JP2008264114A - 移動運動状態の診断プログラム,移動運動状態の診断装置及び移動運動状態の診断方法 - Google Patents

移動運動状態の診断プログラム,移動運動状態の診断装置及び移動運動状態の診断方法 Download PDF

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Rieko Horino
理恵子 堀野
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浩紀 塩野
Masato Takada
真人 高田
Atsushi Noumoto
淳 納本
Mitsuru Yoneyama
満 米山
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Abstract

【課題】移動運動状態の診断プログラム,移動運動状態の診断装置及び移動運動状態の診断方法に関し、簡素な構成で、診断精度を高め、かつ、疾病の兆候を早期発見することができるようにする。
【解決手段】動物の移動運動状態を診断する診断プログラムにおいて、コンピュータを、動物の移動運動に伴って検出される体動信号から移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出手段3aと、足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析手段3bと、揺らぎ解析手段3bで解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算手段3cと、指標演算手段3cで演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断手段4として機能させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、動物の歩行,早足,走行又は水泳といった陸上及び水中等での足を使った移動運動時における体動信号を揺らぎ解析することで移動運動状態を診断する、移動運動状態の診断プログラム,移動運動状態の診断装置及び移動運動状態の診断方法に関するものである。
従来、動物の動作の類型を解析することによって、その動物の健常状態や歩行障害状態等の歩行状態を診断する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、動物の体表面にマーカーを取り付け、コンピュータを用いて歩行時や走行時におけるマーカーの移動軌跡の画像データを解析する構成が開示されている。この技術では、画像データと予めデータベース化された正常時における足動変化との比較により、装蹄異常や跛行状態等を検出及び診断することができるようになっている。
また、特許文献2には、動物にロードセル(反力検出装置、すなわち荷重計)上を通過させたときの地面反力(荷重)の大きさや位置変動,歩幅,移動速度,立脚時間等に基づいて、その動物の健常性を判断する方法及び装置が開示されている。この技術では、動物の動作から得られる様々な情報を統計的に解析することで動作の左右対称性を評価し、歩行障害の有無やその重度といった健康状態を客観的に診断することができるようになっている。
一方、このような診断装置や診断方法において、動物の生体リズムの揺らぎを解析することによって動物の健康状態を診断する技術も開発されている。例えば、特許文献3には、随意運動による繰り返しリズム運動の筋肉の動きを生体リズム情報として計測し、フラクタル解析によりその生体リズム情報に内在する非線形構造を抽出して、定量的な診断基準とする構成が開示されている。なお、この技術では、フラクタル解析のほか、周波数解析やカオス解析等の手法も併用されている。これらのような解析手法を用いることによって、生理機能の低下や老化を早期に判別することが知られている。
特開2003−228701号公報 特表2004−513613号公報 特開2000−166877号公報
上記特許文献3では具体的には、健常者及び脳神経系の生理機能低下者との間の歩行リズムについて、片方の足についての歩行間隔データをフラクタル解析し比較することで、生理機能の低下を早期に判別することができる旨が記載されているが、本発明者らが牛のような四肢での歩行を行う動物について同様の解析手法をそのまま適用したところ、四肢自体に異常を有する場合、その診断の精度といった点で、未だ不十分な場合があることが判明した。
具体的には、図11に牛の歩行運動時における肢の加速度変動の揺らぎをDFA解析して求めた変動関数S(n)をグラフで示す。なお、この変動関数S(n)とは、歩行リズムのピーク間隔時間の揺らぎの度合いを表すものである。
図11中において破線で示された二本のデータは、ともに後肢に異常のある牛のデータであり、実線で示された二本のデータは、ともに四肢に異常のない正常な牛のデータである。この例では、後肢に異常のある牛と四肢に異常のない牛とでグラフの傾き等に違いはあるものの、具体的な診断指標作成に利用できるような明確かつ顕著な差は見出しにくい状態となっている。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、動物の移動運動の異常、特には四肢自体に異常のある場合の移動運動の異常について、簡便にその兆候を発見することのできる移動運動状態の診断プログラム,移動運動状態の診断装置及び移動運動状態の診断方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、動物の移動運動状態を診断する診断プログラムであって、コンピュータを、該動物の移動運動に伴って検出される体動信号から、該移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出手段と、足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析手段と、該移動運動の揺らぎ解析手段で解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算手段と、該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断手段として機能させるためのプログラムであることを特徴としている。
なお、ここでいう体動信号とは、移動運動を行う動物(人を含む多足動物)の身体から検出される物理量のことを意味している。例えば、歩行に係る速度や加速度,踏面圧力,歩幅,電磁波等が挙げられる。
ここで、動物としては、足を利用して移動運動を行うものであれば特に限定されないが、具体的には、人の他、牛,豚,羊,馬,犬,猫,ハムスター,マウス,ラット等の家畜・ペット・実験動物のような、その挙動を人間が把握,管理する動物が挙げられる。このうち、好ましくは、人,牛,馬,犬が挙げられる。
該移動運動の態様としては、歩行,早足,走行(駆け足)といった移動運動、犬かきのような四肢の前後運動及びバタ足などの水泳状態での移動運動等を挙げることができ、また、トレッドミルや流水プール等での運動もその運動状態からいって実質的に本発明の移動状態に含まれるものである。
また、上記所定足運び数とは、対象動物,対象疾病等、目的に応じて任意に設定すればよいが、その数は小さい方が好ましく、具体的には50歩以下が挙げられ、好ましくは20歩以下、特に好ましくは10歩以下が挙げられる。
また、請求項2記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、請求項1記載の構成に加え、該指標演算手段において、該間隔時間の揺らぎのパターンを示すプロットグラフの傾きを、該移動運動状態の指標として演算することを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、請求項1又は2記載の構成に加え、該診断手段において、該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標と予め設定されたモデルパターンとの類似の度合いに基づいて該移動運動状態を診断することを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成に加え、該間隔時間算出手段において、該動物の該体動信号から全ての肢体の足運び〔例えば歩行ステップ(歩調)や走行ステップ〕の間隔時間を該間隔時間とすることを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成に加え、該間隔時間算出手段において、四肢を有する該動物の該体動信号から前肢又は後肢のみに関して左右の肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間とすることを特徴としている。
また、請求項6記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、請求項1〜5の何れか1項に記載の構成に加え、該間隔時間算出手段において、該動物の動きの加速度を該体動信号として検出することを特徴としている。
また、請求項7記載の本発明の移動運動状態の診断プログラムは、請求項1〜6の何れか1項に記載の構成に加え、該移動運動の揺らぎ解析手段において、DFA解析法により、該足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析することを特徴としている。
請求項8記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、動物の移動運動に伴って発生する体動信号を検出する体動信号検出手段と、該体動信号検出手段で検出された該体動信号から該移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出手段と、該移動運動における足運びの数と該間隔時間算出手段で算出された該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析手段と、該移動運動の揺らぎ解析手段で解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算手段と、該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断手段とを備えたことを特徴としている。
また、請求項9記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、請求項8記載の構成に加え、該指標演算手段が、該間隔時間の揺らぎのパターンを示すプロットグラフの傾きを、該移動運動状態の指標として演算することを特徴としている。
また、請求項10記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、請求項8又は9記載の構成に加え、該診断手段が、該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標と予め設定されたモデルパターンとの類似の度合いに基づいて該移動運動状態を診断することを特徴としている。
また、請求項11記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、請求項8〜10の何れか1項に記載の構成に加え、該間隔時間算出手段が、該動物の該体動信号から全ての肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間として算出することを特徴としている。
また、請求項12記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、請求項8〜10の何れか1項に記載の構成に加え、該間隔時間算出手段が、四肢を有する該動物の該体動信号から前肢又は後肢のみに関して左右の肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間として算出することを特徴としている。
また、請求項13記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、請求項8〜12の何れか1項に記載の構成に加え、該体動信号検出手段が、該動物の動きの加速度を該体動信号として検出することを特徴としている。
また、請求項14記載の本発明の移動運動状態の診断装置は、請求項8〜13の何れか1項に記載の構成に加え、該移動運動の揺らぎ解析手段が、DFA解析法により、該足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析することを特徴としている。
請求項15記載の本発明の移動運動状態の診断方法は、動物(人を除く)の移動運動に伴って検出される体動信号から、該移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出ステップと、足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析ステップと、該移動運動の揺らぎ解析ステップで解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算ステップと、該指標演算ステップで演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断ステップとを備えたことを特徴としている。
本発明の移動運動状態の診断プログラム,移動運動状態の診断装置及び移動運動状態の診断方法(請求項1,8及び15)によれば、足運びの数と移動運動のリズムの間隔時間の揺らぎとの相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域の揺らぎのパターンを移動運動状態の指標とするという簡素な構成で、移動運動状態の特徴を正確に把握することができる。また、移動運動状態の異常から、疾病の兆候等の異常を早期発見することができ、特には足自体に関する異常(負傷や疾病等)を早期発見することができる。
本発明の移動運動状態の診断プログラム及び移動運動状態の診断装置(請求項2及び9)によれば、揺らぎのパターンを示すプロットグラフの傾き(すなわち、微分処理を施したデータ)を用いることで、微妙な揺らぎの変動を把握しやすくすることができ、健康あるいは正常な移動運動状態の移動運動のリズムに対する負の相関性に起因する揺らぎのパターン(すなわち、観察しているだけではわからない程度の微妙な、正常でない揺らぎの兆候)に基づく診断を実施することができる。これにより、診断精度を向上させることができる。
本発明の移動運動状態の診断プログラム及び移動運動状態の診断装置(請求項3及び10)によれば、移動運動状態の指標とモデルパターンとの類似の度合いに基づく診断により、定量的な移動運動状態の診断が容易となる。
本発明の移動運動状態の診断プログラム及び移動運動状態の診断装置(請求項4及び11)によれば、全ての肢体の足運びの間隔時間を参照することにより、単一の肢から得られる体動信号を参照するだけでは得られない総体的な足運びの揺らぎを把握することができ、適切な移動運動状態の異常の診断が可能となる。
本発明の移動運動状態の診断プログラム及び移動運動状態の診断装置(請求項5及び12)によれば、特に四肢を有する動物において、前肢又は後肢のみであっても、左右の肢体の足運びの間隔時間を参照することにより、的確に跛行性を把握することができる。また、蹄の病気(蹄病)に由来する移動運動状態の異常の診断が容易となる。
本発明の移動運動状態の診断プログラム及び移動運動状態の診断装置(請求項6及び13)によれば、容易かつ非侵襲的に動物の体動信号を検出することができる。
本発明の移動運動状態の診断プログラム及び移動運動状態の診断装置(請求項7及び14)によれば、体動信号に内在する非線形構造を容易に抽出することができ、診断対象となる動物の移動運動時における揺らぎ特性を正確に演算することができる。
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図7は本発明の一実施形態に係る移動運動状態の診断装置を示すもので、図1は本移動運動状態の診断装置の全体構成を示すブロック図、図2は本移動運動状態の診断装置で処理される体動信号を示すグラフ、図3は本移動運動状態の診断装置における演算結果を示すグラフであり、(a)は歩行リズムの揺らぎのパターンを示すプロットグラフ、(b)は(a)に示すグラフの傾きを示すグラフ、図4は本移動運動状態の診断装置において予め設定されているモデルパターンを説明するためのグラフであり、(a)は典型的な跛行状態における歩数及び間隔時間の関係を示すグラフ、(b)は(a)に示す跛行状態における歩行リズムの揺らぎのパターンを示すプロットグラフ、(c)は(b)に示すグラフの傾きを示すグラフ、図5はコンピュータを利用した本移動運動状態の診断装置の構成例を示す模式図、図6は本移動運動状態の診断装置における制御内容を示すフローチャート、図7は後肢に異常を有する、ある牛についての歩行ステップ間隔時間と歩数との関係を示す図であり、かつ、本移動運動状態の診断装置で演算されるスコアと歩数との関係を示すグラフである。
[1.構成]
[1−1.全体構成]
本実施形態では、牛の歩行状態を解析対象とした移動運動状態の診断装置を具体例として説明する。すなわち、本移動運動状態の診断装置は、牛の歩行状態に対応するパラメータ(例えば、加速度)を信号データとして検出し、それにデータ処理を施して出力を行う装置である。
図1に示すように、本診断装置は、体動信号検出装置(体動信号検出手段)1,データ処理部2及び出力装置5を備えて構成される。データ処理部2は、コンピュータの内部で演算処理される機能部位であり、各機能は個別のプログラムとして構成されている。なお、本実施形態におけるデータ処理部2は、間隔時間算出手段,移動運動の揺らぎ解析手段,指標演算手段及び診断手段として機能するものである。
コンピュータを利用した本診断装置の構成例を図5に示す。このコンピュータ10は、上述の体動信号検出装置1,中央処理装置(CPU)6,記憶装置(ROM,RAM等)7,出力装置としてのモニタ5,入力インタフェースとしてのキーボード8及びマウス9を備えて構成されている。ここで、本診断装置に係るデータ処理部2は、記憶装置7の内部にプログラムとして記憶されている。
以下、本診断装置におけるデータ処理内容について、概念的に説明する。
[1−2.体動信号検出装置]
体動信号検出装置1は、動物の移動運動に伴って発生する体動信号を検出するセンサである。ここでいう体動信号には、センサから直接検出される情報のほか、センサでの検出情報を演算等によって処理して、対応するパラメータの値を推定値として求めたものも含まれる。
本実施形態ではこの体動信号検出装置1として、本診断装置の演算対象となる肢の動きの加速度信号を検出するための加速度センサが適用されている。なお、この加速度センサは、測定対象や目的に合わせて一軸〜三軸のものを任意に用いてよいが、移動時における鉛直方向,水平前後方向及び水平左右方向の三方向へ作用する加速度を検出するための三軸加速度センサを用いるのが好ましい。
また、加速度センサの装着位置については、その対象動物及び目的に応じて、背中,腹,肢,首等任意に設定すればよいが、好ましくは背中又は肢である。今回の具体例では、各々の肢に三軸加速度センサを装着しており、ここで検出された前後方向の加速度の検出情報及びその検出時刻情報が、図1に示すように、データ処理部2へ入力されるようになっている。
ここで検出された加速度信号の経時変化の例を図2に示す。ここでは、各四肢の歩行ステップに応じた四つのグラフが図示されている。図2中において、前肢で検出された加速度信号を太線で示し、後肢で検出された加速度信号を細線で示している。また、右肢で検出された加速度信号を実線で示し、左肢で検出された加速度信号を破線で示している。なお、このグラフから、牛の歩行運動における四肢の足運びの順序が左後肢,左前肢,右後肢,右前肢の順であることを読み取ることができる。これらの各肢体が歩行のために肢を前方へ強く振った時の加速度信号に、符号A〜Dを付して示す。
[1−3.データ処理部]
データ処理部2は、図1に示すように、間隔時間算出部(間隔時間算出手段)3a,移動運動の揺らぎ解析部(移動運動の揺らぎ解析手段)3b及び指標演算部(指標演算手段)3cを有する解析部3及び診断部(診断手段)4を備えて構成される。
[1−3−1.間隔時間算出部]
間隔時間算出部3aは、体動信号検出装置1で検出された加速度信号から、牛の歩行リズムの間隔時間を算出するものである。ここでは、移動運動のリズムの間隔時間として、全ての肢体同士の歩行ステップ(足運び)の間隔時間を算出するようになっている。つまり、図2中に示された符号A〜B間,B〜C間,C〜D間及びD〜A間の各間隔時間を、時系列のデータとして算出している。ここで算出された歩行ステップの間隔時間は、移動運動の揺らぎ解析部3bへ入力されるようになっている。
なお、ここでは四肢を有する動物において全ての肢体の足運びの間隔時間を用いているが、その診断対象・目的に応じて、前肢のみ(B〜D間及びD〜B間)又は後肢のみ(A〜C間及びC〜A間)を移動運動の揺らぎ解析部3bへ入力する形態をとってもよい。あるいは、全ての間隔時間を移動運動の揺らぎ解析部3bへ入力した上で、移動運動の揺らぎ解析部3bでの解析時に目的とする間隔時間についてのみ解析を行ってもよい。
この間隔時間算出部3aに入力される加速度信号は、体動信号検出装置1において所定時間の間に検出された一連の時系列データ(例えば、一時的に記憶装置7に蓄えられたデータ)であってもよいし、あるいは、信号検出手段1において任意の時間の間隔で随時検出された個別の測定データであってもよい。
時系列データを間隔時間算出部3aへ入力する際の態様として、時系列データとしての加速度信号を検出すると同時にそのまま、間隔時間算出部3aへ入力してもよいし、また、体動信号検出装置1からの加速度信号の総数が予め設定された時間数又はデータ数として所定数以上となるまでの間、各加速度信号を記憶装置7に記憶し、データ数が十分に揃った段階でそれら全体の加速度信号を間隔時間算出部3aへと入力してもよい。なお、本実施形態では後者の手法を用いており、具体的には牛に一定のコースを歩かせることにより数分間の歩行データを採取し、その後解析を行っている。
[1−3−2.移動運動の揺らぎ解析部]
移動運動の揺らぎ解析部3bは、間隔時間算出部3aから入力された間隔時間と足運びの数との相関関係を解析する機能部である。ここでは、移動運動のリズムの間隔時間の揺らぎを解析する手法が用いられている。
ここでいう「揺らぎ」とは、ある波動が刻々と変化する際に観察される僅かな波形のズレ(空間的,時間的変化や動きが部分的に不規則な変化)のことを指している。例えば、移動運動に伴う体動を加速度変動として検出した時系列データだけでなく、呼吸数や心拍数,脳波等のバイタルサインを時系列データとした場合にも、それらの波動のピーク間隔や周期は一定ではなく、複雑な変動を示すことが知られている。一方で、このような不規則に見える複雑な変動の中から、その挙動を支配していると考えられる構造を解析するための数々の手法が提案されている。移動運動の揺らぎ解析部3bは、これらのような手法を利用して、ピーク間隔時間の揺らぎの度合いを観察することにより、その変動の背後に存在すると考えられる非線形構造を解析するものである。
なお、具体的な解析手法としては、スペクトル解析(FFT解析),フラクタル解析(マルチフラクタル解析,DFA解析等),カオス解析及びウェーブレット解析等の公知の解析手法が挙げられるが、ここでは、フラクタル解析法の一つであるDFA解析について詳述する。
DFA解析の手法は、時系列の長期相関特性を解析するための手法の一つである。本実施形態では、牛の歩行状態における歩行リズムのピーク間隔時間の揺らぎの度合いを示す関数として、変動関数F(n)を演算する。変動関数F(n)とは、時系列データを幅nの複数の区間に分割した各々の区間における、局所的なトレンドと実データとの最小二乗誤差(分散)のことを意味しており、以下の式(1),(2)に基づいて演算される。なお、変動関数F(n)のグラフ形状は、歩行リズムの間隔時間の揺らぎのパターンに対応した形状となる。ここで、トレンドとは、各区間の実データにm次の曲線(m=0,1,2,…)を最小二乗法によりあてはめたものをいう。
Figure 2008264114
ただし、B(i):実データ,Bavg:B(i)の平均値,N:データ総数
n:区間の分割幅,yn(k):トレンド
ここで算出される変動関数F(n)の一例を図3(a)に示す。この図3(a)に示すグラフでは、歩数nの対数log10n及び変動関数F(n)の対数log10F(n)を、横軸及び縦軸にプロットして示している。前述の通り、図3(a)中において実線で示された二本のデータは、ともに四肢に異常のない正常な牛のデータである。また、破線で示された二本のデータは、ともに後肢に異常のある牛のデータである。つまり、変動関数F(n)を演算した段階では、後肢に異常のある牛のデータと正常な牛のデータとを、グラフ形状から判別することが困難であることがわかる。なお、このグラフにおける傾きはスケーリング指数と呼ばれており、時系列の長期相関特性を示す指標と考えられているが、本発明ではこのスケーリング指数とは異なる、以下に説明する別の指標を用いて診断を行う。
移動運動の揺らぎ解析部3bで演算された変動関数F(n)は、指標演算部3cへと入力されるようになっている。
[1−3−3.指標演算部]
指標演算部3cは、移動運動の揺らぎ解析部3bで演算された変動関数F(n)のうち、予め設定された所定足運びの数(例えば歩数)n1以下の領域における揺らぎのパターンに基づいて、移動状態の指標となる類似の度合い(スコア)を演算する機能部である。本実施形態では、n1=10以下の領域における揺らぎのパターンを抽出してスコアを演算するようになっている。さらにここでは、揺らぎのパターンの特徴を把握しやすくするために、変動関数の対数log10F(n)を歩数nの対数log10nについて微分したものに基づいてスコアを演算するようになっている。
図3(b)は、変動関数の対数log10F(n)の傾き(微分値)の変化をグラフ化して示したものである。この図3(b)に示すように、log10nが1以下の領域(すなわち、歩数n=10以下の領域)に着目すると、実線で示されたlog10F(n)の傾きが略右上がりに上昇している一方、破線で示されたlog10F(n)の傾きは僅かに増減してジグザグ状のグラフ形状となっている。
このように、比較的歩数nの小さい領域において、四肢に異常のない正常な牛のデータと後肢に異常のある牛のデータとの間に、明確な差異が認められる。そこで、指標演算部3cでは、このようなlog10F(n)の傾きの特徴を定量化する演算を行うようになっているのである。なお、比較的歩数の小さい領域において上記のような特徴的なグラフ形状の差異が認められる原因の一つとして、対数プロットの特性が関与しているものと考えられる。
本実施形態では、log10F(n)の傾きが予め設定されたモデルパターンに対してどの程度類似しているかを示すスコアが演算される。指標演算部3cにはこのモデルパターンとして、図4(c)に示すような、仮想的なパターンが予め設定されている。
このモデルパターンは、DFA解析により、歩行ステップの間隔時間が交互に大小を繰り返すような典型的な跛行パターン〔図4(a)に示されたパターン〕から得られたものである。前述の式1,式2に基づいて、図4(a)に示された跛行パターンに基づく変動関数を演算すると、図4(b)に示すようなグラフが得られる。この変動関数の傾きの変化をグラフ化したものが図4(c)である。図4(c)に示すグラフ中には、得られた傾きの最初の5点をr1〜r5として示している。これらの5点の座標が、指標演算部3cに記憶されている。
続いて、具体的なスコアの演算手順を以下に説明する。
まず、移動運動の揺らぎ解析部3bで演算された図3(b)に示すようなlog10F(n)の傾き曲線のうち、最初の6点についてのトレンドを算出し、これを除去する演算を行う。次に、トレンドが除去された傾き曲線のうちの最初の5点の値を、x1〜x5と定義して、以下の式3に従ってスコアを演算する。
Figure 2008264114
つまりここでは、モデルパターンに対するlog10F(n)の傾き曲線の近似率が演算されている。これらのスコアが1に近いほど、log10F(n)の傾き曲線がモデルパターンに類似していることを意味する。したがって、スコアが大きいほど跛行状態に近いものと見なすことができる。
なお、上記スコアの演算については、あくまでもモデルパターンへの類似の度合いを演算しているに過ぎず、一般的に測定値とモデルパターンとの差のノルム(距離)を求める手法であれば、具体的な演算内容は特にこれに限定されない。前述の式3に示すように、モデルパターンとlog10F(n)の傾き曲線との比をとる手法の場合においては、例えば以下の式4に従ってスコアを演算してもよい。
Figure 2008264114
図3(a)に示された正常な牛及び後肢に異常のある牛のスコアを以下に示す。また、参照用として、その他の正常な牛から得られたスコアについても列記する。
Figure 2008264114
このように、後肢に異常のある牛のスコアは、正常な牛のスコアと比較して大きいことがわかる。この結果から、上記の式3に基づく演算では、スコアがおよそ0.2よりも大きい場合に、揺らぎのパターンが跛行状態に似ていると見なすことができると考えられる。
また、上記の表1中においては「正常な牛」とされているがスコアが0.1989と高いものがある。この牛は、目に見える肢の異常がないという点で「正常」と分類されてはいるものの、歩くのを好まない問題牛であり、歩行の異常兆候を早期に検知したものと考えることができる。
[1−4.その他の構成]
診断部4は、解析部3の指標演算部3cで演算されたスコアに基づいて、牛の歩行状態を診断する機能部であり、スコアが予め設定された所定値以上である場合に、歩行状態が跛行であると診断するようになっている。また、出力装置5は、移動運動の揺らぎ解析部3bで演算されたlog10F(n)やその傾きを示すグラフ,診断部4における診断結果等を表示する装置である。
[2.フローチャート]
図6に示すフローチャートを用いて、本診断装置における制御内容を説明する。
ステップA10では、体動信号検出装置1としての加速度センサにより、加速度の検出情報及びその検出時刻情報が測定信号Sとして検出される。ここで検出された測定信号Sは、データ処理部2へ入力され、記憶される。
続くステップA20では、データ処理部2内の間隔時間算出部3aにおいて、測定信号Sの総数が予め設定された所定数よりも大きいか否かが判定される。つまりこのステップでは、データ処理すべきデータ数が十分に揃っているか否かが判定される。ここで、測定信号Sの総数が所定数以上である場合にはステップA30へ進み、測定信号Sの総数が所定数未満である場合にはステップA10へ戻る。これにより、データ数が十分に揃うまでの間、ステップA10〜20が繰り返し実行されることになる。
ステップA30(間隔時間算出ステップ)では、間隔時間算出部3aにおいて移動運動のリズムの間隔時間が算出され、移動運動の揺らぎ解析部3bへと入力される。ここでは、全ての肢体同士の歩行ステップ(足運び)の間隔時間が算出される。
続くステップA40では、移動運動の揺らぎ解析部3bにおいて、変動関数F(n)が演算される。変動関数F(n)は歩数nの関数であり、牛の歩行状態における歩行リズムのピーク間隔時間の揺らぎの度合いを示すものである。ここで演算される変動関数F(n)のグラフは、例えば図3(a)に示すような形状をなす。
さらに続くステップA50(移動運動の揺らぎ解析ステップ)では、変動関数の対数log10F(n)が歩数nの対数log10nについて微分されて、その傾きが演算される。つまりここでは、間隔時間の揺らぎのパターンの傾きが演算されることになる。ここで演算されるlog10F(n)の傾き(微分値)のグラフは、例えば図3(b)に示すような形状をなす。
続いてステップA60(指標演算ステップ)では、10歩以下の領域におけるlog10F(n)の傾きに基づき、上記の式3に従ってスコアが演算される。このスコアの演算により、モデルパターンに対するlog10F(n)の傾きの類似の度合いが演算されることになる。また、演算されたスコアは診断部4へと入力される。
続くステップA70(診断ステップ)では、診断部4において、両スコアが予め設定された所定値以上であるか否かが判定されて、歩行状態が跛行であるか否かが診断される。例えばここでは、両スコアが0.2以上である場合には、跛行状態であると診断される。また、スコアの大きさに応じて、跛行の兆候が見られると診断される。そして、ステップA80では、出力装置5において上記のような解析結果が出力される。
[3.間隔時間の設定]
ここで、間隔時間算出部3aで算出される間隔時間について詳述する。本診断装置では、前述の通り、図2中に示されるA〜B間,B〜C間,C〜D間及びD〜A間の各間隔時間、すなわち、全ての肢体の歩行ステップの間隔時間が演算されるようになっているが、仮に一本の肢の歩行ステップの間隔時間(例えば、図2中に示されるA〜A間)を参照した場合の演算結果を図10(a),(b)に示す。
図10(a)は後肢に異常のある牛について、一本の肢の歩行ステップの間隔時間及び歩数から演算された変動関数F(n)のグラフ、図10(b)はその変動関数の傾きの変動を示すグラフである。なお、図10(a),(b)中において実線で示されたものは、牛の前左肢の歩行ステップの間隔時間から得られたグラフであり、破線で示されたものは、後左肢の歩行ステップの間隔時間から得られたグラフである。
図10(b)に示されるグラフと図3(b)に示されるグラフとを比較すると、一本の肢の歩行ステップの間隔時間を参照した場合には、歩数nが小さい領域における特徴的な変動が見られない。つまり、単一の肢の歩行ステップに跛行性を見いだすことは困難であることがわかる。
なお、図10(a),(b)中における実線のグラフと破線のグラフとの形状は非常によく似ている。このことから、単一の肢の歩行ステップの間隔時間の解析結果は、何れの肢においても略同一であるといえる。
[4.効果]
このように、本実施形態に係る診断装置によれば、移動運動の揺らぎ解析部3bで演算された変動関数F(n)のうち、10歩以下の領域の揺らぎのパターンを移動運動状態の指標とするという簡素な構成で、体動信号に内在する非線形構造を容易に抽出して、移動運動状態の特徴を正確に把握することができ、跛行状態といった疾病の兆候を早期発見することができる。また、log10F(n)の傾き(微分値)の変化に着目することによって、例えば、図3(a)に示すようなグラフを見ただけではわからない微妙な揺らぎの変動を把握しやすくすることができ、診断精度を向上させることができる。
さらに、本診断装置では、微妙な揺らぎの変動がモデルパターンに対してどの程度類似しているかを定量的に示すスコアが指標演算部3cで演算されるようになっているため、跛行の度合いを容易に把握することができる。つまり、スコアを定量的な診断基準として用いることができる。
また、本診断装置によれば、全ての肢体の歩行ステップの間隔時間を参照することにより、単一の肢から得られる体動信号を参照するだけでは得られない総体的な歩行リズムの揺らぎを把握することができ、適切な歩行異常の診断を行うことができる。また、牛の四肢に装着された加速度センサから得られる加速度情報を用いているため、容易かつ非侵襲的に動物の体動信号を検出することができる。
後肢に異常のある牛の歩行状態に関する、本歩行診断装置による診断結果を図7に示す。この図7中において、歩行ステップの間隔時間が実線で示され、スコアが白丸で示されている。グラフ上では、牛が立ち止まったときの間隔時間を0として示している。また、スコアの横軸方向の位置は、そのスコアの演算時に参照される歩数の範囲のうち、最初の歩数に対応する位置となっている。
図7に示すように、牛が立ち止まる前後では、スコアが低く算出されていることがわかる。これは、立ち止まる前後において、歩行状態の跛行性が崩れていることを示しているものと考えられる。したがって、より正確なスコアを演算のためには、連続的に歩行している状態(例えば、50歩以上、好ましくは80歩以上、より好ましくは100歩以上)で得られた間隔時間の時系列データを得ることが望ましい。
[5.その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上述の実施形態では、データ処理部2におけるデータ処理機能がプログラムとして構成されたものを例示したが、この機能の実現手段はプログラムに限定されない。例えば、データ処理部2を、ROM,RAM,CPU等を内蔵したワンチップマイコンとして構成してもよいし、あるいは、デジタル回路やアナログ回路といった電子回路として形成してもよい。
また、上述の実施形態では、図4(c)に示すようなモデルパターンが指標演算部3cに記憶されているが、その他のモデルパターンを用意しておくことも考えられる。例えば、負の相関を示すものとしては、図8(a)に示すように、一本の肢の歩行ステップの間隔時間が他とずれているようなパターンや、図8(b)に示すように、二本の肢の歩行ステップの間隔時間が短く他の二本の肢の歩行ステップの間隔時間が長いようなパターン等が挙げられる。これらのモデルパターンに基づく変動関数及びその傾きの変化は、図9(a),(b)に示すようなグラフとなる。なお、図9(a),(b)中において実線で示されたものは図8(a)に示すパターンから得られる変動関数であり、破線で示されたものは図9(b)に示すパターンから得られた変動関数である。
この図9(b)中に示される5点s1〜s5やt1〜t5の座標を指標演算部3cに記憶しておき、前述の式3中におけるr1〜r5の代わりに用いることで、図9(a),(b)に示すモデルパターンへの類似の度合いを演算することができる。
また、上述の実施形態では、全ての肢体の足運びの間隔時間を演算するようになっているが、例えば前肢のみに関して左右の肢体の足運びの間隔時間を演算する構成としてもよいし、あるいは、後肢のみに関して同様の演算を行う構成としてもよいし、場合によっては、全ての肢体の移動運動の足運びの間隔時間についての解析と前肢又は後肢のみについての解析とを組み合わせたり、前肢のみ及び後肢のみについての解析を組み合わせたりしてもよい。複数の肢体の足運びの間隔時間を参照することで、移動運動状態における跛行性を把握することができ、正確な診断を行うことができる上、またこれらを組み合わせることにより、診断の精度が高まる。
また、上述の実施形態では、解析部3においてDFA解析の手法が用いられているが、解析方法はこれに限定されない。つまり、足運びの間隔時間の揺らぎのパターンを得ることのできる手法であればどのような解析を行ってもよく、例えばウェーブレット解析,マルチフラクタル解析等を適用することができる。ここで一例として、ウェーブレット解析を用いてスコアを算出する方法を説明する。
まず、前述の表1の解析で用いた牛の歩行ステップの間隔時間の実データB(i)にスケール2のHaarウェーブレットを用いてウェーブレット変換を施す。次に、この変換で得られたウェーブレット係数C(i)の絶対値|C(i)|を実データの値で割り、新たな時系列データ|C(i)|/B(i)を算出する。そしてこの時系列データの平均値をスコアとする。
このようにして算出されたスコアを表2に示す。ここでもスコアがおよそ0.2以上の場合に、揺らぎのパターンが跛行状態に似ていると見なすことができる。しかも、表2中における上から3番目の牛(正常な牛と分類されてはいるが、歩行を好まない問題牛)のスコアがかなり大きい値を示しており、ここでも目に見えない肢の異常を早期に感度よく検出できているものと考えることができる。
Figure 2008264114
また、上述の実施形態では、間隔時間算出部3aにおいて牛の全ての肢体同士の歩行ステップの間隔時間が算出されるようになっているが、前肢又は後肢のみに関して左右の肢体の歩行ステップの間隔時間を算出する構成とすることも考えられる。例えば、図2中に示された符号A〜C間及びC〜A間や、符号B〜D間及びD〜B間の各間隔時間を時系列のデータとして算出する。このように左右の肢体の歩行ステップの間隔時間を参照することで、的確に跛行性を把握することができる。特に、蹄の病気(蹄病)に由来する歩行異常の診断が容易となると考えられる。
本発明の一実施形態に係る移動運動状態の診断装置の全体構成を示すブロック図である。 本移動運動状態の診断装置で処理される体動信号を示すグラフである。 本移動運動状態の診断装置における演算結果を示すグラフであり、(a)は歩行リズムの揺らぎを示す変動関数F(n)の対数プロットグラフ、(b)は(a)に示すグラフの傾きを示す対数プロットグラフである。 本移動運動状態の診断装置において予め設定されているモデルパターンを説明するためのグラフであり、(a)は典型的な跛行状態における歩数及び間隔時間の関係を示すグラフ、(b)は(a)に示す跛行状態における歩行リズムの揺らぎを示す変動関数F(n)の対数プロットグラフ、(c)は(b)に示すグラフの傾きを示す対数プロットグラフである。 コンピュータを利用した本移動運動状態の診断装置の構成例を示す模式図である。 本移動運動状態の診断装置における制御内容を示すフローチャートである。 本移動運動状態の診断装置で演算されるスコアと歩数及び間隔時間との関係を示すグラフである。 本発明の変形例に係るモデルパターンを説明するためのグラフであり、(a)は一本の肢の歩行ステップの間隔時間が他とずれている場合を想定したモデルパターン、(b)は二本の肢の歩行ステップの間隔時間が短く他の二本の肢の歩行ステップの間隔時間が長い場合を想定したモデルパターンを示すものである。 本発明の変形例に係るモデルパターンに基づいて求められるグラフであり、(a)は図8(a),(b)のモデルパターンから演算された変動関数F(n)の対数プロットグラフ、(b)は(a)に示すグラフの傾きを示す対数プロットグラフである。 本移動運動状態の診断装置において、仮に一本の肢の歩行ステップの間隔時間を参照した場合を説明するためのグラフであり、(a)は一本の肢の歩行ステップの間隔時間の変動関数F(n)の対数プロットグラフ、(b)は(a)に示すグラフの傾きを示す対数プロットグラフである。 従来技術に係るDFA解析によって求められた揺らぎの大きさS(n)を示す対数プロットグラフである。
符号の説明
1 体動信号検出装置(体動信号検出手段)
2 データ処理部
3 解析部
3a 間隔時間算出部(間隔時間算出手段)
3b 移動運動の揺らぎ解析部(移動運動の揺らぎ解析手段)
3c 指標演算部(指標演算手段)
4 診断部(診断手段)
5 出力装置

Claims (15)

  1. 動物の移動運動状態を診断する診断プログラムであって、コンピュータを、
    該動物の移動運動に伴って検出される体動信号から、該移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出手段と、
    足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析手段と、
    該移動運動の揺らぎ解析手段で解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算手段と、
    該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断手段
    として機能させるための移動運動状態の診断プログラム。
  2. 該指標演算手段において、該間隔時間の揺らぎのパターンを示すプロットグラフの傾きを、該移動運動状態の指標として演算する
    ことを特徴とする、請求項1記載の移動運動状態の診断プログラム。
  3. 該診断手段において、該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標と予め設定されたモデルパターンとの類似の度合いに基づいて該移動運動状態を診断する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の移動運動状態の診断プログラム。
  4. 該間隔時間算出手段において、該動物の該体動信号から全ての肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間とする
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の移動運動状態の診断プログラム。
  5. 該間隔時間算出手段において、四肢を有する該動物の該体動信号から前肢又は後肢のみに関して左右の肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間とする
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の移動運動状態の診断プログラム。
  6. 該間隔時間算出手段において、該動物の動きの加速度を該体動信号として検出する
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の移動運動状態の診断プログラム。
  7. 該移動運動の揺らぎ解析手段において、DFA解析法により、該足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の移動運動状態の診断プログラム。
  8. 動物の移動運動に伴って発生する体動信号を検出する体動信号検出手段と、
    該体動信号検出手段で検出された該体動信号から該移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出手段と、
    該移動運動における足運びの数と該間隔時間算出手段で算出された該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析手段と、
    該移動運動の揺らぎ解析手段で解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算手段と、
    該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断手段と
    を備えたことを特徴とする、移動運動状態の診断装置。
  9. 該指標演算手段が、該間隔時間の揺らぎのパターンを示すプロットグラフの傾きを、該移動運動状態の指標として演算する
    ことを特徴とする、請求項8記載の移動運動状態の診断装置。
  10. 該診断手段が、該指標演算手段で演算された該移動運動状態の指標と予め設定されたモデルパターンとの類似の度合いに基づいて該移動運動状態を診断する
    ことを特徴とする、請求項8又は9記載の移動運動状態の診断装置。
  11. 該間隔時間算出手段が、該動物の該体動信号から全ての肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間として算出する
    ことを特徴とする、請求項8〜10の何れか1項に記載の移動運動状態の診断装置。
  12. 該間隔時間算出手段が、四肢を有する該動物の該体動信号から前肢又は後肢のみに関して左右の肢体の足運びの間隔時間を該間隔時間として算出する
    ことを特徴とする、請求項8〜10の何れか1項に記載の移動運動状態の診断装置。
  13. 該体動信号検出手段が、該動物の動きの加速度を該体動信号として検出する
    ことを特徴とする、請求項8〜12の何れか1項に記載の移動運動状態の診断装置。
  14. 該移動運動の揺らぎ解析手段が、DFA解析法により、該足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する
    ことを特徴とする、請求項8〜13の何れか1項に記載の移動運動状態の診断装置。
  15. 動物(人を除く)の移動運動に伴って検出される体動信号から、該移動運動のリズムの間隔時間を算出する間隔時間算出ステップと、
    足運びの数と該間隔時間の揺らぎとの相関関係を解析する移動運動の揺らぎ解析ステップと、
    該移動運動の揺らぎ解析ステップで解析された該相関関係のうち、予め設定された所定足運びの数以下の領域における該間隔時間の揺らぎのパターンに基づいて、該移動運動状態の指標を演算する指標演算ステップと、
    該指標演算ステップで演算された該移動運動状態の指標に基づいて該移動運動状態を診断する診断ステップと
    を備えたことを特徴とする、移動運動状態の診断方法。
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