JP2008265587A - 車両用ホイールの表面処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定のホイール形状に成形する過程でホイール意匠面に付着した耐食性を阻害する物質を除去し、塗装後の車両用ホイールの耐食性を向上し得る車両用ホイールの表面処理方法を提案する。
【解決手段】所定ホイール形状に成形した後に、ショットブラスト処理工程12を実施し、ホイール意匠面4にYAGレーザーを照射するレーザー照射処理工程14を実施することにより、塗装前に、ホイール意匠面4に付着しているショット粒の材料成分や酸化皮膜を除去する。又は、所定ホイール形状に成形した後に、ホイール意匠面4にYAGレーザーを照射するレーザー照射処理工程17を実施することにより、塗装前に、ホイール意匠面4に付着している酸化皮膜を除去する。これにより、ホイール意匠面4の耐食性を向上することができ得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、所定のホイール形状に成形した車両用ホイールに実施する車両用ホイールの表面処理方法に関する。
車両用ホイールは、近年、その意匠性を高めるために、そのホイール意匠面に様々な塗装が施されている。ホイール意匠面を塗装する工程は、通常、所望の寸法形状に成形加工した後に実施される。例えば、鋳造により製造されるアルミニウム合金製の車両用ホイールにあっては、鋳造により所定ホイール形状に成形し、所望の寸法形状に整える加工が実施された後、ホイール意匠面に塗装することによって製造されている。さらに詳細には、鋳造後に、ショットブラスト処理を実施し、次に所望の寸法形状に整える切削加工を実施し、次に化成処理などのいわゆる塗装前処理を実施し、その後に塗装を行っている。尚ここで、ショットブラスト処理、塗装前処理、塗装は、ホイール意匠面だけでなく、他の表面にも実施している。
上記したアルミニウム合金製の車両用ホイールにあって、鋳造後のホイール表面(母材表面)には、高温状態から冷却する際に酸化することによって酸化被膜が生成される。この酸化被膜は、ホイールの耐食性を阻害する原因となること、および塗料と母材との密着性を低下する原因となることから、該塗装を行う前にショットブラスト処理を実施して、この酸化被膜を除去するようにしている。このショットブラスト処理は、主にホイール意匠面に実施して、該ホイール意匠面の酸化皮膜を除去すると共に、ホイール意匠面の粗さを均一化している。そして、ショットブラスト処理した後に実施する切削加工によって、所望の寸法形状に整えている。この切削加工によって、ホイール意匠面を除く母材表面に存在する酸化皮膜を除去している。このような切削加工の後に、所定の処理液を塗布して皮膜を形成する化成処理を施している。ここで、化成処理による皮膜は、母材表面を保護し耐食性を高めると共に、母材表面と皮膜上に塗布される塗料との間で両者の密着性を向上する役割を担っている。
ところで、上記したショットブラスト処理の後にブラシ研磨及び/又は酸洗を実施する方法、およびショットブラスト処理を実施せずにブラシ研磨、酸洗、アルカリ洗の少なくとも一つを実施する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。前者の方法を上記したアルミニウム合金製の車両用ホイールを製造する工程に適用した場合には、ブラシ研磨や酸洗を行うことによって、ショットブラスト処理により付着したショット粒の材料成分を除去することができる。一方、同様に後者の方法を適用した場合には、ブラシ研磨、酸洗、アルカリ洗を行うことによって、ホイール表面に付着している離型剤を除去することができる。いずれの方法にあっても、塗装を実施する前に、ショット粒の材料成分や離型剤を除去することによって、車両用ホイールの耐食性を向上することができる。
特開2004−315864号公報
上記したショットブラスト処理は、ショット粒を比較的高圧力で噴出して車両用ホイールの母材表面に叩き付けるため、該母材表面にショット粒の材料成分がこびりついてしまう。ここで、アルミニウム合金製の車両用ホイールの場合には、ショット粒にスチール粒を用いることが一般的であるから、該スチール粒の鉄分がホイール意匠面にこびり付く。この鉄分を完全に取り除くことができないと、車両用ホイールのホイール意匠面に母材にまで達する損傷を受けた場合に、前記母材表面上に残留する鉄分によって錆び付き易くなる。このように、残留した鉄分によって車両用ホイールの耐食性が低下してしまうことが懸念される。
このようにショットブラスト処理によりこびりついたショット粒の材料成分(例えば鉄分)を除去するために、上述した従来のブラシ研磨を実施する方法を用いた場合には、車両用ホイールが比較的複雑な形状を有していることから、該車両用ホイールの隅々までブラシ研磨することが難しい。そのため、ブラシ研磨では、ショット粒の材料成分を除去することに限界があった。さらに、ブラシ研磨を充分に実施するには、該研磨に要する時間が長くなってしまうという問題もあった。また、上述した従来の酸洗により除去する方法にあっては、酸洗に用いる溶液にホイールを浸漬するか、該溶液をスプレーなどで吹き付けることによって行う。前者の浸漬する場合には、ホイールは比較的大きいことから浸漬するためには比較的多量の溶液を必要とする。さらに、こびりついたショット粒の材料成分を除去するためには、比較的長時間浸漬することを要する。後者のスプレーで吹き付ける場合には、ショット粒の材料成分がこびりついた箇所に重点的に吹き付けなければ完全に除去することが難しく、酸洗後にもショット粒の材料成分が残留してしまうこともあり得た。酸洗する方法にあっては、酸洗に用いた溶液を廃棄することが必要となる。近年、環境への配慮から、溶液(薬品)の廃棄を減少することが求められている。さらに、溶液の廃棄はコスト増加の一因でもあり、このことからも廃棄する溶液(薬品)の減少が希求されていた。
また、上述した従来の、ショットレス化してブラシ研磨、酸洗、アルカリ洗を行う方法にあっては、上記と同様にブラシ研磨では車両用ホイールの隅々まで離型剤を除去することが難しいという問題があり、酸洗やアルカリ洗では廃棄溶液(薬品)の減少が求められていた。
本発明は、上記の問題点を解決する方法であって、ホイール意匠面に付着している耐食性を阻害する物質を除去することができ得る車両用ホイールの表面処理方法を提案する。
本発明の第一発明としては、所定のホイール形状に成形した後に、ホイール表面にショット粒を衝突して、該ホイール表面を覆う酸化被膜を除去するショットブラスト処理工程と、ホイール意匠面に、所定パルス幅のYAGレーザーをパルス発振して照射し、前記ショットブラスト処理工程でホイール意匠面に付着したショット粒の材料成分を除去するレーザー照射処理工程と、ホイール表面に化成処理を行う塗装前処理工程と、化成処理したホイール表面に所定塗料を塗布する塗装工程とを順次実施するようにしていることを特徴とする車両用ホイールの表面処理方法である。ここで、YAGレーザーとは、イットリウム−アルミニウム−ガーネット結晶を用いたレーザーである。また、ホイール表面は、ホイール意匠面を含むホイール全ての表面であり、ホイール意匠面、該意匠面の裏面、ホイールリムの外周面と内周面を示す。
かかる方法にあっては、YAGレーザーをパルス発振してホイール意匠面に照射することにより、該ホイール意匠面にショットブラスト処理工程で付着したショット粒の材料成分を除去した後に、塗装前処理工程、塗装工程を実施するようにした方法である。ここで、ショットブラスト処理工程を、スチール粒(ショット粒)を衝突することによって行う工程とすると、当該ショットブラスト処理工程後にはホイール意匠面にスチール粒の鉄分がこびりつく。この鉄分をYAGレーザーを照射することによって除去する。YAGレーザーは、数ナノ秒〜数十ナノ秒の極めて短い所定パルス幅によりパルス発振して照射することにより、ホイール意匠面の母材をほとんど傷つけることなく、該ホイール意匠面に付着したショット粒の材料成分(鉄分)を確実に除去することができる。
レーザー照射工程にあっては、例えば、YAGレーザーを発振してそのレーザー光が当たる範囲を、ホイール意匠面上で移動することによって、該ホイール意匠面全体にYAGレーザーを照射していく。この場合、YAGレーザーのレーザー光の発振角(照射角)をホイール意匠面の形状に従って適宜変化することによって、該ホイール意匠面のような比較的複雑な形状に対して、レーザー光を隙間なく照射し易い。そのため、ホイール意匠面の隅々まで、ショット粒の材料成分を確実に除去することができ得る。また、上述した従来の酸洗により除去する方法では、ショット粒の材料成分を除去するための溶液を使用していたが、本発明の方法では使用しないため、該従来方法に比して、製造工程に使用する溶液の総廃棄量を低減することができるという利点も有する。
また、ショットブラスト処理工程後のホイール意匠面を精査したところ、酸化皮膜が残留していることを確認した。そして、この酸化皮膜が残留する原因として、ホイール意匠面が比較的複雑な形状をしていることから、ショット粒の当り難い部位があり、酸化皮膜が除去できずに残留してしまうためであるという知見を得た。本発明の方法にあっては、上述したように、レーザー照射処理工程でYAGレーザーをホイール意匠面に隙間なく照射し易いことから、ショットブラスト処理工程で残留した酸化皮膜を確実に除去することができ得る。すなわち、ショットブラスト処理工程とレーザー照射処理工程とを順に実施することによって、ホイール意匠面の酸化皮膜を確実に除去できるようにしている。また、ショットブラスト処理工程は、ショット粒を衝突させる処理であるから、比較的広範囲を短時間で処理することが可能である。そして、レーザー照射処理工程の前にショットブラスト処理工程を実施しておくことにより、レーザー照射処理工程では、YAGレーザーのレーザー光が当たる範囲を移動していく移動速度を比較的速く設定しても、酸化皮膜を確実に除去できる。そのため、レーザー照射処理工程に要する時間を短縮することが可能である。また、本発明にあっては、ショットブラスト処理工程でショット粒を衝突することによって、ホイール意匠面の表面粗さを均一化するようにしている。
尚、レーザー照射処理工程にあって、YAGレーザーのレーザー光は、ホイール意匠面に対して垂直に当てることによって、上述したショット粒の材料成分を除去する作用と残留する酸化皮膜を除去する作用とに優れる。そのため、上記したように、YAGレーザーのレーザー光が当たる範囲を移動することによってホイール意匠面に該YAGレーザーを照射する場合にあっては、このYAGレーザーのレーザー光を発振する発振角(照射角)を、該レーザー光がホイール意匠面に垂直に当たるように適宜変えるようにすることが望ましい。
このようにレーザー照射処理工程を実行することにより、ショットブラスト処理工程でホイール意匠面にこびりついたショット粒の材料成分を除去できると共に、該ショットブラスト処理工程で除去できずにホイール意匠面に残留する酸化皮膜を完全に除去することができ得る。これにより、塗装前処理工程および塗装工程を経た製品は、例えばホイール意匠面が損傷した場合にあって、該損傷部位での錆びの発生を抑制でき、総じて耐食性が向上する。
また、このようなレーザー照射処理工程の後に、塗装前処理工程を実施することによって、ホイール表面に、所定の処理液を塗布して被膜する化成処理を行う。この化成処理にあっても、上記したショット粒の材料成分などの耐食性を阻害する物質を除去したホイール意匠面に、処理液が密着して被覆する作用が高くなる。そのため、その後の塗装工程による塗料の密着性も向上する。これにより、上記したようにホイール意匠面に損傷した場合に、該損傷部分の周囲で塗料がホイール意匠面の母材表面から浮いたり膨れたりする等の不具合の発生を抑制することができる。このような塗料の浮きや膨れを抑制できることによっても、総じて車両用ホイールの耐食性が向上していると言える。
また、レーザー照射処理工程で照射するYAGレーザーは、アルミニウム合金への吸収性が高いという特性を有している。そのため、YAGレーザーのレーザー光が当たることによって、ホイール意匠面にこびりついているショット粒の材料成分を除去する作用と、ホイール意匠面の母材表面に付着している酸化皮膜を除去する作用とに優れている。さらには、YAGレーザーのレーザー光が当たることによって、ホイール意匠面のアルミニウム合金母材表層の母材成分である酸素、ケイ素、炭素等を減少することができ得る。これによっても、ホイール意匠面の耐食性を向上することが可能である。以上のことから、本発明の表面処理方法は、アルミニウム合金製の車両用ホイールの製造工程に適用して、該車両用ホイールの耐食性を向上する効果に優れている。尚、アルミニウム合金製の車両用ホイールとしては、鋳造によって製造するものと鍛造によって製造するものとがあり、本発明の表面処理方法は、鋳造による製造工程と鍛造による製造工程とのいずれにも適用可能であり、上記した作用効果を発揮し得る。
本発明の第二発明としては、所定のホイール形状に成形した後に、ホイール意匠面に所定パルス幅のYAGレーザーをパルス発振して照射し、該ホイール意匠面を覆う酸化被膜を除去するレーザー照射処理工程と、ホイール表面に化成処理を行う塗装前処理工程と、
化成処理したホイール表面に所定塗料を塗布する塗装工程とを順次実施するようにしていることを特徴とする車両用ホイールの表面処理方法である。
かかる方法にあっては、上記した第一発明のショットブラスト処理工程を実施しない方法であり、レーザー照射処理工程を行うことにより、ホイール意匠面の酸化被膜を除去するようにした方法である。このレーザー照射処理工程としては、上述した第一発明と同様に、YAGレーザーを数ナノ秒〜数十ナノ秒の極短いパルス幅でパルス発振してホイール意匠面に照射することによって、ホイール意匠面の母材をほとんど傷つけることなく、該ホイール意匠面を覆う酸化被膜を除去することができ得る。ここで、レーザー照射工程では、上述した第一発明と同様に、YAGレーザーのレーザー光を比較的複雑な形状のホイール意匠面に隙間なく照射可能であるから、該ホイール意匠面の酸化皮膜を除去する作用に優れる。
そして、上記のように酸化皮膜を除去した後に、塗装前処理工程で化成処理されることから、塗料と母材との密着性が向上する。そのため、ホイール意匠面を損傷した場合にも塗料が剥離するなどの不具合の発生を抑制することができ、総じて車両用ホイールの耐食性が向上し得る。
また、YAGレーザーは、上述したように、アルミニウム合金への吸収性が高いことから、該アルミニウム合金製の車両用ホイールの製造工程に適用することによって、上記した酸化皮膜を除去する効果に優れている。さらに、YAGレーザーを照射することによって、ホイール意匠面の表層に存在するケイ素、酸素、炭素などを減少させることもできる。このようなことから、本発明の表面処理方法は、アルミニウム合金製の車両用ホイールの製造工程に適用して、該車両用ホイールの耐食性を向上する効果に優れている。そして、本発明の表面処理方法は、鋳造による製造工程と鍛造による製造工程とのいずれにも適用可能であり、上記した作用効果を発揮し得る。
このように第二発明は、従来から実施されてきたショットブラスト処理を行うことなく、酸化皮膜を除去することによって車両用ホイールの耐食性を向上することができる方法である。上述した第一発明に比して、ショットブラスト処理工程を省略していることから、車両用ホイールの表面処理を実施する工程を簡素化することができるという効果もある。また、ショットブラスト処理で使用して処理効果の落ちたショット粒を廃棄する必要がなく、該廃棄に要するコストを低減できる。
尚、第二発明の方法ではショットブラスト処理工程を実施しないため、レーザー照射処理工程のみでホイール意匠面の酸化皮膜を完全に除去する必要がある。また、ショットブラスト処理工程を実施しないため、上記したホイール意匠面の粗さを均一化する作用を、YAGレーザーを照射することによって生じさせる必要もある。これら作用を生じるためには、上述した第一発明のレーザー照射処理工程に比して、YAGレーザーのレーザー光を充分に当てることを要し、レーザー照射処理工程に要する時間が比較的長くなる傾向にある。
すなわち、上述した第一発明の表面処理方法と第二発明の表面処理方法とを比較すると、第二発明の表面処理方法は、ショットブラスト処理工程を実施しないため、第一発明に比して、製造工程を簡素化できるという利点を有する。一方、第一発明の表面処理方法は、ショットブラスト処理工程によって酸化皮膜を除去し且つホイール意匠面の粗さを均一化し、レーザー照射処理工程によって酸化皮膜を完全に除去する方法であるから、第二発明に比して、レーザー照射処理工程に要する時間が短縮化することができるという利点を有する。
上述した第一発明または第二発明の車両用ホイールの表面処理方法にあって、レーザー照射処理工程は、YAGレーザーをパルス発振するための発振条件を、周波数6000Hz以上且つ15000Hz以下とし、出力100W以上且つ200W以下とするように設定して実施するようにしている方法が提案される。
ここで、YAGレーザーのレーザー光が強くなったり、又は照射時間が長くなるに従って、該YAGレーザーがホイール母材表面を強く加熱することとなって該母材表面に新たな酸化物が生成され易い。これを防止するために、本方法の発振条件を設定している。すなわち、本方法の発振条件によりYAGレーザーを照射することによって、新たに酸化物を生成することなく、ホイール意匠面に存在する耐食性を阻害する物質(上記したショット粒の材料成分や酸化皮膜)を除去することができる。そして、塗装前処理工程の化成処理によって母材と塗料との密着性を一層向上することができ得る。そのため、車両用ホイールの耐食性向上効果に一層優れ、且つ安定して発揮し得る。
そして、上記した第一発明にあって、ホイール意匠面に付着したショット粒の材料成分および残留している酸化被膜を除去する作用効果が向上するため、上述した第一発明により生ずる作用効果に一層優れる。一方、上記した第二発明にあって、ホイール意匠面を覆う酸化被膜を除去する作用効果が向上するため、上述した第二発明により生ずる作用効果に一層優れる。
発振条件の周波数を低くするに従って、エネルギー密度が高くなる傾向にあるため、周波数が6000Hzより低いとホイール意匠面の母材を加熱し易くなる。逆に周波数を高くするに従って、耐食性を阻害する物質(ショット粒の材料成分や酸化被膜)を除去する効果が低下する傾向にある。以上のことから、周波数としては6000Hz〜10000Hzが好適に用い得る。一方、出力を高くするに従って、ホイール意匠面母材を加熱し易くなり、出力を低くするに従って耐食性阻害物質を除去する効果が低下する傾向にある。以上のことから、出力としては100W〜120Wが好適に用い得る。
上述したように、本発明の第一発明は、所定ホイール形状に成形した車両用ホイールにショットブラスト処理を実施した後に、ホイール意匠面にYAGレーザーをパルス発振して照射するレーザー照射処理工程を実施することにより、ショットブラスト処理によりホイール意匠面に付着したショット粒の材料成分を除去し、その後に塗装前処理工程と塗装工程とを実施するようにした表面処理方法であるから、ショットブラスト処理工程とレーザー照射処理工程とによって、ホイール意匠面の酸化皮膜を完全に除去することができる。そして、ホイール意匠面のショット粒の材料成分と酸化皮膜とを除去できることから、塗装前処理工程を介して塗装工程を実施することによって、ホイール意匠面の母材表面と塗料との密着性を高めることができる。以上のことから、本発明の表面処理方法を実施して得た車両用ホイールは、そのホイール意匠面を損傷した場合にあって、該損傷部位に錆びが発生することや塗料が浮いてしまうことを抑制することができる。したがって、本発明の表面処理方法を実施して車両用ホイールを製造することによって、優れた耐食性を有するホイール意匠面を備えた車両用ホイールを得ることができ得る。
一方、本発明の第二発明は、所定ホイール形状に成形した車両用ホイールのホイール意匠面に、YAGレーザーをパルス発振して照射するレーザー照射処理工程を実施することにより、ホイール意匠面を覆う酸化皮膜を除去し、その後に塗装前処理工程と塗装工程とを実施するようにした表面処理方法であるから、ショットブラスト処理工程を実施せずに(ショットレス化して)酸化皮膜を除去できるため、車両用ホイールの製造工程に適用して該製造工程を簡素化することができ得る。また、ホイール意匠面の酸化皮膜を除去した後に塗装前処理工程および塗装工程を実施することによって、ホイール意匠面の母材表面と塗料との密着性を高めることができる。このように酸化皮膜を除去し且つ塗料の密着性が高まることから、本発明の表面処理方法を実施して得た車両用ホイールは、そのホイール意匠面を損傷した場合にあって、該損傷部位に錆びが発生することや塗料が浮いてしまうことを抑制することができる。したがって、本発明の表面処理方法を実施して車両用ホイールを製造することによって、優れた耐食性を有するホイール意匠面を備えた車両用ホイールを得ることができ得る。
また、上述した第一発明および第二発明の車両用ホイールの表面処理方法にあって、レーザー照射処理工程が、YAGレーザーをパルス発振するための発振条件を、周波数6000Hz以上且つ15000Hz以下とし、出力100W以上且つ200W以下とするように設定して実施するようにしている場合には、ホイール意匠面に存在する耐食性を阻害する物質(上記したショット粒の材料成分や酸化皮膜)を効率的に除去または減少することができるため、車両用ホイールの耐食性向上効果に一層優れ、且つ安定して発揮し得る。
本発明の一実施形態例を添付図面を用いて詳述する。本実施例1,2にあっては、アルミニウム合金製の車両用ホイールを鋳造により製造する製造工程に、本発明にかかる表面処理方法を適用している。
尚ここで、車両用ホイール1は、図6のように、ディスク部2とリム部3とから構成され、該ディスク部2にホイール意匠面4を備えてなる。
アルミニウム合金製の車両用ホイール1を鋳造により製造する製造工程としては、図1のように、鋳造工程11、ショットブラスト処理工程12、切削加工工程13、レーザー照射処理工程14、塗装前処理工程15、塗装工程16を順次実施する。ここで、鋳造工程11は、アルミニウム合金の溶湯を所定金型に鋳込み、所定ホイール形状に成形する工程である。また、切削加工工程13は、鋳造工程11の際にできたバリを削除すると共に、ホイール表面(ホイール意匠面4、ディスク部2の裏面、リム部3の外周面及び内周面)を切削して、所望の寸法形状(製品形状)に整える工程である。尚、鋳造工程11、切削加工工程13は、従来方法と同じ工程に従って実施することができ、詳細については省略する。
尚、本実施例1にあっては、ショットブラスト処理工程12、レーザー照射処理工程14、塗装前処理工程15、塗装工程16とによって、本発明にかかる車両用ホイールの表面処理方法を構成している。
上記した塗装前処理工程15としては、ホイール表面を脱脂、洗浄し、さらに該ホイール表面に所定の処理液を塗布して該意匠面上に皮膜を形成する化成処理を施す。この化成処理による皮膜によって、ホイール表面を保護し耐食性を高めると共に、この上に塗装する粉体塗料の密着性を向上することができる。一方、次の塗装工程16としては、塗装前処理工程15により皮膜を生成したホイール表面に所定の塗料を塗装して焼き付け乾燥することにより行う。ここで、ホイール意匠面4を塗装する工程としては、該ホイール意匠面4に粉体塗料を塗装して焼き付け乾燥し、次に所定色の着色塗料を塗装して焼き付け乾燥し、次にクリア塗料を塗装して焼き付け乾燥するようにしている。すなわち、粉体塗料を塗装することにより、鋳造によって生じる梨地肌を隠して平滑な表面を形成すると共に、滑らかな厚み感、艶、光沢感を高めるようにしている。次の着色塗料を塗装することによりホイール意匠面4を所定色とし、さらにクリア塗料を塗装することによって、着色塗装の光沢性を高めると共に、該着色塗料を保護するようにしている。
次に、本発明の要部にかかるショットブラスト処理工程12およびレーザー照射処理工程14について詳述する。
上記した鋳造工程11により所定ホイール形状に成形した車両用ホイール1にショット粒を衝突するショットブラスト処理工程12を実施する。このショットブラスト処理工程12では、ショット粒を所定射出圧力により射出して車両用ホイール1のホイール表面に全体的に衝突させる(図示省略)。ここで、本実施例1にあっては、ショット粒に粒径0.6mmのスチール粒を用いている。
このショットブラスト処理工程12によって、ショット粒をホイール表面に衝突させることによって、該ホイール表面を覆っている酸化皮膜を除去する。尚、この酸化被膜は、鋳造工程(又は熱処理工程)で比較的高温状態から冷却する際に、車両用ホイール1のホイール表面を覆うように生成されている。
ここで、ホイール意匠面4は比較的複雑な形状であるから、該ホイール意匠面4の隅々までショット粒が衝突し難い。そのため、ホイール意匠面4には、上記した酸化皮膜が残留してしまう箇所も存在し得る。
また、ショットブラスト処理工程12では、上記した酸化皮膜を除去するために、ショット粒を比較的高い圧力で射出して衝突させるようにしていることから、該ショット粒の材料成分(鉄分)がホイール意匠面4にこびりついてしまう。
さらに、ショットブラスト処理工程12にあっては、ショット粒をホイール意匠面4に全体的に衝突させることにより、該ホイール意匠面4の粗さを均一化することができる。また、このショットブラスト処理工程12は、ショット粒を比較的広範囲に容易かつ短時間で衝突させることができるという利点を有している
このようなショットブラスト処理工程12で用いる、ショット粒を射出して衝突させるための装置としては、従来から使用されているものを用いることができ、その詳細については省略する。
ショットブラスト処理工程12の後に上記した切削加工工程13を行い、所望の寸法形状に整えた後に、次にレーザー照射処理工程14を実施する。レーザー照射処理工程14は、ホイール意匠面4にYAGレーザーを照射することにより行う。ここで、YAGレーザーを照射するための照射装置(図示省略)としては、YAGレーザーのレーザー光を10ナノ秒の極短いパルス幅でパルス発振するものであり、該レーザー光を発振するレーザー光発振部(図示省略)をホイール意匠面4に沿うように移動することによって、レーザー光をホイール意匠面全体に当てることができるようにしている。
尚、このレーザー光発振部は、その移動速度を設定可能であると共に、レーザー光の発振角を適宜変えることができるようになっている。ここで、レーザー光発振部を、所定の移動速度で移動させることにより、該レーザー光の当たる範囲が順に移動するようにして、レーザー光を一箇所に比較的長時間当たらないようにしている。さらに、レーザー光がホイール意匠面4に垂直に当たるように、レーザー光発振部の発振角を適宜変更するようにしている。このようにレーザー光発振部を移動することによって、ホイール意匠面4にYAGレーザーのレーザー光が当たらない部位が残らないようにしている。尚、このようなレーザー光発振部の移動速度や移動経路、発振角の変更は、予めホイール意匠面4の形状に従って設定されており、自動的にレーザー光発振部が移動するように制御している。
さらに、上記したYAGレーザーを照射するための照射装置は、このYAGレーザーの発振条件として、周波数を8000Hzとし、出力を120Wとして設定している。このようにレーザー光の強さを調整していることによって、該レーザー光によってアルミニウム合金(ホイール母材)を焼いてしまうことがないようにしている。これにより、レーザー光の照射によって、新たな酸化物が生じないようにしている。
このレーザー照射処理工程14で、YAGレーザーを上記したパルス幅でパルス発振してホイール意匠面4に照射することによって、上記したショットブラスト処理工程12でホイール意匠面4に付着したショット粒の材料成分(鉄分)を除去することができる。さらに、ショットブラスト処理工程12で除去できずに残留する酸化皮膜をも除去することができる。ここで、YAGレーザーは、アルミニウム合金への吸収性が高いことから、ショット粒の材料成分や酸化皮膜を除去する効果が高い。また、上記のように、YAGレーザーのレーザー光を、ホイール意匠面4に当たらない部位が残らないように、該ホイール意匠面4の隅々まで照射していることから、ホイール意匠面4に付着したショット粒の材料成分や残留している酸化皮膜を確実に除去することができる。
さらに、YAGレーザーは、上記のようにアルミニウム合金への吸収性を有していることから、ホイール意匠面4のアルミニウム合金の母材表層の金属成分を改質することができる。詳しくは、ホイール意匠面4の表層の、アルミニウム合金に含有されているケイ素、酸素、炭素の各量を大幅に減少することができる。
このようにレーザー照射処理工程14で除去されるショット粒の材料成分、酸化皮膜、ケイ素、酸素、炭素等は、耐食性を阻害する物質であることから、これら物質を除去又は減少できることによって、ホイール意匠面4の耐食性を向上することができ得る。
レーザー照射処理工程14の後に、上記した塗装前処理工程15と塗装工程16とを順次実施する。塗装前処理工程15の化成処理によってホイール表面を覆うように処理液の皮膜を形成する。そのため、ホイール意匠面4を覆うように被着した皮膜と、該ホイール意匠面4(アルミニウム合金)とは、上記したようにホイール意匠面上に存在する耐食性を阻害する物質が除去されていることから、高い密着性を有している。さらに、ホイール意匠面4と高い密着性を有する皮膜上に、塗装工程16で粉体塗料を塗装することから、粉体塗料とホイール意匠面4(アルミニウム合金)とが皮膜を介して高い密着性を有している。
このように塗装工程16まで終了して製造された車両用ホイール1は、上記のように、そのホイール意匠面4の母材表層(アルミニウム合金)に耐食性を阻害する物質が極めて少ないことから、優れた耐食性を発揮するものである。すなわち、車両用ホイール1のホイール意匠面4に、その母材(アルミニウム合金)にまで達する傷を生じた場合にあって、当該損傷部分が錆び付いてしまうことを抑制する効果に優れる。これは、該損傷部分から雨水等の水分が侵入しても、このホイール意匠面4の母材表面に、耐食性を阻害する酸化皮膜やショット粒の材料成分がないこと、及びケイ素や酸素や炭素等が減少しているためである。さらに、ホイール意匠面4の母材(アルミニウム合金)と、塗装前処理工程の化成処理により生成する皮膜および塗料との密着性が高いことから、前記のようにホイール意匠面4が損傷した場合に、該損傷部分から、塗料の浮きや剥がれ等が生じたり進行したりすることを抑制でき得る。
このように本実施例1の、ショットブラスト処理工程12、レーザー照射処理工程14、塗装前処理工程15、塗装工程16とを順次実施することによって、ホイール意匠面4が損傷した場合にあっても、錆びや塗料の剥がれ等が生じることを抑制できる車両用ホイール1を得ることができる。
実施例2にあっては、図2のように、上記した鋳造工程11により所定ホイール形状に成形し、次に切削加工工程13によって所望の寸法形状(製品形状)に整えた後に、レーザー照射処理工程17、塗装前処理工程15、塗装工程16を順次実施する。すなわち、この実施例2では、レーザー照射処理工程17、塗装前処理工程15、塗装工程16によって、本発明にかかる車両用ホイールの表面処理方法を構成している。そして、この実施例2では、上記した実施例1のショットブラスト処理工程を実施しない。
本実施例2にあっては、ショットブラスト処理工程を実施せず、鋳造工程11後の切削加工工程13により、所望の寸法形状に整えている。
上記した切削加工工程13の後にレーザー照射処理工程17を実施する。レーザー照射処理工程17により、ホイール意匠面4にYAGレーザーを照射する。ここで、レーザー照射処理工程17を実施する直前の車両用ホイール1にあっては、そのホイール意匠面4に、鋳造工程11で生成した酸化皮膜が存在している。
YAGレーザーを照射する装置(図示省略)にあっては、上述した実施例1と同じ装置を用い、同様の発振条件を設定している。この装置によりYAGレーザーのレーザー光を10ナノ秒のパルス幅でパルス発振してホイール意匠面4に照射する。これによって、ホイール意匠面4の酸化皮膜を除去する。このYAGレーザーは、上記したようにアルミニウム合金への吸収性が高いことから、ホイール意匠面4を覆う酸化皮膜を除去する作用に優れ、該酸化被膜を確実かつ効率的に除去することができ得る。また、このアルミニウム合金への高い吸収性によって、ホイール意匠面4の母材表層(アルミニウム合金)のケイ素、酸素、炭素等を減少することができる。このように、レーザー照射処理工程17によって、ホイール意匠面4の、耐食性を阻害する物質を除去又は減少することができ得る。
本実施例2にあっては、上述したようにショットブラスト処理工程を実施しないことから、レーザー照射処理工程17だけでホイール意匠面4を覆う酸化皮膜を除去する必要がある。さらに、このレーザー照射処理工程17によって、ホイール意匠面4の粗さを均一化することも要する。そのため、レーザー照射処理工程17では、上記したレーザー光を発振するレーザー光発振部(図示省略)の移動速度を、上述した実施例1に比して低速としている。これにより、レーザー光の当たる時間を、実施例1に比して長くして、ホイール意匠面4の酸化被膜を確実に除去すると共に、該ホイール意匠面4の粗さを均一化している。尚、レーザー光の当たる時間が長くなると、ホイール意匠面4のアルミニウム合金を焼いてしまって新たな酸化物を生成してしまうため、レーザー光発振部の移動速度は、酸化物を生成しない範囲で、比較的低速に設定している。
このレーザー照射処理工程17の後に、上述した実施例1と同様に、塗装前処理工程15と塗装工程16とを順次実施する。ここで、塗装前処理工程15の化成処理によりホイール意匠面4に被着した皮膜と、該ホイール意匠面4の母材とは、上述した実施例1と同様に高い密着性を有している。さらに、塗装工程16で塗装された粉体塗料とホイール意匠面4とは、前記皮膜を介して高い密着性を有している。
このように塗装工程16まで実施して製造された車両用ホイール1は、上述した実施例1と同様に、そのホイール意匠面4の母材表層に耐食性を阻害する物質が極めて少ないことから、優れた耐食性を発揮することができる。すなわち、車両用ホイール1のホイール意匠面4に、その母材にまで達する傷を生じた場合にあって、当該損傷部分が錆び付いてしまうことを抑制する効果と、該損傷部分から塗料の浮きや剥がれ等が生じたり進行したりすることを抑制する効果とを発揮し得る。
次に上述した実施例1と実施例2とにかかる車両用ホイールの耐食性向上を確認する評価試験を実施した結果について説明する。
先ず、耐食性の評価試験に供するアルミニウム合金製の車両用ホイール1を製造する。鋳造工程11により所定ホイール形状に成形し、そのホイール表面にショットブラスト処理工程12を実施する。このショットブラスト処理工程12では、上述した実施例1と同様に、スチール粒を、ホイール表面全体にショットする。
ショットブラスト処理工程12後に、切削加工工程13を実施して、所望の寸法形状に整える。この切削加工工程13の後に、車両用ホイール1のスポーク部中央領域(図6参照)にのみ、上記したレーザー照射処理工程14を部分的に実施する。このレーザー照射処理工程14にあっては、上述した実施例1と同様に実施している。その後、塗装前処理工程15と塗装工程16とを実施する。このようにして製品としての塗装が施された車両用ホイール1を得る。
ここで、この車両用ホイール1は、そのスポーク部中央領域がレーザー照射処理工程14を実施された本実施例1にかかる領域(本発明の表面処理方法を実施した領域、以下第一実施領域)21であり、それ以外の領域がレーザー照射処理工程14を実施していない領域(以下、第一比較領域)22である。すなわち、耐食性の評価試験では、同一ホイールに実施例1の第一実施領域21と第一比較領域22との両方を生成しており、ホイール個体間の差が生じないようにしている。
一方、同様のアルミニウム合金から鋳造工程11により所定ホイール形状に成形し、次に切削加工工程13を実施して所望の寸法形状に整える。この場合には、上記したショットブラスト処理工程11を実施していない。そして、この車両用ホイール1のスポーク部中央領域にのみ、上記したレーザー照射処理工程17を部分的に実施する。このレーザー照射処理工程17にあっては、上述した実施例2と同様に実施している。その後、塗装前処理工程15と塗装工程16とを実施する。このようにして製品としての塗装が施された車両用ホイール1を得る。
ここで、この車両用ホイール1にあっては、そのスポーク部中央領域がショットブラスト工程を実施せず且つレーザー照射処理工程17を実施された本実施例2にかかる領域(本発明の表面処理方法を実施した領域、以下第二実施領域)23であり、それ以外の領域がショットブラスト工程およびレーザー照射処理工程17を実施していない領域(以下、第二比較領域)24である。すなわち、この車両用ホイールにあっても、同一ホイールに実施例2の第二実施領域23と第二比較領域24との両方を生成している。
上記した二種類の表面処理方法を実施した各車両用ホイール1の耐食性を評価する。各車両用ホイール1のホイール意匠面4に、カッターナイフにより母材(アルミニウム合金)に達する切り傷を付ける。この切り傷は、上記した第一実施領域21と第一比較領域22との各表層、第二実施領域23と第二比較領域24との各表層をそれぞれ同様に切り込むことによりつけている。その後、これら車両用ホイール1に、耐食性試験を実施する。この耐食性試験としては、CASS試験方法(JIS H8502)に準拠する雰囲気中に24時間さらし、次に所定温度および湿度の雰囲気中に120時間さらした後に、室温に24時間放置するまでを1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返し、素地や塗膜間に発生する錆び、塗膜の浮き(又は膨れ)を調べる試験である。ここで、CASS試験方法に準拠する雰囲気とは、JIS H8502に準拠して、酢酸性の塩化ナトリウム溶液に塩化銅(II)二水和物を添加した溶液を噴霧した雰囲気である。
そして、耐食性試験は、上記したサイクルを4サイクル実施した後に、ホイール意匠面4の様子を観察し、さらに4サイクル実施した後(合計8サイクル)、再度ホイール意匠面4の様子を観察する。尚、本実施例にあって、4サイクルに要する試験時間は672時間であり、8サイクルに要する試験時間は1344時間となる。
上記した4サイクルを実施した後の、各車両用ホイール1のスポーク部の様子を図3に示す。実施例1にかかる第一実施領域21と第一比較領域22とを比較すると、図3(A)のように、該第一比較領域22に比して第一実施領域21では、塗装の浮き(又は膨れ)や錆びが生じている範囲が狭くなっている。実際に塗装の浮きや錆びが生じた範囲の最大幅を測定したところ、第一比較領域22では約3mmであり、第一実施領域21では約2mmであった。一方、実施例2にかかる第二実施領域23と第二比較領域24とを比較すると、図3(B)のように、第二比較領域24に比して第二実施領域23では、塗装の浮きや錆びが生じた範囲が狭くなっている。この塗装の浮きや錆びの生じた範囲の最大幅は、第二比較領域24では約6mmであったのに対して、第二実施領域23では約2mmであった。
さらに8サイクルを実施した後の、各車両用ホイール1のスポーク部の様子を図4に示す。第一実施領域21では、図4(A)のように、塗装の浮きや錆びが生じた範囲の最大幅が約5mmであり、第一比較領域22では約8.5mmであった。このように、第一実施領域21は、第一比較領域22に比して塗装の浮きや錆びの生じた範囲が狭い。一方、第二実施領域23では、図4(B)のように、塗装の浮きや錆びが生じた範囲の最大幅が約4.8mmであり、第二比較領域24では約12mmであった。このように、第二実施領域23は、第二比較領域24に比して塗装の浮きや錆びの生じた範囲が狭い。
以上の耐食性の評価試験の結果から、レーザー照射処理工程14,17を実施することによって、車両用ホイール1の耐食性が向上することが確認できた。また、レーザー照射処理工程14,17を実施した場合の、実施例1にかかる第一実施領域21と実施例2にかかる第二実施領域23とを比較したところ(図3(A),図4(A))、塗装の浮きが生じた範囲や錆びの発生について両者にほとんど有意差がみられなかった。このことから、本発明にかかるレーザー照射処理工程17が、ショットブラスト処理工程と同等の作用効果を奏することが明らかである。すなわち、レーザー照射処理工程17を実施することによって、ショットブラスト工程を実施しない実施例2の表面処理方法が可能である。
さらに、レーザー照射処理工程14,17の作用について分析した。上述と同様に、アルミニウム合金から鋳造工程11、切削加工工程13により車両用ホイール1を形成する。尚、ショットブラスト処理工程は実施していない。そして、この車両用ホイール1のホイール意匠面4の一部領域にレーザー照射処理工程17を実施した。このレーザー照射処理工程17を実施した領域と、該レーザー照射処理工程17を実施していない領域について、それぞれエネルギー分散型X線分析装置を用いて成分分析した。尚、この成分分析は、レーザー照射処理工程17の直後に実施しており、該レーザー照射処理工程17の作用のみを確認できるようにしている。
このエネルギー分散型X線分析装置による成分分析した結果を図5に示す。レーザー照射処理工程17を実施した領域は、該レーザー照射処理工程17を実施していない領域に比して、ケイ素、酸素、炭素の各質量濃度(%)が著しく減少していることを確認できる。さらに、マグネシウム、ナトリウム、塩素なども減少することを確認している(図示省略)。このように、YAGレーザーによるレーザー照射処理工程17によって、アルミニウム合金のケイ素、酸素、炭素の各成分を減少できる。ここで、ケイ素、酸素、炭素は、アルミニウム合金の耐食性を阻害する成分(物質)であることから、これらを減少できることによって、アルミニウム合金の耐食性を向上することができ、これに伴いホイール意匠面4の耐食性を向上できる。すなわち、レーザー照射処理工程17でホイール意匠面4の母材(アルミニウム合金)のケイ素、酸素、炭素を減少したことが、上述した耐食性評価試験で耐食性が向上した一因と言える。さらに、酸素が著しく減少していることから、ホイール意匠面4を覆っていた酸化被膜も除去できていることが伺える。尚ここで、レーザー照射処理工程17は、上述した実施例2に作動条件で実施したが、実施例1の作動条件(レーザー照射処理工程14)で実施しても同様にケイ素、酸素、炭素を減少できる。
このように、上述した実施例1,2による表面処理方法を実施することによって、車両用ホイール1の耐食性を向上することができる。実施例2のように、ショットブラスト処理工程を実施せずに(ショットレス化)レーザー照射処理工程17を実施する表面処理方法によっても、ホイール意匠面4を覆う酸化皮膜を除去できることから、優れた耐食性を有する車両用ホイール1を得ることが可能であり、このショットレス化に伴って車両用ホイール1の製造費用を低減することもでき得る。尚ここで、実施例2のレーザー照射処理工程17では、ホイール意匠面4の粗さを均一化するようにもしている。一方、実施例1の場合には、ショットブラスト処理工程12により、比較的短時間でホイール意匠面4の酸化皮膜を除去し且つ該ホイール意匠面4の粗さを均一化している。その後、レーザー照射処理工程14により、ショット粒の材料成分と残留する酸化皮膜とを除去している。そのため、実施例1のレーザー照射処理工程14では、実施例2のようにホイール意匠面4を覆う酸化皮膜を全て除去したり該ホイール意匠面4の粗さを均一化することを要しない。したがって、実施例1のレーザー照射処理工程14では、実施例2のレーザー照射処理工程17に比して、レーザー光をホイール意匠面4に当てる時間を短くすることができ、当該工程14に要する時間を短縮化することができ得る。
さらに、実施例1,2のいずれの場合にあっても、上述した従来方法のようにホイール意匠面4の耐食性を阻害する物質を除去するために溶液(酸洗やアルカリ洗に用いる薬品)を使用しないようにすることが可能である。そのため、従来方法に比して、廃液量を低減することができ、該廃液処理に要するコストを低減することができ得る。
上述した実施例1,2にあっては、アルミニウム合金を鋳造成形してなる車両用ホイールの製造工程に適用した場合であるが、アルミニウム合金を鍛造成形する製造工程に適用しても、同様の作用効果を発揮し得る。この鍛造成形する製造工程では、鍛造工程や熱処理工程によって酸化皮膜が生成されるため、レーザー照射処理工程により該酸化被膜を除去することができる。また、アルミニウム合金だけでなく、スチールやマグネシウム合金から製造する車両用ホイールの製造工程に適用することも可能であり、該車両用ホイールの耐食性を向上することができ得る。
実施例1の表面処理方法を適用した、車両用ホイール1の製造工程図である。 実施例2の表面処理方法を適用した、車両用ホイール1の製造工程図である。 (A)実施例1にかかる第一実施領域21および第一比較領域22と、(B)実施例2にかかる第二実施領域23および第二比較領域24とを、耐食性評価試験(4サイクル)した後の表面写真である。 (A)実施例1にかかる第一実施領域21および第一比較領域22と、(B)実施例2にかかる第二実施領域23と、第二比較領域24とを、耐食性評価試験(8サイクル)した後の表面写真である。 レーザー照射処理工程を実施したホイール意匠面4の成分分析結果である。 車両用ホイール1の(A)平面図と(B)断面図である。
符号の説明
1 車両用ホイール
4 ホイール意匠面
12 ショットブラスト処理工程
14,17 レーザー照射処理工程
15 塗装前処理工程
16 塗装工程

Claims (3)

  1. 所定のホイール形状に成形した後に、ホイール表面にショット粒を衝突して、該ホイール表面を覆う酸化被膜を除去するショットブラスト処理工程と、
    ホイール意匠面に、YAGレーザーを所定パルス幅でパルス発振して照射し、前記ショットブラスト処理工程でホイール意匠面に付着したショット粒の材料成分を除去するレーザー照射処理工程と、
    ホイール表面に化成処理を行う塗装前処理工程と、
    化成処理したホイール表面に所定塗料を塗布する塗装工程と
    を順に実施するようにしていることを特徴とする車両用ホイールの表面処理方法。
  2. 所定のホイール形状に成形した後に、ホイール意匠面にYAGレーザーを所定パルス幅でパルス発振して照射し、該ホイール意匠面を覆う酸化被膜を除去するレーザー照射処理工程と、
    ホイール表面に化成処理を行う塗装前処理工程と、
    化成処理したホイール表面に所定塗料を塗布する塗装工程と
    を順に実施するようにしていることを特徴とする車両用ホイールの表面処理方法。
  3. レーザー照射処理工程は、YAGレーザーをパルス発振するための発振条件を、周波数6000Hz以上且つ15000Hz以下とし、出力100W以上且つ200W以下とするように設定して実施していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ホイールの表面処理方法。
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