JP2008254558A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Takanori Matsunaga
隆徳 松永
Hideyuki Tanaka
英之 田中
Kenji Nakajima
健治 中島
Toshihide Satake
敏英 佐竹
Kohei Mori
考平 森
Koji Fujioka
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Abstract

【課題】車両が完全に不安定になる以前に、保舵走行やカント路走行などにより入力信号にオフセットが重畳される場合でも、不安定状態の誤検出信号の出力を抑制した車両用操舵装置を得る。
【解決手段】実路面反力トルク検出器15と、ハンドル角検出器18と、車速検出器11と、規範路面反力トルク演算手段19と、実路面反力トルク信号Talign_act(s)または規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)に対して特定周波数範囲を抽出するハイパスフィルタ27a、27bと、フィルタ処理後の実路面反力トルク信号および規範路面反力トルク信号に応じて車両の走行状態を判定する走行状態判定手段21とを備えている。オフセットを含む入力信号(実路面反力トルクやモータ角速度など)に対してフィルタ処理を施し、オフセット周波数成分を除去してオフセットの影響を取り除くことにより不安定状態の誤検出を抑制する。
【選択図】図2

Description

この発明は、自動車などに搭載された電動パワーステアリング装置などの車両用操舵装置に関し、特に、入力信号にオフセットが重畳される保舵走行状態やカント路走行状態などにおいても、車両の走行状態を正しく検出することのできる車両用操舵装置に関するものである。
一般的に、雪道などの滑りやすい路面では、運転者がハンドル操作を誤って車両挙動が不安定状態となる場合があるので、このような車両挙動の不安定状態を回避するために、車両挙動状態を検出して車両を安定化制御する必要がある。
そこで、従来の車両用操舵装置においては、車両に発生する実路面反力トルクを電動パワーステアリング装置で検出するとともに、車両の運転者の操舵操作によるハンドル角を検出し、ハンドル角と実路面反力トルクとの特性から、車両の走行挙動状態を推定する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2003−341538号公報
従来の車両用操舵装置では、上記特許文献1の場合、走行中の車両の不安定状態を判定するために、ハンドル角および車速の各検出値に基づく規範(線形)路面反力トルクと実路面反力トルクとの差を用いて車両状態を検出している。しかし、たとえばカント(傾斜)を有する路面を走行する場合には、斜面の低い方に車両が受ける力に応じた路面反力が生じることから、水平の路面を走行する場合に比べて、実路面反力トルク信号にオフセットが生じる。この結果、斜面走行時のハンドル角信号に対する実路面反力トルク信号は、水平路面走行時とは異なる値を示すので、ハンドル角信号に基づく規範路面反力トルクと、オフセットを有する実路面反力トルクとの差を用いた車両状態検出処理によれば、誤検出を招く可能性があるという課題があった。
また、各検出手段からのハンドル角信号や実路面反力トルク信号が、ノイズや温度の影響で時間推移(ドリフト)した場合や、オフセットを有するような場合においても、車両状態を誤検出する可能性があるという課題があった。
さらに、上記特許文献1のハンドル角に相当する信号として、ハンドル角速度信号や電動パワーステアリングのモータ回転角速度信号を用い、モータ回転角速度信号と実路面反力トルクの変化率とを比較することも考えられるが、ブラシ付きモータなどのモータ回転角速度信号を取得する場合には、たとえば保舵状態(または、ゆっくりとした操舵状態)でカーブを走行したときに、モータの発熱による温度上昇によってモータの巻き線抵抗値が変化することから、モータ角速度にオフセットが生じて、モータ回転角速度信号と実路面反力トルクの変化率との間に偏差が生じるので、依然として、車両挙動の不安定状態を誤検出する可能性があるという課題があった。
この発明は、上記課題を解消するためになされたもので、車両が完全に不安定になる以前に、車両の走行状態を検出する車両用操舵装置において、たとえば保舵走行やカント路走行などにより入力信号にオフセットが重畳される場合でも、誤検出信号の出力可能性を抑制した車両用操舵装置を得ることを目的とする。
この発明による車両用操舵装置は、走行中の車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクを表す実路面反力トルク信号を出力する実路面反力トルク信号出力手段と、車両の操舵角を表すハンドル角信号を出力するハンドル角信号出力手段と、車両の走行速度を表す車速信号を出力する車速信号出力手段と、ハンドル角信号および車速信号に基づいて、規範路面反力トルクを表す規範路面反力トルク信号を出力する規範路面反力トルク信号出力手段と、実路面反力トルク信号および規範路面反力トルク信号の少なくとも一方に対して特定周波数範囲を抽出するフィルタ手段と、フィルタ手段を介した実路面反力トルク信号および規範路面反力トルク信号に応じて車両の走行状態を判定する走行状態判定手段とを備えるものである。
この発明によれば、カント路などで実路面反力トルクにオフセットが生じる場合でも、オフセットの周波数に合わせたフィルタでこれを除去することができ、不安定状態の誤検出を抑制することができる。
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用操舵装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、車両用操舵装置と関連する車両のステアリング機構(操舵機構)10は、運転者が操舵するハンドル1と、ステアリング軸2と、ステアリングギアボックス3と、ラック&ピニオン機構6と、タイヤ7とにより構成される。
車両用操舵装置は、ステアリング軸2に取り付けられたトルクセンサ4および電動アシストモータ(以下、単に「モータ」という)5と、モータ5を制御するECU(電子制御ユニット)からなる制御装置8と、トルクセンサ4およびモータ5と制御装置8とを接続するケーブルと、モータ5および制御装置8などに電源を供給する電源装置(図示せず)とにより構成される。
ステアリング軸2の上端に連結されたハンドル1には、運転者による操舵トルクThdlが加えられ、操舵トルクThdlは、ハンドル1からステアリング軸2に伝達される。
トルクセンサ4は、ステアリング軸2に結合され、操舵トルクThdlに応じた操舵トルク信号Thdl(s)(操舵トルクの検出値)を生成して制御装置8に入力する。
モータ5は、ステアリング軸2に減速ギア(図示せず)を介して結合され、操舵トルクThdlをアシストするためのアシストトルクTassistを発生して、ステアリング軸2に与える。ステアリングギアボックス3は、ステアリング軸2の下端に設けられている。
ステアリング軸2に与えられる操舵トルクThdlとアシストトルクTassistとを加え合わせた合成トルクは、ステアリングギアボックス3を介して数倍に増幅され、ラック&ピニオン機構6を介してタイヤ7を駆動操作する。
次に、この発明の実施の形態1による全体的な動作について説明する。
図1に示すように、制御装置8(マイクロコンピュータ)には、トルクセンサ4からの操舵トルク信号Thdl(s)と、モータ5からのモータ駆動電流信号Imtr(s)およびモータ駆動電圧信号Vmtr(s)(モータ駆動電流Imtrおよびモータ駆動電圧Vmtrの各検出値)が入力される。なお、制御装置8内の演算処理において、各検出値および各演算値は、制御装置8内のメモリに読み込まれて記憶される。
制御装置8は、ステアリング機構10に対して電気的に組み合わせられたEPS(Electric Power Steering)としての制御を行うために、モータ5に対して制御信号Imtr(t)(モータ5に対する駆動目標電流)を供給する。
車両の走行中の操舵時において、タイヤ7には、路面反力トルク(実路面反力トルク)Talignが与えられる。
また、ステアリング軸2には、実路面反力トルクTalignに基づいて、ステアリング軸反力トルクTtran(ステアリング軸2に換算された実路面反力トルク)が作用する。
ステアリング機構10には、モータ5における摩擦トルクTmfricのみならず、モータ5の摩擦トルクTmfric以外の摩擦トルクTfrpが与えられる。
トルクセンサ4は、運転者がハンドル1を切ったときの操舵トルクThdlを、操舵トルク信号Thdl(s)として検出して制御装置8に入力する。
制御装置8は、操舵トルク信号Thdl(s)に応じて、モータ5に制御信号Imtr(t)を供給することにより、操舵トルクThdlを補助するためのアシストトルクTassistをモータ5から発生させることを主な機能とする。
このとき、制御装置8は、モータ駆動電流信号Imtr(s)と、モータ駆動電圧信号Vmtr(s)と、操舵トルク信号Thdl(s)とに基づいて、アシストトルクTassistを発生するための制御信号Imtr(t)を演算し、制御信号Imtr(t)をモータ5に供給する。
力学的には、操舵トルクThdlとアシストトルクTassistとの加算トルクが、ステアリング軸反力トルクTtranに抗して、ステアリング軸2を回転させる。また、ハンドル1を回転させるときには、モータ5の慣性項も作用するので、ステアリング軸反力トルクTtranは、以下の式(1)で与えられる。
Ttran=Thdl+Tassist−J・dω/dt ・・・(1)
ただし、式(1)において、J・dω/dtはモータ5の慣性トルクである。
また、モータ5によるアシストトルクTassistは、以下の式(2)で与えられる。
Tassist=Ggear・Kt・Imtr ・・・(2)
ただし、式(2)において、Ktはモータ5のトルク定数であり、Ggearは、モータ5とステアリング軸2との間のEPS減速ギア比である。
また、ステアリング軸反力トルクTtranは、実路面反力トルクTalignと、ステアリング機構10内の全摩擦トルクTfric(=Tmfric・Ggear+Tfrp)との和であり、モータ5の摩擦トルクTmfricと、モータ5の摩擦トルクTmfricを除いた他のステアリング機構10の摩擦トルクTfrpとを用いて、以下の式(3)で与えられる。
Ttran=Talign+Tfric
=Talign+(Ggear・Tmfric+Tfrp) ・・・(3)
制御装置8は、モータ5の駆動電流Imtrに対する目標値を演算し、制御信号Imtr(t)としてモータ5に入力するとともに、モータ5の実際の駆動電流Imtrが制御信号Imtr(t)と一致するように、電流フィードバック制御を行う。
これにより、モータ5は、駆動電流値にトルク定数およびギア比(モータ5とステアリング軸2との間のギア比)を乗算した所定トルクを発生し、運転者がハンドル1を操舵する際の操舵トルクThdlをアシストする。
また、制御装置8は、運転者が操舵時のアシストトルクを制御する機能のみならず、車両の走行状態を判定する機能(図2とともに後述する)を有し、車両走行状態を推定して車両挙動を安定化させるアシストトルクTassistを付与するシステムにおいて、オフセット成分を含む入力信号(後述する実路面反力トルク信号やモータ角速度信号など)に対して、オフセットの周波数成分を除去するフィルタ手段を用いてオフセットの影響を取り除くことにより誤検出を抑制するようになっている。
ここでは、制御装置8が走行状態判定手段を含む場合を例にとって説明するが、制御装置8とは別途に、走行状態判定手段を設けてもよい。
図2は制御装置8の具体的構成例を示す機能ブロック図であり、便宜的に、制御装置8がモータ5内の制御回路を含むものとして示している。
図2において、制御装置8は、車速検出器11と、操舵トルク検出器12と、モータ角速度検出器13と、モータ角加速度検出器14と、実路面反力トルク検出器15とを備えている。
車速検出器11は、車速センサ(図示せず)からの車速V(車両の走行速度)を検出して、車速信号V(s)を出力する。
操舵トルク検出器12は、トルクセンサ4(図1参照)からの操舵トルクThdlを検出して、操舵トルク信号Thdl(s)を出力する。
モータ角速度検出器13は、モータ制御回路からのモータ角速度Smtrを検出して、モータ角速度信号Smtr(s)を出力する。
モータ角加速度検出器14は、モータ角速度信号Smtr(s)を時間微分してモータ角加速度Amtrを検出し、モータ角加速度信号Amtr(s)を出力する。
実路面反力トルク検出器15は、走行中の車両のタイヤ7が路面から受ける実路面反力トルクTalignを検出して、実路面反力トルク信号Talign_act(s)を出力する。
また、制御装置8は、アシストトルク決定ブロック16と、車両挙動推定手段17と、アシストトルク補正手段22と、モータ電流決定器23と、モータ電流比較器24と、モータ駆動器25と、モータ電流検出器26とを備えている。
車両挙動推定手段17は、ハンドル角検出器18と、規範路面反力トルク演算手段19と、差分演算手段(比較演算手段)20と、走行状態判定手段21と、並設された1対のハイパスフィルタ27a、27bとにより構成される。
アシストトルク決定ブロック16は、車速信号V(s)と、操舵トルク信号Thdl(s)と、モータ角速度信号Smtr(s)と、モータ角加速度信号Amtr(s)と、アシストトルク補正量信号Trq_comp(s)とに基づいてアシストトルクTassistを決定し、アシストトルク信号Tassist(s)を出力する。
モータ電流決定器23は、アシストトルク信号Tassist(s)に基づいてモータ電流目標値Irefを決定し、モータ電流目標値信号Iref(s)を出力する。
モータ電流検出器26は、モータ5に流れるモータ電流Imtrを検出して、モータ電流信号Imtr(s)を出力する。
モータ電流比較器24は、モータ電流目標値信号Iref(s)とモータ電流信号Imtr(s)とを比較して減算を行い、両者のモータ電流偏差(=Iref(s)−Imtr(s))をモータ駆動器25に入力する。モータ駆動器25は、モータ電流偏差に基づいて、モータ5に対する制御信号Imtr(t)を出力する。
なお、モータ駆動電圧Vmtrのフィードバック制御系については図示を省略するが、モータ駆動器25に関連して、モータ駆動電圧信号Vmtr(s)に関するフィードバック制御も行われる。
アシストトルク決定ブロック16およびモータ電流決定器23〜モータ電流検出器26を含むモータ5の制御系は、モータ5とともに電動パワーステアリング装置を構成している。電動パワーステアリング装置は、車両挙動推定手段17およびアシストトルク補正手段22と関連して、モータ5を制御する。
車両挙動推定手段17は、運転者によるハンドル1の操舵角θhdlと、実路面反力トルク信号Talign_act(s)(実路面反力トルクTalignの検出値)と、車速信号V(s)(車速Vの検出値)とから、車両の挙動が不安定状態であることを検出する。
車両挙動推定手段17内において、ハンドル角検出器18は、操舵角θhdlを表すハンドル角信号θhdl(s)を出力する。
規範路面反力トルク演算手段19は、車速信号V(s)およびハンドル角信号θhdl(s)に基づいて規範路面反力トルクTalign_refを演算し、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)(規範路面反力トルクの演算値)を出力する。
ハイパスフィルタ(HPF)27a、27bは、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)および実路面反力トルク信号Talign_act(s)のそれぞれに対して、特定周波数範囲を抽出するためのフィルタ手段を構成している。ここでは、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)および実路面反力トルク信号Talign_act(s)の両方に対してハイパスフィルタ27a、27bを設けたが、いずれか一方のみに対してフィルタ手段を設けてもよい。
車両挙動推定手段17内において、差分演算手段20および走行状態判定手段21は、走行状態検出手段を構成しており、ハイパスフィルタ27a、27bを介して特定周波数範囲が抽出された規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)および実路面反力トルク信号Talign_act(s)に基づいて、車両の走行状態を検出する。
すなわち、差分演算手段20は、特定周波数範囲が抽出された実路面反力トルク信号Talign_act(s)および規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)の差分を演算して、差分信号Talign_comp(s)を出力する。
走行状態判定手段21は、差分信号Talign_comp(s)が許容基準値の範囲内であれば、車両が走行状態が安定状態であることを判定し、また、差分信号Talign_comp(s)が許容基準値を超えた場合には、車両の走行状態が不安定状態であることを判定して、車両挙動推定手段17での推定結果として、車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
アシストトルク補正手段22は、車両挙動推定手段17の推定結果である車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、アシストトルク補正量Trq_compを演算し、アシストトルク補正量信号Trq_comp(s)をアシストトルク決定ブロック16に入力する。
これにより、車両の運転者の操舵トルクThdlをアシストする電動パワーステアリング装置(アシストトルク決定ブロック16を含む)は、車両挙動推定信号Stability(s)に応じて、操舵トルクのアシスト量を制御することになる。
次に、図2を参照しながら、車両走行状態(車両挙動)の不安定状態およびその予兆を検出するための動作について説明する。
図2において、実路面反力トルク検出器15は、車両走行時のタイヤ7にかかる実路面反力トルクTalignを検出して、実路面反力トルク信号Talign_actを出力する。
実路面反力トルクTalignは、前述の式(3)に基づき、以下の式(4)のように求めることができる。
Talign=Ttran−Tfric ・・・(4)
式(4)に式(1)および式(2)を代入して整理すると、実路面反力トルクTalignは、以下の式(5)のように表すことができる。
Talign=Thdl+Ggear・Kt・Imtr−J・dω/dt−Tfric ・・・(5)
しかし、一般的に、式(5)内の摩擦項(全摩擦トルクTfric)の影響を直接除去することは困難である。したがって、実路面反力トルク検出器15は、たとえば電動パワーステアリング装置の機能を用いた公知技術(たとえば、特開2003−312521号公報参照)により、実路面反力トルクTalignとして、ローパスフィルタによる推定手段などを用いて、推定路面反力トルクTalign_estを算出する。
なお、以降の実施の形態2〜6では、特に記載しない限り、上記公知技術による電動パワーステアリング装置の機能を用いて実路面反力トルクTalignを導出するものとする。
次に、図1および図2とともに、図3を参照しながら、ハイパスフィルタ27a、27bを特に考慮せずに、差分演算手段20および走行状態判定手段21の基本的な検出機能(車両の不安定状態およびその予兆状態の検出アルゴリズム)について説明する。
図3は時系列状態量(安定状態、不安定予兆状態および不安定状態)を示す説明図であり、各状態量を、実路面反力トルクTalign(実線)および規範路面反力トルクTalign_ref(1点鎖線)の各検出値の時間変化に関連付けて示している。
図3において、まず、時刻t1から時刻t2までの区間(安定走行状態)では、実路面反力トルクTalignが操舵角θhdlに対してほぼ比例関係にあり、実路面反力トルク信号Talignは、規範路面反力トルクTalign_refとほぼ一致する。したがって、実路面反力トルクTalignと規範路面反力トルクTalign_refとの差分Talign_compは「0」となるので、走行状態判定手段21は、車両の走行状態が「安定状態」であることを示す車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
しかし、続く時刻t2から時刻t3までの区間(不安定予兆状態)では、車両が安定限界(不安定域)に近づいてくるので、規範路面反力トルクTalign_refに対して実路面反力トルクTalignが低下し、操舵角θhdlに対する比例関係を保持することができなくなり、実路面反力トルクTalignと規範路面反力トルクTalign_refとの差分Talign_comp(>0)が若干発生する。したがって、この特性を利用して車両が不安定になる予兆状態を検出することができる。この場合、走行状態判定手段21は、車両の走行状態が「不安定予兆状態」であることを示す車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
さらに、時刻t3から以降の区間(不安定状態)では、実路面反力トルクTalignと規範路面反力トルクTalign_refとの差分Talign_compが、許容基準値を超えて大きく発生するので、走行状態判定手段21は、車両の走行状態が「不安定状態」であることを示す車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
これにより、アシストトルク補正手段22は、車両挙動推定手段17からの車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、電動パワーステアリング装置のアシストトルクTassistを補正するためのアシストトルク補正量信号Trq_comp(s)を出力する。
具体的には、電動パワーステアリング装置の制御器を構成するアシストトルク決定ブロック16内のハンドル戻し制御器(図示せず)において、アシストトルク補正量信号Trq_comp(s)に応じて、運転者のハンドル戻しトルク制御の補償量を変更する。これにより、運転者が車両を安定化するための動作を補助することができる。
ここで、図4を参照しながら、ハイパスフィルタ27a、27bを考慮しない場合での、カント(傾斜φ)の付いた路面Rを車両Mが走行する際の実路面反力トルクTalignへのオフセットToffの影響について説明する。
図4内の模式図(左側)において、車両Mは、重力Grの影響により、傾斜の低い方向に力Fg(=Gr・sinφ)を受ける。これにより、車両Mに対して、力Fgに相当する反力トルク(オフセットToff)が発生するので、特性曲線(右側)においては、平坦路走行時の実路面反力トルク(破線曲線)に対して、オフセットToffが付加された実路面反力トルクTalign(実線参照)が検出される。
この結果、ハンドル角信号θhdl(s)から得られる規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)と、実路面反力トルク信号Talign_act(s)との間に、オフセットToffに相当する差分が発生し、走行状態判定手段21において、走行状態が不安定状態であると誤判定する可能性がある。
さらに、ハンドル角信号θhdl(s)や実路面反力トルク信号Talign_act(s)が、ノイズや温度の影響で時間推移(ドリフト)することや、オフセットを有することにより誤判定する可能性もある。
したがって、上記のような誤判定を防ぐために、図2内のハイパスフィルタ27a、27bを用いて、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)および実路面反力トルク信号Talign_avt(s)からそれぞれ低周波数成分を除去した信号を、差分演算手段20(走行状態検出手段)に入力する。
すなわち、ハイパスフィルタ27a、27bを介して低周波数成分(オフセットToffを含む各種のオフセット分)を取り除いた各信号を走行状態検出手段に入力することにより、カント路の影響やノイズや温度の影響などで実路面反力トルク信号Talign_act(s)やハンドル角信号θhdl(s)にオフセットが生じる場合であっても、誤検出を抑制することができる。
次に、図1〜図3とともに、図5のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態1に係る車両挙動推定手段17を含む電動パワーステアリング装置の制御動作について説明する。
図5において、まず、制御装置8は、車速信号V(s)と実路面反力トルク信号Talign_act(s)とハンドル角信号θhdl(s)とを読み込み、自身のメモリ(図示せず)に記憶させる(ステップS101)。
続いて、規範路面反力トルク演算手段18は、車速信号V(s)およびハンドル角信号θhdl(s)から、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)を演算してメモリに記憶させる(ステップS102)。
また、ハイパスフィルタ27a、27bは、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)および実路面反力トルク信号Talign_act(s)を、それぞれハイパスフィルタ処理してメモリに記憶させる(ステップS103)。
次に、差分演算手段20は、フィルタ処理後の実路面反力トルク信号と規範路面反力トルク信号との差分信号Talign_comp(s)を演算して、メモリに記憶させる(ステップS104)。
続いて、走行状態判定手段21は、差分信号Talign_comp(s)に基づいて、図3のように車両の走行状態(車両挙動)を判定し、車両挙動推定信号Stability(s)を出力する(ステップS105)。
最後に、アシストトルク補正手段22は、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、アシストトルク補正量Trq_comp(s)を演算し(ステップS106)、アシストトルク補正量Trq_comp(s)をアシストトルク決定ブロック16に入力して、図5の処理ルーチンを終了する。
なお、図2、図3および図5においては、車両挙動の不安定状態を判定するための比較演算手段として、差分演算手段20を用い、フィルタ処理後の実路面反力トルク信号と規範路面反力トルク信号との差分信号Talign_comp(s)を演算したが、両者の差分に限らず、比率を用いてもよい。
すなわち、差分演算手段20に代えて、比率演算手段(図示せず)を用い、実路面反力トルク信号と規範路面反力トルク信号との比率に基づいて車両挙動を判定してもよい。
また、比較演算手段として、差分演算手段20と、比率演算手段とを用いて、差分信号および比率信号を組み合わせて車両挙動を判定してもよい。
また、規範路面反力トルクTalign_refは、予め車両に対して定められた操舵角(ハンドル角)θhdlに対する路面反力トルク勾配Kalignを用いて、以下の式(6)のように表すことができる。
Talign_ref=Kalign・θhdl ・・・(6)
なお、ハンドル角に対する路面反力トルク勾配Kalignは、車速Vに応じて変化するパラメータであり、マップデータとしてメモリに記憶しておいてもよく、車速Vに対する演算式により求めてもよい。
以上のように、この発明の実施の形態1に係る車両用操舵装置によれば、実路面反力トルク信号Talign_act(s)および規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)から各種のオフセット成分を除去するハイパスフィルタ27a、27bを設けたので、カント路などで実路面反力トルクにオフセットが生じる場合においても、誤検出することなく車両挙動状態を推定することができ、車両安定化制御に有効に反映させることができる。
また、ハンドル角信号θhdl(s)や実路面反力トルク信号Talign_act(s)が、ノイズや温度の影響で時間推移(ドリフト)した場合や、オフセットを含む場合でも、同様にオフセット周波数に合わせたフィルタ手段(ハイパスフィルタ27a、27b)によりオフセットを除去することができるので、不安定状態の誤判定を抑制することができる。
また、実路面反力トルク信号Talign_act(s)と規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)との大きさの比較結果に応じて、車両の不安定度合いを示す車両挙動推定信号Stability(s)を演算することができるので、車両挙動推定信号Stability(s)を用いて、車両安定化制御を適切に行うことができる。
なお、ハンドル角検出器18としては、モータ5としてブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング制御装置においては、レゾルバなどのセンサを用いて実現することができる。
また、図2においては、規範路面反力トルク演算手段19の出力側にハイパスフィルタ27aを挿入し、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)に対してフィルタ処理を施したが、式(6)から明らかなように、規範路面反力トルク演算手段19に入力されるハンドル角信号θhdl(s)に対してフィルタ処理を施しても、得られる効果に違いはないので、規範路面反力トルク演算手段19の入力側にハイパスフィルタ27aを挿入してもよい。
すなわち、ハンドル角信号θhdl(s)から得られる規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)と実路面反力トルク信号Talign_act(s)とのうちの少なくとも一方の信号に対して、特定周波数範囲を抽出するフィルタ手段を設けた場合も、前述と同様に、カント路などで実路面反力トルクにオフセットが重畳された場合に、オフセット周波数に合わせたフィルタ手段を介してオフセットを除去することができ、不安定状態の誤検出を抑制することができる。
また、ハイパスフィルタ27a、27bを用いてオフセットの周波数成分を取り除いたが、オフセット周波数に合わせたバンドパスフィルタを用いてもよい。
すなわち、フィルタ手段は、車両ごとにカットオフ周波数が設定されるハイパスフィルタと、車両ごとにカットオフ周波数が設定されるローパスフィルタとの少なくとも一方を含むように構成され得る。
また、実路面反力トルクTalignが電気ノイズなどの影響で振動的な検出値を示す場合には、公知のローパスフィルタなどの特定周波数除去手段(図示せず)をさらに用いてもよく、これにより、高周波外乱特性を向上させることができる。
また、図2においては、規範路面反力トルク信号Talign_ref(s)および実路面反力トルク信号Talign_act(s)の両方に対してフィルタ手段(ハイパスフィルタ27a、27b)を用いており、この理由には、フィルタ手段によって発生し得る位相差をなくすという設計上の事由も含んでいるが、理論的には、たとえば実路面反力トルク信号Talign_act(s)のみに対してフィルタ手段を用いてもよく、これにより得られる効果に格別な違いはない。
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図2参照)では、車両挙動推定手段17において車両挙動の不安定状態を判定するために、フィルタ処理後の実路面反力トルク信号と規範路面反力トルク信号との差分を演算したが、図6に示すように、フィルタ処理後の実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)と規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)との差分を演算してもよい。
図6はこの発明の実施の形態2に係る制御装置8Aの具体的構成例を示す機能ブロック図である。図6において、前述(図2参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。また、ハイパスフィルタ27A、27Bは、前述のハイパスフィルタ27a、27bにそれぞれ対応している。
この場合、図2と比べて、制御装置8Aへの入力信号と車両挙動推定手段17Aの一部構成とが変更されている。
図6において、制御装置8Aの入力情報には、ハンドル角θhdl(図2参照)が含まれておらず、車両挙動推定手段17Aには、ハンドル角θhdlに代えて、モータ角速度信号Smtr(s)が入力される。
車両挙動推定手段17Aは、差分演算手段20Aと、走行状態判定手段21Aと、ハイパスフィルタ27A、27Bと、時間微分演算手段28と、規範路面反力トルク変化率演算手段29とを備え、車速信号V(s)、モータ角速度信号Smtr(s)および実路面反力トルク信号Talign_act(s)に基づいて、車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
モータ角速度信号Smtr(s)は、車両の操舵角速度信号に対応しており、モータ角速度検出器13は、操舵角速度信号出力手段として機能する。
車両挙動推定手段17A内の時間微分演算手段28は、実路面反力トルク微分信号出力手段として機能し、実路面反力トルクTalignの微分値を表す実路面反力トルク微分信号を、実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)として出力する。
規範路面反力トルク変化率演算手段29は、規範路面反力トルク微分信号出力手段として機能し、モータ角速度信号Smtr(s)(操舵角速度信号)および車速信号V(s)に基づいて、規範路面反力トルク微分値(規範路面反力トルク変化率)を表す規範路面反力トルク微分信号を、規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)として出力する。
ハイパスフィルタ27Aは、モータ角速度信号Smtr(s)から低周波数成分(各種のオフセット分)を取り除いた信号を規範路面反力トルク変化率演算手段29に入力する。これにより、規範路面反力トルク変化率演算手段29から出力される規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)は、特定周波数範囲が抽出された後に差分演算手段20Aに入力される。
ハイパスフィルタ27Bは、実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)から低周波数成分(各種のオフセット分)を取り除いて特定周波数範囲を抽出した信号を差分演算手段20Aに入力する。
差分演算手段20Aは、ハイパスフィルタ27A、27B(フィルタ手段)を介した実路面反力トルク変化率(実路面反力トルク微分値)および規範路面反力トルク変化率(規範路面反力トルク微分値)の差分を演算して差分信号dTalign_comp(s)を出力し、走行状態判定手段21Aは、差分信号dTalign_comp(s)に応じて車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
なお、図6では、ハイパスフィルタ27Aを、規範路面反力トルク変化率演算手段29の入力側に挿入したが、規範路面反力トルク変化率演算手段29の出力側に挿入してもよい。同様に、ハイパスフィルタ27Bを、時間微分演算手段28の出力側に挿入したが、時間微分演算手段28の入力側に挿入してもよい。
また、ハイパスフィルタ27A、27Bを、規範路面反力トルク変化率演算手段29および時間微分演算手段28の両方に対して設けたが、少なくとも一方に設け、実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)(実路面反力トルク微分信号)および規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)(規範路面反力トルク微分信号)の少なくとも一方に対して特定周波数範囲を抽出してもよい。
次に、図1および図6とともに、図7を参照しながら、ハイパスフィルタ27A、27Bを特に考慮せずに、差分演算手段20Aおよび走行状態判定手段21Aの基本的な検出機能(車両の不安定状態およびその予兆状態の検出アルゴリズム)について説明する。
図7は時系列状態量(安定状態、不安定予兆状態および不安定状態)を示す説明図であり、前述(図3)と同様に、各状態量を、実路面反力トルク変化率dTalign_act(実線)および規範路面反力トルク変化率dTalign_ref(1点鎖線)の各検出値の時間変化に関連付けて示している。
図7において、まず、時刻t1から時刻t2までの区間(安定走行状態)では、実路面反力トルク変化率dTalign_actが規範路面反力トルク変化率dTalign_refとほぼ一致する。したがって、実路面反力トルク変化率dTalign_actと規範路面反力トルク変化率dTalign_refとの差分dTalign_compは「0」となるので、走行状態判定手段21Aは、車両の走行状態が「安定状態」であることを示す車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
しかし、続く時刻t2から時刻t3までの区間(不安定予兆状態)では、車両が安定限界(不安定域)に近づいてくるので、規範路面反力トルク変化率dTalign_refに対して実路面反力トルク変化率dTalign_actが低下し、実路面反力トルク変化率dTalign_actと規範路面反力トルク変化率dTalign_refとの差分dTalign_comp(>0)が若干発生する。したがって、走行状態判定手段21は、車両の走行状態が「不安定予兆状態」であることを示す車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
さらに、時刻t3から以降の区間(不安定状態)では、実路面反力トルク変化率dTalign_actと規範路面反力トルク変化率dTalign_refとの差分dTalign_compが、許容基準値を超えて大きく発生するので、走行状態判定手段21は、車両の走行状態が「不安定状態」であることを示す車両挙動推定信号Stability(s)を出力する。
これにより、アシストトルク補正手段22は、車両挙動推定手段17Aからの車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、電動パワーステアリング装置のアシストトルクTassistを補正するためのアシストトルク補正量信号Trq_comp(s)を出力する。
以下、アシストトルク決定ブロック16を含む車両用操舵装置は、前述と同様に、モータ5を駆動してアシストトルクTassistを発生させる。
ところで、一般に、モータ5がブラシ付きモータの場合、モータ角速度検出器13からのモータ角速度信号Smtr(s)は、モータ5の逆起電圧に係数を乗算して得られる。しかし、ブラシ付きモータの場合には、ブラシ摺動時に整流子表面に生成される酸化皮膜の影響によって逆起電圧が降下するので、実際のモータ角速度Smtrに小さなオフセットが重畳されたモータ角速度信号Smtr(s)が検出されることになる。
モータ角速度信号Smtr(s)がオフセットを有するようになると、規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)と実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)との間にオフセット分の差が生じるので、正確な車両挙動状態を判定することができなくなる。
特に、整流子表面に生成される酸化皮膜の状態は、温度、湿度、電流、ブラシ材質、雰囲気などによって変化するので、モータ角速度信号Smtr(s)のオフセット量を定常的に見積もることは非常に困難である。
また、実路面反力トルク信号Talign_act(s)が圧電素子などのセンサから得られる場合には、温度変化による出力値のドリフトが発生するので、実路面反力トルク信号Talign_act(s)にも、同様にオフセットが重畳される可能性がある。
したがって、車両挙動状態の誤判定を防ぐために、図6内のハイパスフィルタ27A、27Bを用いて、モータ角速度信号Smtr(s)および実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)から低周波数成分(オフセット)を取り除くことにより、規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)および実路面反力トルク変化率信号dTalign_avt(s)からそれぞれ低周波数成分を除去した信号を、差分演算手段20Aに入力する。
このように、モータ角速度信号V(s)や実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)に発生するオフセットの影響を除去することにより、差分演算手段20Aおよび走行状態判定手段21Aにおいて、正確な走行状態(車両挙動状態)を判定することができる。
次に、図1、図6および図7とともに、図8のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態2に係る車両挙動推定手段17Aを含む電動パワーステアリング装置の制御動作について説明する。
図8において、ステップS106は、前述(図5参照)と同様の処理であり、ステップS101A、S104A、S105Aは、それぞれ前述のステップS101、S104、S105に対応している。
まず、制御装置8Aは、車速信号V(s)と実路面反力トルク信号Talign_act(s)とモータ角速度信号Smtr(s)(操舵角速度信号)とを読み込み、自身のメモリ(図示せず)に記憶させる(ステップS101A)。
また、車両挙動推定手段17A内のハイパスフィルタ27Aは、モータ角速度信号Smtr(s)をハイパスフィルタ処理してメモリに記憶させる(ステップS103)。
続いて、規範路面反力トルク変化率演算手段29は、車速信号V(s)とフィルタ処理後のモータ角速度信号とから規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)を演算してメモリに記憶させる(ステップS203)。
次に、時間微分演算手段28は、実路面反力トルク信号Talign_act(s)の時間微分値により実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)を演算し、メモリに読み込む(ステップS204)。
また、ハイパスフィルタ27Bは、実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)をハイパスフィルタ処理してメモリに読み込む(ステップS205)。
以下、差分演算手段20Aは、フィルタ処理後の規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)と実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)との差分信号dTalign_comp(s)を演算し、メモリに読み込む(ステップS104A)。
続いて、走行状態判定手段21Aは、差分信号dTalign_comp(s)に基づいて、図7のように車両の走行状態(車両挙動)を判定し、車両挙動推定信号Stability(s)を出力する(ステップS105A)。
最後に、アシストトルク補正手段22は、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいてアシストトルク補正量Trq_comp(s)を演算し(ステップS106)、アシストトルク補正量Trq_comp(s)をアシストトルク決定ブロック16に入力して、図8の処理ルーチンを終了する。
(ステップS106)。
なお、図6〜図8においては、車両挙動の不安定状態を判定するための比較演算手段として、差分演算手段20Aを用い、フィルタ処理後の実路面反力トルク変化率信号と規範路面反力トルク変化率信号との差分信号dTalign_comp(s)を演算したが、両者の差分に限らず、比率を用いて判定してもよく、また、差分信号および比率信号を組み合わせて判定してもよい。
また、規範路面反力トルク変化率dTalign_refは、予め車両に対して定められた操舵角(ハンドル角)θhdlに対する路面反力トルク勾配Kalignを用いて、以下の式(7)のように表すことができる。
dTalign_ref=Kalign・ω ・・・(7)
なお、前述の式(6)の場合と同様に、路面反力トルク勾配Kalignは、車速Vに応じたマップデータとしてメモリに記憶しておいてもよく、車速Vに対する演算式により求めてもよい。
以上のように、この発明の実施の形態2に係る車両用操舵装置は、電動パワーステアリング装置のモータ角速度信号Smtr(s)(操舵角速度信号)を用いて、モータ角速度信号Smtr(s)および実路面反力トルク変化率信号dTalign_act(s)のうちの少なくとも一方に対して、特定周波数範囲を抽出するフィルタ手段(ハイパスフィルタ27A、27B)を設け、フィルタ処理後の実路面反力トルク変化率信号Talign_act(s)と規範路面反力トルク変化率信号Talign_ref(s)とを比較する。
これにより、ハンドル1の保舵状態またはハンドル1が徐々に操舵されるカーブ走行状態であっても、また、モータ5の発熱による温度上昇によってモータ角速度信号Smtr(s)にオフセットが重畳された場合でも、オフセット周波数に合わせたフィルタ手段(ハイパスフィルタ27A、27B)によりオフセットを除去することができるので、不安定状態の誤検出を抑制することができる。
また、ハンドル角センサ(図2内のハンドル角検出器18)などの新たなセンサを追加することなく、従来の電動パワーステアリング制御装置のハードウェア構成を用いて、かつ、モータ角速度信号Smtr(s)に発生し得るオフセットの影響を受けることなく、車両挙動状態を推定することができ、車両安定化制御に有効に反映させることができる。
また、モータ角速度信号Smtr(s)や実路面反力トルク信号が、ノイズや温度の影響で時間推移(ドリフト)する場合や、オフセットを含むような場合でも、オフセット周波数に合わせたフィルタ手段でオフセットを除去することができるので、不安定状態の誤判定を抑制することができる。
なお、図6においては、規範路面反力トルク変化率演算手段29の入力側にハイパスフィルタ27Aを挿入したが、式(7)から明らかなように、規範路面反力トルク変化率信号dTalign_ref(s)に対してフィルタ処理を施しても、得られる効果に違いはないので、規範路面反力トルク変化率演算手段29の出力側にハイパスフィルタ27Aを挿入してもよい。
また、オフセット周波数成分を取り除くためのフィルタ手段として、ハイパスフィルタ27A、27Bを用いたが、前述の実施の形態1の場合と同様に、オフセット周波数に合わせたバンドパスフィルタを用いてもよい。
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1、2では、ハンドル1とタイヤ7とが、連結機構(ステアリング軸2、ステアリングギアボックス3およびラック&ピニオン機構6)を介して繋がれた電動パワーステアリング制御装置を例にとって説明したが、この発明の特徴は、車両挙動の不安定状態またその予兆を検出した状態量を得ることにあるので、たとえば車両後輪の角度を制御する後輪操舵制御装置(図示せず)を備えた車両に適用してもよい。
この場合、後輪操舵制御装置は、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、車両挙動が安定するように後輪操舵制御を行うことにより走行安定性を向上させることができる。
したがって、この発明の実施の形態3によれば、前述の実施の形態1、2に係る車両用操舵装置を、後輪操舵制御アクチュエータを有する車両に対して適用することにより、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて車両を安定化することができる。
実施の形態4.
また、上記実施の形態1、2では、ステアリング系を用いて車両挙動の不安定状態またその予兆を検出し、車両を安定化制御するように構成したが、たとえば、4輪の制動力を制御するESC(Electronic Stability Control)システムを備えた車両に適用してもよい。
この場合、ESCシステムは、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、車両挙動が安定するように制動制御を行うことにより、走行安定性を向上させることができる。
したがって、この発明の実施の形態4によれば、前述の実施の形態1、2に係る車両用操舵装置を、制動力を制御するアクチュエータを有する車両に適用することにより、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて車両を安定化することができる。
実施の形態5.
なお、上記実施の形態1〜4では、車両挙動の不安定状態またその予兆を検出した場合に、ステアリング系またはブレーキ系を用いて車両を安定化制御するように構成したが、たとえば駆動力を制御するアクチュエータを備えた車両に適用してもよい。
この場合、駆動力を制御するアクチュエータは、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、車両挙動が安定するように制御を行うことにより、走行安定性を向上させることができる。
このように、この発明の実施の形態4によれば、前述の実施の形態1、2に係る車両用操舵装置を、駆動力制御アクチュエータを有する車両に適用することにより、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて車両を安定化することができる。
具体的には、車載エンジンの出力を制御可能な車両や、オートマッチクトランスミッションのギア比を変えることのできる車両や、前方方向の駆動力を変えることのできるモータ駆動車両(電気自動車など)など、車両全般に対して適用可能であり、走行安定性を向上させることができる。
実施の形態6.
なお、上記実施の形態5では、車両挙動の不安定状態またはその予兆を検出して駆動力を制御することにより車両挙動を安定化したが、左右駆動輪の駆動力配分を制御するアクチュエータを備えた車両に適用してもよい。
近年、左右の駆動力配分を行うことによって車両の運動性能を向上させるシステムが開発されているが、駆動力配分アクチュエータを備えた車両に適用した場合には、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、車両挙動が安定するように制御を行うことにより走行安定性をさらに向上させることができる。
このように、この発明の実施の形態4によれば、前述の実施の形態1、2に係る車両用操舵装置を、左右駆動輪の駆動力を制御するアクチュエータを有する車両に適用することにより、車両挙動推定信号Stability(s)に基づいて、車両走行をさらに安定性化することができる。
この発明の実施の形態1に係る車両用操舵装置の全体構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に係る制御装置の具体的構成例を示す機能ブロック図である。 この発明の実施の形態1による規範路面反力トルクおよび実路面反力トルクに基づく時系列状態量を示す説明図である。 この発明の実施の形態1によるフィルタ手段を考慮しない場合でのカント路走行時の規範路面反力トルクおよび実路面反力トルクの時間変化を示す説明図である。 この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の制御動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態2に係る制御装置の具体的構成例を示す機能ブロック図である。 この発明の実施の形態2による規範路面反力トルク変化率および実路面反力トルク変化率に基づく時系列状態量を示す説明図である。 この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置の制御動作を示すフローチャートである。
符号の説明
1 ハンドル、2 ステアリング軸、3 ステアリングギアBOX、4 トルクセンサ、5 モータ、6 ラック&ピニオン軸、7 タイヤ、8、8A 制御装置、10 ステアリング機構、11 車速検出器(車速信号出力手段)、12 操舵トルク検出器、13 モータ角速度検出器(操舵角速度信号出力手段)、14 モータ角加速度検出器、15 実路面反力トルク検出器、16 アシストトルク決定ブロック、17、17A 車両挙動推定手段、18 ハンドル角検出器(ハンドル角信号出力手段)、19 規範路面反力トルク演算手段、20、20A 差分演算手段、21、21A 走行状態判定手段、22 アシストトルク補正手段、23 モータ電流決定器、23 モータ電流決定器、25 モータ駆動器、26 モータ電流検出器、27a、27b、27A、27B ハイパスフィルタ(フィルタ手段)、28 時間微分演算手段(実路面反力トルク微分信号出力手段)、29 規範路面反力トルク変化率演算手段(規範路面反力トルク微分信号出力手段)、Talign 実路面反力トルク、Talign_act(s) 実路面反力トルク信号、dTalign_act 実路面反力トルク変化率、dTalign_act(s) 実路面反力トルク変化率信号(実路面反力トルク微分信号)、dTalign_ref 規範路面反力トルク変化率、dTalign_ref(s) 規範路面反力トルク変化率信号(規範路面反力トルク微分信号)、dTalign_comp(s)、Talign_comp(s) 差分信号、Smtr(s) モータ角速度信号(操舵角速度信号)、Stability(s) 車両挙動推定信号、V 車速、V(s) 車速信号。

Claims (3)

  1. 走行中の車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクを表す実路面反力トルク信号を出力する実路面反力トルク信号出力手段と、
    前記車両の操舵角を表すハンドル角信号を出力するハンドル角信号出力手段と、
    前記車両の走行速度を表す車速信号を出力する車速信号出力手段と、
    前記ハンドル角信号および前記車速信号に基づいて、規範路面反力トルクを表す規範路面反力トルク信号を出力する規範路面反力トルク信号出力手段と、
    前記実路面反力トルク信号および前記規範路面反力トルク信号の少なくとも一方に対して特定周波数範囲を抽出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段を介した実路面反力トルク信号および規範路面反力トルク信号に応じて前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段と
    を備えたことを特徴とする車両用操舵装置。
  2. 走行中の車両のタイヤが路面から受ける実路面反力トルクを表す実路面反力トルク信号を出力する実路面反力トルク信号出力手段と、
    前記車両の操舵角速度を表す操舵角速度信号を出力する操舵角速度信号出力手段と、
    前記車両の走行速度を表す車速信号を出力する車速信号出力手段と、
    前記実路面反力トルクの微分値を表す実路面反力トルク微分信号を出力する実路面反力トルク微分信号出力手段と、
    前記操舵角速度信号および前記車速信号に基づいて、規範路面反力トルク微分値を表す規範路面反力トルク微分信号を出力する規範路面反力トルク微分信号出力手段と、
    前記実路面反力トルク微分信号および前記規範路面反力トルク微分信号の少なくとも一方に対して特定周波数範囲を抽出するフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段を介した実路面反力トルク微分信号および規範路面反力トルク微分信号に応じて前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段と
    を備えたことを特徴とする車両用操舵装置。
  3. 前記フィルタ手段は、
    前記車両ごとにカットオフ周波数が設定されるハイパスフィルタと、
    前記車両ごとにカットオフ周波数が設定されるローパスフィルタと
    の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用操舵装置。
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