JP2008221322A - 異材接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スクラムリベット法でのアーク溶接方法による異材接合方法を改善して、高い接合強度を安定的に確保でき、優れた継手強度を有するとともに、溶接継手部に割れのない健全な異材接合継手を得ることができる接合方法を提供することを目的とする。
【解決手段】特定径の貫通穴4a、4bを溶接線に沿って予め設けた鋼材2とアルミニウム材3とを互いに重ね合わせ、溶接トーチ11を後退角θを設けて溶接線に沿って走らせながら、アルミニウム溶接ワイヤ10によって、鋼材2側に設けた貫通穴4a、4bに、アルミニウム溶接材料7を溶融充填させつつ、ビード5を形成するアーク溶接によって接合するに際し、溶接を開始する側にある所定の個数の貫通穴4aの径d1を、これ以外の貫通穴4bの径d2よりも大きくして、異材接合体1の高い接合強度を安定的に確保する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械、建築などの部材、部品、構造物における鋼材とアルミニウム材との異種金属部材同士の、スポット溶接による異材接合方法に関するものである。
鋼材とアルミニウム材(純アルミニウム材、アルミニウム合金材を総称)という、異種の金属部材同士の接合(異材接合体)における接合強度を確保できれば、前記部材、部品、構造物に適用でき、鋼材のみの場合に比して、軽量化等に著しく寄与することができる。
しかし、鋼材とアルミニウム材とを溶接接合する場合、接合部に脆い金属間化合物が生成しやすいために、信頼性のある高強度を有する接合部(接合強度)を得ることは非常に困難であった。したがって、従来では、これら異種接合体(異種金属部材)の接合にはボルトやリベット等による接合がなされているが、接合継手の信頼性、気密性、コスト等の問題がある。
そこで、従来より、これら異種接合体の接合方法について多くの検討がなされてきている。例えば、鋼材とアルミニウム材とをアーク溶接にて接合する方法も提案されている(非特許文献1、2参照)。このアーク溶接方法では、強度確保の阻害要因となる、金属間化合物の成長方向を制御することで、高い接合強度が得られる。この方法は、接合する鋼材側に、予め一個の穴を設け、この穴を溶融アルミニウム材にて埋めることによって(充填することによって)、鋼材とアルミニウム材とを接合する方法である。
また、MIGロウ付法によって鋼材とアルミニウム材とを直接接合する方法も提案されている(特許文献1参照)。
しかし、前記非特許文献1、2では、接合長さに応じて、多数の穴を周期的に設けて、これらの穴に沿った溶接線として、連続的にアーク溶接した場合には、ビードに割れが発生し、却って、溶接継手の疲労強度が低下するなどの問題があった。これは、アルミニウム溶接材にて形成されるビード内部に、鋼材側から鉄系成分が溶解混合するために、ビード内部に脆弱な金属間化合物が生成するためである。
一方、上記特許文献1のMIGロウ付法によれば、鋼材とアルミニウム材との接合に際し、適用条件などの制約が少なく汎用性に優れる。しかし、鋼材とアルミニウム材との接合界面には、やはり脆弱なFeとAlとの金属間化合物が形成されているのは事実であり、接合強度はなお改善の余地があった。
そこで、前記非特許文献1、2の特徴と、非常に施工方法が容易で、線溶接が可能な特許文献1のアーク溶接の特徴を生かした提案もされている(特許文献2)。この方法は、鋼材とアルミニウム材との異材継手をアーク溶接法にて接合するに際し、鋼材側に溶接線に沿って予め一定の間隔で空間(貫通穴)を設け、鋼材を上側、アルミニウム材を下側として重ね合わせた上で、アルミニウム溶接ワイヤを用いて前記空間にアルミニウム溶接材料を溶融充填させつつ、かつアルミニウム溶接材料によるビードを形成するように接合するものである。以下、この方法をスクラムリベット法とも言う。
そして、このスクラムリベット法実施の際に、接合後の溶接線長さ100mm当たりにおける、前記各空間に充填されたアルミニウム溶接材料の断面における溶接線方向に沿った長さ(L-Al)と、これに両隣する鋼材の断面における溶接線方向に沿った長さ(L-Fe)との比(L-Al)/(L-Fe)の最小値が一定範囲となるように、両材料を溶接接合する。
特開2003−33865号公報 特開2006−21249号公報 WELDING JOURNAL,(1963),p.302. 軽金属溶接:Vol.16(1978)No.12,p.8.
確かに、特許文献2のスクラムリベット法でのアーク溶接方法によれば、アーク溶接法による異材接合において、比較的高い接合強度を確保しつつ、延性に優れた継手を得ることができる。
しかし、この特許文献2によっても、アーク溶接条件によっては、後述する通り、高い接合強度が得られない場合があった。特に、特許文献2によるアーク溶接の開始が、アルミニウム材側ではなく、鋼材側表面となった場合に、前記鋼材側に溶接線に沿って予め設けた空間(貫通穴)のうちの、アーク溶接の開始側の1個、あるいは複数個に、アルミニウム溶接材料を十分に溶融充填できなくなることが起こりやすい、という問題があることが知見された。
これは、後述する通り、アーク溶接の開始時に、アルミニウム材側への入熱が不足して、アルミニウム材側が十分に加熱されなくなるためである。これによって、アルミニウム合金溶接ワイヤから供給されるアルミニウム溶接材料が、鋼材側に予め設けられた前記貫通穴に、溶融充填されなくなる。即ち、前記貫通穴がアルミニウム溶接材料で充填されずに、隙間がある乃至隙間が大きくなる、もしくはアルミニウム材への十分な溶け込みが確保されなくなる。この問題が生じた場合には、前記アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の空間(貫通穴)部分の接合強度が低下する。このため、特に、溶接線の長さが短いショートビードの条件では、継ぎ手としての接合強度を確保できない問題がある。したがって、特許文献2のアーク溶接方法による異材接合には、なお改善の余地がある。
ここで、用語の意味として、アルミニウム溶接材料の貫通穴への「充填」あるいは「溶融充填」とは、アーク溶接によって、溶融したアルミニウム溶接材料(溶材)が前記鋼材側貫通穴内へ充填される(入る)ことである。また、アルミニウム溶接材料のアルミニウム材への「溶け込み」とは、前記鋼材側貫通穴内へ充填された溶融アルミニウム溶接材料(溶材)が、更に、この貫通穴底側から、アルミニウム材(鋼材と重ね合わされた)と接触した上で、これに溶け込んでいくことである。したがって、この「溶け込み」は、溶融したアルミニウム溶接材料(溶材)が前記鋼材側貫通穴内へ、穴の全体に亙って十分に充填されないと発揮されず、接合強度がでない。例えば、溶接後に溶接部(貫通穴位置)を、上から見て、貫通穴の縁(円弧縁など)が見えるようであれば、アルミニウム溶接材料(溶材)が、穴の全体に亙って十分に充填されていない、隙間がある状態となっている。ただ、十分に充填されていても溶け込みが悪い場合や、十分に充填されていなくても溶け込みがある場合もある。しかし、十分に充填されていても溶け込みが悪い場合は、アルミニウム溶接材料がアルミニウム材と接触しているのみで、溶け込みが無いか少なく、接合強度はでない。また、十分に充填されていなくても溶け込みがある場合も、貫通穴の面積である溶け込み面積を活かしきってはいない(溶け込み面積が小さい)ので、やはり接合強度はでない。
これに対して、再度溶接トーチを前記アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の空間(貫通穴)部分を走らせる2パス目のアーク溶接を行い、アルミニウム溶接材料の前記貫通穴への溶融充填量を増やすことが考えられる。しかし、上記スクラムリベット法では、アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の空間(貫通穴)部分にも、溶接トーチの1パス目によって形成したアルミニウム溶接材料によるビードが存在する。このため、溶接トーチを再度走らせても、鋼材やアルミニウム材側、また、1パス目で空間(貫通穴)部分に充填されたアルミニウム溶接材料を十分に加熱することができず、結果、アルミニウム溶接材料の前記貫通穴への充填量や、アルミニウム材側への溶け込み量を増やすことができない。
言い換えると、上記スクラムリベット法では、溶接トーチの走行について、2パス以上を行う意味がなく、1パスのみで、前記空間(貫通穴)部分にアルミニウム溶接材料を十分溶融充填させつつ、かつアルミニウム溶接材料によるビードを形成するように接合する必要がある。
本発明は、このような問題に鑑み、前記特許文献2のスクラムリベット法でのアーク溶接方法による異材接合方法を改善して、高い接合強度を安定的に確保することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明の異材接合方法の要旨は、アーク溶接法により鋼材とアルミニウム材との異材を接合する方法であって、アーク溶接法により鋼材とアルミニウム材との異材を接合する方法であって、円換算にて2.0mm径以上、5.0mm径未満の貫通穴を、溶接線に沿って一定の間隔で、予め設けた鋼材を上側、アルミニウム材を下側として、これらを互いに重ね合わせ、溶接トーチを後退角を設けて前記溶接線に沿って走らせながら、アルミニウム溶接ワイヤによって、鋼材側に設けた前記貫通穴に、アルミニウム溶接材料を溶融充填させつつ、かつアルミニウム溶接材料によるビードを形成する、溶接トーチの1パスのみのアーク溶接によって異材を接合するに際し、溶接を開始する側にある所定の個数の貫通穴の円換算による径を、これ以外の前記貫通穴径の1.2〜2.0倍の大きさとすることである。
本発明でも、鋼材とアルミニウム材との異材同士をアーク溶接方法で接合するに際して、前記非特許文献1、2や特許文献2に開示された、スクラムリベット法を用いることを前提とする。スクラムリベット法のように、接合する鋼材側に予め溶接線に沿って貫通穴を設け、この穴を、アルミニウム溶接ワイヤなどの溶接材料から供給される溶融アルミニウムにて溶融充填した上に、アルミニウムビードを形成することによって、接合強度を向上できる。
ただ、このスクラムリベット法でのアーク溶接方法では、特に、アーク溶接の開始が、アルミニウム材側ではなく、鋼材側表面となった場合に、前記鋼材側に溶接線に沿って予め設けた空間(貫通穴)のうちの、アーク溶接の開始側の1個、あるいは複数個に、アルミニウム溶接材料を十分に溶融充填できなくなることが起こりやすい。即ち、前記貫通穴がアルミニウム溶接材料で充填されずに、隙間がある乃至隙間が大きくなる、もしくはアルミニウム材への十分な溶け込みが確保できなくなる。
これは、アーク溶接の開始時のアークの不安定性にもよるし、アーク溶接の開始が鋼材側表面となった場合に必然的に起こりやすい問題とも言える。
即ち、スクラムリベット法でのアーク溶接方法では、1パスのみの溶接トーチの走行によって、アルミニウム合金溶接ワイヤから供給されるアルミニウム溶接材料が、鋼材側に予め設けられた前記貫通穴に、十分な量だけ充填され、かつアルミニウム材へ十分に溶け込むことが、接合強度を確保する上での前提となる。
これに対して、アーク溶接の開始時のアークの不安定性になるか、アーク溶接の開始が鋼材側表面となった場合には、鋼材側への入熱が与えられても、アルミニウム材側への入熱が不足して、アルミニウム材側が十分に加熱されなくなる。このため、アルミニウム合金溶接ワイヤから供給されるアルミニウム溶接材料が、鋼材側に予め設けられた前記貫通穴に、十分な量だけ充填されない、もしくはアルミニウム材へ溶け込みにくくなる。
アーク溶接開始からの時間経過によって、アークの安定性が確保され、また、アルミニウム材側への入熱も確保されるようになると、アルミニウム合金溶接ワイヤから供給されるアルミニウム溶接材料は、溶接線上に配置された後続する前記貫通穴には、十分に溶融充填されるようになる。したがって、この問題は、あくまで前記アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の貫通穴部分に生じる問題である。
しかし、このようなアルミニウム溶接材料の溶け込み不足が生じた、アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の貫通穴部分では、接合強度が、溶接線上に配置された他の後続する前記貫通穴に比して、やはり大きく低下する。このため、特に、溶接線の長さが短いショートビードの条件では、継ぎ手としての接合強度を確保できない問題につながる。また、溶接線の長さが長いロングビードであろうと、継ぎ手としての信頼性の低下は否めない。
この問題に対して、本発明では、溶接を開始する側にある、前記アルミニウム溶接材料の溶融充填不足が生じやすい、アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の貫通穴部分を、所定の個数の前記貫通穴として、この貫通穴の大きさを、他の貫通穴の大きさに比して大きくすることを特徴とする。
貫通穴の大きさを大きくすれば、アルミニウム材側への入熱も大きくなる。これによって、前記アルミニウム溶接材料の溶融充填不足が生じやすい、アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の貫通穴部分であっても、1パスのみの溶接トーチの走行で、アルミニウム溶接材料の溶融充填を確保する。
また、鋼材上でビードが形成されている時に、アルミニウム溶接材料が、溶接線上に配置された貫通穴に先行して流れ込んでしまうと、同じく、アークによるアルミニウム材側への入熱が確保できなくなる。これは、溶接線上に配置された貫通穴に共通して生じる問題であり、溶接を開始する側にあるか否かの配置位置にかかわらない。
この問題に対して、本発明では、溶接トーチに後退角を設けて走らせることで解決する。溶接トーチに後退角を設ければ、鋼材上でビードが形成されている時に、アルミニウム溶接材料が、溶接線上に配置された貫通穴に先行して流れ込むことが無い。
以上、本発明によれば、スクラムリベット法により、ビード内部の脆弱な金属間化合物の生成が抑制でき、ビード表面の割れが抑制される。また、アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の貫通穴部分であっても、他の貫通穴の大きさに比して大きくすることで、アルミニウム材側への入熱不足を解消して、1パスのみの溶接トーチの走行によっても、貫通穴へのアルミニウム溶接材料の溶融充填を確保できる。更に、溶接トーチに後退角を設けることで、どの位置の貫通穴部分であっても、アルミニウム溶接材料が貫通穴に先行して流れ込むのを防止して、アルミニウム材側への入熱不足を解消して、貫通穴へのアルミニウム溶接材料の溶融充填を確保できる。
これによって、本発明によれば、鋼材とアルミニウム材とのアーク溶接による異材接合の接合強度を高めることができる。しかも、本発明を採用すれば、連続的な接合が可能であり、鋼材とアルミニウム材との接合を効率よく実施できることとなる。
以下に、本発明の実施態様と、本発明の各要件の限定理由とを具体的に説明する。
(異材接合方法)
本発明異材接合方法の一態様を図1を用いて説明する。図1は異材継手をアーク溶接法にて接合する方法を正面図で示している。図1において、11は後退角度θを有してセットされた溶接トーチ、10は、外部から連続的に供給されるアルミニウム溶接ワイヤである。2は上板である(上側に載置された)鋼材(鋼板)、3は下板である(下側に載置された)アルミニウム材(アルミニウム合金板)である。4a、4bは、鋼材2に、溶接線に沿って、予め間隔を開けて設けた、複数の貫通穴(貫通空間)である丸穴を示す。
溶接トーチ11は、鋼材2とアルミニウム材3とを重ね合わせた部分を、鋼材の右端2aとアルミニウム材の右端3aとを、溶接の開始端として、図1の矢印方向(図1の右から左)へ、後退角度θを有したまま移動している状態を示している。したがって、アルミニウム溶接ワイヤ10によって形成されるアルミニウムビード5は、図1の右から左へ向かって、連続的に形成されていく。
但し、この溶接トーチ11の走行は、この1パスのみとする。前記した通り、溶接トーチ11を再度走らせても、鋼材2やアルミニウム材3側、また、1パス目で貫通穴4a部分に充填されたアルミニウム溶接材料7を十分に加熱することができず、結果、アルミニウム溶接材料7の貫通穴4aへの溶融充填を確保することができない。
言い換えると、上記スクラムリベット法では、溶接トーチの走行について、2パス以降を行うは意味がなく、1パスのみで、前記空間(貫通穴)部分にアルミニウム溶接材料を十分溶融充填させつつ、かつアルミニウム溶接材料によるビードを形成するように接合する必要がある。
(貫通穴)
図1の溶接状態において、左側の2個の丸穴(貫通穴)4b内には、アルミニウム溶接材料7がいまだ充填されておらず、それより右側の丸穴(貫通穴)4a内や、4b内には、溶接トーチが既に通過して、アルミニウム溶接ワイヤなどから供給されたアルミニウム溶接材料7が、既に溶融凝固して充填された態様を示している。
ここで、アーク溶接の開始端である鋼材の右端2aから、図の左側に向かって、溶接線に沿って形成されている2個の丸穴4aの径(直径)d1は、それより図の左側に向かって、溶接線に沿って形成されている丸穴4bの径(直径)d2よりも、大きく形成されている。
(穴径4b)
丸穴4bは、いずれも通常のスクラムリベット法により設ける貫通穴径(直径)d2を有する。この丸穴4bの穴径d2は、円換算にて2.0mm径以上、5.0mm径未満の範囲から選択する。また、この丸穴4bのピッチ(間隔)p2を2〜10mmの範囲で設ける。この穴径d2が小さすぎると、溶接条件にもよるが、通常のMIG溶接ワイヤ条件(ワイヤ径がφ1.2〜1.4)では、アルミニウム溶接材料7のアルミニウム材への溶け込み量が不足し、スクラムリベット法の効果自体がなくなる。また、ピッチ(間隔)p2が10mmを超えても同様である。
一方、この穴径d2を大きくしすぎると、丸穴4bへの溶融アルミニウム材料7の充填不良が起きる。また、丸穴4b同士のピッチ(間隔)p2が上記範囲を外れて小さくなりすぎる。この結果、溶融アルミニウム材料7が丸穴4bの空間を埋めるために投入された溶接時の熱が、ピッチ(間隔)部分の鋼材(非空間部分)に貯まりやすくなる。この結果、溶接アーク点が、丸穴4bからピッチ部分の鋼材に移行した際に、ピッチ部分の鋼材の熱が高くなっているために、ビード部を形成するアルミニウム溶融金属内部に、鋼材からの鉄分が溶解しやすくなる。その結果、金属間化合物が多量に生成し、ビードが割れやすくなる。したがって、本発明のスクラムリベット法における、丸穴4bの穴径d2は円換算にて2.0mm径以上、5.0mm径未満の範囲とする。
(穴径4a)
一方、アーク溶接の開始端である鋼材の右端2aから、図の左側に向かって、溶接線に沿って形成されている2個の丸穴(貫通穴)4aの径(直径)d1は、通常乃至従来では、それより図の左側に向かって、溶接線に沿って形成されている丸穴4bの径d2と、同じ大きさに形成されている。言い換えると、設ける丸穴の径は全て同じとされ、機械加工にて、鋼材に丸穴4bを溶接線に沿って連続的に一定のピッチp2で加工するに際し、効率上、径d2を丸穴によってわざわざ変化させることはない。
これに対して、本発明では、溶接を開始する側にある、例えば2個の丸穴(貫通穴)4aの円換算径d1を、これ以外の丸穴(貫通穴)4bの円換算径d2の1.2倍以上、2.0倍以下の大きさとする。即ち、d1とd2との比、d1/d2を1.2〜2.0とする。
なお、このように、本発明で、これ以外の貫通穴の径d2よりも、貫通穴の径d1を大きくする対象となる貫通穴は、溶接を開始する側にある貫通穴であって、アーク溶接の開始時のアークの不安定性になるか、アーク溶接の開始が鋼材2側表面となった場合に、アルミニウム溶接材料7の充填不足、もしくは溶け込み不足が生じやすい貫通穴とする。
このようなアルミニウム溶接材料7の充填不足、もしくは溶け込み不足が生じやすい貫通穴とは、丸穴4bの条件を前記した穴径d2とピッチp2で設けることを前提とした場合には、溶接を開始する側から、1個、あるいは多くても3個までである。
溶接を開始する側にある丸穴4aの径d1を、このように大きくすれば、アルミニウム材3側への入熱も大きくなる。これによって、通常のアーク溶接条件の範囲内であれば、前記アルミニウム溶接材料7の充填不足、もしくは溶け込み不足が生じやすい、アーク溶接の開始側の丸穴4aであっても、アルミニウム溶接材料7の充填量と溶け込み量を確保する。これによって、2個の丸穴4aへのアルミニウム溶接材料7の充填不足、もしくは溶け込み不足を解消し、アーク溶接の開始側の2個の丸穴4a部分であっても、後続する丸穴4bと同等の接合強度を有するようにする。
溶接を開始する側にある丸穴4aの径d1の大きさが、これ以外の丸穴4bの径d2と同じなど、小さすぎると、通常のアーク溶接条件の範囲内では、特に、アーク溶接の開始が、アルミニウム材3側ではなく、鋼材2側表面となった場合に、アーク溶接を開始する側にある2個の丸穴4aにおいて、アルミニウム溶接材料7を十分に溶融充填できなくなることが起こりやすい。
即ち、アーク溶接の開始時のアークの不安定性になるか、アーク溶接の開始が鋼材2側表面となった場合には、鋼材2側への入熱が与えられても、アルミニウム材3側への入熱が不足して、アルミニウム材3側が十分に加熱されなくなる。このため、アルミニウム合金溶接ワイヤ10から供給されるアルミニウム溶接材料7が、鋼材2側に予め設けられた丸穴4aに、十分に溶融充填されなくなる。
アーク溶接開始からの時間経過によって、アークの安定性が確保され、また、アルミニウム材3側への入熱も確保されるようになると、アルミニウム合金溶接ワイヤ10から供給されるアルミニウム溶接材料7は、溶接線上に配置された後続する丸穴4bに、十分に溶融充填されるようになる。したがって、この問題は、あくまでアーク溶接を開始する側にある2個の丸穴4aに生じる特有の問題である。しかし、このようなアルミニウム溶接材料7の充填不足、もしくは溶け込み不足が生じた、アーク溶接の開始側の2個の丸穴4a部分では、接合強度が、溶接線上に配置された後続する丸穴4bに比して、大きく低下する。
一方、丸穴4aの径d1は、丸穴4bの径d2の2.0倍以下とする。丸穴4aの径d1は、大きくしすぎると、丸穴4bの径d2と同様に、丸穴4a同士や丸穴4bとのピッチ(間隔)p1が小さくなりすぎる。この結果、丸穴4bの径d2と同様に、溶融アルミニウム材料7が丸穴4aの空間を埋めるために投入された溶接時の熱が、ピッチ(間隔)部分の鋼材(非空間部分)に貯まりやすくなる。この結果、溶接アーク点が、丸穴4aからピッチ部分の鋼材に移行した際に、ピッチ部分の鋼材の熱が高くなっているために、ビード部を形成するアルミニウム溶融金属内部に、鋼材からの鉄分が溶解しやすくなる。その結果、金属間化合物が多量に生成し、ビードが割れやすくなる。
したがって、溶接を開始する側にある丸穴4aの円換算径d1は、これ以外の丸穴4bの円換算径d2に対して、d1とd2との比、d1/d2を1.2〜2.0と大きくする。
(穴径の設計)
通常のスクラムリベット法による穴径で良い、丸穴4bの径d2は、通常のアーク溶接条件の範囲内であれば、継手形状、大きさによる溶接線の長さや、アーク溶接装置能力、仕様に応じて、丸穴4bの径d2を、円換算にて2.0mm径以上、5.0mm径未満の範囲から選択する。
一方、溶接を開始する側にある丸穴4aの径d1は、アーク溶接開始時のアークの安定性や、アーク溶接開始が鋼材2側表面となった場合のアルミニウム材3側への入熱不足量の予測、更には丸穴4bの径d2と、このd2の1.2倍以上、2.2倍以下の大きさの範囲、などから設計する。この選択のために、場合によっては、予め予備的に試験溶接して試してみても良い。丸穴4a同士や丸穴4bとのピッチ(間隔)p1は、丸穴4b同士のピッチ(間隔)p2の2〜10mmの範囲と同じ範囲から選択する。
溶接を開始する側にある丸穴4aの個数は、アーク溶接の開始時のアークの不安定性になるか、アーク溶接の開始が鋼材2側表面となる場合に、鋼材2側への入熱が与えられても、アルミニウム材3側への入熱が不足するような、溶接領域(溶接長さ)に在る丸穴とする。通常のアーク溶接条件の範囲では、この丸穴4aの必要個数は1〜3個であり、4個以上に多くする必要はない。なお、溶接を開始する位置では、溶接材料の付着量が多くなる傾向にあり、溶接を開始する側にある丸穴4aの径d1は、φ6.0〜7.0mmまでなら、溶融アルミニウム材料7の丸穴4aへの充填が可能である。但し、後続する丸穴4bの穴径d2を全て丸穴4aの径d1と同様に、φ6.0〜7.0mmまで大きくした場合には、後続する丸穴4bでは、溶融アルミニウム材料7の丸穴4bへの充填不良が生じる。
(穴形状)
なお、鋼材に設ける貫通穴(空間)の形状は、必ずしも、このような丸穴4a、4bだけでなく、図3に示すように、楕円形4c、台形4d、三角形4eなど、円形や、角形、多角形、あるいは不定形、更には、これらの組み合わせなど、本発明効果を発揮でき、形成しやすい形状であれば、適宜選択できる。ただ、穴の機械加工のしやすさなどからしても、角部が無く、応力集中しにくい円形あるいは楕円形などの形状が望ましい。このような多様な形状に対応するために、本発明では、鋼材に予め設ける円以外の形状の貫通穴(空間)の径は、同じ面積を有する円の直径に換算した「円換算」と規定した。
(溶接トーチ後退角度)
また、本発明では、以上のスクラムリベット法の前提のもと、図1に示すように、溶接トーチ11に後退角度θを設けて走らせる。このように、溶接トーチ11に後退角度θを設ければ、鋼材2上でビード5が形成されている時に、アルミニウム溶接材料8が、溶接線上に配置された貫通穴4a、4bに、先行して流れ込むことが無い。この後退角度θは垂直(鉛直)方向に対して5〜20度とし、溶接進行方向(図1の左側)に対して、溶接トーチ11が後退する方向を向くようにする。
溶接トーチ11に後退角θを設けず、溶接トーチ11の方向を垂直(鉛直)方向とすると、図1のように、鋼材2上でビード5が形成されている時に、アルミニウム溶接材料7が、左側の前方にある貫通穴4b(図1では左から2番目の4b)に、先行して流れ込んでしまう。このため、先行して流れ込まれた、この左側の前方にある貫通穴4bでは、アークによるアルミニウム材3側への入熱が確保できなくなる。これは、溶接線上に配置された貫通穴4a、4bに共通して生じる問題であり、溶接を開始する側にあるか否かの配置位置にかかわらない。
したがって、本発明では、溶接開始の当初(最初)から、図1に示すように、溶接トーチ11に後退角θを設けて走らせる。
以上、本発明によれば、スクラムリベット法により、ビード内部の脆弱なFe-Al系金属間化合物の生成が抑制でき、ビード表面の割れが抑制される。また、アーク溶接の開始側の1個あるいは複数個の貫通穴部分であっても、他の貫通穴の大きさに比して大きくすることで、アルミニウム材側への入熱不足を解消して、貫通穴へのアルミニウム溶接材料の溶融充填を確保できる。更に、溶接トーチに後退角を設けることで、どの位置の貫通穴部分であっても、アルミニウム溶接材料が貫通穴に先行して流れ込むのを防止して、アルミニウム材側への入熱不足を解消して、貫通穴へのアルミニウム溶接材料の溶融充填を確保できる。
これによって、本発明によれば、鋼材とアルミニウム材とのアーク溶接による異材接合の接合強度を高めることができる。しかも、本発明を採用すれば、連続的な接合が可能であり、鋼材とアルミニウム材との接合を効率よく実施できることとなる。
(異材接合継手)
図2に、図1のスクラムリベット法によって接合した異材接合継手を、平面図(a)および側面図(b)で示す。図2において、1は、上板である鋼材2(鋼板)と、下板であるアルミニウム材3(アルミニウム合金板)とを重ね合わせて、溶接線6にてアーク溶接にて接合した、異材接合継手である。5は、接合部表面に、アルミニウム溶接ワイヤなどから供給されるアルミニウム溶接材料が溶融凝固して形成された溶接ビードである。
4aは溶接を開始する側にある前記大きな径の丸穴、4bは前記通常の大きさの径の丸穴である。また、7は、溶接接合の際に、アルミニウム溶接ワイヤなどから供給されて、この各丸穴4a、4b中に溶融充填されて凝固したアルミニウム溶接材料である。また、2aは鋼材の右端、3aはアルミニウム材の右端で、溶接の開始端である。
図2では、丸穴4a、4bが全てアルミニウム溶接材料7で十分に隙間なく埋められている状態を示している。この状態は、特に溶接を開始する側にある丸穴4aを含めて、丸穴4a、4b内に、この部分での接合強度が確保される量だけ、アルミニウム溶接材料7が十分に溶融充填されている状態を示している。しかし、接合強度が確保できれば、丸穴4a、4b内に、隙間が多少あっても、構わない。
また、図2(b)に示すように、鋼材2の丸穴4aには、4bを含めて、穴内に充填凝固されたアルミニウム溶接材料7によって、アルミニウム溶接部が充填形成されている。ここで、図示はしないものの、アルミニウム溶接部の下端部(アルミニウム溶接材料7の右方側)は、アルミニウム材3が丸穴4aの底部に露呈した表面に(図の右方側に向かって)、溶け込んだ状態となって溶融接合されている。この溶け込み部は、丸穴4aの内面下端縁から、丸穴4a中央部の最大深さ部に亙って形成されている。
更に、前記アルミニウム接合部の上端部(アルミニウム溶接材料7の左方側)は、鋼板2の表面に溶接線6に沿って被覆形成された溶接ビード5に溶着一体化(溶融接合)している。これら溶接ビード5、前記アルミニウム接合部および前記溶け込み部は、溶接ワイヤの溶融により、供給されたアルミニウム溶接材料によって一体的に形成された部分である。
(溶接条件)
上記の通り、アルミニウム材と鋼材との界面に生成する金属間化合物の生成を抑制するためには、溶接条件として、母材である鋼材を過剰量溶融させることなく、必要最小限の母材溶融(希釈)量で健全な接合状態が得られるように溶接することが好ましい。
(アーク溶接)
アーク溶接では、溶接時の溶接電流が過大とならない範囲に制御することが望ましい。そのため本発明を実施する際の好ましいアーク溶接条件としては以下の通りである。
溶接電流は、70A以上、好ましくは80A以上で、120A以下、より好ましくは110A以下である。大電流となるほど、少なからず生成する接合界面の金属間化合物が、接合強度に悪影響をおよぼす可能性があるので、こうした金属間化合物を抑制する上で、比較的低い電流条件で接合することが推奨される。
溶接電圧は、10V以上、好ましくは15V以上で、30V以下、より好ましくは20V以下である。
溶接速度は、上記溶接電流および溶接電圧に応じて、母材中のFeおよびAlを過剰溶融させない範囲で適当に決めればよい。ただ、溶接能率なども考慮して好ましいのは20CPM以上、好ましくは30CPM以上で、100CPM以下、より好ましくは90CPM以下である。
シールドガスは、Arなど汎用されるガスが適宜使用でき、ガス流量も、汎用流量が選択でき、特に制限は無い。
(溶接ワイヤ)
アーク溶接に使用する溶接ワイヤ素材としては、前記鋼材の空間を埋めたり、ビードを形成するためのアルミニウム溶接材料を供給できるアルミニウム系の材料であれば、継手や溶接条件に応じて、適宜選択される。この点、JISで規定される、A4043−WY、A4047−WY、A5356−WY、A5183−WYなどが、好適に例示される。
前記溶接ワイヤの内、Al−Mg系ワイヤは、Al−Si系ワイヤに比べて、アルミニウム材の強度が高く、またアークを短く、安定化する作用が強いために好ましい。このため、鉄鋼板として溶融亜鉛メッキ鋼板を使用する場合でも、好適に使用することができる。溶融亜鉛メッキ鋼板を用いて溶接すると、溶接の際に亜鉛蒸気が貫通穴の開口から噴出すので、Al−Si系ワイヤを用いた場合、アークが不安定になりやすく、貫通穴にアルミニウム接合部が充填されがたい可能性がある。これに対して、前記Mgを含むAl−Mg系ワイヤではアークが短く安定化するので、上記のような不都合がなく好適である。
また、前記Al−Mg系ワイヤは、溶接ビードに割れが発生し難い点でも好ましい。アルミニウムと鉄鋼とでは、溶接、冷却時の熱収縮量が異なるため、溶接の際に溶接ビードに引張応力が発生する。このため、溶接ビードを形成するアルミニウム溶接材の強度が低く、またその熱収縮量が大きいほど、ビード割れが発生し易くなる。前記Al−Mg系ワイヤは、Al−Si系ワイヤに比べて、材料強度が高いので、溶接ビードに割れが発生し難い。このため、溶接継手の外観を損なうことなく、またビード割れによる溶接継手の疲労強度の低下を防止することができるという利点がある。
(鋼材)
本発明で言う鋼材とは、普通鋼、高張力鋼(ハイテン)などの鋼材のことを指す。本発明においては、継手に使用する鋼材の種類や形状を特に限定するものではなく、構造部材に汎用される、あるいは構造部材用途から選択される、圧延鋼板、鋼形材、鋼管などの適宜の形状、材料が使用可能である。その意味で、請求項では鋼材とした。ただ、継ぎ手や鋼材の強度を得るためには、高張力鋼(ハイテン)であることが好ましい。
(アルミニウム材)
本発明で言うアルミニウム材とは、JISなどで規格化された純アルミニウム材あるいはアルミニウム合金材のようなアルミニウム材を指す。本発明で用いるアルミニウム材は、その合金の種類や形状を特に限定するものではなく、各構造用部材としての要求特性に応じて、汎用されている圧延板材、押出形材、鍛造材、鋳造材などが適宜選択される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより、下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
図1のように、種々の径の丸穴(貫通穴)4a、4bを溶接線に沿って予め設けた鋼材2を上側、アルミニウム材3を下側として、これらを互いに重ね合わせて、1パスのみのミグ溶接した異材接合体1(図2)の溶接性を評価した。これらの結果を表1に示す。各例とも、後述する試験、評価に対応する数だけ異材接合体1を制作した。
溶接を開始する側にある丸穴4aは、その個数、穴径d1を、丸穴4bの穴径d2との関係で、その大きさを変えた。これら穴径は全て円換算である。表1に示す丸穴4aの個数は、アーク溶接の開始端である鋼材の右端2aから、図1の左側に向かって、溶接線に沿って形成されている丸穴4aの全個数であり、比較例は0個から2個、発明例は1個から2個とした。また、丸穴4bは各例とも10個設けた。
溶接条件は、各例とも、溶接電流(直流電源)は95A、溶接電圧は18〜19V、溶接速度45CPMと一定にし、トーチ11の後退角θのみを種々変えて行った。
そして、図1のように、トーチ11を溶接線に沿って走らせながら、アルミニウム溶接ワイヤ10によって、鋼材2側に設けた丸穴4a、4bに、アルミニウム溶接材料7を溶融充填させつつ、かつアルミニウム溶接材料7によるビード5を形成し、異材接合継手とした。これらの重ね溶接に際し、溶接トーチ11の走行は1回(1パス)のみとした。
アルミニウム溶接ワイヤ10は、直径1.2mmの5000系アルミニウム合金組成であるA5356−WYを使用した。シールドガスとしては、Arを使用し、流量は20〜25L/min とした。なお、本発明では、裏当て金は設ける必要はなく、本実施例でも設けなかった。
鋼材2は市販の590MPa級の高張力鋼板:板厚1.2mm、アルミニウム材3はA6063アルミニウム合金板:板厚2.5mm(アルミ形材より切断採取したもの)を各々用いた。試験片の平面サイズは、鋼板、アルミニウム合金板とも100mm×300mmとし、両者とも、300mmの辺側同士を重ね合わせて、この辺全長をミグ溶接した(溶接線の長さは300mm)。
(溶接性評価)
各例の、溶接を開始する側にある丸穴4aと、これに後続する通常の丸穴4bへのアルミニウム溶接材料7の溶け込み状況を、接合後に溶接部を強制的に破壊して目視にて各々観察して、評価した。各例とも、溶接を開始する側の丸穴4aは二番目の穴を、通常の丸穴4bは最初の丸穴4bから数えて後続する4〜10番目の穴で、最も溶け込みが悪い穴を、各々選択して観察、評価した。
溶け込みの評価は、アルミニウム板3の溶け込みの評価と、溶融アルミニウム材料7充填量とを同時に評価できるパラメータとして、溶接部を強制的にはがした(破壊した)ときに、むしり取られたアルミニウム板の面積によって行った。即ち、むしり取られたアルミニウム板の面積を、はがした時に溶け込みが確認できる面積A(mm2 )とし、丸穴4aの面積S(mm2 )との比A/Sで評価した。そして、A/Sが80%以上を、溶け込みと充填量とが良好であるとして○と評価した。一方、A/Sが70%〜80%未満を溶け込みは良好であるが充填量が不足気味であるものを△、A/Sが70%未満を溶け込みも充填量も不良であるものを×、と3段階で評価した。
(継手強度)
また、これらの溶接後の異材接合体1から、設けた丸穴4aを全て含む、板幅30mmの継手強度評価用試験片を採取し、25mm/minの速度で引張試験を行い、下記式にしたがい単位溶接長あたりの継手強度(N/mm)を算出した。継手強度(N/mm)=最大荷重点荷重(N)/試験片幅(mm)。
継手強度は、250N/mm以上が○、200〜250N/mm未満が△、200N/mm未満が×、と評価した。継手強度は250N/mm以上で自動車などの構造部材用に使え、200N/mm以上で条件によっては使える接合強度評価となる。
表1から明らかなように、発明例3、4、6は、丸穴4aの直径を、丸穴4bの直径の1.2倍〜2.0倍の大きさとしている。また、丸穴4bの直径を円換算にて3.5mmとしてる。更に、溶接トーチ11の1パスのみのミグ溶接によって接合するに際し、溶接トーチ11に後退角θを設けている。この結果、発明例3、4、6は、溶接を開始する側にある丸穴4aへのアルミニウム溶接材料7の溶け込みや充填量が良好で、継手強度も高い。
これに対して、比較例1、2は、丸穴4aの直径が丸穴4bの直径と同じであり、丸穴4aの直径が過小で、実質的に丸穴4aを設けていない。比較例5は、溶接トーチ11が後退角θをもたず直立している、比較例7は、丸穴4aの直径が、丸穴4bの直径の2.0倍を超えて過大である。このため、これら本発明範囲を外れた比較例は、発明例に比して、溶接を開始する側にある丸穴4aへのアルミニウム溶接材料7の溶け込みや充填量が不良で、継手強度も低い。
したがって、これらの実施例の結果から、本発明で規定する要件、あるいは好まし要件の臨界的な意義が分かる。
Figure 2008221322
本発明によれば、スクラムリベット法でのアーク溶接方法による異材接合方法を改善して、高い接合強度を安定的に確保でき、優れた継手強度を有するとともに、溶接継手部に割れのない健全な異材接合継手を得ることができる。また、施工方法が容易で、線溶接が可能なアーク溶接を活用した接合方法を提供できる。したがって、鋼材とアルミニウム材との異材接合継手の分野に有用である。
本発明異材接合継手の溶接接合方法の一態様を示す正面図である。 本発明異材接合継手の一態様を示し、図1(a)は平面図、および図1(b)は側面図である。 鋼材の貫通穴の形状の他の態様を示す平面図である。
符号の説明
1:異材接合継手、2:鋼材(鋼板)、
3:アルミニウム材(アルミニウム合金板)、4:貫通穴(丸穴)、
5:溶接ビード、6:溶接線、7:アルミニウム溶接材料、
10:アルミニウム溶接ワイヤ、11:溶接トーチ、θ:後退角

Claims (1)

  1. アーク溶接法により鋼材とアルミニウム材との異材を接合する方法であって、円換算にて2.0mm径以上、5.0mm径未満の貫通穴を、溶接線に沿って一定の間隔で、予め設けた鋼材を上側、アルミニウム材を下側として、これらを互いに重ね合わせ、溶接トーチを後退角を設けて前記溶接線に沿って走らせながら、アルミニウム溶接ワイヤによって、鋼材側に設けた前記貫通穴に、アルミニウム溶接材料を溶融充填させつつ、かつアルミニウム溶接材料によるビードを形成する、溶接トーチの1パスのみのアーク溶接によって異材を接合するに際し、溶接を開始する側にある所定の個数の貫通穴の円換算による径を、これ以外の前記貫通穴径の1.2〜2.0倍の大きさとすることを特徴とする異材接合方法。
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