JP2008272972A - インクジェットプリンタ用記録媒体 - Google Patents

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康宏 榎本
Masaichi Shinada
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Masahiro Omoto
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Abstract

【課題】 剥離し易い貼り合わせ構造を有さず、容易かつ低コストで作製でき、しかも、良好な記録品位を得ることのできるインクジェットプリンタ用記録媒体を提供する。
【解決手段】 エチレン含有量5〜20重量%、メルトフローレート0.1〜10g/10分、190℃における溶融張力が15〜25gのエチレン−プロピレンブロック共重合体20〜80重量%と、エチレン含量5〜20重量%、メルトフローレート5〜20g/10分のエチレン−プロピレンブロック共重合体または/およびエチレン−プロピレンランダム共重合体20〜80重量%との混和物100重量部に対して、発泡核剤を2〜10重量部を配合した樹脂組成物に、無機系ガスを圧入したのち、押出機のダイスより押出成形し発泡させたポリプロピレン発泡シートの少なくとも片面にインク受容層が塗布形成し、前記ポリプロピレン発泡シート表面のJIS B0601に基づく中心線平均粗さを0.5〜2.0μm、JIS B0601に基づく最大高さを5〜25μmとする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレン発泡シートを基材としたインクジェットプリンタ用記録媒体に関する。
近年、インクジェットプリンタは個人用としても広く普及しており、そのインクジェットプリンタ用の印刷媒体として、紙ばかりでなく、耐水性及び強度に優れる樹脂シートも使用されつつある。
例えば、発泡倍率が1.4〜8.5倍の熱可塑性樹脂発泡基材の少なくとも片面に、インク受容層を有する熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせたインクジェット記録用シートが開示されている(特許文献1)。
特開2004−216890号公報
しかしながら、このインクジェット記録用シートには熱可塑性樹脂発泡基材と熱可塑性樹脂フィルムとの貼り合わせ面が存在するため、その貼り合わせ面の界面から剥離する虞れがあった。さらに、熱可塑性樹脂発泡基材と熱可塑性樹脂フィルムを別々に製造して貼り合わせる必要があり、工程が面倒であり、また、コスト高になる。
本発明は前述した事情に鑑みてなされたもので、剥離し易い貼り合わせ構造を有さず、容易かつ低コストで作製でき、しかも、良好な記録品位を得ることのできるインクジェットプリンタ用記録媒体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために種々検討を行った結果、以下の特徴を具備するインクジェットプリンタ用記録媒体が、良好なインクジェット印刷適性を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、請求項1に係るインクジェットプリンタ用記録媒体は、エチレン含有量5〜20重量%、メルトフローレート0.1〜10g/10分、190℃における溶融張力が15〜25gのエチレン−プロピレンブロック共重合体20〜80重量%と、エチレン含量5〜20重量%、メルトフローレート5〜20g/10分のエチレン−プロピレンブロック共重合体または/およびエチレン−プロピレンランダム共重合体20〜80重量%との混和物100重量部に対して、発泡核剤を2〜10重量部を配合した樹脂組成物に、無機系ガスを圧入したのち、押出機のダイスより押出成形し発泡させたポリプロピレン発泡シートの少なくとも片面に、インク受容層が塗布形成されてなり、前記ポリプロピレン発泡シート表面のJIS B0601に基づく中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜2.0μm、JIS B0601に基づく最大高さ(Rmax)が5〜25μmであることを特徴とする。
貼り合わせ構造を有さないのでシートが厚さ方向において剥離するような不具合が生じず、容易かつ低コストで作製できる。しかも、ポリプロピレン発泡シートの表面粗さを上記規定値内におさめることで、良好な記録品位を得ることができる。
また、請求項2に係るインクジェットプリンタ用記録媒体は、請求項1に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体において、前記インクジェットプリンタ用記録媒体のインク受容層の塗布形成面は、表面酸化処理が施されていることを特徴とする。
表面酸化処理によりインク受容層の塗工性の向上や基材との密着性の向上を図ることができる。前記表面酸化処理としては、請求項3に係るインクジェットプリンタ用記録媒体のように、コロナ(放電)処理を採用することができ、好ましい。
またさらに、請求項4に係るインクジェットプリンタ用記録媒体は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体であって、前記ポリプロピレン発泡シートの表面の長手方向および幅方向での前記中心線平均粗さが0.5〜2.0μm、かつ前記ポリプロピレン発泡シート表面の長手方向および幅方向での前記最大高さが5〜25μmであることを特徴とし、請求項5に係るインクジェットプリンタ用記録媒体は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体であって、前記ポリプロピレン発泡シートの平均気泡径が10〜80μmであることを特徴とする。
ポリプロピレン発泡シートの表面の長手方向および幅方向での中心線平均粗さと最大高さ、平均気泡径をそれぞれ上記規定値内におさめることで、確実に良好な記録品位を得ることができる。
このように構成された本発明に係るインクジェットプリンタ用記録媒体は、貼り合わせ構造を有さないのでシートが厚さ方向において剥離するような不具合が生じず、しかも、容易かつ低コストで作製できるといった優れた効果を奏するものである。
以下、本発明のインクジェットプリンタ用記録媒体についてさらに詳しく説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ用記録媒体は、表面のJIS B0601に基づく中心線平均粗さ(Ra)が0.5〜2.0μm、JIS B0601に基づく最大高さ(Rmax)が5〜25μmとされ、平均気泡径が10〜80μmとされた、基材としてのポリプロピレン発泡シートの少なくとも片面にインク受容層が塗布形成されている。
本実施形態において、前記ポリプロピレン発泡シートは、エチレン含有量5〜20重量%、メルトフローレート0.1〜10g/10分、190℃における溶融張力が15〜25gのエチレン−プロピレンブロック共重合体20〜80重量%と、エチレン含量5〜20重量%、メルトフローレート5〜20g/10分のエチレン−プロピレンブロック共重合体または/およびエチレン−プロピレンランダム共重合体20〜80重量%との混和物100重量部に対して、発泡核剤を2〜10重量部を配合した樹脂組成物に、無機系ガスを圧入したのち、押出機のダイスより押出成形し、発泡させて作製されている。
詳しくは、本発明において用いられるエチレン−プロピレンブロック共重合体は、エチレン含有量5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%であって、メルトフローレート0.1〜10g/10分、190℃における溶融張力が15〜25gのものである(溶融張力は、直径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを装着したキャピラリーメーターを用い、試験温度190℃、押出速度10mm/minで押し出した溶融樹脂を4m/minの速度で引き取ったときの張力を測定する)。このようなブロック共重合体を少なくとも20重量%用いることにより発泡性に優れる発泡シートが得られる。また、このようなエチレン含量、およびメルトフローレートを有するエチレン−プロピレンブロック共重合体は、押出時に樹脂組成物の発泡に適した粘弾性を示すため、良好な発泡組織を容易に形成させることができるからである。上記の範囲外では、高倍率発泡シートが得られず、物性面においても優れたものが得られない。
また、本実施形態において、エチレン含量5〜20重量%、メルトフローレート5〜20g/10分のエチレン−プロピレンブロック共重合体または/およびエチレン−プロピレンランダム共重合体20〜80重量%をブレンドした理由は、押出機内の樹脂温度の上昇を抑制し、シートの長手方向の発泡倍率のバラツキを少なくするという効果もあり、長時間安定した発泡シートが得られるからである。
また、発泡核剤としては例えば、重炭酸ソーダ系、重炭酸アンモニウム系、重曹クエン酸系、アゾジカーボンアミド系などの発泡助剤などが挙げられる。市販品としては永和化成工業株式会社製のポリスレンシリーズが好適に用いられる。さらに、発泡剤としては、窒素ガス、炭酸ガス等の無機系ガスがあげられる。これらを圧入して発泡させるガス発泡法は、発泡剤の分解による発熱がないので、樹脂温度のコントロールを容易に行うことができ、好適な樹脂粘度を保持しやすい。また、得られた発泡シートに有害な残渣がなく、衛生上も好ましい。
なお、造核剤、改質用のほかのポリマーや無機フィラー、難燃剤、カーボンブラックのような導電性付与剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤など、公知の添加物を適量配合しても良い。
そして、押出機内で溶融混練させた樹脂組成物を押出機途中から無機系ガスを圧入したのち、押出機先端に設けたダイスを通して押出成形し発泡させて目的とするポリプロピレン発泡シートを製造する。
この際、発泡用ダイスの先端より水平方向に少なくとも一組以上の成形ロールを設置し、該ロール間を通過させる押出発泡シート表面及び内部の温度を70〜130℃に保持させながら圧壊することなく、シート状に成形し、ついで冷却すると、気泡径が均一で、独立気泡率が高く、表面平滑性、耐衝撃性に優れたポリプロピレン発泡シートが得られる。
シート表面及び内部の温度は70〜130℃に保つことが重要であり、70℃未満では、樹脂の発泡が抑制されて、目的とする肉厚や発泡倍率のものが得られにくく、また130℃以上では表面からガスが抜け易くなるといった問題が生じる。
また、インク受容層は、従来から公知のインク受容層用のコーティング剤を塗布することにより形成できる。公知のインク受容層用コーティング剤は、例えば、タルク、二酸化チタン等の白色無機顔料やポリエチレン、スチレン系プラスチックピグメント等の有機顔料とバインダーを混合したものが挙げられる。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体、ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル等の樹脂が利用できる。市販品としては、例えば、帝国インキ製造株式会社製のJF−IJグロスクリアー、大日精化工業株式会社製のダイアロマーIJ−2105、出光テクノファイン株式会社製のプロテインWRL−452などが挙げられる。塗布厚みは任意に選定できる。
インクジェットプリンタ用記録媒体のインク受容層の塗布形成面には、必要に応じて、表面酸化処理を施すことができる。この表面酸化処理によりインク受容層の塗工性の向上や基材との密着性の向上を図ることができる。表面酸化処理の具体例としては、いわゆる、コロナ(放電)処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた処理方法などが挙げられ、好ましくはコロナ処理である。処理量は、コロナ処理の場合は600〜12,000J/m2 (10〜200W・分/m2 )、好ましくは1,200〜9,000J/m2 (20〜180W・分/m2 )である。コロナ放電処理の効果を十分に得るには600J/m2 (10W・分/m2 )以上であり、12,000J/m2 (200W・分/m2 )超では処理の効果が頭打ちとなるので12,000J/m2 (200W・分/m2 )以下で十分である。
次に、本発明のインクジェットプリンタ用記録媒体の実施例を示すが、本発明は下記例に限定されるものではない。
シリンダー径65mmの押出機に、エチレン含量10重量%、メルトフローレート0.5g/10分、190℃における溶融張力が23gのエチレン−プロピレンブロック共重合体40重量部(A材料)、エチレン含量7重量%、MFR9g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体60重量部(B材料)と、発泡核剤としてのポリスレンEE207E(永和化成工業株式会社製)を、下記表1に示すように1〜10重量部(詳しくは、実施例1においては2重量部、実施例2においては3重量部、実施例3においては5重量部、実施例4においては10重量部)投入し、押出機途中のシリンダ部より、無機系ガスとしての炭酸ガスを7kg/cm2 の圧力で圧入した後、幅400mmのT型発泡ダイスの先端の中心から水平方向に二組の成形ロールダイを設置し、該ロールダイの間を通過させる時に、シート表面の温度を110℃に保持して押出発泡させて表に示す厚みが0.75〜1mm(詳しくは、実施例1においては0.75mm、実施例2乃至実施例4においては1.0mm)のポリプロピレン発泡シートを作製した。
その後、ポリプロピレン発泡シートの片面にコロナ処理を9000J/m2 (180W・分/m2 )の条件下で行い、その後、この面にインク受容装用のコーティング剤としてのプロテインWRL−452(出光テクノファイン株式会社製)を乾燥後の塗布量が20g/mになるように塗布し、オーブンで乾燥し、所望のインク受容層を有する発泡シートからなるインクジェットプリンタ用記録媒体を得た。
さらに、インクジェットプリンタ(キャノン株式会社 PIXUS MP−500)を用いて、このインクジェットプリンタ用記録媒体に印刷した。
[比較例]
実施例における組成比のうち、発泡核剤としてのポリスレンEE207E(永和化成工業株式会社製)を1重量部とし、押出発泡させるポリプロピレン発泡シートの厚みを、比較例1においては0.80mm、比較例2においては1.0mmとした点のみを異ならせ、インクジェットプリンタ用記録媒体を得た。
さらに、インクジェットプリンタ(キャノン株式会社 PIXUS MP−500)を用いて、このインクジェットプリンタ用記録媒体に印刷した。
[評 価]
1) 表面粗度
押出発泡で得られた、実施例1乃至実施例4、比較例1および比較例2の6つの試料につき、ポリプロピレン発泡シートの表面のJIS B0601に基づく中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rmax)を測定した。なお測定は発泡シートの長手方向(機械方向)および幅方向について、東京精密ハンディサーフE−30Aを用いて測定した。
2) 平均気泡径
前記6つの試料につき、ASTM D3576−77に準じ、シートの断面のSEM写真を撮影し、SEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の長さtを平均した。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
d=t/(0.616×M)
3) 記録媒体の外観評価
前記6つの試料につき、記録品位について目視にて外観を評価した。なお、表1中には従来の記録媒体と同等以上の記録品位が得られたものは○、従来の記録媒体より劣る記録品位のものを×として示した。
Figure 2008272972
[考 察]
貼り合わせ構造を有さないのでシートが厚さ方向において剥離するような不具合は生じず、容易かつ低コストに作製できるが、記録品位においては差異が生じている。すなわち、実施例1乃至実施例4の試料はいずれも記録媒体の外観評価において良好な記録品位を得られたのに対し、比較例1および比較例2の試料はいずれも従来よりも劣る記録品位となった。
記録品位の差異は、ポリプロピレン発泡シートの組成比、前記ポリプロピレン発泡シートの厚さ、表面のJIS B0601に基づく中心線平均粗さ(Ra)、同じくJIS B0601に基づく最大高さ(Rmax)、および平均気泡径の相違とみられ、本実施形態のように組成比等を規定することで、良好な記録品位を得られることが立証された。

Claims (5)

  1. エチレン含有量5〜20重量%、メルトフローレート0.1〜10g/10分、190℃における溶融張力が15〜25gのエチレン−プロピレンブロック共重合体20〜80重量%
    と、
    エチレン含量5〜20重量%、メルトフローレート5〜20g/10分のエチレン−プロピレンブロック共重合体または/およびエチレン−プロピレンランダム共重合体20〜80重量%
    との混和物100重量部に対して、発泡核剤を2〜10重量部を配合した樹脂組成物に無機系ガスを圧入したのち、押出機のダイスより押出成形し発泡させたポリプロピレン発泡シートの少なくとも片面にインク受容層が塗布形成されてなり、
    前記ポリプロピレン発泡シート表面のJIS B0601に基づく中心線平均粗さが0.5〜2.0μm、JIS B0601に基づく最大高さが5〜25μmであることを特徴とするインクジェットプリンタ用記録媒体。
  2. 前記ポリプロピレン発泡シートのインク受容層の塗布形成面は、表面酸化処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体。
  3. 前記表面酸化処理はコロナ処理である請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体。
  4. 前記ポリプロピレン発泡シートの表面の長手方向および幅方向での前記中心線平均粗さが0.5〜2.0μm、かつ前記ポリプロピレン発泡シート表面の長手方向および幅方向での前記最大高さが5〜25μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体。
  5. 前記ポリプロピレン発泡シートの平均気泡径が10〜80μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体。
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