JP2008255819A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】機関弁のリフトおよび/または開閉タイミングを変更する場合、リフトの大きさや開閉タイミングにかかわらず、機関弁を含む動弁系の振動を効果的に抑制でき、内燃機関の振動を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】機関弁の制御量SAAIN,CAINを可変動弁機構40で変更することにより、吸気量QAIRを制御する内燃機関3の制御装置であって、同一の吸気量QAIRに対して複数の制御量が対応するように設定された、制御量と吸気量QAIRとの関係を記憶する記憶手段2と、検出された内燃機関3の運転状態NEに応じ、設定された目標吸気量QAIRCMDに対応する複数の制御量から、機関弁を含む動弁系に発生する振動(振動パラメータVVI)が最大になるような制御量以外の制御量を選択し、設定する制御量設定手段2と、設定された制御量に基づいて、可変動弁機構を制御する制御手段2と、を備える。
【選択図】図8

Description

本発明は、吸気弁および排気弁の少なくとも一方である機関弁のリフトおよび/または開閉タイミングを、可変動弁機構によって変更することにより、気筒内に供給される吸気量を制御する内燃機関の制御装置に関する。
従来の内燃機関として、特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、吸気弁および排気弁(以下、総称して「機関弁」という)のリフトおよび開閉タイミングが一定のタイプのものである。クランクシャフトの両側には、その回転に伴って回転する2つのバランサが配置されている。バランサの重量は、ピストンの往復運動に伴って発生する起振力をバランサの遠心力によって相殺できるような重量に、所定の重量を加算した値に設定されている。この所定の重量は、機関弁の作動に伴い、機関弁を含む動弁系に発生する合成起振力を遠心力によって相殺できるような値に設定されている。この合成起振力は、気筒ごとに算出された各機関弁の起振力に応じて算出される。このようにバランサに所定の重量を付加することによって、合成起振力により動弁系に発生する振動を抑制し、そのような動弁系の振動に伴う内燃機関の振動を抑制するようにしている。
しかし、従来のバランサを、機関弁のリフトおよび/または開閉タイミングを変更する可変動弁機構を備えた内燃機関に適用した場合には、以下のような問題がある。すなわち、機関弁のリフトや開閉タイミングを変更すると、それに応じて、各機関弁の起振力が変化するため、動弁系の合成起振力も変化する。これは、リフトを変更すると、機関弁の起振力の大きさが変化し、開閉タイミングを変更すると、起振力の発生タイミングが変化するからである。このため、機関弁のリフトなどを変更した場合には、合成起振力を遠心力によって十分に相殺できず、動弁系が大きく振動することがあり、その場合には、内燃機関の振動を十分に抑制できない。
このような不具合を解消するために、バランサの重量をより大きくすることが考えられるが、その場合には、内燃機関が大型化するだけでなく、負荷が増大し、燃費が悪化する。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、機関弁のリフトおよび/または開閉タイミングを変更する場合、リフトの大きさや開閉タイミングにかかわらず、機関弁を含む動弁系の振動を効果的に抑制でき、それにより、内燃機関の振動を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
特開昭52−133407号公報
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、吸気弁4および排気弁7の少なくとも一方である機関弁のリフトおよび開閉タイミングの少なくとも一方である制御量(実施形態における(以下、本項において同じ)回動角SAAIN、吸気カム位相CAIN)を可変動弁機構(動弁機構40)によって変更することにより、気筒3a内に供給される吸気量QAIRを制御する内燃機関3の制御装置であって、同一の吸気量QAIRに対して複数の制御量が対応するように設定された、制御量と吸気量QAIRとの関係を記憶する記憶手段(ECU2、図12)と、吸気量QAIRの目標となる目標吸気量QAIRCMDを設定する目標吸気量設定手段(ECU2、ステップ2)と、内燃機関3の運転状態(エンジン回転数NE)を検出する運転状態検出手段(クランク角センサ21、ECU2)と、検出された内燃機関3の運転状態に応じて、設定された目標吸気量QAIRCMDに対応する複数の制御量から、機関弁を含む動弁系に発生する振動(振動パラメータVVI)が最大になるような制御量以外の制御量を選択し、設定する制御量設定手段(ECU2、ステップ11,15,23,26、図13)と、設定された制御量に基づいて、可変動弁機構を制御する制御手段(ECU2、ステップ13,17,25,28)と、を備えることを特徴とする。
この内燃機関の制御装置によれば、吸気弁および排気弁の一方である機関弁のリフトおよび/または開閉タイミングである制御量を可変動弁機構で変更することによって、気筒内に供給される吸気量が制御される。なお、本明細書において、機関弁のリフトはその最大揚程(リフト量)を表す。制御量は、同一の吸気量に対して複数の制御量が対応するように設定されており、そのように設定された制御量と吸気量との関係が、記憶手段に記憶されている。内燃機関の運転中、吸気量の目標値である目標吸気量が設定されると、検出された内燃機関の運転状態に応じて、制御量設定手段は、記憶手段に記憶された、目標吸気量に対応する複数の制御量から、機関弁を含む動弁系に発生する振動が最大になるような制御量以外の制御量を選択し、設定する。そして、設定された制御量に基づいて、可変動弁機構を制御することによって、吸気量が目標吸気量に制御される。
機関弁の制御量によって吸気量を制御する場合、同一の吸気量を得ることができる機関弁の制御量は、1つだけ存在するのではなく、複数、存在する。例えば、機関弁のリフトおよび開閉タイミングの双方が制御量である場合には、両者の互いに異なる複数の組合わせによって同一の吸気量が得られる。あるいは、リフトまたは開閉タイミングの一方が制御量である場合でも、内燃機関の限られた運転領域では、ほぼ同一の吸気量を異なる制御量によって得ることが可能である。また、同一の吸気量が得られるような複数の制御量の間では、動弁系に発生する振動の大きさが異なり、振動が最大になるような制御量は、内燃機関の運転状態、例えば内燃機関の回転数に応じて変化するという特性を有する。
このような吸気量と制御量との関係、および動弁系の振動特性に基づき、本発明によれば、制御量と吸気量の関係を、同一の吸気量に対して複数の制御量が対応するようにあらかじめ設定し、記憶するとともに、内燃機関の運転状態に応じ、設定された目標吸気量に対する複数の制御量から、動弁系の振動が最大になるような制御量以外の制御量を選択し、設定する。これにより、吸気量が目標吸気量に制御されるとともに、機関弁を含む動弁系の振動がより低減されることで、その振動を効果的に抑制でき、内燃機関の振動を抑制することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、制御量設定手段により設定される制御量は、動弁系に発生する振動が最小になるような制御量であることを特徴とする。
この構成によれば、内燃機関の運転状態に応じ、複数の制御量から、振動が最小になるような制御量を選択し、設定するので、吸気量が目標吸気量に制御されるとともに、内燃機関の振動を最小に抑制することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、可変動弁機構は、機関弁のリフトを変更するリフト可変機構70と、機関弁の開閉タイミングを変更する開閉タイミング可変機構(カム位相可変機構50)と、を有し、制御量と吸気量QAIRとの関係は、機関弁のリフトおよび開閉タイミングと吸気量QAIRとの関係を表すマップであることを特徴とする。
この構成によれば、機関弁の制御量はそのリフトおよび開閉タイミングであり、機関弁のリフトを可変動弁機構で変更するとともに、機関弁の開閉タイミングを開閉タイミング可変機構で変更することによって、吸気量が制御される。また、記憶手段には、制御量と吸気量との関係が、機関弁のリフトおよび開閉タイミングと吸気量との関係を表すマップとして記憶されている。したがって、このマップから、目標吸気量および内燃機関の運転状態に応じ、動弁系の振動が最小になるようなリフトおよび開閉タイミングを選択し、設定することによって、両者の協調制御により、内燃機関の広い運転領域にわたって、吸気量を目標吸気量に精度良く制御できるとともに、内燃機関の振動を効果的に抑制することができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、開閉タイミング可変機構は、内燃機関3の回転によって昇圧される油圧によって駆動される油圧式のものであり、内燃機関3の回転数(エンジン回転数NE)を検出する回転数検出手段(クランク角センサ21、ECU2)と、内燃機関の温度(エンジン水温TW)を検出する第1温度検出手段(水温センサ22)と、をさらに備え、制御量設定手段は、検出された内燃機関の回転数が所定回転数NEREF以下のとき、または検出された内燃機関の温度が所定温度TWREF以下のときに、機関弁の開閉タイミングを固定値(所定値CAINREF)に設定することを特徴とする。
この構成によれば、開閉タイミング可変機構が、内燃機関の回転によって昇圧される油圧式のものであるので、その応答性は、内燃機関の回転数が低いほど、低くなり、また内燃機関の温度が低いほど、オイルの温度が低く、粘度が高いため、低くなる。このため、検出された内燃機関の回転数が所定回転数以下のとき、または内燃機関の温度が所定温度以下のときには、機関弁の開閉タイミングを固定値に設定し、保持することによって、開閉タイミング可変機構の応答性が低いときの目標吸気量に対する実際の吸気量のずれを回避でき、それにより、内燃機関の燃焼安定性を確保することができる。
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、内燃機関3が所定の加速運転状態であるか否かを判定する加速運転状態判定手段(ECU2、ステップ5)をさらに備え、制御量設定手段は、内燃機関3が所定の加速運転状態であると判定されたときに、機関弁のリフトを目標吸気量QAIRCMDに対応する複数のリフトのうちの最大リフト(最大回動角SAAINMAX)に設定し、または機関弁の開閉タイミングを、目標吸気量QAIRCMDに対応する複数の開閉タイミングのうちの、吸気弁4と排気弁7とのオーバーラップが最大になる値に設定することを特徴とする。
この構成によれば、内燃機関が所定の加速運転状態であるときには、目標吸気量に対応する制御量から、機関弁のリフトを最大リフトに設定するか、または機関弁の開閉タイミングを吸気弁と排気弁とのオーバーラップが最大になる値に設定する。このように、機関弁のリフトまたはオーバーラップを最大にすることによって、大きな出力を確保できるので、良好な加速性能を確保することができる。
請求項6に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、内燃機関3は車両Vに動力源として搭載されており、車両Vが登坂状態にあるか否かを判定する登坂状態判定手段(ECU2、ステップ6)をさらに備え、制御量設定手段は、車両Vが登坂状態にあると判定されたときに、機関弁のリフトを目標吸気量QAIRCMDに対応する複数のリフトのうちの最大リフト(最大回動角SAAINMAX)に設定し、または機関弁の開閉タイミングを、目標吸気量QAIRCMDに対応する複数の開閉タイミングのうちの、吸気弁4と排気弁7とのオーバーラップが最大になる値に設定することを特徴とする。
この構成によれば、車両が登坂状態にあるときには、請求項5の場合と同様、目標吸気量に対応する制御量から、機関弁のリフトを最大リフトに設定するか、または機関弁の開閉タイミングをオーバーラップが最大になる値に設定する。これにより、請求項5に係る発明と同様、大きな出力を確保できるので、良好な登坂性能を確保することができる。
請求項7に係る発明は、請求項4ないし6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、内燃機関3の水温(エンジン水温TW)および油温TOILの少なくとも一方を検出する第2温度検出手段(油温センサ25)をさらに備え、制御量設定手段は、第2温度検出手段によって検出された温度に応じて、機関弁の開閉タイミングの許容範囲(カム位相範囲CAINR)を設定するとともに、設定された開閉タイミングの許容範囲内において機関弁のリフトを設定することを特徴とする。
この構成によれば、検出された内燃機関の水温および油温の少なくとも一方に応じて、機関弁の開閉タイミングの許容範囲が設定され、設定された許容範囲内において機関弁のリフトを設定する。開閉タイミング可変機構が油圧式の場合、その油圧の大きさは、油温に応じて変化し、油温が高いほど、小さい。したがって、開閉タイミング可変機構の油温を表すパラメータとしての内燃機関の水温または油温に応じ、機関弁の開閉タイミングの許容範囲を制限することによって、必要な油圧を確保できる範囲内で、開閉タイミング可変機構の適切な動作を確保することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による制御装置、およびこれを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示している。エンジン3は、4つの気筒3a(1つのみ図示)を有する直列4気筒のガソリンエンジンであり、車両Vに動力源として搭載されている。各気筒3aのピストン3bとシリンダヘッド3cとの間には、燃焼室3eが形成されている。
エンジン3は、気筒3aごとに設けられた一対の吸気弁4,4(機関弁)および一対の排気弁7,7(ともに1つのみ図示)と、吸気カムシャフト5と、吸気カムシャフト5に一体に設けられた吸気カム6と、排気カムシャフト8と、排気カムシャフト8に一体に設けられた排気カム9と、燃料噴射弁10(図2参照)と、点火プラグ11(図2参照)と、吸気弁4を駆動するための動弁機構40(可変動弁機構)などを備えている。
エンジン3には、クランク角センサ21および水温センサ22(図2参照)が設けられている。クランク角センサ21(回転数検出手段)は、クランクシャフト3dの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
CRK信号は、所定のクランク角(例えば1°)ごとに出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各気筒3aのピストン3bが吸気行程のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定のクランク角ごとに出力される。
水温センサ22(第1温度検出手段)は、エンジン3のシリンダブロック(図示せず)内を循環する冷却水の温度であるエンジン水温TWを表す検出信号を、ECU2に出力する。
エンジン3の吸気管12には、スロットル弁機構13が設けられている。スロットル弁機構13は、吸気管12内に回動自在に設けられたスロットル弁13aと、これを駆動するTHアクチュエータ13bなどを備えている。THアクチュエータ13bの動作はECU2からの駆動信号によって制御され、それにより、スロットル弁13aの開度(以下「スロットル弁開度」という)THが変化することによって、スロットル弁13aを通過する吸気の流量が制御される。
吸気カムシャフト5および排気カムシャフト8はそれぞれ、ホルダ(図示せず)を介して、シリンダヘッド3cに回転自在に支持され、気筒3aの配列方向に沿って延びている。この吸気カムシャフト5は、タイミングチェーン(図示せず)を介してクランクシャフト3dに連結されている。この構成により、吸気カムシャフト5は、クランクシャフト3dが2回転するごとに1回転し、それに伴う吸気カム6の回転によって、吸気弁4が開閉駆動される。
同様に、排気カムシャフト8は、タイミングチェーン(図示せず)を介してクランクシャフト3dに連結されており、クランクシャフト3dが2回転するごとに1回転し、それに伴う排気カム9の回転によって、排気弁7が開閉駆動される。
一方、燃料噴射弁10は、気筒3aごとに設けられ、燃料を気筒3a内に直接、噴射するようにシリンダヘッド3cに取り付けられている。燃料噴射弁10の開弁時間および開弁タイミングは、ECU2からの駆動信号によって制御され、それにより、燃料噴射量および噴射タイミングが制御される。
また、点火プラグ11も、気筒3aごとに設けられ、シリンダヘッド3cに取り付けられている。点火プラグ11の放電のタイミングは、ECU2により、点火時期に応じて制御される。
さらに、動弁機構40は、カム位相可変機構50およびリフト可変機構70で構成されている。
カム位相可変機構50は、クランクシャフト3dに対する吸気カムシャフト5の相対的な位相(以下「吸気カム位相」という)CAINを所定の範囲内において無段階に変更することによって、吸気弁4の開閉タイミングを変更するためのものであり、吸気カムシャフト5の吸気スプロケット側の端部に設けられている。図3に示すように、カム位相可変機構50は、ハウジング51、3枚羽根式のベーン52、油圧ポンプ53および電磁弁54などを備えている。
このハウジング51は、吸気カムシャフト5の吸気スプロケットと一体に構成されており、周方向に等間隔に形成された3つの隔壁51aを備えている。ベーン52は、吸気カムシャフト5の吸気スプロケット側の端部に同軸に取り付けられ、吸気カムシャフト5から外方に放射状に延びるとともに、ハウジング51内に回転可能に収容されている。また、ハウジング51内には、隔壁51aとベーン52の間に、3つの進角室55および3つの遅角室56が形成されている。
油圧ポンプ53は、クランクシャフト3dに連結された機械式のものであり、クランクシャフト3dの回転に伴い、エンジン3のオイルパン3fに蓄えられた潤滑用オイルを、油路57cを介して吸い込むとともに、これを昇圧した後、油路57cを介して電磁弁54に供給する。
電磁弁54は、スプール弁機構54aとソレノイド54bを組み合わせたものであり、進角油路57aおよび遅角油路57bを介して、進角室55および遅角室56にそれぞれ接続されていて、油圧ポンプ53から供給された油圧Poilを制御し、進角油圧Padおよび遅角油圧Prtとして、進角室55および遅角室56にそれぞれ供給する。電磁弁54のソレノイド54bは、ECU2からのデューティ制御された後述する位相制御入力U_CAINにより、スプール弁機構54aのスプール弁体を所定の範囲内で移動させることによって、進角油圧Padおよび遅角油圧Prtを変化させる。
以上の構成のカム位相可変機構50では、油圧ポンプ53の作動中、電磁弁54が位相制御入力U_CAINに応じて動作することにより、進角油圧Padが進角室55に、遅角油圧Prtが遅角室56にそれぞれ供給され、それにより、ベーン52とハウジング51との間の相対的な位相が進角側または遅角側に変更される。その結果、前述した吸気カム位相CAINが、所定の最遅角値と所定の最進角値との間で連続的に変化し、それにより、吸気弁4の開閉タイミングが、図4に実線で示す最遅角タイミングと、2点鎖線で示す最進角タイミングとの間で無段階に変更される。
一方、吸気カムシャフト5のカム位相可変機構50と反対側の端部には、カム角センサ23(図2参照)が設けられている。このカム角センサ23は、吸気カムシャフト5の回転に伴い、パルス信号であるINCAM信号を所定のカム角(例えば1゜)ごとにECU2に出力する。ECU2は、このINCAM信号と前述したCRK信号に基づき、吸気カム位相CAINを算出する。
また、リフト可変機構70は、吸気弁4のリフト(以下「吸気リフト」という)を値0と所定の最大値との間で無段階に変更するためのものである。図5および図6に示すように、リフト可変機構70は、コントロールシャフト71およびロッカアームシャフト72と、これらのシャフト71,72に気筒3aごとに設けられた上下のロッカアーム74,75と、これらの上下のロッカアーム74,75を駆動するアクチュエータ80などを備えている。
コントロールシャフト71は、回動軸部71a、ホルダ部71bおよび偏心軸部71cを一体に組み立てたものであり、吸気カムシャフト5と平行に延び、シリンダヘッド3cに回動自在に支持されるとともに、その一端部がアクチュエータ80に連結されている。
上ロッカアーム74は、一対のリンク74a,74a、ローラ軸74b、ローラ74cおよび一対のコイルばね74d,74dを備えている。ローラ軸74bは、その両端部において、リンク74a,74aの一端部にそれぞれ回動自在に支持されている。また、ローラ74cは、このローラ軸74bに回動自在に設けられている。
また、各リンク74aの他端部は、コントロールシャフト71の偏心軸部71cに回動自在に支持されるとともに、コイルばね74dを介してホルダ部71bに連結されている。リンク74aでは、このコイルばね74dの付勢力により、ローラ74cが吸気カム6のカム面に当接するとともに、ローラ74cが吸気カム6のカム面のベース円部に当接しているときに、ローラ軸74bは回動軸部71aと同軸の原点位置(図5に示す位置)に保持される。
一方、下ロッカアーム75は、その一端部においてロッカアームシャフト72に回動自在に支持され、他端部にはアジャストボルト75a,75aが取り付けられている。アジャストボルト75aと吸気弁4の間には、所定のタペットクリアランスが設けられている。
また、下ロッカアーム75は、上方に突出する一対の案内部75b,75bを備えている。各案内部75bは、その上面が上ロッカアーム74のローラ軸74bを案内する案内面75cになっており、この案内面75cを介してローラ軸74bに当接している。この案内面75cは、リンク74aが図5に実線で示す閉弁位置にあるときに偏心軸部71cと同心になるような、下方に凸の所定の円弧状に形成されている。また、案内部75bとローラ軸74bが互いに当接している状態では、ローラ74cは、案内部75b,75b間に位置するとともに、下ロッカアーム75に当接することなく、吸気カム6のみに当接する。
一方、アクチュエータ80は、ECU2により駆動されることによって、コントロールシャフト71をその回動軸部71aを中心として回動させる。このコントロールシャフト71の回動に伴い、リンク74aもローラ軸74bを中心として回動する。
次に、以上のように構成されたリフト可変機構70の動作について説明する。このリフト可変機構70では、ECU2からの後述するリフト制御入力U_SAAINにより、アクチュエータ80が駆動されると、コントロールシャフト71が回動する。その際、コントロールシャフト71の回動角SAAINは所定範囲内に規制され、それにより、リンク74aの回動範囲も、例えばローラ軸74bが前述した原点位置にある場合、図5に実線で示すゼロリフト位置と2点鎖線で示す最大リフト位置との間に規制される。
このようにリンク74aがゼロリフト位置にある場合、吸気カム6が回転し、そのカムノーズによりローラ74cがロッカアームシャフト72側に押されると、リンク74aは偏心軸部71cを中心として、図5の時計回りに回動する。その際、前述したように、下ロッカアーム75の案内面75cが偏心軸部71cを中心とする円弧と一致するような形状を有しているので、下ロッカアーム75は、図5に示す閉弁位置に保持される。それにより、吸気リフトは値0に保持され、吸気弁4は閉弁状態に保持される。
一方、リンク74aがゼロリフト位置から最大リフト位置側に回動した状態では、吸気カム6の回転により、リンク74aが偏心軸部71cを中心として図5の時計回りに回動し、それに伴い、下ロッカアーム75は、図5に示す閉弁位置から下方に回動し、吸気弁4を開放する。その際、下ロッカアーム75の回動量すなわち排気リフトは、リンク74aが最大リフト位置に近い位置にあるほど、より大きくなる。
以上のように、吸気弁4は、リンク74aが最大リフト位置に近い位置にあるほど、より大きなリフトで開弁する。具体的には、吸気カム6の回転中、吸気弁4は、リンク74aが最大リフト位置にあるときには、図7に実線で示すバルブリフト曲線に従って開弁し、吸気リフトは、最大値LEXMAXになる。したがって、このリフト可変機構70では、アクチュエータ80を介して、リンク74aをゼロリフト位置と最大リフト位置との間で回動させることにより、吸気リフトを値0と所定の最大値LEXMAXとの間で無段階に変化させることができる。また、吸気カム位相CAINが同じ場合、吸気リフトが大きいほど、吸気弁4の開弁タイミングは早くなり、閉弁タイミングは遅くなる。
また、リフト可変機構70には、吸気リフトを検出するためのリフトセンサ24が設けられている(図2参照)。このリフトセンサ24は、コントロールシャフト71の回動角SAAINを検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。前述したように、吸気リフトは、コントロールシャフト71の回動角SAAINから一義的に定まるので、検出された回動角SAAINは、実際の吸気リフトを表す。
以上のように、このエンジン3では、動弁機構40により、吸気弁4の開閉タイミングおよび吸気リフトを無段階に変更することによって、気筒3aに供給される吸気量QAIRを自在に変更できる。例えば、吸気量QAIRは、吸気カム位相CAINが最進角値にあり、かつ吸気リフトが最大値LEXMAXのときに、最大になる。
また、ECU2には、油温センサ25(第2温度検出手段)から、カム位相可変機構50の作動油などとして用いられる潤滑用オイルの温度(以下「油温」という)TOILを表す検出信号が出力される。さらに、ECU2には、アクセル開度センサ26から、アクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、車速センサ27から、車両Vの速度(以下「車速」という)VPを表す検出信号が、傾斜角センサ28から、車両Vの前後方向の傾斜角DVを表す検出信号が、それぞれ出力される。また、ECU2には、油圧センサ29から、油圧ポンプ53によって昇圧された潤滑用のオイルの油圧POILを表す検出信号が出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、前述した各種のセンサ21〜29からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、燃料噴射量を含むエンジン3の制御を実行する。また、ECU2は、動弁機構40を制御することによって、吸気量QAIRを制御する。なお、本実施形態では、ECU2が記憶手段、目標吸気量設定手段、運転状態検出手段、制御量設定手段、制御手段、回転数検出手段、加速運転状態判定手段および登坂状態判定手段に相当する。
図8は、ECU2で実行される吸気量QAIRの制御処理を示すフローチャートである。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、エンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、目標スロットル弁開度THCMDを算出する。このように目標スロットル弁開度THCMDが算出されると、それに対応する制御入力がTHアクチュエータ13bに入力され、スロットル弁開度THが目標スロットル弁開度THCMDに制御される。
次に、要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、吸気量QAIRの目標となる目標吸気量QAIRCMDを算出する(ステップ2)。なお、要求トルクPMCMDは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。
次いで、エンジン回転数NEが所定回転数NEREF(例えば1000rpm)以下であるか否かを判別する(ステップ3)。この判別結果がYESのときには、クランクシャフト3dで駆動される油圧ポンプ53による潤滑用オイルの昇圧度合が低く、潤滑用オイルの油圧が低いため、カム位相可変機構50の応答性が低いとして、ステップ8に進み、吸気カム位相CAINを所定値に固定する後述の位相固定制御を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ3の判別結果がNOのときには、エンジン水温TWが所定温度TWREF(例えば60℃)以下であるか否かを判別する(ステップ4)。この判別結果がYESのときには、エンジン3が冷機状態にあり、潤滑用オイルの油温TOILが低く、その粘度が高いため、やはりカム位相可変機構50の応答性が低いとして、前記ステップ8に進み、位相固定制御を実行した後、本処理を終了する。
図9は、この位相固定制御処理のサブルーチンを示している。まず、ステップ11において、吸気カム位相CAINの目標となる目標カム位相CAINCMDを所定値CAINREFに設定する。この所定値CAINREFは、前述した吸気カム位相CAINの最遅角値に相当する。
次に、設定した目標カム位相CAINCMDに応じ、位相制御入力U_CAINを算出する(ステップ12)。具体的には、遅角油圧Prtが最大になるように位相制御入力U_CAINを算出する。次いで、算出した位相制御入力U_CAINに応じて、電磁弁54を駆動する(ステップ13)。以上により、吸気カム位相CAINが最遅角値に制御され、吸気弁4の開閉タイミングが最遅角タイミングに固定される。
このように、エンジン回転数NEが低い状態またはエンジン水温TWが低い状態において、吸気弁4の開閉タイミングを固定するのは、このような状態では、カム位相可変機構50の応答性が低いため、目標吸気量QAIRCMDに対して実際の吸気量QAIRがずれやすいので、それを回避することによって燃焼の安定性を確保するためである。また、吸気弁4の開閉タイミングを最遅角タイミングに固定するのは、吸気弁4と排気弁7とのオーバーラップを最小にすることによって、燃焼行程後に燃焼室3eに残留する既燃ガスの量(内部EGR量)を少なくし、エンジン3の安定した燃焼状態を確保するためである。
次いで、コントロールシャフト71の回動角SAAINの目標となる目標回動角SAAINCMDの許容範囲(以下「回動角範囲」という)SAAINRを算出する(ステップ14)。この回動角範囲SAAINRは、前記ステップ1および2でそれぞれ算出した目標スロットル弁開度THCMDおよび目標吸気量QAIRCMDに応じ、図12に示す等吸気量マップを検索することによって、算出される。
これらの等吸気量マップは、回動角SAAINおよび吸気カム位相CAINと、それによって得られる吸気量QAIRとの関係を、実験によって求め、等吸気量マップとして表したものである。この等吸気量マップでは、隣り合う2つの境界線(例えばR1,R2)によって取り囲まれたそれぞれの領域が、同一の吸気量QAIRが得られる領域(以下「等吸気量領域」という)に相当するとともに、中央側に位置するものほど吸気量QAIRがより大きいことを表す。
また、回動角SAAINおよび吸気カム位相CAINと吸気量QAIRとの関係が、スロットル弁開度THに応じて異なるため、等吸気量マップは、スロットル弁開度THに応じた3つのマップ(a)〜(c)で構成されている。このうち、マップ(a)は、スロットル弁開度THが全閉開度に近い所定の第1角度THREF1以下(TH≦THREF1)の低開度用のもの、マップ(b)は、スロットル弁開度THが第1角度THREF1と全開開度に近い所定の第2角度THREF2の間にあるとき(THREF1<TH<THREF2)の中開度用のもの、マップ(c)は、スロットル弁開度THが第2開度THREF2以上(TH≧THREF2)の高開度用のものである。スロットル弁開度THが大きいほど、吸気量QAIRはより大きくなるので、これらのマップ(a)〜(c)は、同じ回動角SAAINおよび吸気カム位相CAINに対して、スロットル弁開度THが高いものほど、吸気量QAIRはより大きな値に設定されている。
以上のようにして設定された等吸気量マップを用いて、コントロールシャフト71の回動角範囲SAAINRを以下のようにして算出する。まず、目標スロットル弁開度THCMDに基づいて、マップ(a)〜(c)のいずれかを選択する。次いで、選択したマップから、目標吸気量QAIRCMDに対応する等吸気量領域を選択し、選択した等吸気量領域から回動角範囲SAAINRを算出する。例えば、THCMD≦THREF1のときには、低開度用のマップ(a)が選択され、このときの目標吸気量QAIRCMDが同図にハッチングで示す等吸気量領域に相当するときには、回動角範囲SAAINRは、R1〜R2の間に設定される。また、この場合には、目標カム位相CAINCMDが最遅角値に設定されているので、回動角範囲SAAINRは、同図のSAAIN1〜SAAIN2の間に設定される。
前記ステップ14に続くステップ15では、目標回動角SAAINCMDを算出する。具体的には、まず、エンジン回転数NEに応じて、複数の回動角マップ(図13に1つのみ図示)から、1つの回動角マップを選択する。図13は、これらの回動角マップの一例を示している。この回動角マップは、回動角SAAIN、すなわち吸気弁4のリフトと、そのときに発生する吸気弁4および排気弁7を含む動弁系の振動の大きさを表す振動パラメータVVI(例えば動弁系の2次振動変位)との関係を、実験などによって求め、表したものである。また、エンジン回転数NEに応じて複数の回動角マップが設定されているのは、吸気弁4のリフトと振動パラメータVVIとの関係が、エンジン回転数NEに応じて異なるからである。
次に、エンジン回転数NEに応じて選択した回動角マップから、前記ステップ14で算出した回動角範囲SAAINR内において、振動パラメータVVIが最小値になる目標回動角SAAINCMDを算出する。例えば、図12で設定した回動角範囲SAAINR(SAAIN1〜SAAIN2)が、回動角マップ上の図13に示すような範囲に相当するときには、SAAIN1〜SAAIN2の範囲内で振動パラメータVVIが最小になる値、すなわちSAAIN1値が目標回動角SAAINCMDとして選択される。
次いで、ステップ16では、算出した目標回動角SAAINCMDとリフトセンサ24で検出された回動角SAAINに応じて、リフト制御入力U_SAAINを算出する。次に、算出したリフト制御入力U_SAAINに応じて、アクチュエータ80を駆動する(ステップ17)ことにより、回動角SAAINが目標回動角SAAINCMDに制御される。
以上により、吸気量QAIRが目標吸気量QAIRCMDに制御される。また、回動角範囲SAAINR内において、目標回動角SAAINCMDを振動パラメータVVIが最小になる値に設定することによって、動弁系の振動を効果的に抑制することができる。
図8に戻り、前記ステップ3および4の判別結果がいずれもNOで、NE>NEREFかつTW>TWREFのときには、エンジン3が所定の加速運転状態にあるか否かを判別する(ステップ5)。具体的には、アクセル開度APが値0よりも大きく、かつ車速VPの変化量ΔVP(車速VPの前回値と今回値との差)が所定値以上のときに、所定の加速運転状態にあると判定される。この判別結果がNOのときには、車両Vが登坂状態にあるか否かを判別する(ステップ6)。具体的には、傾斜角センサ28で検出された傾斜角DVが所定値以上のときに、登坂状態であると判別される。この判別結果がNOのときには、通常制御を実行し(ステップ7)、本処理を終了する。
図10は、この通常制御処理のサブルーチンを示している。まず、ステップ21において、油温センサ25および油圧センサ29でそれぞれ検出された潤滑用オイルの油温TOILおよび油圧POILに応じ、図14に示すカム位相範囲マップを検索することによって、目標カム位相CAINCMDの許容範囲(以下「カム位相範囲」という)CAINRを算出する。
このカム位相範囲マップは、油温TOILが第1〜第3所定温度TOREF1〜TOREF3(TOREF1<TOREF2<TOREF3)のときの3つのマップで構成されている。カム位相範囲マップの縦軸は、カム位相範囲CAINRを表しており、最遅角値と最進角値の間の吸気カム位相CAINの全作動範囲に対する、最遅角値を基準とするカム位相範囲CAINRの割合を百分率で表したものである。
このカム位相範囲マップでは、カム位相範囲CAINRは、油圧POILが低いほど、電磁弁54へのデューティ比を最大にしたときに吸気カム位相CAINのとり得る範囲がより狭くなるので、より小さな値に設定されている。また、3つのマップを比較すると、油温TOILが高いものほど、カム位相範囲CAINRはより小さな値に設定されている。これは、油温TOILが高いほど、潤滑用オイルの粘度が低くなるため、油圧ポンプ53によって昇圧されるオイルの昇圧度合が低くなり、吸気カム位相CAINのとり得る範囲がより狭くなるためである。なお、油温TOILが第1〜第3所定温度TOREF1〜TOREF3のいずれにも一致しないときには、カム位相範囲CAINRは、補間演算によって求められる。
前記ステップ21に続くステップ22では、算出したカム位相範囲CAINRと、前記ステップ1および2で算出した目標スロットル弁開度THCMDおよび目標吸気量QAIRCMDに応じ、図12に示す等吸気量マップを検索することによって、回動角範囲SAAINRを算出する。具体的には、まず、前記ステップ14と同様、目標スロットル弁開度THCMDに基づいて、マップ(a)〜(c)のいずれかを選択する。次に、選択したマップから目標吸気量QAIRCMDに対応する等吸気量領域を選択し、この等吸気量領域内において、カム位相範囲CAINRに対応する回動角範囲SAAINRを算出する。
ステップ23では、前記ステップ15と同様、エンジン回転数NEに応じ、複数の回動角マップから1つの回動角マップを選択するとともに、選択した回動角マップから、回動角範囲SAAINR内において振動パラメータVVIが最小になる目標回動角SAAINCMDを算出する。
次に、目標回動角SAAINCMDおよび回動角SAAINに応じて、リフト制御入力U_SAAINを算出し(ステップ24)、算出したリフト制御入力U_SAAINに応じて、アクチュエータ80を駆動する(ステップ25)。
次に、ステップ26では、前記ステップ23で算出した目標回動角SAAINCMDに応じて、目標カム位相CAINCMDを算出する。具体的には、ステップ22で選択された等吸気量マップを用い、目標回動角SAAINCMDに対応する目標カム位相CAINCMDを算出する。
次いで、目標カム位相CAINCMDおよび吸気カム位相CAINに応じ、位相制御入力U_CAINを算出し(ステップ27)、算出した位相制御入力U_CAINに応じて、電磁駆動弁54を駆動し(ステップ28)、本処理を終了する。
図8に戻り、前記ステップ5または6の判別結果がYESで、エンジン3が加速運転状態にあるか、または車両Vが登坂状態であるときには、回動角SAAINを最大値に制御する最大リフト制御を実行し(ステップ9)、本処理を終了する。
図11は、この最大リフト制御処理のサブルーチンを示している。まず、ステップ31において、前述した通常制御におけるステップ21と同様、油温TOILおよび油圧POILに応じ、図14に示すカム位相範囲マップを検索することによって、カム位相範囲CAINRを算出する。次に、ステップ22と同様、算出したカム位相範囲CAINRなどに応じて、図12の等吸気量マップを用いて、回動角範囲SAAINRを算出する(ステップ32)。
次に、算出した回動範囲SAAINR内における最大回動角SAAINMAXを、目標回動角SAAINCMDとして設定する(ステップ33)。次いで、前記ステップ24および25と同様、目標回動角SAAINCMDおよび回動角SAAINに応じて、リフト制御入力U_SAAINを算出し(ステップ34)、算出したリフト制御入力U_SAAINに応じて、アクチュエータ80を駆動する(ステップ35)。
次に、前記ステップ26〜28と同様、ステップ33で算出した目標回動角SAAINCMDに応じて、目標カム位相CAINCMDを算出する(ステップ36)とともに、算出した目標カム位相CAINCMDおよび吸気カム位相CAINに応じ、位相制御入力U_CAINを算出し(ステップ37)、位相制御入力U_CAINに応じて、電磁駆動弁54を駆動し(ステップ38)、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、通常制御時には、目標吸気量QAIRCMDおよびカム位相範囲CAINRに応じ、等吸気量マップから目標回動角SAAINCMDの回動角範囲SAAINRを算出し、エンジン回転数NEに応じ、複数の回動角マップから1つの回動角マップを選択し、選択した回動角マップから回動角範囲SAAINR内において、振動パラメータVVIが最小になる目標回動角SAAINCMDを算出する。また、位相固定制御時には、目標吸気量QAIRCMDおよび目標カム位相CAINCMDに応じ、等吸気量マップから回動角範囲SAAINRを算出するとともに、通常制御時と同様、エンジン回転数NEに応じて選択した回動角マップから目標回動角SAAINCMDを算出する。したがって、動弁系の振動を効果的に抑制でき、エンジン3の振動を抑制することができるとともに、動弁系の振動に起因する騒音も併せて抑制することができる。
また、複数の回動角マップを用い、回動角SAAINをエンジン回転数NEに応じて設定するので、エンジン回転数NEに応じ、振動パラメータVVIが最小になるような最適な目標回動角SAAINCMDを算出でき、エンジン3の振動を最大限に抑制することができる。また、等吸気量マップとして、スロットル弁開度THに応じて設定された3つのマップを用いるので、等吸気量領域をスロットル弁開度THに応じて適切に設定でき、この等吸気量領域に基づく回動角範囲SAAINRおよびカム位相範囲CAINRを適切に設定でき、それにより、吸気量QAIRを精度良く制御することができる。
また、エンジン回転数NEが所定回転数NEREF以下のとき、またはエンジン水温TWが所定温度TWREF以下のときに、位相固定制御によって、吸気カム位相CAINを最遅角値に保持するので、カム位相可変機構50の応答遅れによる目標吸気量QAIRCMDに対する吸気量QAIRのずれを回避でき、それにより、燃焼の安定性を確保することができる。
さらに、通常制御時および最大リフト制御時には、図14のカム位相範囲マップを用い、潤滑用オイルの油温TOILと油圧POILに応じてカム位相範囲CAINRを設定することができるので、必要な油圧を確保できる範囲内でカム位相可変機構50の適切な動作を確保することができる。
また、エンジン3が加速運転状態にあるとき、または車両Vが登坂状態にあるときには、最大リフト制御によって回動角SAAINを回動角範囲SAAINR内の最大値に設定するので、エンジン3の大きな出力を確保でき、良好な加速性能や登坂性能を確保することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、機関弁のリフトおよび開閉タイミングの変更を、吸気弁を対象として行っているが、排気弁を対象として行ってもよく、あるいは吸気弁および排気弁の双方を対象として行ってもよい。また、実施形態では、吸気量の制御を、吸気弁の吸気リフトおよび開閉タイミングの双方を変更することにより行っているが、いずれか一方を変更することによって行ってもよい。この場合も、エンジン3の限られた運転領域において、実施形態と同様の効果、すなわちエンジン3の振動を効果的に抑制できるという効果が得られる。
また、実施形態では、目標回動角を、振動パラメータが最小になるように設定しているが、これに限らず、振動パラメータがその最大値以外の、相対的に低減されるような目標回動角を設定してもよい。
さらに、実施形態では、複数の回動角マップをエンジン回転数に応じて設定しているが、これに限らず、動弁系の振動特性に影響を及ぼす他の適当なパラメータを用いてもよく、例えば筒内圧などをさらに用いてもよい。
また、実施形態では、エンジンの加速運転状態を判定するためのパラメータとして、アクセル開度および車速の変化量を用いているが、これに限らず、エンジンの加速運転状態を判定可能な他の適当なパラメータを用いてもよく、例えば、アクセル開度の変化量を用いてもよい。さらに、実施形態は、最大リフト制御中に吸気リフトを等吸気量領域内の最大値に設定しているが、本発明はこれに限らず、等吸気量領域内において吸気カム位相を最進角値に設定してもよい。その場合、吸気リフトは、等吸気量領域内の振動が最小になる値に設定される。
さらに、実施形態では、カム位相範囲を設定するためのパラメータとして、潤滑用オイルの油温および油圧を用いているが、これに限らず、カム位相可変機構の作動範囲に影響を及ぼす他の適当なパラメータ、例えばエンジン水温を用いてもよい。さらに、実施形態のリフト可変機構は、吸気リフトを無段階に変更するタイプのものであるが、本発明はこれに限らず、吸気リフトを段階的に変更するタイプのものにも適用可能である。
また、実施形態では、車両の登坂状態を判定するためのパラメータとして、車両の傾斜角を用いているが、これに限らず、他の適当なパラメータ、例えば、車両に搭載されたカーナビゲーションに記憶されている路面情報を用いてもよい。
さらに、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
本発明の制御装置を内燃機関とともに概略的に示す図である。 制御装置の一部を示す図である。 カム位相可変機構の概略構成を示す模式図である。 カム位相可変機構によりカム位相が最遅角値(実線)および最進角値(2点鎖線)に設定されているときの吸気弁のバルブリフト曲線を示す図である。 リフト可変機構の概略構成を示す模式図である。 リフト可変機構の概略構成を示す斜視図である。 リフト可変機構による吸気リフトの変更状態を示す図である。 吸気量制御処理を示すフローチャートである。 位相固定制御処理を示すサブルーチンである。 通常制御処理を示すサブルーチンである。 最大リフト制御処理を示すサブルーチンである。 スロットル弁が(a)低開度用、(b)中開度用および(c)高開度用の等吸気量マップの一例である。 回動角マップの一例である。 カム位相範囲マップの一例である。
符号の説明
2 ECU(記憶手段、目標吸気量設定手段、運転状態検出手段、制御量設定手段、
制御手段、回転数検出手段、加速運転状態判定手段および登坂状態判定
手段)
3 エンジン
3a 気筒
4 吸気弁(機関弁)
7 排気弁
21 クランク角センサ(運転状態検出手段、回転数検出手段)
22 水温センサ(第1温度検出手段)
25 油温センサ(第2温度検出手段)
40 動弁機構(可変動弁機構)
50 カム位相可変機構(開閉タイミング可変機構)
70 リフト可変機構
V 車両
NE エンジン回転数(内燃機関の運転状態、内燃機関の回転数)
TW エンジン水温(内燃機関の温度、内燃機関の水温)
TOIL 油温(内燃機関の油温)
QAIR 吸気量
QAIRCMD 目標吸気量
CAIN 吸気カム位相(制御量)
CAINREF 所定値
CAINR カム位相範囲(機関弁の開閉タイミングの許容範囲)
SAAIN 回動角(制御量)
SAAINMAX 最大回動角
VVI 振動パラメータ(動弁系に発生する振動)
NEREF 所定回転数
TWREF 所定温度

Claims (7)

  1. 吸気弁および排気弁の少なくとも一方である機関弁のリフトおよび開閉タイミングの少なくとも一方である制御量を可変動弁機構によって変更することにより、気筒内に供給される吸気量を制御する内燃機関の制御装置であって、
    同一の吸気量に対して複数の前記制御量が対応するように設定された、前記制御量と前記吸気量との関係を記憶する記憶手段と、
    前記吸気量の目標となる目標吸気量を設定する目標吸気量設定手段と、
    前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    当該検出された内燃機関の運転状態に応じて、前記設定された目標吸気量に対応する前記複数の制御量から、前記機関弁を含む動弁系に発生する振動が最大になるような制御量以外の制御量を選択し、設定する制御量設定手段と、
    当該設定された制御量に基づいて、前記可変動弁機構を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記制御量設定手段により設定される前記制御量は、前記動弁系に発生する振動が最小になるような制御量であることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記可変動弁機構は、
    前記機関弁のリフトを変更するリフト可変機構と、
    前記機関弁の開閉タイミングを変更する開閉タイミング可変機構と、を有し、
    前記制御量と前記吸気量との前記関係は、前記機関弁のリフトおよび開閉タイミングと前記吸気量との関係を表すマップであることを特徴とする、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記開閉タイミング可変機構は、前記内燃機関の回転によって昇圧される油圧によって駆動される油圧式のものであり、
    前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
    前記内燃機関の温度を検出する第1温度検出手段と、をさらに備え、
    前記制御量設定手段は、前記検出された内燃機関の回転数が所定回転数以下のとき、または前記検出された内燃機関の温度が所定温度以下のときに、前記機関弁の開閉タイミングを固定値に設定することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記内燃機関が所定の加速運転状態であるか否かを判定する加速運転状態判定手段をさらに備え、
    前記制御量設定手段は、前記内燃機関が前記所定の加速運転状態であると判定されたときに、前記機関弁のリフトを前記目標吸気量に対応する複数のリフトのうちの最大リフトに設定し、または前記機関弁の開閉タイミングを、前記目標吸気量に対応する複数の開閉タイミングのうちの、前記吸気弁と前記排気弁とのオーバーラップが最大になる値に設定することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記内燃機関は車両に動力源として搭載されており、
    当該車両が登坂状態にあるか否かを判定する登坂状態判定手段をさらに備え、
    前記制御量設定手段は、前記車両が前記登坂状態にあると判定されたときに、前記機関弁のリフトを前記目標吸気量に対応する複数のリフトのうちの最大リフトに設定し、または前記機関弁の開閉タイミングを、前記目標吸気量に対応する複数の開閉タイミングのうちの、前記吸気弁と前記排気弁とのオーバーラップが最大になる値に設定することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記内燃機関の水温および油温の少なくとも一方を検出する第2温度検出手段をさらに備え、
    前記制御量設定手段は、前記第2温度検出手段によって検出された温度に応じて、前記機関弁の開閉タイミングの許容範囲を設定するとともに、当該設定された開閉タイミングの許容範囲内において前記機関弁のリフトを設定することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
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