JP2008246522A - 軽合金製鋳造品周面加工用治具及び軽合金製鋳造品周面加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳造品の車両用ホイールにおいて、その機械的性質を低下させることなく、リムを薄肉化し、軽量化を図り得る手段を提供すること。
【解決手段】ハブ用シャフト140、ボルト穴用突起軸65及び締付部材81、ラチェットレンチ68及びストッパ67a,67b、容器21、及び加工材25を有する軽合金製鋳造品周面加工用治具1の提供による。この軽合金製鋳造品周面加工用治具1に車両用ホイール22を組み込み、上下方向に揺動をさせることで、容易に、車両用ホイール22の微小鋳造欠陥を修復し、リム91の機械的性質を向上し得る。そのため、車両用ホイールの強度を少なくとも保持しつつ、リムを薄肉化し、車両用ホイールの軽量化が図れる。
【選択図】図1B
【解決手段】ハブ用シャフト140、ボルト穴用突起軸65及び締付部材81、ラチェットレンチ68及びストッパ67a,67b、容器21、及び加工材25を有する軽合金製鋳造品周面加工用治具1の提供による。この軽合金製鋳造品周面加工用治具1に車両用ホイール22を組み込み、上下方向に揺動をさせることで、容易に、車両用ホイール22の微小鋳造欠陥を修復し、リム91の機械的性質を向上し得る。そのため、車両用ホイールの強度を少なくとも保持しつつ、リムを薄肉化し、車両用ホイールの軽量化が図れる。
【選択図】図1B
Description
本発明は、鋳造品である車両用ホイールのリムの表面層を加工し、ホイールの強度を向上させるために用いることが出来る軽合金製鋳造品周面加工用治具と、それが組み込まれた軽合金製鋳造品周面加工装置に関する。
地球環境問題の1つである地球温暖化を防止するために、自動車の燃費改善は重要な課題と認識されている。自動車の燃費を改善する手段は、電気等の新しい動力源の利用等、種々存在するが、最も効果があり、他のどの技術とも併用して適用可能なのは軽量化である。自動車そのものを軽くすれば動力源への負荷が減り、何れの動力源であってもエネルギー使用量を減らすことが可能となるからである。そして、取り組み易い自動車の軽量化技術として比重(密度)の小さい材料の使用が挙げられる。以上のような事情と、その素材地肌の美しさから、近年、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽合金を採用した車両用ホイールが広く普及している。
軽合金製の車両用ホイールとしては、腐食し難く高い強度を有する鍛造品が知られるが、その鍛造品に比べ量産性に優れ材料歩留まりが高いという長所を有することから、その多くは鋳造工程を経て作製される鋳造品である。ところが、鋳造品である軽合金製の車両用ホイールでは、使用される鋳造用軽合金材料の組成と、鋳造欠陥の発生、等の理由により、鍛造品に比して高強度化を図り難く、特にリムを薄肉にすると、車両用ホイールの強度が低下して、実用に耐えなくなるおそれがある。そのため、従来、鋳造品の車両用ホイールにおいて、リムを薄肉にして軽量化することは困難であった。
尚、鋳造品の車両用ホイールの軽量化あるいはリムの薄肉化という観点より改善を提案している先行文献として、特許文献1が挙げられる。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鍛造品より量産に適する鋳造品の車両用ホイールにおいて、機械的性質を低下させることなく、リムを薄肉化し、軽量化を図ることが可能な手段を提供することにある。
検討がなされた結果、本出願人が開発した鋳物の硬化方法(特許文献2を参照)を応用することによって、車両用ホイールのリムの機械的性質を高めることが有効なのではないかとの考えに至った。この鋳物の硬化方法は、鋳物の表面に硬化材を衝突をさせることによって、鋳物(鋳造品)の表面側に、ショットピーニング処理による塑性変形層より厚い緻密層を形成し得る手段であり、この手段によれば、鋳造品に所望の機械的性質を付与することが可能である。
ところが、車両用ホイールのリムの表面に対して、鋳物の硬化方法を試みようと計画したところ、車両用ホイールのような大量生産品の製造工程において全製品に適用するには、その鋳物の硬化方法自体を効率よく実施することが出来る手段が新たに必要である、という現実に直面した。
即ち、本出願人の開発した鋳物の硬化方法は、鋳造品の表面に硬化材を衝突させるために鋳造品を硬化材とともに揺動させるものであるが、これを1バッチ行う毎に、鋳造品である車両用ホイールと、それに衝突をさせる硬化材と、を揺動装置に載せ換える作業が必要になり、車両用ホイールの生産効率を低下させ、鍛造品に比して低廉であるという鋳造品の長所を減衰させる、という改善すべき課題に直面したのである(揺動装置につき特許文献1及び特許文献2を参照)。
又、実際に、車両用ホイールのリムの表面に対して、鋳物の硬化方法を試みたところ、円筒状を呈するリムの表面は曲面になっており、そのような曲面に対しては、硬化材を、均一に衝突をさせることが困難である、ということがわかった。
即ち、本出願人の開発した鋳物の硬化方法では、鋳造品の表面に硬化材を衝突をさせるために鋳造品を硬化材とともに水平方向に揺動させるが(特許文献1及び特許文献2を参照)、例えば円筒状のリムの内面に対して鋳物の硬化方法を実施する場合には、車両用ホイールを横にしてリムで囲われた空間を閉空間とし、そこに硬化材を投入し、揺動をさせることになる。ところが、揺動によって硬化材は水平方向の直線運動(往復運動)をするのに対し、車両用ホイールのリムの表面は曲面であるので、リムに対する硬化材の衝突角度が、そのリムの場所毎に異なり、特に、揺動の方向(硬化材の運動(移動)方向)と平行又はそれに近い角度をなす表面では、硬化材が殆ど衝突しない。そのため、車両用ホイールのリムの表面(内面)に対し、均一に、降下材を衝突をさせることが出来ず、車両用ホイールのリムの一部分に偏って機械的性質が向上し、リム全体に等しい機械的性質を与えることが出来ない、という解決すべき課題に直面したのである。これに対し、車両用ホイールの置き方を変えて、繰り返し揺動をさせることが一案として挙げられるが、そのような対応では煩雑で長時間を要することから、やはり鍛造品に比して低廉であるという鋳造品の長所を減衰させる。又、そのような対応によれば、車両用ホイールのリムの表面に対して均一に硬化材を衝突させるためには相当な困難が伴うと考えられる。更に、円筒状のリムは外面も曲面であるから、外面に対して鋳物の硬化方法を実施する場合にも、同様の課題と向き合うことになる。
尚、従来知られたショットピーニング処理を行うと、車両用ホイールのリムの表面は削られ、表面の性状が非常に荒れてしまうことが判明した。一方、表面が荒れない程度にショットピーニング処理を行っても、機械的性質の向上が図れないと推考された。又、ショットピーニング処理におけるショット球は、通常φ2mm以下と小さく、一方向へ直線的に当てられるため、面が複雑な形状であったり、面が複数である場合に、容易に処理することが出来ない、という問題がある。
そこで、更に、車両用ホイールのリム全体について等しく機械的性質を高め、車両用ホイールの機械的性質を低下させることなくリムを薄肉化することが可能な、量産工程に適する手段を求めて研究が重ねられ、以下に示す本発明を完成するに至った。
先ず、本発明によれば、円筒状又は多角筒状を呈する部分を有する軽合金製鋳造品における周面の表面層を加工するために用いられる治具であって、回転をするように、水平に設けられたシャフトと、軽合金製鋳造品を、シャフトに固定する取付手段と、シャフトを回転させ得るとともに回転の方向及び回転の量を制限する回転推進制御手段と、シャフトの中心軸に対して偏心させて配設された容器と、その容器に収容された、比重が2以上で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を少なくとも含む加工材と、を有する軽合金製鋳造品周面加工用治具が提供される。
加工材の比重は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは5〜10である。
周面とは、軽合金製鋳造品の円筒状又は多角筒状を呈する部分の内周面及び外周面を意味する。表面層とは表面及び表層を意味し、単に表層という場合には表面を除き、表面の近傍を示すものとする。多面体の径は、多面体の中心を通り多面体の外面と外面とを結ぶ距離の最大値と最小値の平均とする。
本明細書において、軽合金とは、鋳造用のアルミニウム合金、マグネシウム合金等を指し、アルミニウム合金としては、日本工業規格(JIS)に基づくAC4C、AC4CH、AC4B、AC4D、AC2A、AC2B、AC3A等を例示することが出来る。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、軽合金製鋳造品が、リムとディスクとを有する車両用ホイールであり、その車両用ホイールにおけるリムの表面層を加工するために、好適に用いることが出来る。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、軽合金製鋳造品が車両用ホイールである場合には、上記取付手段は、シャフトにハブ穴を通した車両用ホイールを、シャフトに固定する手段となる。尚、本明細書において、軽合金製鋳造品が車両用ホイールである場合には、シャフトをハブ用シャフトともよび、取付手段をホイール取付手段ともよぶ。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具において、シャフトを、回転をするように水平に設ける手段は、シャフトを支える2以上の軸受であることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具においては、上記回転推進制御手段が、シャフトに装着されたラチェットレンチと、そのラチェットレンチのハンドルの動作範囲を制限するストッパと、を備えることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具においては、上記取付手段が、シャフトに形成された鍔部と、その鍔部に、シャフトの周りにシャフトと平行になるように、複数配設されたボルト穴用突起軸と、そのボルト穴用突起軸の先端に配設された締付部材と、を備えることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具においては、シャフトが分割可能なものであることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具においては、加工材は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の5〜30体積%を占めることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、リムとディスクとを有する車両用ホイールにおけるリムの表面層を加工するために、好ましくは、後述する軽合金製鋳造品周面加工装置に組み込まれて、使用され得る治具である。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、上記の通り、ハブ用シャフト、回転推進制御手段、ホイール取付手段、容器、及び加工材、を有するものとして特定されるものであり、発明特定事項に加工対象である車両用ホイールを含むものではない。しかし、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、車両用ホイールのリムの表面層を加工するのに用いられるものであり、使用時には加工対象である車両用ホイールが組み込まれる。従って、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の各構成要素は、加工対象である車両用ホイールによって形状や大きさ等が特定され得るものであり、機能も車両用ホイールとの関係によって明らかになり得るものである。そこで、以下に、車両用ホイールとの関係を含めて、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の各構成要素について説明する。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、それに車両用ホイールを組み込んだ状態で、上下方向に(鉛直方向に)揺動をすることによって、曲面で構成される車両用ホイールのリムの表面(例えば外面)に、加工材が均一に衝突するように構成することが出来るものである。加工材が車両用ホイールのリムの表面に均一に衝突することにより、車両用ホイールのリムの表面全体に存在し得る微小鋳造欠陥を修復し表面を平滑化し、且つ、リム全体の表層に存在する微小鋳造欠陥を潰し封孔処理(圧漏れ防止を含む)を行う(本明細書において、これらのことを表面層加工処理とよぶ)。そして、リムの機械的性質を高め、車両用ホイールの強度を向上させ、ひいては、強度を維持しつつ、リムを薄肉化し、車両用ホイールの軽量化を図ることが出来る。又、リムからの圧漏れを防止することが可能である。
ハブ用シャフトは、車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込む際に、ハブ穴を通す部材である。車両用ホイールは、そのハブ穴にハブ用シャフトを通してハブ用シャフトに固定され、水平に設けられたハブ用シャフトとともに回転する。ハブ用シャフトは、それに固定した車両用ホイールとともに回転するものであり、例えば2以上の軸受に支えられて、回転可能に設けられる。ハブ用シャフトの径は、車両用ホイールのハブ穴に合わせて決定される。ハブ用シャフトは、それを分割可能なものとすれば、車両用ホイールのハブ穴を通し易くなり、車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に脱着し易くなる。分割出来ないものであっても、ハブ用シャフトを、その一端側で軸受によって支え、多端側を吊り出し、片持ちにして、多端側に次に示すホイール取付手段を設ければ、軽合金製鋳造品周面加工用治具への車両用ホイールの脱着は容易である。
車両用ホイールはハブ用シャフトに固定されるが、それを行うホイール取付手段は、例えば、ボルト穴用突起軸と締付部材である。ボルト穴用突起軸は、ハブ用シャフトに鍔部を形成し、そこに、ハブ用シャフトの周りにハブ用シャフトと平行になるように、複数配設される。ボルト穴用突起軸は、車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込む際に、車両用ホイールの取付ボルト穴に通す部分であり、車両用ホイールの取付ボルト穴をボルト穴用突起軸に通すことによって、車両用ホイールが位置決めされ、ハブ用シャフトに仮に固定される。従って、ボルト穴用突起軸は、車両用ホイールの取付ボルト穴の位置、数に合わせて、ハブ用シャフトの周りに、複数(通常、4〜6)設けられる。ボルト穴用突起軸の径は、車両用ホイールの取付ボルト穴に合わせて決定される。
ボルト穴用突起軸の先端に配設される締付部材は、上記のように、ボルト穴用突起軸を取付ボルト穴に通すことによって位置決めされ仮に固定された車両用ホイールを、ハブ用シャフトに完全に固定するために締め付けをする部材である。締付部材は、例えば、ボルト、ナット、クランプ等によって構成することが出来る。締付部材がボルトの場合には、ボルト穴用突起軸をナットとして機能させるため、ボルト穴用突起軸にねじ穴を形成しておくことも好ましい。締付部材がナットの場合には、ボルト穴用突起軸をボルトとして機能させるため、ボルト穴用突起軸の先端にねじ山を形成しておくことが好ましい。
回転推進制御手段は、ハブ用シャフトを回転させ得るとともに、その回転の方向を一方に制限し、回転の量を概ね一定に制限するものである。車両用ホイールはハブ用シャフトに固定され、ハブ用シャフトとともに回転するので、回転推進制御手段は、車両用ホイールについても、回転をさせ得るとともに、その回転の方向を一方に制限し、回転の量を概ね一定に制限する。回転推進制御手段は、例えば、ラチェットレンチとストッパで簡素に構成することが出来る。ラチェットレンチを例えばハブ用シャフトの端部に装着し、ストッパでラチェットレンチのハンドルの動作範囲を制限すれば、ラチェットレンチのラチェット機構によって車両用ホイール(ハブ用シャフト)の回転の方向が一方に制限され、ストッパによって車両用ホイール(ハブ用シャフト)の回転の量が概ね一定に制限される。ストッパは、ラチェットレンチのハンドルの動作の障害物となるものであればよい。
容器は、上下方向に揺動をさせたときに車両用ホイールのリムの表面に衝突をする加工材が、常時、収容されている器である。この容器は、車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込んだ際に、車両用ホイールの中心軸からずれた位置において、リムの表面と合わせて閉空間を形成する。この閉空間とは、密閉ではなく、ハブ用シャフトに固定された車両用ホイールが自由に回転し得るように、容器とリムとの間には僅かな隙間があるが、決して加工材が外へ飛び出さない空間である。容器は、加工材を常時収容するものであるから、使用後に(揺動していない停止時に)重力で自然と収容されるように、加工部分に対しては下方に位置して設けられる。例えば、リムの外面(表面)を加工する場合には、その加工場所をハブ用シャフトに固定した車両用ホイールのリムの下部として、容器はリムの外側の下方に配設される。又、例えば、加工対象がリムの内面(表面)である場合には、その加工場所をハブ用シャフトに固定した車両用ホイールのリムの上部として、容器はリムの内側の下方に配設される。加えて、リムの表面に均一に加工材が衝突し易くなるように閉空間における加工材の移動量を一定とするため、容器の底面は、曲面であるリムの表面と平行になるように、曲面で構成される。
車両用ホイールは、その中心に位置するハブ穴を通してハブ用シャフトに固定されるものであるから、車両用ホイールの中心軸の位置はハブ用シャフトの中心軸に一致する。従って、容器の配設位置は、加工対象であり治具自体を構成しない車両用ホイールを除けば、ハブ用シャフトの中心軸に対して偏心していることで特定される。又、容器の配設位置は、閉空間が形成される位置である。
車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込み、全体を上下方向に揺動させると、ラチェットレンチのハンドルが、ストッパで動作範囲の制限を受けつつ運動し、車両用ホイール(ハブ用シャフト)を回転させる。元々、容器に収容されている加工材は、上下方向の揺動によって、容器と車両用ホイールのリムとで形成された閉空間の中で往復運動し、リムの表面に衝突する。このとき、閉空間(容器)は車両用ホイール(ハブ用シャフト)の中心軸に対して偏心して設けられていることから、加工材がリムの表面に衝突する位置も当然に車両用ホイールの中心軸からずれる。そのため、加工材がリムの表面に衝突する力によっても、車両用ホイール(ハブ用シャフト)は回転する。一方、その車両用ホイール(ハブ用シャフト)の回転の方向は、ラチェットレンチのラチェット機構によって一方に制限されており、且つ上下方向の揺動に伴う回転の量は一定に制限されている。従って、車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込んで全体を上下方向に揺動させれば、加工材が衝突するリムの位置を変えながら、車両用ホイールが一方向に一定量ずつ回転することになり、更にこれを一定時間以上継続すれば、閉空間のあるところで上下に往復運動する加工材は、車両用ホイールのリムの全周にわたって均一に衝突することになる。加工材の衝突によって回転する効果を得るには、閉空間(容器)は車両用ホイール(ハブ用シャフト)の中心軸に対して、回転する方向に偏心していることが好ましい。
加工材は、常に、容器に収容されている。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具に車両用ホイールを組み込んだ状態で、上下方向に揺動をすることによって、加工材は車両用ホイールにおけるリムの表面に衝突するが、揺動を終えると、重力で自然と元の位置、即ち容器に収容された状態に戻る。
次に、本発明によれば、上記した何れかの軽合金製鋳造品周面加工用治具と、その軽合金製鋳造品周面加工用治具を上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備する軽合金製鋳造品周面加工装置が提供される。尚、本明細書において、上下方向の揺動とは、鉛直方向の揺動を意味する。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置においては、上記揺動手段が、原動機と、その原動機に接続された回転軸と、その回転軸に設けられたクランクと、そのクランクとコンロッドを介して接続される揺動板と、その揺動板に取り付けられその揺動板を上下に往復運動させる2以上の直線運動案内器と、を有する揺動機構を具備し、原動機の与えた回転運動が、回転軸に備わるクランクによって上下運動に変換され、クランクと接続された揺動板が、直線運動案内器に沿って上下に往復運動をすることにより、揺動板に固定される軽合金製鋳造品周面加工用治具を上下方向に揺動をさせるものであることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置においては、回転軸に更に他のクランクが設けられ、そのクランクにカウンターウエイトが取り付けられていることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置においては、揺動機構が床の上に載置され、その床との間に空気ばねが備わっていることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置においては、揺動機構の両側であって空気ばねの真上に、振動制御用錘が備わっていることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置においては、上記揺動にかかる振動数が、3Hz以上30Hz以下であることが好ましい。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置においては、上記揺動にかかる揺動時間が、1分以上20分以下であることが好ましい。
次に、本発明によれば、円筒状又は多角筒状を呈する部分を有する軽合金製鋳造品における周面の表面層を加工する方法であって、軽合金製鋳造品の、円筒状又は多角筒状を呈する部分の中心軸からずれた位置において、比重が2以上で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を少なくとも含む加工材を、周面に衝突をさせ、その衝突の力によって、中心軸を中心にして軽合金製鋳造品を回転させて、軽合金製鋳造品の周面の全周にわたって均一に加工材の衝突をさせる軽合金製鋳造品周面の表面層加工方法が提供される。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、その好ましい態様において、ハブ穴を通して車両用ホイールを固定するためのハブ用シャフト及びホイール取付手段、車両用ホイール及びハブ用シャフトの回転の方向を一方に制限するとともに回転の量を一定に制限するラチェットレンチ(ラチェット機構)、ハブ用シャフトの中心軸に対して偏心させて配設された容器、及びその容器に収容された加工材を有しており、この軽合金製鋳造品周面加工用治具に車両用ホイールを組み込み、好ましくは本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置の態様において、全体を上下方向に揺動させると、既述のように、ラチェットレンチのハンドルが動作範囲の制限を受けつつ運動し、車両用ホイール(ハブ用シャフト)を回転させ、加工材は、容器と車両用ホイールのリムとで形成された閉空間の中で往復運動し、リムの表面に衝突する。閉空間(容器)が車両用ホイール(ハブ用シャフト)の中心軸に対して偏心して設けられていることから、加工材がリムの表面に衝突する位置は車両用ホイールの中心軸からずれて、加工材がリムの表面に衝突する力によっても車両用ホイール(ハブ用シャフト)は回転する。一方、その車両用ホイール(ハブ用シャフト)の回転の方向は、ラチェット機構によって一方に制限されており、且つ上下方向の揺動に伴う回転の量が一定に制限されているので、上下方向の揺動が生じれば、車両用ホイールは、加工材が衝突するリムの位置を変えながら、一定量ずつ回転する。従って、上下方向の揺動を一定時間以上継続すれば、加工材は車両用ホイールのリムの全周にわたって均一に衝突する。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の使用による、このような作用によれば、車両用ホイールのリム全体に対して等しく機械的性質を高め、車両用ホイールの強度を向上させ、ひいては、強度を維持しつつ、リムを薄肉化し、車両用ホイールの軽量化を実現し得る、という優れた効果が導かれる。加えて、従来、鋳造欠陥である気孔の連通が生じて気孔がリムを貫通し、タイヤの圧漏れが生じるという問題が起こり得たが、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の使用による上記作用によれば、気孔を潰して、リムからの圧漏れを防止することが出来る。容器を配設する位置を変えれば、何れも曲面であるリムの外面及び内面に、均一に、表面層加工処理を施すことが可能である。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具では、加工材は常に容器に収容されている。又、その好ましい態様によれば、ハブ用シャフトに車両用ホイールのハブ穴を通し、更に車両用ホイールの取付ボルト穴をハブ用シャフトの鍔部に形成されたボルト穴用突起軸に通し、締付部材によって車両用ホイールをハブ用シャフトに完全に固定することで、この軽合金製鋳造品周面加工用治具に簡単に車両用ホイールを取り付けることが出来る。そして、この反対の作業によって簡単に車両用ホイールを取り外すことが可能である。即ち、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具を使用すると、車両用ホイールの表面に加工材を衝突させて表面層加工処理を行うにあたり、車両用ホイールの載せ換え(脱着)が容易であり、且つ、加工材の載せ換えが不要である。そのため、表面層加工処理を、効率よく実施することが出来、車両用ホイールのような大量生産品の量産工程において表面層加工処理を行うことを可能にする、という優れた効果を奏する。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具が存在しない場合には、表面層加工処理を行う際に、その都度、揺動をする装置に車両用ホイールを加工材とともに取り付け、処理を終えたら取り外す、という作業が必要になり、これに多くの時間を要することとなり、生産効率の観点から、車両用ホイールのような大量生産品の製造工程において表面層加工処理を行うことは困難であった。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具を使用すれば、車両用ホイール及び加工材の載せ換えにかかる作業の負担、時間を大幅に低減することが出来、量産工程に表面層加工処理を適用することが可能になる。
例えば、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の好ましい態様を、上下に揺動をする装置内に予め設置しておけば(即ち、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置の態様によれば)、軽合金製鋳造品周面加工用治具において、締付部材を緩めて車両用ホイールをハブ用シャフトに取り付け、締付部材を締めて車両用ホイールをハブ用シャフトに固定する、という作業だけで、直ぐに表面層加工処理が行える。締付部材の操作だけで、簡単に迅速に、上下に揺動をする装置に車両用ホイールを取り付け、上下に揺動をする装置から車両用ホイールを取り外すことが可能になる。ボルト穴用突起軸を取付ボルト穴に通すことによって車両用ホイールは簡単に位置決めされるから、車両用ホイールをハブ用シャフトに固定する際に、位置の微調整は不要であり、締付部材の操作のみで、簡単に、車両用ホイールを軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込める。加工材は、容器に常に収容されているから、新たな車両用ホイールに表面層加工処理を行うに際し、加工材を載せ換える必要がない。
又、車両用ホイールを本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具に取り付けると、即、車両用ホイールのリムの表面に加工材を衝突させるべく加工材が往復運動する閉空間が誕生し、そこには常に加工材が収容されている。そのため、車両用ホイールを本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具に取り付けた後、直ぐに、表面層加工処理を実施することが出来る。従って、車両用ホイールに表面層加工処理を施す上でのスループットが大変高い。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具では、加工材として、比重が2以上で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を少なくとも含むものを使用しているので、鋳造欠陥である気孔を確実に潰し、気孔の連通を遮断することが出来る。よって、タイヤの圧漏れが生じるという問題が生じない。又、加工材によって表面層加工処理が施された車両用ホイールの表面は、ショットピーニング処理を行った場合のように、表面が荒れることはなく、処理後の状態が平滑である。尚、本明細書において、車両用ホイールの表面が平滑(又は滑らか)であるとは、切削面のような真に平らな面であることを意味するのではなく、欠陥の存在しない鋳肌の如く、表面が一様で緩くなだらかな凹凸が形成された面であることを意味する。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具では、その好ましい態様において、加工材は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の5〜30体積%を占めるものである。これら加工材の大きさの範囲は、本出願人が開発した鋳物の硬化方法(特許文献2を参照)における硬化材(金属球(径がφ10〜20mmの鋼球又はステンレス球)又はカットワイヤ)とは一致していない。その理由は、上記圧漏れ防止を確実に行うためである。即ち、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、加工後の車両用ホイールが、そのリムに気孔の連通が存在しないものとするために最適な加工材を見出し、これを提案している。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具と、それを上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備するものであり、軽合金製鋳造品周面加工用治具(加工材を含む)に組み込まれた車両用ホイールを上下方向に揺動をさせる具体的手段である。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込まれた車両用ホイールを上下方向に揺動をさせることを通じて、上記した本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の効果を導くところに、自らの優れた効果が認められる。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置を使用して、それに含まれる本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具に車両用ホイールを組み込むと、容器とリムの表面とによって閉空間が形成される。そして、揺動手段によって、軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込まれた車両用ホイールを、上下方向に揺動をさせると、上記閉空間において、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を少なくとも含む加工材が、曲面である車両用ホイールのリムの表面に、均一に衝突をする。揺動の方向は重力方向と同じ上下方向であるが、既述したように、軽合金製鋳造品周面加工用治具が介在することによって、加工材が衝突するリムの位置が変わるように車両用ホイールを一方向に一定量ずつ回転させるので、加工材は車両用ホイールのリムの全周にわたって均一に衝突するのである。そのため、車両用ホイールのリムの表面全体に存在し得る微小鋳造欠陥を、容易に効率よく修復し、表面を平滑化することが可能であり、且つ、表層に存在する微小鋳造欠陥を潰し封孔処理(圧漏れ防止を含む)を行うことが出来る。表面に現れていた気孔(ピンホール)を修復するのみならず、表層に存在していた気孔も潰すので、車両用ホイールのリムの機械的性質は向上し、車両用ホイールとしての強度も改善される。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、その好ましい態様により、揺動手段が、2つのクランクのうちコンロッドを介して揺動板と接続されない方のクランクにカウンターウエイトが取り付けられ、それがバランサの役目を果たし、悪振動が打ち消されるので、作業環境が改善され、工場周囲の環境への影響は低減される。又、被揺動体である軽合金製鋳造品周面加工用治具に組み込まれた車両用ホイールへの負担が軽減されるから、車両用ホイールのリムへの表面層加工処理の効果が確実に期待出来る。更に、装置自体への負担が軽減されるから、装置のメンテナンス頻度が少なくなる。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、その好ましい態様により、揺動機構と、それが載置される床との間に、空気ばねが備わっており、更には、揺動機構の両側であって空気ばねの真上に、振動制御用錘が備わっているので、固有振動数を低く出来るとともに、揺動機構の偏荷重を修正して荷重を平均化することが可能である。従って、被加工体である車両用ホイールを含む被揺動体や、装置自体への、悪振動の影響を抑制することが出来る。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、その好ましい態様において、(上下方向の)揺動にかかる振動数が3Hz以上30Hz以下であり、揺動にかかる揺動時間が1分以上20分以下である。これらの範囲は、本出願人が開発した鋳物の硬化方法(特許文献2を参照)における揺動にかかる振動数(5〜20Hz)、揺動にかかる揺動時間(3〜120分)とは一致していない。その理由は、本出願人が開発した鋳物の硬化方法が水平方向の揺動を行うに対し、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置では、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具を利用して、車両用ホイールのリムの表面のような曲面に対して表面層加工処理を施すことが出来るように、揺動を上下方向に行っているからである。即ち、水平方向の揺動と、上下方向の揺動と、では最適な揺動条件が異なるのであり、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、上下方向の揺動による最適な揺動条件を見出し、これを提案している。
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
先ず、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具と、それを用いて行う本発明に係る表面層加工方法について説明する。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、車両用ホイールのリムの表面層を加工するために用いられる治具であり、車両用ホイールを組み込んで使用される。図1A、図1B、図2A、図2B、図3A、図3Bは、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具の一の実施形態を示す図である。図2A及び図2Bは、軽合金製鋳造品周面加工用治具のみを表した図であり、図2Aは正面図であり、図2Bは側面図である。図3A及び図3Bは、何れも車両用ホイールを組み込んだ状態を表した図であり、図3Aは正面図であり、図3Bは側面図である。図1A及び図1Bは、何れも車両用ホイールを組み込んだ状態で、構成要素を透視して表した図であり、図1Aは正面図であり、図1Bは側面図である。又、図5Aは、鋳造後の車両用ホイールのリムの表面及び表層の一部を表した断面図であり、そこには微小鋳造欠陥が存在し、欠陥である気孔が連通して、圧漏れの原因となる空気の流路が形成された様子が示されている。図5Bは、鋳造後の車両用ホイールに対し機械加工を施した後の、リムの表面及び表層の一部を表した断面図であり、表面は真に平らな面になっているが空気の流路も明確に現れてしまい、図5Aの状態より圧漏れし易くなっている様子が示されている。図5Cは、車両用ホイールのリムに、本発明に係る表面層加工方法によって表面層加工処理を行っている様子を表した部分断面図であり、表面層加工処理の作用を説明するための図である。図1A、図1B、図3A、図3Bにおいて軽合金製鋳造品周面加工用治具1に組み込まれている車両用ホイール22は、リム91(インナーリム92及びアウターリム93)とディスク94とを有し、ディスク94の中央にハブ穴95が、その周りには5つの取付ボルト穴96が、それぞれ形成されているものであり、(例えば)AC4CHアルミニウム合金製の鋳造品である。
軽合金製鋳造品周面加工用治具1は、ハブ用シャフト140、回転推進制御手段、ホイール取付手段、容器21、及び加工材25を有する。ハブ用シャフト140は、軸受台146を介して基板62の上に立設された2つの軸受145によって支えられ、回転可能に、水平に設けられている。車両用ホイール22は、軽合金製鋳造品周面加工用治具1に組み込まれる際に、そのハブ穴95がハブ用シャフト140に通される。
ホイール取付手段は、ハブ用シャフト140にハブ穴95を通した車両用ホイール22をそのハブ用シャフト140に固定する手段である。このホイール取付手段は、ハブ用シャフト140に形成された鍔部64と、その鍔部64に5つ配設されたボルト穴用突起軸65と、そのボルト穴用突起軸65の先端に配設された締付部材81と、を備えている。ボルト穴用突起軸65は、車両用ホイール22の5つの取付ボルト穴96に通すため、それに相応して、ハブ用シャフト140の周りにハブ用シャフト140と平行になるように設けられている。車両用ホイール22のハブ穴95をハブ用シャフト140に通した後で、ボルト穴用突起軸65を車両用ホイール22の取付ボルト穴96に通すと、車両用ホイール22が動かないようにハブ用シャフト140に仮に固定される。その後、締付部材81を締め付けることによって、車両用ホイール22はハブ用シャフト140に完全に固定される。
容器21は、車両用ホイール22をホイールリム加工用治1に組み込んだ際に、リム91の一の表面91a(外面)と合わせて閉空間26を形成するものである。容器21には、加工材25が常に収容されている。図1A及び図1Bでは、リムの外面である表面91aを加工対象としているため、容器21は、車両用ホイール22の下方であってそのリム91の外側になるように、基板62の上に配設される。(例えば)図1Aにおいては、この容器21の位置は、図1BにおいてCC線で示される車両用ホイール22の中心軸(この中心軸はハブ用シャフト140の中心軸に一致する)から右側にずれており、従って、閉空間26も同じくずれて設けられている。
この態様において、車両用ホイール22を軽合金製鋳造品周面加工用治具1に組み込み、全体を上下方向に揺動させると、回転推進制御手段を構成するラチェットレンチ68のハンドル68aが、ストッパ67a,67bで動作範囲の制限を受けつつ運動し、車両用ホイール22(ハブ用シャフト140)を回転させる。同時に、加工材25は、容器21と車両用ホイール22のリム91の表面91aとで形成された閉空間26の中で往復運動して表面91aに衝突する。このとき、閉空間26の位置が車両用ホイール22の中心軸に対して偏心して(ずれて)いるため、加工材25がリム91の表面91aに衝突する位置も当然に車両用ホイール22の中心軸からずれ、上記衝突の力は、車両用ホイール22(ハブ用シャフト140)を回転させる力となり、この衝突の力によっても、車両用ホイール22(ハブ用シャフト140)は回転する。尚、容器21の底面27は、曲面であるリム91の表面91aと平行になるように、曲面で構成されているので、閉空間26における加工材25の移動量は概ね一定であり、加工材25はリム91の表面91aに均一に衝突し易くなっている。
回転推進制御手段は、上記したハブ用シャフト140(車両用ホイール22)の回転の方向を、一方に制限する手段であり、且つ、その回転の量を一定に制限する手段である。この回転推進制御手段は、ラチェットレンチ68と、ストッパ67a,67bと、で構成される。このうちラチェットレンチ68は、ハブ用シャフト140(の図1Bにおける左端部)に装着されており、上下方向の揺動に基づく自らの運動によってハブ用シャフト140(車両用ホイール22)を回転させる。ラチェットレンチ68のハンドル68aに質量の大きな錘を付しておくと、慣性力によってハブ用シャフト140(車両用ホイール22)を回転させ易くなる。回転の方向は、ラチェットレンチ68が有する周知のラチェット機構によって、一方向に、例えば図1A中に示される矢印の方向のみに、制限される。そして、ラチェットレンチ68のハンドル68aがストッパ67a,67bに当たることで、その動作範囲も制限され、それが故に、上下方向の揺動に伴うハブ用シャフト140の回転の量も一定に制限される。ストッパ67a,67bは、ハンドル68aに対する障害物として、例えばアングル(山形鋼)で作製することが出来る。
このように、車両用ホイール22(ハブ用シャフト140)の回転の方向が一方に制限され、回転の量が一定に制限されているため、車両用ホイール22を軽合金製鋳造品周面加工用治具1に組み込んで全体を上下方向に揺動させれば、車両用ホイール22は、加工材25が衝突するリム91の表面91aの位置を変えながら、ストッパ67a,67bで制限された一定量ずつ、回転する。そして、これを一定時間以上継続すれば、閉空間26において上下に往復運動する加工材25は、車両用ホイール22のリム91の表面91aの全周にわたって均一に衝突する。
加工材25が車両用ホイール22のリム91の表面91aの全周にわたって衝突することによって、車両用ホイール22の表面91aに存在し得る微小鋳造欠陥が修復され、表面91aが平滑化され、更には、車両用ホイール22の表層に存在する微小鋳造欠陥である気孔が潰され封孔処理が行われ(即ち、表面層加工処理がなされ)、車両用ホイール22のリム91の機械的性質が向上する。一般に、鋳造法によって成形された鋳造品である車両用ホイール22のリム91の(例えば)表面91aには、図5Aに示されるように、微小鋳造欠陥である孔部12、突起部13が生じてしまうことが多く、又、表層部14を含む表面91aの近傍には、表面91aに現れることにより孔部12となり得る気孔11が存在していることが多い。更には、気孔が連通してリム91を貫通する連通孔15が生じてしまう場合がある。これに対し、車両用ホイール22に機械加工(例えば切削加工)を施すことで、表面91aを平らな面にすると、図5Bに示されるように、表面91aに存在していた孔部12及び突起部13は取り除かれるが、表層部14に存在していた気孔11は、そのまま存在し、連通孔15は、機械加工を施す前よりも明確に現れ、より圧漏れが起き易くなる。このような車両用ホイール22のリム91の表面91aに対して加工材25を衝突させると、図5Cに示されるように、ショットピーニング処理とは異なり、表面91aは滑らかになり、表面91aから3mm程度の深さまでの表層部14(表面91aを除く)に存在していた気孔11は潰される。この表層部14に存在していた気孔11が潰されることによって、新たな孔部12及び突起部13の発生原因が取り除かれる。又、連通孔15は表層部14において閉じられ、リム91を貫通しなくなり、タイヤからの圧漏れが生じなくなる。微小鋳造欠陥は、内面である表面91bにおいても生じ得るが、表面層加工処理を表面91bに対して施すことで、同様に修復することが出来る。
加工材25は、揺動を終えると、重力で自然と元の容器21に収容された状態に戻る。この加工材25は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が少なくとも含まれるものである。径がφ5mm未満の場合には、表面91aに存在する微小鋳造欠陥を修復し表面91aを平滑な面とする作用が小さくなる。又、表面91aの近傍に存在する微小鋳造欠陥を封孔する作用が小さくなり、気孔11が潰れる表層部14の範囲が狭くなる。その結果、連通孔15が閉じられず、圧漏れのおそれが排除出来ない。加工材25に含まれる球状体又は多面体の径の範囲は、好ましくはφ5mm以上φ8mm以下である。加工材25は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の5〜30体積%を占めるものであることが好ましい。
そして、加工材25には、金属粒、研削剤乃至研磨剤、乾燥砂、等を混合し、加工材25を2以上の混合物として用いることも出来る。又、加工材25に含まれる球状体又は多面体を、径(大きさ)の異なるものとすることも好ましい。大きさの異なるものを加工材25に混在させることにより、加工材25が、より均一に漏れなく車両用ホイール22のリム91の表面91aに対し衝突及び擦り動きを繰り返すとともに、加圧されて車両用ホイール22のリム91の表面91aの平滑性を向上させ得るものと考えられるからである。
加工材25としては、例えば金属球又はセラミック球を含むものが好ましく採用される。金属球又はセラミック球を単独で用いてもよく混合して用いてもよい。金属球として鋼球、超鋼球、ステンレス球が例示され、セラミック球としてジルコニア球、アルミナ球が例示される。比重、硬度の観点より、より好ましい金属球は鋼球であり、より好ましいセラミック球はジルコニア球である。
加工材25の全体に対し、径がφ5mm以上φ20mm以下の例えば鋼球が5〜30体積%を占める場合に、それに混合可能な金属球又はセラミック球として、φ1mm以上φ5mm未満の鋼球、ステンレス球、及びジルコニア球を挙げることが出来る。
加工材25の投入量は、閉空間26の容積に対し、体積比で概ね5%以上30%以下であることが好ましい。加工材25が閉空間26の中で自由に動き、加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの衝突回数が確保されることを担保するためである。5体積%未満では、加工材25は閉空間26の中で自由に動くもの、加工材25が少なすぎる結果、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数及び加圧力が確保されずに、車両用ホイール22を回転させる力が確保されず、リム91の表面91aに対して均一に平滑化処理、封孔処理(圧漏れ防止を含む)及び所望の機械的性質の付与がなされないおそれがあり、好ましくない。30体積%より多いと、加工材25が閉空間26の中で自由に動く範囲が限定され、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数及び加圧力が確保されずに、同じくリム91の表面91aに対して均一に平滑化処理、封孔処理(圧漏れ防止を含む)及び所望の機械的性質の付与がなされないおそれがあり、好ましくない。
次に、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置について説明する。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、上記した軽合金製鋳造品周面加工用治具1と、それを上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備するものである。図4Aは、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置の一の実施形態を示す上面図である。図4Bは、図4AにおけるA矢視図(正面図)であり、この図4Bにのみ、被揺動体23が(内部を透視して)描かれている。被揺動体23は、加工材25が収容された容器21を備えた軽合金製鋳造品周面加工用治具1(図1A及び図1Bを参照)に、表面層加工処理の対象である車両用ホイール22を組み込んだものである。図4Bでは、揺動板42の上に軽合金製鋳造品周面加工用治具1が固定されており、その軽合金製鋳造品周面加工用治具1に車両用ホイール22が組み込まれた様子が表されている。図4Cは、図4AのB矢視図(右側面図)であり、振動制御用錘24を除いて、揺動機構(後述する)を視た図である。このような軽合金製鋳造品周面加工装置2によって、軽合金製鋳造品周面加工用治具1に組み込まれた車両用ホイール22(被揺動体23)を、上下方向に揺動させることが可能である。
図4A〜図4Cに示される軽合金製鋳造品周面加工装置2では、揺動にかかる動力は、原動機36により与えられる。原動機36で生じた回転運動が、伝導部材であるベルト35により回転軸40に伝わり、これを回転させ、その回転軸40の回転運動は、それに備わるクランク38によって往復運動に変換される。そして、クランク38とコンロッド41を介し接続される揺動板42が、直線運動案内器として設けられた4つのリニア軸受43a,43b,43c,43dに沿って、上下方向に、直線状の往復運動を行い、この揺動板42の往復運動によって、揺動板42の上に固定された被揺動体23は、上下方向に揺動をする。回転軸40に備わるもう1つのクランク39には、カウンターウエイト32が取り付けられており、揺動板42の往復運動及び被揺動体23の揺動にともなって発生する悪振動を打ち消し抑制する。
軽合金製鋳造品周面加工装置2では、揺動手段は、原動機36、回転軸40(クランク38,39)、コンロッド41、揺動板42、リニア軸受43a,43b,43c,43d(直線運動案内器)、及びカウンターウエイト32を有する揺動機構を具備し、その揺動機構は、台板33を介して基台53の上に載置されている。即ち、揺動機構は、台板33の上にまとめて載置され、更に、その台板33が、基台53の上に載置されている。そして、基台53の下には、防振のために4つの空気ばね31が備わり、基台53の上には、空気ばね31の真上に2つの振動制御用錘24が備わっている。軽合金製鋳造品周面加工装置2では、1つの振動制御用錘24は、2つの空気ばね31と対応して設けられている。
台板33には2つの軸受45が取り付けられ、回転軸40は、この2つの軸受45により、台板33と平行に、回転自在に取り付けられる。そして、回転軸40は、ベルト35を介して原動機36(の回転軸)と接続される。具体的には、原動機36(の回転軸)に設けられたプーリー37と、回転軸40に設けられたプーリー34と、をベルト35で接続して、原動機36で生じた回転運動を、回転軸40へ伝達する。インバータによる原動機36の回転制御と併せて、これらプーリー34,37の径等を変更することによって、回転軸40の回転数を制御することが出来る。そして、この回転数の制御によって、揺動板42の往復運動(即ち被揺動体の揺動)にかかる揺動数(振動数)を制御することが可能である。
軽合金製鋳造品周面加工用治具1が固定される揺動板42は、使い勝手がよく応用性に優れた平板として構成されており、4つのリニア軸受43a,43b,43c,43dに、移動自在に取り付けられている。リニア軸受は直線運動案内器の1つであり、往復運動を行う揺動板の案内に、例えば玉やころを用いた軸受である。
回転軸40には、2つのクランク38,39が180°反対方向を向いて備わっている。そして、クランク38はコンロッド41を介して揺動板42と接続され、一方、クランク39にはカウンターウエイト32が取り付けられている。このようなクランク38,39の態様により、原動機36の与えた回転運動は、クランク38に接続された揺動板42の、上下方向の往復運動に変換され、揺動板42に固定された、車両用ホイール22を組み込んだ軽合金製鋳造品周面加工用治具1(被揺動体23)が、悪振動を抑えつつ、上下方向に揺動をする。そうすると、その揺動と、軽合金製鋳造品周面加工用治具1が組み込んだ車両用ホイール22を回転させる(既述の)作用によって、加工材25が、車両用ホイール22の表面91aの全周にわたってに均一に衝突をし、車両用ホイール22の表面91aに平滑化処理、封孔処理(圧漏れ防止を含む)及び所望の機械的性質の付与がなされる。
次に、揺動条件について説明する。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具を具備する本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置を使用して、車両用ホイールのリムに、表面層加工処理を施す際の、好ましい揺動条件は、以下の通りである。
上下方向の揺動における振動数は、概ね3Hz以上30Hz以下であることが好ましい。より好ましい振動数は5Hz以上20Hz以下であり、特に好ましい振動数は8Hz以上15Hz以下である。加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの単位時間あたりの衝突回数を確保するためである。振動数が3Hz未満では、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数が確保されず、車両用ホイール22の回転が遅くなり表面層加工処理の処理効率が低下するとともに、リム91の表面91aに対して均一に平滑化処理、封孔処理(圧漏れ防止を含む)及び所望の機械的性質の付与がなされないおそれがあり、好ましくない。又、加工材25の数にもよるが、振動数が30Hzより多くても、微小鋳造欠陥を修復し又は潰す効果は小さく、振動数を上げるために費やすエネルギー対効果は低下するため、好ましくない。尚、本明細書において、振動数とは時間あたり繰り返される揺動の回数を指し、単位はヘルツ(Hz)である。
又、上下方向に揺動をさせる場合の揺れ幅は、概ね30mm以上120mm以下であることが好ましい。より好ましい揺れ幅は40mm以上100mm以下であり、特に好ましい揺れ幅は50mm以上80mm以下である。閉空間26の中での加工材25の移動範囲を適切に設定することを通して、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの単位時間あたりの衝突回数を確保するためである。揺れ幅が30mm未満では、加工材25と車両用ホイール22の表面91aとの衝突回数が確保されず、車両用ホイール22の回転が遅くなり表面層加工処理の処理効率が低下するとともに、リム91の表面91aに対して均一に平滑化処理、封孔処理(圧漏れ防止を含む)及び所望の機械的性質の付与がなされないおそれがあり、好ましくない。又、揺れ幅が120mmより大きくても、加工材25がリム91の表面91a及び容器21の底面27に接している時間が長くなるだけで、加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aとの衝突回数は増加せず、微小鋳造欠陥を修復し又は潰し、リム91の機械的性質を高める効果は大きくはない。尚、閉空間26の好ましい高さは、30〜200mmである。
更には、上下方向に揺動をさせる場合の延べ揺動時間は、概ね1分以上20分以下であることが好ましい。より好ましい揺動時間は2分以上15分以下である。車両用ホイール22を1周以上回転させ、加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aの全周との延べ衝突回数を確保するためである。延べ揺動時間が1分未満では、加工材25と車両用ホイール22のリム91の表面91aの全周との延べ衝突回数が確保されず、車両用ホイール22の微小鋳造欠陥を修復出来ず又は潰せず、リム91の機械的性質を高められず、好ましくない。又、延べ揺動時間が20分より多くても、微小鋳造欠陥を修復し又は潰し、リム91の機械的性質を高める効果は小さく、時間対効果は向上しないため、好ましくない。
尚、上記した軽合金製鋳造品周面加工用治具1及び軽合金製鋳造品周面加工装置2を一の実施形態とする、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具及びそれを具備する軽合金製鋳造品周面加工装置は、鋼板を加工し市販の各部材と組み合わせて作製することが出来る。作製にあたっては、揺動条件及び処理対象である車両用ホイールの仕様に合わせて、各構成要素のサイズや材料や機械的性質(例えば回転軸の径や材料等)が適正になるように決定することが好ましい。
以下、本発明について実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1)(1)鋳造材料としてAC4CH(日本工業規格)アルミニウム合金を採用し、低圧鋳造装置を使用し鋳造法によって成形した。更に、溶体化処理及び時効処理からなる熱処理を施した後、旋盤を用いて切削粗加工を施し鋳バリ等を除去した。以上の製造工程によって、3基の車両用ホイールを得た。
(2)次に、図4A〜図4Cに示される軽合金製鋳造品周面加工装置を使用して、車両用ホイールのリムに対して表面層加工処理を常温において施した。具体的には、軽合金製鋳造品周面加工装置が備える、図1A及び図1Bに示される軽合金製鋳造品周面加工用治具に、車両用ホイールのリムの表面(外面)に閉空間が形成されるように、車両用ホイールを組み込み、これを被揺動体として構成した。そして、軽合金製鋳造品周面加工装置を動作させ、被揺動体を揺動させて、車両用ホイールのリムの表面(外面)に加工材を衝突させた。使用した加工材は、径がφ5mmの鋼球である。加工材の投入量は、閉空間の内容積に対し体積比で20%とした。揺動条件は、振動数が10Hz、揺れ幅(閉空間の高さ)が60mm、揺動時間は5分である。
(3)表面層の加工を終えた3基の車両用ホイールのリムの表面に照明をあて、微小鋳造欠陥の有無を、目視検査した。
(4)又、回転曲げ疲労試験を行い、3基の車両用アルミホイールの強度を評価した。具体的には、3基の車両用アルミホイールのそれぞれからテストピースを1つ採取し、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、室温、大気中において、回転速度350rpmで、30万回回転させながら、曲げモーメント2.75kN−mをテストピースにかけ、その後のテストピースの状態を評価した。
目視検査の結果、孔部、突起部ともに見られなかった。又、回転曲げ疲労試験の結果、3基から採取した全てのテストピースに、クラックは発生していなかった。そこで、1基のテストピースについて、更に回転を与えて、状態を評価した。最初の30万回に加えて、30万回、30万回、10万回毎に確認したが、合計で100万回の回転を加えても、テストピースにクラックは発生していなかった。
(比較例1)実施例1に準じて、(1)鋳造法によって作製し熱処理を施した3基の車両用ホイールを得て、(3)微小鋳造欠陥の有無を目視検査し、(4)回転曲げ疲労試験を行った。但し、(2)本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置を使用して車両用ホイールのリムに対して表面層加工処理を施すことは行わなかった。
目視検査の結果、微小鋳造欠陥は、孔部、突起部ともに確認された。又、回転曲げ疲労試験については、3基のうち2基から採取したテストピースに、クラックが発生していた。クラックが発生していないテストピースについて、更に回転を与えて状態を評価したところ、最初の30万回に加えて、30万回、30万回毎に確認したが、合計で90万回の回転により、テストピースにクラックが発生した。
(比較例2)実施例1に準じて、(1)鋳造法によって作製し熱処理を施した200基の車両用ホイールを得た。
(比較例2)実施例1に準じて、(1)鋳造法によって作製し熱処理を施した200基の車両用ホイールを得た。
(5)得られた車両用ホイールにタイヤを装着し、圧力が300kPaになるように空気を充填した後、圧漏れ試験を行った。具体的には、空気を充填したタイヤ付車両用ホイールを、水中に沈め、気泡の発生の有無を目視観察した。
圧漏れ試験の結果、200基の車両用ホイールのうち、12基に気泡の発生が確認された。
(実施例2)比較例2において用いた200基の車両用ホイールから、一旦、タイヤを外し、実施例1に準じて、(2)本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置を使用して車両用ホイールのリムに対して表面層加工処理を施した。その後、再度、比較例2に準じて、(5)車両用ホイールにタイヤを装着し、圧力が300kPaになるように空気を充填した後、圧漏れ試験を行った。
圧漏れ試験の結果、200基の車両用ホイールのうち、2基に気泡の発生が確認された。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具は、軽合金製鋳造品である車両用ホイールのリムの表面層に生じた微小鋳造欠陥を効率よく修復し、リムの機械的性質を高め、車両用ホイールの強度を向上させ、ひいては(同じ強度であれば)リムを薄肉化し、車両用ホイールを軽量化するための一手段として利用することが可能である。本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具によって、初めて、量産工程の中の一工程として、車両用ホイールのリムの微小鋳造欠陥を修復し(表面層加工処理を行い)機械的性質を向上させることが出来るようになる。
本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工装置は、本発明に係る軽合金製鋳造品周面加工用治具を有しており、それに組み込んだ車両用ホイールを上下方向に揺動をさせ、リムに対して表面層加工処理を施す手段として、好適に利用することが出来る。
1 軽合金製鋳造品周面加工用治具、2 軽合金製鋳造品周面加工装置、11 気孔、12 孔部、13 突起部、14 表層部、15 連通孔、21 容器、22 車両用ホイール、23 被揺動体、24 振動制御用錘、25 加工材、26 閉空間、27 (容器の)底面、31 空気ばね、32 カウンターウエイト、33 台板、34,37 プーリー、35 ベルト、36 原動機、38,39 クランク、40 回転軸、41 コンロッド、42 揺動板、43a,43b,43c,43d リニア軸受、45 軸受、53 基台、62 基板、64 鍔部、65 ボルト穴用突起軸、67a,67b ストッパ、68 ラチェットレンチ、68a (ラチェットレンチの)ハンドル、81 締付部材、91 リム、91a,91b (車両用ホイールのリムの)表面、92 インナーリム、93 アウターリム、94 ディスク、95 ハブ穴、96 取付ボルト穴、140 ハブ用シャフト、145 軸受、146 軸受台。
Claims (16)
- 円筒状又は多角筒状を呈する部分を有する軽合金製鋳造品における周面の表面層を加工するために用いられる治具であって、
回転をするように、水平に設けられたシャフトと、
前記軽合金製鋳造品を、前記シャフトに固定する取付手段と、
前記シャフトを回転させ得るとともに回転の方向及び回転の量を制限する回転推進制御手段と、
前記シャフトの中心軸に対して偏心させて配設された容器と、
その容器に収容された、比重が2以上で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を少なくとも含む加工材と、を有する軽合金製鋳造品周面加工用治具。 - 前記軽合金製鋳造品が、リムとディスクとを有する車両用ホイールであり、その車両用ホイールにおける前記リムの表面層を加工するために用いられる請求項1に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。
- 前記取付手段が、前記シャフトにハブ穴を通した車両用ホイールを、前記シャフトに固定する手段である請求項2に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。
- 前記シャフトを回転をするように水平に設ける手段は、前記シャフトを支える2以上の軸受である請求項1〜3の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。
- 前記回転推進制御手段が、前記シャフトに装着されたラチェットレンチと、そのラチェットレンチのハンドルの動作範囲を制限するストッパと、を備える請求項1〜4の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。
- 前記取付手段が、
前記シャフトに形成された鍔部と、
その鍔部に、シャフトの周りにシャフトと平行になるように、複数配設されたボルト穴用突起軸と、
そのボルト穴用突起軸の先端に配設された締付部材と、を備える請求項1〜5の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。 - 前記シャフトが分割可能なものである請求項1〜6の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。
- 前記加工材は、径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体が、加工材全体の5〜30体積%を占める請求項1〜7の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工用治具と、その軽合金製鋳造品周面加工用治具を上下方向に揺動をさせる揺動手段と、を具備する軽合金製鋳造品周面加工装置。
- 前記揺動手段が、原動機と、その原動機に接続された回転軸と、その回転軸に設けられたクランクと、そのクランクとコンロッドを介して接続される揺動板と、その揺動板に取り付けられその揺動板を上下に往復運動させる2以上の直線運動案内器と、を有する揺動機構を具備し、
前記原動機の与えた回転運動が、前記回転軸に備わる前記クランクによって上下運動に変換され、前記クランクと接続された揺動板が、前記直線運動案内器に沿って上下に往復運動をすることにより、前記揺動板に固定される前記軽合金製鋳造品周面加工用治具を上下方向に揺動をさせる請求項9に記載の軽合金製鋳造品周面加工装置。 - 前記回転軸に更に他のクランクが設けられ、そのクランクにカウンターウエイトが取り付けられている請求項10に記載の軽合金製鋳造品周面加工装置。
- 前記揺動機構が床の上に載置され、その床との間に空気ばねが備わっている請求項10又は11に記載の軽合金製鋳造品周面加工装置。
- 前記揺動機構の両側であって前記空気ばねの真上に、振動制御用錘が備わっている請求項12に記載の軽合金製鋳造品周面加工装置。
- 前記揺動にかかる振動数が、3Hz以上30Hz以下である請求項9〜13の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工装置。
- 前記揺動にかかる揺動時間が、1分以上20分以下である請求項9〜14の何れか一項に記載の軽合金製鋳造品周面加工装置。
- 円筒状又は多角筒状を呈する部分を有する軽合金製鋳造品における周面の表面層を加工する方法であって、
前記軽合金製鋳造品の、前記円筒状又は多角筒状を呈する部分の中心軸からずれた位置において、比重が2以上で径がφ5mm以上φ20mm以下の球状体又は多面体を少なくとも含む加工材を、前記周面に衝突をさせ、
その衝突の力によって、中心軸を中心にして前記軽合金製鋳造品を回転させて、軽合金製鋳造品の周面の全周にわたって均一に前記加工材の衝突をさせる軽合金製鋳造品周面の表面層加工方法。
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2007
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