光ディスク装置は、CD、DVDに代表されるように、音楽、映像等の情報を記録・再生する機器として、既に広く普及している。さらに近年では、記憶容量を大幅に増加させた、青色レーザを用いた光ディスク装置も市場に出始めている。
ここで、従来の光ディスク装置の構成について図7を用いて説明する。
図7は、従来の光ディスク装置のトラッキング制御系の構成を示す図である。
図7において、1は光ディスク、2はスピンドルモータ、3はトラッキングアクチュエータ、4は対物レンズ、5はキャリッジ、6はレーザ光、7はステッパ、12はトラッキング制御手段、13はトラッキング駆動手段、14はステッパ制御手段、15はステッパ駆動手段である。
光ディスク1の記録または再生を行なう際、光ディスク1がスピンドルモータ2により回転駆動され、レーザ光6が光ディスク1に照射される。レーザ光6は、キャリッジ5に具備される図示しないレーザダイオードから発光され、キャリッジ5に具備される図示しない光学部品を経由し、対物レンズ4によって光ディスク1に集光される。対物レンズ4はキャリッジ5に具備される図示しないフォーカスアクチュエータと、トラッキングアクチュエータ3によって懸架される。また、キャリッジ5は、光ディスク1の記録・再生可能な全ての領域にレーザ光6を集光できるように、ステッパ7によってディスク半径方向に駆動される。対物レンズ4は、フォーカスアクチュエータによりフォーカス制御が、トラッキングアクチュエータ3によってトラッキング制御がなされる。
正確な記録・再生を行うためには、対物レンズ4と光ディスク1との距離が適正に保たれていることが必要である。それを実現するため、光ディスク1に照射されたレーザ光の反射光を光ピックアップにより検出し、その検出信号を基にして生成されるフォーカス誤差信号を用いて、フォーカスアクチュエータを駆動制御するフォーカス制御が行なわれている。フォーカス誤差信号は、対物レンズ4から照射されたレーザ光6が光ディスク1で反射され、再度対物レンズ4を通ってキャリッジ5に具備される図示しない光学部品を経由し、図示しない複数の光検出器により検出されて複数の電気信号に変換され、それら複数の電気信号を元に生成される。
また、光ディスク1に情報を記録するときには、光ディスク1に形成されたトラック上にデータを生成することが、またデータを再生するときには形成されたトラックを正確にトレースすることが必要である。それを実現するため、光ディスク1に照射されたレーザ光の反射光を光ピックアップにより検出し、その検出信号を基にして生成されるトラッキング誤差信号を用いて、トラッキングアクチュエータを駆動制御するトラッキング制御が行なわれている。トラッキング誤差信号は、対物レンズ4から照射されたレーザ光6が光ディスク1で反射され、再度対物レンズ4を通ってキャリッジ5に具備される図示しない光学部品を経由し、図示しない複数の光検出器により検出されて複数の電気信号に変換され、それら複数の電気信号を元に生成される。
このような、フォーカス制御、トラッキング制御を高精度に行なうことにより、光ディスク1に記録されたデータの再生や、光ディスク1へのデータの記録を、正確に行なうことができる。
一般のCD、DVD等の光ディスクで記録・再生を行うときは、通常フォーカス制御もトラック制御も、高精度な制御が可能なクローズドループ制御が行なわれている。
一方、光ディスク装置の機能をそのまま利用し、光ディスクのデータ記録面の裏側であるラベル面に描画する技術(以下、光ディスク装置型ラベル面描画技術と称する)があり、ラベル面描画機能を付加した光ディスク装置(以下、ラベル面描画機能付光ディスク装置と称する)が開発されている。
光ディスク装置型ラベル面描画技術に対応した光ディスク1では、光ディスク1の描画面に感熱塗料が塗布されている。描画時には、光ディスク1の描画面が対物レンズ4に対向するように、通常の光ディスクの記録・再生時に対して光ディスクを裏返して光ディスク装置に装着し、描画面にレーザ光を照射することで描画が行なわれる。
従って、通常の光ディスクの記録・再生時と同様、ラベル面描画時には光ディスクの描画面に対してレーザ光を集光する必要がある。そのため、ラベル面描画時においてもフォーカス制御が必要となる。しかし、感熱塗料が塗布されている光ディスクのラベル面の反射率が非常に低い場合、得られるフォーカス誤差信号は非常にS/Nが低いものとなる。そのため、ラベル面描画時においては安定したクローズドループによるフォーカス制御が非常に困難であることから、フォーカス誤差信号のS/Nが低いラベル面の描画時は、フォーカス制御はオープンループ制御で行なわれている。
また、光ディスク装置型ラベル面描画技術に対応した光ディスクで、ラベル面に、CDやDVDの記録系の光ディスクのように案内溝が形成されていない場合、トラッキング誤差信号を得ることができない。従って、トラッキング誤差信号を得ることができないラベル面の描画時は、トラッキング制御はオープンループ制御で行なわれている。
光ディスク装置型ラベル面描画技術での描画は、周方向に対して連続または不連続な線を、規定のトラックピッチで半径方向に並べて描画していく形で行なわれる。描画される線は、スパイラル状に形成される場合と、同心円状に形成される場合とがある。いずれの場合も対物レンズをトラッキング方向に微小距離ずつ移動させていくトラッキング制御が必要である。トラッキング制御がオープンループ制御で行なわれている場合、トラッキング制御を行う方法として、主に次の2つの方法がある。
一つはトラッキング制御をステッパ駆動のみを使用して行う方法で、描画が規定のトラックピッチとなるように、描画中に適切なタイミングでステッパを順次送っていく。この場合、ステッパの1ステップ当たりのトラック方向移動量が、極めて正確である必要がある。一般的に光ディスク装置で用いられているステッパ制御では、通常は移動分解能を持たせるためにマイクロステップ駆動が用いられている。光ディスク装置型ラベル面描画技術でのトラック送り制御も、ステッパ駆動だけでトラック送りを行う場合は、必然的にマイクロステップ駆動を用いた形態になる。しかし、マイクロステップ駆動は、各ステップの移動距離がばらつきやすく、光ディスク装置型ラベル面描画技術の描画品質を十分に満足するほどの精度を得るのが困難である。
それに対してもう一つのトラッキング制御の方法として、前記問題点を解消するために、ステッパ駆動と、移動精度が得られ易いトラッキングアクチュエータのオープン制御駆動を組み合わせて、トラッキング制御を行う方法がある。ステッパ駆動は、マイクロステップ駆動を用いずに、通常の1層励磁駆動、もしくは2層励磁駆動を使用する。そして、ステッパの1ステップ駆動もしくは2ステップ駆動あたりに対物レンズが移動する距離を、ステッパの単位移動距離とする。しかし、ステッパの単位移動距離では移動ステップが粗いため、予め決められたステッパの単位移動距離以下の領域でトラッキングアクチュエータをオープン制御駆動し、正確に微小な距離の移動を行う。このように、長距離の移動単位のトラッキング移動を受け持つステッパの駆動制御と、微小距離の移動単位のトラッキング移動を受け持つトラッキングアクチュエータの駆動制御を組み合わせることによって、より正確な微小送りが可能となる。
光ディスク装置のトラッキングアクチュエータをオープン制御で駆動することによって、対物レンズを任意の距離だけトラッキング方向に移動させるときは、光ディスク装置全体の動作を制御するファームウェアによって、対物レンズが任意の距離だけ移動するに相当するトラッキングアクチュエータ駆動量(数値)が設定される。トラッキングアクチュエータ駆動量は、一般的にD/Aコンバータによりアナログ信号化されるか、もしくは2値または3値のPWM信号化され、トラッキングアクチュエータ駆動信号となる。トラッキングアクチュエータ駆動信号がトラッキングアクチュエータ駆動回路に入力されることによって、トラッキングアクチュエータ駆動量に応じた電圧がトラッキングアクチュエータに印加され、トラッキングアクチュエータが駆動される。
米国特許第6771297号明細書
請求項1記載の発明は、光ディスクに対してレーザ光を集光する対物レンズと、対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に移動させるアクチュエータと、アクチュエータを駆動する駆動手段と、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を調整係数として保持する記憶手段と、記憶手段から取り出した調整係数に基づき、駆動手段に電圧を出力させて対物レンズの移動制御を行う制御手段と、を具備することを特徴とするものである。これにより、記憶手段から取り出した調整係数に基づき駆動手段に電圧を出力させて対物レンズの移動制御を行うことによって、駆動手段がアクチュエータを駆動するゲインや駆動手段からの電圧に対するアクチュエータの感度が標準値からずれることにより発生する対物レンズの移動量の誤差を補正する調整係数を利用するので、対物レンズの移動量を意図した量に制御することができる。
請求項2記載の発明は、対物レンズを単位距離駆動し、対物レンズを移動させながら光ディスクにレーザ光を照射させ、光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報から検出し、単位距離と単位距離に対応して実際に移動した距離との差分から調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納する調整手段を設けたことを特徴とするものである。これにより、調整手段が、光ディスクにレーザ光を照射させ、対物レンズを移動させながら対物レンズを単位距離駆動し、光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報から検出し、単位距離と単位距離に対応して実際に移動した距離との差分から調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納することによって、新たに対物レンズの移動量を直接検知する検知手段を追加することなく検出するので、部品点数を増やすことなく対物レンズの移動量を容易な構成で検出できる。
請求項3記載の発明は、対物レンズを単位距離駆動し、対物レンズを移動させながら光ディスクにレーザ光を照射させ、光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報から検出し、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を、駆動値により実際に移動した距離で除することにより調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納する調整手段を設けたことを特徴とする。これにより、調整手段が、対物レンズを単位距離駆動し、対物レンズを移動させながら光ディスクにレーザ光を照射させ、光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報から検出し、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を、駆動値により実際に移動した距離で除することにより調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納することよって、新たに対物レンズの移動量を直接検知する検知手段を追加することなく検出するので、部品点数を増やすことなく対物レンズの移動量を容易な構成で検出できる。
請求項4記載の発明は、単位距離移動させる駆動値が、対物レンズが光ディスクの第1のアドレスに位置するときの第1のトラッキング駆動値のDC成分と、対物レンズが光ディスクの第2のアドレスに位置するときの第2のトラッキング駆動値のDC成分との差分であることを特徴とするものである。これにより、単位距離移動させる駆動値は、対物レンズが光ディスクの第1のアドレスに位置するときの第1のトラッキング駆動値のDC成分と、対物レンズが光ディスクの第2のアドレスに位置するときの第2のトラッキング駆動値のDC成分との差分であることによって、DC成分が対物レンズの位置情報を表すので、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を最小限の情報で算出できる。その結果、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を容易に算出できるので、調整手段にかかる負荷を軽減することができる。
請求項5記載の発明は、対物レンズが、第1のアドレスが位置する光ディスクの第1の半径上から第2のアドレスが位置する光ディスクの第2の半径上までの移動を駆動手段のみで行うことを特徴とするものである。これにより、対物レンズが、第1のアドレスが位置する光ディスクの第1の半径上から第2のアドレスが位置する光ディスクの第2の半径上までの移動を駆動手段のみで行うことによって、対物レンズを移動させるアクチュエータを駆動する駆動手段以外の駆動力による対物レンズの移動を考慮する必要がなくなるので、調整係数を算出する際の演算を更に容易にすることができ、調整手段にかかる負荷を軽減することができる。
請求項6記載の発明は、対物レンズの第1の半径上から第2の半径上までの移動量が、対物レンズを予め定めたトラック本数分トラックジャンプさせることで決定されることを特徴とする光ディスク装置である。これにより、対物レンズの第1の半径上から第2の半径上までの移動量が、対物レンズを予め定めたトラック本数分トラックジャンプさせることで決定されることによって、対物レンズの移動量を容易に且つ精度良く検出するので、調整手段にかかる負荷を更に軽減することができる。
請求項7記載の発明は、制御手段が、対物レンズを第1の半径上から第2の半径上にシークさせて、第1の半径と第2の半径との距離が所定の距離になるようにすることを特徴とするものである。これにより、制御手段が、対物レンズを第1の半径上から第2の半径上にシークさせて、第1の半径と第2の半径との距離が所定の距離になるようにすることによって、第1の半径と第2の半径との距離を容易に所定の距離にできるので、調整係数の精度を上げることができる。
請求項8記載の発明は、記憶手段が、EEPROMであることを特徴とするものである。これにより、記憶手段がEEPROMであることによって、光ディスク装置全体を制御するファームウェアの内容を駆動手段のゲインとアクチュエータの感度に応じて変更する必要がないため、量産時における生産性を向上できる。
請求項9記載の発明は、光ディスクにレーザ光を照射させ、フォーカス制御をONにし、対物レンズを光ディスクの半径方向に単位距離駆動し、対物レンズの移動前と移動後とで光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報を読込み、単位距離と単位距離に対応して実際に移動した距離との差分から調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納する調整手段を設けたことを特徴とするものである。これにより、調整手段が、光ディスクにレーザ光を照射させ、フォーカス制御をONにし、対物レンズを光ディスクの半径方向に単位距離駆動し、対物レンズの移動前と移動後とで光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、単位距離と単位距離に対応して実際に移動した距離との差分から調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納することによって、新たに対物レンズの移動量を直接検知する検知手段を追加することなく検出するので、部品点数を増やすことなく対物レンズの移動量を容易な構成で検出できる。
請求項10記載の発明は、光ディスクにレーザ光を照射させ、フォーカス制御をONにし、対物レンズを光ディスクの半径方向に単位距離駆動し、対物レンズの移動前と移動後とで光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報から検出し、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を、駆動値により実際に移動した距離で除することにより調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納する調整手段を設けたことを特徴とする。
これにより、光ディスクにレーザ光を照射させ、フォーカス制御をONにし、対物レンズを光ディスクの半径方向に単位距離駆動し、対物レンズの移動前と移動後とで光ディスクからの反射光から光ディスクのアドレス情報を読込み、対物レンズが単位距離に対応して実際に移動した距離を光ディスクのアドレス情報から検出し、対物レンズを単位距離移動させる駆動値を、駆動値により実際に移動した距離で除することにより調整係数を算出し、調整係数を記憶手段に格納する調整手段を設けたことよって、新たに対物レンズの移動量を直接検知する検知手段を追加することなく検出するので、部品点数を増やすことなく対物レンズの移動量を容易な構成で検出できる。
請求項11記載の発明は、光ディスクに対してレーザ光を集光する対物レンズと、対物レンズが設けられたキャリッジと、キャリッジを光ディスクのトラッキング方向に移動させるステッパと、ステッパを駆動する駆動手段と、所定の電圧を加えてキャリッジを移動させつつ光ディスクにレーザ光を照射させ、光ディスクからの反射光からキャリッジの移動始点である第1のアドレス情報と移動終点である第2のアドレス情報を読込み、第1のアドレス情報に対応する位置までの光ディスクの半径距離と第2のアドレス情報に対応する位置までの光ディスクの半径距離との差分から、所定の電圧を加えた際にキャリッジが実際に移動した距離を算出する制御手段と、を具備することを特徴とするものである。これにより、制御手段が、所定の電圧を加えてキャリッジを移動させつつ光ディスクにレーザ光を照射させ、光ディスクからの反射光からキャリッジの移動始点である第1のアドレス情報と移動終点である第2のアドレス情報を読込み、第1のアドレス情報に対応する位置までの光ディスクの半径距離と第2のアドレス情報に対応する位置までの光ディスクの半径距離との差分から、所定の電圧を加えた際にキャリッジが実際に移動した距離を算出することによって、新たにキャリッジの移動量を直接検知する検知手段を追加することなく検出するので、部品点数を増やすことなく、キャリッジの移動量を容易な構成で検出できる。
請求項12記載の発明は、対物レンズをキャリッジ内で光ディスクのトラッキング方向に移動させるアクチュエータを備え、対物レンズは、キャリッジ内のトラッキング方向の可動範囲における機械的中立点に常に位置することを特徴とするものである。これにより、対物レンズをキャリッジ内で光ディスクのトラッキング方向に移動させるアクチュエータを備え、対物レンズがキャリッジ内のトラッキング方向の可動範囲における機械的中立点に常に位置することによって、アクチュエータによる対物レンズの移動を考慮する必要がなくなるので、対物レンズの移動距離を算出する際の演算を更に容易にすることができ、制御手段にかかる負荷を軽減することができる。
請求項13記載の発明は、アクチュエータを駆動する第2の駆動手段を具備し、対物レンズの機械的中立点は、第2の駆動手段の駆動電圧のDC成分が略0になる位置を検出することにより決定されることを特徴とするものである。これにより、対物レンズのキャリッジ内でのトラッキング方向可動範囲における機械的中立点を、第2の駆動手段の駆動電圧のDC成分が略0になる位置を検出することにより決定することによって、DC成分が対物レンズのキャリッジ内でのトラッキング方向の可動範囲における位置情報を表すので、対物レンズのキャリッジ内での位置を最小限の情報で算出できる。その結果、対物レンズのキャリッジ内での位置を容易に算出できるので、制御手段にかかる負荷を更に軽減することができる。
請求項14に記載の発明は、アクチュエータのみを駆動して対物レンズをトラックジャンプさせ、対物レンズをキャリッジ内のトラッキング方向の可動範囲における機械的中立点に移動させることを特徴とするものである。これにより、アクチュエータのみを駆動して対物レンズをトラックジャンプをさせ、対物レンズをキャリッジ内のトラッキング方向の可動範囲における機械的中立点に移動させることによって、対物レンズと、対物レンズが設けられたキャリッジとを同時に移動させないので、キャリッジが移動する際の加速、減速による慣性力の影響を対物レンズに受けさせず、対物レンズを正確かつ簡単にキャリッジ内の機械的中立位置に移動できる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態1におけるトラッキングアクチュエータ駆動回路の構成を示す図である。図1において、1は光ディスク、2はスピンドルモータ、3はトラッキングアクチュエータ、4は対物レンズ、5はキャリッジで、キャリッジ5には、図示しないレーザダイオード(以下LD)、光検出器、その他光学部品も具備される。6はレーザ光、7はステッパ、8はトラッキングアクチュエータ移動感度調整係数記憶手段、9はCPU、10はトラッキング移動量指令手段、11はトラッキングアクチュエータ移動感度調整係数、12はトラッキング制御手段、13はトラッキング駆動手段、14はステッパ制御手段、15はステッパ駆動手段である。
以上のように構成された本発明の実施の形態1における光ディスク装置の動作について、図1を用いて説明する。
光ディスク装置が起動を開始すると、まずスピンドルモータ2を駆動することにより光ディスク1が加速を開始する。スピンドルモータ2は、CAV制御(角速度一定制御)される場合には予め決められた回転速度になるまで加速駆動され、決められた回転速度に達したら、CAV制御(角速度一定制御)に移行する。また、CLV制御(線速度一定制御)される場合には、予め決められた線速度になるまで加速駆動され、決められた線速度に達したら、CLV制御(線速度一定制御)に移行する。
次に、光ピックアップに具備されるLDを発光させることによりレーザ光6が出射される。出射されたレーザ光6は、光ピックアップに具備される光学部品を介して対物レンズ4を通過し、光ディスク1に照射される。
通常の光ディスクの再生・記録時には、レーザ光6は対物レンズ4を介して光ディスク1の基板を通過し、データ記録面に集光される。データ記録面に集光されるレーザ光6は、再生・記録品質を最良にするために、極小のスポット状になるようにしなけばならない。そのため、光ピックアップに具備される、図示しないフォーカスアクチュエータと、図示しないフォーカス制御手段によって、クローズドループによるフォーカス制御が実施される。フォーカス制御を実施するために必要となるフォーカス誤差信号は、光ディスク1で反射したレーザ光が対物レンズ4を介して、図示しない光検出器で検出され、電気信号に変換されて、図示しないフォーカス誤差信号生成手段により生成される。
一方、光ディスク装置型ラベル面描画技術では、光ディスク1のラベル面に描画するため、光ディスク1の表面にレーザ光6を集光させる。通常の光ディスクの再生・記録時の場合には、前記のようにクローズドループによるフォーカス制御が実施されるが、光ディスク装置型ラベル面描画技術対応の光ディスクには、描画面には非常に反射率の低い感光塗料が塗布されており、得られるフォーカス誤差信号のS/Nが低く、フォーカス誤差信号を使ったクローズドループ制御が非常に困難である場合がある。そのような場合、光ディスク装置型ラベル面描画技術では、光ディスク1の描画面からの反射光の総和信号が最大になることを目標として、オープン制御が実施される。
また、光ディスク装置型ラベル面描画技術は、周方向に対して連続または不連続な線を、規定のトラックピッチで半径方向に並べて描画していく形で行なわれる。描画される線は、スパイラル状に形成される場合と、同心円状に形成される場合とがある。いずれの場合でも、光ディスク装置型ラベル面描画技術対応の光ディスクでは、描画面にはトラッキング誤差信号が検出できるような案内溝が形成されていない場合、対物レンズ4をトラッキング方向に微小距離ずつ移動させていくオープン制御駆動によるトラッキング制御が必要である。トラッキング制御を行う方法として、トラッキング制御をステッパ駆動のみを使用して行う方法もあるが、本発明では、より高精度なトラッキング制御が実現できるよう、ステッパ駆動と、移動精度を高めることが可能である、トラッキングアクチュエータ3のオープン制御駆動を組み合わせたトラッキング制御を実施している。
ステッパ駆動は、マイクロステップ駆動を用いずに、通常の1相励磁駆動、もしくは2相励磁駆動を使用する。そして、ステッパ7の1ステップ駆動もしくは2ステップ駆動あたりにキャリッジ5が移動する距離が、ステッパ7によるキャリッジ5の単位移動距離(以下ステッパの単位移動距離と省略して表記)となる。しかし、ステッパ7の単位移動距離では移動ステップが粗いため、予め決められたステッパ7の単位移動距離以下の領域でトラッキングアクチュエータ3をオープン制御駆動し、正確に微小な距離の移動を行う。
光ディスク装置型ラベル面描画技術による描画時には、対物レンズ4を、目標とする光ディスク半径位置に移動させるために、ステッパ7の駆動とトラッキングアクチュエータ3の駆動を組み合わせる。ステッパ7の駆動は、1相励磁、もしくは2相励磁で行なわれる。ステッパ7は、一般的な光ディスク装置では、1ステップあたりキャリッジ5が数十〜数百μm程度移動する。ステッパ7の移動距離の精度は、ほぼステッパ7の性能に依存するところが大きい。ステッパ7の駆動によるキャリッジ5の移動精度は、ステッパ7の構造から、1ステップ単位で移動させるよりも、2ステップ単位で移動させた方が、より移動距離が高精度になり易い。
トラッキングアクチュエータ3の駆動は、ステッパ7の単位移動距離以下の領域の分解能を補う形で行なわれる。例えば、ステッパ7を1ステップ単位で駆動していく場合、ステッパ7を1ステップ駆動することにより移動するキャリッジ5の1ステップあたりの移動距離lsに対して、トラッキングアクチュエータ3の駆動範囲を、−ls/2〜ls/2とすることにより、光ディスク1の全半径領域に渡って、高精細なトラッキング制御が実現できる。
トラッキングアクチュエータ3をオープン制御で駆動することによって対物レンズ4を任意の距離だけトラッキング方向に移動させるときは、トラッキングアクチュエータ3の移動量は、CPU9に内蔵されるトラッキング移動量指令手段10によって制御される。トラッキング移動量指令手段10によって、対物レンズ4が任意の距離だけ移動するに相当するトラッキングアクチュエータ駆動量(数値)が設定される。従来の光ディスク装置では、トラッキングアクチュエータ駆動量は、一般的にそのままD/Aコンバータによりアナログ信号化されるか、もしくは2値または3値のPWM信号化され、トラッキングアクチュエータ駆動信号となる。トラッキングアクチュエータ駆動信号がトラッキング制御手段12に入力されることによって、トラッキングアクチュエータ駆動量に応じた電圧がトラッキングアクチュエータ3に印可され、トラッキングアクチュエータ3が駆動される。
しかし、トラッキングアクチュエータ3の感度やトラッキングアクチュエータ駆動回路のゲインには、光ディスク装置各個体ごとに比較的大きなばらつきが存在する。従って、トラッキングアクチュエータ駆動量に対するトラッキングアクチュエータ移動量の感度(以下トラッキングアクチュエータ移動感度と称する)は、光ディスク装置各個体ごとに比較的大きなばらつきが存在することになる。即ち、光ディスク装置のファームウェアにてトラッキングアクチュエータ3を規定の移動距離だけ移動させる際、光ディスク装置各々で一律同じトラッキングアクチュエータ駆動量で移動させても、トラッキングアクチュエータ移動感度のばらつきの分だけ移動距離がばらついてしまうことになる。そこで、本発明においては、ファームウェアにてトラッキング移動量指令手段10に設定されたトラッキング駆動量に対して、トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数11を乗ずることを特徴としている。
トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数11は、トラッキング移動量指令手段10に、光ディスク装置の各個体でファームウェアにて一律同じトラッキングアクチュエータ駆動量を設定することで、光ディスク装置の各個体何れにおいても対物レンズ4が同じトラッキング移動量となるように、予めトラッキングアクチュエータ移動感度を光ディスク装置各個体ごとに調整され、トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数11がトラッキングアクチュエータ移動感度調整係数記憶手段8に保存されている。
トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数11が乗じられたトラッキングアクチュエータ駆動量はトラッキング制御手段12に入力され、トラッキング制御手段12でトラッキング駆動手段13の入力形式に適した信号に変換され、トラッキング駆動手段13によってトラッキングアクチュエータ3が駆動され、対物レンズ4がトラッキング方向に移動する。
また、前記のように、光ディスク装置の各個体で一律同じトラッキングアクチュエータ駆動量を設定することで光ディスク装置の各個体何れにおいても対物レンズ4が同じトラッキング移動量となるようにするためには、予めトラッキングアクチュエータ移動感度を光ディスク装置各個体ごとに調整する必要がある。
次に、トラッキングアクチュエータ移動感度調整方法を図2、図3、図4を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるトラッキングアクチュエータ駆動によるトラック移動を示す図である。
図3は本発明の実施の形態1におけるトラック移動前後のトラック駆動量変化を示す図、図4は本発明の実施の形態1におけるトラック移動感度調整のフローチャートである。
本発明によるトラッキングアクチュエータ移動感度調整方法では、光ディスク装置の一般的な機能を用い、一般的な光ディスクの再生動作の中で、トラッキングアクチュエータ移動感度を測定し、トラッキングアクチュエータ移動感度を調整することを特徴とする。
まず、光ディスク装置に一般的な光ディスク1を装着する。装着する光ディスク1は、DVD−ROM、CD−ROM等特に制限はないが、本発明では光ディスク1のトラックピッチを基準に対物レンズ4のトラッキング移動距離を算出するため、使用する光ディスク1のトラックピッチを予め知っておく必要がある。DVD系光ディスクはトラックピッチが約0.74μm、CD系光ディスクはトラックピッチが約1.60μmである。光ディスク1を装着したら、図4のフローチャートに従って、トラッキングアクチュエータ移動感度の調整を行う。なお、通常光ディスク装置では、起動中に、安定して再生を行うための各種信号調整、サーボ調整等が実行され、また光ディスク1に記録されたディスク情報の読み込み等が実行されるが、ここでの詳細の説明は割愛する。
トラック移動感度調整が開始されると(S1)、スピンドルモータ2を駆動し光ディスク1を回転させ、LDを発光させ、対物レンズ4を介して光ディスク1の記録面にレーザ光6を照射し、反射したレーザ光6を、対物レンズ4を介して光ピックアップにより検出され、図示しないフォーカス誤差信号生成手段により生成されたフォーカス誤差信号を元に、図示しないフォーカス制御手段によって、フォーカスサーボをONにする(S2)。次に、トラッキング誤差信号生成手段により生成されたトラッキング誤差信号を元に、トラッキング制御手段によって、トラッキングサーボをONにする(S3)。この後、光ディスク装置の所定の起動シーケンスを経て起動が完了し、ポーズ状態で待機する。ポーズ状態では、所定のアドレスから、光ディスクが1回転、または複数回転してアドレスが進む毎に、元の所定のアドレスにシークする動作を繰り返す。
次に、光ディスク1が1回転する毎に内周側に1トラック分だけトラックジャンプする、スチルONの状態にする(S4)。これにより、光ディスク1の回転が続いても対物レンズ4は1トラック分以上外周に進まず、ほぼ一定のディスク半径位置に留まり続ける。さらに、ステッパ駆動を停止させる(S5)。これは、この後で行うトラックジャンプ動作の際に、ステッパ7の駆動によるキャリッジ移動が伴わないようにするためである。
次に、予め対物レンズ4がメカ的中立位置に位置するようにする。そうすることで、より高精度に調整することができる。対物レンズ4がメカ的中立位置付近に位置するかどうかは、スチル状態でのトラッキングアクチュエータ駆動量のDC成分(以下トラッキング低域駆動量と表記)を測定することで判別できる。もし対物レンズ4が、メカ的中立位置から離れていると判別された場合には、トラックジャンプ動作を実行して、できるだけ対物レンズ4がメカ的中立位置に近くなるようにしておく。この時のトラッキングアクチュエータ3と、対物レンズ4と、キャリッジ5との関係は、図2の(a)の状態にある。この状態のディスク半径位置を、初期の対物レンズ位置とする。
次に、内周方向に、予め設定したトラック本数N本だけトラックジャンプする(S6)。この時のトラッキングアクチュエータ3と、対物レンズ4と、キャリッジ5との関係は、図2の(b)の状態にある。この状態のディスク半径位置を、第1のディスク半径位置とする。
内周方向にN本トラックジャンプしたら、トラッキング低域駆動量V1を測定する。このときのトラッキング駆動量は、図3の第1のディスク半径位置における波形のような変動をしている。正弦波状の変動成分は、回転する光ディスク1のトラックの偏芯が生じる偏芯成分である。従って、第1のディスク半径位置におけるトラッキング駆動量を求めるときには、偏芯成分による変動を含む第1のディスク半径位置におけるトラッキング駆動量からトラッキング低域駆動量V1を求め、このV1を一時的に記憶手段に保存する(S7)。
次に、外周方向に2N本トラックジャンプする(S8)。この時のトラッキングアクチュエータ3と、対物レンズ4と、キャリッジ5との関係は、図2の(c)の状態にある。この状態のディスク半径位置を、第2のディスク半径位置とする。ここで2N本外周方向にトラックジャンプすることによって、対物レンズ4は、内周にN本トラックジャンプする前の初期位置から外周方向にN本トラックジャンプしたのと同じディスク半径位置に位置することになる。
外周方向に2N本トラックジャンプしたら、トラッキング低域駆動量V1と同様にしてトラッキング低域駆動量V2を測定する。このときのトラッキング駆動量は、図3の第2のディスク半径位置における波形のようになり、V1とV2との間に段差が生じている。V2を一時的に記憶手段に保存する(S9)。
ここで、対物レンズ4が初期位置から外周方向にN本トラックジャンプしたときのトラッキング低域駆動量と、対物レンズ4が初期位置から内周方向にN本トラックジャンプしたときのトラッキング低域駆動量との差分である、トラッキング低域駆動量差を演算する(s10)。トラッキング低域駆動量差をΔVとすると、
ΔV=V2−V1
となる。このトラッキング低域駆動量差ΔVは、2N本トラックジャンプしたときのトラッキング低域駆動量差であるため、即ち対物レンズ4をトラック2N本分の距離だけ移動させるのに必要なトラッキングアクチュエータ駆動量となる。従って、光ディスク1のトラックピッチをTpとすると、トラック2N本分の距離l2Ntは、
l2Nt=2N×Tp
となる。従って、対物レンズ4の移動単位距離luだけトラッキング方向に移動させるのに必要なトラッキングアクチュエータ駆動量αは、
α=β×ΔV(β=lu/l2Nt)
と計算される(S11)。このαをトラッキング移動感度調整係数とし、トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数記憶手段8に保存し(S12)、トラック移動感度調整を終了する(S13)。
光ディスク装置型ラベル面描画技術動作時には、トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数記憶手段8から、調整によって保存された値が、トラッキングアクチュエータ移動感度調整係数11に設定される。トラッキング移動量指令手段10によって、対物レンズ4を移動させたい距離を、対物レンズ4の移動単位距離luに対する倍率の形式で設定する。それにより、光ディスク装置が具備する、トラッキングアクチュエータ3の感度や、トラッキング駆動回路のゲインがばらついていても、対物レンズ4がトラッキング方向に正確に所望の距離だけ移動することが可能となる。
このように、本発明によれば、特に測長器等の設備を追加することなく、光ディスクの装置一般的な機能を用いて、簡単にトラッキングアクチュエータ移動感度調整係数を得る事ができ、光ディスク装置型ラベル面描画技術描画時等に対物レンズをトラッキングアクチュエータのオープン制御により正確な距離移動させることが可能となる。
以上の内容により、記憶手段から取り出した調整係数に基づき駆動手段に電圧を出力させて対物レンズの移動制御を行うことによって、駆動手段がアクチュエータを駆動するゲインや駆動手段からの電圧に対するアクチュエータの感度が標準値からずれることにより発生する対物レンズの移動量の誤差を補正する調整係数を利用するので、対物レンズの移動量を意図した量に制御することができる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。
なお、光ディスク装置全体の構成と、トラッキングアクチュエータ駆動回路の構成は、実施の形態1と同様である。
図5は本発明の実施の形態2におけるステッパ駆動前後のキャリッジ位置を示す図であり、図6は本発明の実施の形態2におけるステッパ移動精度検査のフローチャートである。
光ディスク装置型ラベル面描画技術を搭載する光ディスク装置では、トラッキングアクチュエータ3が正確な距離だけ移動できるのと共に、ステッパ7をステップ駆動することにより、キャリッジ5が正確なステップピッチで移動できなければ描画品質を満足できない。しかしながら、ステッパ7はモータの性能に依存するところが多く、制御方法の工夫や何らかの調整によって、ステップ移動精度を向上させることは不可能に近い。従って、ステッパ7のばらつきによりステップ移動精度を満足できないような個体は、判別によってリジェクトするのが現実的である。本発明は、光ディスク装置が具備するステッパ7によりキャリッジ5がディスク内周から外周にわたりステップ移動する長距離間の各ステップ精度を、特に設備を追加することなく、連続的に高精度に測定することを可能とし、ステッパ7の移動精度の高いものを選別することを可能とする。
まず、光ディスク装置に一般的な光ディスク1を装着する。装着する光ディスク1は、DVD−ROM、CD−ROM等特に制限はないが、本発明では光ディスク1のトラックピッチを基準に対物レンズ4のトラッキング移動距離を算出するため、使用する光ディスク1のトラックピッチを予め知っておく必要がある。DVD系ディスクはトラックピッチが約0.74μm、CD系ディスクはトラックピッチが約1.60μmである。光ディスク1を装着したら、図6のフローチャートに従って、ステッパ移動精度検査を行う。なお、通常光ディスク装置では、起動中に、安定して再生を行うための各種信号調整、サーボ調整等が実行され、また光ディスク1に記録されたディスク情報の読み込み等が実行されるが、ここでの詳細の説明は割愛する。
ステッパ精度検査が開始されると(S14)、光ディスク装置を起動する(S15)。光ディスク装置の所定の起動シーケンスを経て起動が完了したら、ステッパ精度検査の範囲の最内周である初期位置にシークする(S16)。
次に、光ディスク1が1回転する毎に内周側に1トラック分だけトラックジャンプする、スチルONの状態にする(S17)。さらに、ステッパ駆動を停止させる(S18)。これは、この後で行うトラックジャンプ動作の際に、ステッパ7の駆動によるキャリッジ移動が伴わないようにするためである。
次に、対物レンズ4がメカ的中立位置に位置するようにする。そうすることで、より高精度にステッパ7の駆動によるキャリッジの移動距離を測定することができる。このとき、スチル状態でのトラッキングアクチュエータ駆動量のDC成分(以下トラッキング低域駆動量Vと表記)を測定する(S19)。ここで、対物レンズ4がメカ的中立位置付近に位置するかどうかを、トラッキング低域駆動量Vで判別する(S20)。トラッキング低域駆動量Vが、予め決められた閾値以内にあれば、対物レンズ4がメカ中立位置に存在すると判別する。もしトラッキング低域駆動量Vが閾値を超えていて、対物レンズ4がメカ的中立位置から離れていると判別された場合には、トラッキング低域駆動量Vが閾値以内になるまでトラックジャンプ動作を実行して(S21)、できるだけ対物レンズ4がメカ的中立位置に近くなるようにする。このときの状態を表す、図5(a)の第1のアドレスにおけるキャリッジ位置を、第1のディスク半径位置r1とする。
対物レンズ4がメカ的中立位置に達したら、アドレスリードを実行する。一般的な光ディスク装置では、アドレスからそのアドレスが存在するディスク半径位置を演算する機能を具備しているため、その機能により第1ディスク半径位置r1を演算する。演算された第1のディスク半径位置r1は、一時的に記憶手段に保存する(S22)。
次に、トラッキング制御をOFFにする(S23)。さらに、光ディスク装置型ラベル面描画技術で使用するステッパ7の単位ステップピッチn分だけ、ステッパ7を駆動し(S24)、キャリッジ5を移動する。キャリッジ5が移動した直後は対物レンズ4が振動しているため、対物レンズ4の振動が収まる程度の時間分だけウエイトを入れる。その後、トラッキング制御をONにし(S25)、スチル状態にする(S26)。このとき、スチル状態でのトラッキングアクチュエータ駆動量のDC成分(以下トラッキング低域駆動量Vと表記)を測定する(S27)。ここで、対物レンズ4がメカ的中立位置付近に位置するかどうかを、トラッキング低域駆動量Vで判別する(S28)。トラッキング低域駆動量Vが、予め決められた閾値以内にあれば、対物レンズ4がメカ中立位置に存在すると判別する。もしトラッキング低域駆動量Vが閾値を超えていて、対物レンズ4がメカ的中立位置から離れていると判別された場合には、トラッキング低域駆動量Vが閾値以内になるまでトラックジャンプ動作を実行して(S29)、できるだけ対物レンズ4がメカ的中立位置に近くなるようにする。このときの状態を表す、図5(b)の第2のアドレスにおけるキャリッジ位置を、第2のディスク半径位置r2とする。
対物レンズ4がメカ的中立位置に達したら、アドレスリードを実行し、アドレスから第2のディスク半径位置r2を演算する(S30)。演算された第2のディスク半径位置r2は、一時的に記憶手段に保存する。
第1のディスク半径位置r1、第2のディスク半径位置r2が測定されたら、第1のディスク半径位置から第2のディスク半径位置までの距離Δrを以下のように計算する。
Δr=r2−r1
この第1、第2のディスク半径間の距離Δrが、ステッパ7の単位ステップ駆動によるキャリッジ5の移動量Sに相当し、
S=Δr
となる(S31)。
以降同様に、キャリッジ5の位置が予め決められた測定半径位置の最外周になるまで、ステッパ7の単位ステップ駆動によるキャリッジ5の移動量Sを測定していく。そして、キャリッジ5が、測定半径位置の最外周に達した場合、または移動量Sが予め決められた閾値以内に無い場合には、OK、NG判定を行う(S32)。全測定範囲に渡り、移動量Sが精度不足することがなかった場合にはOK品として判定し(S34)、また移動量Sが予め決められた閾値以内に無い場合には、ステッパ7の駆動によるキャリッジ5の移動精度が不足しているとみなし、NG品として判定し(S35)、検査を終了する(S36)。
なお、本実施の形態では、1回でも移動量Sの精度が不足していた場合にはNGとなるよう判別しているが、例えば移動量Sの精度が不足しているステップをある回数まで許容する場合、その許容回数に達するまで移動量Sの測定、精度判別を繰り返すようにしても良い。
このように、本発明によれば、光ディスク装置が具備するステッパの、光ディスク装置のキャリッジがディスク内周から外周にわたりステップ移動する長距離間の各ステップ精度を、特に設備を追加することなく、連続的に高精度に測定することを可能とし、ステッパの移動精度の高いものを選別することを可能とする。
以上の内容により、制御手段が、所定の電圧を加えてキャリッジを移動させつつ光ディスクにレーザ光を照射させ、光ディスクからの反射光からキャリッジの移動始点である第1のアドレス情報と移動終点である第2のアドレス情報を読込み、第1のアドレス情報に対応する位置までの光ディスクの半径距離と第2のアドレス情報に対応する位置までの光ディスクの半径距離との差分から、所定の電圧を加えた際にキャリッジが実際に移動した距離を算出することによって、新たにキャリッジの移動量を直接検知する検知手段を追加することなく検出するので、部品点数を増やすことなく、キャリッジの移動量を容易な構成で検出できる。