JP2008231582A - 耐寒耐水服 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷水海域における海上などの事故および災害において着水した際、積極発熱により体温低下を防止することができるとともに、着用快適性を付与した耐寒耐水服を提供する。
【解決手段】少なくとも難燃性能の限界酸素指数が26以上である布帛の片側面に透湿防水膜が付与され耐水圧が147kPa以上からなる外層材と、立体構造の織物または編物からなる厚みが2〜15mmである内層材からなり、酸素と化学反応により発熱する金属粉体がシート状包装体に封入されたものを外装材の内側に具備し、さらに酸素供給装置を具備することを特徴とするものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷水海域における海上などの事故および災害において着水した際、体温低下を防止するための救命用耐寒耐水服に関するものである。
従来、冷水海域において、船舶の海難事故や航空機の事故などによる着水に備えた救命用の耐寒耐水服が使用されている。しかしながら、従来の耐寒耐水服は素材の防水性と保温性が重視されている結果、厚みの厚いかさばったもので身動きが自由にできない状況であった。
耐寒耐水服には大きく分けて、常時着用型と即時着用型の2種類があり、常時着用型は事故が起きていない通常の作業時に着用しているもので、作業における動作性や人体から発生する汗処理が重要である。
これらの改善として、透湿性および防水性を有した外層材と連続気泡型発泡を有する樹脂シートの内層材とから構成された耐寒耐水服が提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、即時着用型は事故が起きる直前、または直後に着用するもので、緊急を要するので各自の体格に合わせたサイズの服ではなく、体の大きな人に合わせたものを用いるのが通常である。即時のため、服と靴、手袋が一体となったぬいぐるみと同じ形態のもので厚みが厚いものが主体となっている。
これらの改善として、防水性を有する単層または複層からなる外層材と、内側に表面摩擦抵抗の小さい布帛が積層された発泡樹脂シートと、その外側に不織布状繊維層及び前記と同一または異なった発泡樹脂シートが順次配置されたトータル厚さ9〜40mmの内層材から構成された耐寒耐水服が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、これら耐寒耐水服は、いずれも、それ以前の耐寒耐水服に比較して着用快適性は改善できたが、満足するには不十分なものであった。特に、常時着用型は長時間着用して作業を行った場合、衣服内の湿度が高くなり、不快感が増し、精神的、肉体的疲労はかなり強いもので、改善できたといえるレベルではなかった。
特許第2764875号公報 特公平7−106716号公報
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点を解決しようとするものであり、冷水海域における海上などの事故および災害において着水した際、直腸の温度が2℃下がれば命が危ないと言われているので、積極発熱を利用し体温低下を防止することができるとともに、着用快適性を付与した耐寒耐水服を提供せんとするものである。さらに、着用快適性が良いために、常時着用型と即時着用型に分ける必要がなく、常時着用型の1種類で即時着用型としても用いることができる耐水服を提供することを目的とする。
本発明はかかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1) 難燃性能の限界酸素指数が26以上である布帛の片側面に透湿防水膜が付与された耐水圧が147kPa以上である外層材と、立体構造の織物または編物からなり、厚みが2〜15mmである内層材とからなる耐水服であって、酸素との反応により発熱する金属粉体が封入された包装体と、酸素供給装置とを具備することを特徴とした耐寒耐水服。
(2) 難燃性能の限界酸素指数が26以上である布帛の片側面に透湿防水膜が付与された耐水圧が147kPa以上である外層材と、立体構造の織物または編物からなり、厚みが2〜15mmである内層材とからなる耐水服であって、水を吸着することにより発熱する無機系多孔質体が封入された包装体と、水供給装置とを具備することを特徴とした耐寒耐水服。
(3) 該外層材の透湿度が5000g/m・24hr以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の耐寒耐水服。
本発明によれば、冷水海域における海上などの事故および災害において着水した際、体温低下を防止することができるとともに、従来品に比較して着用快適性に優れた耐寒耐水服とすることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の耐寒耐水服は、難燃性能の限界酸素指数が26以上である布帛の片側面に透湿防水膜が付与され耐水圧が147kPa以上である外層材と、立体構造の織物または編物(以下これらを総称して「織編物」ということがある)からなる厚みが2〜15mmである内層材とからなり、酸素との反応により発熱する金属粉体が封入された包装体と、酸素供給装置とを具備することを特徴とするものである。
また、本発明の耐寒耐水服は、上記外層材と内層材とからなり、水を吸着することにより発熱する無機系多孔質体が封入された包装体と、水供給装置とを具備することを特徴とするものである。
本発明の外層材に用いる素材は特に限定しないが、難燃性能の限界酸素指数(LOI値)が26以上である布帛を用いるものである。該布帛の限界酸素指数(LOI値)が26以上であれば、通常の大気では自己燃焼は起こりにくいので人的被害を極力抑えることができる。さらには限界酸素指数(LOI値)は28以上あることが好ましい。限界酸素指数(LOI値)の上限は理論的に100(酸素100%の条件)であり、本発明の上限は100となる。ただし現実的に100に近いものはほとんどが無機物であり、好ましくは有機物繊維の最大値近くの60以下である。
一般に、物質の難燃性を示す尺度の一つとしては、限界酸素指数(LOI値)が取り上げられている。該限界酸素指数(LOI値)はJIS K 7201 B−1法で規定されている。該LOI値は、試料が炎を出して燃焼し続けるのに必要な雰囲気の酸素容量%である。したがって、この値が大きな試料ほど燃えにくいといえる。
可燃性繊維とそのLOI値として、綿:17〜19、アクリル:20、ナイロン、ポリエステル:20〜22、羊毛:24〜26、難燃性繊維としてモダクリル(「カネカロン」(登録商標)):27〜29、難燃ポリエステル(「ハイム」(登録商標)):28〜32、難燃ポリノジック:30〜32、ポリ塩化ビニル:35〜37、ポリ塩化ビニリデン:45〜48、耐熱繊維として、アラミド繊維:28〜30、PPS(ポリフェニレンサルファイド):34、炭化繊維(「パイロメックス」(登録商標)):55〜60、ピッチ系炭素繊維:60以上、フッ素繊維(「テフロン」(登録商標)):95、などを挙げることができる。これらの繊維単独で用いることもできるが、各種繊維の混紡、混繊などを行い、布帛としての限界酸素指数が26以上のものを得ることができる。
一例として、アラミド繊維と再生繊維からなる布帛であって、アラミド繊維と再生繊維の割合が重量比で15/85〜40/60であり、アラミド繊維と再生繊維が布帛の80重量%以上であるものを用いることもできる。アラミド繊維と再生繊維の重量比が15/85以上に、再生繊維を多くした場合(逆にアラミド繊維が少なくなる)、風合いが柔らかくなりすぎて耐寒耐水服の外層材として適さない、また、物性的に弱くなり、耐寒耐水服としての強度が不足する。一方、アラミド繊維と再生繊維の重量比が40/60以上にアラミド繊維が多くなった場合(逆に再生繊維が少なくなる)、アラミド繊維は染色性が劣るので目標とする色彩が得られにくくなり、また、物性的にアラミド繊維はモジュラスが高いので布帛の風合いが硬いものとなり、耐寒耐水服にした場合ゴワゴワした感じで着用性が良くない。また、アラミド繊維と再生繊維が布帛の80重量%以上必要な理由は、本発明の耐寒耐水服として活用するための風合い、難燃性能を含む物性を具備するのに適しているためである。また、アラミド繊維の難燃性と再生繊維が難燃再生繊維であれば難燃性能の維持もできる。例えば、20重量%の非難燃繊維が含まれた場合でもある程度の難燃性能が維持できるからである。
アラミド繊維を用いる理由は、難燃性能、耐熱性、耐薬品性、風合いなどに優れている点である。アラミド繊維にはメタ系アラミド繊維(「ノーメックス」(登録商標)、「コーネックス」(登録商標))とパラ系アラミド繊維(「ケブラー」(登録商標)、「テクノーラ」(登録商標)、「トワロン」(登録商標))とがある。
メタ系アラミド繊維のカチオン染料での染色性を向上させるには、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩などを含有させることが好ましい。ただし、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を入れると難燃性や耐光性が劣る傾向があるので、難燃剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
パラ系アラミド繊維の高強力繊維は、耐切傷性、耐熱性に優れているが、結晶性が高く、分子間結合力が強固で緻密な分子構造を有しているため染色性が悪く、染色するのが困難で、ほとんど染色する技術が確立されていないのが現状である。
以上のことから、アラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維を用いることが好ましい。ただし、パラ系アラミド繊維を少量混合することにより、燃焼時の穴あき状態が改善できるのでパラ系アラミド繊維を少量混合しても良い。
一方、再生繊維は、木材またはリンターの繊維素を固めて作ったパルプを原料とする繊維で、パルプをいったん何らかの方法で溶かして、細い孔から押し出し、引き伸ばして糸の形で再生した繊維である。ビスコース法によるレーヨン、ポリノジック、銅アンモニア法によるキュプラ、直接溶解法による「テンセル」(登録商標)がある。再生繊維は、吸湿性や風合いなどに優れ、また燃焼にて溶融することがないので、溶融したものが皮膚に落下または接触により火傷が発生しないなどの点で好ましく用いられる。難燃再生繊維は再生繊維を難燃化したもので、市場に出回っているのは難燃ポリノジック繊維である「タフバン」(登録商標))(東洋紡)、「DFG」(登録商標))(大和紡績)などのステープルがある。難燃再生繊維の製造方法としては、原糸段階で難燃化する方法が挙げられ、例えばポリホスフォネート、ポリホスフォニトリレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェートなどのリン化合物、または臭素含有ポリアクリレートとリン化合物とを紡糸原液に添加した後、常法によって紡糸する方法により得ることが出きる。
布帛への難燃性を付与する方法として、上記した難燃繊維を用い布帛化する方法と、布帛後、難燃剤を染色と同時に浴中で付与(含浸)させる方法や、染色後パッド法で付与する後加工法がある。本発明ではこれらいずれの方法も採用することもできる。
本発明の透湿防水膜を具備した外層材の透湿性は3,500g/m・24hr以上であることが好ましく、さらに湿度による快適性の点からは5,000g/m・24hr以上あることがより好ましい。
耐水圧は海難事故などで水深10m程度潜っても海水が浸水しない程度の耐水圧を具備した外層材であることが必要であり、安全を見た場合、耐水圧は水深15mに相当する147kPa以上あることが好ましい。透湿性、耐水圧はいずれも高い程好ましいが、現状においては、透湿性の上限は10,000g/m・24hr以下で、耐水圧の上限は294kPa以下である。
本発明の耐寒耐水服の外層材の製造方法の一例を示す。
本発明の耐寒耐水服の外層材としては、織物、編物などの布帛を用いることができる。該布帛に用いる繊維としては、紡績糸、フィラメント糸のいずれであってもよい。紡績糸としては、綿の段階でアラミド繊維と再生繊維、その他の繊維を混綿して紡績糸にして用いるか、各繊維の紡績糸を作成した後に、織りまたは編みの段階で各糸を配分する方法などを適宜選べばよい。フィラメント糸としては、仮撚加工糸、インターレース加工糸、流体攪乱「タスラン」(登録商標)加工糸などの任意の加工糸や通常糸などを用いればよい。
また、織または編み上がり反を通常の精練工程を経て染色工程を施せば良い。染料としては、その構成素材によって分散染料、酸性染料、カチオン染料、硫化染料、直接染料、反応染料、バット染料、ナフトール染料などを適宜使用できる、この時に赤外線反射率の調整のため顔料を添加しても良い。アラミド繊維、好ましくはメタ系アラミド繊維にはバット染料、カチオン染料が好ましい。再生繊維には反応染料、バット染料、直接染料などが好ましい。PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維には分散染料が好ましい。
なお、布帛として撥水加工、防汚加工、抗菌加工など任意の加工を施してもよい。ただし、難燃性能を考慮して最適条件を選択する必要がある。
透湿性と防水性を併せ持つ透湿防水膜の加工としては、透湿性のある樹脂を基布にコーティングまたは張り合わせすることにより、作ることができる。一例として、高い透湿性と防水性が必要な場合、微多孔質ポリウレタン膜と無孔質透湿性ポリウレタン膜を積層してなる布帛がある。より具体的な製造方法として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したポリウレタン溶液をナイフコーターやコンマコーター、リバースコーターなどを用いて基布に直接コーティングし、DMF/水を凝固浴として、湿式ゲル化して微多孔質膜を形成し、さらに、この上に無孔質透湿性ポリウレタン膜をラミネート方式で積層することにより、高い透湿性と防水性を持った布帛が得られる。基布への撥水性を付与する方法としては、コーティングによる製膜前か後に通常の撥水処理をすればよい。
本発明の内層材は、保温の目的で用いるもので、立体構造の織編物からなり、厚みが2〜15mmのものである。さらに、50g/cm荷重圧縮時の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。
立体構造の織編物とは、多重パイル布帛からなるもので、二重パイル布帛とするものがより現実的で簡単であるといえるが、本質的には二重パイル布帛の場合のみに限定されるものでなく、三重、四重さらにそれ以上の場合でも適用することは可能である。
二重パイル布帛としては、二重ビロード織機やダブルラッセル編機などにより織りまたは編み上げたものを用いることができる。通常の二重パイル布帛としては、上下二枚の基布の間に該二枚の基布を接結する接結パイルを形成せしめながら製織や製編を行いつつ、ナイフなどの往復運動する刃物を用いて、順次、該上下基布間の接結パイルの中央部を切断して、分離された二枚のカットパイル布帛を得ることができる。本発明はカットパイルを用いることもできるが、保温性の観点からナイフなどでカットせずに上下の基布がついた状態の織編物が適している。
基布およびパイルに用いる繊維は特に限定されるものではなく、ウールや綿などの天然繊維、再生人造繊維、半合成繊維、合成繊維などを、適宜用いればよい。
本発明は内層材に立体構造の織編物を用い、内層材の外側になる基布が織物または編物であるので滑りが良く、また編地を接着する必要がなく、さらに厚みが薄くて済むので、コスト的にも有利である。
パイル構造は、V型のルーズパイル、W型のファーストパイルなどのいずれを採用しても良いが、ファーストパイルを採用する方が、パイル抜けが少なくて好ましい。
内層材の厚みは保温性に影響するので、使用目的、環境により変えれば良い。内層材の厚みは少なくとも保温性の観点から2mm以上あることが必要である。一方、耐寒耐水服としては内層材の厚みは15mm以下であることが必要である。15mmを超えると、着ぶくれし、動きが制約され着心地の良いものが得られなくなる。
内層材の厚みは、JIS K1018 8.19に記載の圧縮率および圧縮弾性率に記載の方法に従い測定する。ただし、標準圧力(T)は0.7kPa(7gf/cm)、一定圧力(T)は4.9kPa(50gf/cm)とする。厚み保持率(%)は(T−T/T)×100で計算する。本発明の厚みは標準圧力(T)で測定した値である。
厚み保持率は保温性(断熱性)に影響するので、着用時のヘタリや、重ね保管時のヘタリを考慮すれば50g/cm荷重圧縮時の厚み保持率は50%以上あることが好ましい。さらに好ましくは70%以上である。厚み保持率の上限は100%であるが、好ましい上限として95%である。それ以上であれば、クッション性が悪くなり、硬い物となって着用性が悪くなる。厚み保持率に関係するのはパイル糸であり、パイル糸に嵩高性があるのが最適である。具体的には合成繊維使いではウーリー加工などの嵩高加工糸や、高収縮糸と低収縮糸を混繊して用いるなどすることが好ましい。天然繊維として嵩高性があるウールや綿が好ましい。
着用快適性は吸湿性に依存することが多大であり、吸放湿性能の△MRで表すことが適している。△MRは30℃×湿度90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率と20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)との差である。20℃×湿度65%RH雰囲気とは、例えば衣服であれば、洋服ダンスの中に入っている状態、すなわち着用前の環境に相当する。30℃×湿度90%RH雰囲気とは、運動状態における衣服内の環境にほぼ相当する。よって、衣服を着用してから運動したときに衣服内のムレをどれだけ吸収するかに相当する。△MR値が高いほど快適と言える。一般にポリエステルの△MRは0%、ナイロンで2%、木綿で4%、ウールで6%程度である。本発明の耐寒耐水服は特に△MRについて限定しないが、着用快適性をあげるためには△MRは2.5%以上が好ましく、より好ましいのは2.8%以上である。好ましい上限は15%程度である。これ以上であれば吸湿性が増し生地が重たくなるので好ましくない。
本発明の内層材の特にパイル糸に△MR値が高い繊維を用いることが好ましい。例えば捲縮があるウールを用いれば最適である。一方、吸湿性のないポリエステル繊維100%使い内層材の基布面に特開2002−180375号公報で開示されている、吸湿性(△MR)が20%以上であり、かつ吸放湿性を有する無機系微粒子をバインダーにより繊維上に固着させることも好適である。特に比表面積が300m/g以上で△MRが20%以上のシリカ粒子を用いると、吸湿による発熱効果が得られ本目的の保温効果が得られる。バインダーとしては、風合い、接着強度、洗濯耐久性の点でシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびメラミン樹脂などのバインダーが好ましい。
内層材の片側面に、吸放湿性樹脂を付与することもできる。吸放湿性を付与する方法としては、親水性を有する水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、およびアミド基(−CONH)から選ばれた少なくとも一種をもつ吸水性シリコーン系樹脂や、エチレングリコールを多数付加した吸水性シリコーン系樹脂や、ポリエチレンオキサイド基含有化合物や、セルロース系化合物などの親水化加工剤をバインダーに混合したりして、スプレー法や片面コーティング法などで付与する方法を採用することができる。後者の親水化加工剤の中では、好ましくはポリアルキレングリコール−ポリエステルブロック共重合体を主成分とする親水性ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明においては、積極的に発熱による保温をさせることにより保温効果を高める。本発明の酸素との反応により発熱する金属粉体を封入するための包装体として、シート状袋が好ましく用いられる。発熱物質である金属粉体としては、鉄粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、マグネシュウム粉、あるいはこれらの2種以上の混合金属粉末、更にこれらの金属からなる合金粉末など、一般に酸素との反応により発熱する金属粉体であれば用いることができる。これらの金属粉の中でも、安全性、取扱性、コスト、安定性などの観点から最も優れている鉄粉を用いることが好ましい。さらに発熱を促進させるために、カーボンや活性炭などの炭素成分や、金属粉体の表面酸化被膜を破壊し発熱反応を連続的に発生させる金属の塩化物、水などを混合した湿った公知の粉末状発熱組成物を入れることも好ましい。包装体の材料は通気性のない、言い換えれば酸素を通さないポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムの単独フィルム、あるいは不織布または織物にポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムを貼り合わせた包装体等を挙げることが出来る。通気性のない包装体を用いるのは、冷水域に着水する緊急事態が発生しない場合は、特に発熱が必要でないからである。一方、冷水域に着水した場合は体温維持のため積極保温(発熱)が必要となる。その時に包装体の一方から酸素または空気を送り込み発熱させ、送り込み口と反対の所に余分な酸素または空気の逃がし弁(逆止弁)を設ければ良い。酸素または空気は小型ボンベに貯蔵しておけば良く、本発明の酸素供給装置としては、ボンベ等酸素を供給できるものであれば特に限定されることなく用いることができる。ボンベを用いた場合には、緊急時に紐を引けばボンベから気体(酸素または空気)が一定量出るようにし、ビニールパイプで各シート状袋に送り込むようにすることが好ましい。酸素供給装置の取り付け位置は特に限定するものではなく、動作において邪魔にならない位置であればよい。外層材の内側または外側等に好ましく取り付けられる。包装体へのビニールパイプの配線は、パイプが詰まったり、折れたりしたときに発熱しない被害を最小にするために、直列配線でなく、並列配線が好ましい。
一方、本発明の水を吸着することにより発熱する無機系多孔質体としては、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等を挙げることができる。ゼオライトとしてはAタイプ、Xタイプ、Yタイプ等が使用できるが、最大の比表面積と吸水性を有するXタイプのゼオライトが好ましい。シリカゲルは特に比表面積が300m/g以上で△MRが20%以上の粒子を用いることが好ましい。包装体の材料は漏水性のないシート状物を用いればよく、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフイルム、塩化ビニル等の単独フィルム、あるいは不織布または織物にこれらのフィルムを貼り合わせた包装体等を挙げることが出来る。漏水性のない包装体を用いるのは、冷水域に着水する緊急事態が発生しない場合は、特に発熱が必要でないからである。一方、冷水域に着水した場合は体温維持のため積極保温(発熱)が必要となる。その時に包装体の一方から水を送り込み発熱させ、送り込み口と反対の所に余分な水の逃がし弁(逆止弁)を設ければ良い。場合により逃がし弁を用いなくても良い。水はスプレーとして圧縮空気や高圧ガスを用い霧状として送り出せば良い。本発明において、水供給装置としては、圧縮空気などにより水を供給できるものであれば特に限定することなく用いることができる。また、圧縮空気ボンベと水タンクが分離したタイプのスプレーノズルから送り出すこともできる。緊急時に紐を引くことにより、スプレーやボンベから水と空気の混合体が一定量出るようにしビニールパイプで各包装体に送り込むようにすることも好ましい。圧縮空気ボンベや水タンクの取り付け位置は特に限定されるものではなく、動作において邪魔にならない位置であればよい。外層材の内側または外側等に好ましく取り付けられる。
包装体は保温目的に用いられるので、保温効果(延命)が必要な部位に装着することが好ましい。例えば首筋、背中、腰周り、足先等に分散させて配置させることが好ましい。包装体の取り付け位置は、外層材と内層材の間でも、内層材の内側(体より)でも良い。
包装体へのビニールパイプの配線は、パイプが詰まったり、折れたりしたときに発熱しない被害を最小にするために、直列配線でなく、並列配線が好ましい。
常時着用型の耐寒耐水服は密閉したツナギ服となっているので、少し動いただけで汗が出て蒸し暑く感じる状況である。そのために透湿性のある外層材を用いているが、それだけでは不十分で蒸し暑さが解消できない場合がある。本発明として、特開2005−154945号公報に記載の、不織布の間に粒状シリカゲルを充填した小間を有するシート状物を耐寒耐水服の内部に備えたものを用いればより好ましい。これにより汗から発生した蒸気がシリカゲルに吸湿され相対湿度が下がり快適な環境を作り出すことできる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の評価・測定は次の方法で行ったものである。
<限界酸素指数(LOI値)>
JIS K 7201 B−1法にて測定する。測定サンプル数は各1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
<厚み>
JIS K1018 の編地の厚さ測定で普通の編地に適応する0.7kPa(7gf/cm)の荷重で測定する。測定サンプル数は各1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
<厚み保持率>
内層材の荷重による厚み保持率としてJIS K1018 8.19に記載の圧縮率及び圧縮弾性率に記載の方法に従い測定する。ただし、標準圧力(T)は0.7kPa(7gf/cm)、一定圧力(T)は4.9kPa(50gf/cm)とする。厚み保持率(%)は(T−T/T)×100で計算する。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
<耐水性>
JIS L 1092のB法にて測定する。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
<透湿性>
JIS L 1099のA−1法にて測定する。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
<吸湿性の測定:△MR>
吸湿性は次式で得られる△MRで表す。
△MR=MR2−MR1
MR1:105℃の乾熱乾燥機内に2時間放置し絶乾状態とした後、20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)を言う。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
MR2:前述の絶乾状態から、30℃×湿度90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率を言う。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
[実施例1]
メタ系アラミド繊維(1.7dtex×51mm、捲縮数9山/インチ)を35%(重量比)と難燃ポリノジック繊維(1.7dtex×40mm、捲縮数9山/インチ)を65%(重量比)用いて30番双糸(30/2S)の紡績糸を作成した。この時のメタ系アラミド繊維の吸湿性能である△MRは1.6%、難燃ポリノジック繊維は4.8%であった。この紡績糸をタテ糸、ヨコ糸ともに用い、タテ87本/2.54cm、ヨコ78本/2.54cmの2/1の綾組織で織り上げた。この生地を用い、通常の精練、乾燥工程を経て染色前の基布を得た。次にオリーブグリーン色に染めるため、連続染色機を用いて、分散染料とバット染料からなる染液に浸漬、絞液し、スチーマ処理、還元処理、酸化処理、ソーピング、湯洗い、乾燥を行った。次に液流染色機を用いて、均染型分散染料と均染剤を用い140℃×30分で染色を行った。これにより目標とする色相のオリーブグリーン色が得られた。できあがった外層材布帛の難燃性能である限界酸素指数(LOI値)は31.1とかなり高い数値で、またミクロバーナー法による燃焼試験では、炭化面積20cm、残炎時間0秒、残じん時間0秒であり優れた難燃性能があることが判った。燃焼部分は炭化され、溶融状態ではなかった。
次にフッ素系撥水剤にて撥水加工を行った。撥水剤を3重量%含有した水分散液に該生地を浸漬し、絞り率40%で絞液して150℃で乾燥処理を行った。次いで、
クリスボンMP829 100部(ポリウレタンエラストマー)
アサヒガードAG650 3部(フッ素系撥水剤)
バーノックD500 3部(架橋剤)
の配合ポリウレタン溶液をナイフコーターにて該生地に150g/mでコーティングし、DMF10%の水溶液に3分浸漬してポリウレタンを湿式ゲル化させ、80℃の湯にて10分間水洗し、乾燥した。更に、
クリスボンNY319 100部
トルエン 30部
の透湿性ポリウレタン溶液を50g/mでコーティングし、80℃で1分間乾燥して無孔質透湿性ポリウレタン膜を積層した外層材を得た。外層材の耐水圧は250kPaで、透湿度は6,500g/m・24hrであった。
内層材として、パイル糸にポリエステルのウーリー加工糸167デシテックス(dtex)/2(トータル繊度334デシテックス)、48フィラメント糸をタテパイル糸として用いた。地糸のタテ、ヨコにポリエステル・ステープル繊維1.3dtex×51mmからなる紡績糸(60S/2)を使用し、二重パイル織機にてタテパイル織物を製織した。タテパイルを切ることなく上下の地がつながった1枚の織物として織り上げた。地織密度はタテ×ヨコ:82本×42本/2.54cm、パイル密度はタテ82本/2.54cmで16越ファーストパイルとした。パイル間は4mmであった。織りあがった二重パイル織物を98℃の連続水洗機にて3分間通して精練をおこなった。その後、125℃で通常の方法にて高圧ジッカー染色機にて染色を行った。これにより、弾力性のある織物が得られた。この織物の厚みは2.95mmで、50g/cm荷重時の厚み保持率は85%であった。吸放湿性能の△MRは0.3%であった。この織物を内層材として用いた。
目付50g/mのポリエステル不織布と厚さ30ミクロンのポリエチレンフィルムを重ね合わせたものを金属粉体の包装体とした。この包装体を150mm×100mmに切断し、ポリエチレンフィルム面が互いに内側となるようにして重ね合わせ、3方の周辺部を加熱融着させ封筒状袋を作成した。なお、貼り合わせ部の幅は5mmとした。次に、鉄粉12g、活性炭2.2g、木粉1g、バーミキュライト0.6g、高分子吸水剤0.6g、塩化ナトリウム1g、水7gを窒素雰囲気下で混合し発熱組成物を調整した。この発熱組成物を前記の封筒状袋に入れた後、残り1辺を加熱融着させ発熱袋とした。この発熱袋を7袋作成した。
耐寒耐水服として外層材と内層材を別々に縫製し、内層材の内側(体側)に首筋、腰両サイド、腹両サイド、左右の足先の計7カ所に発熱袋を両面粘着テープで貼り付けた。各発熱袋の一辺に穴を開けビニールパイプを挿入接着させた。そのビニールパイプの対極側に排気用逃がし弁(逆止弁)を装着した。7本のビニールパイプ束ね背中に設置した圧縮空気ボンベにつないだ。圧縮空気ボンベはCFRP製(炭素繊維強化プラスチック製)で内容積500ml、充填圧力10MPa、ワイヤーロープを引けば空気が放出出来るタイプを用いた。その後、内層材からできたライナーをファスナーで外層材の内側にセッティングした、得られたものは常時着用型および即時着用型を兼ねたフードから靴まで一体型の耐寒耐水服とした。
この耐寒耐水服は従来の耐寒耐水服に比較して風合いが柔らかく着心地の良いものであった。この耐寒耐水服を用い0℃のプールで着用テストを行った。プールに飛び込んだ直後、ワイヤーロープを引っ張り、圧縮空気を発熱袋へ送り込んだ。これにより発熱し、従来の耐寒耐水服に比較して保温効果が優れていることがわかった。4時間後の直腸部体温低下は1.1℃で命に別条はなかった。
[実施例2]
内層材としてパイル糸にウールの毛番手50.8Sの紡績糸を用い、そのほかの製織条件は実施例1と同じとした。その後、通常の条件で精練、乾燥を行った。この織物の厚みは2.53mmで、50g/cm荷重時の厚み保持率は80%であった。吸放湿性能の△MRは3.0%であった。この織物を内層材として用いた。
外層材は実施例1で作成した布帛を用い、内層材とは別々に縫製した。実施例1と同じように内層材の内側(体側)に首筋、腰両サイド、腹両サイド、左右の足先の計7カ所に発熱袋を両面粘着テープで貼り付けた。各発熱袋の一辺に穴を開けビニールパイプを挿入接着させた。そのビニールパイプの対極側に排気用逃がし弁(逆止弁)を装着した。7本のビニールパイプ束ね背中に設置した圧縮空気ボンベにつないだ。圧縮空気ボンベはCFRP製で内容積500ml、充填圧力10MPa、ワイヤーロープを引けば空気が放出出来るタイプを用いた。その後、内層材からできたライナーをファスナーで外層材の内側にセッティングした、得られたものは常時着用型および即時着用型を兼ねたフードから靴まで一体型の耐寒耐水服とした。
この耐寒耐水服は従来の耐寒耐水服に比較して風合いが柔らかく着心地の良いものであった。この耐寒耐水服を用い0℃のプールで着用テストを行った。プールに飛び込んだ直後、ワイヤーロープを引っ張り、圧縮空気を発熱袋へ送り込んだ。これにより発熱し、従来の耐寒耐水服に比較して保温効果が優れていることがわかった。4時間後の直腸部体温低下は0.9℃で命に別条はなかった。
[実施例3]
内層材および外装材は実施例1と同じものを用いた。発熱するシート状包装体として実施例1と同じ、目付50g/mのポリエステル不織布と厚さ30ミクロンのポリエチレンフィルムを重ね合わせたものを用いた。この包装体を150mm×100mmに切断し、ポリエチレンフィルム面が互いに内側となるようにして重ね合わせ、3方の周辺部を加熱融着させ封筒状袋を作成した。なお、貼り合わせ部の幅は5mmとした。次に、水を吸着することにより発熱する無機系多孔質体として富士シリシア化学(株)製サイリシア550で、平均粒子径2.7μm、平均比表面積が500m/g、△MRが52%のシリカ粒子15gと活性炭5gを湿度の低い部屋で混合調整した。この発熱組成物を前記の封筒状袋に入れた後、残り1辺を加熱融着させ発熱袋とした。この発熱袋を7袋作成した。
外層材と内層材は別々に縫製した。実施例1と同じように内層材の内側(体側)に首筋、腰両サイド、腹両サイド、左右の足先の計7カ所に発熱袋を両面粘着テープで貼り付けた。各発熱袋の一辺に穴を開けビニールパイプを挿入接着させた。そのビニールパイプの対極側に排気用逃がし弁(逆止弁)を装着した。7本のビニールパイプ束ね背中に設置した水と炭酸ガスを充填した金属製で内容積360mlのスプレーにつないだ。発射装置としてワイヤーロープを引けば噴霧状に水が放するタイプを用いた。その後、内層材からできたライナーをファスナーで外層材の内側にセッティングした、得られたものは常時着用型および即時着用型を兼ねたフードから靴まで一体型の耐寒耐水服とした。
この耐寒耐水服は従来の耐寒耐水服に比較して風合いが柔らかく着心地の良いものであった。この耐寒耐水服を用い0℃のプールで着用テストを行った。プールに飛び込んだ直後、ワイヤーロープを引っ張り、噴霧状の水を発熱袋へ送り込んだ。これにより発熱し、従来の耐寒耐水服に比較して保温効果が優れていることがわかった。4時間後の直腸部体温低下は1.3℃で命に別条はなかった。

Claims (3)

  1. 難燃性能の限界酸素指数が26以上である布帛の片側面に透湿防水膜が付与された耐水圧が147kPa以上である外層材と、立体構造の織物または編物からなり、厚みが2〜15mmである内層材とからなる耐水服であって、酸素との反応により発熱する金属粉体が封入された包装体と、酸素供給装置とを具備することを特徴とした耐寒耐水服。
  2. 難燃性能の限界酸素指数が26以上である布帛の片側面に透湿防水膜が付与された耐水圧が147kPa以上である外層材と、立体構造の織物または編物からなり、厚みが2〜15mmである内層材とからなる耐水服であって、水を吸着することにより発熱する無機系多孔質体が封入された包装体と、水供給装置とを具備することを特徴とした耐寒耐水服。
  3. 該外層材の透湿度が5000g/m・24hr以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐寒耐水服。
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