JP2008228702A - エノキタケ抽出物含有食肉品変色防止剤 - Google Patents

エノキタケ抽出物含有食肉品変色防止剤 Download PDF

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Abstract

【課題】赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品に添加する変色防止剤であって、コールドチェーンが途切れても変色防止効果が高くかつその持続性に優れ、更に安全性の高い変色防止剤組成物を提供すること。
【解決手段】エノキタケ抽出物を含む変色防止剤を用いることにより、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の鮮紅色を、長期間にわたり保持することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、エノキタケ抽出物を含有する、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品の変色防止剤、前記変色防止剤を含む赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品等の食肉品、更に前記変色防止剤を用いる、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品等の食肉品の変色防止方法に関する。本発明はまた、食品中のミオグロビンからメトミオグロビンへのメト化率を定量する方法に関する。
赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品等の食肉類において、鮮やかな赤色の肉色を維持することは、商品価値を決定する重要なファクターである。食肉類の褐色化は、食肉類に含まれるミオグロビンのメト化が主な原因である。例えば、マグロ、カツオなどの赤身魚や牛肉、豚肉などの畜肉類に含まれるミオグロビン色素は空気中で光などに照射されると極短時間にメト化し、ミオグロビン分子中の鉄原子が二価から三価になることにより、この色素は鮮紅色から茶褐色に変化する。このような褐色化あるいは変色の防止方法として、従来、いわゆる“コールドチェーン”と呼ばれる−40℃以下の保管温度での物流方式が採用されている。しかしながら、解凍後に急速に褐色化が進行するという問題もある。また、小売店などで商品として陳列、販売される際はチルド状態でおかれるが、このときに変色してしまうことがある。
また、生鮮魚肉、畜肉加工品において、還元物質であるL−アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、没食子酸、カテキン類を単独又は他の物質と組み合わせて、また発色剤として亜硝酸ナトリウム等を添加して赤身肉の色調を保持することが試みられてきた(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、L−アスコルビン酸ナトリウム、没食子酸は効果に持続力が無い。また、カテキン類は特有の苦味や渋味があり、多量に使用することができない。また、亜硝酸ナトリウムの使用は安全という観点から望ましくない。
また、従来、食品中のミオグロビンからメトミオグロビンへの変化は、ミオグロビンあるいはメトミオグロビンを食品から抽出して分析するなど、時間がかかり、かつ複雑な手順が必要であったため、簡便に測定する方法が望まれていた。
特開平10−117730号公報 特願平9−339271号公報 特願平11−218398号公報
本発明は、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品に添加する変色防止剤であって、コールドチェーンが途切れても変色防止効果が高くかつその持続性に優れ、更に安全性の高い変色防止剤組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の鮮紅色を維持したまま保存することができる、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の保存方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、−40℃以下のような極低温あるいは他の変色防止剤を使用することなく、安全かつ低コストな赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の保存方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、鮮紅色を維持され、かつ変色防止剤に由来する味や匂いが付与されていない、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品を提供することを目的とする。
本発明はまた、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の色調の変化を、数値化して食肉類の鮮度を検査する方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、食肉類中のミオグロビン及びメトミオグロビンの量を簡便に定量する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、食肉類中におけるミオグロビンからメトミオグロビンへの変化を簡便に検出する方法を提供することを目的とする。
エノキタケ抽出物を使用することにより、食肉類の変色を防止できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1>
エノキタケ抽出物を含有する、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品の変色防止剤。
<2>
エノキタケ抽出物が、エノキタケの水抽出物あるいは水性溶剤抽出物である、上記<1>記載の変色防止剤。
<3>
上記<1>または<2>に記載の変色防止剤を含む、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品である加工食品。
<4>
食品の全重量に対して、変色防止剤の含有量が0.1質量%〜20質量%の範囲にある、上記<3>記載の加工食品。
<5>
赤身魚肉が、マグロ、カツオ、ブリ、サンマ、サバ、イワシあるいはこれらの加工品である、上記<3>または<4>に記載の加工食品。
<6>
畜肉が、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、鹿肉、鴨肉、合鴨肉あるいはこれらの加工品である、上記<3>または<4>に記載の加工食品。
<7>
上記<1>または<2>に記載の変色防止剤を、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品に適用することを特徴とする、加工食品の製造方法。
<8>
赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品への変色防止剤の適用が、変色防止剤を添加、塗布若しくは噴霧することにより、または変色防止剤に浸漬することにより行われる、上記<7>記載の方法。
<9>
食品中のミオグロビンのメト化率を測定する方法であって、食品表面の画像処理により得られるRGB値を指標とすることによりメト化率を測定することを特徴とする方法。
本発明の変色防止剤の使用により、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の鮮紅色を長期間にわたり保存することができる。従って、−40℃以下のような極低温や、安全面あるいは味覚面で好ましくない他の変色防止剤を使用することなく、安全かつ低コストで、鮮紅色が保持された赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品を得ることができる。また、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の流通において、コールドチェーンが途切れても、変色あるいは退色を起こすことがなく、商品価値を低下させることがない。また、本発明により、鮮紅色が維持され、かつ変色防止剤に由来する味や匂いが付与されていない、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品が提供される。
本発明のミオグロビンのメト化率を測定する方法により、赤身魚肉、畜肉の生鮮品またはその加工品の鮮度を数値化して評価あるいは検査することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔エノキタケ抽出物〕
本明細書において、エノキタケ抽出物とは、生、乾燥物、或いは凍結乾燥物のエノキタケから、水、水溶性溶媒若しくは水と水溶性溶媒との混合物により液相中に抽出されたものを意味する。
エノキタケ(榎茸)は、キシメジ科の食用キノコであり、人工栽培あるいは天然物であってもよく、またいずれの産のものを用いてよい。
抽出方法は、天然物の抽出方法として一般に使用されているいずれの方法を用いてもよい。典型的には、エノキタケの凍結乾燥物を粉砕し、これに溶媒を添加し、更に必要に応じてホモジネート等の処理を行い、ろ過、遠心分離等の方法により固形物と分離し、液相から溶媒を溜去して残渣を得る方法である。
例えば、水抽出の場合には、抽出効率から熱水を用いることが好ましく、熱水をエノキタケに添加して抽出を行い、ろ過、遠心分離等の方法により、固形物と分離することが好ましい。熱水を用いる場合には、例えば、使用するエノキタケの重量に対して、1.0倍〜20倍程度の範囲内で使用することができる。また、抽出時間は5分以上、更に15〜30分程度であることが好ましい。
変色防止効果の観点から、水抽出よりも水溶性溶媒による抽出がより好ましい。本明細書において水溶性溶媒とは、水と相溶性のある溶媒を意味し、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、食品に用いるという観点からは安全性の確立されているエタノールが好ましい。ただし、アセトン抽出物も効力の観点からはエタノール抽出物と同等である。
水溶性溶媒あるいは水と水溶性溶媒を用いる場合には、使用するエノキタケの重量に対して、例えば1.0倍〜20倍程度の範囲内で使用することができる。また、抽出時間は5分以上、更に10分〜1時間程度であることが好ましい。また、抽出温度は室温であればよいが、各溶媒の沸点程度まで上昇させることは可能である。
〔変色防止剤〕
本発明の変色防止剤は、上述したエノキタケ抽出物を活性成分として含むものである。本発明の変色防止剤は、エノキタケ抽出物をそのまま用いてもよく、溶媒に溶解若しくは懸濁して用いてもよく、あるいは凍結乾燥物のような固体としてそのまま用いてもよい。また固形抽出物を溶媒に溶解若しくは懸濁して用いてもよい。また、油脂を用いてエマルションとして用いてもよい。
エノキタケ抽出物を溶液として用いる場合には、エノキタケ抽出物を、水、エタノール等の溶媒、好ましくは水に溶解して用いることができる。用いる濃度は目的により適宜決定することができるが、例えば、エノキタケ乾燥物の重量に換算して、エノキタケ1質量%〜100質量%、より好ましくは20質量%〜100質量%程度の濃度で用いることができる。例えば、エノキタケ乾燥物5gから得られた抽出物を5mlの水で溶解したものは「50質量%」の濃度である。
また、油脂を用いてエマルションとして用いる場合には、油脂として、イワシ、サバ、サンマ、タラ等を原料とする魚油、大豆、綿実、やし、パーム、パーム核、サフラワー、米、トウモロコシ、なたね等を原料とする植物油、乳、牛、豚等を原料とする動物油、及びこれらを加工した油脂(分別、硬化、エステル交換)を用いてもよい。エマルションの種類としては、O/W、W/O、O/W/O、W/O/Wのいずれのタイプでもよい。また、製造方法は従来公知の方法で行えばよく、水相部分にエノキタケ抽出物を溶解して用いればよい。
本発明の変色防止剤には、エノキタケ抽出物以外に更に、例えばビタミン類、EPA、DHA等の脂肪酸及びエステル類、あるいはpH調整剤等の添加剤を添加してもよい。
本発明の変色防止剤を溶液として用いる場合には、変色防止剤の溶液を添加(混入あるいは注入)、塗布、噴霧、噴射等の方法により適用することができる。また変色防止剤の溶液に食肉類を浸漬することにより行ってもよい。
本発明の変色防止剤の使用量は、上記適用方法あるいは目的により大きく異なり、適宜決定することができる。
例えば、溶液で添加する場合には、食品の全重量に対して、エノキタケの乾燥重量に換算したエノキタケ抽出物を0.1質量%〜20質量%の範囲内で添加することが好ましく、更に1質量%〜10質量%の範囲内で添加することがより好ましい。エノキタケの乾燥重量に換算したエノキタケ抽出物の量とは、例えば、エノキタケ乾燥物5gから抽出した抽出物全量を100gの食肉に添加した場合には、「5質量%」の添加量となる。
〔対象食品〕
本発明の変色防止剤は、特に赤身魚肉若しくは畜肉の生鮮品または加工品に有用である。赤身魚肉としては、マグロ(ビン長マグロ、メバチマグロ、クロマグロ、インドマグロ)、鯨、カツオ、ブリ、サンマ、サバ、イワシ、カンパチが挙げられる。また、例えば、ブリ、サンマ、サバ、イワシ、カンパチ等の魚肉のいわゆる“血合”と呼ばれる部分も、本発明の変色防止剤を用いて変色を防止することができる。魚肉の加工品としては、さしみ、切り身、さく、ネギトロ等の剥き身、すり身等、あるいはその他の添加剤や食材を含むものなど限定無く用いることができる。
畜肉としては、牛肉、豚肉、馬肉、七面鳥肉、羊肉、鶏肉、鹿肉、鴨肉、合鴨肉が挙げられる。加工品としては、スライス、ひき肉等、あるいはその他の添加剤や食材を含むもの限定無く用いることができる。
本明細書において、“加工品”には上記のように様々な加工を施した物を含むが、本発明の変色防止剤を適用したという狭い意味において“加工食品”という用語を用いる場合がある。すなわち、本発明の変色防止剤は、上述した赤身魚肉若しくは畜肉の生鮮品またはこれらの加工品に対して適用することができ、本明細書において本発明の変色防止剤を適用したこれらの食品を“加工食品”とも呼ぶ。
〔ミオグロビンのメト化率の測定方法〕
本発明はまた、食品中のミオグロビンのメト化率を測定する方法であって、食品表面の画像処理によりRGB値を得て、これを指標とすることによりメト化率を測定することを特徴とする方法、を提供する。
食品中のミオグロビン量若しくはメトミオグロビン量またはメト化率と、食品表面の画像処理により得られたR値とG値との間に、良好な相関関係があることが見出された。すなわち、マグロ魚肉及び牛肉を用いた実験では、食品表面の画像処理から得られるR値とメト化率には負の相関(相関係数=〜−1)があり、G値とメト化率の間には正の相関(相関係数=〜1)がある。
従来、食品中のミオグロビンのメト化率の測定は、メト化により生じるメトミオグロビンを食品から抽出してその量を測定することにより行っていたため、作業が煩雑であり、かつ時間のかかるものであった。これに対し、食品の画像処理により簡便に得られるRGB値を指標とすれば、簡便かつ迅速に、ミオグロビンのメト化率を測定することができる。
本発明の方法の手順を簡単に説明する。
初めにミオグロビンを含む標準試料を用意し、標準試料中のミオグロビン量及びメトミオグロビン量を従来のいずれかの定量方法により定量しておく(例えば、氷冷した蒸留水で抽出した抽出液の540nm、503nmにおける吸光度比を測定することにより定量する。「尾藤方通(1974)メトミオグロビンの測定−主としてマグロ肉について−,水産生物化学・食品学実験書(斎藤恒行,内山 均,梅本 滋,川端俊治 編),恒星社厚生閣,pp.275-280.」参照)。
次に、各試料について暗箱内にフラッシュまたはリングライトの照明を用いてCCDカメラ(400万画素数程度のデジタルカメラでよい)にて画像撮影を行い、得られた32ビットカラー画像をRGBの要素に分割できるソフト、(例えば、NIHのパブリックドメインであるImageJ)を用いてRGB値を得る。
試料について、予め公知の方法で測定しておいたミオグロビンとメトミオグロビン含量と、その試料のR値またはG値とから相関直線を得ておく、実際の試料の測定により得たR値とG値を相関直線に内挿することで、メトミオグロビン生成率を測定することができる。
実施例1
(1)エノキタケ−アセトン抽出物の調製
エノキタケ子実体を凍結乾燥して、細かく粉砕したもの5gに70%アセトンを50ml添加し、1分間ホモジナイズした。次に3000rpmで、20分間遠心分離して、上清と沈殿物を分けた。この沈殿物に再度70%アセトン50mlを添加し、ホモジナイズ、遠心分離の操作を繰り返した。得られた二つの上清を合わせて、エバポレーターで溶媒を溜去して残渣を得る。これに蒸留水を5ml添加してアセトン抽出液(以下、“5%エノキタケ−アセトン抽出液”と呼ぶ)とした。
(2)エノキタケ−エタノール抽出物の調製
エノキタケ子実体を凍結乾燥して、細かく粉砕したもの2gに70%エタノールを20ml添加し、1分間ホモジナイズした。次に3000rpmで、20分間遠心分離して、上清と沈殿物を分けた。この沈殿物に再度70%エタノール20mlを添加し、ホモジナイズ、遠心分離の操作を繰り返した。得られた二つの上清を合わせて、エバポレーターで溶媒を溜去して残渣を得る。これに蒸留水を2ml添加してエタノール抽出液とした。
実施例2
マグロ肉における変色防止効果
実施例1の方法で製造した、5%エノキタケ−アセトン抽出液を用いて以下の実験を行った。
100gにカットされた解凍メバチマグロ肉を氷冷下破砕肉にして、5%エノキタケ−アセトン抽出液5mlを添加し、よく混合した(試料1)。
一方、コントロールとして、100gにカットされた解凍メバチマグロ肉を氷冷下破砕肉にして、蒸留水5mlを添加し、よく混合した(コントロール1)。
試料1及びコントロール1をそれぞれ氷冷(1〜2℃)下で7日間保存し、下記データを採取した。
(1)0日目(添加直後)、1日目、2日目、3日目、5日目、及び7日目に、表面の同一箇所について写真撮影し、画像をImageJ画像変換ソフトにより処理して、RGB値を得た。保存期間とRGB値の関係をプロットしたグラフを図1に示す。
(2)0日目(添加直後)、1日目、2日目、3日目、5日目、及び7日目に、一部を採取し、氷冷した蒸留水で抽出した。抽出液の540nm及び503nmにおける吸光度比を測定し、マグロ肉で公知の、「全ミオグロビンに対するメトミオグロビンの割合」を示すグラフに内挿することにより、メト化率(%)(測定試料中の、メトミオグロビン含量/全ミオグロビン含量)を測定した。
メト化率と保存期間との関係をプロットしたグラフを図2に示す。
(3)(1)及び(2)で得られた、RGB値とメト化率の関係を図3に示す。
RGB値とメトミオグロビン含量の相関係数を調べたところ、下記表に示されるように、メト化率とR値は負の相関があり、メト化率とG値は正の相関があることが明らかとなった。
Figure 2008228702
(4)上記の他、0日目(添加直後)、1日目、2日目、3日目、5日目、及び7日目に、試料のpH、脂質量の測定を行ったが、試料、コントロール共に大きな変化は見られなかった(データは示していない)。
実施例3
牛肉における変色防止効果
実施例1の方法で製造した、5%エノキタケ−アセトン抽出液を用いて以下の実験を行った。
100gにカットされた氷蔵牛肉を氷冷下すり身にして、5%エノキタケ−アセトン抽出液5mlを添加し、よく混合した(試料2)。
一方、コントロールとして、100gにカットされた氷蔵牛肉を氷冷下すり身にして、蒸留水5mlを添加し、よく混合した(コントロール2)。
試料2及びコントロール2をそれぞれ氷冷(1〜2℃)下で12日間保存し、下記データを採取した。
(1)0日目(添加直後)、3日目、6日目、9日目、及び12日目に、表面の同一箇所について写真撮影し、画像をNIHイメージングソフトにより処理して、RGB値を得た。保存期間とRGB値の関係をプロットしたグラフを図4に示す。
(2)0日目(添加直後)、3日目、6日目、9日目、及び12日目に、一部を採取し、氷冷した蒸留水で抽出した。抽出液の540nm及び503nmにおける吸光度比を測定し、マグロ肉で公知の、「全ミオグロビンに対するメトミオグロビンの割合」を示すグラフに内挿することにより、メト化率(%)(測定試料中の、メトミオグロビン含量/全ミオグロビン含量)を測定した。
メト化率と保存期間との関係をプロットしたグラフを図5に示す。
(3)(1)及び(2)で得られた、RGB値とメト化率の関係を図6に示す。
RGB値とメトミオグロビン含量の相関係数を調べたところ、実施例2における結果と同様にメト化率とR値には負の相関があり、メト化率とG値は正の相関があることが明らかとなった。
Figure 2008228702
(4)上記の他、0日目(添加直後)、3日目、6日目、9日目、及び12日目に、試料のpH、脂質量の測定を行ったが、試料、コントロール共に大きな変化は見られなかった(データは示していない)。
実施例4
エノキタケ抽出物と従来の酸化防止剤の変色防止効果の比較
エノキタケ抽出物として、実施例1の方法で製造した、5%エノキタケ−アセトン抽出液を用いた。また、従来から知られている酸化防止剤として、アスコルビン酸ナトリウム水溶液及びトコフェロール混合物(粘性のある液状)をそれぞれ用いた。トコフェロール混合物の組成は、α-トコフェロールが1.2%、β-トコフェロールが1.8%、γ-トコフェロールが67.0%、δ-トコフェロールが30.0%であり、総トコフェロール含量が785 mg/g(トコフェロール混合物の純度78.5%、残部は大豆油)の混合物である。
100gにカットされた解凍メバチマグロ肉を氷冷下破砕肉にして、5%エノキタケ−アセトン抽出液5mlを添加したもの(試料3)、アスコルビン酸ナトリウム水溶液を、アスコルビン酸ナトリウム量が肉重量に対して500ppm(0.05質量%)となるように添加したもの(比較試料1)トコフェロール混合物を肉重量に対して0.05質量%となるように添加し、更に蒸留水を5ml添加したもの(比較試料2)を準備し、それぞれよく混合した。
なお、アスコルビン酸ナトリウムとトコフェロールは、添加濃度が高すぎても低すぎても酸化を促進する現象が見られるため、それぞれ最も広く用いられている濃度を至適濃度として設定した。
一方、コントロールとして、100gにカットされた解凍メバチマグロ肉を氷冷下破砕肉にして、蒸留水5mlを添加し、よく混合した(コントロール3)。
試料3、比較試料1、比較試料2及びコントロール3をそれぞれ氷冷(1〜2℃)下で8日間保存した。
0日目(添加直後)、2日目、4日目、6日目、及び8日目に、表面の同一箇所について写真撮影し、画像処理して、RGB値を得た。保存期間とRGB値の関係をプロットしたグラフを図7に示す。
実施例2及び3の結果から明らかなように、本発明のエノキタケ抽出物を含む変色防止剤により、赤身魚肉及び畜肉の変色を有効に防止することができた。すなわち、未処理の肉では、時間の経過により、肉色が鮮紅色から褐色へ変化し、RGB値のうちR(レッド)値が小さくなり、G(グリーン)値が大きくなったのに対し、エノキタケ抽出物処理した肉では、鮮紅色から褐色へ変化が非常に遅くなり、測定期間内におけるR値及びG値の変化があまり見られなかった(図1及び図4)。また、未処理の肉では、時間の経過によりメト化率が大きく変化したが、エノキタケ抽出物処理した肉では、測定期間内におけるメト化率の変化が小さかった(図2及び図5)。
また、マグロ及び牛肉における鮮紅色の変化を数値化して表すことができ、この数値とミオグロビンのメト化率が高い相関関係を有していることがわかった(図3及び図6)。このことより、従来、煩雑であったミオグロビンのメト化率の測定を簡便な画像処理により行うことが可能となった。
また、実施例4の結果から明らかなように、本発明のエノキタケ抽出物を含む変色防止剤は、従来用いられてきたアスコルビン酸ナトリウムまたはトコフェロールを用いるよりも、変色防止効果の持続作用が長く、有利であった。
本発明は、赤身魚肉あるいは畜肉の流通時、小売店、飲食店あるいは家庭における保存時の変色防止剤として、あるいは変色防止方法として利用可能である。
また、ミオグロビンのメト化に関して簡便に食品分析を行うことができる。
エノキタケ抽出物を添加したマグロ肉の保存中におけるRGB値の変化を示す図である。 エノキタケ抽出物を添加したマグロ肉の保存中におけるミオグロビンのメト化率の変化を示す図である。 エノキタケ抽出物を添加したマグロ肉の保存中におけるRGB値とメト化率の関係を示す図である。 エノキタケ抽出物を添加した牛肉の保存中におけるRGB値の変化を示す図である。 エノキタケ抽出物を添加した牛肉の保存中におけるミオグロビンのメト化率の変化を示す図である。 エノキタケ抽出物を添加した牛肉の保存中におけるRGB値とメト化率の関係を示す図である。 エノキタケ抽出物、アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロールをそれぞれ添加したマグロ肉の保存中におけるRGB値とメト化率の関係を示す図である。

Claims (9)

  1. エノキタケ抽出物を含有する、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品の変色防止剤。
  2. エノキタケ抽出物が、エノキタケの水抽出物あるいは水性溶剤抽出物である、請求項1記載の変色防止剤。
  3. 請求項1または2に記載の変色防止剤を含む、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品である加工食品。
  4. 食品の全重量に対して、変色防止剤の含有量が0.1質量%〜20質量%の範囲にある、請求項3記載の加工食品。
  5. 赤身魚肉が、マグロ、鯨、カツオ、ブリ、サンマ、サバ、イワシ、カンパチあるいはこれらの加工品である、請求項3または4に記載の加工食品。
  6. 畜肉が、牛肉、豚肉、馬肉、七面鳥肉、羊肉、鶏肉、鹿肉、鴨肉、合鴨肉あるいはこれらの加工品である、請求項3または4に記載の加工食品。
  7. 請求項1または2に記載の変色防止剤を、赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品に適用することを特徴とする、加工食品の製造方法。
  8. 赤身魚肉若しくは畜肉またはこれらの加工品への変色防止剤の適用が、変色防止剤を添加、塗布若しくは噴霧することにより、または変色防止剤に浸漬することにより行われる、請求項7記載の方法。
  9. 食品中のミオグロビンのメト化率を測定する方法であって、食品表面の画像処理により得られるRGB値を指標とすることによりメト化率を測定することを特徴とする方法。
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