[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、本発明を適用した通信端末装置を車両等の移動体に各々搭載し、複数の通信端末装置の間で通信情報としてパケットをブロードキャストによって交換することにより無線通信を行う場合について説明する。なお、本実施の形態では、周期的に情報を送信して他の通信端末装置と通信を行う通信方式の例としてTDMA方式を採用した通信端末装置について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る通信端末装置10には、受信アンテナ11を介して他の通信端末装置が送信したパケットを受信する受信回路12が設けられている。受信回路12は、パケット検出部13に接続されている。
パケット検出部13は、受信したパケットがどのスロットを用いて送信されてきたのかを検出する。パケット検出部13は、パケット復調部14とフレーム情報生成部15とに接続されている。
パケット復調部14は、受信したパケットから送信されてきたデータを復調する。また、フレーム情報生成部15は、パケット検出部13でパケットを検出したスロットの使用状態とパケット復調部14によるパケットの復調の成否に基づいて、送信パケットに埋め込むフレーム情報を生成する。パケット復調部14及びフレーム情報生成部15は、情報蓄積部16に接続されている。
情報蓄積部16は、パケット復調部14により復調されたデータに含まれるフレーム情報とフレーム情報生成部15により生成されたフレーム情報とを所定フレーム分蓄積する。なお、詳細は後述するが、パケット復調部14により復調されたデータに含まれるフレーム情報は周辺通信端末装置において生成されたフレーム情報であり、フレーム情報生成部15により生成されたフレーム情報は、自身の通信端末装置10において生成されたフレーム情報である。情報蓄積部16は、送信周期決定部17に接続されている。
送信周期決定部17は、情報蓄積部16に蓄積された各種情報、車速センサ(図示せず)からの移動体の速度、及び規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離(例えば、5m)に基づいて、パケットを送信するスロットである送信スロット及び上記の移動距離を移動体が走行する間に少なくとも1つのパケットを送信するような送信周期を決定する。送信周期決定部17及びフレーム情報生成部15は、パケット生成部18に接続されている。また、送信周期決定部17は送信タイミング制御部19に接続されている。
パケット生成部18は、パケットを生成し、送信タイミング制御部19は、パケットの送信タイミングを制御する。パケット生成部18及び送信タイミング制御部19は、送信回路20に接続されている。
送信回路20は、送信アンテナ21を介してパケットを送信する。
図2には、本実施の形態に係る通信端末装置10によって送受信されるパケットのデータ構造が示されている。
本実施の形態に係る通信端末装置10では、フレームが周期的に繰り返されており、各フレームは、各々n個(本実施の形態では4個)の期間に分割された各スロットにより構成されている。この1つのスロットは、1パケットを送信できる期間を示すものである。通信端末装置10では、このスロットの単位でパケットをやりとりする。なお、1フレームの周期は各通信端末装置のデータ送信の基本周期に合わせて設定するとよい。例えば、各通信端末の基本周期が100msである場合、1フレームの周期を100msに設定すると良い。本実施の形態に係る通信端末装置10では、フレームの周期は100msとされているものとする。
また、本実施の形態に係る通信端末装置10は、パケットを送信する送信周期をフレームの2のべき乗倍の周期の何れかにすることができるものとされており、本実施の形態では、送信周期をフレームの1倍(基本周期、例えば、0.1sec)、2倍(2倍周期、例えば、0.2sec)、4倍(4倍周期、例えば、0.4sec)、8倍(8倍周期、例えば、0.8sec)、16倍(16倍周期、例えば、1.6sec)の5つの何れかにすることができるものとされている。
パケットは、ヘッダ情報と、当該パケットを送信した通信端末装置での1フレーム中のスロットの使用状態を示すフレーム情報と、パケットが送信される周期を示す送信周期情報と、送信対象となる実データが含まれるデータ領域と、スロットの同期ずれの影響を軽減するためのガードタイムとを有している。なお、本発明ではスロットの同期方法に関しては限定しないが、例えば同期のための基準局を設ける等の何らかの手段によってガードタイムで補償できる程度の同期はとれているものとする。
フレーム情報には、スロット数分の領域が設けられ、各領域に各スロットにおける受信状況、例えば、各スロットの使用状態を示す値が設定される。本実施の形態に係るフレーム情報は、4個のスロットに対応して4個の領域[S1、S2、・・・、S4]が設けられている。フレーム情報の各領域には、”FREE”(空き)、”ACK”(受信成功)、”NACK”(受信失敗)、及び”RTC”(衝突発生)の何れかを示す値がフレーム情報生成部15により設定される。
”FREE”は、対象となるスロットにおいて、パケットが検出されなかったことを示す。”ACK”は、対象となるスロットにおいて、パケットが正しく受信されたこと、すなわち、パケットが検出されかつデータの復元が成功したことを示す。”NACK”は、対象となるスロットにおいて、パケットの受信が失敗したこと、すなわち、パケットが検出されたもののデータの復元が失敗したことを示す。”RTC”は、対象となるスロットにおいて、周辺通信端末装置からのパケットの衝突が発生したことを示す。
なお、フレーム情報の各領域は、2ビットの領域とされており、”FREE”の場合、”00”が設定され、”ACK”の場合、”01”が設定され、”NACK”の場合、”10”が設定され、”RTC”の場合、”11”が設定される。
また、本実施の形態に係る送信周期情報は、3ビットの領域とされており、パケットを送信する周期がフレームの1倍の場合、”000”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの2倍の場合、”001”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの4倍の場合、”010”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの8倍の場合、”011”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの16倍の場合、”100”が設定される。
次に、他の通信端末装置(周辺通信端末装置)とパケットを交換して無線通信を行なう際の本実施の形態に係る通信端末装置10の作用を説明する。
通信端末装置10は、他の通信端末装置から送信されたパケットを受信すると、次のように動作する。
パケット検出部13は、受信回路12で受信されたパケットの受信時刻等をもとに、どのスロットでパケットが送信されたかを検出する。パケット復調部14は、検出されたパケットを復調して他の通信端末装置から送られてきたデータを復元する。
フレーム情報生成部15は、受信した直近1フレーム分の各スロット毎に、パケット検出部13においてパケットが検出されなかったスロットについては”FREE”、パケット検出部13においてパケットが検出され、かつパケット復調部14においてパケットの復調が成功したスロットについては”ACK”、パケット検出部13においてパケットが検出され、かつパケット復調部14においてパケットの復調が失敗したスロットについては”NACK”、及びパケット検出部13においてパケットの衝突を検出したスロットについては”RTC”としたフレーム情報を生成する。
情報蓄積部16は、フレーム情報生成部15によって、パケット復調部14により復調されたデータから当該データに含まれる他の通信端末装置のフレーム情報[S1、S2、・・・、S4]を取り出し、取り出したフレーム情報を他の通信端末装置により生成されたフレーム情報(他端末フレーム情報)として、受信されたスロットを示す情報を付して、新しいものから順に所定フレーム分をそれぞれ蓄積する。また、情報蓄積部16は、フレーム情報生成部15により生成されたフレーム情報を自身の通信端末装置10のフレーム情報(自端末フレーム情報)として、新しいものから順に上記所定フレーム分を蓄積する。なお、本実施の形態に係る通信端末装置10では、最も長い送信周期がフレームの16倍の周期であるため、情報蓄積部16は、16フレーム分のデータをそれぞれ蓄積するものとする。
送信周期決定部17は、情報蓄積部16に蓄積された上記所定フレーム分の他端末フレーム情報、及び自端末フレーム情報に基づいて、パケットの送信に使用するスロット及びパケットの送信周期を決定する。
具体的には、送信周期決定部17は、情報蓄積部16に蓄積された上記所定フレーム分の他端末フレーム情報及び自端末フレーム情報に基づいて次のように決定する。
まず、送信周期決定部17は、各スロット毎に、上記所定フレーム分の他端末フレーム情報及び自端末フレーム情報によりそれぞれ示される当該スロットの使用状態を判断し、使用状態の少なくとも1つが”ACK”、”NACK”、もしくは”RTC”を示すスロットに関しては、そのスロットは他の通信端末装置に使用されているものと判断して当該スロットの使用を禁止し、使用状態のすべてにおいて”FREE”を示すスロットに関しては、そのスロットは空きスロット(いずれの通信端末装置も使用していないスロット)であると判断する。そして、送信周期決定部17は、空きスロットをパケットの送信で使用する送信スロットとして決定する。また、送信周期決定部17は、1フレームの周期をパケット送信の基本周期と決定する。なお、本実施の形態に係る送信周期決定部17は、空きスロットが複数ある場合、例えば、1フレーム内でのタイミングの早いものから順に使用するものとするが、これに限らず、例えば、ランダムに、あるいは1フレーム内でのタイミングの遅いものから順に使用するものとすることもできる。
パケット生成部18は、送信データを送信するために、送信周期決定部17により決定されたパケットの送信周期を示す周期情報及びフレーム情報生成部15で生成されたフレーム情報を埋め込んだパケットを生成する。送信タイミング制御部19は、送信周期決定部17で決定された送信スロットとなるタイミングでパケットを送信するように送信回路20を制御する。送信回路20は、パケット生成部18で生成されたパケットを送信タイミング制御部19からの制御に従って、送信アンテナ21を介して送信する。
また、送信周期決定部17は、送信アンテナ21によりパケットの送信が開始されると、次のフレーム以降、フレーム毎に、データを送信するための送信スロット及び送信周期について次の決定を行なう。
まず、送信スロットの決定については、以下のようにして決定を行う。
送信周期決定部17は、情報蓄積部16に蓄積されている直近1フレームの他端末フレーム情報において、送信スロットの使用状態が”ACK”あるいは”NACK”を示すものが1つでも存在した場合、当該送信スロットは本通信端末装置10が予約したものと判断し、次のフレームでも同一のスロットを送信スロットとして決定する。また、送信周期決定部17は、情報蓄積部16に蓄積されている直近1フレームの他端末フレーム情報において、送信スロットの使用状態が”RTC”を示すものが1つでもあった場合、他の通信端末装置から送信されたパケットとの衝突が発生したものと判断し、次のフレームでは別の空きスロットを新たな送信スロットと決定する。
次に、データを送信するための送信周期の決定について説明する。
図3は、送信周期決定部17によって実行される送信周期を決定するための送信周期決定処理ルーチンのフローチャートを示す図であり、図4は送信周期決定処理ルーチンを実行する送信周期決定部17を機能ブロックで表した図である。
図4に示すように、送信周期決定処理ルーチンを実行する送信周期決定部17を機能ブロックで表すと、送信周期の上限値を計算する送信周期上限値計算部30、通信状況(例えば、スロット使用率もしくは通信帯域の使用状況)を計算する通信状況計算部32、及び送信データを送信するための送信周期を決定する送信周期決定部34で表すことができる。
図3に示す送信周期決定処理ルーチンは、送信アンテナ21によりパケットの送信が開始されると、次のフレーム以降、1フレームの周期毎に実行される。
まず、ステップ100では、送信周期の上限値を計算する。例えば、ステップ100では、図5(A)のグラフに示すように、規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離を用いて、本通信端末装置10を搭載した移動体が移動距離を走行する間に少なくとも1つのパケットを送信するために必要な送信周期を下記の式(1)によって計算する。なお、本実施の形態では、移動距離の最大値を5mと定めた例について説明する。
ただし、式(1)中のaは移動距離の最大値で、この場合はa=5[m]としており、Xは移動体の速度であり、Yは送信周期である。そして、本実施の形態においては、送信周期は、0.1sec(基本周期)、0.2sec(2倍周期)、0.4sec(4倍周期)、0.8sec(8倍周期)、及び1.6sec(16倍周期)の何れかであるので、図5(A)のグラフが示す送信周期Yを超えない、図5(B)に示す離散的なグラフによって、移動体の速度Xから送信周期の上限値を計算する。例えば、図示されるように、移動体の速度Xが25m/sの場合には、送信周期の上限値の計算結果が0.2secとなり、移動体の速度Xが10m/sの場合には、送信周期の上限値の計算結果が0.4secとなる。
なお、図5(B)に示す送信周期の上限値を表すグラフは、同図に図示するように、チャタリングの防止のために、速度v1〜v2の間、速度v3〜v4の間、速度v5〜v6の間、速度v7〜v8の間では移動体の速度Xに対してヒステリシス特性を有している。なお、詳細は後述するが、スロット使用率もしくは通信帯域の使用状況と決定される送信周期との関係において、スロット使用率もしくは通信帯域の使用状況に対してもヒステリシス特性を有している。
次のステップ102では、各フレームにおける通信状況を計算する。このとき、各フレームにおける通信状況を観測する観測エリアとして、自身の通信端末装置10及び自身の通信端末装置10が通信可能な周辺通信端末装置を含み、周辺通信端末装置が通信可能であって自身の通信端末装置10が通信可能でない隠れ端末を含まないエリアを観測エリアとする場合が考えられるので、本実施の形態では、この場合について、図6を用いて説明する。
この場合の観測エリアとしては、例えば、図6(A)に示すように、自身の通信端末装置A(本通信端末装置10)が通信可能な周辺通信端末装置B、C、Dを含み、周辺通信端末装置Bが通信可能であって通信端末装置Aが通信可能でない隠れ端末である通信端末装置E、及び自身の通信端末装置Aが通信可能でなく周辺通信端末装置B、C、Dも通信可能でない通信端末装置Fを含まない観測エリア61が考えられるので、この観測エリア61を例として、以下、説明をする。
図6(B)に示すように、時刻t0から時刻t1までの1フレームにおいて、スロット1〜4のうち、通信端末装置Bと通信端末装置Cとがスロット1を用いて通信を行い、通信端末装置Aと通信端末装置Dとがスロット3を用いて通信を行った場合、通信端末装置Aにおいて、時刻t1で以下のようなフレーム情報が生成される。すなわち、通信端末装置Aは、スロット1のときに、通信端末装置Bからのパケットと通信端末装置Cからのパケットとが衝突したことを検出し、スロット3のときに通信端末装置Dからのパケットがデータが復調可能なように受信すると、図6(C)に示すように、領域S1には”RTC”、領域S2及び領域S4には”FREE”、領域S3には”ACK”が各々関連付けられて設定されたフレーム情報を生成する。
そして、生成されたフレーム情報の各領域が示す受信状況から、通信状況として、例えば、フレームの各々の総スロット数に対する使用されているスロット数の割合であるスロット使用率を下記の式(2)によって計算する。
本実施の形態の場合、総スロットの数は”4”であり、”FREEの数”は”2”であるので、(4−2)/4=0.5となり、スロット使用率は50%となる。
なお、上記では通信状況としてスロット使用率を計算する例について説明したが、生成されたフレーム情報の各領域が示す受信状況から、通信状況として通信帯域の使用状況を下記の式(3)によって計算してもよい。
ここで、αは、同じスロットを用いてパケットを送信したことによりパケットの衝突が発生した通信端末装置の台数である。本実施の形態の場合、総スロットの数は”4”であり、”RTC”の数は”1”であり、”ACK”の数は”1”であり、”NACK”の数は”0”であり、また、通信端末装置Bと通信端末装置Cが同じスロット3を用いてパケットの衝突が発生したためαは”2”であるので、(1×2+1+0)/4=0.75となり、通信帯域の使用状況は75%となる。
次のステップ104では、ステップ102で計算したスロット使用率もしくは通信帯域の使用状況に基づいて、新たな送信周期を計算する。例えば、ステップ104では、ステップ102でスロット使用率を計算した場合には、計算したスロット使用率が、所定の値、例えば、40%を超えたときには、現在の送信周期より長くなるように新たな送信周期を計算し、例えば、現在の送信周期の2倍の周期を新たな送信周期として計算し、40%未満のときには、現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算する。また、ステップ102で通信帯域の使用状況を計算した場合には、計算した通信帯域の使用状況が、所定の値、例えば、50%を超えたときには通信トラヒックを抑えるために、現在の送信周期より長くなるように新たな送信周期を計算し、例えば、現在の送信周期の2倍の周期を新たな送信周期として計算し、50%未満のときには、現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算する。
なお、ステップ104における新たな送信周期の計算方法は、上記で説明したものに限られず、他の方法を用いて、スロット使用率もしくは通信帯域の使用状況に基づいて、送信周期を計算するようにしてもよい。例えば、ステップ104において、ステップ102で通信帯域の使用状況を計算した場合には、計算した通信帯域の使用状況が、上記の所定の値とは別の所定の値、例えば30%未満の場合には、現在の送信周期より短くなるように新たな送信周期を計算し、30%以上の場合には現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算してもよい。
次のステップ106では、ステップ104で計算された送信周期が、ステップ100で計算された送信周期の上限値を超えているか否か判定を行う。
ステップ106で、肯定判定がされた場合、次のステップ108で、ステップ100で計算された送信周期の上限値を送信データを送信するための送信周期として決定する。一方、ステップ106で、否定判定がされた場合、次のステップ110で、ステップ104で計算された送信周期を送信データを送信するための送信周期として決定する。例えば、ステップ100で計算された送信周期の上限値が0.2sec(2倍周期)であって、ステップ104で計算された周期が2倍周期を超えた0.4sec(4倍周期)である場合、ステップ106では、肯定判定がされて、データを送信するための送信周期を0.2secと決定する。
なお、本送信周期決定処理ルーチンのステップ100は、送信周期上限値計算部30で実行され、ステップ102は、通信状況計算部32で実行され、ステップ104〜ステップ110は、送信周期計算部34で実行される。
図7は、本実施の形態において、送信周期決定部17によって決定される送信周期と、移動体の速度及び通信状況との関係を表した図である。図示されるように、X軸は移動体の速度、Y軸は通信状況、Z軸は送信周期を示している。なお、ここでは、通信状況の例として、スロット使用率ξを用いている。図示されるように、例えば、移動体の速度が20m/sの場合には、データを送信するための送信周期として、スロット使用率ξに応じて、0.1sec(基本周期)もしくは0.2sec(第2周期)が決定されるが、0.4sec(第3周期)以上の周期は、送信周期として決定されない。このように、移動体の速度及び通信状況によって、送信周期を調整して通信トラヒックを抑えつつ上限値を超えないように、データを送信するための送信周期が決定される。
また、同図に図示されるように、チャタリングの防止のために、移動体の速度Xに対してまたはスロット使用率ξに対してヒステリシス特性を有している。なお、本実施の形態では、決定される送信周期と通信帯域の使用状況との関係において、通信帯域の使用状況についてもヒステリシス特性を有している。
以上、説明したように、本実施の形態の発明に係る通信端末装置10によれば、決定手段としての送信周期決定部17が、受信手段としての受信回路12によりパケットを受信したときの受信状況に基づいて、規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離aと移動体の速度Xとに基づいて定まる送信周期の上限値を超えないように送信周期を決定するので、各通信端末装置間で要求パケット、情報パケット、及び応答パケット等を交換することなく、簡易な制御で、かつ、所定間隔の間に少なくとも1つのパケットを送信することができる。
また、本実施の形態の発明に係る通信端末装置10によれば、自身の通信端末装置10が通信可能な周辺通信端末装置B、C、Dからのパケットの受信状況に基づいて送信周期を決定することにより、自身の通信端末装置10の送信周期を決定するために自身の受信状況を観測するときのエリアが、自身の通信端末装置10と自身の通信端末装置10が通信可能な周辺端末装置B、C、Dとを含み、周辺端末装置が通信可能であって自身の通信端末装置が通信可能でない隠れ端末Eを含まないエリアとすることができるので、他のエリアの状況を考慮せずに簡易に送信周期を決定することができる。
また、本実施の形態の発明に係る通信端末装置10によれば、送信周期決定処理ルーチンのステップ102で、通信状況として、フレームの各々の総スロット数に対する使用されているスロット数の割合であるスロット使用率を計算した場合には、ステップ104で、例えば、スロット使用率が高くなるほど新たな送信周期が長くなるように、決定手段としての送信周期決定部17が新たな送信周期を計算することにより、ステップ108もしくはステップ110で、通信トラヒックを抑えつつ、空きスロットが多くなるように送信周期を決定することができる。
また、本実施の形態の発明に係る通信端末装置10によれば、送信周期決定処理ルーチンのステップ102で、通信状況として、フレームの各々における通信トラヒック状況である通信帯域の使用率を計算した場合には、ステップ104で、例えば、フレームの1周期内に発生している通信トラヒック量に応じて、決定手段としての送信周期決定部17が新たな送信周期を計算することができ、ステップ108もしくはステップ110で、例えば、フレームの1周期内のトラヒックを収容できるように送信周期を決定することができ、その結果、通信トラヒックが抑えられる。
なお、本実施の形態において、通信状況として通信帯域の使用状況を上記の式(3)によって計算する例について説明したが、本発明は通信帯域の使用状況の計算についてこのような上記の式(3)によって行われる計算に限定されるものではなく、例えば、パケット復調部14と送信周期決定部17の通信状況計算部32とが接続され、パケット復調部14は、受信したパケットから送信されてきたデータを復調すると共に、パケットの受信電力を検出するようにして、通信状況計算部32が、下記の式(4)によって通信帯域の使用状況として、1フレーム内で想定する受信電力の総和に対する1フレーム内で受信したパケットの受信電力の総和の割合を計算するようにしてもよい。
なお、図8に示すように、Pk(k=1、2、・・・、n)は1フレーム中に受信したn個のパケットのうちkパケット目のパケットの受信電力であり、PHはパケットの受信電力の最大値であり、PLはパケットの受信電力の最小値であり、TFは1フレームの送信周期であり、TPは1パケットあたりの受信時間である。上記の式(4)の分母は想定する受信電力の総和を示し、分子は受信したパケットの受信電力の総和を示す。
上記の式(4)によって計算された通信帯域の使用状況が大きいほど、受信電力の大きいパケットがたくさん観測されており、通信帯域がよく使用されている状況であることを示し、計算された通信帯域の使用状況が小さいほど、受信電力の大きいパケットがあまり観測されず、通信帯域はあまり使用されていない状況であることを示す。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る通信端末装置40について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び同様の処理については、同一符号を付して、説明を省略する。
本実施の形態において、第1の実施の形態と異なる点は、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、第1の実施の形態では、通信端末10の送信周期決定部17が、自身の通信端末装置10及び自身の通信端末装置10が通信可能な周辺通信端末装置を含み、周辺通信端末装置が通信可能であって自身の通信端末装置10が通信可能でない隠れ端末を含まないエリアを観測エリアとして観測する例について説明したが、本実施の形態では、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、図9に示す通信端末40の送信周期決定部41が、自身の通信端末装置40、周辺端末装置、及び自身の通信端末装置40に対して隠れ端末となる通信端末装置を含むエリアを観測エリアとして観測する点が異なる。
この場合の観測エリアとしては、例えば、図10(A)に示すように、自身の通信端末装置A(通信端末装置40)が通信可能な周辺通信端末装置B、C、Dを含み、通信端末装置Aが通信可能でない隠れ端末である通信端末装置Eをも含み、通信端末装置Aが通信可能でなく隠れ端末でもない通信端末装置Fを含まない観測エリア71が考えられるので、この観測エリア71を例として、以下、説明をする。なお、同図に図示するように、通信端末Aが通信可能な通信エリア72には、通信端末装置B、C、Dが含まれ、通信端末装置Bが通信可能な通信エリア73には、通信端末装置A、Eが含まれ、通信端末装置Cが通信可能な通信エリア74には、通信端末装置A、Dが含まれ、通信端末装置Dが通信可能な通信エリア75には、通信端末装置A、Cが含まれる。
図10(B)に示すように、時刻t0から時刻t1までの1フレームにおいて、スロット1〜4のうち、通信端末装置Bと通信端末装置Cと通信端末装置Fとがスロット1を用いて通信を行い、通信端末装置Aと通信端末装置Dとがスロット3を用いて通信を行い、通信端末装置Eがスロット4を用いて通信を行った場合、通信端末装置B、C、Dの各々において、時刻t1で以下のようなフレーム情報が生成される。すなわち、通信端末装置Bは、スロット3のときに、通信端末装置Aからのパケットが、データが復調可能なように受信し、スロット4のときに、通信端末装置Eからのパケットが、データが復調できないように受信すると、図10(C)に示すように、領域S1及び領域S2には”FREE”、領域S3には”ACK”、領域S4には”NACK”が各々関連付けられて設定されたフレーム情報を生成する。また、通信端末装置Cは、スロット3のときに、通信端末装置Aからのパケットと通信端末装置Dからのパケットとが衝突したことを検出すると、図10(C)に示すように、領域S1、領域S2、及び領域S4には”FREE”、領域S3には”RTC”が各々関連付けられて設定されたフレーム情報を生成する。また、通信端末装置Dは、スロット1のときに、通信端末装置Cからのパケットが、データが復調可能なように受信し、スロット3のときに、通信端末装置Aからのパケットが、データが復調可能なように受信すると、図10(C)に示すように、領域S1及び領域S3には”ACK”、領域S2及びS4には”FREE”が各々関連付けられて設定されたフレーム情報を生成する。
そして、通信端末装置B、C、D(周辺通信端末装置)の各々が生成したフレーム情報を含んだパケットを時刻t1から時刻t2の間に、通信端末装置Aが受け取ると、第1の実施の形態において説明した送信周期決定処理ルーチンのステップ102で、通信端末装置Aの送信周期決定部41は、各々のパケットから復調され取り出されたフレーム情報(他端末フレーム情報)に基づいて、観測エリア71における周辺通信端末装置B、C、Dの受信状況を示す情報を作成する。
図11は、本実施の形態の送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、送信周期決定部41が実行する、周辺通信端末B、C、Dから得た受信状況に基づく、観測エリア71における受信状況情報作成処理ルーチンのフローチャートを示す図である。なお、本実施の形態では、図10(D)に示すように、観測エリア71の受信状況を示す情報77は、フレームの各スロット1〜4に対応する各領域S1〜S4の各々に”FREE”、”ACK”、”NACK”及び”RTC”の何れか1つが関連付けられて設定されるものであるとする。
まず、ステップ200では、受信したパケットの各々から復調され取り出された他端末フレーム情報の各々の各領域S1〜S4が示す受信状況を調べ、”RTC”が設定されている領域があるか否かを判定する。
ステップ200で否定判定がされた場合は、次のステップ204に進み、肯定判定がされた場合は、次のステップ202で、”RTC”が設定されている領域に対応するスロットは観測エリア71においてパケットの衝突が発生していると判断し、パケットの衝突を示す”RTC”とパケットの衝突が発生していると判断したスロットに対応する領域とを関連付けて、観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ202では、例えば、図10(C)に示すような通信端末装置Cが生成したフレーム情報がパケットから復調され取り出された場合では、領域S3で”RTC”が設定されているので、図10(D)に示すように、”RTC”とスロット3に対応する領域S3とを関連付けて観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ204では、受信したパケットの各々から復調され取り出されたフレーム情報の各々の各領域S1〜S4が示す受信状況を調べ、”NACK”が設定されている領域があるか否かを判定する。
ステップ204で否定判定がされた場合は次のステップ208へ進み、肯定判定がされた場合は、次のステップ206で、”NACK”が設定されている領域に対応するスロットは観測エリア71において何れかの周辺通信端末装置において、他端末からのパケットが検出されたもののデータの復調には失敗したと判断し、受信の失敗を示す”NACK”と受信が失敗したと判断したスロットに対応する領域とを関連付けて、観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ206では、例えば、図10(C)に示すような端末Bが生成したフレーム情報がパケットから復調され取り出された場合では、領域S4で”NACK”が設定されているので、図10(D)に示すように、”NACK”とスロット4に対応する領域S4とを関連付けて観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ208では、受信したパケットの各々から復調され取り出されたフレーム情報の各々の各領域S1〜S4が示す受信状況を調べ、”ACK”が設定されている領域があるか否かを判定する。
ステップ208で否定判定がされた場合は次のステップ212へ進み、肯定判定がされた場合は、次のステップ210で、”ACK”が設定されている領域に対応するスロットは観測エリア71において何れかの周辺通信端末装置において、他端末からのパケットが検出されデータの復調に成功したと判断し、受信の成功を示す”ACK”と受信が成功したと判断したスロットに対応する領域とを関連付けて、観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ210では、例えば、図10(C)に示すような端末Dが生成したフレーム情報がパケットから復調され取り出された場合では、領域S1で”ACK”が設定されているので、図10(D)に示すように、”ACK”とスロット1に対応する領域S1とを関連付けて観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ212では、観測エリア71の受信状況を示す情報77の空いている領域に対応するスロットは観測エリア71において、全ての周辺通信端末装置において、他端末からパケットが送信されなかったと判断し、空きを示す”FREE”と、対応する領域とを関連付けて、観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
ステップ212では、例えば、図10(C)に示すような端末B、C、Dが生成したフレーム情報の各々がパケットから復調され取り出された場合では、全てのフレーム情報の領域S2で”FREE”が設定されているので、図10(D)に示すように、”FREE”とスロット2に対応する領域S2とを関連付けて観測エリア71の受信状況を示す情報77に設定する。
以上、説明したように、通信状況情報作成処理ルーチンを送信周期決定部17が実行することにより、観測エリア71の受信状況を示す情報77が作成できる。
そして、この受信状況を示す情報77の各領域が示す状態から、通信状況としてスロット使用率を上記の式(2)によって計算する以降の処理、通信状況として通信帯域の使用状況を上記の式(3)によって計算する以降の処理、もしくは、通信状況として通信帯域の使用状況を上記の式(4)によって計算する以降の処理については、第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
以上、説明したように、本実施の形態に係る発明の通信端末装置40によれば、決定手段としての送信周期決定部41が、受信手段としての受信回路12により受信されたパケットに含まれる受信状況を示すデータに基づいて、規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離と移動体の速度とに基づいて定まる送信周期の上限値、または移動体の位置に応じて予め定められた送信周期の上限値を超えないように送信周期を決定するので、各通信端末装置間で要求パケット、情報パケット、及び応答パケット等を交換することなく、簡易な制御で、かつ、所定間隔の間に少なくとも1つのパケットを送信することができる。
また、本実施の形態に係る発明の通信端末装置40によれば、周辺通信端末装置B、C、Dの受信状況に基づいて送信周期を決定することにより、自身の通信端末装置40の送信周期を決定するために受信状況を観測するときのエリアが、自身の通信端末装置40と自身の通信端末装置40が通信可能な周辺端末装置B、C、Dとを含み、周辺端末装置B、C、Dが通信可能であって自身の通信端末装置40が通信可能でない隠れ端末Eをも含むエリアとすることができるので、隠れ端末Eの存在等を考慮して送信周期を決定することができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る通信端末装置50について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成及び同様の処理については、同一符号を付して、説明を省略する。
第1の実施の形態では、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、通信端末10の送信周期決定部17が、自身の通信端末装置10、及び自身の通信端末装置10が通信可能な周辺通信端末装置のみを含むエリアを観測する例について説明した。また、第2の実施の形態では、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、図9に示す通信端末40の送信周期決定部41が、自身の通信端末装置40、周辺端末装置、及び自身の通信端末装置40に対して隠れ端末となる通信端末装置を含むエリアを観測する例について説明した。
本実施の形態では、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、図12に示す通信装置端末50の送信周期決定部51が、自身の通信端末装置50、及び自身の通信端末装置50が通信可能な周辺通信端末装置を含み、自身の通信端末装置50にとって隠れ端末となる通信端末装置を含まないエリアを観測エリアとするのか、それとも、自身の通信端末装置50、周辺端末装置、及び自身の通信端末装置50に対して隠れ端末となる通信端末装置を含むエリアを観測エリアとするのかを車速センサ(図示せず)からの移動体の速度に応じて選択し、選択に基づいて第1の実施形態もしくは第2の実施形態と同様に観測を行う点が異なる。
具体的には、移動体の速度が所定値、例えば30km/h以上であった場合には、広域のエリアを観測する必要があるため、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、送信周期決定部51は、第2の実施形態と同様に自身の通信端末装置50、周辺端末装置B、C、D、及び自身の通信端末装置50に対して隠れ端末となる通信端末装置Eを含むエリアを観測することを決定し、第2の実施形態と同様の処理を行う。一方、移動体の速度が所定値、例えば30km/h未満であった場合は、広域のエリアを観測する必要がないため、送信周期決定処理ルーチンのステップ102において、第1の実施の形態と同様に自身の通信端末装置50、及び自身の通信端末装置50が通信可能な周辺通信端末装置B、C、Dを含み、隠れ端末Eを含まないエリアを観測することを決定し、第1の実施形態と同様の処理を行う。
これにより、例えば、通信端末装置50が搭載された移動体の速度が所定値未満、例えば、30km/h未満などの遅い場合には、広域のエリアの通信状況を観測する必要がないため、通信状況を観測するエリアが、自身の通信端末装置50、及び自身の通信端末装置50が通信可能な周辺通信端末装置B、C、Dを含み、隠れ端末である通信端末装置Eを含まないエリアとなり、他のエリアを考慮せずに簡易に、送信周期を決定することがでる。また、移動体の速度が所定値以上、例えば、30km/h以上の速い場合には、広域のエリアの通信状況を観測する必要があるため、自身の通信端末装置50からみて隠れ端末となる通信端末装置Eの状況等を考慮して送信周期を決定することができる。従って、本実施の形態の発明に係る通信端末装置50によれば、移動体の速度に応じて適切に送信周期を決定することができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る通信端末装置80について説明する。なお、第1の実施の形態、第2の実施の形態、及び第3の実施の形態(以下、第1の実施の形態等と呼ぶ)と同様の構成及び同様の処理については、同一符号を付して、説明を省略する。
第1の実施の形態等では、送信周期決定処理ルーチンのステップ100において、通信端末10の送信周期決定部17の送信周期上限値決定部30等が、移動距離の最大値aや移動体の速度Xを用いて、上記で説明したグラフ(B)により、送信周期の上限値を計算する例について説明した。本実施の形態において、第1の実施の形態等と異なる点は、送信周期決定処理ルーチンのステップ100において、図13及び図14に示す通信端末装置80の送信周期決定部81の送信周期上限値84が計算した送信周期の上限値を、ナビゲーション装置83からの位置情報と共に関連付けて過去の履歴としてHDD(ハード ディスク ドライブ)82等の記憶装置に記憶しておき、送信周期決定処理ルーチンのステップ100で、送信周期上限値計算部84が送信周期の上限値を計算するのではなく、ナビゲーション装置83からの現在の位置情報をキーとして、そのキーに対応する過去に計算された送信周期の上限値をHDD82から読み取る点が異なる。
本実施の形態の発明に係る通信端末装置80によれば、車速センサが故障した場合に、移動体の速度の情報が入手できないときであっても、現在の位置情報をキーとしてHDD82から送信周期の上限値を読み取り、読み取った送信周期の上限値を用いて送信周期決定部81の送信周期計算部34が送信周期を決定することができる。すなわち、本実施の形態の発明に係る通信端末装置80によれば、移動体の位置に応じて予め定められた送信周期の上限値を用いて送信周期を決定することができる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る通信端末装置90について説明する。なお、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態、及び第4の実施の形態(以下、第1の実施の形態等と呼ぶ)と同様の構成及び同様の処理については、同一符号を付して、説明を省略する。
第1の実施の形態等では、通信端末10がTDMA方式によって周期的に情報を送信して他の通信端末装置と通信を行う例について説明したが、本実施の形態において、第1の実施の形態等と異なる点は、通信端末装置90が、CSMA方式によって周期的に情報を送信して他の通信端末装置と通信を行う点が異なる。
図15に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る通信端末装置90には、受信アンテナ11を介して他の通信端末装置が送信したパケットを受信する受信回路12が設けられている。受信回路12は、パケット検出部85に接続されている。
パケット検出部85は、受信したパケットを検出する。パケット検出部85は、パケット復調部86に接続されている。
パケット復調部86は、受信したパケットから送信されてきたデータを復調すると共に、パケットの受信電力を検出する。パケット復調部86は、情報蓄積部87に接続されている。
情報蓄積部87は、パケット復調部86により復調されたデータとパケット復調部86により検出されたパケットの受信電力の値とを所定フレーム分蓄積する。情報蓄積部87は、送信周期決定部88に接続されている。
送信周期決定部88は、情報蓄積部87に蓄積された各種情報、車速センサ(図示せず)からの移動体の速度、及び規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離(例えば、5m)に基づいて、上記の移動距離を移動体が走行する間に少なくとも1つのパケットを送信するような送信周期を決定する。送信周期決定部88は、パケット生成部89に接続されている。また、送信周期決定部88は送信タイミング制御部91に接続されている。
パケット生成部89は、パケットを生成し、送信タイミング制御部91は、パケットの送信タイミングを制御する。パケット生成部89及び送信タイミング制御部91は、送信回路92に接続されている。
送信回路92は、送信アンテナ21を介してパケットを送信する。
図16には、本実施の形態に係る通信端末装置90によって送受信されるパケットのデータ構造が示されている。
本実施の形態に係る通信端末装置90では、送信周期としてのフレームが周期的に繰り返されている。本実施形態の通信端末装置90は、周辺通信端末装置によってパケットが送信されていない期間をフレーム毎に検出し、検出した期間においてパケットを送信する。なお、1フレームは各通信端末装置のデータ送信の基本周期に合わせて設定するとよい。例えば、各通信端末装置が100msに1度のパケットの送信を保証するためには100msに設定すると良い。本実施の形態に係る通信端末装置90では、フレームは100msとされているものとする。
また、本実施の形態に係る通信端末装置90は、送信周期をフレームの2のべき乗倍の周期の何れかにすることができるものとされており、本実施の形態では、送信周期を、例として、フレームの1倍(基本周期、例えば、0.1sec)、2倍(2倍周期、例えば、0.2sec)、4倍(4倍周期、例えば、0.4sec)、8倍(8倍周期、例えば、0.8sec)、16倍(16倍周期、例えば、1.6sec)の5つの何れかにすることができるものとされている。
パケットは、ヘッダ情報と、パケットが送信される周期を示す送信周期情報と、送信対象となる実データが含まれるデータ領域とを有している。
また、本実施の形態に係る送信周期情報は、3ビットの領域とされており、パケットを送信する周期がフレームの1倍の場合、”000”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの2倍の場合、”001”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの4倍の場合、”010”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの8倍の場合、”011”が設定され、パケットを送信する周期がフレームの16倍の場合、”100”が設定される。
次に、他の通信端末装置(周辺通信端末装置)とパケットを交換して無線通信を行なう際の本実施の形態に係る通信端末装置90の作用を説明する。
通信端末装置90は、他の通信端末装置から送信されたパケットを受信すると、次のように動作する。
パケット検出部85は、受信回路12で受信されたパケットを検出する。パケット復調部86は、検出されたパケットを復調して他の通信端末装置から送られてきたデータを復元すると共にパケットの受信電力を検出する。
情報蓄積部87は、パケット復調部86により復調されたデータとパケット復調部86により検出されたパケットの受信電力の値とを所定フレーム分蓄積する。なお、本実施の形態に係る通信端末装置90では、最も長い送信周期がフレームの16倍の周期であるため、情報蓄積部87は、16フレーム分のデータをそれぞれ蓄積するものとする。
送信周期決定部88は、まず、1フレームの周期をパケット送信の基本周期として送信周期を決定する。
パケット生成部89は、送信データを送信するために、送信周期決定部88により決定されたパケットの送信周期を示す周期情報を埋め込んだパケットを生成する。送信タイミング制御部91は、送信周期決定部88で決定された送信周期となるタイミングでパケットを送信するように送信回路92を制御する。送信回路92は、パケット生成部89で生成されたパケットを送信タイミング制御部91からの制御に従って、送信アンテナ21を介して送信する。
また、送信周期決定部88は、送信アンテナ21によりパケットの送信が開始されると、次のフレーム以降、フレーム毎に、データを送信するための送信周期について次の決定を行なう。
図17は、送信周期決定部88によって実行される送信周期を決定するための送信周期決定処理ルーチンのフローチャートを示す図であり、図18は送信周期決定処理ルーチンを実行する送信周期決定部88を機能ブロックで表した図である。
図18に示すように、送信周期決定処理ルーチンを実行する送信周期決定部88を機能ブロックで表すと、送信周期の上限値を計算する送信周期上限値計算部30、通信状況として、1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合(時間使用率)もしくは通信帯域の使用状況を計算する通信状況計算部93、及び送信データを送信するための送信周期を決定する送信周期決定部94で表すことができる。
図17に示す送信周期決定処理ルーチンは、送信アンテナ21によりパケットの送信が開始されると、次のフレーム以降、1フレームの周期毎に実行される。
まず、ステップ300では、送信周期の上限値を計算する。例えば、ステップ300では、図19(A)のグラフに示すように、規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離を用いて、本通信端末装置90を搭載した移動体が移動距離を走行する間に少なくとも1つのパケットを送信するために必要な送信周期を下記の式(5)によって計算する。なお、本実施の形態では、移動距離の最大値を5mと定めた例について説明する。
ただし、式(5)中のaは移動距離の最大値で、この場合はa=5[m]としており、Xは移動体の速度であり、Yは送信周期である。そして、本実施の形態においては、送信周期は、0.1sec(基本周期)、0.2sec(2倍周期)、0.4sec(4倍周期)、0.8sec(8倍周期)、及び1.6sec(16倍周期)の何れかであるので、図19(A)のグラフが示す送信周期Yを超えない、図19(B)に示す離散的なグラフによって、移動体の速度Xから送信周期の上限値を計算する。例えば、図示されるように、移動体の速度Xが25m/sの場合には、送信周期の上限値の計算結果が0.2secとなり、移動体の速度Xが10m/sの場合には、送信周期の上限値の計算結果が0.4secとなる。
なお、図19(B)に示す送信周期の上限値を表すグラフは、同図に図示するように、チャタリングの防止のために、速度v1〜v2の間、速度v3〜v4の間、速度v5〜v6の間、速度v7〜v8の間では移動体の速度Xに対してヒステリシス特性を有している。なお、詳細は後述するが、時間使用率もしくは通信帯域の使用状況と決定される送信周期との関係において、時間使用率もしくは通信帯域の使用状況に対してもヒステリシス特性を有している。
次のステップ302では、各フレームにおける通信状況を計算する。例えば、ステップ302では、下記の式(6)により、通信状況として、1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合(時間使用率)を計算する。
なお、図16に示すように、TFは1フレームの時間であり、TPは1パケットあたりの受信時間である。上記の式(6)の分母は1フレームの時間を示し、分子は1フレームの時間の中で周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間を示す。なお、本実施の形態において、上記の式(6)に示す、”1フレーム内に周辺通信端末から送信されたパケット数”は通信端末装置90での1フレーム内でのパケットの受信状況を示している。
同図に示すように、周辺通信端末装置から送信されているパケットの数が多いほど、1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合も増加する。
なお、ステップ302では、下記の式(7)により、通信状況として、通信帯域の使用状況を計算するようにしてもよい。下記の式(7)により、通信帯域の使用状況として、例えば、1フレーム内で想定する受信電力の総和に対する1フレーム内で受信したパケットの受信電力の総和の割合を求めることができる。
なお、図20に示すように、Pk(k=1、2、・・・、n)は1フレーム中に受信したn個のパケットのうちkパケット目のパケットの受信電力であり、PHはパケットの受信電力の最大値であり、PLはパケットの受信電力の最小値であり、TFは1フレームの送信周期であり、TPは1パケットあたりの受信時間である。上記の式(7)の分母は想定する受信電力の総和を示し、分子は受信したパケットの受信電力の総和を示す。
上記の式(7)によって計算された通信帯域の使用状況が大きいほど、受信電力の大きいパケットがたくさん観測されており、通信帯域がよく使用されている状況であることを示し、通信帯域の使用状況が小さいほど、受信電力の大きいパケットがあまり観測されず、通信帯域はあまり使用されていない状況であることを示す。なお、通信帯域の通信状況として、上記の1フレーム内での受信電力の割合を用いたが、これに限定するものではない。
次のステップ304では、ステップ302で計算した1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合、または通信帯域の使用状況に基づいて、新たな送信周期を計算する。例えば、ステップ304では、ステップ302で1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合を計算した場合には、計算した時間の割合が、所定の値、例えば、40%を超えたときには、現在の送信周期より長くなるように新たな送信周期を計算し、例えば、現在の送信周期の2倍の周期を新たな送信周期として計算し、40%未満のときには、現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算する。また、ステップ302で通信帯域の使用状況を計算した場合には、計算した使用状況が、所定の値、例えば、50%を超えたときには、現在の送信周期より長くなるように新たな送信周期を計算し、例えば、現在の送信周期の2倍の周期を新たな送信周期として計算し、50%未満のときには、現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算する。
なお、ステップ304における新たな送信周期の計算方法は、上記で説明したものに限られず、他の方法を用いて、送信周期を計算するようにしてもよい。例えば、ステップ304において、ステップ302で1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合を計算した場合には、計算した時間の割合が、上記の所定の値とは別の所定の値、例えば30%未満の場合には、現在の送信周期より短くなるように新たな送信周期を計算し、30%以上の場合には現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算してもよい。また、ステップ304において、ステップ302で通信帯域の使用状況を計算した場合には、計算した通信帯域の使用状況が、上記の所定の値とは別の所定の値、例えば30%未満の場合には、現在の送信周期より短くなるように新たな送信周期を計算し、30%以上の場合には現在の送信周期をそのまま新たな送信周期として計算してもよい。
次のステップ306では、ステップ304で計算された送信周期が、ステップ300で計算された送信周期の上限値を超えているか否か判定を行う。
ステップ306で、肯定判定がされた場合、次のステップ308で、ステップ300で計算された送信周期の上限値を送信データを送信するための送信周期として決定する。一方、ステップ306で、否定判定がされた場合、次のステップ310で、ステップ304で計算された送信周期を送信データを送信するための送信周期として決定する。例えば、ステップ300で計算された送信周期の上限値が0.2sec(2倍周期)であって、ステップ304で計算された周期が2倍周期を超えた0.4sec(4倍周期)である場合、ステップ306では、肯定判定がされて、データを送信するための送信周期を0.2secと決定する。
なお、本送信周期決定処理ルーチンのステップ300は、送信周期上限値計算部30で実行され、ステップ302は、通信状況計算部93で実行され、ステップ304〜ステップ310は、送信周期計算部94で実行される。
図21は、本実施の形態において、送信周期決定部88によって決定される送信周期と、移動体の速度及び通信状況との関係を表した図である。図示されるように、X軸は移動体の速度、Y軸は通信状況、Z軸は送信周期を示している。なお、ここでは、通信状況の例として、時間使用率αを用いている。図示されるように、例えば、移動体の速度が20m/sの場合には、データを送信するための送信周期として、時間使用率αに応じて、0.1sec(基本周期)もしくは0.2sec(第2周期)が決定されるが、0.4sec(第3周期)以上の周期は、送信周期として決定されない。このように、移動体の速度及び通信状況によって、上限値を超えないように、データを送信するための送信周期が決定される。
また、同図に図示されるように、チャタリングの防止のために、移動体の速度Xに対してまたは時間使用率αに対してヒステリシス特性を有している。なお、本実施形態では、決定される送信周期と通信帯域の使用状況との関係において、通信帯域の使用状況についてもヒステリシス特性を有している。
以上、説明したように、本実施の形態の発明に係る通信端末装置90によれば、決定手段としての送信周期決定部88が、受信手段としての受信回路12によりパケットを受信したときの受信状況に基づいて、規定距離の移動の間に少なくとも1つのパケットを送信するように定めた移動距離aと移動体の速度Xとに基づいて定まる送信周期の上限値を超えないように送信周期を決定するので、各通信端末装置間で要求パケット、情報パケット、及び応答パケット等を交換することなく、簡易な制御で、かつ、所定間隔の間に少なくとも1つのパケットを送信することができる。
また、本実施の形態の発明に係る通信端末装置90によれば、送信周期決定処理ルーチンのステップ302で、通信状況として、1フレームの時間に対する周辺通信端末装置からパケットが送信されている時間の割合を計算した場合には、ステップ304で、例えば、上記の時間の割合が高くなるほど新たな送信周期が長くなるように、決定手段としての送信周期決定部88が新たな送信周期を計算することにより、ステップ308もしくはステップ310で、例えば、フレームの1周期内のトラヒックを収容できるように送信周期を決定することができる。
また、本実施の形態の発明に係る通信端末装置90によれば、送信周期決定処理ルーチンのステップ302で、通信状況として、通信帯域の使用状況を計算した場合には、ステップ304で、例えば、フレームの1周期内に周辺通信端末装置から送信されたパケットの数に応じて、決定手段としての送信周期決定部88が新たな送信周期を計算することができ、ステップ308もしくはステップ310で、例えば、フレームの1周期内のトラヒックを収容できるように送信周期を決定することができる。
以上、本発明の第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態、及び第5の実施の形態について説明した。なお、これらの実施の形態において、TDMA方式、またはCSMA方式によって通信を行う例について説明したが、本発明はTDMA方式またはCSMA方式によって通信を行う場合に限られず、周期的に情報を送信して他の通信端末装置と通信を行う通信方式であればどのような通信方式でもよい。