JP2008271962A - 糖の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、リグニン、セルロース及びヘミセルロースを含む木質系バイオマスから糖を製造する方法であって、木質系バイオマスを粉砕し、直径10mm以下の粉砕バイオマスとする粉砕工程と、粉砕バイオマスを、水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、粉砕バイオマスを蒸煮させる蒸煮工程と、薬液に溶解した粉砕バイオマス中の可溶成分と、薬液に不溶な粉砕バイオマス中の不溶成分とを分離する分離工程と、不溶成分を酵素に接触させることにより糖化させる糖化工程と、を備える糖の製造方法である。
【選択図】なし
Description
例えば、木材を微粉砕してから、それを酵素分解する方法(例えば、特許文献1又は2参照)、リグノセルロース含有植物体を加水分解して、それを酵素分解する方法(例えば、特許文献3参照〕、セルロース含有物質を窒素酸化物を含むジメチルホルムアミド溶液で処理した後、酵素分解する方法(例えば、特許文献4参照)、リグノセルロース系バイオマスを加圧熱水で処理し、機械的粉砕してから酵素分解する方法(例えば、特許文献5参照)等が開示されている。
特許文献3及び5に記載の方法では、比熱の高い水を高温で用いているので、セルロース及びヘミセルロースが過分解してしまう虞がある。
特許文献4記載の方法では、環境基準が定められている大気汚染物質である二酸化窒素等の窒素酸化物の使用が不可欠であるという点で問題がある。
特許文献6記載の方法では、粉砕が、蒸煮工程後の不溶成分に対して行われるので、大きなエネルギーが必要である。特に糖化率を向上させるためには、木質系バイオマスを数十μm程度とする必要があるので、粉砕に要するエネルギーの浪費が大きい。
このため、粉砕バイオマスの表面積が増大し、酵素が接触しやすくなる。
そして、蒸煮した粉砕バイオマスを酵素に接触させることにより、十分に高い糖化率で糖が得られる。
これにより、低コスト且つ低環境負荷型のプロセスで高い糖化率を得ることができる。
また、かかる工程によれば、リグニンを抽出することも可能である。
このため、より高い糖化率で糖を製造することができる。
なお、アルコール類は人体にも無害であるため、安全性に優れる。
ここで、上記木質系バイオマスには、リグニン、セルロース及びヘミセルロースが含まれる。
このため、粉砕バイオマスの表面積が増大し、酵素が接触しやすくなる。
そして、蒸煮した粉砕バイオマスを酵素に接触させることにより、十分に高い糖化率で糖が得られる。
これにより、低コスト且つ低環境負荷型のプロセスで高い糖化率を得ることができる。
[粉砕工程]
粉砕工程は、木質系バイオマスを粉砕し、直径10mm以下の粉砕バイオマスとする工程である。
このように、粉砕工程において、木質系バイオマスを粉砕することにより、木質系バイオマスの表面積を大きくする。
そうすると、後述する蒸煮工程において、粉砕バイオマスが薬液に浸漬させやすくなり、ひいては後述する糖化工程において、不溶成分が酵素に接触しやすくなる。
かかる粉砕機械としては、例えば、カッターミル、振動ボールミル、回転ボールミル、遊星型ボールミル、ロールミル、ディスクミル、高速回転羽根型ミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。
このとき、得られる粉砕バイオマスの直径は10mm以下とする。なお、かかる直径は、5mm以下とすることが好ましい。
蒸煮工程は、粉砕工程で得られた粉砕バイオマスを、水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、粉砕バイオマスを蒸煮させる工程である。
よって、セルロースやヘミセルロースの分解を抑制でき、エネルギーコストも少なくすることができる。
この場合、リグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡をより一層解くことができる。また、アルコール類は人体にも無害であるため、安全性にも優れる。
これらの中でも、酢酸、シュウ酸、ギ酸等であることが好ましい。これらの有機酸は沸点が低いため、煮沸により容易に除去できる。
なお、有機酸は後述する糖化工程の際に残存していても問題がない。
このとき、水と水溶性有機溶剤と有機酸との配合割合が(水:水溶性有機溶剤:有機酸)、2〜79.8質量%:20〜97.8質量%:0.2〜5質量%であることが好ましい。
また、水の配合割合が、30質量%を超えると、水の配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、ヘミセルロース成分の過分解が起こる虞がある。
この場合、より確実にリグニンとセルロース及びヘミセルロースとの交絡を解くことができる。
温度が160℃未満であると、温度が上記範囲内にある場合と比較して、粉砕バイオマスの蒸煮が不十分であるため、高い糖化率で糖が得られない傾向にあり、温度が220℃を超えると、温度が上記範囲内にある場合と比較して、一部の糖が分解してしまうため、高い糖化率で糖が得られなくなる傾向にある。
具体的には、耐圧容器内の圧力が、0.1〜5MPaであることが好ましい。
この場合、酸化等による粉砕バイオマスの分解が抑制される。
分離工程は、上述した蒸煮工程において、薬液に浸漬させた粉砕バイオマスを、薬液に溶解した粉砕バイオマス中の可溶成分と、薬液に不溶な粉砕バイオマス中の不溶成分とに分離する工程である。
これにより、粉砕バイオマスの一部が薬液に溶解するため、リグニンの一部を除去できる。
糖化工程は、分離工程により得られる不溶成分を酵素に接触させることにより糖化させる工程である。
かかる糖化工程は、回分式で行ってもよいし、また固定化酵素を含むバイオリアクターを用いる連続式で行ってもよい。
得られるエタノールを精製することにより、化成品原料、溶媒あるいは自動車用燃料に用いることができる。また、エタノールを含む水溶液は、アルコール系飲料とすることもできる。
糖化液はバイオ技術による有用物資生産のための培地原料あるいは炭素源として用いることができる。また、糖化液中の糖類を化学的に、化成品や高分子原料、生理活性物質等
の有用物質に変換して用いることもできる。
この場合、可溶成分からも糖が得られることになるので、得られる糖の量が増加する。
こうして得られる糖には、ヘミセルロースの加水分解により得られる五単糖からなるオリゴ糖が含まれる。
なお、このオリゴ糖は精製後、機能性食品素材として利用可能である。
すなわち、かかる工程では、粉砕バイオマス中でセルロース又はヘミセルロースと強固な結合を伴っていないリグニンを分離回収することができる。
[粉砕工程]
製紙用ユーカリチップ(縦2−3cm、横1−2cm、厚さ0.5−1cm)(木質系バイオマス)を出発原料として、ユニバーサルカッティングミルP−19(フリッチュ社製)により2mmパスのユーカリ木粉に粉砕し、更にロータースピードミルP−14(フリッチュ社製)により0.2mmパス(直径0.2mm)の粉砕バイオマスとした。
図1に粉砕バイオマスの電界放射型操作型電子顕微鏡の写真を示す。
耐圧容器として、ステンレス(SUS316)製の内容積57mlのオートクレーブ(日東高圧製)を用い、この中に粉砕バイオマス(含水率9重量%)2.19g(乾燥重量2g)と、エタノール(水溶性有機溶剤)7.5g、水2.31g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる薬液とを混合した混合物を入れ、蓋をして密封した。
そして、耐圧容器内の温度を200℃に維持した状態で更に混合物を1時間攪拌した。
その後、蓋を開け、混合物をろ過して固形物(不溶成分)とろ液(可溶成分)とに分離した。得られた固形物は3mlのエタノールを用いて洗浄した。
図2に得られた固形物の電界放射型操作型電子顕微鏡の写真を示す。
得られた固形物の乾燥重量は1.41gで、21%のリグニン(72%硫酸に不溶性の成分として求められるKlasonリグニン)が含まれていた。
得られたろ液を乾固させた乾固物の乾燥重量は0.58gであった。
得られた固形物の粉末60mg(乾燥重量にして50mg)を20ml容量のサンプル瓶に秤りとり、50mM酢酸―酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)17mlとセルラーゼ(明治製菓製メイセラーゼ)2mgとを加えた。そして、反応温度45℃で18時間糖化反応を行うことにより、糖含有溶液を得た。
図3に糖含有溶液中の固体残渣の電界放射型操作型電子顕微鏡の写真を示す。
粉砕工程において、製紙用ユーカリチップをユニバーサルカッティングミルP−19により、2mmパス(直径2mm)の粉砕バイオマスとし、これを用いたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.33gで22%のリグニンが含まれていた。
出発原料を製紙用ベイマツチップ(縦2−3cm、横1−2cm、厚さ0.5−1cm)としたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.80gで21%のリグニンが含まれていた。
出発原料を沖縄県産バガス(サトウキビから砂糖を搾った後の残りかす;長さ1−2cm、直径2−5mm)とし、2mmパス(直径2mm)の粉砕バイオマスとしたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.31gで21%のリグニンが含まれていた。
粉砕工程において、製紙用ユーカリチップをユニバーサルカッティングミルP−19により、10mmパス(直径10mm)の粉砕バイオマスとし、これを用いたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.87gで31%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、エタノールの代わりにエチレングリコール(水溶性有機溶剤)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.27gで23%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、エタノール(水溶性有機溶剤)5g、水4.81g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる混合物を用い、耐圧容器内の圧力を2MPaに調整したこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.27gで26%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、耐圧容器内の圧力を0.5MPaに調整したこと以外は実施例7と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.28gで39%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、エタノール(水溶性有機溶剤)2.5g、水7.31g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる混合物を用い、耐圧容器内の圧力を2MPaに調整したこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.68gで28%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、耐圧容器内の圧力を0.5MPaに調整したこと以外は実施例9と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.69gで29%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、耐圧容器内の温度を180℃に調整したこと以外は実施例10と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.70gで29%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、粉砕バイオマス(含水率9重量%)5.48g(乾燥重量5g)と、エタノール(水溶性有機溶剤)2.5g、水7.03g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる薬液とを混合した混合物を用いたこと以外は実施例10と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は4.59gで28%のリグニンが含まれていた。
粉砕工程において、製紙用ユーカリチップをユニバーサルカッティングミルP−19により、5mmパス(直径5mm)の粉砕バイオマスとし、蒸煮工程において、粉砕バイオマス(含水率9重量%)3.65g(乾燥重量3.3g)と、エタノール(水溶性有機溶剤)2.5g、水7.18g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる薬液とを混合した混合物を用いたこと以外は実施例10と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は3.14gで29%のリグニンが含まれていた。
出発原料を製紙用ベイマツチップ(縦2−3cm、横1−2cm、厚さ0.5−1cm)とし、エタノール(水溶性有機溶剤)5g、水4.81g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.35gで26%のリグニンが含まれていた。
出発原料を製紙用ベイマツチップ(縦2−3cm、横1−2cm、厚さ0.5−1cm)とし、エタノール(水溶性有機溶剤)2.5g、水7.31g及び酢酸(有機酸)0.1gからなる混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.66gで33%のリグニンが含まれていた。
粉砕工程において、ヒノキチップをユニバーサルカッティングミルP−19により、2mmパス(直径2mm)の粉砕バイオマスとし、これを出発原料とした以外は実施例14と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.57gで33%のリグニンが含まれていた。
粉砕工程において、製紙用ユーカリチップをユニバーサルカッティングミルP−19により、15mmパス(直径15mm)の粉砕バイオマスとし、これを用いたこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.87gで32%のリグニンが含まれていた。
蒸煮工程において、エタノール(水溶性有機溶剤)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は0.64gで72%硫酸に不溶性の成分が69%含まれていた。これは固形物が焦げたためである。
蒸煮工程において、酢酸(有機酸)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、糖含有溶液を得た。なお、分離工程において、得られた固形物の乾燥重量は1.52gで31%のリグニンが含まれていた。
製紙用ユーカリチップ(縦2−3cm、横1−2cm、厚さ0.5−1cm)(木質系バイオマス)を出発原料として、ユニバーサルカッティングミルP−19(フリッチュ社製)により2mmパスのユーカリ木粉に粉砕し、更にロータースピードミルP−14(フリッチュ社製)により0.2mm(直径0.2mm)パスの粉砕バイオマスとした。
出発原料を製紙用ベイマツチップ(縦2−3cm、横1−2cm、厚さ0.5−1cm)とし、0.2mmパス(直径0.2mm)の粉砕バイオマスとしたこと以外は比較例4と同様にして、糖含有溶液を得た。
出発原料を沖縄県産バガス(サトウキビから砂糖を搾った後の残りかす;長さ1−2cm、直径2−5mm)とし、2mmパス(直径2mm)の粉砕バイオマスとしたこと以外は比較例4と同様にして、糖含有溶液を得た。
実施例1〜16及び比較例1〜6それぞれにおいて、得られる糖含有溶液を経時的に取り出し、それを遠心分離(2500rpm、10分間)により固液分離し、液中に含まれるグルコース量をAminex HPX−87Pカラム(バイオラッド社製)を取り付けた日本分光製高速液体クロマトグラフィーLC−2000Plusで測定し、糖化率を算出した。
得られた結果(糖化率)を表1に示す。なお、糖化率は、原料(木質系バイオマス)中のセルロース成分の含有量に対する糖化した成分(グルコース量)の割合を意味する。
Claims (5)
- リグニン、セルロース及びヘミセルロースを含む木質系バイオマスから糖を製造する方法であって、
前記木質系バイオマスを粉砕し、直径10mm以下の粉砕バイオマスとする粉砕工程と、
前記粉砕バイオマスを、水、水溶性有機溶剤及び有機酸を含む薬液に浸漬させ、前記粉砕バイオマスを蒸煮させる蒸煮工程と、
前記薬液に溶解した前記粉砕バイオマス中の可溶成分と、前記薬液に不溶な前記粉砕バイオマス中の不溶成分とを分離する分離工程と、
前記不溶成分を酵素に接触させることにより糖化させる糖化工程と、
を備えることを特徴とする糖の製造方法。 - 前記可溶成分から糖を抽出する糖抽出工程を更に備えることを特徴とする請求項1記載の糖の製造方法。
- 前記蒸煮工程が不活性ガス雰囲気下、温度160〜220℃、圧力0.1〜5MPaの条件で行われることを特徴とする請求項1記載の糖の製造方法。
- 前記水溶性有機溶剤がアルコール類であることを特徴とする請求項1記載の糖の製造方法。
- 前記薬液全量中の前記有機酸の含有割合が、0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の糖の製造方法。
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