JP2008240560A - シリンダブロックおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不要な溶射被膜を形成することなく、摩耗し易い部位であるボア上死点近傍の耐摩耗性を向上させることのできるシリンダブロックとその製造方法を提供する。
【解決手段】シリンダボアの上死点近傍は、シリンダボアの他の部位に比して相対的に大きなボア内径を有しており、上死点近傍に形成される溶射被膜は、シリンダボアの他の部位の溶射被膜に比して相対的に大きな厚みを有しており、溶射被膜W4の表面で形成されるボア内径がシリンダボアC1の全長に亘って一定となっているシリンダブロックCである。
【選択図】図5
【解決手段】シリンダボアの上死点近傍は、シリンダボアの他の部位に比して相対的に大きなボア内径を有しており、上死点近傍に形成される溶射被膜は、シリンダボアの他の部位の溶射被膜に比して相対的に大きな厚みを有しており、溶射被膜W4の表面で形成されるボア内径がシリンダボアC1の全長に亘って一定となっているシリンダブロックCである。
【選択図】図5
Description
本発明は、エンジンのシリンダブロックとその製造方法に関するものである。
シリンダブロックのシリンダボア内面には、アークやプラズマ、ガス等にて燃焼火炎(フレーム)を発生させ、各種金属や合金属を瞬間溶融し、圧縮エアにてアトマイズ粉砕(微粒子化)された溶射粒子を衝突/凝固付着させる溶射技術によって該ボア内面の耐食性、耐摩耗性等を向上させるための溶射被膜が形成されている。かかる溶射は、例えば特許文献1に開示のように自転姿勢の溶射ガンをシリンダボアの両端間で移動させることによっておこなわれているが、溶射粒子のボア内面への衝突に際しては溶射粒子のはね返りが生じ、かかる反射粒子の酸化物や酸化物粒子からなる溶射ヒュームがボア内面に付着するといった問題が生じていた。
この酸化物粒子が未溶射面に付着すると、その後に形成される溶射被膜とシリンダ基材との間に酸化物粒子が介在することになり、この酸化物粒子の介在によって溶射被膜の密着強度が著しく低下し、剥離の原因となる。この問題は、溶射被膜厚が厚くなる場合により顕著となる。また、酸化物粒子が溶射被膜上に付着した場合には、ボア内面の平滑性が損なわれることになる。
ところで、シリンダボアの上死点近傍ではピストンリングとシリンダボア内面の溶射被膜との間の油膜が切れ易く、さらに、燃料爆発による衝撃力、燃料中の硫黄成分から生成される硫酸などによって摩耗し易い部位である。したがって、この部位の耐摩耗性を向上させるべく溶射被膜の膜厚を厚くする方策が考えられるが、溶射被膜の膜厚が厚くなった場合には、上記密着強度の低下に起因する剥離が一層助長されることになり、シリンダブロックの耐久性の低下が否めない。また、シリンダボアの上死点近傍のみの溶射被膜厚を厚くするボア形態では、ボア内面における他の部位でデッドスペースができてしまうこと、および、そもそも摺動部であるボア被膜面に段差を設けることはピストンの摺動不具合の原因となることから、結局はボア内面における溶射被膜の全体の厚みを厚くせざるを得ず、不要な溶射被膜が形成されることになる。
特許文献2には、シリンダブロック形状を工夫することにより、あるいは治具を用いることにより、溶射時の気流をスムーズにすることで反射粒子を軽減させ、もって溶射被膜の密着性を向上させる溶射方法が開示されている。
特許文献2の溶射方法によれば、従来の溶射法に比して溶射被膜の密着性を向上させることができるが、上記する課題、すなわち、シリンダボア内の溶射被膜厚がその上死点近傍の被膜厚で決定されることで、不要な溶射被膜が形成されるという問題を解決することはできない。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、不要な溶射被膜をシリンダボア内に形成することなく、上死点近傍における溶射被膜厚を厚くするとともに、特にこの上死点近傍における溶射被膜の密着強度の低下を防止することのできるシリンダブロックとその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明によるシリンダブロックは、複数のシリンダボアを具備し、ボア内面に溶射被膜が形成されてなるシリンダブロックであって、前記シリンダボアの上死点近傍は、シリンダボアの他の部位に比して相対的に大きなボア内径を有しており、前記上死点近傍に形成される溶射被膜は、シリンダボアの他の部位の溶射被膜に比して相対的に大きな厚みを有しており、溶射被膜の表面で形成されるボア内径がシリンダボアの全長に亘って一定であることを特徴とするものである。
ボア内面への溶射方法は、ガス溶射、フレーム溶射、アーク溶射、プラズマ溶射等の中のいずれの溶射形態であってもよいが、溶射時に酸化物粒子が生成され易く、したがってボア面に対する溶射被膜の密着強度が著しく低下するアーク溶射を適用する場合に、本発明のシリンダブロックは特に好適である。また、溶射材料としては、鉄、アルミニウム、モリブデン等の金属粉末、ステライト合金、クロム−鉄合金、ニッケル−クロム等の合金粉末、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス粉末、ステライト合金、クロム−鉄合金等を使用することができる。なお、例えばアーク溶射においては、適宜素材のワイヤが溶融されてなるアトマイズ粉末が溶射粒子として溶射ガンから吐出される。
シリンダブロックに形成されるボアは、その上死点近傍がその他のボア部位に比して相対的に大径に形成されており、したがって、ボア内面にその全長に亘って内径が一定の溶射被膜とすることにより、必然的に上死点近傍のみに肉厚の相対的に厚い溶射被膜が形成されることになる。
上記するボア形態および溶射被膜形態を有するシリンダブロックを製造することにより、シリンダボアの上死点近傍の溶射被膜のみを厚くしながら、被膜内径をボア全長に亘って均一径とすることができるため、不要な溶射被膜を形成することなく、摩耗し易い部位である上死点近傍の耐摩耗性を向上させることができる。したがって、シリンダブロックの耐久性の向上に繋がる。また、かかるシリンダブロックの製造に際しては、ボアの上死点近傍のみを拡径加工するだけの極めて簡易な製造方法によることから、従来のシリンダブロックの製造に要するコストを高騰させることもない。
さらに、本発明によるシリンダブロックの製造方法は、複数のシリンダボアを具備し、ボア内面に溶射被膜が形成されてなるシリンダブロックの製造方法であって、前記シリンダボアの上死点近傍を、シリンダボアの他の部位に比して相対的に大きなボア内径となるようにシリンダボアを形成する第1の工程と、前記上死点近傍に形成される溶射被膜を、シリンダボアの他の部位の溶射被膜に比して相対的に大きな厚みとし、かつ、溶射被膜の表面で形成されるボア内径がシリンダボアの全長に亘って一定となるように溶射被膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とするものである。
シリンダブロックは、所定の成形型内に例えばアルミニウム合金融湯を流し込み、高速かつ高圧で加圧成形する、いわゆるダイカスト法等にて製造される。製造されたシリンダブロックの所定部位において、所望のエンジン気筒に応じた基数のボアをボーリング加工等によって開設する。
次に、この形成されたボアの上死点近傍にのみ、前工程にて使用されたボーリング器具よりも相対的に大径のボーリング器具を使用して再度ボーリング加工することにより、その上死点近傍のみが相対的に大径となるボアを形成することができる(第1の工程)。
次いで、ボア内において、溶射装置を構成する溶射ガンを回転姿勢で上昇もしくは降下させながら例えばアーク溶射を実施して、溶射被膜の表面で形成されるボア内径がシリンダボアの全長に亘って一定である溶射被膜を形成する(第2の工程)。ここで、溶射ガンからは補助エアおよびアトマイズエアが噴射されるようになっており、溶射用線材(ワイヤ)が溶融されてなる溶滴を補助エアにて引き伸ばし、次いでこの溶滴にアトマイズエアが吹き付けられることにより、溶滴は細かな溶射粒子となってボア面に噴射される。
第2の工程における溶射時においては、シリンダブロックの内部に溶射ヒュームを吸引するための吸引装置を載置しておき、溶射に先行して吸引装置を稼動させることもできる。シリンダブロックの内部から吸引された姿勢で溶射ガンをボア下端まで降下させ、溶射ガンの燃焼フレームを安定させた状態で該溶射ガンを回転させながら一定の速度で一度上昇させることにより、溶射被膜を形成する方法であってもよい。なお、溶射ガンの昇降を複数回実施しながら溶射被膜を形成してもよいことは勿論のことである。
上記製造方法の実施の形態、すなわち、溶射ガンをボア下端から上昇させながら溶射被膜を形成する方法によれば、ボアの上死点近傍に相対的に大径のボアが形成されていることで、その下端のボア一般部に噴射される溶射粒子の酸化物(または溶射ヒューム)は、窪みとなっているボア上死点近傍にまで到達することがなく、したがって、該上死点近傍に反射粒子の酸化物等が付着する問題も解消される。そのため、上死点近傍に形成される溶射被膜とボア内面との間に上記酸化物が介在することがなくなることで、溶射被膜の密着強度を確保することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明のシリンダブロックとその製造方法によれば、不要な溶射被膜を形成することなく、摩耗し易い部位であるボア上死点近傍の耐摩耗性を向上させることができ、さらにはその密着強度を低下させることがないため、結果としてシリンダブロックの耐久性を高めることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は溶射装置を示した模式図であり、図2は溶射ガンの拡大図であり、図3は図2のIII―III矢視図である。図4は溶射ガンがシリンダボアの一般部から上死点近傍に向って上昇しながら溶射粒子を噴射している状況を説明した図であり、図5は溶射被膜が形成されたシリンダボアの縦断面図である。図6は従来のシリンダブロックのボアに形成された溶射被膜と本発明のシリンダブロックのボアに形成された溶射被膜の密着強度試験結果を示したグラフである。
図1は、シリンダブロックのボア内面に本発明のアーク溶射被膜を形成する際に使用される溶射装置の一実施の形態の模式図である。この溶射装置10は、基台1、該基台1に支持固定された支持部2、該支持部2に沿って上下にスライドする溶射ツール3、この溶射ツール3の先端に装着された溶射ガン6、コントローラ4およびシリンダブロックCが載置固定されるパレット7から大略構成されている。
支持部2は、基台1上に設置されるとともに、溶射ツール3に設けられているスライダ31を昇降自在に支持している。コントローラ4は、支持部2の上部に装着された昇降駆動モータ51、回転駆動モータ52に接続されている。昇降駆動モータ51の回転軸には、螺旋スクリュ32が取付けられており、該螺旋スクリュ32にはスライダ31に固定されたサポート33が螺合している。コントローラ4は、昇降駆動モータ51の回転方向や回転速度を制御するものであり、昇降駆動モータ51の回転によって溶射ツール3が所望の速度で昇降することができる。
溶射ツール3のツール本体34はその先端に溶射ガン6を装着しており、回転駆動モータ52によって該ツール本体34および溶射ガン6はそれらの軸廻りに回転する(図中のY方向)。また、パレット7は基台1上に装着されており、シリンダブロックCを載置固定する。ここで、シリンダボアC1は、下方の一般部ボアC1bと、該ボアC1bよりも相対的に大径な上死点近傍ボアC1aとからなり、ツール本体34および溶射ガン6がボアC1内を回転姿勢で昇降する際に(図中のX方向)、ボアC1のボア面に溶射粒子が溶射される。なお、シリンダブロックCはアルミニウム合金鋳物から成形されるものであり、例えばJISAC2C、ADC12等が使用できる。これらの材料からシリンダブロックCを加圧成形した後に、製造されたシリンダブロックCの所定部位において、所望のエンジン気筒に応じた基数のボアC1をボーリング加工によって開設する。次いで、この形成されたボアC1の上死点近傍にのみ、前工程にて使用されたボーリング器具よりも相対的に大径のボーリング器具を使用して再度ボーリング加工することにより、その上死点近傍のみが相対的に大径となる上死点近傍ボアC1aを形成することができる。
図2は、溶射ガン6を拡大した図であり、図3はその側面図である。溶射装置10が溶射を行う際には、不図示の電力線に電圧が印加され、アーク溶射用線材(ワイヤW)の先端接触部でアークが発生し、その熱によってワイヤWの先端が溶融する。溶融して消耗した分のワイヤWは、不図示の送給ローラの回転によってリールから引き出されて補充される。不図示のホースに空気が供給されると、補助ノズル63から補助エアA1が吹き出すとともに、溶射ガン6の先端部材61に開設されたアトマイズノズル62からアトマイズエアA2が噴射する(図3参照)。
図2は、ワイヤWの先端が溶融し、補助ノズル63から圧縮エアである補助エアA1が吹き出した状態を模式的に示している。この状態では、ワイヤWが溶融した溶滴W1に補助エアA1が吹き付けられることにより、溶滴W1は下方に向けて引き伸ばされるように変形する。
そして、図3に示すように、アトマイズノズル62から噴射するアトマイズエアA2が溶滴W1に吹き付けられることにより、溶滴W1は細かな溶射粒子W2,…に分散される。
図4は、溶射ガン6を回転させた姿勢で(図中のY方向)、溶射ツール3がシリンダブロックCのボアC1内を所定の速度で上昇しながら溶射している状況を説明したものであり(図中のX1方向)、より具体的には、ボアC1の下方の一般部(ボア内径:φ2の一般部ボアC1b)から拡径された上死点近傍ボアC1a(ボア内径:φ1)にかけて溶射している状況を示している。
実際の溶射時には、図示するようにボア内面で反射されてできる反射粒子の酸化物(溶射ヒュームW3)が、溶射ガン6の上昇に伴なってボア内面を沿うように上方へ移動しながら堆積する(図中のX2方向)。
したがって、ボア内径が均一径である従来のシリンダボアにおいては、ボアの上死点近傍においても溶射ヒュームが堆積してしまい、特にボア面との密着強度を要する該上死点近傍の溶射被膜の剥離の大きな原因となっていた。
しかし、図示するシリンダボアC1においては、上死点近傍ボアC1aが一般部ボアC1bに比して大径に形成されていることで(よって、上死点近傍ボアC1aが窪んでいる)、この一般部ボアC1bの溶射時に生じる溶射ヒュームW3は上死点近傍ボアC1aに付着しない。したがって、上死点近傍ボアC1aに形成される溶射被膜とボア内面との間に溶射時の酸化物が介在することが回避され、かかる部位における溶射被膜の密着強度を確保することができる。
図5は、アーク溶射が完了し、その後に溶射面をホーニング加工して完成されたアーク溶射被膜W4を有するシリンダボアC1の縦断図である。
図示するように、上死点近傍ボアには厚みがt1の溶射被膜が形成され、一般部ボアには厚みがt2(<t1)の溶射被膜が形成されており、ボアの全長に亘って被膜の内径は均一径に形成される。次に、図5を使用して、本発明者等が実施した溶射被膜の密着強度を求めるための強度実験とその結果について以下に詳述する。
図示するように、上死点近傍ボアには厚みがt1の溶射被膜が形成され、一般部ボアには厚みがt2(<t1)の溶射被膜が形成されており、ボアの全長に亘って被膜の内径は均一径に形成される。次に、図5を使用して、本発明者等が実施した溶射被膜の密着強度を求めるための強度実験とその結果について以下に詳述する。
[従来のシリンダブロックのボアに形成された溶射被膜と本発明のシリンダブロックのボアに形成された溶射被膜の密着強度試験とその結果]
本発明者等は、ボアの全長に亘って同一内径である従来のシリンダボアに均一径の溶射被膜を形成し、このボアの一部を試験片として切り出して5種類の試験片(比較例1〜5)とし、各試験片をせん断することによってせん断強度を測定し、これを密着強度と同定した。ここで、各試験片の被膜の厚み(図5中のt2に相等)は0.1〜0.5mmまで変化したものである。なお、溶射方法の詳細は、ボア内径が79mmのADC12シリンダブロックを用意し、Fe−0.05%C−1.6%Si−0.5%Mnのワイヤ(各成分は重量%)でワイヤ径がφ1.6mmのワイヤを使用し、印加電圧は30V、ワイヤの送り速度を100mm/secで実施した。
本発明者等は、ボアの全長に亘って同一内径である従来のシリンダボアに均一径の溶射被膜を形成し、このボアの一部を試験片として切り出して5種類の試験片(比較例1〜5)とし、各試験片をせん断することによってせん断強度を測定し、これを密着強度と同定した。ここで、各試験片の被膜の厚み(図5中のt2に相等)は0.1〜0.5mmまで変化したものである。なお、溶射方法の詳細は、ボア内径が79mmのADC12シリンダブロックを用意し、Fe−0.05%C−1.6%Si−0.5%Mnのワイヤ(各成分は重量%)でワイヤ径がφ1.6mmのワイヤを使用し、印加電圧は30V、ワイヤの送り速度を100mm/secで実施した。
一方、本発明のシリンダブロックのボアの実施例として、一般部ボアの厚みt2を0.1mmに固定し、上死点近傍ボアの厚みを0.2〜0.5mmまで変化させた4種類の溶射被膜を形成し、比較例と同様に試験片を切り出してせん断試験を実施した。各実施例および比較例の条件と試験結果(密着強度)を表1および図6に示している。なお、t2が0.1mmで均一径である比較例1が現状のシリンダボアに形成されている溶射被膜に相等するものであり、試験結果はこの密着強度を1として各試験片の結果を正規化している。
実験の結果、比較例においては、従来の被膜厚を厚くしていくと徐々に密着強度が低下し、厚みが0.5mm程度になると密着強度を全く期待できなくなることが実証された。すなわち、比較例においては、上死点近傍の被膜厚を厚くしようとしても密着強度が低下する結果、かかる上死点近傍の被膜の耐摩耗性を高めるために膜厚を厚くするという方策を取ることができないということを意味している。
それに対して、実施例1〜4では、その密着強度はほとんど低下することなく、特に膜厚が最大の0.5mmであってもその密着強度は比較例1と同じ値である。
したがって、例えば実施例4のアーク溶射被膜をボア内面に形成することにより、ボアの全長に亘って均一な密着強度を有しながら、上死点近傍の被膜は一般部のそれに比して5倍の厚みを有していることで、より高い耐磨耗性を要する上死点近傍の耐磨耗性を高めながら、密着性に優れた溶射被膜をボア内に形成することが可能となる。
上記する形態のシリンダボアおよび溶射被膜を具備するシリンダブロックを製造することにより、車両エンジンの耐久性の向上に繋がる。また、上記シリンダブロックの製造工程においては、従来の製造工程に比してボアの上死点近傍のみを拡径する工程が付加されるだけであることから、シリンダブロックの製造コストを高騰させることもない。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…基台、2…支持部、3…溶射ツール、4…コントローラ、51…昇降駆動モータ、52…回転駆動モータ、6…溶射ガン、61…先端部材、62…アトマイズノズル、63…補助ノズル、7…パレット、10…溶射装置、C…シリンダブロック、C1…ボア、C1a…上死点近傍ボア、C1b…一般部ボア、A1…補助エア、A2…アトマイズエア
Claims (2)
- 複数のシリンダボアを具備し、ボア内面に溶射被膜が形成されてなるシリンダブロックであって、
前記シリンダボアの上死点近傍は、シリンダボアの他の部位に比して相対的に大きなボア内径を有しており、
前記上死点近傍に形成される溶射被膜は、シリンダボアの他の部位の溶射被膜に比して相対的に大きな厚みを有しており、溶射被膜の表面で形成されるボア内径がシリンダボアの全長に亘って一定である、シリンダブロック。 - 複数のシリンダボアを具備し、ボア内面に溶射被膜が形成されてなるシリンダブロックの製造方法であって、
前記シリンダボアの上死点近傍を、シリンダボアの他の部位に比して相対的に大きなボア内径となるようにシリンダボアを形成する第1の工程と、
前記上死点近傍に形成される溶射被膜を、シリンダボアの他の部位の溶射被膜に比して相対的に大きな厚みとし、かつ、溶射被膜の表面で形成されるボア内径がシリンダボアの全長に亘って一定となるように溶射被膜を形成する第2の工程と、からなるシリンダブロックの製造方法。
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