本発明は、傾斜角センサにかかり、特に、少なくとも一方向の傾斜角や加速度などを計測可能な傾斜角センサに関する。
従来より、所定の物体の動作や傾きを検出するために、かかる物体の加速度を検出する加速度センサの利用が検討されている。例えば、カメラのシャッター時に正しく構えられているか、といった傾きの検出や、バイクの傾きを検出することによる転倒検知、さらには、電子機器が水平に設置されているか、といった載置状態を表す傾きの検出、などに利用可能である。また、電子機器の無理な移動や落下を瞬時に検出して、可動部の安全対応を取ることにも利用可能である。
そして、従来例における加速度センサの構成としては、例えば特許文献1に開示されているように、加速によって構造体に生じるひずみを検出する手法が採られている。具体的には、十字状のばね性を有する支持部材の中心(交点)におもりを装備し、かつ、支持部材の各梁の部分に歪検出素子を固定装備する。そして、この歪検出素子からの検出値に基づいて各梁の変形を検出し、各軸(X,Y,Z)方向の加速度を検出する。例えば、歪検出素子として半導体ピエゾ素子を利用してその抵抗値をブリッジ回路を組んで検出したり、あるいは、特許文献1に示すように圧電振動子を利用して歪による発信周期を検出することにより、加速度を検出する手法がある。
また、装置の傾斜を検出する傾斜センサとして、特許文献2に示すものがある。この傾斜センサは、磁石と振り子を備えており、振り子の位置が変わることによる磁界の方向の変化をホール素子で検出する、という構成を採っている。具体的には、強磁性体が組み付けられた振り子がケースに回動可能に軸支されており、ケースの回転に伴って回転する振り子に装備された強磁性体の磁界の変化を、ホールICで検出することで傾斜を検出する、という手法を採っている。
特許第2732287号公報
特開2006−90796号公報
しかしながら、上記特許文献に開示のセンサでは、以下のような不都合があった。まず、上記特許文献1に開示のセンサは、十字状の支持部材(ばね)自体やその近辺に、歪を検出するための信号を取り出す際に用いる電極を設ける必要があり、配線によって構造が複雑化しうる。また、支持部材に歪検出素子を装着するため、小型化を図ることができない。さらには、支持部材のばね部分に歪検出素子を装着あるいは内蔵させるため、ばねの変位を妨げ、高感度に検出することが困難となる、という問題があった。
また、上記特許文献2に開示のセンサは、振り子を用いるため、サイズの縮小化が困難である。また、振り子に振動が生じるとその振動の継続を短時間で収束させることができず、特に、振り子を振動させるようなノイズによっても振動が発生して長時間継続してしまう。すると、振動継続中における傾斜角や加速度を高精度に検出することができず、センサとしての品質の向上を図ることができない、という問題が生じうる。
このため、本発明では、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、装備した装置の加速度や傾斜角などを高感度、かつ、高精度に検出できると共に、簡易な構成にて小型化かつ低コスト化を図ることができる傾斜角センサを提供することをその目的とする。
そこで、本発明の一形態では、固定端と自由端とを有し、当該自由端が少なくとも一方向に撓むよう自由度を有するバネ部材と、このバネ部材の自由端に装備された磁界を発生する磁界発生手段と、この磁界発生手段に対向して装備され、当該磁界発生手段による磁界の向きを検出する磁界検出手段と、バネ部材の撓み動作に対する減衰力を付勢する減衰手段と、を備えたことを特徴としている。
このとき、減衰手段を、バネ部材の自由端近辺に設けると望ましく、さらには、減衰手段を、バネ部材の自由端の最先端部、あるいは、磁界発生手段に設けるとなお望ましい。
上記発明によると、まず、バネ部材の自由度方向に沿って加速や傾きが生じると、バネ部材が撓み、当該バネ部材の自由端に装備された磁界発生手段が撓み方向に移動する。すると、磁界発生手段による磁界の方向も変化し、この磁界の方向の変化を磁界検出手段にて検出することにより、少なくとも1軸方向の傾きや加速度などの変化を検出することができる。一方で、バネ部材が振動しやすく高感度に形成されているため、当該バネ部材を振動させるような外部からの衝撃などのノイズを拾いやすく、特に、共振周波数近傍のノイズによって振動しやすくなっているが、減衰手段によって振動を短時間で迅速に収束させることができる。従って、バネ部材の振動の継続を抑制することができ、検出すべき傾き等を高感度かつ高精度に検出することが可能となる。以上より、簡易な構造にて小型かつ低コストにセンサを構成することができると共に、センサによる傾斜角や加速度の検出感度の向上を図りつつ、ノイズの影響を抑制することができ、センサの高品質化を図ることができる。特に、減衰手段をバネ部材の自由端の先端に設けることで、傾斜や加速が生じることによるバネ部材の可動を許容しつつ、効果的に減衰力を付加してより短時間で減衰させ、さらなる検出の感度及び精度の向上を図ることができる。
そして、上記バネ部材は、特に、自由端の撓み方向における板厚が薄く形成された板状部材にて形成されていると望ましく、また、撓み方向に垂直な長手方向の長さが、共振周波数が低くなるよう長く形成されているとなお望ましい。これにより、バネ部材は、共振周波数が低くなり、撓み方向に撓み易くなる。つまり、高感度に傾きや外力を検出することができると共に、上述したように、減衰手段にてノイズによってバネ部材に発生する振動を短時間で収束させることができる。従って、ノイズの影響を抑制しつつ、傾きや加速度を高感度に検出することができる。そして、上述したように高感度に構成することで、磁界検出手段による温度ドリフトの影響も抑制することができる。つまり、高感度化によって磁界検出手段にて大きな検出量を得ることができるため、磁界検出手段の温度ドリフトが存在したとしても、高精度に検出することができ、センサの品質の向上を図ることができる。
そして、上記減衰手段は、バネ部材あるいは磁界発生手段と、他の固定部材と、これらの相対的な移動を減衰させる粘性部材と、により構成されている、ことを特徴としている。このとき、上記粘性部材は、例えば、ゲル状部材であると望ましい。また、具体的には、上記減衰手段は、他の固定部材に設けられゲル状部材が収容されたゲル状部材収容部と、ゲル状部材内に浸漬されたバネ部材あるいは磁界発生手段の一部である浸漬部と、により構成されている、ことを特徴としている。
このように、バネ部材等の可動部分と他の固定部材との間に粘性部材を設けることで、簡易な構成で減衰手段を実現することができる。特に、ゲル状部材を用い、このゲル状部材内をバネ部材等の可動部分を浸漬させることで、バネ部材の振動に対して効率よく減衰力を付勢して短時間にて振動を収束させることができ、低コストにて高感度なセンサを実現することができる。
また、上記ゲル状部材は、−40℃〜120℃において硬化せずに予め定められた範囲の粘性率を有する部材であると望ましく、例えば、ゲル状部材は、シリコーンゲルである。これにより、減衰手段は一般的な機器の使用温度範囲で所定の粘性を発揮するため、センサをあらゆる装置に装備することが可能である。また、汎用的な部材にて減衰手段を構成でき、低コストにて実現することができる。
そして、上述した傾斜角センサは、加速度や傾斜を検出する対象となる種々の被検出装置に装備可能であり、かかる装置は、装備されたセンサからの出力値に基づいて、バネ部材の撓み方向における装置自体の傾斜角あるいは加速度を計測する計測手段を備えるとよい。
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、簡易な構造にて小型かつ低コストにセンサを構成することができると共に、センサによる傾斜角や加速度の検出感度の向上及び検出精度の向上を図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
本発明の姿勢センサは、過度の応答を抑制するために、可動するバネ部材の撓み動作に減衰力を付勢する減衰手段を設け、これにより検出精度及び検出感度の向上を図る、ことに特徴を有する。以下、実施例にて、傾斜角センサの具体的な構成及び動作を説明する。
なお、以下の実施例では、一方向の傾斜角を検出する場合を一例に説明するが、後述するサスペンションを複数装備して複数の方向の傾斜角を検出可能なよう構成してもよい。また、傾斜角に限らず、出力値に基づいて加速度を検出するよう利用してもよい。例えば、センサからの静的な出力値を用いて傾斜角を計測し、動的な出力値を用いて加速度を計測してもよい。
本発明の第1の実施例を、図1乃至図8を参照して説明する。図1乃至図4は、本実施例における傾斜角センサを様々な方向から見た構成図を示し、図5は、傾斜角センサの分解図を示す。図6乃至図8は、傾斜角の検出原理を説明する説明図である。
[構成]
まず、図1は、本実施例における傾斜角センサを斜め先端側から見た図であり、図2は、斜め後端側から見た図である。図3は、傾斜角センサを上方から見た図であり、図4は、側方から見た図である。また、図5は、傾斜角センサの各構成を分解図示した分解図である。
これらの図に示すように、傾斜角センサは、各構成要素を搭載する基台7と、この基台7上に固定された支持ブロック6と、この支持ブロック6に後端部11が固定支持されたサスペンション1と、を備えている。そして、サスペンション1の先端部12には磁石21,22が装備されており、この磁石21,22の下方の上記基台7上にはGMRチップ31,32が配置されている。さらに、サスペンション1の最先端部付近には、ゲル5が充填されたダッシュポッド4が基台7上に装備されている。なお、後述するように、上記GMRセンサ31,32からの出力値をセンサが装備された装置の制御基板に出力するための端子や、検出処理をはじめ計測処理を行うICが、基台7上に装備されるが、かかる構成については図示を省略する。また、傾斜角センサ自体の上方を覆う筐体も装備されるが、その図示も省略する。以下、各構成についてさらに詳述する。
図1乃至図4、特に、図5に示すように、サスペンション1(バネ部材)は、所定の長さを有する薄板部材にて形成されており、比較的柔らかいバネ特性を有している。そして、サスペンション1は、その板面が基台7面に対して垂直となるよう配置されている。さらに具体的には、サスペンション1の両端部11,12は、板面が広く形成されており、逆に言うと、中央部分における板面の幅が狭く形成されている。
そして、サスペンション1の後端部11(固定端)は、基台7に装備された一対のブロック部材からなる支持ブロック6にて挟まれて固定される(図1参照)。これにより、両端に比べて板面の幅が狭く、板厚が薄く形成されたサスペンション1の中央部分は、図5の矢印に示すように、板厚方向に、つまり、サスペンション1の長手方向と垂直かつ基台7面と平行の方向に、撓み易く形成されている。従って、サスペンション1の先端部12は、上記図5の矢印方向に可動可能な自由端として形成されている。
さらに、上記サスペンション1は、その長さが比較的長く形成されており、例えば、同一材質、同一板厚のものと比較すると、共振周波数が低くなるよう形成されている。つまり、サスペンション1の長さが短く形成されていると共振周波数が高くなり、安定性が増すが、感度が低くなる。この感度の改善するために、本実施例では、サスペンション1の長さを長く形成し、微小な傾きや外力に対しても撓み易く構成されており、検出感度の向上を図っている。一方で、サスペンション1を撓み方向に振動させる外力といったノイズ、特に、共振周波数近傍の周波数のノイズを拾い易く、これによりサスペンション1に振動が生じやすくなるが、後述するようにサスペンション1の先端側に減衰手段を設けることで、そのようなノイズによる振動を短時間で迅速に減衰させて収束させることができるため、ノイズの影響を極力排除しつつ、傾きや加速度などを高精度かつ高感度に検出することができる。
なお、サスペンション1の長さは、上述したように長ければ長いほど検出感度を向上させることができるが、傾斜角センサの小型化も実現することが望ましい。従って、センサ自体のサイズをできるだけ小型化しつつ、センサによる所望の感度を得られるよう、サスペンション1を適度な長さに設計するとよい。
また、上述したように板面が広く形成されたサスペンション1の先端部12の両面側には、磁石21,22がそれぞれ装備される。そして、各磁石21,22の上面側には、シールド用プレート23,24(図5参照)が装備されている。また、各磁石21,22の下方には、当該磁石21,22からの磁界を検出するGMRチップ31,32が基台7上にそれぞれ配置されている。ここで、図6乃至図8を参照して、磁石21,22及びGMRチップ31,32について詳述する。
磁石21,22(磁界発生手段)は、図7(a)に示すように、組磁石にて構成されており、基台7側の面(下面)に、N極とS極とが交互に配置するよう形成されている。例えば、符号21に示す磁石21は、下面の両端にS極が、中央にN極が位置し、符号22に示す磁石22は、下面の両端にN極が、中央にS極が位置している。従って、図7(a)の円弧状の矢印に示す方向に磁界が発生している。
そして、各磁石21,22のほぼ中央の下方には、それぞれGMRチップ31,32が配置されている。そして、各GMRチップ31,32(磁界検出手段)には、それぞれ1つ又は複数のGMR素子(図示せず)が装備されている。なお、本実施例では、各GMRチップ31,32に2つずつGMR素子が装備されていることとする。そして、GMR素子は、入力される磁界の向きに応じたMR抵抗値を出力する磁気抵抗効果素子である。このGMR素子を用いた傾斜角の検出原理について、図6を参照してさらに説明する。
まず、図6(a)には、GMR素子31aの1つを示し、この上方には磁石21が配置してあることとする。そして、いずれの方向にも加速していない場合においては、GMR素子31aが磁石21からの磁界Hの向きに対してほぼ垂直となるよう配置されている(図6(a)の一点鎖線を参照)。なお、磁界Hの向きは、図示する向きと反対向きであってもよい。かかる状況において、磁石21が移動すると、図6(a)の点線に示すように、磁石21からの磁界Hの向きが変化し、GMR素子31aに対して入力する磁界Hの向きが垂直からΔθだけ傾く。すると、GMR素子31aは、図6(b)に示すように、MR抵抗値が変化する特性を有する。なお、図6(b)の例では、垂直な状態における抵抗値をRoと設定したときに、微小角度だけ傾いたときに特に大きく変化するという特性を有する。以上の特性から、符号21の磁石21の下方に装備されたGMRチップ31では、例えば、図7(b)に示すように、磁石21の移動に応じて抵抗値が変化する性質を有する。
そして、上述した各GMRチップ31,32の各GMR素子(4つ)にて、図8に示すようにブリッジ回路を構成し、差動電圧を出力するよう構成する。これにより、差動電圧に基づいて、GMR素子の抵抗値の変化を容易かつ精度よく検出することができる。そして、検出した抵抗値の大きさに応じて、傾斜角を計測することができる。このとき、抵抗値の静的な値を利用することで、そのときの傾斜角を計測することができ、一定時間における抵抗値の変化を利用することで、加速度を計測することができる。
次に、サスペンション1の先端部分に装備された減衰手段について説明する。まず、サスペンション1の最先端部には、下方つまり基台7に向かってほぼ直角に折れ曲がった曲折部13が形成されている。そして、この曲折部13のさらに下方の基台7上には、四角形状の収容凹部を形成するダッシュポッド4が設けられており、その収容凹部には、ゲル5(ゲル状部材(粘性部材))が充填されている。なお、ゲル5は、ダッシュポッド4の収容凹部に、開口面よりも低い高さに液面が位置し、かつ、上記曲折部13の下端部分がゲル5内に浸漬される程度の量が充填されている。つまり、曲折部13の下端部分は、ゲル5内に浸漬される浸漬部となっている。
そして、上記ゲル5は、具体的には、シリコーンゲルであり、特に、−40℃〜120℃といった一般的な機器の使用温度範囲で硬化せずに所定範囲の粘性率を有する部材である。また、ゲル5の粘性率は、上記サスペンション1の剛性等を考慮し、当該サスペンション1が撓んで先端部分の磁石21,22が移動することを許容しつつ、サスペンション1の振動を短時間に収束させるよう、適度な減衰力を付勢する範囲のものを用いるとよい。なお、ダッシュポッド4に充填するゲル5は、上記材料に限定されず、他の材料の部材であってもよい。
[動作]
次に、上記構成の傾斜角センサによる傾斜角の検出動作について説明する。まず、サスペンション1の後端部11が支持ブロック6に固定支持されており、サスペンション1の磁石21,22が装備された先端部12側は、基台7に対して所定の間隔をあけて、基台7の上方の所定の高さに位置する。このとき、サスペンション1は、その板面が基台7面に対して垂直になるよう配置されているため、上下方向への剛性は高く設定されており、先端部12が重力によって下方に変位することは抑制されている。
ここで、サスペンション1は、長さが長く、板厚は薄く形成されているため、当該サスペンション1の板面に対して垂直方向、つまり、図3に示す矢印方向には、撓み易く形成されている。従って、図3の矢印方向に沿って傾きが生じたり外力を受けると、サスペンション1が撓み、その先端部12に設けられた磁石21が矢印方向に沿って移動する。つまり、高感度に検出することができる。一方で、サスペンション1は特に共振周波数近傍の外力などのノイズによって振動しやすくなっているが、上述したようにサスペンション1の最先端部に位置する曲折部13が振動に伴ってゲル5内を移動することとなり、その粘性にてサスペンション1に基台7(他の固定部材)に対する減衰力が付勢される。従って、サスペンション1つまり磁石21,22部分の振動を短時間で迅速に収束させることができ、ノイズの影響を抑制して、常時、傾き等を検出可能な状態が維持される。
そして、検出すべき傾きや加速が生じると、サスペンション1が撓んで磁石21,22が移動する。これによって、その下方に位置するGMRチップ31,32に対する磁界の向きが変化し(図7(a)参照)、当該GMRチップ31,32にて検出されるMR抵抗値が変化する。そして、この抵抗値から、予め設定された抵抗値と傾斜角との対応マップデータなどを参照して、傾斜角を計測することができる。以上のように、ノイズの影響を抑制し、検出感度の向上を図ることができる。
また、上述したようにサスペンション1による検出感度が高感度になるよう構成しているため、磁界検出手段による温度ドリフトの影響も抑制することができる。つまり、高感度化によりGMRチップ31,32にて大きな検出量を得ることができるため、当該GMRチップ31,32に温度ドリフトが存在したとしても、高精度にて検出することができ、センサの品質の向上を図ることができる。
なお、上記では、磁石21,22の移動による磁界の向きを検出するために、GMR素子を装備した場合を例示したが、ホール素子など、他の磁界を検出することが可能な素子を利用してもよい。
次に、本発明の第2の実施例を、図9乃至図10を参照して説明する。図9は、本実施例における傾斜角センサを斜め前方から見た図であり、図10は、ほぼ正面から見た図である。
本実施例における傾斜角センサは、上述した実施例1に開示したものとほぼ同様の構成を採っているが、ダッシュポット104の構成が異なる。本実施例におけるダッシュポット104は、図9、図10に示すように、2枚の板状部が平行に上方に延び、当該上方に開口する略U字状に形成されている。そして、2枚の板状部の間に、所定の粘性を有するゲル105が充填されている。なお、ゲル105は、その粘性にて、ダッシュポット104のU字状部分に留まって収容された状態になっている。そして、このゲル105に、サスペンション1の一部である曲折部13の下端部が浸漬されている。
これにより、上述同様に、サスペンション1は撓み易く構成されているため、加速や傾きに対して高感度に反応して撓み、磁石21,22が移動する。これによって、その下方に位置するGMRチップ31,32に対する磁界の向きが変化し、当該GMRチップ31,32にて検出されるMR抵抗値が変化する。そして、この検出した抵抗値から傾きを計測することができる。一方で、サスペンション1は、当該サスペンション1を振動させるような外部からの衝撃などのノイズを拾いやすく、特に、共振周波数近傍のノイズによって振動しやすくなっているが、ゲル105によってサスペンション1に減衰力が付勢されるため、振動を短時間で迅速に収束させることができる。従って、ノイズの影響を抑制し、検出感度及び検出精度の向上を図ることができる。
次に、本発明の第3の実施例を、図11乃至図12を参照して説明する。図11は、本実施例における傾斜角センサを斜め前方から見た図であり、図12は、ほぼ正面から見た図である。
本実施例における傾斜角センサは、上述した実施例2に開示したものとほぼ同様の構成を採っているが、サスペンション1の先端部分の形状が異なる。なお、本実施例におけるダッシュポット204は、実施例2と同様に、2枚の板状部が平行に上方に延び、当該上方に開口する略U字状に形成されている。そして、2枚の板状部の高さが、実施例2よりも高く形成されており、その間に所定の粘性を有するゲル205が充填されている。
そして、本実施例におけるサスペンション1の最先端部213は、下方に曲折せず、当該サスペンション1の長手方向に沿って延び、上記ダッシュポット204に充填されたゲル205を貫通する長さに形成されている。つまり、最先端部213の一部がゲル205に浸漬された状態になっている。
これにより、上述同様に、サスペンション1は撓み易く構成されているため、加速や傾きに対して高感度に反応して撓み、磁石21,22が移動する。これによって、その下方に位置するGMRチップ31,32に対する磁界の向きが変化し、当該GMRチップ31,32にて検出されるMR抵抗値が変化する。そして、この検出した抵抗値から傾きを計測することができる。一方で、サスペンション1を振動させるような外部からの衝撃などのノイズを拾いやすく、特に、共振周波数近傍のノイズによって振動しやすくなっているが、ゲル205によってサスペンション1に減衰力が付勢されるため、振動を短時間で迅速に収束させることができる。従って、ノイズの影響を抑制しつつ、検出感度及び検出精度の向上を図ることができる。
次に、本発明の第4の実施例を、図13乃至図14を参照して説明する。図13は、本実施例における傾斜角センサを斜め前方から見た図であり、図14は、上方から見た図である。
本実施例における傾斜角センサは、上述した実施例1に開示したものとほぼ同様の構成を採っているが、ダッシュポット4が装備されておらず、減衰手段が他の構成を採っている。具体的には、図13、図14に示すように、サスペンション1の先端部よりもさらに先端側に、磁石21,22とほぼ並列に配置された略直方体の固定壁部341が、基台7に固定装備されている。なお、この固定壁部341の高さは、サスペンション1にて基台7上に支持された状態の磁石21,22とほぼ同一の高さに形成されている。
そして、図示するように、サスペンション1の先端部分の上部と固定壁部341の上部とを連結する棒状の連結部材342が装備されている。これに伴い、サスペンション1の先端部分の上部と固定壁部341の上部とには、それぞれ所定量のゲル351,352が付着するよう設けられている。そして、上記連結部材342の両端部が、それぞれゲル351,352に浸された状態になっている。つまり、連結部材342は、ゲル351,352を介して、サスペンション1(磁石21,22)と固定壁部341とを連結している。
なお、ゲル351,352は、サスペンション1の先端部分の上部と固定壁部341の上部とにゲル収容部が形成され、かかる収容部に充填されていてもよい。これに伴い、連結部材342の両端が、ゲル収容部に収容されたゲル351,352に浸漬される。
これにより、上述同様に、サスペンション1は撓み易く構成されているため、加速や傾きに対して高感度に反応して撓み、磁石21,22が移動する。これによって、その下方に位置するGMRチップ31,32に対する磁界の向きが変化し、当該GMRチップ31,32にて検出されるMR抵抗値が変化する。そして、この検出した抵抗値から傾きを計測することができる。一方で、サスペンション1を振動させるような外部からの衝撃などのノイズを拾いやすく、特に、共振周波数近傍のノイズによって振動しやすくなっているが、固定部材341に対してゲル351,352によって連結部材342を介してサスペンション1に減衰力が付勢されるため、振動を短時間で迅速に収束させることができる。従って、ノイズの影響を抑制しつつ、検出感度及び検出精度の向上を図ることができる。
次に、本発明の第5の実施例を、図15を参照して説明する。図15は、本実施例における傾斜角センサを上方から見た図である。
本実施例における傾斜角センサは、上述した実施例4に開示したものとほぼ同様の構成を採っているが、減衰手段の構成が若干異なる。具体的には、図15に示すように、連結部材343,344が2本設けられている点で異なる。かかる場合には、2本の連結部材343,344の両端にそれぞれ対応して、サスペンション1の先端部に装備された磁石21,22の上部と固定壁部341の上部とに、所定量のゲル353,354,355,356が付着して設けられている。そして、上記各連結部材343,344の両端部が、それぞれゲル353,354,355,356に浸された状態になっている。つまり、2本の連結部材343,344は、ゲル353〜356を介して、サスペンション1(磁石21,22)と固定壁部341とを連結している。
なお、ゲル353〜356は、サスペンション1の先端部に設けられた磁石22,23の上部と固定壁部341の上部とにゲル収容部が形成され、かかる収容部に充填されていてもよい。これに伴い、各連結部材343,344の両端が、ゲル収容部に収容されたゲル351〜354に浸漬される。
これにより、上述同様に、サスペンション1は撓み易く構成されているため、加速や傾きに対して高感度に反応して撓み、磁石21,22が移動する。これによって、その下方に位置するGMRチップ31,32に対する磁界の向きが変化し、当該GMRチップ31,32にて検出されるMR抵抗値が変化する。そして、この検出した抵抗値から傾きを計測することができる。一方で、サスペンション1を振動させるような外部からの衝撃などのノイズを拾いやすく、特に、共振周波数近傍のノイズによって振動しやすくなっているが、固定部材341に対してゲル353,354,355,356によって連結部材343,344を介してサスペンション1に減衰力が付勢されるため、振動を短時間で迅速に収束させることができる。従って、ノイズの影響を抑制しつつ、検出感度及び検出精度の向上を図ることができる。
次に、本発明の第6の実施例を、図16乃至図17を参照して説明する。図16は、本実施例における傾斜角センサを斜め前方から見た図であり、図17は、上方から見た図である。
本実施例における傾斜角センサは、上述した実施例1に開示したものとほぼ同様の構成を採っているが、ダッシュポット4が装備されておらず、減衰手段が他の構成を採っている。具体的には、図16、図17に示すように、サスペンション1の先端部に装備された各磁石21,22の側方側に、当該各磁石21,22にそれぞれ並立して配置された略直方体の固定壁部441,442が、基台7に固定装備されている。なお、各固定壁部441,442の高さは、サスペンション1にて基台7上に支持された状態の磁石21,22とほぼ同一の高さに形成されている。
そして、図示するように、各磁石22,23の各側部と、隣り合う各固定壁部441,442と、の間には、所定量のゲル451,452がそれぞれ付着して設けられている。なお、ゲル451,452は、その粘性にて、磁石22,23と固定壁部441,442との間に留まって配置された状態になっている。
これにより、上述同様に、サスペンション1は撓み易く構成されているため、加速や傾きに対して高感度に反応して撓み、磁石21,22が移動する。これによって、その下方に位置するGMRチップ31,32に対する磁界の向きが変化し、当該GMRチップ31,32にて検出されるMR抵抗値が変化する。そして、この検出した抵抗値から傾きを計測することができる。一方で、サスペンション1を振動させるような外部からの衝撃などのノイズを拾いやすく、特に、共振周波数近傍のノイズによって振動しやすくなっているが、ゲル451,452によって固定部材441,442に対してサスペンション1に減衰力が付勢されるため、振動を短時間で迅速に収束させることができる。従って、ノイズの影響を抑制しつつ、検出感度及び検出精度の向上を図ることができる。
次に、上述した構成の傾斜角センサの実装例を説明する。まず、上述した傾斜角センサは、カメラに装備して利用することができる。その具体例を、図18を参照して説明する。
図18は、カメラ500の内部構造を示す図である。この図に示すように、カメラ500の内部には、当該カメラの動作を制御する制御基板501が実装されており、かかる基板501上に傾斜角センサ510が装備されている。そして、当該センサ510から出力された信号が制御基板501上の演算装置(図示せず)にて演算処理され、所定の方向の傾斜角を計測するよう構成されている(計測手段)。これにより、カメラのシャッター時に、縦向きあるいは横向きといった傾き方向を検出することができ、画像変換・補正などに利用することができる。
また、傾斜角センサは、プロジェクタなどの電子機器に装備して傾斜角を計測することで、水平に載置されているか、といった載置状態の検出に利用することができる。さらには、傾斜角センサは、バイクに装備して当該バイクの傾斜角を検知し、転倒検知にも利用することができる。
また、傾斜角センサは、加速度を計測することにも利用することができる。つまり、上述した構成の傾斜角センサの出力値、つまり、GMR素子のMR抵抗値を演算処理することで、所定方向における加速度を計測することができる。その一例として、加速度センサとしての傾斜角センサ610を、ハードディスクドライブ600に装備した場合を、図19を参照して説明する。
図19は、ハードディスクドライブ600を裏側から見た内部構造を示す。ハードディスクドライブ600の内部には、当該ドライブの動作を制御する制御基板601が実装されており、かかる基板601上に傾斜角センサ610を装着する。そして、当該センサ610から出力された信号が、制御基板601上の演算装置(図示せず)にて演算処理され、所定の方向の加速度を計測するよう構成されている(計測手段)。例えば、動的な抵抗値の変化、つまり、単位時間当たりの抵抗値の変化量を算出することで、加速度を計測することができる。これにより、ハードディスクドライブ600の無理な移動や落下を瞬時に検出して、磁気ヘッドを磁気ディスク上から退避させるよう制御するなどの構成を採ることで、データの破損を抑制することができる。
さらに、上記傾斜角センサは、ゲーム装置のコントローラに装備することも可能である。かかる場合には、コントローラの動作(加速度)や傾斜角を計測し、かかる値をコントローラからの入力値として利用してもよい。
ここで、上記では、1つの傾斜角センサを電子機器等に装備する場合を例示したが、複数の傾斜角センサを装備して、複数方向の傾斜角、あるいは、加速度を計測可能なよう構成してもよい。例えば、2つの傾斜角センサを、それぞれのバネ部材(サスペンション)が相互に直交するよう配置して設けることで、2軸方向、つまり、平面方向に対する傾きや加速度を検出するよう利用することができる。具体的には、ストーブに取り付けて、その転倒防止や、クレーン車の平行状態の検出等に利用することができる。
また、3つの傾斜角センサを、それぞれのバネ部材(サスペンション)の撓み方向が3軸方向(X,Y,Z軸方向)に向くよう配置することで、立体的な傾きや加速度を検出するよう利用することができる。具体的には、地震計としての利用が考えられる。ここで、図20、図21に、上述した本発明である傾斜角センサを実装した地震計700の構成例を示す。図20は、地震計700の外観を示す図であり、図21は、地震計700の本体内部を示す図である。この図に示すように、地震計700の内部に、3つの傾斜角センサ710,720,730を搭載しており、それぞれのバネ部材(サスペンション)の撓み方向が、3軸方向、つまり、水平X方向、水平Y方向、垂直Z方向、に向くよう配置されている。これにより、地震による3次元方向の加速度や傾きの発生を高感度かつ高精度に検出することができる。
以上のように、傾斜角センサの種々の利用例を開示したが、いかなる電子装置や他の装置に搭載してもよい。そして、所定の加速度や傾斜角を検出したときに電子装置の動作を制御して当該装置自体を保護するよう利用することができる。このようにすることで、信頼性の高い電子装置や各種装置を構成することができると共に、装置の高機能化を図ることができる。
本発明である傾斜角センサは、電子機器や種々の装置に装備することで、それらの傾きや加速度を計測することに利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
実施例1における傾斜角センサの構成を示す、斜め先端側から見た図である。
実施例1における傾斜角センサの構成を示す、斜め後端側から見た図である。
実施例1における傾斜角センサの構成を示す、上方側から見た図である。
実施例1における傾斜角センサの構成を示す、側方側から見た図である。
実施例1における傾斜角センサの分解図である。
GMR素子による磁界の向きの検出原理を説明する説明図である。
磁石の構成及びGMRチップとの関係を示す説明図である。
GMR素子による検出原理を示す説明図である。
実施例2における傾斜角センサの構成を示す、斜め先端側から見た図である。
実施例2における傾斜角センサの構成を示す、前方から見た図である。
実施例3における傾斜角センサの構成を示す、斜め先端側から見た図である。
実施例3における傾斜角センサの構成を示す、前方から見た図である。
実施例4における傾斜角センサの構成を示す、斜め先端側から見た図である。
実施例4における傾斜角センサの構成を示す、上方から見た図である。
実施例5における傾斜角センサの構成を示す、上方から見た図である。
実施例6における傾斜角センサの構成を示す、斜め先端側から見た図である。
実施例6における傾斜角センサの構成を示す、前方から見た図である。
実施例7における傾斜角センサを搭載したカメラの構成を示す図である。
実施例7における傾斜角センサを搭載したハードディスクドライブの構成を示す図である。
実施例7における傾斜角センサを搭載した地震計の構成を示す図である。
実施例7における傾斜角センサを搭載した地震計の内部構成を示す図である。
符号の説明
1 サスペンション
4,104,204 ダッシュポッド
5,105,205,351,352,353,354,355,356,451,452 ゲル
6 支持ブロック
7 基台
11 後端部
12 先端部
13 曲折部
21,22 磁石
31,32 GMRチップ
341,441,442 固定壁部
342,343,344 連結部材
500 カメラ
501,601 制御基板
510,610,710,720,730 傾斜角センサ
600 ハードディスクドライブ
700 地震計