JP2008243738A - 多層絶縁電線及びそれを用いた変圧器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導体と前記導体を被覆する3層以上の押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、最外層(A)を形成する樹脂が、ポリアミド樹脂からなり、最内層(B)を形成する樹脂が熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100質量部に対して、エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基及び無水マレイン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を含有する樹脂を混和し、架橋させて成る樹脂からなり、最外層と最内層の間の絶縁層4b〜4d(C)が、ポリフェニレンスルフィド樹脂もしくはポリエーテルスルホン樹脂もしくはポリエーテルイミド樹脂のいずれかである多層絶縁電線、並びに該多層絶縁電線を有してなる変圧器。
【選択図】図1
Description
このような規格のもとで、従来、主流の座を占めている変圧器としては、図2の断面図に例示するような構造が採用されてきた。この変圧器は、フェライトコア1上のボビン2の周面両側端に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3が配置された状態でエナメル被覆された一次巻線4が巻回されたのち、この一次巻線4の上に、絶縁テープ5を少なくとも3層巻回し、更にこの絶縁テープの上に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3を配置したのち、同じくエナメル被覆された二次巻線6が巻回された構造である。
図1で示した変圧器を製造する場合、用いる1次巻線4及び2次巻線6では、いずれか一方もしくは両方の導体4a(6a)の外周に少なくとも3層の絶縁層4b(6b)、4c(6c)、4d(6d)が形成されていることが前記したIEC規格との関係で必要になる。
また、前記のフッ素樹脂押出しの場合では、絶縁層はフッ素系樹脂で形成されているので、耐熱性は良好であるという利点を備えているが、樹脂のコストが高く、さらに高剪断速度で引っ張ると外観状態が悪化するという性質があるために製造スピードを上げることも困難で、絶縁テープ巻と同様に電線コストが高いものになってしまうという問題点がある。
該絶縁電線を用いた変圧器は電気・電子機器の中で課電中に用いられる。常温において課電中に放電しにくいことはもちろんのこと、近年の電気・電子機器の更なる小型化に伴い変圧器からの発熱量も増大している状況において、高温課電中においても放電しにくい多層絶縁電線が求められている。
すなわち本発明は、以下の多層絶縁電線及び変圧器を提供するものである。
(1)導体と前記導体を被覆する3層以上の押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、前記絶縁層の最外層(A)を形成する樹脂が、ガラス転移温度が140℃以上のポリアミド樹脂からなり、前記絶縁層の最内層(B)を形成する樹脂が、全部または一部が脂肪族アルコール成分と酸成分とを結合して形成される熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100質量部に対して、エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基及び無水マレイン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を含有する樹脂1〜20質量部を混和し、架橋させて成る樹脂からなり、最外層と最内層の間の絶縁層(C)が、ポリフェニレンスルフィド樹脂もしくはポリエーテルスルホン樹脂もしくはポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることを特徴とする多層絶縁電線。
(2)導体と前記導体を被覆する3層以上の押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、前記絶縁層の最外層(A)を形成する樹脂が、ガラス転移温度が140℃以上のポリアミド樹脂からなり、前記絶縁層の最内層(B)を形成する樹脂が、全部または一部が脂肪族アルコール成分と酸成分とを結合して形成される熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100質量部に対し、側鎖にカルボン酸またはカルボン酸の金属塩を有するエチレン系共重合体5〜40質量部を混和して成る樹脂からなり、最外層と最内層の間の絶縁層(C)が、ポリフェニレンスルフィド樹脂もしくはポリエーテルスルホン樹脂もしくはポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることを特徴とする多層絶縁電線。
(3) 前記(1)または(2)に記載の絶縁電線を用いてなることを特徴とする変圧器。
さらに本発明の変圧器は、このような耐熱性と耐放電特性に優れた絶縁電線を巻回してなり、電気特性に優れ、信頼性が高い。
前記酸成分として、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の一部が脂肪族ジカルボン酸で置換されているジカルボン酸等が挙げられる。
次に、最内層(B)を構成する樹脂混和物中の、前記エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基及び無水マレイン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を含有する前記樹脂について説明する。
上記の官能基は、前記ポリエステル系樹脂と反応性を有する官能基である。前記最内層(B)は、押出被覆時に、この反応性官能基と前記ポリエステル系樹脂とが反応し架橋してなる。この反応性を有する樹脂としては、特にエポキシ基を含有することが好ましい。上記の官能基を含有する樹脂は、該官能基含有単量体成分を1〜20質量%有することが好ましく、2〜15質量%有することがより好ましい。このような樹脂としては、エポキシ基含有化合物成分を含む共重合体であることが好ましい。反応性を有するエポキシ基含有化合物としては、例えば、下記一般式(1)に示される不飽和カルボン酸のグリシジルエステル化合物が挙げられる。
前記ガラス転移温度が140℃以上のポリアミド樹脂としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分と少なくとも1つのシクロへキシレン基を有する脂肪族ジアミン成分とを結合して形成されるナイロン等が挙げられる。なかでも、下記一般式(2)で表されるナイロンが好ましい。下記一般式(2)で表される、シクロヘキシレン基を含んだナイロンの代表例として、トロガミドCX7323(商品名、ダイセルデグサ社製;ガラス転移温度:140℃)が市販されている。
本発明の好ましい実施態様においては、最内層(C)は、ポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましい。
例えば、代表例として、DICPPS FZ2200A8(大日本インキ化学工業社製、商品名)が挙げられる。
導体として線径1.0mmの軟銅線を用意した。表1に示した各層の押出被覆用樹脂の配合(組成の数値は質量部を示す)及び厚さで、導体上に順次押出し被覆して多層絶縁電線を製造した。得られた多層絶縁電線につき、下記の仕様で各種の特性を試験した。
電線自身の周囲に線と線が接触するように緊密に10回巻きつけ、顕微鏡にて観察を行い皮膜にクラックやクレージングなどの異常が見られなければ合格とした。
IEC規格60950の2.9.4.4項の付属書U(電線)に準拠した下記の試験方法で評価した。
直径10mmのマンドレルに多層絶縁電線を、荷重118MPa(12kg/mm2)をかけながら10ターン巻付け、B種:225℃30分加熱し、その後3000Vにて1分間電圧を印加し短絡しなければ、B種合格と判定した。(判定はn=5にて評価。1つでもNGになれば不合格となる)。
該絶縁電線を用いた変圧器は電気・電子機器の中で課電中に用いられる。認証機関Bsiの評価項目の一つに、課電圧500Vの課電中にヒートサイクルをかけて絶縁電線の劣化を評価する項目がある。ヒートサイクルの最高温度は、B種(130℃)の定格温度+10℃の140℃である。そこで、140℃における放電開始電圧を測定し、放電開始電圧が500V以上であれば課電中での劣化は抑制されるとの判断から合格とし、500V以下であれば放電が開始しているため劣化は促進されると判断し不合格と判定した。測定は菊水社製KPD2050を使用した。測定条件として、昇圧速度は50V/secとし10pC以上の電荷を検知した電圧を放電開始電圧とした。
巻線加工として20D巻き付けを行った電線をエタノール、及びイソプロピルアルコール溶媒に30秒間浸漬し、乾燥後試料表面の観察を行い、クレージング発生の有無判定を行った。
また、各樹脂を示す略号は以下の通りである。
PET:帝人PET(帝人社製、商品名)ポリエチレンテレフタレート樹脂
エチレン/グリシジルメタアクリレート/アクリル酸メチル共重合体:ボンドファースト7M(住友化学工業社製、商品名)
エチレン系共重合体:ハイミラン1855(三井デュポン社製、商品名)アイオノマー樹脂
PPS:DICPPS FZ2200A8(大日本インキ化学工業社製、商品名)ポリフェ二レンスルフィド樹脂
PEI:ウルテム1010(日本GEプラスチック社製、商品名)
PES:スミカエクセルPES4100(住友化学工業社製、商品名)
PA66:FDK−1(ユニチカ社製、商品名)ポリアミド66樹脂(Tg=50℃)
Tgが140℃以上のPA:トロガミドCX7323(ダイセルデグサ社製、商品名)(Tg=140℃)
また、導体から順に第1層、第2層、第3層が被覆されたものであり、第3層が最外層である。
比較例1では電気的耐熱性に乏しい。比較例2では電気的耐熱性は満足するが、140℃におけるコロナ開始電圧が460Vであり、500Vの課電では放電してしまうため劣化が促進される。一方で実施例1〜4は電気的耐熱性を満足しさらに140℃におけるコロナ開始電圧が600Vであり、500Vの課電では放電せず劣化も抑制される。
2 ボビン
3 絶縁バリヤ
4 一次巻線
4a 導体
4b,4c,4d 絶縁層
5 絶縁テープ
6 二次巻線
6a 導体
6b,6c,6d 絶縁層
Claims (3)
- 導体と前記導体を被覆する3層以上の押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、前記絶縁層の最外層(A)を形成する樹脂が、ガラス転移温度が140℃以上のポリアミド樹脂からなり、前記絶縁層の最内層(B)を形成する樹脂が、全部または一部が脂肪族アルコール成分と酸成分とを結合して形成される熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100質量部に対して、エポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基及び無水マレイン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を含有する樹脂1〜20質量部を混和し、架橋させて成る樹脂からなり、最外層と最内層の間の絶縁層(C)が、ポリフェニレンスルフィド樹脂もしくはポリエーテルスルホン樹脂もしくはポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることを特徴とする多層絶縁電線。
- 導体と前記導体を被覆する3層以上の押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、前記絶縁層の最外層(A)を形成する樹脂が、ガラス転移温度が140℃以上のポリアミド樹脂からなり、前記絶縁層の最内層(B)を形成する樹脂が、全部または一部が脂肪族アルコール成分と酸成分とを結合して形成される熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100質量部に対し、側鎖にカルボン酸またはカルボン酸の金属塩を有するエチレン系共重合体5〜40質量部を混和して成る樹脂からなり、最外層と最内層の間の絶縁層(C)が、ポリフェニレンスルフィド樹脂もしくはポリエーテルスルホン樹脂もしくはポリエーテルイミド樹脂のいずれかであることを特徴とする多層絶縁電線。
- 請求項1または2に記載の絶縁電線を用いてなることを特徴とする変圧器。
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