JP2008245265A - 撮像装置、並びにその製造装置および製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】深度拡張光学系において、解像性能ピーク位置を容易に検出可能で、また、復元画が良好となるようなボカシを実現でき、また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、適切な画質の、ノイズの影響が小さく、良好な復元画像を得ることが可能な撮像装置、並びにその製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】光学系保持部において、素子セット部230に光波面変調素子が一旦非装着状態で光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成されて素子セット部230に光波面変調素子がセットされ、あるいは、素子セット部に逆光波面変調素子を一旦装着状態で光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成されて素子セット部から逆光波面変調素子が取り外されている。
【選択図】図10

Description

本発明は、撮像素子を用い、光学系を備えたデジタルスチルカメラや携帯電話搭載カメラ、携帯情報端末搭載カメラ、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等の撮像装置、並びにその製造装置および製造方法に関するものである。
近年急峻に発展を遂げている情報のデジタル化に相俟って映像分野においてもその対応が著しい。
特に、デジタルカメラに象徴されるように撮像面は従来のフィルムに変わって固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが使用されているのが大半である。
このように、撮像素子にCCDやCMOSセンサを使った撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで、撮像素子により電気信号として抽出するものであり、デジタルスチルカメラの他、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal DigitalAssistant)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に用いられている。
図37は、一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
この撮像レンズ装置1は、光学系2とCCDやCMOSセンサ等の撮像素子3とを有する。
光学系は、物体側レンズ21,22、絞り23、および結像レンズ24を物体側(OBJS)から撮像素子3側に向かって順に配置されている。
撮像レンズ装置1においては、図37に示すように、ベストフォーカス面を撮像素子面上に合致させている。
図38(A)〜(C)は、撮像レンズ装置1の撮像素子3の受光面でのスポット像を示している。
また、位相板により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置が提案されている(たとえば非特許文献1,2、特許文献1〜5参照)。
また、伝達関数を用いたフィルタ処理を行うデジタルカメラの自動露出制御システムが提案されている(たとえば特許文献6参照)。
"Wavefront Coding;jointly optimized optical and digital imaging systems",Edward R.Dowski,Jr.,Robert H.Cormack,Scott D.Sarama. "Wavefront Coding;A modern method of achieving high performance and/or low cost imaging systems",Edward R.Dowski,Jr.,Gregory E.Johnson. USP6,021,005 USP6,642,504 USP6,525,302 USP6,069,738 特開2003−235794号公報 特開2004−153497号公報
上述した各文献にて提案された撮像装置においては、その全ては通常光学系に上述の位相板を挿入した場合のPSF(Point−Spread−Function)が一定になっていることが前提であり、PSFが変化した場合は、その後のカーネルを用いたコンボリューションにより、被写界深度の深い画像を実現することは極めて難しい。
したがって、単焦点でのレンズではともかく、ズーム系やAF系などのレンズでは、その光学設計の精度の高さやそれに伴うコストアップが原因となり採用するには大きな問題を抱えている。
換言すれば、上記各撮像装置においては、適正なコンボリューション演算を行うことができず、ワイド(Wide)時やテレ(Tele)時のスポット(SPOT)像のズレを引き起こす非点収差、コマ収差、ズーム色収差等の各収差を無くす光学設計が要求される。
しかしながら、これらの収差を無くす光学設計は光学設計の難易度を増し、設計工数の増大、コスト増大、レンズの大型化の問題を引き起こす。
また、被写界深度の拡張技術は、深い被写界深度内で像性能の変化量が少ないために、ディフォーカスに対する光学性能ピーク位置の検出が困難であり、適切な評価が行い難いため、製造工程に負担をかけ、また、歩留りの面でも不利であるという欠点を持つ。
位相変調を行った深度拡張光学系においては、システム名が意味するように像性能の変化量が小さいために、解像性能の変化を尺度としてバックフォーカス調整するのは、変化量を見るために広い範囲をディフォーカスしてピークらしきところを算出することになる。
この場合は、広い範囲をディフォーカスするための手間がかかるか、粗くサーチするために、その精度が落ちるといったように、製造工程に負荷がかかるか、製品の性能が劣化してしまう。
特に、復元を前提とした深度拡張光学系では、保証される深度内では、性能の変化が極端に抑えられているため、解像ピークの算出は極めて困難である。
また、上述した各文献に開示された装置においては、たとえば暗所における撮影で、信号処理によって画像を復元する際、ノイズも同時に増幅してしまう。
したがって、たとえば上述した位相板等の光波面変調素子とその後の信号処理を用いるような、光学系と信号処理を含めた光学システムでは、暗所での撮影を行う場合、ノイズが増幅してしまい、復元画像に影響を与えてしまうという不利益がある。
さらに、上記技術では、たとえば明るい被写体の撮影で、絞りを絞った場合、位相変調素子が絞りで覆われるため、位相変化が小さくなり、画像復元処理を行うと復元画像に影響を与えてしまうという不利益がある。
さらにまた、上記技術では、画像復元処理前の画像は物体距離によらず常に光学像がボケた状態になっているため、復元処理を行わなければ画質としての完成度が低い。
たとえ復元処理を行ってもボカして復元するという工程上、完全には復元することは困難である。そのため、復元画が良好となるようなボカシ方をする必要がある。
本発明の目的は、深度拡張光学系において、解像性能ピーク位置を容易に検出可能で、また、復元画が良好となるようなボカシを実現でき、また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、適切な画質の、ノイズの影響が小さく、良好な復元画像を得ることが可能な撮像装置、並びにその製造装置および製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点の撮像装置は、光波面変調素子を含む光学系と、前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、前記光学系を保持する光学系保持部と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、前記光学系保持部は、前記光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、前記光学系は、前記素子セット部に前記光波面変調素子が退避状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成されている。
本発明の第2の観点の撮像装置は、光波面変調素子を含む光学系と、前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、前記光学系を保持する光学系保持部と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、前記光学系保持部は、前記光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、前記光学系は、前記素子セット部に前記逆光波面変調素子を挿入状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成されている。
好適には、前記光学系は、中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を含み、前記光学系と前記撮像素子の相対的な取り付け位置は、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が最も多くなるように設定されている。
好適には、前記PSFは頂部を有し、前記光学系と前記撮像素子の相対的な取り付け位置は、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、前記PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されている。
好適には、前記PSFは頂部を有し、前記光学系と前記撮像素子の相対的な取り付け位置は、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、前記PSFの頂部に対する斜め側部において、当該頂部から当該斜め側部の先端部までの間の複数個所で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素にまで入力するように設定されている。
好適には、前記PSFは前記頂部を通る中心線を中心に左右対称である。
好適には、前記取り付け位置は、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、基準位置のPSFに係る出力信号より多くの画素に入力するように設定されている。
好適には、前記光波面変調素子と前記撮像素子とを光軸を中心に相対的に回転させて前記取り付け位置が選定されている。
好適には、前記画像処理部は、撮像素子からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する。
好適には、前記光波面変調素子が、物体距離に応じたOTFの変化を、光波面変調素子を持たない光学系よりも小さくする作用を持つ。
好適には、前記光波面変調素子が、前記光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、位相が下記式で表される。
好適には、前記光波面変調素子を有する光学系のOTFが、前記光波面変調素子を含まない光学系の被写界深度よりも広い物体距離にわたって、前記撮像素子のナイキスト周波数まで0.1以上である。
本発明の第3の観点は、光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造装置であって、前記光学系保持部は、前記光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、前記素子セット部に前記光波面変調素子をセットする前に、前記素子セット部に前記光波面変調素子が退避状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整可能な調整装置を有する。
本発明の第4の観点は、光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造装置であって、前記光学系保持部は、前記光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、前記素子セット部から前記逆光波面変調素子を取り外す前に、前記素子セット部に前記逆光波面変調素子を挿入状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整可能な調整装置を有する。
本発明の第5の観点は、光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造方法であって、前記光学系保持部に形成された前記光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部に、前記光波面変調素子が退避状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整する第1ステップと、前記素子セット部に前記光波面変調素子をセットする第2ステップとを有する。
本発明の第6の観点は、光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造方法であって、前記光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部に、前記逆光波面変調素子を挿入状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整する第1ステップと、前記素子セット部から前記逆光波面変調素子を取り外す第2ステップとを有する。
本発明によれば、深度拡張光学系において、解像性能ピーク位置を容易に検出可能である。
また、復元画が良好となるようなボカシを実現できる。
また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかも適切な画質の、ノイズの影響が小さく、良好な復元画像を得ることができる利点がある。
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
図1は、本発明に係る撮像装置の一実施形態を示すブロック構成図である。
本実施形態に係る撮像装置100は、光学系110、撮像素子120、アナログフロントエンド部(AFE)130、画像処理装置140、カメラ信号処理部150、画像表示メモリ160、画像モニタリング装置170、操作部180、および制御装置190を有している。
光学系110は、後で詳述する位相変調素子等の光波面変調素子を含み、被写体物体OBJを撮影した像を撮像素子120に供給する。また、光学系110は、可変絞り110aが配置されている。
光学系110は、後で詳述するように、光学系保持部に保持される。
そして、光学系保持部は、光波面変調素子を光学系110の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、光学系110は、素子セット部に光波面変調素子が退避状態で光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有するように形成された後、素子セット部に光波面変調素子がセットされて構成される。
あるいは、光学系保持部は、光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、光学系110は、素子セット部に逆光波面変調素子を挿入状態で光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有するように形成された後、前記素子セット部から逆光波面変調素子が取り外されて構成される。
撮像素子120は、光学系110で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号FIMとして、アナログフロントエンド部130を介して画像処理装置140に出力するCCDやCMOSセンサからなる。
図1においては、撮像素子120を一例としてCCDとして記載している。
光学系110と撮像素子120の相対的な取り付け位置は、光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)に係る出力信号が入力する画素数が最も多くなるように設定されている。
より具体例を挙げると、後で説明するように、光学系を通過した中心において回転対称でない点像強度分布(PSF)に係る出力信号が、PSFの所定の頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されている。換言すると、光学系を通過した中心において回転非対称で頂部を有する点像強度分布(PSF)に係る出力信号が、PSFの頂部に対する斜め側部において、頂部から斜め側部の先端部までの間の複数個所で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素にまで入力するように設定されている。
このとき、光学系110に含まれる光波面変調素子と撮像素子120を相対的に回転させて取り付け位置が設定されている。
この場合、光学系110と撮像素子120の取り付け位置は、光学系110を通過したPSFに係る出力信号が、基準位置のPSFに係る出力信号より多くの画素に入力するように回転させて設定されている。
より具体的には、取り付け位置は、アナログ信号からデジタル信号に変換する際に生じるサンプリング効果によりPSFの出力信号が、PSFの所定の頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されている。換言すると、アナログ信号からデジタル信号に変換する際に生じるサンプリング効果によりPSFの出力信号が、PSFの頂部に対する斜め側部において、頂部から斜め側部の先端部までの間の複数個所で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素にまで入力するように設定されている。
また、後で図解するように、光学系110を通過したPSFが、アナログ信号からデジタル信号への変換後の変調伝達関数(MTF)において、複数のアジマス方向(本実施形態においては全アジマス方向)において等しくなるように配置されている。
取り付け位置は、光波面変調素子と撮像素子120を後で説明する調整装置を用いて、光軸を中心に相対的に回転させて選定されている。
アナログフロントエンド部130は、タイミングジェネレータ131と、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ132と、を有する。
タイミングジェネレータ131では、撮像素子120のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ132は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像処理装置140に出力する。
画像信号処理部の一部を構成する画像処理装置(二次元コンボリューション手段)140は、前段のAFE130からくる撮像画像のデジタル信号を入力し、二次元のコンボリューション処理を施し、後段のカメラ信号処理部(DSP)150に渡す。
画像処理装置140、制御装置190の露出情報に応じて、光学的伝達関数(OTF)に対してフィルタ処理を行う。なお、露出情報として絞り情報を含む。
画像処理装置140は、撮像素子120からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する機能を有する。また、画像信号処理部は、最初のステップでノイズ低減フィルタリングを施す機能を有する。
画像処理装置140の処理については後でさらに詳述する。
カメラ信号処理部(DSP)150は、カラー補間、ホワイトバランス、YCbCr変換処理、圧縮、ファイリング等の処理を行い、メモリ160への格納や画像モニタリング装置170への画像表示等を行う。
制御装置190は、露出制御を行うとともに、操作部180などの操作入力を持ち、それらの入力に応じて、システム全体の動作を決定し、AFE130、画像処理装置140、DSP150、可変絞り110a等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
以下、本実施形態の光学系、画像処理装置の構成および機能について具体的には説明する。
図2は、本実施形態に係るズーム光学系110の構成例を模式的に示す図である。この図は広角側を示している。
また、図3は、本実施形態に係る撮像レンズ装置の望遠側のズーム光学系の構成例を模式的に示す図である。
そして、図4は、本実施形態に係るズーム光学系の広角側の像高中心のスポット形状を示す図であり、図5は、本実施形態に係るズーム光学系の望遠側の像高中心のスポット形状を示す図である。
図2および図3のズーム光学系110は、物体側OBJSに配置された物体側レンズ111と、撮像素子120に結像させるための結像レンズ112と、物体側レンズ111と結像レンズ112間に配置され、結像レンズ112による撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる、たとえば3次元的曲面を有する位相板からなる光波面変調素子(波面形成用光学素子)群113を有する。また、物体側レンズ111と結像レンズ112間には図示しない絞りが配置される。
たとえば、本実施形態においては、可変絞り110a(図1参照)が設けられ、露出制御(装置)において可変絞りの絞り度(開口度)を制御する。
なお、本実施形態においては、位相板を用いた場合について説明したが、本発明の光波面変調素子としては、波面を変形させるものであればどのようなものでもよく、厚みが変化する光学素子(たとえば、上述の3次の位相板)、屈折率が変化する光学素子(たとえば屈折率分布型波面変調レンズ)、レンズ表面へのコーディング等により厚み、屈折率が変化する光学素子(たとえば、波面変調ハイブリッドレンズ、あるいはレンズ面上に形成される位相面として形成される状態)、光の位相分布を変調可能な液晶素子(たとえば、液晶空間位相変調素子)等の光波面変調素子であればよい。
また、本実施形態においては、光波面変調素子である位相板を用いて規則的に分散した画像を形成する場合について説明したが、通常の光学系として用いるレンズで光波面変調素子と同様に規則的に分散した画像を形成できるものを選択した場合には、光波面変調素子を用いずに光学系のみで実現することができる。この際は、後述する位相板に起因する分散に対応するのではなく、光学系に起因する分散に対応することとなる。
図2および図3のズーム光学系110は、デジタルカメラに用いられる3倍ズームに光学位相板113aを挿入した例である。
図で示された位相板113aは、光学系により収束される光束を規則正しく分散する光学レンズである。この位相板を挿入することにより、撮像素子120上ではピントのどこにも合わない画像を実現する。
換言すれば、位相板113aによって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成している。
この規則的に分散した画像をデジタル処理により、光学系110を移動させずにピントの合った画像に復元する手段を波面収差制御光学系システム、あるいは深度拡張光学系システム(DEOS:Depth Expantion Optical system)といい、この処理を画像処理装置140において行う。
ここで、DEOSの基本原理について説明する。
図6に示すように、被写体の画像fがDEOS光学系Hに入ることにより、g画像が生成される。
これは、次のような式で表される。
[数2]
g=H*f
ただし、*はコンボリューションを表す。
生成された画像から被写体を求めるためには、次の処理を要する。
[数3]
f=H-1*g
ここで、Hに関するカーネルサイズと演算係数について説明する。
光学切り替え情報をKPn,KPn−1・・・とする。また、それぞれのH関数をHn,Hn−1、・・・・とする。
各々のスポット像が異なるため、各々のH関数は、次のようになる。
この行列の行数および/または列数の違いをカーネルサイズ、各々の数字を演算係数とする。
ここで、各々のH関数はメモリに格納しておいても構わないし、PSFを物体距離の関数としておき、物体距離によって計算し、H関数を算出することによって任意の物体距離に対して最適なフィルタを作るように設定できるようにしても構わない。また、H関数を物体距離の関数として、物体距離によってH関数を直接求めても構わない。
本実施形態においては、図1に示すように、光学系110からの像を撮像素子120で受像して、絞り開放時には画像処理装置140に入力させ、光学系に応じた変換係数を取得して、取得した変換係数をもって撮像素子120からの分散画像信号より分散のない画像信号を生成するように構成している。
なお、本実施形態において、分散とは、上述したように、位相板113aを挿入することにより、撮像素子120上ではピントのどこにも合わない画像を形成し、位相板113aによって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成する現象をいい、像が分散してボケ部分を形成する振る舞いから収差と同様の意味合いが含まれる。したがって、本実施形態においては、収差として説明する場合もある。
本実施形態においては、DEOSを採用し、高精細な画質を得ることが可能で、しかも、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることが可能となっている。
以下、この特徴について説明する。
図7(A)〜(C)は、撮像素子120の受光面でのスポット像を示している。
図7(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、図7(B)が合焦点の場合(Best focus)、図7(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示している。
図7(A)〜(C)からもわかるように、本実施形態に係る撮像装置100においては、位相板113aを含む波面形成用光学素子群113によって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)が形成される。
このように、本実施形態の撮像装置100において形成された1次画像FIMは、深度が非常に深い光束条件にしている。
図8(A),(B)は、本実施形態に係る撮像レンズ装置により形成される1次画像の変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)について説明するための図であって、図8(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、図8(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。
本実施形態においては、高精細な最終画像は後段の、たとえばデジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor)からなる画像処理装置140の補正処理に任せるため、図8(A),(B)に示すように、1次画像のMTFは本質的に低い値になっている。
ところで、DEOSにおいては、深度拡張光学系では、深い被写界深度内で像性能の変化量が少ないために、ディフォーカスに対する光学性能ピーク位置の検出が困難である傾向にある。適切な評価が行い難いため、製造工程に負担をかけ、また、歩留りの面でも不利な面がある。
そこで、本実施形態においては、DEOSにおける解像性能ピーク位置の検出方法、および、容易に検出可能な鏡枠構造(光学系保持部の構造)を実現している。
図9(A),(B)は、本実施形態に係る光学系保持部の構成例を示す断面図である。
この光学系保持部200は、図9(A),(B)に示すように、円筒状の鏡枠部210の一部に円弧状のスリットとして形成された素子出し入れ部220と、素子出し入れ部220から出し入れされる光波面変調素子113aを光学系110の光路に自在に着脱(挿入退避)可能な素子セット部(素子受け部)230と、素子セット部230にセットされる光波面変調素子113aを押さえ込み固定するための押さえ部材240とを有する。
本例では、素子出し入れ部220および素子セット部230は、絞り110aが配置される近傍であって、撮像素子120の撮像面側に形成されている。
すなわち、DEOSにおいて、本実施形態における光学系保持部200の構造は、基本的に、鏡枠部210と、光波面変調素子を出し入れ可能なスリット状の素子出し入れ部220と、素子セット部230とを有する鏡枠構造である。
なお、図9では光波面変調素子を着脱可能な構成について説明したが、この光波面変調素子を鏡枠部210に固定し、逆光波面変調素子を着脱可能な構成としてもよい。
そして、本実施形態においては、第一の方法においては、DEOSにおいて、図10(A)に示すように、素子セット部230に光波面変調素子(深度拡張作用をもたらす素子)がセットされていない状態の光学系110で、良好な結像性能を有するように構成する。
この状態で性能出しを行い、性能出しが完了後に、図10(B)に示すように、素子出し入れ部220を通して素子セット部230に光波面変調素子113aをセットし、押さえ部材240を落とし込み光波面変調素子113aを固定する。
すなわち、図10(A)は、光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するようにな良好な結像性能をもつ光学系に対し、光波面変調素子113aを装着しない状態を示している。この光波面変調、たとえば位相変調を行っていない撮像光学系では、ディフォーカスにより解像性能が顕著に変化するため、解像性能の変化を目安にバックフォーカス調整、もしくは解像評価をすることで性能出しを行う。
次に、図10(B)に示すように、光波面変調素子を装着する。フィルタを機能させ、復元画像を得ることにより、深度拡張光学系が実現される。
ここで、図9のような構成とすることにより、この光波面変調素子を装着する際に光軸方向を中心にして回転させることができるために、後述するように光波面変調素子を好ましい位置で固定することができるようになる。
第二の方法においてに、光波面変調要素子を内包した深度拡張光学系において、図11(A)に示すように、逆光波面変調を生じさせ光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するようにな良好な結像状態とするための逆光波面変調素子113bを素子セット部230にセットする。本実施例では、光波面変調素子が逆光波面変調素子以外の光学系のトータルで作用をなす場合を示すものであるが、これまでの実施例と同様に、通常の光学系とは別に光波面変調素子113aを配置してもよい。この際、後述するように光波面変調素子を光軸方向を中心にして回転させて好ましい位置で固定することが望ましい。
これらの状態を作り出すことにより、位相変調の無い状態で性能出しを行い、性能出しが完了後に、図11(B)に示すように、素子出し入れ部220を通して素子セット部230にセットされていた逆光波面変調素子113bを取り外す。
すなわち、図11(A)は、光波面変調作用を持つ光波面変調素子を含む光学系110に対し、光学系の持つ光波面変調作用を相殺する逆光波面変調素子113bを装着する。この光波面変調作用が相殺された光学系では、ディフォーカスにより解像性能が顕著に変化するため、解像性能の変化を目安にバックフォーカス調整、もしくは解像評価をすることで性能出しを行う。
次に、図11(B)に示すように、逆光波面変調素子113bを取り外す。そして、フィルタを機能させ、復元画像を得ることにより、深度拡張光学系が実現される。
以上のように、第一の方法においては、深度拡張光学系において、光波面変調素子(深度拡張作用をもたらす素子)が無い状態の光学系で、良好な結像性能を有することが必要となる。光波面変調を行っていない撮像光学系では、ディフォーカスにより解像性能が顕著に変化するため、解像性能の変化を目安にバックフォーカス調整、もしくは解像評価をすることが可能となる。
次に、光波面変調素子の無い状態の光学系から、鏡枠等を分解や破壊することなく、光波面変調素子を組み込む必要がある。そのために、光波面変調素子を装着するためのスリットを持つ鏡枠構造でなければならない。この二つの要素をあわせ持つことにより、位相変調素子が無い状態の光学系で性能だしを行い、性能だしが完了後に深度拡張素子を追加する形で製造工程を構築することが可能となる。
また、第二の方法においては、光波面変調機能を内包している光学系では、光波面変調を相殺する逆光波面変調素子を追加することにより、ディフォーカスによる解像性能の変化を生じさせることが可能となる。鏡枠に逆光波面変調素子が着脱可能な素子出し入れ部220および素子セット部230を有することで、逆光波面変調素子を追加した状態の光学系で性能だしを行い、性能だしが完了後に逆光波面変調素子を外すことで製造工程を構築することが可能となる。
そして、本実施形態においては、光学系110と撮像素子120の取り付け位置は、光学系を通過した中心において回転非対称で頂部を有する点像強度分布(PSF)に係る出力信号が、PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されている。なお、たとえばPSFは頂部を通る中心線を中心に左右対称である。
このとき、光学系110に含まれる光波面変調素子と撮像素子120を相対的に回転させて取り付け位置が設定されている。
この場合、光学系110と撮像素子120の取り付け位置は、光学系110を通過したPSFに係る出力信号が、基準位置のPSFに係る出力信号より多くの画素に入力するように回転させて設定されている。
図12(A),(B)は、基準位置と所定角度回転後のアナログPSFを示す図である。
図13(A),(B)は、図12のアナログPSFのA/D変換後のデジタルPSFを示す図である。
図14(A),(B)は、図13(A),(B)のデジタルPSFのMTを示す図である。
図15(A),(B)は基準位置の場合のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。
また、図16(A),(B)は45度回転後のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。
本実施形態においては、図12(A)に示す基準位置にある、中心において回転非対称で頂部を有するアナログPSFを調整装置により、図12(B)に示すように、所定角度(本例では45度)回転する。
図からもわかるように、アナログでは回転を加えても軸方向のMTFは変わらない。
そして、回転に伴い、アナログ信号からデジタル信号に変換する際のサンプリングする対象が変化するため、図13(A),(B)に示すように、デジタルPSFの形状が変化する。
より具体的に説明すると、たとえば、図15(A)の例のように、基準位置においては、アナログPSFはa〜gの8個の画素にわたってかかる(またぐ)ことから、サンプリングした後のデジタルPSFは、図15(B)の例のように、8個の画素a〜hに入力することになる。
この形状は、アナログPSFの平面的に見た場合に、頂点部があり三角形に近いが、その頂部TXに対向する底辺部(縁部)BXは、図15(B)に示すように、図15(A)のオリジナルと略同様に、直線的にならず、頂部TX側に寄った弓なり状な形状となる。
これに対して、所定角度回転(本例では45度回転)させて、光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)に係る出力信号が入力する画素数が最も多くなるように設定されている。
具体的には、たとえば図16(A)に示すように、アナログPSFがa〜lの12個の画素にわたってかかる(またぐ)ようにすると、サンプリングした後のデジタルPSFは、図16(B)に示すように、頂点部があり三角形に近いが、その頂部TXに対向する底辺部(縁部)BXにおいて、直線的に配列される複数の画素(a,b,c,d)にまで入力するように形成することが可能となる。
換言すると、PSFの頂部TXに対する斜め側部SXにおいて、頂部TXから斜め側部SXの先端部SXTまでの間の複数個所で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素にまで入力するように設定されている。
より具体的には、図16(A)の例では、頂部TXから斜め側部SX1の先端部SXT1までの間の複数個所(この例では2箇所)で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素、すなわち、画素gとj、および画素bとeにまでまたがるように設定されている。
同様に、頂部TXから斜め側部SX2の先端部SXT2までの間の複数個所(この例では2箇所)で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素、すなわち、画素gとl、および画素cとiにまでまたがるように設定されている。
すなわち、PSFの回転に伴い、サンプリング対象が変化するため、より多くの画素に入力するデジタルPSFの形状に変化する。
そして、PSFは、頂部TXを通る中心線を中心に略左右対称である。
また、アナログの時点では回転に伴うMTFの変化はないが、デジタル変換された後は、図14(A),(B)に示すように、サンプリング効果によりMTFが変換する。
このサンプリング効果を利用して、光学系110を通過したPSFが、アナログ信号からデジタル信号への変換後のMTFにおいて、複数のアジマス方向(本実施形態においては全アジマス方向)において等しくなるように配置されている。
これにより、本実施形態においては、撮像素子120と光波面変調素子としての位相変調素子(位相板)113aを復元に適した配置することができ、公差の緩い深度拡張光学系を実現している。
なお、本実施形態においては、45度回転させた場合について説明したが、図12(A)の状態から90度、180度、270度以外で回転させても図12(A)の状態よりも複数の画素にわたってかかる(またぐ)ようになり、本発明の効果を十分に発現することができる。
また、図12(A)に示すPSFの場合には45度回転させた場合がかかる(またぐ)画素が多くなるが、他のPSFの場合には45度以外の回転状態の場合がかかる(またぐ)画素が多い状態となるケースもある。
本実施形態においては、調整装置にこの方法を採用して光学系110と撮像素子120の相対的な取り付け位置の調整を行う。
以下に、調整装置の基本的な構成を説明について説明する。
図17は、本実施形態に係る調整装置300の構成例を示すブロック図である。
調整装置300は、図17に示すように、レンズ調整駆動部310、図1の撮像素子120に相当するセンサ320、AFE(アナログフロントエンド部)330、RAWバッファメモリ340、画像信号処理部350、調整制御部360、および画像表示部370を有している。
レンズ調整駆動部310には、たとえば小絞り311、光波面変調素子を含むレンズ系(光学系)312が配置される。そして、モータドライバ313によりレンズ系312がその光軸方向に移動制御され、光波面変調素子を含むレンズ光学系の位置が所望の位置に設定される。
また、レンズ調整駆動部310は、調整制御部360に指示に従って、レンズ系312を光軸を中心に所定角度回転可能に構成されている。
また、レンズ系312は、図示しないが、図9に対応するような、光波面変調素子または逆波面変調素子を光学系110の光路に自在に着脱(挿入退避)可能な素子セット部(素子受け部)を有する。
この構成を用いて上記した第一または第二の方法に従った調整、組み立て(製造)が行われる。
AFE330は、A/Dコンバータ331、タイミングジェネレータ332と、を有する。
タイミングジェネレータ331では、調整制御部360の制御の下、センサ(撮像素子)320のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ332は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、バッファメモリ340に可能する。
また、タイミングジェネレータ331は、調整制御部360の制御の下、センサ320に対するレンズ312の位置を調整し、ピント等を調整するための駆動信号をモータドライバ313に供給する。
画像信号処理部350は、バッファメモリ340の格納データに対して、所定の画像処理を行って、たとえばPSF像を得、その処理情報を調整制御部360に供給するとともに、調整制御部360の制御の下、画像表示部370に表示する。
調整制御部360は、画像信号処理部350による信号処理に伴う情報に基づいて、レンズ(光学系)312とセンサ(撮像素子)320の位置関係を調整するために、レンズ312の位置を変更制御等するための制御信号をAFE330のタイミングジェネレータ332に出力して、レンズ(光学系)312とセンサ(撮像素子)320の位置関係を調整制御する。
また、レンズ(光学系)312とセンサ(撮像素子)320の位置調整処理は、図18に示すように、x軸、y軸を調整してレンズ312とセンサ320の位置を調整する。
以上のような調整装置300を用いて、撮像装置100は調整され製造される。
以下、深度拡張光学系を採用した場合の各部構成および機能についてさらに説明する。
図19は、本実施形態の光波面変調素子を含む光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、下記式で表される波面収差の形状である。
波面収差が0.5λ以下の範囲では位相の変化が小さく、通常の光学系と変わらないOTFを持つ。したがって波面収差が0.5λ程度になるまで絞って取り付け位置の調整を行う。
図20は、前記波面収差の形状と0.5λ以下の範囲を太線で表したものである。
ただし、λはたとえば可視光領域、赤外領域の波長を用いる。
なお、図19に示す形状は、一例であって、光波面変調素子が、光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、位相が下記式で表されるものであれば適用可能である。
画像処理装置140は、上述したように、撮像素子120による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する。
画像処理装置140のMTF補正処理は、たとえば図21の曲線Aで示すように、本質的に低い値になっている1次画像のMTFを、空間周波数をパラメータとしてエッジ強調、クロマ強調等の後処理にて、図21中曲線Bで示す特性に近づく(達する)ような補正を行う。
図21中曲線Bで示す特性は、たとえば本実施形態のように、波面形成用光学素子を用いずに波面を変形させない場合に得られる特性である。
なお、本実施形態における全ての補正は、空間周波数のパラメータによる。
本実施形態においては、図21に示すように、光学的に得られる空間周波数に対するMTF特性曲線Aに対して、最終的に実現したいMTF特性曲線Bを達成するためには、それぞれの空間周波数に対し、図22に示すようにエッジ強調等の強弱を付け、元の画像(1次画像)に対して補正をかける。
たとえば、図21のMTF特性の場合、空間周波数に対するエッジ強調の曲線は、図22に示すようになる。
すなわち、空間周波数の所定帯域内における低周波数側および高周波数側でエッジ強調を弱くし、中間周波数領域においてエッジ強調を強くして補正を行うことにより、所望のMTF特性曲線Bを仮想的に実現する。
このように、実施形態に係る撮像装置100は、基本的に、1次画像を形成する光学系110および撮像素子120と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置140からなり、光学系システムの中に、波面成形用の光学素子を新たに設けるか、またはガラス、プラスチックなどのような光学素子の面を波面成形用に成形したものを設けることにより、結像の波面を変形(変調)し、そのような波面をCCDやCMOSセンサからなる撮像素子120の撮像面(受光面)に結像させ、その結像1次画像を、画像処理装置140を通して高精細画像を得る画像形成システムである。
本実施形態では、撮像素子120による1次画像は深度が非常に深い光束条件にしている。そのために、1次画像のMTFは本質的に低い値になっており、そのMTFの補正を画像処理装置140で行う。
ここで、本実施形態における撮像装置100における結像のプロセスを、波動光学的に考察する。
物点の1点から発散された球面波は結像光学系を通過後、収斂波となる。そのとき、結像光学系が理想光学系でなければ収差が発生する。波面は球面でなく複雑な形状となる。幾何光学と波動光学の間を取り持つのが波面光学であり、波面の現象を取り扱う場合に便利である。
結像面における波動光学的MTFを扱うとき、結像光学系の射出瞳位置における波面情報が重要となる。
MTFの計算は結像点における波動光学的強度分布のフーリエ変換で求まる。その波動光学的強度分布は波動光学的振幅分布を2乗して得られるが、その波動光学的振幅分布は射出瞳における瞳関数のフーリエ変換から求まる。
さらにその瞳関数はまさに射出瞳位置における波面情報(波面収差)そのものからであることから、その光学系110を通して波面収差が厳密に数値計算できればMTFが計算できることになる。
したがって、所定の手法によって射出瞳位置での波面情報に手を加えれば、任意に結像面におけるMTF値は変更可能である。
本実施形態においても、波面の形状変化を波面形成用光学素子で行うのが主であるが、まさにphase(位相、光線に沿った光路長)に増減を設けて目的の波面形成を行っている。
そして、目的の波面形成を行えば、射出瞳からの射出光束は、図7(A)〜(C)に示す幾何光学的なスポット像からわかるように、光線の密な部分と疎の部分から形成される。
この光束状態のMTFは空間周波数の低いところでは低い値を示し、空間周波数の高いところまでは何とか解像力は維持している特徴を示している。
すなわち、この低いMTF値(または、幾何光学的にはこのようなスポット像の状態)であれば、エリアジングの現象を発生させないことになる。
つまり、ローパスフィルタが必要ないのである。
そして、後段のDSP等からなる画像処理装置140でMTF値を低くしている原因のフレアー的画像を除去すれば良いのである。それによってMTF値は著しく向上する。
次に、本実施形態および従来光学系のMTFのレスポンスについて考察する。
図23は、従来の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
図24は、光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
また、図25は、本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
図からもわかるように、光波面変調素子を有する光学系の場合、物体が焦点位置から外れた場合でもMTFのレスポンスの変化が光波面変調素子を挿入してない光学系よりも少なくなる。
この光学系によって結像された画像を、コンボリューションフィルタによる処理によって、MTFのレスポンスが向上する。
図24に示した、位相板を持つ光学系のOTFの絶対値(MTF)はナイキスト周波数において0.1以上であることが好ましい。
なぜなら、図25に示した復元後のOTFを達成するためには復元フィルタでゲインを上げることになるが、センサのノイズも同時に上げることになる。そのため、ナイキスト周波数付近の高周波ではできるたけゲインを上げずに復元を行うことが好ましい。
通常の光学系の場合、ナイキスト周波数でのMTFが0.1以上あれば解像する。
したがって、復元前のMTFが0.1以上あれば復元フィルタでナイキスト周波数でのゲインを上げずに済む。復元前のMTFが0.1未満であると、復元画像がノイズの影響を大きく受けた画像になるため好ましくない。
次に、画像処理装置140の構成および処理について説明する。
画像処理装置140は、図1に示すように、生(RAW)バッファメモリ141、コンボリューション演算器142、記憶手段としてのカーネルデータ格納ROM143、およびコンボリューション制御部144を有する。
コンボリューション制御部144は、コンボリューション処理のオンオフ、画面サイズ、カーネルデータの入れ替え等の制御を行い、制御装置190により制御される。
また、カーネルデータ格納ROM143には、図26、図27、または図28に示すように予め用意されたそれぞれの光学系のPSFにより算出されたコンボリューション用のカーネルデータが格納されており、制御装置190によって露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
なお、露出情報には、絞り情報が含まれる。
図26の例では、カーネルデータAは光学倍率(×1.5)、カーネルデータBは光学倍率(×5)、カーネルデータCは光学倍率(×10)に対応したデータとなっている。
また、図27の例では、カーネルデータAは絞り情報としてのFナンバ(2.8)、カーネルデータBはFナンバ(4)に対応したデータとなっている。なお、Fナンバ(2.8)、Fナンバ(4)は上記した0.5λの範囲外である。
また、図28の例では、カーネルデータAは物体距離情報が100mm、カーネルデータBは物体距離が500mm、カーネルデータCは物体距離が4mに対応したデータとなっている。
図27の例のように、絞り情報に応じたフィルタ処理を行うのは以下の理由による。
絞りを絞って撮影を行う場合、絞りによって光波面変調素子を形成する位相板113aが覆われてしまい、位相が変化してしまうため、適切な画像を復元することが困難となる。
そこで、本実施形態においては、本例のように、露出情報中の絞り情報に応じたフィルタ処理を行うことによって適切な画像復元を実現している。
図29は、制御装置190の露出情報(絞り情報を含む)により切り替え処理のフローチャートである。
まず、露出情報(RP)が検出されコンボリューション制御部144に供給される(ST101)。
コンボリューション制御部144においては、露出情報RPから、カーネルサイズ、数値演係数がレジスタにセットされる(ST102)。
そして、撮像素子120で撮像され、AFE130を介して二次元コンボリューション演算部142に入力された画像データに対して、レジスタに格納されたデータに基づいてコンボリューション演算が行われ、演算され変換されたデータがカメラ信号処理部150に転送される(ST103)。
以下に画像処理装置140の信号処理部とカーネルデータ格納ROMについてさらに具体的な例について説明する。
図30は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図30の例は露出情報に応じたフィルタカーネルを予め用意した場合のブロック図である。
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。2次元コンボリューション演算部142においては、カーネルデータを用いてコンボリューション処理を施す。
図31は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図31の例は、信号処理部の最初にノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして露出情報に応じたノイズ低減フィルタ処理ST1を予め用意した場合のブロック図である。
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部142においては、前記ノイズ低減フィルタST1を施した後、カラーコンバージョン処理ST2によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST3を施す。
再度ノイズ処理ST4を行い、カラーコンバージョン処理ST5によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、再度のノイズ処理ST4は省略することも可能である。
図32は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図32の例は、露出情報に応じたOTF復元フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部142は、ノイズ低減処理ST11、カラーコンバージョン処理ST12の後に、前記OTF復元フィルタを用いてコンボリューション処理ST13を施す。
再度ノイズ処理ST14を行い、カラーコンバージョン処理ST15によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減処理ST11、ST14は、いずれか一方のみでもよい。
図33は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図33の例は、ノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして露出情報に応じたノイズ低減フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
なお、再度のノイズ処理ST4は省略することも可能である。
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部142においては、ノイズ低減フィルタ処理ST21を施した後、カラーコンバージョン処理ST22によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST23を施す。
再度、露出情報に応じたノイズ処理ST24を行い、カラーコンバージョン処理ST25によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減処理ST21は省略することも可能である。
以上は露出情報のみに応じて2次元コンボリューション演算部142においてフィルタ処理を行う例を説明したが、たとえば被写体距離情報、ズーム情報、あるいは撮影モード情報と露出情報とを組み合わせることにより適した演算係数の抽出、あるいは演算を行うことが可能となる。
図34は、被写体距離情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
図34は、撮像素子120からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成するが画像処理装置400の構成例を示している。
画像処理装置400は、図34に示すように、コンボリューション装置401、カーネル・数値演算係数格納レジスタ402、および画像処理演算プロセッサ403を有する。
この画像処理装置400においては、物体概略距離情報検出装置500から読み出した被写体の物体距離の概略距離に関する情報および露出情報を得た画像処理演算プロセッサ403では、その物体離位置に対して適正な演算で用いる、カーネルサイズやその演算係数をカーネル、数値算係数格納レジスタ402に格納し、その値を用いて演算するコンボリューション装置401にて適正な演算を行い、画像を復元する。
上述のように、光波面変調素子としての位相板(Wavefront Coding optical element)を備えた撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
本例においては、主被写体までの距離を、距離検出センサを含む物体概略距離情報検出装置500により検出し、検出した距離に応じて異なる画像補正の処理を行うことにように構成されている。
上記の画像処理はコンボリューション演算により行うが、これを実現するには、たとえばコンボリューション演算の演算係数を共通で1種類記憶しておき、焦点距離に応じて補正係数を予め記憶しておき、この補正係数を用いて演算係数を補正し、補正した演算係数で適性なコンボリューション演算を行う構成をとることができる。
この構成の他にも、以下の構成を採用することが可能である。
焦点距離に応じて、カーネルサイズやコンボリューションの演算係数自体を予め記憶しておき、これら記憶したカーネルサイズや演算係数でコンボリューション演算を行う構成、焦点距離に応じた演算係数を関数として予め記憶しておき、焦点距離によりこの関数より演算係数を求め、計算した演算係数でコンボリューション演算を行う構成等、を採用することが可能である。
図34の構成に対応付けると次のような構成をとることができる。
変換係数記憶手段としてのレジスタ402に被写体距離に応じて少なくとも位相板113aに起因する収差に対応した変換係数を少なくとも2以上予め記憶する。画像処理演算プロセッサ403が、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置500により生成された情報に基づき、レジスタ502から被写体までの距離に応じた変換係数を選択する係数選択手段として機能する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置501が、係数選択手段としての画像処理演算プロセッサ503で選択された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
または、前述したように、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ503が、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置500により生成された情報に基づき変換係数を演算し、レジスタ402に格納する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置401が、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ403で得られレジスタ402に格納された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
または、補正値記憶手段としてのレジスタ402にズーム光学系110のズーム位置またはズーム量に応じた少なくとも1以上の補正値を予め記憶する。この補正値には、被写体収差像のカーネルサイズを含まれる。
第2変換係数記憶手段としても機能するレジスタ402に、位相板113aに起因する収差に対応した変換係数を予め記憶する。
そして、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置500により生成された距離情報に基づき、補正値選択手段としての画像処理演算プロセッサ403が、補正値記憶手段としてのレジスタ402から被写体までの距離に応じた補正値を選択する。
変換手段としてのコンボリューション装置401が、第2変換係数記憶手段としてのレジスタ402から得られた変換係数と、補正値選択手段としての画像処理演算プロセッサ403により選択された補正値とに基づいて画像信号の変換を行う。
図35は、ズーム情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
図35は、撮像素子120からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成するが画像処理装置400Aの構成例を示している。
画像処理装置400Aは、図34と同様に、図35に示すように、コンボリューション装置401、カーネル・数値演算係数格納レジスタ402、および画像処理演算プロセッサ403を有する。
この画像処理装置400Aにおいては、ズーム情報検出装置600から読み出したズーム位置またはズーム量に関する情報および露出情報を得た画像処理演算プロセッサ403では、露出情報およびそのズーム位置に対して適正な演算で用いる、カーネルサイズやその演算係数をカーネル、数値演算係数格納レジスタ402に格納し、その値を用いて演算するコンボリューション装置401にて適正な演算を行い、画像を復元する。
上述したように、光波面変調素子としての位相板をズーム光学系に備えた撮像装置に適用する場合、ズーム光学系のズーム位置によって生成されるスポット像が異なる。このため、位相板より得られる焦点ズレ画像(スポット画像)を後段のDSP等でコンボリューション演算する際、適性な焦点合わせ画像を得るためには、ズーム位置に応じて異なるコンボリューション演算が必要となる。
そこで、本実施形態においては、ズーム情報検出装置600を設け、ズーム位置に応じて適正なコンボリューション演算を行い、ズーム位置によらず適性な焦点合わせ画像を得るように構成されている。
画像処理装置400Aにおける適正なコンボリーション演算には、コンボリューションの演算係数をレジスタ402に共通で1種類記憶しておく構成をとることができる。
この構成の他にも、以下の構成を採用することが可能である。
各ズーム位置に応じて、レジスタ402に補正係数を予め記憶しておき、この補正係数を用いて演算係数を補正し、補正した演算係数で適性なコンボリューション演算を行う構成、各ズーム位置に応じて、レジスタ402にカーネルサイズやコンボリューションの演算係数自体を予め記憶しておき、これら記憶したカーネルサイズや演算係数でコンボリューション演算行う構成、ズーム位置に応じた演算係数を関数としてレジスタ402に予め記憶しておき、ズーム位置によりこの関数より演算係数を求め、計算した演算係数でコンボリューション演算を行う構成等を採用することが可能である。
図35の構成に対応付けると次のような構成をとることができる。
変換係数記憶手段としてのレジスタ402にズーム光学系110のズーム位置またはズーム量に応じた位相板113aに起因する収差に対応した変換係数を少なくとも2以上予め記憶する。画像処理演算プロセッサ403が、ズーム情報生成手段としてのズーム情報検出装置600により生成された情報に基づき、レジスタ402からズーム光学系110のズ−ム位置またはズーム量に応じた変換係数を選択する係数選択手段として機能する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置401が、係数選択手段としての画像処理演算プロセッサ403で選択された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
または、前述したように、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ303が、ズーム情報生成手段としてのズーム情報検出装置600により生成された情報に基づき変換係数を演算し、レジスタ302に格納する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置401が、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ403で得られレジスタ402に格納された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
または、補正値記憶手段としてのレジスタ402にズーム光学系110のズーム位置またはズーム量に応じた少なくとも1以上の補正値を予め記憶する。この補正値には、被写体収差像のカーネルサイズを含まれる。
第2変換係数記憶手段としても機能するレジスタ402に、位相板113aに起因する収差に対応した変換係数を予め記憶する。
そして、ズーム情報生成手段としてのズーム情報検出装置600により生成されたズーム情報に基づき、補正値選択手段としての画像処理演算プロセッサ403が、補正値記憶手段としてのレジスタ402からズーム光学系のズーム位置またはズーム量に応じた補正値を選択する。
変換手段としてのコンボリューション装置401が、第2変換係数記憶手段としてのレジスタ402から得られた変換係数と、補正値選択手段としての画像処理演算プロセッサ403により選択された補正値とに基づいて画像信号の変換を行う。
図36に、露出情報と、物体距離情報と、ズーム情報とを用いた場合のフィルタの構成例を示す。
この例では、物体距離情報とズーム情報で2次元的な情報を形成し、露出情報が奥行きのような情報を形成している。
なお、図2や図3の光学系は一例であり、本発明は図2や図3の光学系に対して用いられるものとは限らない。また、スポット形状についても図4および図5は一例であり、本実施形態のスポット形状は、図4および図5に示すものとは限らない。
また、図26、図27、および図28のカーネルデータ格納ROMに関しても、光学倍率、Fナンバやそれぞれのカーネルのサイズ、値に対して用いられるものとは限らない。また用意するカーネルデータの数についても3個とは限らない。
図36のように3次元、さらには4次元以上とすることで格納量が多くなるが、種々の条件を考慮してより適したものを選択することができるようになる。情報としては、上述した露出情報、物体距離情報、ズーム情報等であればよい。
なお、上述のように、光波面変調素子としての位相板を備えた撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、DEOSにおいて、本実施形態における光学系保持部200の構造は、基本的に、鏡枠部210と、光波面変調素子または逆光波面変調素子を出し入れ可能なスリット状の素子出し入れ部220と、素子セット部230とを有し、以下の第一または第二の方法が採用される。
第一の方法においては、深度拡張光学系において、光波面変調素子(深度拡張作用をもたらす素子)が無い状態の光学系で、素子セット部230に光波面変調素子が退避状態で光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有することが必要となる。光波面変調を行っていない撮像光学系では、ディフォーカスにより解像性能が顕著に変化するため、解像性能の変化を目安にバックフォーカス調整、もしくは解像評価をすることが可能となる。
次に、光波面変調素子の無い状態の光学系から、鏡枠等を分解や破壊することなく、光波面変調素子を組み込む必要がある。そのために、光波面変調素子を装着するためのスリットを持つ鏡枠構造でなければならない。この二つの要素をあわせ持つことにより、位相変調素子が無い状態の光学系で性能だしを行い、性能だしが完了後に深度拡張素子を追加する形で製造工程を構築することが可能となる。
また、第二の方法においては、光波面変調機能を内包している光学系では、光波面変調を相殺する逆光波面変調素子を追加することにより、ディフォーカスによる解像性能の変化を生じさせることが可能となる。鏡枠に逆光波面変調素子が着脱可能な素子出し入れ部220および素子セット部230を有することで、逆光波面変調素子を追加した状態の光学系で性能だしを行い、性能だしが完了後に逆光波面変調素子を外すことで製造工程を構築することが可能となる。
また、本実施形態によれば、1次画像を形成する光波面変調素子を含む光学系110および撮像素子120と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置140とを含み、光学系110と撮像素子120の取り付け位置は、調整装置を用いて、光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)に係る出力信号が入力する画素数が最も多くなるように設定されていることから、撮像素子120と光波面変調素子としての位相変調素子(位相板)113aを復元に適した配置することができ、公差の緩い深度拡張光学系を実現できる。
その結果、復元画が良好となるようなボカシを実現でき、適切な画質の、ノイズの影響が小さく、良好な復元画像を得ることができる利点がある。
また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかも適切な画質の、ノイズの影響が小さい復元画像を得ることができる利点がある。
また、コンボリューション演算時に用いるカーネルサイズやその数値演算で用いられる係数を可変とし、操作部180等の入力により知り、適性となるカーネルサイズや上述した係数を対応させることにより、倍率やディフォーカス範囲を気にすることなくレンズ設計ができ、かつ精度の高いコンボリュ−ションによる画像復元が可能となる利点がある。
また、難度が高く、高価でかつ大型化した光学レンズを必要とせずに、かつ、レンズを駆動させること無く、撮影したい物体に対してピントが合い、背景はぼかすといった、いわゆる自然な画像を得ることができる利点がある。
そして、本実施形態に係る撮像装置100は、デジタルカメラやカムコーダー等の民生機器の小型、軽量、コストを考慮されたDEOSの光学システムに使用することが可能である。
また、本実施形態においては、結像レンズ112による撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる波面形成用光学素子を有する撮像レンズ系と、撮像素子120による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する画像処理装置140とを有することから、高精細な画質を得ることが可能となるという利点がある。
また、光学系110の構成を簡単化でき、製造が容易となり、コスト低減を図ることができる。
ところで、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、画素ピッチから決まる解像力限界が存在し、光学系の解像力がその限界解像力以上であるとエリアジングのような現象が発生し、最終画像に悪影響を及ぼすことは周知の事実である。
画質向上のため、可能な限りコントラストを上げることが望ましいが、そのことは高性能なレンズ系を必要とする。
しかし、上述したように、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、エリアジングが発生する。
現在、エリアジングの発生を避けるため、撮像レンズ装置では、一軸結晶系からなるローパスフィルタを併用し、エリアジングの現象の発生を避けている。
このようにローパスフィルタを併用することは、原理的に正しいが、ローパスフィルタそのものが結晶でできているため、高価であり、管理が大変である。また、光学系に使用することは光学系をより複雑にしているという不利益がある。
以上のように、時代の趨勢でますます高精細の画質が求められているにもかかわらず、高精細な画像を形成するためには、従来の撮像レンズ装置では光学系を複雑にしなければならない。複雑にすれば、製造が困難になったりし、また高価なローパスフィルタを利用したりするとコストアップにつながる。
しかし、本実施形態によれば、ローパスフィルタを用いなくとも、エリアジングの現象の発生を避けることができ、高精細な画質を得ることができる。
なお、本実施形態において、光学系の波面形成用光学素子を絞りより物体側レンズよりに配置した例を示したが、絞りと同一あるいは絞りより結像レンズ側に配置しても前記と同様の作用効果を得ることができる。
また、図2や図3の光学系は一例であり、本発明は図2や図3の光学系に対して用いられるものとは限らない。また、スポット形状についても図4および図5は一例であり、本実施形態のスポット形状は、図4および図5に示すものとは限らない。
また、図26、図27、および図28のカーネルデータ格納ROMに関しても、光学倍率、Fナンバやそれぞれのカーネルのサイズ、物体距離の値に対して用いられるものとは限らない。また用意するカーネルデータの数についても3個とは限らない。
本発明に係る撮像装置の一実施形態を示すブロック構成図である。 本実施形態に係る撮像レンズ装置の広角側のズーム光学系の構成例を模式的に示す図である。 本実施形態に係る撮像レンズ装置の望遠側のズーム光学系の構成例を模式的に示す図である。 広角側の像高中心のスポット形状を示す図である。 望遠側の像高中心のスポット形状を示す図である。 DEOSの原理を説明するための図である。 本実施形態に係る撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)は合焦点の場合(Best focus)、(C)は焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。 本実施形態に係る撮像素子により形成される1次画像のMTFについて説明するための図であって、(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。 本実施形態に係る光学系保持部の構成例を示す断面図である。 光学系保持部による光学系の構成の第一の方法を説明するための図である。 光学系保持による光学系の構成の第二の方法を説明するための図である。 基準位置と所定角度回転後のアナログPSFを示す図である。 図12のアナログPSFのA/D変換後のデジタルPSFを示す図である。 図13のデジタルPSFのMTを示す図である。 基準位置の場合のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。 45度回転後のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。 本実施形態に係る調整装置の構成例を示すブロック図である。 光学系と撮像素子の位置調整処理を説明するための図である。 本実施形態の光波面変調素子を含む光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、式で表される波面収差の形状を示す図である。 波面収差の形状と0.5λ以下の範囲を太線で表した図である。 本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を説明するための図である。 本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を具体的に説明するための図である。 一般的な従来の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。 光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。 本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。 カーネルデータROMの格納データの一例(光学倍率)を示す図である。 カーネルデータROMの格納データの他例(Fナンバ)を示す図である。 カーネルデータROMの格納データの他例(Fナンバ)を示す図である。 露出制御装置の光学系設定処理の概要を示すフローチャートである。 信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。 信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。 信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。 信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。 被写体距離情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。 ズーム情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。 露出情報と、物体距離情報と、ズーム情報とを用いた場合のフィルタの構成例を示す図である。 一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。 図37の撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)は合焦点の場合(Best focus)、(C)は焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
符号の説明
100・・・撮像装置、110・・・光学系、120・・・撮像素子、130・・・アナログフロントエンド部(AFE)、140・・・画像処理装置、150・・・カメラ信号処理部、180・・・操作部、190・・・制御装置、111・・・物体側レンズ、112・・・結像レンズ、113・・・波面形成用光学素子、113a・・・位相板(光波面変調素子)、142・・・コンボリューション演算器、143・・・カーネルデータROM、144・・・コンボリューション制御部、200・・・光学系保持部、210・・・鏡枠部、220・・・素子出し入れ部、230・・・素子セット部(素子受け部)、240・・・押さえ部材、300・・・調整装置、310・・・レンズ調整駆動部、311・・・小絞り、312・・・レンズ系(光学系)、313・・・モータドライバ、320・・・センサ(撮像素子)、330・・・AFE(アナログフロントエンド部)、340・・・RAWバッファメモリ、350・・・画像信号処理部、360・・・調整制御部、370・・・画像表示部。

Claims (18)

  1. 光波面変調素子を含む光学系と、
    前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、
    前記光学系を保持する光学系保持部と、
    前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、
    前記光学系保持部は、
    前記光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、
    前記光学系は、
    前記素子セット部に前記光波面変調素子が退避状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成されている
    撮像装置。
  2. 光波面変調素子を含む光学系と、
    前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、
    前記光学系を保持する光学系保持部と、
    前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、
    前記光学系保持部は、
    前記光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、
    前記光学系は、
    前記素子セット部に前記逆光波面変調素子を挿入状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成されている
    撮像装置。
  3. 前記光学系は、中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を含み、
    前記光学系と前記撮像素子の相対的な取り付け位置は、
    前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が最も多くなるように設定されている
    請求項1または2記載の撮像装置。
  4. 前記PSFは頂部を有し、
    前記光学系と前記撮像素子の相対的な取り付け位置は、
    前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、前記PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されている
    請求項1または2記載の撮像装置。
  5. 前記PSFは頂部を有し、
    前記光学系と前記撮像素子の相対的な取り付け位置は、
    前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、前記PSFの頂部に対する斜め側部において、当該頂部から当該斜め側部の先端部までの間の複数個所で、画素配列の斜め方向に隣接する複数の画素にまで入力するように設定されている
    請求項1または2記載の撮像装置。
  6. 前記PSFは前記頂部を通る中心線を中心に左右対称である
    請求項4または5記載の撮像装置。
  7. 前記取り付け位置は、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、基準位置のPSFに係る出力信号より多くの画素に入力するように設定されている
    請求項4から6のいずれか一に記載の撮像装置。
  8. 前記光波面変調素子と前記撮像素子とを光軸を中心に相対的に回転させて前記取り付け位置が選定されている
    請求項3から7のいずれか一に記載の撮像装置。
  9. 前記画像処理部は、撮像素子からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する
    請求項1から8のいずれか一に記載の撮像装置。
  10. 前記光波面変調素子が、物体距離に応じたOTFの変化を、光波面変調素子を持たない光学系よりも小さくする作用を持つ
    請求項3から9のいずれか一に記載の撮像装置。
  11. 前記光波面変調素子が、前記光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、位相が下記式で表される
    請求項9または10記載の撮像装置。
  12. 前記光波面変調素子を有する光学系のOTFが、前記光波面変調素子を含まない光学系の被写界深度よりも広い物体距離にわたって、前記撮像素子のナイキスト周波数まで0.1以上である
    請求項9から11のいずれか一に記載の撮像装置。
  13. 光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造装置であって、
    前記光学系保持部は、
    前記光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、
    前記素子セット部に前記光波面変調素子をセットする前に、前記素子セット部に前記光波面変調素子が退避状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整可能な調整装置を有する
    撮像装置の製造装置。
  14. 光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造装置であって、
    前記光学系保持部は、
    前記光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部を有し、
    前記素子セット部から前記逆光波面変調素子を取り外す前に、前記素子セット部に前記逆光波面変調素子を挿入状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整可能な調整装置を有する
    撮像装置の製造装置。
  15. 前記光波面変調素子と撮像素子とを光軸を中心に相対的に回転させて前記取り付け位置が選定されている
    請求項13または14記載の撮像装置の製造装置。
  16. 光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造方法であって、
    前記光学系保持部に形成された前記光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部に、前記光波面変調素子が退避状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整する第1ステップと、
    前記素子セット部に前記光波面変調素子をセットする第2ステップと
    を有する撮像装置の製造方法。
  17. 光波面変調素子を含む光学系を保持する光学系保持部を有する撮像装置の製造方法であって、
    前記光波面変調素子の変調機能を相殺する機能を有する逆光波面変調素子を前記光学系の光路に自在に挿入退避可能な素子セット部に、前記逆光波面変調素子を挿入状態で前記光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように調整する第1ステップと、
    前記素子セット部から前記逆光波面変調素子を取り外す第2ステップと
    を有する撮像装置の製造方法。
  18. 前記第2ステップにおいて、前記光波面変調素子と前記撮像素子を光軸を中心に相対的に回転させて前記取り付け位置を調整する
    請求項16記載の撮像装置の製造方法。
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