JP2008246206A - 半導体式の光電子増倍器及びシンチレータを用いたフォトン計数ct検出器 - Google Patents

半導体式の光電子増倍器及びシンチレータを用いたフォトン計数ct検出器 Download PDF

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Abstract

【課題】飽和特性を向上させたフォトン計数及びエネルギーデータを提供できるCT検出器モジュールを提供する。
【解決手段】CT撮像システム(10)向けの検出器モジュール(20)は、X線(16)を光学フォトンに変換するためのシンチレータ(58)を含む。シンチレータ(58)は、光学フォトンを受け取りこれを対応する電気信号出力に変換するために内部ゲインを有する半導体式光電子増倍器(53)と光学的に結合させている。本発明の一態様では、CT撮像システムは、その内部を通過して並進させる患者を受け入れるように設計されたボアをその中を貫通して有するガントリと、ガントリ内に配置されると共に患者に向けてX線を放出するように構成されたX線源と、患者によって減衰を受けたX線を受け取るためにガントリ内に配置された上述の検出器モジュールと、を含む。
【選択図】図4

Description

本発明は、全般的には診断用撮像のための放射線検出器に関し、またさらに詳細には、飽和特性を向上させたフォトン計数及びエネルギーデータを提供できるCT検出器モジュールに関する。
X線やコンピュータ断層(CT)撮像システムなどの放射線撮像システムでは、X線源が患者や荷物などの検査対象や被検物に向けてX線を放出するのが典型的である。以下において、「検査対象(subject)」及び「被検物(object)」という語は何らかの撮像を受け得るものを示すために区別なく使用することがある。ビームは検査対象によって減衰を受けた後、放射線検出器のアレイ上に入射する。検出器アレイの位置で受け取った減衰ビームの放射線強度は、典型的にはX線の減衰に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、各検出器素子で受け取った減衰ビームを表す電気信号を別々に発生させる。これらの電気信号は、解析のためにデータ処理システムに伝送され、このデータ処理システムにより最終的に画像が作成される。
従来のCT撮像システムは、放射線エネルギーを電流信号に変換し、この電流信号がある期間にわたって積算され次いで計測及び最終的なディジタル化を受けるような検出器を利用する。しかしこうした検出器の欠点は、検出したフォトンの数及び/またはエネルギーに関するデータまたはフィードバックをこれが提供できないことにある。画像再構成の間に、検出したフォトンの数及び/またはエネルギーに関するデータを用いれば、こうした追加情報を提供しない従来のシステムから再構成された画像内で同じ表出となるような材料を識別することができる。すなわち従来のCT検出器はシンチレータ構成要素及びフォトダイオード構成要素を有しており、そのシンチレータ構成要素は放射線エネルギーを受け取ると発光し、またフォトダイオードはシンチレータ構成要素の照射を検出し照射の強さの関数とした電気信号を提供する。こうした検出器の欠点は、エネルギー弁別データの提供、あるいは所与の検出器素子またはピクセルが実際に受け取ったフォトンの数の計数及び/またはエネルギーの計測をこれが提供できないことにある。すなわちシンチレータが放出する光は、入射したX線の数並びにX線のエネルギーレベルの関数である。チャージ積算動作モードでは、フォトダイオードはシンチレーションからのエネルギーレベルやフォトン計数の間の弁別が不可能である。例えば2つのシンチレータが同等の強度で発光し、このため同等の出力がこれらに対応するフォトダイオードに提供されることがある。しかしながら、各シンチレータが受け取ったX線の数やX線のエネルギーは異なっていても生じる光の出力は同等であることがある。
フォトン計数及びエネルギー弁別が可能なシンチレータベースの検出器を設計しようとする試みにおいて、シンチレータをアバランシェフォトダイオード(APD)と光電子増倍器のいずれかと結合させて製作した検出器も用いられてきた。しかし、こうした検出器の利用を制限するような様々な問題が存在する。APDの場合は、フォトン計数を可能にするのに追加的なゲインが必要となるが、これに伴ってゲイン不安定ノイズ、温度感度及び別の信頼度問題が生じる。光電子増倍管の場合では、高分解能検出器でCTで使用される大きな面積をカバーしよとすると、こうしたデバイスが大きくなり過ぎ、機械的に脆弱となり、かつコストが高くなる。このためこうした光電子増倍管はPETやSPECTシステムでの使用に限られてきた。
こうした欠点を克服するために、検出した各X線についてX線計数が可能であるのみならず、エネルギーレベル計測の提供も可能なエネルギー弁別式直接変換検出器がCTシステムにおいて利用されている。しかし直接変換半導体検出器の欠点は、これらのタイプの検出器では従来のCTシステムで典型的に見られるようなX線フォトン線束率での計数が不可能であることである。すなわち、高信号対雑音比、高空間分解能かつ高速のスキャン時間というCTシステム要件は、CTシステムのX線フォトン線束率が非常に高いこと、例えば1平方ミリメートルで1秒間あたり100万個を大幅に超えるX線があることを要求する。さらに単一検出器ピクセルの計数率(1秒間あたりの計数(cps)の単位で計測され、線束率、ピクセル面積及び検出効率により決定される)は非常に高い。X線フォトン線束率が非常に高いためパイルアップ(pile−up)及び分極(polarization)が生ずる。「パイルアップ」とは検出器の位置における線源フラックスが極めて高いために時間的に十分に接近して2つ以上のX線フォトンが単一ピクセル内にチャージパケットを預託する無視し得ない確率が存在しており、これによりこれらの信号が互いに干渉し合う場合に生ずる現象である。パイルアップ現象には、若干異なる効果を及ぼすような2つの一般タイプがある。第1のタイプでは、2つ以上のイベントが異なるイベントとして認識されるほど十分な時間間隔だけ分離されているが、これらの信号は重複しておりこれにより後に到来したX線(複数のこともある)のエネルギー計測値の精度が劣化する。このタイプのパイルアップではシステムのエネルギー分解能の劣化が生じる。第2のタイプのパイルアップでは、2つ以上のイベントが時間的に十分に接近して到来しており、このためシステムはこれらを異なるイベントとして分解することができない。こうしたケースでは、これらのイベントがそのエネルギーの和を有する1つの単一イベントとして認識されると共にこれらのイベントはスペクトルがより高いエネルギーにシフトする。さらに検出器の量子効率(DQE)損失を生じさせるようなパイルアップによる高X線フラックスの計数の低下はより顕著であることや顕著でないことがある。
直接変換検出器はまた「分極」と呼ぶ現象を受けており、このため材料内部にトラップしているチャージが内部電場を変化させ、検出器計数及びエネルギー応答を予測不能な方式で変化させ、かつ以前の照射履歴によって応答が変化するヒステリシスを生じさせる。このパイルアップ及び分極は最終的に、上で述べたように直接変換センサの比較的低X線フラックスレベルしきい値で生ずるような検出器飽和につながる。これらのしきい値より上では、検出器応答は予測可能ではなくかつ線量利用率が劣化しているため、撮像情報の損失につながると共にX線投射及びCT画像においてノイズ及びアーチファクトを生じさせる。特に、フォトン計数の直接変換検出器は各X線フォトンイベントに関連する固有チャージ収集時間(すなわち、不感時間)に由来して飽和する。各ピクセルのX線フォトン吸収率が概ねこのチャージ収集時間の逆数であるときのパルスパイルアップによって飽和が生じることになる。
高X線線束率でのフォトン計数を可能にするためにこれまで考えられていた解決法には、ボウタイ(bowtie)形フィルタを用いて線束率のプロフィールを検出器に沿って事前成形すること、患者の形状に関する補償をすること、並びに検出器の領域全体にわたってフラックスのダイナミックレンジをより小さくすること、が含まれる。しかし問題となる可能性があることは、検査対象母集団の均一性がかなり低く形状が様々となり得る場合にボウタイフィルタが最適でないことがある点である。こうしたケースでは、1つまたは複数のバラバラの飽和領域が発生すること、あるいは逆にX線フラックスが過剰にフィルタ除去されて非常に低フラックスの領域が生成されること、になる可能性がある。投射内に低X線フラックスがあると最終的に、検査対象の再構成画像にノイズをもたらすことになる。
高線束率に対応するために提唱されている別の解決法はピクセルをその各々がそれに固有の前置増幅器に接続された複数のサブピクセルに細分割することである。面積が小さいほど収集されるフォトンの数が少ないため、直接変換サブピクセルの面積を小さくすることによってその線束率能力を向上させることができる。しかし得られる信号の信号対雑音比は低下することがあり、またサブピクセルの間の外周が長くなるためにクロストークのレベルが有意となり不利となる。直接変換検出器のクロストークは、ピクセル間の境界近くで吸収されるX線のこれらのピクセル同士でのチャージ共有の形態を取る。チャージ共有によって、そのフォトンの全体が失われることやエネルギーのラベル付け誤りを起こさせることがあり得る。いずれのケースにおいても、DQEが低下すると共に、それぞれが固有の増幅器に接続された細分割ピクセルを使用している結果としてスペクトル応答の忠実度が低下する。
したがって、従来のCTシステムで一般に見られていたX線フォトン線束率における飽和を起こさないフォトン計数エネルギー弁別性CT検出器を設計することが望ましい。さらに、その付随するノイズを低くして高ゲインを提供できると共に、信頼性を高めかつ高温、衝撃及び機械的摩耗に強くするために軽量で堅牢にした検出器を設計することが望ましい。
本発明は、飽和特性が改良されたフォトン計数及びエネルギーデータを提供できるCT検出器モジュールを設けることによって上述の欠点を克服している。本CT検出器モジュールは、従来のCTシステムで一般に見られていたようなX線フォトン線束率における飽和を起こさない高速シンチレータを含む。本CT検出器モジュールはさらに、検出器モジュールにおいてフォトン計数及びエネルギー弁別データを可能にするためにその付随するノイズを低くして高ゲインを提供できる半導体式光電子増倍器(SSPM)を含む。
本発明の一態様では、CT撮像システムは、その内部を通過して並進させる患者を受け入れるように設計されたボアをその中を貫通して有するガントリと、ガントリ内に配置されると共に患者に向けてX線を放出するように構成されたX線源と、患者によって減衰を受けたX線を受け取るためにガントリ内に配置された検出器モジュールと、を含む。この検出器モジュールはさらに、X線を吸収し該X線を光学フォトンに変換するように構成されたシンチレータと、光学フォトンを受け取り該光学フォトンを対応する電気信号に変換するように構成された半導体式光電子増倍器(SSPM)と、からなる。
本発明の別の態様では、エネルギー弁別性CT検出器モジュールは、X線を受け取りこのX線を光学フォトンに変換するためのシンチレータと、内部ゲインを有する半導体式フォトセンサと、を含む。この半導体式フォトセンサは、光学フォトンをそこから受け取るためのシンチレータと光学的に結合されていると共に、該光学フォトンを電気信号出力に変換するように構成されている。
本発明のさらに別の態様では、フォトン計数及びエネルギー弁別式CT検出器を製作するための方法を提供する。本方法は、X線を受け取りこのX線を光学フォトンに変換するようにシンチレータを形成する工程と、光学フォトンを受け取り該光学フォトンを対応する電気信号出力に変換するために内部ゲインを有する半導体式光電子増倍器(SSPM)をシンチレータと結合させる工程と、を含む。
本発明に関する様々な別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
添付の図面は、本発明を実施するために目下のところ企図される好ましい一実施形態を図示したものである。
本発明の一態様では、CT撮像システムを提供する。本CT撮像システムは、X線のフォトン計数及びエネルギー弁別をCT撮像に概して対応する高線束率で実施するように製作された検出器を含む。
本発明の動作環境は、64スライス型コンピュータ断層(CT)システムに関連して記載している。しかし当業者であれば、本発明が別のマルチスライス構成での使用にも等しく適用可能であることを理解するであろう。さらに本発明は、X線に関する検出及び変換に関連して記載することにする。しかし当業者であればさらに、本発明が別の高周波電磁エネルギーに関する検出及び変換にも等しく適用可能であることを理解するであろう。本発明は、「第3世代」のCTスキャナに関連して記載することにするが、別のCTシステムでも等しく適用可能である。
図1及び図2を参照すると、「第3世代」のCTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして、コンピュータ断層(CT)撮像システム10を表している。ガントリ12は、このガントリ12の対向面上に位置する検出器アセンブリ15に向けてX線ビーム16を投射するX線源14を有する。検出器アセンブリ15はその内部に、コリメータアセンブリ18と、複数の検出器モジュール20と、データ収集システム(DAS)32と、を含む。一実施形態では検出器アセンブリ15は、その各々が64×16のピクセルアレイサイズを有する57個の検出器モジュール20を含む。このため検出器アセンブリ15は64の横列と912の縦列(16×57個の検出器)を有しており、これによりガントリ12が1回転するごとに同時に64スライスのデータを収集することが可能である。複数の検出器モジュール20は患者22を通過した投射X線を検知しており、またDAS32は後続の処理のためにこのデータをディジタル信号に変換している。従来のシステムの各検出器モジュール20は、入射したX線ビームの強度、すなわちX線ビームが患者22を透過することによる減衰ビームを表すアナログ電気信号を発生させる。X線投射データを収集するためのスキャンの間に、ガントリ12及びガントリ上に装着された構成要素は回転中心24の周りを回転する。
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26により制御される。制御機構26は、X線源14に電力及びタイミング信号を供給するX線制御装置28と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリモータ制御装置30と、を含む。画像再構成装置34は、サンプリングしディジタル化したX線データをDAS32から受け取り、高速で再構成を行う。再構成した画像はコンピュータ36に入力として与えられ、コンピュータにより大容量記憶デバイス38内に格納される。
コンピュータ36はまた、キーボードを有するコンソール40を介してオペレータからのコマンド及びスキャンパラメータを受け取る。付属の陰極線管ディスプレイ42により、オペレータはコンピュータ36からの再構成画像やその他のデータを観察することができる。コンピュータ36は、オペレータの発したコマンド及びパラメータを用いて、DAS32、X線制御装置28及びガントリモータ制御装置30に対して制御信号や制御情報を提供する。さらにコンピュータ36は、モータ式テーブル46を制御して患者22及びガントリ12を位置決めするためのテーブルモータ制御装置44を操作している。詳細には、テーブル46により患者22の各部分をガントリ開口48(すなわち、ボア)に通過させている。
図3に示すように、コリメータアセンブリ18は、その間にコリメーション用ブレードまたはプレート19を配置させて有するレール17を含む。コリメータアセンブリ18は、X線16がそのビームの検出器モジュール20(図2参照)上への入射前にコリメーション用ブレード19によるコリメーションを受けるように位置決めされている。
ここで図4を参照すると、検出器モジュール20はDAS32を含むと共に、さらにパック51の形に配列させた多くのシンチレータ素子50からなる。検出器モジュール20はパック51の内部でシンチレータ素子50を基準として位置決めされたピン52を含む。パック51はフォトセンサ53上に位置決めされており、一方フォトセンサ53は多層式サブストレート54上に位置決めされている。多層式サブストレート54上にはスペーサ55が位置決めされている。シンチレータ素子50はフォトセンサ53と光学的に結合されており、一方このフォトセンサ53は多層式サブストレート54と電気的に結合させている。多層式サブストレート54の表面57とDAS32とに対してフレックス回路56が取り付けられている。検出器モジュール20はピン52を用いることによってコリメータアセンブリ18の内部に位置決めされている。
図4に示した検出器モジュール20の実施形態では、パック51は、ピン52と、シンチレータ58と、シンチレータ58を形成する個々のシンチレータ素子50(すなわち、ピクセル)同士の間に位置決めされた反射材料(図示せず)と、を含む。シンチレータ58は、入射するX線16を受け取りこれに応答して光学フォトンを発生させるように位置決めされている。光学フォトンはシンチレータ58を横切り、半導体式フォトセンサ53(すなわち、半導体式光電子増倍器(SSPM))によって受け取られ、これによって光学フォトンがアナログ電気信号に変換される。発生したアナログ信号は、多層式サブストレート54を介してDAS32に伝達され、ここでアナログ信号はディジタル信号に変換される。
検出器モジュール20のフォトン計数能力を既存の直接変換半導体検出器の能力と比べて改良するために、シンチレータ58は、その内部に発生したフォトンに関する減衰時間を迅速とし、直接変換半導体内において典型的に可能なチャージ収集と比べてより高速となるように設計している。シンチレータ58の動作性能を最適化しこの迅速減衰時間を実現するために、シンチレータは「高速」シンチレータ材料から構成されている。一実施形態では、シンチレータ58はセラミックシンチレーション材料から構成される。この材料は例えば、(LuTb1−x−yCeAl12(すなわち、LuTAG)の形態を取ることができる(ここで、「x」は0.5〜1.5の範囲にありかつ「y」は0.01〜0.15の範囲にある)。例えば、適正な比率は化学式Lu0.8Tb2.17Ce0.03Al12により規定されることがあるが、当業者であれば別の組成比も同様に可能であることを容易に理解されよう。LYSO、LaBr(臭化ランタン)や適当な別の材料など別のシンチレーション材料を使用することもできる。
この高速シンチレータ材料は50ナノ秒未満の主蛍光減衰時間を有する。減衰時間の値は、シンチレータ58に向けた高周波電磁気エネルギー投射の停止に続くシンチレータ材料発光の残光を表している。この崩壊速度が速いと検出器モジュール20に付随するいわゆる「不感時間」が低減されると共に、シンチレータ素子50の各々が検出できる単位時間あたりの電離イベントの数が増加する。不感時間の低減によってシンチレータ素子50は長期的不安定性を受けることなくさらに高い計数率を扱うことが可能となり、これによって飽和の防止、並びに飽和が生じたときも1〜2ビュー期間以内でのより高速の回復の支援となる。
シンチレータ58はさらに、単一結晶ブロックから形成されたピクセル分解式シンチレータ58として製作することが好ましい。このシンチレータブロックは、ピクセルサイズが小さくかつピクセル間ギャップが狭い高分解能シンチレータ58の製作が可能な当技術分野でよく知られた方法を用いてピクセル分解させている。より詳細には以下で検討することにするが、ピクセル分解式シンチレータ58の設計によれば、シンチレータピクセル50がSSPM53上のピクセル59とマッチングされることによってシンチレータ58とSSPM53の間における高品質の光学的結合が提供される。高速シンチレータ材料と上述したピクセル分解式設計とを組み合わせることによって、検出器モジュール20が高線束率においてフォトン計数及びエネルギー弁別を実現できるような感度及び光学収集の向上が可能となる。
上で述べたように、高速シンチレータ58は高線束率に対応することによってX線フォトン計数を向上させている。しかしシンチレータ58が発生させる光学フォトンはかなり少ない。シンチレータ58内のX線吸収によって発生する光学フォトンが低いこと(すなわち、低信号レベル)を克服するために、半導体式光電子増倍器(SSPM)53をシンチレータ58と組み合わせて信号の高速の比例増幅を提供している。SSPM53は固体半導体材料からなり、また一実施形態ではシリコン光電子増倍器(SiPM)として形成されているが、適当な別の材料も使用可能であることが想定されよう。
SSPM53はピクセル59と呼ばれる複数の巨視的な単位からなる。SSPM53上のピクセル59の数は検出器モジュール20の面積をカバーできるだけの十分な数とすると共に、ピクセル分解式シンチレータ58及びその上のピクセル50に対応した数とさせるべきであるが、ピクセル59の正確な数及び密度はオペレータが希望する画像分解能や別の周知の要因によって決定されることとなろう。図5にピクセル59の一部を、シンチレータ58から到来した各単一光学フォトンを1つの大きな信号に増幅させる複数のアバランシェフォトダイオード(APD)あるいは「マイクロセル」62から構成されるように表している。典型的には各ピクセル59は、マイクロセル62のぞれぞれが20〜100マイクロメートルの長さを有する1mmあたり100〜2500個のAPDを包含することとなろう。マイクロセル62のそれぞれは個別のガイガーモードAPDとしてブレークダウン電圧より数ボルト上で動作しており、その各マイクロセル62はそれ以外のマイクロセルのすべてと実質的に同一である。この動作モードでは、個別のマイクロセル62が1つまたは複数のフォトンを吸収すると、光学フォトンの吸収によって発生した電子によって、個別のマイクロセル62に限局されるアバランシェブレークダウンが誘導される。マイクロセル62からはその内部で吸収されたフォトン数と無関係に単一の離散単位の電気的チャージが放出される。すなわち各ガイガーブレークダウンごとに、マイクロセル62の出力信号は同じ形状及びチャージを有することになる(ただし、製造過程で導入されるセル間での差異に由来するわずかなバラツキを除く)。
各マイクロセル62はピクセル59の前面上で導電性グリッド64に接続されている。一実施形態では導電性グリッド64はアルミニウムからなるが、導電性であると共に好ましくは非磁性であるような同様の別の材料も想定される。図6及び7に示すように、各マイクロセル62はその上に陰極接点69を含んだ金属光遮蔽/陰極67により囲繞された有効エリア66を含む。図6及び7には前側接点を示しているが、陰極接点69をウェハの背側上に製作することも可能であり、あるいは陽極と陰極の両接点によって背側接続を提供するように貫通ビアを利用することも可能である。有効エリア66は、光学フォトンを対応する電気信号に変換するためにP+陽極71とNインプラント73とからなる。有効エリア66はその一部が、N+ガードによってマイクロセル62の残りの部分から分離されている。
各マイクロセル62の有効エリア66と導電性グリッド64の間の接続は一実施形態ではポリシリコンからなる抵抗器68によって形成される。抵抗器68はビア70によってマイクロセル62の有効エリア66と接続されると共に、マイクロセル62から導電性グリッド64に伝達される電流を制限する役割を果たす。抵抗器68はさらにセル容量がディスチャージされた後でマイクロセル62内のアバランシェをクエンチさせる役割も果たす。抵抗器68及び導電性グリッド64によって、独立に動作するAPDセル62が電気的に接続されると共に、すべてのマイクロセル62からの個別の出力が加算されて1つの共通読み出し信号が形成される。ピクセル59から出力される共通読み出し信号はしたがって、付勢されたすべてのマイクロセル62の標準化信号を重ね合わせたものとなる。すなわち図5の各ピクセル59の出力は、付勢したマイクロセル62からの離散的電気的チャージユニットの総和によって決定される。このため図5のピクセル59の出力は、各マイクロセル62が吸収したフォトン数ではなくフォトンを吸収するマイクロセル62の数に依存する。各ピクセル59から得られる出力は、そのチャージが吸収したフォトンの数に比例するアナログパルスの形態をしている。
上述のように、各ピクセル59内のマイクロセル62のアレイは、ガイガーモードで動作する個別のAPD素子62によって到来する各単一光学フォトンを1つの大きな信号になるように増幅させている。ピクセル59の構造によって10〜10の範囲の概ね無ノイズで高ゲインの増幅を提供しており、これによって単一の光学フォトンであっても容易に検出及び分解が可能であり、したがって追加的な前置増幅器は不要である。このゲインは約30〜70Vの比較的低いバイアスまたは供給電圧で実現することができる。
図4に戻るとSSPM53には、SSPM53から電気信号を受け取りこれに対して追加的な処理を実行するデータ収集システム(DAS)32すなわち読み出し用電子回路が接続されている。シンチレータ58とSSPM53を組み合わせることによって、当該材料内でのチャージキャリアの移動度による制限を受ける直接変換センサ(すなわち、CZT/CdTe検出器)のチャージ収集時間と比べて電気信号収集をより高速にできるため、DAS32はCT撮像において望ましくまた以前の設計では利用可能でなかったような高計数率で動作することが可能である。電気信号収集の改良並びにSSPM53の低ノイズ環境によってDAS32は、典型的には1×10cpsを超える高計数率でフォトン計数を実行することができる。こうした計数率での動作によれば、長期的不安定性を生じさせることなく高線束率に対応する能力によって検出器飽和に関連する問題の発生または確率が最小化される。SSPM53の各ピクセル59内部のマイクロセル62の数に対する慎重な設計、並びにシンチレータ58の光出力の制御によってさらに、DAS32においてシンチレータ58内の単一励起の主崩壊速度と比べてより大きな計数率を可能とすることができる。
フォトン計数に加えてSSPM53が出力する電気信号も、放出されたX線16のエネルギー弁別解析をDAS32に対して実行可能とさせている。すなわち、SSPM53から到来する信号の強度を用いることによって、DAS32は元のX線16のエネルギーを特徴付けしこれらを2つ以上のエネルギービンに区分することができる。少なくとも元のX線16を高エネルギーと低エネルギーのいずれかのX線であると特徴付けし、高エネルギーと低エネルギーのビン内に区分することが可能である。このエネルギー弁別機能は、X線及び電子ノイズが最も重要となるような画像のフラックスレベルがさらに低い場合(このレベルは典型的には、1平方ミリメートルあたり毎秒1×10個までのX線である)に重要となる。
したがって本発明の一実施形態では、CT撮像システムは、その内部を通過して並進させる患者を受け入れるように設計されたボアをその中を貫通して有するガントリと、ガントリ内に配置されると共に患者に向けてX線を放出するように構成されたX線源と、患者によって減衰を受けたX線を受け取るためにガントリ内に配置された検出器モジュールと、を含む。この検出器モジュールはさらに、X線を吸収し該X線を光学フォトンに変換するように構成されたシンチレータと、光学フォトンを受け取り該光学フォトンを対応する電気信号に変換するように構成された半導体式光電子増倍器(SSPM)と、からなる。
本発明の別の実施形態では、エネルギー弁別性CT検出器モジュールは、X線を受け取りこのX線を光学フォトンに変換するためのシンチレータと、内部ゲインを有する半導体式フォトセンサと、を含む。この半導体式フォトセンサは、光学フォトンをそこから受け取るためのシンチレータと光学的に結合されていると共に、該光学フォトンを電気信号出力に変換するように構成されている。
本発明のさらに別の実施形態では、フォトン計数及びエネルギー弁別式CT検出器を製作するための方法を提供する。本方法は、X線を受け取りこのX線を光学フォトンに変換するようにシンチレータを形成する工程と、光学フォトンを受け取り該光学フォトンを対応する電気信号出力に変換するために内部ゲインを有する半導体式光電子増倍器(SSPM)をシンチレータと結合させる工程と、を含む。
本発明を好ましい実施形態について記載しているが、明示的に記述した以外の等価、代替及び修正も可能であり、かつこれらも添付の特許請求の範囲の域内にあることを理解されたい。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
本発明のCT撮像システムの外観図である。 図1に示したシステムのブロック概要図である。 CTシステムのコリメータアセンブリの一実施形態の斜視図である。 検出器モジュールの一実施形態の斜視図である。 本発明による検出器ピクセルの斜視図である。 本発明によるマイクロセルの上面図である。 図6のマイクロセルの横側立面図である。
符号の説明
10 CT撮像システム
12 ガントリ
14 X線源
15 検出器アセンブリ
16 X線ビーム
17 レール
18 コリメータアセンブリ
19 コリメーション用ブレード
20 検出器モジュール
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
28 X線制御装置
30 ガントリモータ制御装置
32 データ収集システム(DAS)
34 画像再構成装置
36 コンピュータ
38 大容量記憶デバイス
40 コンソール
42 陰極線管ディスプレイ
44 テーブルモータ制御装置
46 モータ式テーブル
48 ガントリ開口
50 シンチレータ素子
51 パック
52 ピン
53 フォトセンサ
54 サブストレート
55 スペーサ
56 フレックス回路
58 シンチレータ
59 ピクセル
62 マイクロセル
64 導電性グリッド
66 有効エリア
67 金属光遮蔽/陰極
68 抵抗器
69 陰極接点
70 ビア
71 P+陽極
73 Nインプラント

Claims (10)

  1. その内部を通過して並進させる患者(22)を受け入れるように設計されたボア(48)をその中を貫通して有するガントリ(12)と、
    前記ガントリ(12)内に配置されると共に患者(22)に向けてX線(16)を放出するように構成されたX線源(14)と、
    患者(22)によって減衰を受けたX線(16)を受け取るために前記ガントリ(12)内に配置された検出器モジュール(20)であって、
    X線(16)を吸収し該X線を光学フォトンに変換するように構成されたシンチレータ(58)と、
    光学フォトンを受け取り該光学フォトンを対応する電気信号に変換するように構成された半導体式光電子増倍器(SSPM)(53)と、
    を備えた検出器モジュール(20)と、
    を備えるCT撮像システム(10)。
  2. 前記シンチレータ(58)は概ね50ナノ秒未満の減衰時間を有する材料を含む、請求項1に記載のCT撮像システム(10)。
  3. 前記シンチレータ材料は概ね50ナノ秒未満の減衰時間を有するセラミック材料である、請求項2に記載のCT撮像システム(10)。
  4. 前記セラミック材料は、LYSO、LaBr、及び(LuTb1−x−yCeAl12(すなわち、LuTAG)のうちの1つを含んでおり、「x」は0.5〜1.5の範囲にありかつ「y」は0.01〜0.15の範囲にある、請求項3に記載のCT撮像システム(10)。
  5. 前記シンチレータ(58)は複数のシンチレーション素子(50)を有するピクセル分解式シンチレータである、請求項1に記載のCT撮像システム(10)。
  6. 前記SSPM(53)はさらに複数のピクセル(59)を備えており、該ピクセル(59)は光学フォトンをそれから受け取るシンチレーション素子(50)に結合されている、請求項5に記載のCT撮像システム(10)。
  7. 前記複数のSSPMピクセル(59)の各々はさらに、
    ガイガーモードで動作すると共に光学フォトンを対応する電気信号に変換するように構成されたマイクロセル(62)のアレイと、
    前記マイクロセル(62)のアレイに接続されており、電気的チャージを合成しSSPMピクセル(59)から単一電気信号を出力するように構成された導電性グリッド(64)と、
    を備える、請求項6に記載のCT撮像システム(10)。
  8. 前記検出器モジュール(20)はさらに、前記SSPM(53)と結合させ、これから出力された電気信号をディジタル化するための読み出し用電子回路(32)を備える、請求項1に記載のCT撮像システム(10)。
  9. 前記読み出し用電子回路(32)は、前記SSPM(53)によって出力された電気信号の強度に基づいて、前記シンチレータ(58)が吸収したX線(16)を高エネルギーまたは低エネルギーであると特徴付けするように構成されている、請求項8に記載のCT撮像システム(10)。
  10. 前記読み出し用電子回路(32)はX線フォトンを計数するように構成されている、請求項8に記載のCT撮像システム(10)。
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