JP2008241711A - マイクロ波原子間力顕微鏡のマイクロ波導波プローブ - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロ波原子間力顕微鏡の実現のため、化合物半導体を基板としたマイクロ波導波プローブの開発
【解決手段】
プローブ10は、カンチレバー12の先の探針14と試料20との間に働く原子間力により、カンチレバー部分12がたわむ。このたわみ量を、レーザ30から発生したレーザ光をプローブ10の背面に当て、反射してきたレーザ光を4分割のフォトダイオード40で検出する。これを光てこ方式という。
マイクロ波原子間力顕微鏡用のプローブ10は、試料20に照射するためのマイクロ波の伝送を効率よく行うために、誘電体として絶縁性の優れた材料が必要になる。そこで、絶縁性の優れたプローブの素材として化合物半導体を用いている。例えばガリウム砒素(GaAs)を用いる。マイクロ波導波プローブは、カンチレバー12を挟んで上下に金属の平行板線路16、18で構成された伝送機構である導波路を持つ構造である。
【選択図】図1
Description
一方、マイクロ波を用いた材料の電気的特性の評価技術が注目されている。マイクロ波はその応答が材料の導電率、誘電率、透磁率に依存するため、材料の電気的特性を高感度に測定することができる。また、近接場マイクロ波を用いることによって、波長によって空間分解能が制限される問題も解決される。そして現在、近接場マイクロ波を用いた近接場マイク波顕微鏡(SNMM)に関する研究が進められており、実用化が期待されている。しかしながら、スタンドオフ距離の制御が数十マイクロメートル程度であり、近接場マイクロ波はその距離によって指数関数的に減衰するため、定量的な評価が困難である問題を抱えている(非特許文献1〜4参照)。
前記化合物半導体は、ガリウム砒素であり、基板の面方位は<100>であり、前記カンチレバー部分を作製する工程は、カンチレバーの長辺を<011>方向に沿うように、エッチングパターンを作製するとよい。
さらに、探針を作製する工程は、前記探針の底面は正方形で、各辺が方位<011>と45度の角度で作製するとよい。
プローブの作製にはウェットエッチングを用いるとよい。これは、ドライエッチングと異なり、ウェットエッチングでは、エッチングマスクの下でサイドエッチングが生じるためである。この性質により、ウェーハに微小な探針を作ることが可能となる。
カンチレバー12のたわみ量が一定に保たれるようにフィードバックを行いながら試料20を走査することにより、探針と試料の間のスタンドオフ距離をナノメートルのオーダで制御することができる。このようにして、試料20の表面形状を得ることができる。
マイクロ波原子間力顕微鏡用のプローブ10は、試料20に照射するためのマイクロ波の伝送を効率よく行うために、誘電体として絶縁性の優れた材料が必要になる。そこで、絶縁性の優れたプローブの素材として化合物半導体を用いている。本発明では、例えばガリウム砒素(GaAs)を用いる。以下で説明するマイクロ波導波プローブは、ガリウム砒素製のカンチレバー12を挟んで上下に形成された金属膜16,18の平行線路で構成された伝送機構である導波路を持つ構造である。
設計した構造を得るために、プローブの作製にはウェットエッチングを用いるとよい。これは、ドライエッチングと異なりウェットエッチングでは、エッチングマスクの下でサイドエッチングが生じるためである。この性質により、ウェーハに微小な探針を作ることが可能となる。
シリコンやガリウム砒素のような単結晶の場合、異なる面指数の結晶面で化合物的な活性度が異なるため、エッチング速度が大きく異なる性質がある。十分に長いマスクパターン辺から得られるエッチング側面は、そのマスクパターン辺に平行な結晶面の中で最も不活性である面、すなわちエッチング速度の最も遅い面が現れる。そのため、マスクパターンの方向を変化させると、それによって得られるエッチングの結果も大きく変化する。
また、せん亜鉛鉱型構造の結晶構造を有するガリウム砒素は、ダイヤモンド構造の結晶構造を有するシリコンに比べてエッチングの動作が複雑であり、エッチングの結果の予測も非常に難しいことが知られている(非特許文献5−7参照)。
作製に用いた単結晶ガリウム砒素ウェーハは、面方位(100),厚さ350μmであり、ノンドープな半絶縁性ウェーハである。
カンチレバーは図2(a)〜(j)に示すような、以下の工程から得られる。
(a)探針作製のためのエッチングマスクのパターニング
レジストを用いて探針14のエッチングマスクとするレジストパターンを形成する。
(b)ウェットエッチングによる探針の作製
エッチング液を用いてガリウム砒素基板をエッチングし、探針14を形成する。
(c)探針側のマイクロ波導波路の形成のためのステンシルマスクのパターニングと金属膜成膜
カンチレバーの表面にステンシルマスクを形成して、金属膜16を蒸着して、マイクロ波導波路を形成する。
(d)リフトオフによる金属膜の除去
不必要なカンチレバーの金属膜とレジストを除去する。
(e)カンチレバーの外形を定めるためのエッチングマスクのパターニング
基板のカンチレバー群を形成するためのパターンを形成する。
(f)ウェットエッチングによるカンチレバー部の作製
ウェットエッチングにより、カンチレバー群を基板内に形成する。
(g)AFMに取り付ける支持部のエッチングマスクのパターニング
ガリウム砒素基板の裏側に、フォトレジストによる支持部形成ためのエッチングマスクのパターニングを行う。
(h)ウェットエッチングによる支持部の作製
ウェットエッチングにより、カンチレバー群に支持部を作製する。
(i)反対側への金属膜の成膜
カンチレバー群の裏側に金属膜18を蒸着する。
(j)収束イオンビーム(FIB)による探針部分の開口
探針14の先端にスリット空隙を導入する。
まず、図2(a),(b)に示す探針14の作製において、従来の研究から探針のレジストマスクパターンは正方形でその一辺が<011>方位と45度の角度を成すときにアスペクト比の高い探針が得られることが明らかになっている(非特許文献8参照)。
また、カンチレバー部分の作製において、結晶面の違いによってエッチング速度に差が生じてくる現象を利用し、カンチレバーの長辺を<011>方向に沿うようにエッチングマスクをパターニングする。すると、レジストマスクの下ではサイドエッチングが生じ、カンチレバーの側面部には約45°のメサ構造の結晶面が生じる。反対に、カンチレバーの先端側の面では60〜75°の逆メサ構造の結晶面が生じる。この現象を利用して、反対側への金属膜の成膜工程において、側面部には金属膜を付着させず、先端部に生じた結晶面に付着させることで探針側と反対側の金属膜をカンチレバーの先端部において接続させた。この時の成膜厚さは50nmであった。
走査型電子顕微鏡(SEM)によって、作製したGaAs製マイクロ波導波プローブの観察を行った。図3は得られた探針のSEM写真であり、高さが約7,アスペクト比が2.0であった。
図4に示す写真は、プローブのカンチレバー部分を表している。この時、カンチレバーのサイズは250×35×15μmであった。
図5に示すSEM写真は、作製したマイクロ波導波プローブ群を表している。支持部のサイズは3.0×0.8×0.35mmで、2.0×2.0×0.35mmのGaAsウェーハに22個のプローブを作製した。
また、図6に示すように、収束イオンビーム(FIB)による幅200nmの微小スリットが探針部分に導入されていることが分かる。
作製したGaAs製マイクロ波導波プローブの分解能を検証するため、2000line/mmの格子状のスリットを有した標準試験片、17.9 nmの段差を有した標準試験片のAFM測定を行った。その際、GaAs製マイクロ波導波プローブ、FIB加工をしていないGaAs製プローブ、市販のSi製AFMカンチレバーの3種類を用いて比較実験をした。測定環境は大気中にて実施し、測定方法はマイクロ波を用いた同時測定を想定した非接触方式であった。
測定に用いた各プローブの特性を表2に示す。ここで、共振周波数はピエゾ素子の振動とフォトディテクタによって検出される。Q値は次のように定義される。
Q値はカンチレバーの材質と形状によって決まり、一般的にQとf0が高いプローブが高空間分解能を期待できる。表2に示すように、マイクロ波導波プローブのCとEは市販のSi製カンチレバーよりも高いQ値を持っていることが検出された。
図7〜図9は非接触方式によって得られた各プローブによる2000line/mmの格子状のスリットを有した標準試験片の表面形状測定結果である。走査範囲は3×3μmであった。
図7はマイクロ波導波プローブCによる表面形状測定結果を表しており、断面深さは20−30nmと検出された。いくつか見られる白い点は試料表面に付着した微小な埃である。プローブCと同様に、他のマイクロ波導波プローブにおいてもAFMによる表面形状が観察されたが、プローブBのみが鮮明な像を得ることができなかった。これは、他のプローブに比べて共振周波数が小さくその影響でQ値も小さくなってしまったことが原因であると考えられる。しかし、プローブCとEは高いQ値の結果と同期して鮮明な像を得ることができた。
図9はFIB加工をしていないGaAs製プローブによる表面形状測定結果である。図7と9を比較すると、両者の分解能に大きな差異がないことから、探針部分へのFIB加工はAFM測定に対して影響が小さいと言える。
さらに、高さ分解能の評価を行うため、17.9±1nmの段差を有した標準試験片を用いて、マイクロ波導波プローブCとSi製カンチレバーの比較実験をした。
図10はマイクロ波導波プローブCによる断面形状解析結果を示しており、段差の高さは18.60nmであった。また、Si製カンチレバーによる結果は図11に示すように、解析結果は18.62nmであった。両者とも標準試験片の誤差範囲に収まっており、正確な測定がされていることが確認された。
以上から、作製したマイクロ波導波プローブはAFMとしての機能を十分に有しており、従来では困難であったスタンドオフ距離の制御に成功したと言える。
用いた試料はCr−V鋼と径50 μmのAuワイヤで、材料・形状による反応の違いを測定した。それぞれの測定条件は同一とし、走査周波数範囲が2MHzの微小領域において実験した。
材料の電気的特性をナノメートルスケールで評価することを目的に提案したマイクロ波原子間力顕微鏡実現のため、微細加工技術によってGaAs製のマイクロ波導波プローブの作製を行った。その結果、カンチレバーのサイズが250×35×15μm、探針が高さ7μm、アスペクト比が2.0、先端の曲率半径が約50nmのプローブを得ることができた。さらにマイクロ波の導波と探針からの放射のため、集束イオンビーム(FIB)によって探針部分の開口を行った。作製したプローブを用いたAFMによる標準試験片の測定によって、シリコン(Si)製のカンチレバーとの比較を行った結果、AFMとしての機能を持つことを確認し、従来では困難であったスタンドオフ距離の制御に成功した。加えて、ネットワークアナライザを用いたマイクロ波の導波実験によりプローブの先端からマイクロ波の検出を確認した。今後の展望として、AFMとの接続をしてナノメートルスケールでの表面形状と電気的特性の同時測定を行う。
Claims (4)
- 近接場マイクロ波顕微鏡と原子間力顕微鏡を融合したマイクロ波原子間力顕微鏡に用いるマイクロ波導波プローブであって、
化合物半導体の基板の上下に金属膜で構成したマイクロ波の平行導波路を有するカンチレバー部と、
カンチレバー部の先端にある探針と、
カンチレバーを支持する支持部と
を備え、
前記基板の上下の金属膜は、前記カンチレバー部の先端で接続されており、
前記探針には先端を通るスリットがあり、該探針からマイクロ波を試料に対して放射することを特徴とするマイクロ波導波プローブ。 - 近接場マイクロ波顕微鏡と原子間力顕微鏡を融合したマイクロ波原子間力顕微鏡に用いるマイクロ波導波プローブの作製方法であって、
ウェットエッチングにより、化合物半導体の基板上に探針を作製する工程と、
基板の探針側に金属膜成膜を行う工程と、
ウェットエッチングにより、カンチレバー部を作製する工程と、
ウェットエッチングにより、支持部を作製する工程と、
カンチレバー部の反対側への金属膜成膜を行い、前記探針側の金属膜と接続する工程と、
収束イオンビームにより、前記探針の先端を通るスリットを導入する工程と
を備えることを特徴とするマイクロ波導波プローブの作製方法。 - 請求項2に記載のマイクロ波導波プローブの作製方法において、
前記化合物半導体は、ガリウム砒素であり、基板の面方位は<100>であり、
前記カンチレバー部分を作製する工程は、カンチレバーの長辺を<011>方向に沿うように、エッチングパターンを作製することを特徴とするマイクロ波導波プローブの作製方法。 - 請求項3に記載のマイクロ波導波プローブの作製方法において、
探針を作製する工程は、前記探針の底面は正方形で、各辺が方位<011>と45度の角度で作製されることを特徴とするマイクロ波導波プローブの作製方法。
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