁膜を酸化シリコン膜のみで形成した場合に比べて、MISFETの特性を同等程度に確保したまま、ゲート絶縁膜の膜厚を厚くすることができる。したがって、ゲート絶縁膜の形成制御を容易にすることが可能となる。また、ゲート電極と半導体基板との間にゲート電流(トンネル電流)が流れるのを抑制または防止することが可能となる。
(実施の形態4)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を説明する。
本実施の形態4では、まず、前記実施の形態2に記載した製造方法で前記図32に示したように、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aに酸化シリコン膜6aを設け、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bの半導体基板1の表面を露出させる。
この後、酸化シリコン膜以外の絶縁膜、例えばSiN系の膜、Ta2O5系の膜またはTiO2系の膜などを半導体基板1上に成膜する。これらの各種膜の成膜方法としては、CVD法、プラズマCVD法またはJVD法などがある。なお、絶縁膜を成膜する前に、露出している半導体基板1の表面に1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。これにより、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aには酸化シリコン膜6aと上記絶縁膜とからなる積層膜が形成され、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bには上記絶縁膜のみが形成される。したがって、前記実施の形態4と同様に、次の効果が得られる。すなわち、ゲート絶縁膜の形成制御を容易にすることが可能となる。また、ゲート電極と半導体基板との間にゲート電流(トンネル電流)が流れるのを抑制または防止することが可能となる。
(実施の形態5)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を説明する。
本発明の形態5では、まず、前記実施の形態2に記載した製造方法で前記図33に示したように、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aに酸化シリコン膜6aと酸化シリコン膜9cとからなる積層膜を形成し、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bに酸化シリコン膜9cのみを形成する。
この後、熱窒化処理、プラズマ窒化処理またはラジカル窒化処理を半導体基板1に施して、酸化シリコン膜6aと半導体基板1との界面および酸化シリコン膜9cと半導体基板1との界面の特性を向上させる。
(実施の形態6)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を説明する。
本発明の形態6では、まず、前記実施の形態2に記載した製造方法で前記図30に示したように、半導体基板1の表面をフッ酸系の水溶液を用いて洗浄した後、CVD法によって酸化シリコン膜6aを成膜する。なお、酸化シリコン膜6aを成膜する際には、半導体基板1への汚染の巻き込み防止または酸化シリコン膜6aと半導体基板1との間の界面特性を良好にするため、1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。
次に、熱窒化処理、プラズマ窒化処理またはラジカル窒化処理を半導体基板1に施して、酸化シリコン膜6aの一部を改質する。
この後は、前記実施の形態2に記載した製造方法と同様にして、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aには酸化シリコン膜6aの改質膜と酸化シリコン膜9cとからなる積層膜が形成され、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bには酸化シリコン膜9cのみが形成される。
次に、上記酸化シリコン膜6aの改質処理(プラズマ窒化処理またはラジカル窒化処理)に用いる製造装置の一例を図34に示す。図34は、RPN(RemotePlasma Nitridation )装置25を示している。装置内に導入された窒素ガスは、プラズマ発生部25aを通じてプラズマ状態に変換されて、ウエハステージ25b上に載置された半導体基板1(半導体ウエハ)の主面に供給されるようになっている。これにより、窒素ラジカル等と半導体基板1の主面上の絶縁膜(酸化シリコン膜6a等)とが反応し、窒化膜(窒化層)が形成される。図35に、RPN処理を行ったときの膜内における窒素元素のSIMS(Secondary Ion MassSpectrometry=二次イオン質量分析法)プロファイルを示すR.Kraft,T.P.Schneider,W.W.Dostalik,andS.HattangadyJ.Vac.Sci.Technol.B15(4),p967,Jul/Aug.1997)。また、比較のため図36に酸化窒素(NO)ガスによる窒化膜のSIMSプロファイルを示す。これら図35および図36からRPN処理を行った場合は、NO酸窒化膜と比べて、酸素と窒素の分布が逆になっており、窒素が、より表面側に分布することが分かる。この方法を用いた場合は、極めて薄い窒化膜を容易に形成することができる。また、窒素と酸化シリコンとをしっかりと結合させることができるので、エッチングに対する耐性を向上させることができる。
(実施の形態7)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を図37〜図40を用いて説明する。
まず、前記実施の形態1において前記図16〜図18を用いて説明した製造方法と同様に、しきい値電圧制御層を形成する。
次に、図37に示すように、半導体基板1の表面をフッ酸系の水溶液を用いて洗浄した後、半導体基板1の表面に酸化シリコン膜6を形成し、次いで酸化シリコン膜6の上層にCVD法によって、酸化シリコン膜7を堆積する。
次に、図38に示すように、フォトレジストパターン8をマスクとして、バッファードフッ酸液を用い主として薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bの酸化シリコン膜7のエッチングを行う。
次いで、MISFETのしきい値電圧制御用の不純物18を半導体基板1へ打ち込み、チャネル層19を形成する。ここでの上記不純物18の打ち込みは、薄いゲート絶縁膜が形成される領域BのnチャネルMISFETの形成される領域およびpチャネルMISFETの形成される領域に同様に打ち込まれるため、前記図16〜図18を用いて説明したしきい値電圧制御層を形成するために打ち込まれた不純物に対するカウンター打ち込みの役割を担う。
次いで、前記エッチングで残しておいた酸化シリコン6をバッファードフッ酸液を用いて除去する。
次に、図39に示すように、フォトレジストパターン8を除去した後、続いて、例えば、70℃のNH3:H2O2:H2O=2:5:100の水溶液を用いて5分程度の洗浄を行ない、次いで希フッ酸液によって、主として酸化シリコン膜7を除去する。
次に、図40に示すように、半導体基板1に熱酸化処理を施して、酸化シリコン膜6が形成されている領域Aに厚いゲート絶縁膜を構成する酸化シリコン膜9aを形成し、半導体基板1の表面が露出している領域Bに薄いゲート絶縁膜を構成する酸化シリコン膜9bを形成する。
なお、酸化シリコン膜9a,9bにかえて、CVD法などによって、酸化シリコン膜、SiN系の膜、Ta2O5系の膜またはTiO2系の膜などを半導体基板1上に成膜してもよく、これら絶縁膜を成膜する前に、露出している半導体基板1の表面に熱処理によって1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。
(実施の形態8)
本発明の他の実施の形態であるMISFETのゲート絶縁膜の製造方法を図41〜図44を用いて説明する。
まず、前記実施の形態1において前記図16〜図18を用いて説明した製造方法と同様に、しきい値電圧制御層を形成する。
次に、図41に示すように、半導体基板1の表面をフッ酸系の水溶液を用いて洗浄した後、CVD法によって酸化シリコン膜6aを成膜する。なお、酸化シリコン膜6aを成膜する際には、半導体基板1への汚染の巻き込み防止または酸化シリコン膜6aと半導体基板1との間の界面特性を良好にするため、1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。この後、酸化シリコン膜6aの上層に、酸化シリコン膜6aと組成の異なる酸化シリコン膜7aをCVD法によって成膜する。
次に、図42に示すように、フォトレジストパターン8をマスクとして、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bの酸化シリコン膜7aのみのエッチングを行う。
次いで、MISFETのしきい値電圧制御用の不純物18を半導体基板1へ打ち込み、チャネル層19を形成する。ここでの上記不純物18の打ち込みは、薄いゲート絶縁膜が形成される領域BのnチャネルMISFETの形成される領域およびpチャネルMISFETの形成される領域に同様に打ち込まれるため、前記図1を用いて説明したしきい値電圧制御層を形成するために打ち込まれた不純物に対するカウンター打ち込みの役割を担う。
次いで、前記エッチングで残しておいた酸化シリコン6aをバッファードフッ酸液を用いて除去する。
次に、図43に示すように、フォトレジストパターン8を除去した後、続いて、例えば、70℃のNH3:H2O2:H2O=2:5:100の水溶液を用いて5分程度の洗浄を行ない、次いで希フッ酸液によって、主として酸化シリコン膜7aを除去する。
次に、図44に示すように、CVD法などによって、絶縁膜、例えばSiN系の膜、Ta2O5系の膜またはTiO2系の膜などを半導体基板1上に成膜する。これら絶縁膜を成膜する前に、露出している半導体基板1の表面に熱処理によって1nm程度の酸化シリコン膜を下地膜として成膜してもよい。これにより、厚いゲート絶縁膜が形成される領域Aには酸化シリコン膜6aと上記絶縁膜とからなる積層膜が形成され、薄いゲート絶縁膜が形成される領域Bには上記絶縁膜のみが形成される。したがって、前記実施の形態4と同様に、次の効果が得られる。すなわち、ゲート絶縁膜の形成制御を容易にすることが可能となる。また、ゲート電極と半導体基板との間にゲート電流(トンネル電流)が流れるのを抑制または防止することが可能となる。
(実施の形態9)
次に、本発明の他の技術思想を図45(a)〜(d)によって説明する。まず、図45(a)に示すように、半導体基板1に対して熱酸化処理等を施すことにより、半導体基板1の主面(活性領域)上に酸化シリコン膜6を形成した後、その酸化シリコン膜6上にそれに直接接した状態で、絶縁膜26を堆積する。この絶縁膜26は、耐酸化性を有し、前洗浄(例えばフッ酸洗浄)ではほとんどエッチングされない性質を有している。また、酸化シリコン膜6よりも薄く形成する。
続いて、絶縁膜26上に直接接した状態で、厚膜部が覆われ、薄膜部が露出されるようなフォトレジストパターン8を形成し、さらに、そのフォトレジストパターン8をエッチングマクスとして、薄膜部の絶縁膜26および酸化シリコン膜6を順次除去する。
その後、フォトレジストパターン8をアッシング法によって除去することにより、図45(b)に示す断面構造を得る。この際、フォトレジストパターン8の下において酸化シリコン膜6上に絶縁膜26が形成されているので、酸化シリコン膜6へのダメージを低減できる。
次いで、半導体基板1の裏面に対して洗浄処理を施す。この裏面洗浄処理においては、前記実施の形態1で説明したように、例えば第1洗浄処理および第2洗浄処理を施す。
続いて、半導体基板1の主面を含む全体に対して、上記発明者検討の2種ゲート絶縁膜プロセスと同様の前洗浄処理を施す。図45(c)は前洗浄処理後の半導体基板1の要部断面を示しており、Δdtは、絶縁膜26の削れ量を示している。これにより、例えば薄膜部における半導体基板1の主面上に形成された自然酸化膜やフォトレジスト膜除去時のダメージを低減または無くすことができる。
ところで、本発明の技術思想においては、前洗浄処理(例えばフッ酸洗浄)に際して、絶縁膜26がほとんどエッチング除去されない。これにより、前洗浄処理時に酸化シリコン膜6中のウィークスポットが表出してしまうのを防止することができるので、高耐圧が要求される厚膜部のゲート絶縁膜の耐圧を確保することが可能となる。また、絶縁膜26が前洗浄処理時のストッパとして機能し、酸化シリコン膜6はそのまま残る。このため、酸化シリコン膜6の厚さの設定精度を向上させることが可能となる。
また、本発明の技術思想においても、前記実施の形態1と同様に、厚膜部の酸化シリコン膜6が絶縁膜26によって覆われフォトレジストパターン8に直接接触しないので、フォトレジスト膜による酸化シリコン膜6の汚染を低減または防止できる。したがって、前記実施の形態1と同様に前洗浄処理に際して酸化シリコン膜6のフォトレジスト膜汚染はあまり考慮しなくて済む。
このような前洗浄処理の後、半導体基板1に対して第2の熱酸化処理を施すことにより、図45(d)に示すように、薄膜部に相対的に薄いゲート絶縁膜を構成する酸化シリコン膜9bを形成する。この際、厚膜部には耐酸化性を有する絶縁膜26が形成されているので膜形成は行われない。したがって、厚膜部の相対的に厚いゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜6とその上に形成された絶縁膜26とで構成される。その後、通常の電界効果トランジスタの形成方法と同様にして絶縁膜26および酸化シリコン膜9b上にゲート電極を形成する。このように、ここで説明した本発明の技術思想においても前記実施の形態1等で説明した発明と同様の効果が得られる。
次に、上記本発明の技術思想を、例えばCMIS(Complementary Metal Insulator Semiconductor )回路を有する半導体集積回路装置の製造方法に適用した場合について説明する。
まず、前記実施の形態1の図14〜図19を用いて説明した半導体集積回路装置の製造工程と同様の工程を経た後、図46に示すように、酸化シリコン膜6上に、絶縁膜26を形成する。絶縁膜26は、耐酸化性および耐洗浄性を有する材料からなり、例えば窒化シリコン膜からなる。絶縁膜26の厚さは、酸化シリコン膜6aより薄く、後述の前洗浄処理に際して除去されない程度に形成されており、例えば0.5〜1.0μm程度である。絶縁膜26の形成方法としては、例えばCVD法またはJVD法等によって酸化シリコン膜上に窒化シリコン系の絶縁膜を堆積させる方法か、あるいはプラズマ窒化処理やラジカル窒化処理等のような前記PRN処理または熱窒化処理により酸化シリコン膜6の表層を改質させる方法等がある。特に、上記改質処理の場合(特にPRN処理を用いた場合)には、非常に薄い絶縁膜26を高い精度で形成することが可能となる。また、絶縁膜26は、窒素と酸化シリコン膜とが結合された状態で形成されることから結合状態が高く、高い耐エッチング性を持つことが可能となる。
続いて、図47に示すように、前記実施の形態1等と同様のフォトレジストパターン8を絶縁膜26上に形成した後、これをエッチングマクスとして、薄膜部の領域Bの絶縁膜26および酸化シリコン膜6を順次エッチング除去する。その後、フォトレジストパターン8を除去した後、前記実施の形態1等と同様の前洗浄処理を施すことにより、図48に示す構造を得る。この前洗浄処理の際、絶縁膜26は、ほとんどエッチング除去されない。したがって、厚膜部の領域Aには酸化シリコン膜6および絶縁膜26が残されている。
次いで、半導体基板1に対して熱酸化処理を施すことにより、図49に示すように、薄膜部の領域Bの半導体基板1の主面上に酸化シリコン膜9bを形成する。一方、厚膜部の領域Aにおいては、耐酸化性の強い絶縁膜26が形成されているために膜は形成されず、酸化シリコン膜6とその上の絶縁膜26とからなる積層膜が形成される。その後、図50に示すように、前記実施の形態1と同様に酸化シリコン膜9bおよび絶縁膜26上にゲート電極10を形成する。これ以降は前記実施の形態1等と同じなので説明を省略する。本実施の形態9においても、厚膜部の領域Aのゲート絶縁膜には、窒化シリコンからなる絶縁膜26が形成されているので、前記実施の形態4と同様に、次の効果が得られる。すなわち、厚膜部におけるゲート絶縁膜の形成制御を容易にすることが可能となる。また、厚膜部のMISFETにおいてゲート電極と半導体基板との間にゲート電流(トンネル電流)が流れるのを抑制または防止することが可能となる。
(実施の形態10)
本実施の形態10は前記実施の形態9の変形例を説明するものである。
まず、図46〜図48の工程を同様に経た後、図51に示すように、半導体基板1上に、誘電率の高い絶縁膜27を形成する。これにより、薄膜部の領域Bには、絶縁膜27で構成されたゲート絶縁膜が形成され、厚膜部の領域Aには、酸化シリコン膜6上に絶縁膜26を介して絶縁膜27が積層されてなるゲート絶縁膜が形成される。絶縁膜27は、例えば絶縁膜26と同様に、CVD法、RPN法またはJVD法によって形成された窒化シリコン系の絶縁膜、あるいは、酸化タンタル(TaxOy:例えばTa2O5)、酸化チタン(TiOx:例えばTiO2)またはSiONからなる。絶縁膜27の厚さは、薄膜部の領域Bのゲート絶縁膜に必要な厚さでよい。本実施の形態27においては、絶縁膜27の誘電率が高いので、あまり薄くしなくても、薄い酸化シリコン膜9b(図49等参照)と同様のMSIFETの性能を得ることができる。したがって、厚膜部の領域Aおよび薄膜部の領域Bのゲート絶縁膜を比較的厚くすることができるので、前記実施の形態4と同様に、膜厚制御性を向上させることができ、また、ゲート電極と半導体基板との間のリーク電流を抑制または防止することが可能となる。その後、図52に示すように、前記実施の形態1と同様に厚膜部の領域Aおよび薄膜部の領域Bの絶縁膜27上にゲート電極10を形成する。これ以降は前記実施の形態1等と同じなので説明を省略する。
(実施の形態11)
本実施の形態11は、MISFETのゲート電極の変形例を説明するものであって、いわゆるデュアルゲート・ポリメタルゲート電極構造を形成する方法を説明するものあり、前記実施の形態1〜10のいずれにも適用できる。
まず、前記実施の形態1等で用いた図14〜図23と同様の工程を経た後、図53に示すように、半導体基板1の主面上に、多結晶シリコン膜28をCVD法等によって堆積する。続いて、図54に示すように、その多結晶シリコン膜28上に、nチャネルMISFET形成領域が露出され、それ以外が覆われるようなフォトレジストパターン29を形成した後、これをマクスとして、フォトレジストパターン29から露出する多結晶シリコン膜28部分に、例えばP(リン)等のような不純物をイオン注入する。これにより、p形ウエル4上の多結晶シリコン膜28部分をn−形にする。その後、そのフォトレジストパターン29を除去した後、図55に示すように、その多結晶シリコン膜28上に、pチャネルMISFET形成領域が露出され、それ以外が覆われるようなフォトレジストパターン30を形成した後、これをマクスとして、フォトレジストパターン30から露出する多結晶シリコン膜28部分に、例えばB(ホウ素)等のような不純物をイオン注入する。これにより、n形ウエル5上の多結晶シリコン膜28部分をp+形にする。
次いで、図56に示すように、多結晶シリコン膜28上に、例えば窒化タングステンや窒化チタン等のような導体膜31をスパッタリング法等によって堆積した後、図57に示すように、その上に、例えばタングステン等からなる導体膜32をスパッタリング法によって形成し、さらにその上に、例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜からなるキャップ用絶縁膜33をCVD法等によって堆積する。導体膜31は、導体膜32中のタングステンと多結晶シリコン膜28中のシリコンとが反応してシリサイド層が形成されてしまうのを抑制する機能を有している。続いて、多結晶シリコン膜28,導体膜31,32およびキャップ用絶縁膜33をフォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術によってパターニングすることにより、前記実施の形態1と同様にゲート電極10およびその上にキャップ用絶縁膜33を形成する。これ以降は前記実施の形態1等と同じなので説明を省略する。
本実施の形態11においても、前記実施の形態1〜10と同様の効果を得ることができる。特に、本実施の形態11のゲート電極構造を、前記実施の形態5,9,10に適用した場合、次の効果を得ることができる。すなわち、前記実施の形態5においては、厚膜部および薄膜部のMISFETにおけるゲート絶縁膜の表層に窒化膜(窒化層)が形成されているので、また、前記実施の形態9,10においては、厚膜部のMISFETにおけるゲート絶縁膜が、酸化シリコン膜6上に窒化シリコンからなる絶縁膜26や27が積み重ねられて構成されているので(図50,図52参照)、ゲート電極10中の拡散係数の高いホウ素が酸化シリコン膜6側に拡散してしまうのを上記窒化層または絶縁膜26や27によって抑制または阻止することができる。したがって、pチャネル形のMISFETの動作信頼性および歩留まりを向上させることが可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば前記実施の形態1〜11においては、例えばCMIS回路を有する半導体集積回路装置およびDRAMに本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々適用可能であり、例えばSRAM(Static Random Access Memory )またはフラッシュメモリ(EEPROM;Electric Erasable Programmable Read Only Memory )等のようなメモリ回路を有する半導体装置、マイクロプロセッサ等のような論理回路を有する半導体装置あるいは上記メモリ回路と論理回路とを同一半導体基板に設けている混載型の半導体装置にも適用できる。