JP2008223129A - 極低炭フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】凝固組織を微細化させ、等軸晶を増大させた極低炭フェライト系ステンレス鋼、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】溶銑を脱炭精錬した後、脱ガス精錬を行ない、さらに脱酸材を添加して脱酸し、得られた溶鋼を取鍋に収容するまでにNbとBを添加して、C:0.01質量%以下,Si:0.03〜0.3質量%,Mn:0.1〜0.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:20〜25質量%,Nb:0.3〜0.7質量%,Al:0.1質量%以下,B:0.003〜0.08質量%およびN:0.005〜0.015質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶鋼を得た後、溶鋼を取鍋に収容しさらに取鍋から鋳型に鋳込む。
【選択図】図1
【解決手段】溶銑を脱炭精錬した後、脱ガス精錬を行ない、さらに脱酸材を添加して脱酸し、得られた溶鋼を取鍋に収容するまでにNbとBを添加して、C:0.01質量%以下,Si:0.03〜0.3質量%,Mn:0.1〜0.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:20〜25質量%,Nb:0.3〜0.7質量%,Al:0.1質量%以下,B:0.003〜0.08質量%およびN:0.005〜0.015質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶鋼を得た後、溶鋼を取鍋に収容しさらに取鍋から鋳型に鋳込む。
【選択図】図1
Description
本発明は、凝固組織を微細化し、等軸晶率を高めることによって、リジングの発生を防止できる極低炭フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関するものである。
フェライト系ステンレス鋼は、耐食性に優れており、美しい光沢を長期間にわたり保ち続けること、および比較的安価であることから、板状に加工して厨房器具や家電製品等に広く使用されている。このフェライト系ステンレス鋼は、転炉や電気炉等を用いてクロムを含有する溶鋼を溶製し、真空精錬を行った後、連続鋳造あるいは造塊鋳造等によって得られた鋳片あるいは鋼塊を圧延加工して薄い鋼板とし、その鋼板にプレス成形等の二次加工を施して上記した用途に用いられている。しかし、フェライト系ステンレス鋼板にプレス成形等の二次加工を施した場合、リジングと呼ばれる鋼板の結晶粒ごとの変形に起因した微小な凹凸(しわ)の表面欠陥が発生する。このリジングの程度が酷い場合は、表面の美観を損なうだけでなく、微小割れの起因となるので、研磨等を行なって除去しなければならない。
一般の凝固組織は、鋳型の一次冷却で最初に凝固するチル晶では比較的に小さい組織であるが、内部では冷却が緩慢となり大きいデンドライトの組織となる。この凝固組織は、プレス成形等の二次加工の際に、結晶粒ごとの伸びの差が発生して微小な表面の凹凸(しわ)が起きる。またリジングは、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、相変態がなく凝固組織が大きいフェライト系ステンレス鋼の鋼板に顕著に発生する。
そのリジングを防止する対策としては、凝固組織の等軸晶化、および圧延時の再結晶による組織の微細化の二つがあげられる。具体的には、等軸晶化を達成するためには、TiNのような凝固時の析出物を利用して凝固組織を制御する、あるいは連続鋳造(または造塊鋳造)の過程において凝固が完了するまでに電磁撹拌をおこない、結晶生成核を増やし、等軸晶化させる等の技術が採用されている。しかし凝固時に析出物や結晶核が過剰に生成すると、ヘゲと呼ばれる表面欠陥が発生し、鋼板の表面性状が損なわれる。
また圧延時の再結晶による組織の微細化を達成するためには、熱間圧延にて強圧下をかける、あるいは冷延工程にて圧下回数を増やした後に焼鈍を行なう等の技術が採用されている。しかしフェライト系ステンレス鋼は、スケールが薄いので、強圧下をかけると圧延ロールと鋳片あるいは鋼塊との焼付きが生じ、鋼板の表面疵が発生しやすい。
そこで特許文献1には、リジング特性を改善するために、フェライト系ステンレス鋼においてMgを含有する酸化物を鋼板の断面に析出させる技術が開示されている。
そこで特許文献1には、リジング特性を改善するために、フェライト系ステンレス鋼においてMgを含有する酸化物を鋼板の断面に析出させる技術が開示されている。
また特許文献2には、TiおよびAlのうちの1種または2種に加えてMgを含み、2種類以上の組成からなる層構造を有する酸化物を析出させる技術が開示されている。しかしながら、Mgを鋼中に歩留まらせることが非常に難しいので、溶鋼を溶製する過程で溶鋼の成分を所定の範囲に制御することが難しいという問題があった。
そのため、場合によっては特許文献3に示されるようなワイヤでMgを溶融させ、連鋳の鋳型の中に注入する必要があった。
そのため、場合によっては特許文献3に示されるようなワイヤでMgを溶融させ、連鋳の鋳型の中に注入する必要があった。
また特許文献4には、連続鋳造の鋳型内もしくは鋳型直下で、Bを含有しかつCおよびNのうちの1種以上を含有する物質を添加する技術が開示されている。Bはオーステナイト相をフェライト粒内に分散して析出させるために添加されるが、そのBの効果を得るためには熱間圧延や冷間圧延で大きい圧下をかける必要がある。
ところがフェライト系ステンレス鋼、特に炭素含有量が極めて小さいフェライト系ステンレス鋼(以下、極低炭フェライト系ステンレス鋼という)では、特許文献4のようなオーステナイト相はほとんど晶出しない。そのため、熱間圧延や冷間圧延で大きい圧下をかけても、再結晶によって組織が微細化されることは期待できない。つまり極低炭フェライト系ステンレス鋼では、オーステナイト相はほとんど晶出しないので、鋳型に鋳込んだ溶鋼が凝固するまでの冷却過程にて凝固組織を微細化する技術を導入しなければならない。
特開平10-324956号公報
特開2001-254153号公報
特開平11-156503号公報
特開平11-192538号公報
ところがフェライト系ステンレス鋼、特に炭素含有量が極めて小さいフェライト系ステンレス鋼(以下、極低炭フェライト系ステンレス鋼という)では、特許文献4のようなオーステナイト相はほとんど晶出しない。そのため、熱間圧延や冷間圧延で大きい圧下をかけても、再結晶によって組織が微細化されることは期待できない。つまり極低炭フェライト系ステンレス鋼では、オーステナイト相はほとんど晶出しないので、鋳型に鋳込んだ溶鋼が凝固するまでの冷却過程にて凝固組織を微細化する技術を導入しなければならない。
本発明は、極低炭フェライト系ステンレス鋼の溶鋼を鋳型に鋳込みさらに凝固するまでの冷却過程にて凝固組織を微細化させ、等軸晶を増大させた極低炭フェライト系ステンレス鋼、およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明を適用して得られる極低炭フェライト系ステンレス鋼を用いれば、熱間圧延や冷間圧延の負荷を軽減でき、リジングの発生を防止して表面性状の優れた極低炭フェライト系ステンレス鋼の鋼板を製造することが可能である。
本発明は、C:0.01質量%以下,Si:0.03〜0.3質量%,Mn:0.1〜0.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:20〜25質量%,Al:0.1質量%以下,Nb:0.3〜0.7質量%,B:0.003〜0.08質量%およびN:0.005〜0.015質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する極低炭フェライト系ステンレス鋼である。
本発明の極低炭フェライト系ステンレス鋼においては、前記した組成に加えて、Cu:0.3〜0.8質量%およびNi:0.1〜0.8質量%を含有することが好ましい。
本発明の極低炭フェライト系ステンレス鋼においては、前記した組成に加えて、Cu:0.3〜0.8質量%およびNi:0.1〜0.8質量%を含有することが好ましい。
また本発明は、溶銑を脱炭精錬した後、脱ガス精錬を行ない、さらに脱酸材を添加して脱酸し、得られた溶鋼を取鍋に収容するまでにNbとBを添加して、C:0.01質量%以下,Si:0.03〜0.3質量%,Mn:0.1〜0.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:20〜25質量%,Al:0.1質量%以下,Nb:0.3〜0.7質量%,B:0.003〜0.08質量%およびN:0.005〜0.015質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶鋼を得た後、溶鋼を取鍋に収容しさらに取鍋から鋳型に鋳込んで鋳片または鋼塊とする極低炭フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
本発明の極低炭フェライト系ステンレス鋼の製造方法においては、溶鋼が前記した組成に加えて、Cu:0.3〜0.8質量%およびNi:0.1〜0.8質量%を含有することが好ましい。また、脱炭精錬はVODで脱ガス精錬で行ない、脱酸材はAlを使用することが好ましい。
また、鋳型に鋳込んだ溶鋼が凝固を完了して鋳片または鋼塊となるまでの冷却過程にて、溶鋼に電磁撹拌を付与することが好ましい。
また、鋳型に鋳込んだ溶鋼が凝固を完了して鋳片または鋼塊となるまでの冷却過程にて、溶鋼に電磁撹拌を付与することが好ましい。
本発明によれば、凝固組織が微細化され、等軸晶の多い極低炭フェライト系ステンレス鋼の鋳片あるいは鋼塊を製造できる。本発明を適用して得られる極低炭フェライト系ステンレス鋼を用いれば、熱間圧延や冷間圧延の負荷を軽減でき、リジングの発生を防止して表面性状の優れた極低炭フェライト系ステンレス鋼の鋼板を製造することが可能である。その結果、オーステナイト相を分散させることが難しい極低炭フェライト系ステンレス鋼においても、熱間圧延や冷間圧延の後で鋼板を手入れする必要がなくなり、高品質の極低炭フェライト系ステンレス鋼の鋼板を安定して製造することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
まず、本発明の極低炭フェライト系ステンレス鋼の成分の限定理由を説明する。
C:0.01質量%以下
CはCrと結合してCr炭化物を形成し、耐食性を向上させる固溶Cr量を低減する作用を有する。C含有量が0.01質量%を超えると、その作用が顕著に現われて、耐食性の劣化をもたらす。また、後述するBがNと結合して生成されるBNはCを凝集する性質を有しており、C含有量が0.01質量%を超えると、Cの濃度のむらが大きくなり、等軸晶率が低減してしまう。したがって、Cは0.01質量%以下とした。なお、C含有量を低減することによって、溶鋼の凝固温度を上昇させて凝固の過冷却を増やし、凝固組織の等軸晶化を促進する効果が得られる。
C:0.01質量%以下
CはCrと結合してCr炭化物を形成し、耐食性を向上させる固溶Cr量を低減する作用を有する。C含有量が0.01質量%を超えると、その作用が顕著に現われて、耐食性の劣化をもたらす。また、後述するBがNと結合して生成されるBNはCを凝集する性質を有しており、C含有量が0.01質量%を超えると、Cの濃度のむらが大きくなり、等軸晶率が低減してしまう。したがって、Cは0.01質量%以下とした。なお、C含有量を低減することによって、溶鋼の凝固温度を上昇させて凝固の過冷却を増やし、凝固組織の等軸晶化を促進する効果が得られる。
Si:0.03〜0.3質量%
Siは、溶鋼の精錬時に生成するCr酸化物の還元および溶鋼の脱酸に有用な元素である。Si含有量が0.03%未満では、その効果が得られない。一方、0.3質量%を超えると、極低炭フェライト系ステンレス鋼の成形性が劣化する。したがって、Siは0.03〜0.3質量%の範囲内とした。
Siは、溶鋼の精錬時に生成するCr酸化物の還元および溶鋼の脱酸に有用な元素である。Si含有量が0.03%未満では、その効果が得られない。一方、0.3質量%を超えると、極低炭フェライト系ステンレス鋼の成形性が劣化する。したがって、Siは0.03〜0.3質量%の範囲内とした。
Mn:0.1〜0.5質量%
Mnは、溶鋼を脱酸し、さらに極低炭フェライト系ステンレス鋼の強度を発現させる元素である。Mn含有量が0.1質量%未満では、この効果は得られない。一方、0.5質量%を超えると、MnSの析出量が増加して耐食性が劣化する。したがって、Mnは0.1〜0.5質量%の範囲内とした。
Mnは、溶鋼を脱酸し、さらに極低炭フェライト系ステンレス鋼の強度を発現させる元素である。Mn含有量が0.1質量%未満では、この効果は得られない。一方、0.5質量%を超えると、MnSの析出量が増加して耐食性が劣化する。したがって、Mnは0.1〜0.5質量%の範囲内とした。
P:0.05質量%以下
Pは、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性,耐食性を劣化させる元素である。P含有量が0.05質量%を超えると、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性および耐食性が著しく劣化する。したがって、Pは0.05質量%以下とした。
S:0.01質量%以下
Sは、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性,耐食性を劣化させる元素である。S含有量が0.01質量%を超えると、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性および耐食性が著しく劣化する。したがって、Sは0.01質量%以下とした。
Pは、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性,耐食性を劣化させる元素である。P含有量が0.05質量%を超えると、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性および耐食性が著しく劣化する。したがって、Pは0.05質量%以下とした。
S:0.01質量%以下
Sは、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性,耐食性を劣化させる元素である。S含有量が0.01質量%を超えると、極低炭フェライト系ステンレス鋼の靱性,熱間加工性および耐食性が著しく劣化する。したがって、Sは0.01質量%以下とした。
Cr:20〜25質量%
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性および耐酸化性を確保するのに有効な元素である。Cr含有量が20質量%未満では、その効果が十分に得られない。一方、25質量%を超えると、475℃脆性と呼ばれる現象が生じ易くなり、フェライト系ステンレス鋼の靱性が著しく低下する。したがって、Crは20〜25質量%の範囲内とした。
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性および耐酸化性を確保するのに有効な元素である。Cr含有量が20質量%未満では、その効果が十分に得られない。一方、25質量%を超えると、475℃脆性と呼ばれる現象が生じ易くなり、フェライト系ステンレス鋼の靱性が著しく低下する。したがって、Crは20〜25質量%の範囲内とした。
Al:0.1質量%以下
Alは、溶鋼を脱酸するために必要な元素であるが、その含有量が0.1質量%を超えると、脱酸生成物であるAl2O3が多量に析出して、表面欠陥の原因になる。また、連続鋳造において浸漬ノズルの内部にアルミナ(すなわちAl2O3)が付着して、ノズル詰まりを起こし、操業トラブルを引き起こす。したがって、Alは0.1質量%以下とした。
Alは、溶鋼を脱酸するために必要な元素であるが、その含有量が0.1質量%を超えると、脱酸生成物であるAl2O3が多量に析出して、表面欠陥の原因になる。また、連続鋳造において浸漬ノズルの内部にアルミナ(すなわちAl2O3)が付着して、ノズル詰まりを起こし、操業トラブルを引き起こす。したがって、Alは0.1質量%以下とした。
Nb:0.3〜0.7質量%
Nbは、フェライト系ステンレス鋼中のCとNを固定するために必要な元素である。Nb含有量が0.3質量%未満では、CとNを固定できない。一方、0.7質量%を超えると、粒界に析出してフェライト系ステンレス鋼に内部割れが生じる。したがって、Nbは0.3〜0.7質量%の範囲内とした。
Nbは、フェライト系ステンレス鋼中のCとNを固定するために必要な元素である。Nb含有量が0.3質量%未満では、CとNを固定できない。一方、0.7質量%を超えると、粒界に析出してフェライト系ステンレス鋼に内部割れが生じる。したがって、Nbは0.3〜0.7質量%の範囲内とした。
B:0.003〜0.08質量%
Bは、Nと化合してBNを析出させ、核生成の起点となるとともに、粒界を強化する作用を有する。B含有量が0.003質量%未満では、核生成の起点となる析出物が十分に生成しない。一方、0.08質量%を超えると、等軸晶率の向上には有効であるが、結晶粒界にBが偏析して、内部割れが発生する。したがって、Bは0.003〜0.08質量%の範囲内とした。
Bは、Nと化合してBNを析出させ、核生成の起点となるとともに、粒界を強化する作用を有する。B含有量が0.003質量%未満では、核生成の起点となる析出物が十分に生成しない。一方、0.08質量%を超えると、等軸晶率の向上には有効であるが、結晶粒界にBが偏析して、内部割れが発生する。したがって、Bは0.003〜0.08質量%の範囲内とした。
N:0.005〜0.015質量%
Nは、Nb,B,Cを核として不均一核生成した介在物を生成させ、凝固組織を微細化して等軸晶率を高めるのに必須の元素である。N含有量が0.005質量%未満では、析出物がほとんど生成しないので核生成の起点にならない。一方、0.015質量%を超えると、核生成には有効であるが、その核となる析出物を起点として表面欠陥が発生するとともに、靱性の著しい低下を招く。したがって、Nは0.005〜0.015質量%の範囲内とした。
Nは、Nb,B,Cを核として不均一核生成した介在物を生成させ、凝固組織を微細化して等軸晶率を高めるのに必須の元素である。N含有量が0.005質量%未満では、析出物がほとんど生成しないので核生成の起点にならない。一方、0.015質量%を超えると、核生成には有効であるが、その核となる析出物を起点として表面欠陥が発生するとともに、靱性の著しい低下を招く。したがって、Nは0.005〜0.015質量%の範囲内とした。
本発明では上記した組成に加えて、必要に応じてCuおよびNiを添加しても良い。
Cu:0.3〜0.8質量%
Cuは、耐食性を向上させる元素である。Cu含有量が0.3質量%未満では、十分な耐食性が得られない。一方、0.8質量%を超えると、熱間圧延工程やそれに先立つ加熱工程にて低融点のCu化合物を形成し易くなる。したがって、Cuは0.3〜0.5質量%の範囲内が好ましい。
Cu:0.3〜0.8質量%
Cuは、耐食性を向上させる元素である。Cu含有量が0.3質量%未満では、十分な耐食性が得られない。一方、0.8質量%を超えると、熱間圧延工程やそれに先立つ加熱工程にて低融点のCu化合物を形成し易くなる。したがって、Cuは0.3〜0.5質量%の範囲内が好ましい。
Ni:0.1〜0.8質量%
Niは、耐食性を向上させる元素である。Ni含有量が0.1質量%未満では、十分な耐食性が得られない。一方、0.8質量%を超えると、熱間圧延工程やそれに先立つ加熱工程にてオーステナイト相が生成し易くなり、組織が2相化して耐食性が劣化する。したがって、Niは0.1〜0.5質量%の範囲内が好ましい。
Niは、耐食性を向上させる元素である。Ni含有量が0.1質量%未満では、十分な耐食性が得られない。一方、0.8質量%を超えると、熱間圧延工程やそれに先立つ加熱工程にてオーステナイト相が生成し易くなり、組織が2相化して耐食性が劣化する。したがって、Niは0.1〜0.5質量%の範囲内が好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としてはOが代表的な元素であり、極低炭フェライト系ステンレス鋼を溶製する段階や圧延する段階で不可避的に混入する。
次に、本発明の極低炭フェライト系ステンレス鋼を製造する方法を説明する。
溶銑の溶製は、特定の技術に限定せず、高炉や電気炉,溶融還元炉等を用いて従来から知られている方法で行なう。ただし溶銑にCrを含有させる必要があるので、Cr鉱石を電気炉に装入して溶銑を溶製する、あるいはCr鉱石粉を溶融還元炉に装入して溶銑を溶製することが好ましい。
次に、本発明の極低炭フェライト系ステンレス鋼を製造する方法を説明する。
溶銑の溶製は、特定の技術に限定せず、高炉や電気炉,溶融還元炉等を用いて従来から知られている方法で行なう。ただし溶銑にCrを含有させる必要があるので、Cr鉱石を電気炉に装入して溶銑を溶製する、あるいはCr鉱石粉を溶融還元炉に装入して溶銑を溶製することが好ましい。
得られた溶銑の精錬は、脱炭精錬(いわゆる1次精錬)と脱ガス精錬(いわゆる2次精錬)に大別される。脱炭精錬は、特定の技術に限定せず、転炉や平炉等を用いて従来から知られている方法で行なう。脱ガス精錬は、特定の技術に限定せず、RH法,DH法,VAD法,VOD法等の従来から知られている真空精錬技術で行なう。ただし本発明は極低炭素の成分系であり、脱炭を効率良く進めるために、VOD法を採用して脱ガス精錬を行なうことが好ましい。
脱ガス精錬では、真空精錬を行なった後、さらに脱酸材を添加して酸素(O)を除去する。脱酸材は、Alを使用することが好ましい。その理由は、酸素との結合力が強いため少量で効率良く脱酸が可能になるからである。
脱ガス精錬を終了した後、得られた溶鋼を脱ガス精錬容器から排出して取鍋に収容するまでにNbとBを添加することが好ましい。NbとBを脱炭精錬の段階で添加すると、脱ガス精錬によってTi,Bが除去され、歩留りが低下する。Nb,Bは高価な金属であるから、歩留りを向上して原料コストを削減するために、脱ガス精錬を終了した後で溶鋼に添加する。
脱ガス精錬を終了した後、得られた溶鋼を脱ガス精錬容器から排出して取鍋に収容するまでにNbとBを添加することが好ましい。NbとBを脱炭精錬の段階で添加すると、脱ガス精錬によってTi,Bが除去され、歩留りが低下する。Nb,Bは高価な金属であるから、歩留りを向上して原料コストを削減するために、脱ガス精錬を終了した後で溶鋼に添加する。
このようにして成分を調整して得た溶鋼を取鍋に収容して、連続鋳造設備あるいは造塊鋳造設備へ運搬する。次いで、溶鋼を取鍋から連続鋳造用鋳型に鋳込んでスラブ等の鋳片を得る、あるいは造塊鋳造用鋳型に鋳込んで鋼塊を得る。以下では連続鋳造用鋳型と造塊鋳造用鋳型を総称して鋳型と記す。なお連続鋳造では、溶鋼を取鍋からタンディッシュを経て鋳型に鋳込むが、詳細な説明を省略する。
連続鋳造の場合は、鋳型に鋳込んだ溶鋼が凝固して鋳片となるまでの冷却過程で、溶鋼に電磁攪拌を付与することが好ましい。電磁攪拌によって未凝固の溶鋼が揺動し、凝固相を鋳型から剥離させる。その結果、微細な凝固物が溶鋼内に分散して結晶生成核となるので、微細な凝固組織が得られる。
以上に説明した通り、本発明を適用して得た極低炭フェライト系ステンレス鋼は、凝固組織が微細化され、等軸晶が増大する。したがって、熱間圧延や冷間圧延の負荷を軽減でき、リジングの発生を防止して表面性状の優れた極低炭フェライト系ステンレス鋼板を製造することが可能である。
以上に説明した通り、本発明を適用して得た極低炭フェライト系ステンレス鋼は、凝固組織が微細化され、等軸晶が増大する。したがって、熱間圧延や冷間圧延の負荷を軽減でき、リジングの発生を防止して表面性状の優れた極低炭フェライト系ステンレス鋼板を製造することが可能である。
溶銑を転炉に装入して脱炭精錬を行ない、さらにVODを用いて脱ガス精錬を行なった後、Alを添加して脱酸した。次いでTiとBを添加して、得られた溶鋼を取鍋に収容して連続鋳造設備へ運搬した。そこで取鍋からタンディッシュを経て鋳型に溶鋼を鋳込んでスラブ(厚み220mm)とした。得られたスラブの成分は表1に示す通りである。表1中の発明例は成分が本発明の範囲を満足する例であり、比較例はBが本発明の範囲を外れる例である。
次いで熱延焼鈍板を1.0mmまで冷間圧延し、さらに900℃で連続焼鈍して冷延焼鈍板を作製した。
得られた冷延鋼板の表面を目視で観察して、表面性状とリジング性を調査した。表面性状は、ヘゲと呼ばれる表面欠陥が冷延鋼板1000mあたり2個以下を良(○)、3〜5個を可(△)、6個以上を不良(×)として評価した。その結果を表1に示す。
得られた冷延鋼板の表面を目視で観察して、表面性状とリジング性を調査した。表面性状は、ヘゲと呼ばれる表面欠陥が冷延鋼板1000mあたり2個以下を良(○)、3〜5個を可(△)、6個以上を不良(×)として評価した。その結果を表1に示す。
ここでリジング性の評価方法を説明する。標点間隔25mm,標点長さ50mmの引張試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように作成し、20%の歪みを付与した。このとき、圧延方向に生じたうねりをリジングとして、粗さ計を用いて圧延方向と垂直方向のうねりを測定した。このうねりの高さをリジング高さとし、リジング高さが5μm以下をリジングなし(○),5〜15μmのものを軽リジング(△),15μmを超えたものを高リジング(×)として評価した。その結果を表1に併せて示す。
さらにスラブの任意の断面を顕微鏡で観察して、等軸晶率を調査した。等軸晶率は、観察した面積に占める等軸晶の比率である。その結果を表1に併せて示す。
ここで等軸晶の観察方法を説明する。スラブのC断面を切断して研磨し、さらに腐食液で腐食した後、写真を撮影し、アスペクト比が1対2以内の結晶粒を等軸晶とした。腐食液は、塩化第2鉄を塩酸に飽和させた溶液を用いた。
ここで等軸晶の観察方法を説明する。スラブのC断面を切断して研磨し、さらに腐食液で腐食した後、写真を撮影し、アスペクト比が1対2以内の結晶粒を等軸晶とした。腐食液は、塩化第2鉄を塩酸に飽和させた溶液を用いた。
表1に示したB含有量と等軸晶率との関係を図1に示す。図1から明らかなように、B含有量が増加すると、等軸晶率が高くなる。また表1から明らかなように、発明例はいずれも優れた表面性状およびリジング性が得られたのに対して、比較例は表面性状またはリジング性が劣っていた。
Claims (6)
- C:0.01質量%以下、Si:0.03〜0.3質量%、Mn:0.1〜0.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Cr:20〜25質量%、Al:0.1質量%以下、Nb:0.3〜0.7質量%、B:0.003〜0.08質量%およびN:0.005〜0.015質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする極低炭フェライト系ステンレス鋼。
- 前記組成に加えて、Cu:0.3〜0.8質量%およびNi:0.1〜0.8質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の極低炭フェライト系ステンレス鋼。
- 溶銑を脱炭精錬した後、脱ガス精錬を行ない、さらに脱酸材を添加して脱酸し、得られた溶鋼を取鍋に収容するまでにNbとBを添加して、C:0.01質量%以下、Si:0.03〜0.3質量%、Mn:0.1〜0.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.01質量%以下、Cr:20〜25質量%、Al:0.1質量%以下、Nb:0.3〜0.7質量%、B:0.003〜0.08質量%およびN:0.005〜0.015質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶鋼を得た後、前記溶鋼を前記取鍋に収容しさらに前記取鍋から鋳型に鋳込んで鋳片または鋼塊とすることを特徴とする極低炭フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 前記溶鋼が、前記組成に加えて、Cu:0.3〜0.8質量%およびNi:0.1〜0.8質量%を含有することを特徴とする請求項3に記載の極低炭フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 前記脱ガス精錬をVODで行ない、前記脱酸材としてAlを使用することを特徴とする請求項3または4に記載の極低炭フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 前記鋳型に鋳込んだ前記溶鋼が凝固を完了して鋳片または鋼塊となるまでの冷却過程にて、前記溶鋼に電磁撹拌を付与することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の極低炭フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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