JP2008267062A - 濁質堆積量予測方法及び濁質堆積量予測システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】全エリアを複数のメッシュ2に区切り、メッシュごとに、目的変数を濁質18の堆積量の増加速度、及び、説明変数として、配管3単位長あたりの行止り部6箇所数、配管総延長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管の配管長の割合、流出係数の3個とする重回帰計算を行うことで濁質の増加速度を推定した。この各メッシュについての分析結果を表示画面1上に2次元的に表示するようにしたので、全エリアの濁質堆積状況が視覚的に把握できるようになった。また、濁質許容堆積量をこの増加速度で除することで洗管時期を算出し、それを2次元的に表示するようにしたので、配管の洗管時期のエリア内での分布を容易に知り得るようにした。
【選択図】図1
Description
また、上記配管にはその内面を上記シールコート材で被覆したもの(モルタルライニング配管)や、シールコート材を使用しない樹脂製のものなど多種あり、上記シールコート材で被覆した配管が用いられている箇所で上記シールコート材が剥離するため、その近傍で濁質の堆積が生じやすい。
また、上記配管の種類(特に平成2年以前に敷設されたモルタルライニング配管の使用長さ)が変わると濁質の発生状況も変わる。
そのため、経験に従って洗管すべき配管を選択する従来の方法では、上記変更等を考慮しきれず、濁質が堆積して洗管が必要な配管を見逃すことがある。その場合、蛇口等から濁質が流出するという問題が生じ得る。
選択されたこの3個の説明変数は、上記の14個の説明変数の中でも特に統計学的に独立性の高い変数であって、これらの説明変数と目的変数との間の高い相関関係が得られる。
このシールコート材の比重は、一般的に土砂の比重よりも軽く、水の比重よりも少し重い程度であって、流水の速度が小さい場合に配管の底に堆積し得る一方で、流水の速度が大きい場合に、堆積したシールコート材が水流によって舞い上がる。そのため、比重の比較的大きな土砂が上記水流によって舞い上がり難く堆積したままとなりやすいのに対し、このシールコート材はこの水流によって容易に輸送される。
この所定流速は、水道管内に堆積したシールコート材が舞い上がるのが目視で確認できる流速の閾値(最低流速)であって、この閾値は後述する模擬実験から求められたものである。
このように許容流出量と最大濁質堆積量の関係を明確にすれば、上記最大濁質堆積量に達する前は視認し得る量の濁質が蛇口から流出する恐れは低い、との考えに基づき、不必要な洗浄作業を極力省くことができるので、余計なコストを費やす事態が回避される。
このように表示すれば、上記エリアの位置と上記予測結果とを一対一に対応させることができるので、上記予測結果の上記エリアごとの分布を視覚的に把握することができる。この表示は、モニター画面上に行うこともでき、あるいは、紙等にプリントアウトすることによって行うこともできる。
この予測式による最大濁質堆積量の値を用いることで、上記経験等のような不安定要素が計算に入り込まないので、この洗管周期の算出予測精度及びその結果の客観性が高まる。
このように表示すれば、上記エリア内の位置と上記算出結果とを一対一に対応させることができるので、上記算出結果の上記エリアごとの分布を視覚的に把握することができる。この表示は、モニター画面上に行うこともでき、あるいは、紙等にプリントアウトすることによって行うこともできる。
また、次の洗管時期までの目安を知ることができるので、洗管の必要がない配管を洗浄して無駄なコストを費やしたり、逆に洗管の時期が遅れてシールコート材等の濁質が流出したりすることが防止される。
この濁質堆積量予測方法を適用した濁質堆積量予測システムは、図1に示す表示画面1を有している。この濁質堆積量予測システムは重回帰分析に基づいてその予測を行うものであって、この重回帰分析では、水道水が供給されるエリア全体をメッシュ2に区切り、メッシュ2ごとに上記濁質堆積量予測方法を適用して堆積量の予測を行っている。この各メッシュ2の大きさは長辺(東西方向)が500m、短辺(南北方向)が350mである。この予測結果は上記エリア内の実際の位置に対応して、表示画面1に2次元的に表示される。
各メッシュ2内の弁栓(消火栓11、蛇口16等)の数を指す。この弁栓4、11、16を通じて配管3から水が排水されるので、この弁栓4、11、16が多く設けられているメッシュ2では配管3内の水流が生じやすい。
各メッシュ2内における配管3単位長あたりの行止り部6の箇所数を指す。このような行止り部6においては配管3内の水流が妨げられるため停滞が生じやすい。
各メッシュ2内の配管3の総延長を指す。
各メッシュ2内に設けられた量水器5(水量メータ)の数を示す。この量水器5が多く設けられているメッシュ2においては、水の使用量が多く、配管3内の水流が生じやすい。
各メッシュ2内に設けられた配管3内の容積を指す。
各メッシュ2内における量水器1箇所あたりの配管3内の容積を指す。
各メッシュ2内における配管3の平均地盤高を指す。シールコート材等の濁質は配管3内の水流によって輸送されるため、この平均地盤高が周囲のメッシュ2(東西南北の4メッシュ)と比較して低いと、このメッシュ2への流れ込みが生じやすく、上記濁質が滞留しやすい傾向がある。
各メッシュ2内におけるモルタルライニング配管3の配管長を指す。このモルタルライニング配管3の長さが長いほど水中に混入するシールコート材の混入量が多くなるため、濁質が堆積しやすい傾向がある。
各メッシュ2内における配管総延長に対するモルタルライニング配管3の配管長の割合を指す。上記のように、この割合が高いほどモルタルライニング配管からシールコート材が混入する恐れがあるため、濁質が堆積しやすい傾向がある。
各メッシュ2内における平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管3の配管長を指す。上述したように、平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管3(非浸透性シールコート材を使用)は、それ以降に敷設したモルタルライニング配管3(浸透性シールコート材を使用)よりも剥離しやすいので、濁質の堆積が一層生じやすい傾向がある。
各メッシュ2内における配管総延長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管3の配管長の割合を指す。上記のように、この割合が高いほどモルタルライニング配管3からシールコート材が混入しやすい傾向がある。
各メッシュ内2の平均動水位を指す。このメッシュ2と隣接するメッシュ2との間の平均動水位の差(相対的水位差)に起因して生じた水流によってシールコート材は輸送されるため、上記平均動水位が低いメッシュ2に周囲のメッシュ2から水が流れ込んで濁質の堆積が生じやすい傾向がある。
各メッシュ2内の低流速配管3の配管長を指す。シールコート材等の濁質は流速の低い箇所に堆積する傾向がある。
各メッシュ2とそれに隣接するメッシュ2(東西南北の4メッシュ)との間の平均動水位の差を比較し、中心のメッシュ2から隣接するメッシュ2へ流出する方向の数をカウントしたものを指す。中心のメッシュ2へ隣接するいずれのメッシュ2からも流入する場合に流出係数は0となり、中心のメッシュ2からいずれのメッシュ2へも流出する場合に流出係数は4となる。この数値が大きいほどその中心のメッシュ2に濁質は堆積し難い。
さらに約8ヵ月後に、消火栓11全体の1割強に相当する約300箇所の消火栓11から配管3内に濁質採取治具を挿入し、配管3内に堆積した濁質を採取した。少なくとも1割以上の箇所において上記採取を実施すれば、統計処理上有意なものと推定できる。この採取された濁質は、前回の洗浄からの8ヶ月間に堆積したものと推定した。
各メッシュ2中に上記濁質を採取した消火栓11のうちの1箇所のみが含まれる場合はその1箇所で採取された濁質の堆積量を、2箇所以上が含まれる場合はそれらの平均の堆積量を各メッシュ2における濁質堆積量とした。
そこで、上記説明変数によってこの多重共線性の問題が生じるのを抑制するため、上記14個の説明変数の中から選択された2個の説明変数の間の相関係数を導出した。この相関係数が0.7以上の場合、多重共線性の問題が生じる恐れがあると判断し、その2個の説明変数のうち片方を上記重回帰分析の計算から除外した。
さらに、単相関係数、偏相関係数、標準偏回帰係数等を考慮して説明変数を選択し、重相関係数が0.6以上となったところで分析を終了した。
また、x2に係る偏回帰係数が正号であることから、配管総延長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管3の配管長の割合が高いほど、濁質は堆積しやすいといえる。これは、このモルタルライニング配管3の内面から濁質の原因の一つであるシールコート材が剥離して水中に堆積しやすいためであると考えられる。
このシールコート材18は、その大きさが数100μmから数mm程度の範囲に分布しており、その形状は鱗片状のものである。また、その比重は水よりも若干大きく、静水中ではその水底に堆積し、その水を流動すると舞い上がってその水とともに流動し得る。
さらに、この供給側流速Vを増加させるとともに蛇口16からの排出量を増加させると、供給側流速Vが0.05m/秒を超えた辺りからシールコート材18が配管3内の水流によって舞い上がりが生じるのが目視にて確認できた(図5(b)参照)。このことから、シールコート材18の舞い上がりが生じる閾値(最低流速Vc)は0.05m/秒であると判断できる。
この測定の結果、舞い上がりが目視で確認できない最低流速Vc(0.05m/秒)以下ではシールコート材18の流出はほとんど生じなかったのに対し、この供給側流速Vが0.07m/秒を超えたあたりから流出量の増加が顕著となり、例えば、供給側流速Vが0.15m/秒の場合、配管3内に堆積したシールコート材18のうち約70%が流出することが確認された。
また、このシールコート材18の流出する割合は、供給側流速Vのみによって決まり、堆積量には依存しないことも確認された。
この予測式を上記濁質堆積量予測結果に適用することで、濁質の許容流出量に対する配管内の最大濁質堆積量を予測するようにすることができる。
このような状況を防ぐため、許容される濁質流出量に対応する最大濁質堆積量Smaxに達する前に洗管作業を実施して、許容量以上の濁質18が流出するのを防止するようにしている。
例えば、メッシュ2内の平均流速に関する説明変数を追加すれば、さらに重回帰分析の精度を高めることができる可能性がある。上記平均流速は、濁質の堆積に影響を与え得る要素であるためである。
また、所定の時間又は期間内(例えば、日中と夜間、あるいは、夏期と冬期)における流速Vの変動(例えば流速比率)を説明変数に追加することもできる。この流速Vの変動も上記平均流速と同様に、濁質18の堆積に影響を与え得る要素であるためである。
3 配管(モルタルライニング配管)
4 弁
5 量水器
6 行止り部
11 消火栓
16 蛇口
18 濁質(シールコート材)
19 最大濁質堆積量(Smax)
V 流速
Claims (14)
- 水道の配管(3)内に堆積した濁質(18)の堆積量を予測する濁質堆積量予測方法において、
上記予測に重回帰分析の手法を採用し、この重回帰分析は水道水が供給される全エリアを複数のメッシュ(2)に区切ったメッシュ(2)ごとに行われるものであることを特徴とする濁質堆積量予測方法。 - 請求項1に記載の重回帰分析において、目的変数を各メッシュ(2)内における配管(3)内の濁質堆積量の増加速度とし、説明変数を各メッシュ(2)内における、上記配管(3)に設けられた弁栓(4、11、16)数、配管(3)単位長あたりの行止り部(6)箇所数、配管総延長、量水器(5)数、配管内容積、量水器(5)あたりの配管内容積、平均地盤高、モルタルライニング配管(3)の配管長、配管総延長に対するモルタルライニング配管(3)の配管長の割合、平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管(3)の配管長、配管総延長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管(3)の配管長の割合、平均動水位、所定流速(V)以下の流速の低流速配管の配管長、又は、流出係数、のうちから選択される少なくとも一つとしたことを特徴とする濁質堆積量予測方法。
- 請求項1に記載の重回帰分析において、目的変数を各メッシュ(2)内における配管(3)内の濁質堆積量の増加速度とし、説明変数を各メッシュ(2)内における、配管(3)単位長あたりの行止り部(6)箇所数、全配管長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管(3)の配管長の割合、及び、流出係数としたことを特徴とする濁質堆積量予測方法。
- 上記濁質(18)が上記配管(3)の内面に形成したシールコート材の剥離物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の濁質堆積量予測方法。
- 上記所定流速(V)が0.05m/秒であることを特徴とする請求項2又は4に記載の濁質堆積量予測方法。
- 目的変数を濁質(18)の上記配管(3)内への堆積量とその配管(3)からの流出量の比率とし、説明変数を上記配管(3)内の流速とし、この説明変数から上記目的変数を回帰分析によって上記比率の流速に対する予測式を導出し、この予測式を請求項1から5に記載の濁質堆積量予測方法に適用して、任意の流速ごとに、上記配管から流出する上記濁質(18)の許容流出量に対する上記配管(3)内の最大濁質堆積量(Smax)を予測することを特徴とする濁質堆積量予測方法。
- 請求項1から6のいずれかに示す濁質堆積量予測方法によって、水道水が供給される全エリアを複数のメッシュ(2)に区切ったメッシュ(2)ごとに濁質(18)の堆積量を予測し、その予測結果を上記エリアの各位置に対応して2次元的に表示するようにしたことを特徴とする濁質堆積量予測システム。
- 水道の配管(3)内に堆積した濁質(18)をこの配管(3)を洗浄して除去するにあたり、この洗浄の時間間隔を決定する洗管周期の算出方法において、
上記算出に重回帰分析の手法を採用し、この重回帰分析は水道水が供給される全エリアを複数のメッシュ(2)に区切ったメッシュ(2)ごとに行われるものであることを特徴とする洗管周期算出方法。 - 請求項8に記載の重回帰分析において、目的変数を各メッシュ(2)内における配管(3)内の濁質堆積量の増加速度とし、説明変数を各メッシュ(2)内における、上記配管(3)に設けられた弁栓(4、11、16)数、単位配管(3)長あたりの行止り部(6)箇所数、配管総延長、量水器(5)数、配管内容積、量水器(5)あたりの配管内容積、平均地盤高、モルタルライニング配管(2)の配管長、平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管(2)の配管長、全配管長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管(2)の配管長の割合、平均動水位、所定流速(V)以下の流速の低流速配管の配管長、及び、流出係数、のうちから選択される少なくとも一つとし、設定した最大濁質堆積量をこの重回帰分析で導出された上記濁質堆積量の増加速度で除することによって、この最大濁質堆積量に達するまでの時間を求め、前回の洗管時を基準時として洗管周期を算出することを特徴とする洗管周期算出方法。
- 請求項8に記載の重回帰分析において、目的変数を各メッシュ(2)内における配管(3)内の濁質堆積量の増加速度とし、説明変数を、各メッシュ(2)内における配管(3)単位長あたりの行止り部(6)箇所数、全配管長に対する平成2年以前に敷設したモルタルライニング配管(3)の配管長の割合、及び、流出係数とし、設定した最大濁質堆積量(Smax)をこの重回帰分析で導出された上記濁質堆積量の増加速度で除することによって、上記配管(3)内の洗管周期を算出することを特徴とする洗管周期算出方法。
- 目的変数を濁質(18)の上記配管(3)内への投入量とその配管(3)からの流出量の比率とし、説明変数を上記配管(3)内の流速とし、この説明変数から上記目的変数を回帰分析によって上記比率の流速に対する予測式を導出し、請求項9又は10に記載の設定した最大濁質堆積量(Smax)に代えて、この予測式から求められる上記濁質(18)の許容流出量に対する配管内の最大濁質堆積量(Smax)を用いて、上記配管(3)内の洗管周期を算出することを特徴とする洗管周期算出方法。
- 上記濁質(18)が上記配管(3)の内面に形成したシールコート材の剥離物であることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の洗管周期算出方法。
- 上記所定流速(V)が0.05m/秒であることを特徴とする請求項9、11又は12のいずれかに記載の洗管周期算出方法。
- 請求項8から13のいずれかに示す洗管周期算出方法によって、水道水が供給される全エリアを複数のメッシュ(2)に区切ったメッシュ(2)ごとに洗管周期を算出し、その算出結果を上記エリアの各位置に対応して2次元的に表示するようにしたことを特徴とする洗管周期算出システム。
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