JP2008220172A - 酵母の製造方法、酵母、及び糖タンパク質又はβ−グルカンの製造方法 - Google Patents

酵母の製造方法、酵母、及び糖タンパク質又はβ−グルカンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温耐性又は増殖性を回復した酵母の製造方法、及びβ−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法、並びにそのような製造方法により得られた酵母を提供する。
【解決手段】酵母の遺伝子破壊株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程(例えば、変異型pol3遺伝子や変異型cdc6−遺伝子を遺伝子破壊株に導入する工程)を含む、高温耐性又は増殖性を回復した酵母の製造方法、及びβ−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、酵母の遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株のDNAポリメラーゼにおける校正機能を制御して、望ましい変異を惹起することにより、高温感受性を回避又は増殖性などを回復した酵母の製造方法、及びそのような製造方法を用いて得られた酵母などに関する。より詳しく説明すると、本発明は、哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質産生能を有する出芽酵母、又は分裂酵母等の酵母の遺伝子機能欠損株を用い、そのDNAポリメラーゼのアミノ酸配列を改変し変異を惹起することにより、高温感受性を回避又は増殖性などを回復した酵母や外来遺伝子の発現能を有する酵母を得るための製造方法などに関する。
また、本発明は、酵母の遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株のDNAポリメラーゼにおける校正機能を制御して、望ましい変異を惹起することにより、多糖類(特にβ−グルカン)を高効率に産生する酵母の製造方法、及びそのような製造方法を用いて得られた酵母などに関する。より詳しく説明すると、本発明は、哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質産生能を有する酵母の遺伝子機能欠損株を用い、そのDNAポリメラーゼのアミノ酸配列を改変し変異を惹起することにより、機能性食品や医薬品の有効成分として用いられているβ−グルカンを高効率に細胞壁に含有する酵母を得るための製造方法などに関する。
糖鎖を有する糖タンパク質は、生体内で重要な機能を有するものが多い。また、糖タンパク質から糖鎖を除くと生物活性を示さなくなることが、エリスロポエチン(EPO)や組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)などで明らかにされている(木幡陽“タンパク質核酸酵素”Vol.36,p775(1991);竹内誠“生化学”vol.62,p1272(1990))。このことから、糖タンパク質における糖鎖は、生物活性に重要な役割を担っているといえる。よって、糖タンパク質を効果的に生産することは、医薬品などを開発する上で望ましい。
糖タンパク質を産生する場合、遺伝学や分子生物学的技術を適用できるという点や、外来異種タンパク質生産能が高い単細胞真核生物であるという点で、酵母を用いることが考えられる。一方、酵母により産生される糖鎖は、多くのマンノースが付加した構造を有しているため、高等動物体内で強い抗原性を示す。このため、酵母により産生された糖タンパク質は、特に経血管的に投与される医薬用には、必ずしも適切ではないという問題がある。このような問題を解決するため、遺伝子破壊により抗原性をなくした糖鎖(ヒト型糖鎖)を生産する酵母株が構築された(例えば、特開平6−277086号公報、特開平7−299509号公報、及び特開2001−161376号公報を参照のこと)。
特に、国際公開WO01/014522号パンフレット(下記特許文献1を参照)には、och1破壊(Δoch1)、mnn1破壊(Δmnn1)及びmnn4破壊(Δmnn4)を有する三重破壊株が開示されている。すなわち、酵母に特異的な外糖鎖の生合成に関与する遺伝子のうち、初発の延長付加反応を行うα−1,6マンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(OCH1)、糖鎖の非還元末端にマンノースを付加するα−1,3マンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(MNN1)、及びマンノース−1−リン酸の付加を制御する遺伝子(MNN4)の機能を破壊するか、それらの遺伝子に何らかの変異を導入した酵母変異株が開示されている。これらの酵母株は、哺乳類型の糖鎖を含有する糖タンパク質の産生に優れるので、機能性食品や医薬品の開発などに有用であると考えられる。
しかしながら、遺伝子破壊株は、野生株に比べると温度感受性を示し、たとえば、37℃において増殖しないなど高温感受性であり増殖性に乏しい。その結果、遺伝子破壊株は、野生株に比べて生育不良を示し、更にタンパク質産生能が低いという問題がある。
ところで、多糖類の一種であるβ−グルカンは、体内の感染細胞やガン細胞を攻撃するマクロファージや、NK細胞、T細胞、キラーT細胞を活性化させ、免疫力・抵抗力を増強させる作用を有することが知られている。この免疫増強作用により、身体の中に侵入した細菌や異物の排除能が高まり、仮に感染したとしても発病を抑制する抵抗力が得られる。また、このように免疫力が高まることにより、アレルギー反応を鎮め、ガンなどの腫瘍を抑える効果も期待でき、実際にさまざまな臨床試験によって抗腫瘍性などが明らかにされている。さらには、血糖値の低下、利尿作用、血圧調整、血中コレステロールと中性脂肪値の低下といった効果も得られる。
酵母(特にパン酵母)は、古くから発酵食品などに用いられており、食品として極めて安全である。パン酵母は、細胞壁中に通常約45%程度のβ−グルカンを含むため、免疫増強効果にターゲットを絞った健康補助食品として商品化されている。パン酵母のβ−グルカンは、主に細胞壁から抽出することによって利用されている。パン酵母由来のβ−グルカンは、既にザイモサンとして米国で医薬品として販売されている。
酵母の細胞壁からより多くのβ−グルカンを取得するためには、酵母を大量に培養することが必要となる。また培養後は、β−グルカンの高効率な抽出作業が必要となるが、この操作は特別な技術を要するため容易ではない。よって、このような行程をできるだけ省略化し、より一層簡便かつ安価に酵母由来β−グルカンを生産し得る方法の開発が望まれている。
一方、1つの大腸菌細胞内に、忠実度の異なる2種類以上のDNAポリメラーゼを共存させることにより、突然変異を誘発する突然変異誘発方法が知られている(特開2002−262875号公報)。
また、国際公開WO00/028015号パンフレット(下記特許文献2)には、“細胞または生物個体の二重鎖ゲノムDNAの一方の鎖に他方よりも多く点突然変異を導入することを特徴とする遺伝子への突然変異導入方法”(同公報の請求項1)が開示されている。同公報では、“DNA鎖の一方に他方より多くのランダムな点突然変異を多く蓄積させることにより、突然変異率を上げつつ変異処理細胞や生体個体の絶滅の危険性を低下させて効率的、効果的に突然変異体を得る”旨が記載されている(同公報の第9頁下から3行目以降)。しかしながら、同公報では大腸菌を用いた実施例があるものの、酵母を用いた実施例はない。したがって、同公報に開示された技術を酵母に応用した場合に、どのような突然変異が惹起されるかについては、必ずしも明らかではない。
国際公開WO01/014522号パンフレット 国際公開WO00/028015号パンフレット
前述のとおり、一般的に酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などのいわゆる遺伝子機能欠損株においては高温感受性や増殖性の低下など生育性における負の形質が認められることが多いので、本発明は、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法、及びそのような製造方法により得られた酵母を提供することを目的とする。
本発明は、哺乳類型の糖鎖を有する糖タンパク質の産生能を有する遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株において、高温感受性を回避するか、又は増殖性を回復し、高温耐性及びタンパク質産生能に優れた酵母を製造する方法などを提供することを目的とする。
本発明は、上記のような高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法を用いた哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
また前述のとおり、より一層簡便かつ安価に酵母由来β−グルカンを生産し得る方法の開発が望まれているため、本発明は、β−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法、及びそのような製造方法により得られた酵母を提供することを目的とする。
本発明は、上記のようなβ−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法を用いた、β−グルカンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、外来遺伝子の発現能を有する酵母の製造方法、及びそのような製造方法を用いた外来タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、基本的には、酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御することにより、有益な変異を惹起し、そのような有益な変異を繰り返す結果、哺乳類型の糖鎖を有しつつ、増殖遅延を回復し、高温耐性及びタンパク質産生能に優れた酵母、及びβ−グルカン産生能に優れた酵母の新規変異株を製造できたという、実験による知見に基づく。すなわち、本発明は、校正機能の制御に関与する変異を導入したpol3遺伝子やcdc6−遺伝子を酵母内で発現させ、培養を繰り返すことによって、タンパク質生産及びβ−グルカン産生能に適した酵母を得ることができるという知見に基づくものである。
すなわち、本発明の第一の側面は、酵母の遺伝子破壊株や遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法、及びβ−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法に関する。本発明の好ましい態様は、前記酵母が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である、上記に記載の酵母の製造方法である。本発明の好ましい態様は、前記酵母が、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)である、上記に記載の酵母の製造方法である。実施例により実証されたとおり、酵母の遺伝子破壊株(特にoch1遺伝子破壊株など)におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御することで、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母、特にβ−グルカンを高効率に産生する酵母を製造できる。
本発明の好ましい態様は、前記酵母の遺伝子破壊株が、{och1破壊、mnn1破壊、mnn4破壊、及びalg3破壊}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の破壊を有する株であるか、又は{och1変異、mnn1変異、mnn4変異、及びalg3変異}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の変異を有する株である、上記いずれかに記載の酵母の製造方法である。すなわち、実施例により実証されたとおり、糖鎖の伸長に関するoch1などの遺伝子を破壊した遺伝子破壊株を用いると、哺乳類型タンパク質の産生能を発揮しつつ高温感受性を回避し、又は増殖性を回復した酵母、特にβ−グルカンを高効率に産生する酵母を得ることができる。
本発明の好ましい態様は、前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼのエラープローン頻度を調節する工程を含む上記いずれかに記載の酵母の製造方法であり、より具体的には、出芽酵母の遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株におけるPol3(たとえば、配列番号1に記載のポリペプチド)のアミノ酸配列を改変する工程を含む上記いずれかに記載の酵母の製造方法である。また、本発明の好ましい態様は、分裂酵母の遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株におけるCdc6(たとえば、配列番号7に記載のポリペプチド)のアミノ酸配列を改変する工程を含む上記いずれかに記載の酵母の製造方法である。
本発明の好ましい態様は、実施例により実証されたとおり、前記酵母の遺伝子破壊株は、och1破壊、mnn1破壊、及びmnn4破壊が導入された出芽酵母の遺伝子破壊株であり、前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、前記酵母の遺伝子破壊株に、配列番号2で示されるPOL3遺伝子における962番目の塩基がAからCに置換され、968番目の塩基がAからCに置換されたDNAを形質転換する工程を含む上記いずれかに記載の酵母の製造方法に関する。この態様については、後述する実施例により出芽酵母を用いて実証されたので、酵母一般について用いることができると考えられる。
また、本発明の他の好ましい態様は、実施例により実証されたとおり、前記酵母の遺伝子破壊株は、och1破壊が導入された分裂酵母の遺伝子破壊株であり、前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、前記酵母の遺伝子破壊株に、配列番号8で示されるcdc6+遺伝子における898番目から906番目の塩基GAT ATT GAAが、GCC GGC GCTに置換されたDNAを形質転換する工程を含む上記いずれかに記載の酵母の製造方法に関する。och1破壊が導入された分裂酵母の遺伝子破壊株は、och1破壊のみが導入されたものであってもよいし、たとえば、さらに{mnn1破壊、mnn4破壊、及びalg3破壊}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の破壊を有する株であるか、又は{och1変異、mnn1変異、mnn4変異、及びalg3変異}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の変異を有する株であってもよい。
本発明の好ましい態様は、前記高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母は、哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質を産生する出芽酵母又は分裂酵母である、上記いずれかに記載の酵母の製造方法に関する。
本発明の好ましい利用態様は、上記いずれかに記載の酵母の製造方法により得られた酵母を培地で培養し、糖タンパク質を生成させ、前記培養物から前記糖タンパク質を採取する、糖タンパク質の製造方法に関する。このような製造方法を用いて得られた糖タンパク質は、例えば、哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質であり、医薬等に有効に利用されうる。この利用態様における酵母として出芽酵母又は分裂酵母があげられる。 同様に、本発明の好ましい利用態様は、上記いずれかに記載の酵母の製造方法により得られた酵母を培地で培養し、β−グルカンを生成させ、前記培養物から前記β−グルカンを採取するβ−グルカンの製造方法に関する。このような製造方法を用いて得られたβ−グルカンは、例えば、各種機能性食品や医薬等に有効に利用されうる。この利用態様における酵母として出芽酵母又は分裂酵母があげられる。
本発明の第二の側面は、酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法により得られた酵母、及び、酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、β−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法により得られた酵母に関する。この酵母は、高温感受性を回避又は増殖性を回復し、β−グルカンを高効率に産生するものであり、遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株であるにもかかわらず、良好な増殖性などを有する。この利用態様における酵母として出芽酵母又は分裂酵母があげられる。
具体的な酵母として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566
茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に、受託番号「FERM P−20955」、「FERM P−20956」又は「FERM P−21145」として寄託されている酵母があげられる。これらの酵母は、高温感受性を回避又は増殖性を回復したものであり、これらの酵母を用いれば哺乳類に類似したタンパク質を製造することができる。また、これらの酵母はβ−グルカンを高効率に産生するものである。すなわち、本発明は、上記したいずれかの方法で製造された酵母、又は「FERM P−20955」、「FERM P−20956」又は「FERM P−21145」として寄託されている酵母を用いた、糖タンパク質の製造方法、又はβ-グルカンの製造方法をも提供する。
本発明の第三の側面は、上記いずれかの酵母の製造方法により製造された酵母、又は上記いずれかの酵母を用いた糖タンパク質の製造方法、又はβ−グルカンの製造方法に関する。実施例によって実証されたとおり、これらの酵母は、優れた糖タンパク質産生能と、優れたβ−グルカンの産生能を有するので、これらの酵母を用いることで、効果的に糖タンパク質又はβ−グルカンを製造することができる。
本発明の第四の側面は、酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、外来遺伝子の発現能を有する酵母の製造方法に関する。すなわち、酵母を用いてヒト由来遺伝子などの外来遺伝子を発現させ、外来タンパク質を得ることができれば、医薬品の開発などに有効であるが、実施例により実証されたとおり、本発明では、外来遺伝子の発現能を有する酵母をも製造することができる。なお、この側面に係る発明は、第一の側面に係る発明と同様の様々な利用態様を採用できる。この利用態様における酵母として出芽酵母又は分裂酵母があげられる。
本発明によれば、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母遺伝子破壊株(又は遺伝子変異株)などの遺伝子機能欠損株の製造方法、及びそのような製造方法により得られた酵母を提供することができる。
本発明によれば哺乳類型の糖鎖を有する糖タンパク質の産生能を維持しつつ、増殖遅延を回復し、高温耐性及びタンパク質産生能に優れた酵母の新規変異株及びそのような変異株を製造する方法を提供できる。
本発明によれば、上記のような高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法を用いた哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質の製造方法を提供できる。
本発明によれば、β−グルカンを高効率に産生する酵母遺伝子破壊株(又は遺伝子変異株)の製造方法、及びそのような製造方法により得られた酵母を提供することができる。
本発明によれば、上記のようなβ−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法を用いたβ−グルカンの製造方法を提供できる。
本発明によれば、外来遺伝子の発現能を有する酵母の製造方法、及びそのような製造方法を用いた外来タンパク質の製造方法を提供できる。
本発明の第一の側面は、酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株を用い、DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法、及び、β−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法に関する。そして、本発明の第二の側面はその製造方法に従って製造された酵母に関する。さらに、本発明の好ましい形態は、そのような酵母の製造方法を含む、哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質、又はβ−グルカンの製造方法である。なお、本明細書において、「遺伝子機能欠損株」とは、遺伝子破壊及び遺伝子変異のいずれか又は両方が導入された株を意味する。なお、遺伝子破壊及び遺伝子変異の両方が導入された株であっても、遺伝子破壊株又は遺伝子変異株に含まれる。
本発明に用いる酵母は、一般的に酵母とよばれるものであれば特に限定されず、出芽酵母、分裂酵母などを適宜用いることができる。代表的な酵母として、サッカロミセス科(Saccharomycetaceae)、又はシゾサッカロミセス科(Schizosaccharomycetaceae)に属するものがあげられる。より具体的な酵母として、真核生物のモデル生物として汎用されており、出芽酵母の一種であるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及び分裂酵母の一種であるシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)があげられる。本発明に用い得る他の酵母としては、例えば、黒酵母(Aureobasidium pullulans)があげられる。これらの中では、実施例で実証された出芽酵母や分裂酵母が好ましいが、本発明は特に出芽酵母や分裂酵母に限定されず、酵母全般に広く適用できる。特に、分裂酵母については、出芽酵母と同様、所定の遺伝子を破壊することで、糖鎖へのマンノースの付加を効果的に防止し、哺乳類型の糖鎖を有する糖タンパク質を産生できることが知られている(Takehiko Yoko−o et al., FEBS Letters 489(2001)75−80;Clinton E. Ballow et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.91.pp9327−9331,1994;Naotaka Tanaka et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications 330(2005)813−820;Sandra Fanchiotti et al.,Journal of Cell Biology, Vol. 143, No.3, 1988,pp625−636)。また、Pichia pastorisについては、例えば、Wouter Vercken et al., Applied and Environmental Microbiology, Vol. 70, No.5,2004,pp2639−2646に記載され、yeast Yarrowia Lipolyticaについては、例えばStephnie Barnay−Verdier et al.,Microbiology(2004),150,p2185−2195に記載されている。そして、本発明において、突然変異を導入するために改変するDNAポリメラーゼの校正機能に関与する遺伝子は、糖鎖に関する遺伝子とはそれほど関連が強くないと考えられるので、これらの文献に開示される遺伝子破壊株、又はそれらの遺伝子破壊株から当業者が容易に得ることができる遺伝子破壊株に対して、DNAポリメラーゼの校正機能を調整することで、本発明の実施例と同様に高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母を得ることができると考えられる。
本発明に用いる酵母の遺伝子破壊株は、野生型酵母における何らかの遺伝子を破壊した株であれば特に限定されない。何らかの遺伝子を破壊した株は、一般的に野生型酵母に比べて、高温耐性や増殖性などが低下する。本発明によれば、DNAポリメラーゼの校正機能を制御することで突然変異を導入し、遺伝子破壊により低下した機能を回復した株を提供できる。さらには、DNAポリメラーゼの校正機能を制御して、突然変異を導入することで、野生株には見られない、又は野生株では乏しかった機能を発揮させることができる。後述するとおり、実施例では、出芽酵母の三重破壊株及び分裂酵母の三重破壊株を用いて高温感受性を回避し、増殖性などが回復されることを示したが、上記のとおり本発明は、出芽酵母や分裂酵母の三重破壊株に限定されず様々な酵母の遺伝子破壊株に用いることができる。以下、具体的な遺伝子破壊株を説明する。
特許第3091851号公報には、OCH1遺伝子破壊株(Δoch1)にmnn1破壊を有する二重破壊株(Δoch1 mnn1)が開示されている(例えば、同公報の実施例1を参照)。すなわち、本発明に用いる酵母の遺伝子破壊株が二重破壊株(Δoch1 mnn1)である場合、そのような二重破壊株は、同公報に記載の方法に従って得ればよい。そして、同公報によれば、そのような二重破壊株を用いれば、ヒトなど哺乳類細胞の生産する高マンノースと同一のコア型糖鎖、あるいはこの糖鎖構造をもつ高マンノース型糖タンパク質を多量かつ純度よく生産することができるとされている。本発明の酵母の製造方法において、この二重破壊株を用いれば、高温感受性を回避し、増殖性などが回復されるので、効果的に哺乳類細胞の生産する高マンノースと同一のコア型糖鎖などを産生できると考えられる。なお、同公報には、破壊株(Δoch1 mnn1 his1及び/又はhis3)なども開示されており、本発明の酵母の遺伝子破壊株には、それらを含んでもよい。
特許第3091851号公報には、och1破壊、mnn1破壊、及びmnn6破壊を持つ三重破壊株(Δoch1 mnn1 mnn6)が開示されている(例えば、同公報の実施例1を参照)。すなわち、本発明に用いる酵母の遺伝子破壊株が三重破壊株(Δoch1 mnn1 mnn6)などである場合、それらの株は、同公報に記載の方法に従って得ればよい。そして、同公報によれば、そのような三重破壊株などを用いることで、ヒトなど哺乳類細胞の生産する高マンノースと同一のコア型糖鎖、あるいはこの糖鎖構造をもつ高マンノース型糖タンパク質を多量かつ純度よく生産することができるとされている。本発明の酵母の製造方法において、これらの株を用いれば、高温感受性を回避し、増殖性などが回復されるので、効果的に哺乳類細胞の生産する高マンノースと同一のコア型糖鎖などを産生できると考えられる。なお、同公報には、破壊株(Δoch1、mnn1、mnn6、his1及び/又はhis3、ura3)なども開示されており、本発明の酵母の遺伝子破壊株には、それらを含んでもよい。さらに、同公報に開示された技術に従って、OCH1遺伝子及びMNN1遺伝子を破壊した二重破壊株を得ることができる。
また、特開平9−266792号公報には、Δoch1 Δmnn1破壊の他に、MNN4遺伝子及びKRE2遺伝子の機能を破壊した四重破壊株が開示されている。同公報に開示されるように、たとえば、接合型の異なる変異株や遺伝子破壊株を接合させて、生成する2倍体細胞を窒素源を欠乏させた胞子形成培地[例えば、F.Sherman,Methods in Enzymology,vol.194,p.17(1991)参照]に移すことにより、減数分裂させ、これによって生成する4つの胞子を顕微鏡下で個別に分離し、その表現型を調べることにより、様々な変異株を作成することができる。
国際公開WO01/014522号パンフレット(特許文献1)には、och1破壊(Δoch1)、mnn1破壊(Δmnn1)及びmnn4破壊(Δmnn4)を有する三重破壊株が開示されている。すなわち、酵母に特異的な外糖鎖の生合成に関与する遺伝子のうち、初発の延長付加反応を行うα−1,6マンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(OCH1)、糖鎖の非還元末端にマンノースを付加するα−1,3マンノシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(MNN1)、及びマンノース−1−リン酸の付加を制御する遺伝子(MNN4)の機能を破壊した遺伝子破壊酵母株が開示されている。本発明の実施例で用いたTIY20は、同文献に開示されるTIY19とmatが異なるものであって、同じクローンから四分子分析によって得られるものである。四分子分析については、例えば、Dan Burkeら(大矢禎一ら訳)酵母遺伝子実験マニュアル、丸善株式会社平成14年12月10日発行などに記載される方法に従って行うことができる。
国際公開WO01/014522号パンフレット(特許文献1)には、och1破壊、mnn1破壊、mnn4破壊及びalg3破壊を含む破壊を導入した出芽酵母破壊株が開示される他、OCH1遺伝子、MNN1遺伝子、MNN4遺伝子及びALG3遺伝子を破壊した出芽酵母破壊株が開示されている。また、同公報においては、それらの遺伝子破壊による変異形質の他に、ura3変異、his3変異、leu3変異、leu2変異、ade2変異、trp1変異、及びcan1変異からなる群から選ばれる栄養要求性変異形質を有する酵母変異株が開示されている。同公報によれば、これらの変異株は栄養要求性選択マーカーを用いた外来遺伝子の導入が容易に可能であり、これらの変異株を用いることで、哺乳類型の糖鎖あるいは哺乳類蛾他の糖鎖を有する糖タンパク質を多量かつ純度よく製造できることが開示されている。よって、本発明の酵母の製造方法において、同公報に開示される変異株を用いれば、高温感受性を回避し増殖性などが回復されるので、効果的に哺乳類型の糖タンパク質などを製造できると考えられる。さらに、このようにして高温感受性を回避し増殖性などが回復された変異株は、β−グルカンを高効率に産生すると考えられる。
よって、例えば、酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株として、{och1破壊、mnn1破壊、mnn4破壊、及びalg3破壊}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の破壊を有する株であるか、又は{och1変異、mnn1変異、mnn4変異、及びalg3変異}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の変異を有する株であるものがあげられる。すなわち、特定の遺伝子機能の欠損が遺伝子の破壊による遺伝子破壊株のみならず、遺伝子の変異による遺伝子変異株においても、上記と同様の問題があるので、DNAポリメラーゼの校正機能を制御することにより、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母を得ることができ、それによりβ−グルカンを高効率に産生させることができる。遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株の中では、och1破壊のみ又はoch1破壊とその他の変異を有する酵母の遺伝子破壊株を好ましく用いることができる。なお、特開2001−161376号公報には、分裂酵母の糖転移酵素遺伝子och1+の機能を失わせた分裂酵母のoch1破壊株(Δoch1)が開示されている。本発明は、酵母の遺伝子破壊株として、分裂酵母のoch1破壊株(Δoch1)を用いてもよい。よって、例えば酵母として分裂酵母を用いた場合であっても、och1破壊のみ又はoch1破壊とその他の変異を有する遺伝子破壊株を好ましく用いることができる。
DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程 酵母の遺伝子破壊株又は遺伝子変異株などの遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程として、酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼのエラープローン頻度を調節する工程を含むものがあげられ、より具体的には、出芽酵母の遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株におけるPol3のアミノ酸配列を改変する工程を含むものがあげられる。また、分裂酵母の遺伝子破壊株などの遺伝子機能欠損株におけるCdc6のアミノ酸配列を改変する工程を含むものがあげられる。
本明細書において「エラープローン頻度」とは、エラープローンの性質のレベルをいう。エラープローン頻度は、たとえば、遺伝子配列における変異の絶対数(変異の数そのもの)または相対数(全長における変異の数の比率)で表現できる。あるいは、ある生物または酵素について言及するとき、エラープローン頻度は、ある生物の生殖または分裂1回あたりの遺伝子配列における変異の絶対数または相対数で表現してもよい。特に言及しない場合、エラープローン頻度は、遺伝子配列における複製過程1回あたりの誤差の数で表される。エラープローン頻度は、逆の尺度として本明細書において「精度」ということがある。エラープローン頻度が均一であるとは、複数の遺伝子の複製を担う因子(ポリメラーゼなど)に言及するとき、互いのエラープローン頻度が実質的に等しいことをいう。他方、エラープローン頻度が不均一であるとは、有意な差異が複数の遺伝子の複製を担う因子(ポリメラーゼなど)に存在する場合をいう。
本明細書において「エラープローン頻度の調節」とは、エラープローン頻度を変化させることをいう。そのようなエラープローン頻度の調節には、エラープローン頻度の上昇および低減が含まれるが、好ましくはエラープローン頻度を上昇するものである。エラープローン頻度を調節するための手法として、たとえば、校正機能を有するDNAポリメラーゼの改変、複製中に重合反応または伸長反応を阻害または抑制するような因子の挿入、これらの反応を促進するような因子の阻害、抑制、単数または複数の塩基の欠損、DNA修復酵素の欠損、異常塩基の除去修復因子機能を有する酵素の改変、ミスマッチ塩基対修復因子の改変、複製自体の精度の低減などがあげられるがそれらに限定されない。エラープローン頻度の調節は、DNAの二本鎖の両方に対して行われてもよいし、片方のみに対して行われてもよい。DNAの二本鎖のうち片方のみに対して行われるものは、有害な変異誘発が低減されるため好ましい。
本明細書において「エラープローン」とは、遺伝子(DNAなど)の複製における誤り易い(すなわち、複製誤りの)性質をいう。エラープローンは、主に、校正機能を有する酵素(たとえば、DNAポリメラーゼなど)の校正機能の精度によって影響を受ける。本明細書において「複製誤り」とは、遺伝子(DNAなど)の複製の過程で生じるヌクレオチド取り込みの誤りをいう。複製誤りは、通常、生体では、その頻度は10〜1012回に1回程度で極めて低い。複製誤りの頻度が低い理由としては、ヌクレオチドの取り込みが鋳型DNAの取り込まれるヌクレオチドとが相補的な塩基対を形成することによって複製が起こること、DNAポリメラーゼなどの酵素の校正機能すなわち3’→5’エキソヌクレアーゼが、鋳型に相補性を示さないヌクレオチドが誤って取り込まれたときそれを察知し直ちに切り出す機能が存在することなどがあげられる。したがって、本発明において複製におけるエラープローン頻度の調節は、特異的塩基対形成の障害、校正機能の障害などによって行うことができる。
本明細書において「エラーフリー」とは、遺伝子(DNAなど)の複製において誤りがほとんどない、好ましくは実質的に全くない性質をいう。エラーフリーは、主に、校正機能を有する酵素の校正機能の精度によって影響を受ける。本明細書においてエラープローンとエラーフリーとは、絶対的に(すなわち、エラープローン頻度のレベルなどで決定する)分類することができ、あるいは相対的(2種以上の遺伝子の複製を担う因子(たとえば、DNAポリメラーゼなど)におけるエラープローン頻度について多い方をエラープローンとし、少ない方をエラーフリーとする)に分類することができる。
なお、本明細書において“DNAポリメラーゼ”とは、4種類のデオキシリボヌクレオシド5’−三リン酸からピロリン酸を遊離してDNAを重合する働きを有する酵素をいい、出芽酵母のPol3や分裂酵母のCdc6はこれに含まれる。DNAポリメラーゼ反応には、鋳型となるDNA、プライマー分子、Mg2+などが必要とされる。プライマーの3’−OH末端に鋳型に相補的なヌクレオチドを順次付加し分子鎖を伸長する。
本発明において、DNAポリメラーゼの校正機能を制御するためには、何らかの方法で、酵母細胞を不均衡ミューテーター化すればよい。酵母細胞を不均衡ミューテーター化するには、公知の方法に従って、DNAポリメラーゼ遺伝子のうち校正機能に関与する遺伝子領域を破壊するか、そのような遺伝子領域に何らかの変異を導入すればよい。遺伝子破壊及び遺伝子変異の導入方法は、たとえば、DNAポリメラーゼ遺伝子のうち校正機能に関与する遺伝子領域は公知であるから、それらの遺伝子領域の塩基配列を、例えば1個〜100個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜3個他の塩基で置換し、形質転換すればよい。例えば、真核生物染色体DNA複製時にラギング鎖の複製に関与するとされるポリメラーゼδ(Polδ)の校正機能を消失させた変異タンパク質を目的の酵母細胞内で発現させることで、酵母細胞を不均衡ミューテーター化することができる。すなわち、Polδ変異タンパク質を目的の酵母細胞内で発現させるための方法として、人為的にPolδ変異遺伝子を得て、対象となる酵母に形質転換することにより、変異遺伝子を発現させ、機能させるものがあげられる。すなわち、出芽酵母におけるPolδであるPol3の校正機能消失変異型の作成方法として、予めクローニングした野生型のPOL3遺伝子を鋳型にして、その校正機能活性部位のアミノ酸配列を一部人工的に置換し、校正機能を制御すればよい。また、pol3変異株と同様の形質を持ち、既に天然の変異体として同定されている株より、当該遺伝子をクローニングして用いる方法を用いてもよい(後述する実施例においては、後者の方法を用いた。)。DNAポリメラーゼ遺伝子には、DNAポリメラーゼの構造遺伝子のみならず、DNAポリメラーゼのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含してもよい。
また、他の例として、分裂酵母におけるPolδであるCdc6(Cell division cycle 6)の校正機能を消失させた変異タンパク質を目的の酵母細胞内で発現させることで、分裂酵母細胞を不均衡ミューテーター化することができる。すなわち、Cdc6変異タンパク質を目的の酵母細胞内で発現させるための方法として、人為的にcdc6−変異遺伝子を得て、対象となる酵母に形質転換することにより、変異遺伝子を発現させ、機能させるものもあげられる。具体的には、前記pol3変異遺伝子と同様の作成方法にて、校正機能消失変異型のcdc6(cdc6−)を得ることができる。
後述する実施例においては、配列番号2で示される塩基配列からなるPOL3遺伝子におけるpol3−01変異遺伝子(配列番号4で示される塩基配列)は、配列番号2で示されるPOL3遺伝子における962番目の塩基がAからCに置換され、968番目の塩基がAからCに置換されたものである。ただし、出芽酵母におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する方法は、上記の方法に限定されるものではなく、例えば、上記の位置における置換を含んで別の位置の塩基配列を1個〜10個(好ましくは2個〜5個、更に好ましくは配列番号2で示されるPOL3遺伝子の898番目〜980番目の塩基を2個〜5個)置換する方法など、様々な方法が含まれる。 更に、配列番号8で示される塩基配列からなるcdc6+遺伝子におけるcdc6−1変異遺伝子(配列番号10で示される塩基配列)は、配列番号8で示されるcdc6+遺伝子における898番目から906番目の塩基GAT ATT GAAが、GCC GGC GCTに置換されたものである。ただし、分裂酵母におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する方法は、上記の方法に限定されるものではなく、例えば、上記の位置における置換を含んで別の位置の塩基配列を1個〜10個(好ましくは2個〜5個、更に好ましくは配列番号8で示されるcdc6+遺伝子の898番目〜980番目の塩基を2個〜5個)置換する方法など、様々な方法が含まれる。
本明細書において校正機能が「野生型のものよりも低い」とは、ある校正機能を有する酵素などについて言及するとき、その酵素の野生型よりも校正機能が低いこと(すなわち、その酵素での校正処理の後に残留する変異の数が野生型による校正処理の後に残留する変異の数よりも多いこと)をいう。そのような野生型との比較は、相対的または絶対的な表示によって行うことができる。そのような比較はまた、エラープローン頻度などによって行うことができる。
本明細書において「変異」とは、遺伝子について言及するとき、その遺伝子の配列の変化を生じることまたはその変化によって生じた遺伝子の(核酸またはアミノ酸)配列の状態をいう。本明細書では、たとえば、変異は、校正機能について生じる遺伝子配列の変化について用いられる。本明細書では、特に言及しない場合は、変異は、改変と同義で用いられる。
有用な変異体を作製するためには、生物において変異誘発を行うことがもっとも一般的である。変異とは、通常、遺伝子をコードする塩基配列の変化をいい、DNA配列の変化が包含される。変異は、それが発生した個体に与える影響により、大きく次の3種類に分けられる:A)中立変異(neutral mutation):この変異は、ほとんどの変異が該当し、生物の成育および代謝にほとんど影響がない。B)有害変異(deleterious mutation):この変異は、中立変異よりは頻度は少ない。生物の成長または代謝を阻害する。有害変異には、生育に必須な遺伝子を破壊するような致死変異(lethal mutation)も含まれる。微生物の場合、種によっても異なるが、通常全変異に占める有害変異の割合は、約1/10〜1/100とされている。C)有益変異(beneficial mutation):この変異は、生物の育種に有益な変異である。その発生頻度は中立変異と比較して極めて低い。したがって、有益変異が導入された生物個体を得るためには、大きな生物集団と、長い時間が必要となる。また、生物の育種の十分な効果は、単一の変異だけで現れることはまれであり、複数の有益変異の蓄積が必要であることが多い。なお、これらの変異の導入については、例えば、Dan Burkeら(大矢禎一ら訳)酵母遺伝子実験マニュアル、丸善株式会社平成14年12月10日発行などに記載される方法に従って行うことができる。
以下では、DNAポリメラーゼの校正機能を制御し、酵母細胞を不均衡ミューテーター化する工程としてPOL3遺伝子を対象とした場合について説明する。なお、校正機能を制御するDNAポリメラーゼとして、分裂酵母におけるcdc6遺伝子などを対象とした場合も、POL3遺伝子を対象とした場合と同様にして酵母細胞を不均衡ミューテーター化することができる。なお、Pol3及びCdc6は、真核生物においてポリメラーゼδ(Polδ)と総称されるDNA複製酵素であり、それぞれ出芽酵母及び分裂酵母においてPolδに相当する遺伝子である。POL3遺伝子は、具体的には、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のW303−1A(ura3,leu2,his3,trp1,ade2)〔Kainumaら、Glycobiology,Vol.9,133−141(1999)〕株から得たゲノムを鋳型にしてPCR法により取得することができる。プライマーには、Pol3タンパク質をコードする部分を容易に切り出せるように制限酵素切断部分を付与したものを用いればよい。具体的に説明すると、出芽酵母POL3遺伝子を適当なベクターにクローニングした後、Pol3の校正機能を調節するように変異を導入するためにプライマーを設計し、変異型pol3を得ることができる。
また、上記変異型pol3を酵母内で発現させるために、上流にプロモーターを、下流にターミネーターを挿入して発現カセットを構築し、これを発現ベクターに導入すればよい。また、その遺伝子を導入する発現ベクターにプロモーターとターミネーターが既に存在する場合は、発現カセットを構築することなく、そのプロモーターとターミネーターを利用してその間に当該融合遺伝子のみを導入すればよい。
発現カセット中のプロモーターは、酵母発現系で一般に使用され、形質転換酵母菌内で導入した融合遺伝子を発現させることができるプロモーターであれば特に限定はないが、例えば、PGK、GAP、TPI、GAL1、GAL10、ADH2、PHO5、及びCUP1などがあげられ、これらの中ではGAPプロモーターが好ましい。
一方、ターミネーターは、酵母発現系で一般に使用され、導入した融合遺伝子の下流に存在させて転写終結が可能とするものであればよく、例えば、ADH1、TDH1、TFF、及びTRP5などがあげられる。
発現カセットを導入する発現ベクターとして、酵母発現系で一般に使用されるものであれば特に限定はない。具体的な発現ベクターとして、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、及びpUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、及びpC194)、酵母由来のプラスミド(例、pSH19、及びpSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、並びにバキュロウイルスなどの昆虫病原ウイルスなどを用いることができるが、酵母由来のプラスミドが好適に使用されうる。
酵母の形質転換に利用されるプラスミドは、酵母の形質転換に用いることができるプラスミドであれば特に限定されないが、例えば、YEpと略される酵母エピソーム型プラスミド(yeast episome plasmid)、YRpと略される酵母自己複製型プラスミド(yeast replicating plasmid)などがあげられる。酵母エピソーム型プラスミドベクターは、酵母の本来もつ2μプラスミドの配列を含んでおり、その複製起点を利用して宿主酵母細胞内で複製できるようにしたベクターである。本発明で使用する酵母エピソーム型発現ベクターは、酵母の2μプラスミド配列の少なくともARS配列を含んでおり、かつ宿主酵母菌体内において染色体外で増殖することができるものが好ましい。具体的なプラスミドとして、YEp51、pYES2、YEp351、YEp352及びpREPなどがあげられる。
上記の酵母エピソーム型発現ベクターは、組換え大腸菌でのサブクローニングを行えるように、大腸菌体内部で増殖できるシャトルベクターである方が好ましく、またアンピシリン耐性遺伝子等選択マーカー遺伝子を含むものがさらに好ましい。また、該発現ベクターは、組換え酵母を作成した際に、栄養要求性や薬剤耐性によって酵母クローンを選抜できる、マーカー遺伝子を含む。マーカー遺伝子としては、例えば、HIS3、TRP1、LEU2、URA3、ADE2、CAN1、SUC2、LYS2、及びCUP1などがあげられる(大島泰治編著、生物化学実験法39、酵母分子遺伝学実験法、119−144 (1996))。これらはあくまで例示であり、遺伝子導入の宿主とする酵母菌株の遺伝子型に応じて適宜選択すればよい。上述した融合遺伝子発現プラスミドの構築に関する一連の手法は、後記実施例の記載を参照して、あるいは慣用の技術により当業者が適宜実施することができる。
発現ベクターには、プロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン、タグをコードするDNAなどを付加してもよい。また、発現ベクターは、融合タンパク質発現ベクターであってもよい。市販されている融合タンパク質発現ベクターとして、pGEXシリーズ(アマシャムファルマシアバイオテク社)、pET CBD Fusion System 34b−38b(Novagen社)、pET Dsb Fusion Systems 39b and 40b(Novagen社)、及びpET GST Fusion System 41 and 42(Novagen社)などがあげられる。
本発明において、上記の変異型pol3遺伝子発現ベクター(ミューテーター)にて形質転換させる宿主酵母としては、サッカロミセス属、カンジダ属に属する酵母を用いるものがあげられるが、特に限定はされない。サッカロミセス属の酵母としては、例えば、Saccharomyces cerevisiae KK4株、Y334株、Inv−Sc1株、及びW303株があげられる。また、本発明において、上記の変異型cdc6遺伝子発現ベクターにて形質転換させる宿主酵母としては、シゾサッカロミセス属、又はカンジダ属に属する酵母を用いるものがあげられるが、特に限定はされない。シゾサッカロミセス属の酵母としては、例えば、Schizosaccharomyces pombe、及びTN8株があげられる。
融合遺伝子発現ベクターにて酵母を形質転換するには、例えば、以下の方法があげられる。リン酸リチウムで処理し、DNAとPEGを加えてインキュベートする方法や、エレクトロポレーション法などの公知の方法を利用できる(Becker and Guarente, Methods Enzymol., 194, 182−187(1991))。また、細胞壁を酵素で消化したスフェロプラスト細胞をPEGとDNAとを、二塩化カルシウムなどに由来するカルシウムイオンの存在下でインキュベートするスフェロプラスト法(Hinnen et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:1929(1978))や、DNAを表面に付着させた粒子を細胞に照射することにより形質転換を行う方法(Fox T.D.et.al.,1988.Plasmids can stably transform yeast mitochondria lacking endogeneous mtDNA.Proc.Nat.Acad.Sci.85:7288−7292)を用いてもよい。
対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子およびポリエチレングリコールを含有する溶液中で維持する工程を含む酵母の形質転換方法(特許3682530号)であってもよい。
形質転換酵母のスクリーニングのために、適当な選択マーカーを用いる。一例として、宿主細胞の染色体DNA上の代謝に関与する遺伝子を用いることが望ましい。すなわち、染色体DNA上の上記遺伝子を突然変異等の適当な手段により機能しないような宿主細胞を用い、相当する正常な遺伝子を含む発現ベクターを形質転換することにより、正常な代謝遺伝子を含む形質転換細胞のみを増殖させてスクリーニングできる物が好ましい。具体的には上記したようなURA3、LEU2等広く用いられている選択マーカー遺伝子を発現ベクターに接続する。染色体組み込み型タイプ(YIpタイプ)の場合にもこれらの遺伝子はスクリーニングのマーカーとなる。
形質転換された形質転換酵母に多くの変異を導入するために、数世代にわたる分裂を繰り返すことができるように培養する。具体的には、培地5mlで一晩培養し、2ml、50ml、100mlとスケールアップを繰り返し、約一週間程度の期間、酵母が分裂できる状態で培養を繰り返す。形質転換酵母の培養方法は、酵母の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。培地として、酵母が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地を用いればよく、具体的には、YPD培地、YPG培地、YPDG培地、YPAD培地、グルコース合成最小培地(SD)、ヨウ素添加最小培地(SMM)、Hartwellの完全培地(HC)、GAL発酵試験培地、又は胞子形成培地などを適宜用いることができる。また、例えば、Difco社から供給される各種の培地成分を添加し、かつプラスミドの複製・保持に必要なマーカーによって供給可能となるアミノ酸を除いた合成培地(炭素源、窒素源、無機塩類、アミノ酸、ビタミン等を含む)等を利用できる(Sherman,Methods Enzymol.,194,3−57(1991))。
培地のpHは、6〜8に調節することが適当である。pHの調整は、無機又は有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどの添加量を制御することにより行えばよい。培養は、28〜32℃、好ましくは30℃で、約一週間(たとえば、1日から1ヶ月、好ましくは5日〜10日)、常法に従い、通気や攪拌を適宜加えつつ行えばよい。特に、TIY20株を効率よく培養するためにKCl及びソルビトールを加え30℃で培養することが望ましいが、穏やかな選択圧を加えるために、KCl及びソルビトールを加えない培地にて培養を行ってもよい。また、穏やかな選択圧を得るために、31℃〜35℃(又は32℃〜33℃)など30℃に比べ少し高い温度で培養してもよい。
高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母 高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母は、上記した製造方法により製造された酵母を意味する。そして、具体的には、哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質を産生する出芽酵母、または分裂酵母などがあげられる。より具体的には、公知の遺伝子破壊株、又は公知の遺伝子破壊株から公知の方法に従って製造しうる遺伝子破壊株において、DNAポリメラーゼの校正機構に関する遺伝子を改変することにより得られる酵母などがあげられる。
哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質 哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質は、上記した公知の遺伝子破壊株によって産生されるものであればよく、遺伝子破壊株から糖タンパク質を単離・精製する方法も、本明細書に記載したいずれかの文献に開示される方法又は公知の方法を適宜用いればよい。例えば、培養が終了した後に、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁する。その後、超音波破砕機、フレンチプレス、ホモジナイザー、ダイノミルなどを適宜用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。そのようにして得られた無細胞抽出液を遠心分離して上清を得て、その上清から溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル−セファロースなどのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、アフィニティークロマトグラフィー法などを適宜組み合せればよい。
本明細書において、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを示す。またアスタリスク(*)は、リン酸化可能部位を示す。具体的な哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質として、下記式(I)、又は(II)で示されるオリゴ糖鎖をアスパラギン結合型糖鎖として有する糖タンパク質があげられる。
Figure 2008220172
β−グルカンを高効率に産生する酵母 β−グルカンを高効率に産生する酵母は、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母と同様に、上記した製造方法により製造された酵母があげられる。一方、酵母の遺伝子破壊株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御することによらずに得られた、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母を用いることによっても、β−グルカンを高効率に得ることができるとも考えられる。β−グルカンを高効率に産生する酵母の例として、β−グルカンを高効率に産生する出芽酵母又は分裂酵母などがあげられる。より具体的には、公知の遺伝子破壊株、又は公知の遺伝子破壊株から公知の方法に従って製造しうる遺伝子破壊株において、DNAポリメラーゼの校正機構に関する遺伝子を改変することにより得られる酵母などがあげられる。
β−グルカン
β−グルカンは、上記した公知の遺伝子破壊株によって産生されるものであればよい。例えば、具体的なβ−グルカンの種類として、β−1,3−D−グルカン及びβ−1,6/1,3−Dグルカンがあげられる。遺伝子破壊株から(特に酵母細胞壁から)β−グルカンを単離・精製する方法として、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、培養が終了した後に、得られた培養物(細胞)を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁する。次いで、超音波破砕機、ボルテックスミキサー、フレンチプレス、ホモジナイザー、ダイノミルなどを適宜用いて細胞を破砕し、細胞破砕液を得る。得られた細胞破砕液を遠心分離してペレット(細胞壁含む)を回収する(再懸濁、遠心分離、ペレット回収は適当回数繰り返す。)。その後、溶媒除去や減圧乾燥や再懸濁など、所定の操作を行った後、例えば、ピリジルアミノ(PA)化法によりHPLCを用いて糖質分析を行う方法などが好適であり、なかでもPA化法によるHPLC分析がより好適である。
本発明の第2の側面は、酵母の遺伝子破壊株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、外来遺伝子の発現能を有する酵母の製造方法に関する。本発明の第2の側面は、外来遺伝子を導入した遺伝子破壊株を用いる以外は、第1の側面と同様である。外来遺伝子を導入した遺伝子破壊株の作出方法は、公知の方法に従って、適宜行えばよい。本発明の第2の側面における外来遺伝子は、その種以外の生物に由来する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、ヒト由来のヒトα−ガラクトシターゼA遺伝子があげられる。後述する実施例5によって、実証されたとおり、この方法によれば外来遺伝子を効果的に発現させることができる。本発明の第2の側面は、第1の側面と同様、外来遺伝子の発現能を有する酵母の製造方法のみならず、その製造方法によって製造された外来遺伝子の発現能を有する酵母、外来遺伝子、タンパク質などをも提供する。また、この側面に係る発明は、上記した製造方法により得られた酵母を培地で培養し、外来遺伝子を発現させて外来タンパク質を生成させ、得られた培養物から生成させた外来タンパク質を採取することにより、外来タンパク質を効果的に製造する方法をも提供する。
配列番号の説明 本明細書の配列表に記載される配列は、以下の配列を示す。 配列番号1は、Pol3のアミノ酸配列を示す。 配列番号2は、POL3遺伝子をコードするcDNAの塩基配列を示す。 配列番号3は、pol3−01のアミノ酸配列を示す。 配列番号4は、pol3−01変異遺伝子をコードするcDNAの塩基配列を示す。 配列番号5は、実施例1におけるPCR反応で用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。 配列番号6は、実施例1におけるPCR反応で用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。 配列番号7は、Cdc6のアミノ酸配列を示す。 配列番号8は、cdc6+遺伝子をコードするcDNAの塩基配列を示す。 配列番号9は、cdc6−1のアミノ酸配列を示す。 配列番号10は、cdc6−1変異遺伝子をコードするcDNAの塩基配列を示す。 配列番号11は、実施例6におけるPCR反応で用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。 配列番号12は、実施例6におけるPCR反応で用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。 配列番号13は、実施例6におけるPCR反応で用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。 配列番号14は、実施例6におけるPCR反応で用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。
寄託株の説明 後述する実施例で得られたYAB100株は、平成18年7月11日から独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号:FERM P−20955として寄託されている。 後述する実施例で得られたYAB101株は、平成18年7月11日から独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号:FERM P−20956として寄託されている。
後述する実施例で得られたC2−11株は、平成18年12月27日から独立行政法人産業技術総合研究所
特許生物寄託センターに、受託番号:FERM P−21145として寄託されている。
次に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
変異型pol3DNA断片を導入したプラスミドpAB100の産生 以下のようにして変異型pol3DNA断片を出芽酵母強制発現用マルチコピーベクターYEP352GAP2のSacI−SalIサイトにクローニングし、プラスミドpAB100(図1(a)参照)を構築した。 Pol3のアミノ酸配列は配列番号1に示され、Pol3をコードするDNAの塩基配列は配列番号2に示されるが、本実施例で得られたpol3−01変異遺伝子は配列番号2における962番目の塩基がAからCに置換され、968番目の塩基がAからCに置換されたものである。すなわち、配列番号2で示される塩基配列の961番目から969番目までの塩基配列によってコードされるアミノ酸残基が、DIEからAIAに置換されるような変異を導入した。このようにして得られたpol3−01のアミノ酸配列を配列番号3に示し、pol3−01変異遺伝子をコードするDNAの塩基配列を配列番号4に示す。具体的に説明すると、天然のミューテーター変異株として知られているAMY128−1株(MATαpol3−01、ura3−52、leu2−1、lys1−1、ade2−1、his1−7、hom3−10、trp1−289)のゲノムをテンプレートに用いて、PCR反応(フォワードプライマー:5’−AGCTCGAGCTC(SacI)ATGAGTGAAAAAAGATCCCTTCCCATG−3’(配列番号5)、リバースプライマー:5’−GCATCGCGGCCGC(NotI)TTACCATTTGCTTAATTGTTCTAC−3’(配列番号6))にてpol3−01変異遺伝子を増幅し、その増幅断片をpYES2ベクターのSacI−NotIサイトにクローニングした(得られたプラスミドをpYES2−pol3−01と命名した。)。さらに、GAPDHプロモーターの支配下でpol3−01変異遺伝子が発現できるように、pYES2−Pol3−01からpol3−01変異遺伝子を制限酵素SacIとXhoIにて消化し、YEp352GAP−IIベクターのSacI−SalI siteにクローニングした(このようにして得られたプラスミドをpAB100と命名した。)。
糖鎖改変株の高温耐性株の取得 出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)糖鎖改変株TIY20(matα och1::hisG mnn1::hisG mnn4::hisG)に、上記のようにして得られたプラスミドpAB100を形質転換した。TIY20は、国際公開WO01/014522号パンフレット(特許文献1)に開示されるTIY19と同じクローンから四分子分析によって得た。得られた形質転換体(TIY20/pAB100)を、より多くの変異を入れるために出芽酵母用合成培地SD−U(6.7g Yeast nitrogen base without amino acids (Difco laboratories)、20g グルコース、0.77g CMS−URA(Sunrise Science Products)(液体)に、できるだけ多く分裂できるように条件を制御して培養した。これらの菌の中から高温耐性株を得るために、SD−U固形培地に蒔いてから37℃で3日培養し、生えてきたコロニーを釣菌した。得られた株からpAB100を脱落させるために完全培地YPAD(10g Yeast extract(Difco laboratories)、20g peptone(Difco)、0.2g硫酸アデニン(Sigma)、20gGlucose/1L)にストリークした後、培養し、シングルコロニーを20個ずつ回収した。これらのコロニーのうちSD−U培地で生えることができないコロニーを取得した。
酵母内タンパク質インベルターゼに付加される糖鎖長の解析 実施例1で得られた9株(C15、C27、C28、C30、C3−20、C4−1、C3−3−1、C3−7−2、及びC3−3−9)のN結合型糖鎖長を調べるために酵母内で作られるインベルターゼに付加されるN−結合型糖鎖長を以下の方法にて調べた。それぞれの株を5mlのYPADで培養後、5mlのYPSuc(10g Yeast extract(Difcolaboratories)、20gのpeptone(Difco)、10gのsucrose/1L)で3時間以上培養し、菌を回収した。回収した菌は50μlのSDS−PAGEサンプルバッファー(15%Glycerol、0.125M Tris−HCl(pH6.8)、2mM PMSF、3%SDS、0.1%Bromophenol blue、1%2−mercaptoethanol)とグラスビーズを加えてボルテックスにて破砕した。15,000回転で5分間遠心分離した後、上清5μlずつを5%SDS−PAGEにて電気泳動(100V、3時間)した。ゲルを反応液(3.4g sucrose、3ml 3M Na−acetate/100ml)に移し、30分37℃でインキュベーションした後、脱イオン水にて2回洗浄した。染色液(2g NaOH、50mg triphenyltetrazoliumchloride/50ml)に移し、発色するまで煮込んだ。その結果を図2に示す。図2は、N結合型糖鎖長を調べるための図面に替わるSDSゲル電気泳動写真である。図2のレーンは、左から、C15、C27、C28、C30、C3−20、C4−1、C3−3−1、C3−7−2、C3−3−9、TIY20及びW303−1Aを示す。図2から、得られた9株のインベルターゼに付加されるN−結合型糖鎖は親株であるTIY20と同じ糖鎖長をもつことが分かった。
生育の回復効率の解析 次に、実施例1で得られた株の成長回復効率を解析した。5mlのYPADで30℃にて培養を行った後、OD600が0.1となるように10mlのYPADに移し、30℃あるいは37℃にて培養した。タイムポイントごとに菌を回収しOD600を調べた。その結果を図3に示す。図3は、30℃及び37℃における生育の回復効率を示す図面に替わるグラフである。図3から、解析を行った9株のうち、C4−1とC3−20は30℃での成長割合がTIY20よりも上回ったことがわかる。また図3から、37℃ではTIY20はほとんど増殖できないにもかかわらず、C4−1、C3−20では増殖能が回復したことがわかる。なお、各株の様子を図1(b)に示し、図1(b)の分画を図1(c)に示す。
糖鎖構造解析 実施例1で得られた株におけるマンノタンパク質の糖鎖構造を解析した。50mlで培養した菌を回収し、水で洗浄後、100mMのクエン酸バッファー(pH7.0)8mlに懸濁し、121℃にて2時間オートクレーブした。遠心にて上清を回収し、24mlの冷エタノールを添加し、−20℃にて30分静置後、遠心して沈殿を回収した。水に懸濁後、3mg/mlになるようにタンパク溶液を調整し、そのうち5μlGlycopeptidaseF(タカラバイオ社製4450)にて処理した。37℃17時間インキュベーション後100μlとなるように水を加え、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25・24・1)を加えて良く攪拌し、遠心にて上清を回収した(フェノールクロロホルム抽出)。回収した液にクロロホルムを加えて攪拌後、遠心して上清を回収し(クロロホルム抽出)、ドライアップした。ドライアップしたサンプルにPyridylamination manual kit(タカラバイオ社製4480)にてピリジルアミノ化した後、7回のフェノールクロロホルム抽出に供し余分な試薬を除去した。クロロホルム抽出を行った後、上清をドライアップし、水に溶解後、HPLC(島津社製Class−VP、カラム、TOSOH TSK−GEL AMIDE−80(φ4.6mm×250mm)、 流速、1ml/min、検出、320nm(励起)、400nm(蛍光)、バッファーA、アセトニトリル、バッファーB、200mMTEAA(バッファーの濃度を上げて各糖を溶出)、バッファーBのグラジエント条件、0−40分、30→60%、40−50分、30%)にて糖鎖構造を解析した。その結果を図4に示す。図4は、糖鎖構造を解析するための図面に替わるカラム解析の結果を示すグラフである。図中、マンノースの数がMで示されている。縦軸は蛍光強度であり、横軸は保持時間(分)である。図4から、野生株W303−1Aでは、様々な数のマンノースが付加していることがわかる。一方、図4から、得られた株の全てにおいて、親株であるTIY20と同じマンノース8個からなる糖鎖構造を示すピークがメインピークとして観察された。このことは、実施例における変異株が、いわゆる哺乳類型の糖鎖を有していることを示す。すなわち、実施例における変異株を用いれば望ましい糖鎖を有するタンパク質を得ることができる。すなわち、本発明は実施例における変異株を用いたタンパク質の製造方法をも提供する。
キチナーゼ解析 実施例1で得られた株から分泌されるタンパク質の分泌効率を解析した。40mlで培養した菌の上清に40mgのwet chitin(Sigma)を加え、4℃で一晩攪拌する。遠心してキチン回収後、PBSで3回洗浄。100μlのSDS−PAGEサンプルバッファーに懸濁し、100℃にて10分処理した後、10μlをSDS−PAGEしConA−biotin(生化学工業)にてレクチンブロットした。検出はStreptavidin−HRP(生化学工業)にて検出した。検出用試薬として、Immobilon Western Chemiluminescent HRP Substrate(Milipore)を用い、検出装置として富士フィルムLAS1000を用いた。その結果を図5に示す。図5は、変異株から分泌されるタンパク質の分泌効率を示すための図面に替わるグラフである。図5から、TIY20では分泌効率が野生型株の約50%にも拘らず、得られた株において分泌効率が回復することがわかる。とりわけ、C4−1及びC3−20では分泌効率が野生型株と同等までに回復した。そこで、得られた株C4−1をYAB100、C3−20をYAB101とし特許微生物寄託した。
α−ガラクトシダーゼA活性測定(外来遺伝子の発現能検証) ヒトα−ガラクトシダーゼA遺伝子をGAPDHプロモーターの下流に連結した発現カセットを有するベクター(pRS4−GAP−αGalA)(Chiba,Y.et al.,Glycobiology,12,821−828,2002)をC4−1、C3−20、C3−7−2、及びC27にそれぞれ形質転換した。得られた形質転換体を図6に表示される時間培養した後、その培養液(菌も含む)を酵素源とした。基質として5mMの4−MU−α−galactopyranosideを用いて、37℃において30分反応後、200μlの反応停止液(0.2Mのグリシンバッファー(pH10.7))を入れることによって停止させた。蛍光用マイクロプレートリーダー(コロナ社製MTP−32、Ex:365nm、Em:450nm)で測定を行った。酵素活性はタンパク1mgあたり1時間で加水分解された基質をμmolとして表した(図6の縦軸)。その結果を図6に示す。図6は、α−ガラクトシダーゼA活性の測定結果を示す図面に替わるグラフである。図6から、TIY20株は、α−ガラクトシダーゼが失活するのに対し、C3−20、C3−7−2及びC4−1は、良好なα−ガラクトシダーゼA活性を示し、特にC3−20及びC3−7−2は、野生型W303−1Aよりも高いα−ガラクトシダーゼA活性を示すことがわかる。
変異型cdc6—DNA断片を導入したプラスミドpREP1cdc6−1の産生
以下のようにして変異型cdc6(cdc6−1)DNA断片を分裂酵母強制発現用マルチコピーベクターpREP1のBamHI−NotIサイトにクローニングし、プラスミドpREP1cdc6−1(図7(a)参照)を構築した。
分裂酵母のCdc6のアミノ酸配列は配列番号7に示され、Cdc6をコードするDNAの塩基配列は配列番号8に示される。本実施例で得られたcdc6−1変異遺伝子は、配列番号8における898番目から906番目の塩基(GAT ATT GAA)を、GCCGGCGCTに置換したものである。すなわち、898番目から906番目までの塩基配列によってコードされるアミノ酸残基がDIEからAGAと置換されるような変異を導入した。このようにして得られたcdc6−1のアミノ酸配列を配列番号9に示し、cdc6−1変異遺伝子をコードするDNAの塩基配列を配列番号10に示す。具体的には、分裂酵母の野生株であるTN8株(h90leu1−32)から抽出したゲノムDNAをテンプレートに用いて、PCR反応によるSite−directed法によってcdc6の変異遺伝子断片を増幅した。PCR反応には、フォワードプライマー(配列番号11):5’−AGCTCGGATCC(BamHI)GATGACAGATAGGTCTTCAAATGAGGGCGTC−3’、リバースプライマー(配列番号12):5’−TCGAGGCGACCTGCGCAAGCGCCGGCAAAGCTCATGAT−3’、フォワードプライマー(配列番号13):5’−AGCTCAGGATCATGAGCTTTGCCGGCGCTTGCGCAGGTCGCA−3’、リバースプライマー(配列番号14):5’−TCGAGGCGGCCGC(NotI)TCACCAGGACATTTCATCAAATCTTTTCA−3’を用いた。配列番号12のリバースプライマーおよび配列番号13のフォワードプライマーにより、前述した898番目から906番目の塩基の置換が起こる。得られた増幅断片の両端を制限酵素BamHIとNotIにて消化し、pREP1ベクターのBamHI−NotIサイトにクローニングした(このようにして得られたプラスミドをpREP1cdc6−1と命名した。)。このプラスミドはnmt1プロモーターの支配下で変異型cdc6遺伝子(cdc6−1)を発現させることができた。
糖鎖改変株の高温耐性株の取得
分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)糖鎖改変株KT97(h leu1−32 ura4−D18 Δoch1::ura4+)に、上記のようにして得られたプラスミドpREP1cdc6−1を形質転換した。KT97(Yoko−o T et al.,FEBS Letters 489,75−80.(2001))は、特開2001−161376号公報に開示されている。すなわち、KT97は、OCH1遺伝子を破壊した分裂酵母の遺伝子破壊株である。得られた形質転換体(KT97<pREP1cdc6−1)を、より多くの変異を入れるために分裂酵母用合成培地EMM(3g phthalic acid K+、2.2g NAHPO、5g NHCl・2HO、1g KCl、0.04g Na2SO4、1mg pantothenic acid、10mg nicotinic acid、10mg myo−inositol、1mg biotin、0.5mg boric acid、0.4mg MnSO、0.4mg ZnSO・7HO、0.2mg FeCl・6HO、40mg molybdic acid、0.1mg Kl、40mg CuSO・HO、1mg Citric acid/1L)(液体)に、できるだけ多く分裂できるように条件を制御して培養した。これらの菌の中から高温耐性株を得るために、EMM固形培地にて37℃で6日間培養し、生えてきたコロニーを釣菌した。
酵母内タンパク質インベルターゼに付加される糖鎖長の解析
実施例6で得られた4株(C2−1、C2−2、C2−3、及びC2−11)のN結合型糖鎖長を調べるために酵母内で作られる酸性脱リン酸化酵素に付加されるN−結合型糖鎖長を以下の方法にて調べた。それぞれの株を5mlのYEA培地(30g glucose、5g Yeast extract、20g agarose、0.16g adenine−SO4、0.05g Uracil)で培養後、5mlの低リン酸YPD培地(10g Yeast extract、20g Bacto Peptone、10mM MgSO、20g glucose/1L)で一晩培養し、菌を回収した。回収した菌は20OD/50μlとなるように溶解バッファー(62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、1mM EDTA、10%glycerol、0.1mM DTT、2mM PMSF)とガラスビーズを添加し、冷却しながらボルテックスミキサーにて破砕した。菌液を15,000回転で10分間遠心分離した後、上清を回収した。上清の25μlに対して7μlのサンプルバッファー(62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、0.01%bromophenol blue、15%glycerol)を加え、そのうち10μlずつを4−20%グラディエントゲルにて電気泳動(150V、2時間)(上層バッファー:5.16g Tris、3.48g glycine/1L;下層バッファー:14.5g Tris、0.024N HCl/1L)した。ゲルを100mM 酢酸ナトリウム(pH4.0)中にて15分間振盪させ、ゲルを予め37℃に温めておいた発色液(100mM Na−acetate(pH4.0)、24.6mg1−ナフチルリン酸一ナトリウム一水和物、16.7mg o−dianisidine、Tetrazotized/50ml)に移し、37℃にて発色するまでインキュベーションを行った。その結果を図8に示す。図8は、N結合型糖鎖長を調べるための図面に替わるSDSゲル電気泳動写真である。図8のレーンは、左から、JY741(野生株)、KT97(親株)、及びC2−11を示す。図8から、実施例6によって得られたC2−11株が産生する酸性脱リン酸化酵素に付加されるN−結合型糖鎖は、親株であるKT97と同様に、野生株(JY741)と比較して短い単一の糖鎖長をもつことが分かった。なお、C2−11株を特許微生物寄託した。すなわち、C2−11株を用いれば望ましい糖鎖を有するタンパク質を得ることができる。すなわち、本発明はC2−11株を用いたタンパク質の製造方法をも提供する。
生育の回復効率の解析
次に、実施例6で得られた株の成長回復効率を解析した。5mlのYEAで30℃にて培養を行った後、OD600が0.1となるように10mlのYEAに移し、30℃にて培養した。タイムポイントごとに菌を回収しOD600を調べた。その結果を図9に示す。図9は、30℃における生育の回復効率を示す図面に替わるグラフである。図9から、解析を行った全ての株において、成長割合がKT97よりも上回っていることがわかる。
上記各実施例によれば、高温耐性、増殖性及び糖タンパク質産生能に優れた新規な出芽酵母及び分裂酵母の変異酵母株を得ることができる。上記の通り、本発明の方法を用いることで出芽酵母及び分裂酵母において有効な変異酵母株を得ることができたので、本発明は、上記実施例で用いられた出芽酵母及び分裂酵母に限定されることはなく、酵母全般に広く適用することができ、いずれの場合でも高温耐性、増殖性及び糖タンパク質産生能に優れた新規な変異酵母株を得ることができる。
酵母細胞壁の単糖分析
実施例1で得られた酵母C4−1およびC3−7−2を、5mlのYPD、30℃で15時間、浸透培養した後、菌を遠心分離(4000 回転5分)することにより回収し、1mlの10mM Tris−HClバッファー (pH7.5,1mM PMSF)に懸濁し遠心分離(4000回転5分)することにより菌体を回収した。この操作を、3回行うことにより菌体を洗浄した。上記Tris−HClバッファー0.1mlに再懸濁しガラスビーズを液面まで加え−20℃で1時間保存した。ボルテックスミキサーにより細胞を破砕した後、細胞破砕液のみを回収し、遠心分離(1000g、10分)によってペレットを回収した。ペレット(細胞壁)は1mlの1M NaClに懸濁し、遠心分離した。この操作を3回繰り返すことにより、ペレットを洗浄した。次に、1mlの1mMPMSFで3回洗浄した。0.2mlの1mMPMSFに再懸濁した。
50μlの細胞壁懸濁液に50μlの滅菌超純水を加え、100μlの4M TFAを加え100℃で4時間インキュベーションした。減圧乾燥器にて溶媒を完全に蒸発させた後、100μlの0.2M酢酸アンモニウムと10μlの酢酸を加えて、室温にて30分インキュベーションした。減圧乾燥器にて乾燥した後、100μlの0.2M酢酸アンモニウムと10μlの酢酸を加えて、室温にて30分インキュベーションした。PAチューブに懸濁液を移し乾燥した。PAラベルはPA labeling Kit (PALSTATION Pyridylamination Reagent Kit 単糖分析用 (TaKaRa))を用いて行った。HPLCはカラム: TSK−GEL SUGAR AX タイプ(TOSHO)、溶媒:0.7Mホウ酸カリウム(pH9.0);アセトニトリル=9:1、65℃、流速:0.3ml/minで行った。単糖の組成比はピークの面積比から算出した(図10)。図10は、酵母細胞壁における単糖含有率の分析結果を示す図面に替わるグラフである。縦軸は%を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Glcはグルコース、Manはマンノースを表す。
図10に示すように、WTにおけるグルコースの割合(約45%)に比べ、TIY20株におけるグルコースの割合は約80%と高いものであったが、本発明の酵母であるC4−1株およびC3−7−2株はさらに高いグルコースの割合(90%以上)を示した。グルコースの割合が約80%を超えるようなβ−グルカン含有割合の高い酵母を作製することは、技術的にも非常に困難であると考えられていたが、本発明の酵母は、さらに約10%以上もグルコースの割合が向上したものであった。以上のことから、本発明の酵母は、酵母を用いたβ−グルカン産生技術において、生産性やコスト面等から極めて有用なものであるといえる。
本発明の高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母及びその製造方法は、高温耐性、増殖性及び糖タンパク質産生能に優れた酵母を得ることができ、出芽酵母及び分裂酵母のみならず、酵母全般に広く適用することができる。 本発明のβ−グルカンを高効率に産生する酵母及びその製造方法は、従来公知の酵母に比べてより一層β−グルカン産生能に優れた酵母を得ることができ、出芽酵母及び分裂酵母のみならず、酵母全般に広く適用することができる。 本発明は、酵母を用いた糖タンパク質及びβ−グルカンの生産などに効果的に用いることができるため医薬産業において利用されうる。また、遺伝子破壊株などの特定を適宜制御できるので、試薬産業においても利用されうる。
図1は、実施例1で用いたプラスミドpAB100及びそのプラスミドを導入した株の高温耐性の回復を検討するための図である。図1(a)は、プラスミドpAB100の概略を示す図であり、図1(b)は、株の高温耐性の回復性を示す図面に替わる写真であり、図1(c)は、図1(b)の分画を示す図である。 図2は、N結合型糖鎖長を調べるための図面に替わるSDSゲル電気泳動写真である。 図3は、30℃及び37℃における生育の回復効率を示す図面に替わるグラフである。 図4は、糖鎖構造を解析するための図面に替わるカラム解析の結果を示すグラフである。 図5は、変異株から分泌されるタンパク質の分泌効率を示すための図面に替わるグラフである。 図6は、α−ガラクトシダーゼA活性の測定結果を示す図面に替わるグラフである。 図7は、実施例6で用いたプラスミドpREP1cdc6−1及びそのプラスミドを導入した株の生育性の回復を検討するための図である。図7(a)は、プラスミドpREPcdc6−1の概略を示す図であり、図7(b)は、株の高温耐性の回復を示す図面に替わる写真であり、図7(c)は、図7(b)の分画を示す図である。 図8は、実施例7において、N結合型糖鎖長を調べるための図面に替わるSDSゲル電気泳動写真である。 図9は、実施例7において、30℃における生育の回復効率を示す図面に替わるグラフである。 図10は、酵母細胞壁における単糖含有率の分析結果を示す図面に替わるグラフである。縦軸は%を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Glcはグルコース、Manはマンノースを表す。
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
配列番号11:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー

Claims (26)

  1. 酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法。
  2. 酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、β−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法。
  3. 前記酵母の遺伝子機能欠損が、遺伝子破壊によるものであり、前記酵母の遺伝子機能欠損株が酵母の遺伝子破壊株である請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  4. 前記酵母の遺伝子機能欠損が、遺伝子変異によるものであり、前記酵母の遺伝子機能欠損株が酵母の遺伝子変異株である請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  5. 前記酵母が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  6. 前記酵母が、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)である、請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  7. 前記酵母の遺伝子破壊株が、{och1破壊、mnn1破壊、mnn4破壊、及びalg3破壊}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の破壊を有する株である、請求項3に記載の酵母の製造方法。
  8. 前記酵母の遺伝子変異株が、{och1変異、mnn1変異、mnn4変異、及びalg3変異}からなる群から選ばれるひとつ又は2つ以上の変異を有する株である、請求項4に記載の酵母の製造方法。
  9. 前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼのエラープローン頻度を調節する工程を含む、請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  10. 前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、酵母の遺伝子機能欠損株におけるPol3のアミノ酸配列を改変する工程を含む請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  11. 前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、酵母の遺伝子機能欠損株におけるCdc6のアミノ酸配列を改変する工程を含む、請求項1又は2に記載の酵母の製造方法。
  12. 前記酵母の遺伝子破壊株は、och1破壊、mnn1破壊、及びmnn4破壊が導入された出芽酵母の遺伝子破壊株であり、前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、前記酵母の遺伝子破壊株に、配列番号2で示されるPOL3遺伝子における962番目の塩基がAからCに置換され、968番目の塩基がAからCに置換されたDNAを形質転換する工程を含む、請求項3に記載の酵母の製造方法。
  13. 前記酵母の遺伝子破壊株が、och1破壊が導入された分裂酵母の遺伝子破壊株であり、 前記DNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程は、前記酵母の遺伝子破壊株に、配列番号8で示されるcdc6+遺伝子における898番目から906番目の塩基GAT ATT GAAが、GCC GGC GCTに置換されたDNAを形質転換する工程を含む、 請求項3に記載の酵母の製造方法。
  14. 前記高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母は、 哺乳類型糖鎖を有する糖タンパク質を産生する出芽酵母又は分裂酵母である、 請求項1に記載の酵母の製造方法。
  15. 請求項1に記載の酵母の製造方法により得られた酵母を培地で培養し、糖タンパク質を生成させ、前記培養物から前記糖タンパク質を採取する糖タンパク質の製造方法。
  16. 請求項2に記載の酵母の製造方法により得られた酵母を培地で培養し、β−グルカンを生成させ、前記培養物から前記β−グルカンを採取するβ−グルカンの製造方法。
  17. 酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、高温感受性を回避又は増殖性を回復した酵母の製造方法により得られた酵母。
  18. 酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、β−グルカンを高効率に産生する酵母の製造方法により得られた酵母。
  19. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号「FERM P−20955」として寄託されている酵母。
  20. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号「FERM P−20956」として寄託されている酵母。
  21. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号「FERM P−21145」として寄託されている酵母。
  22. 請求項3〜14のいずれかに記載の方法で製造された酵母、又は請求項17及び19〜21のいずれかに記載の酵母を用いた糖タンパク質の製造方法。
  23. 請求項3〜13のいずれかに記載の方法で製造された酵母、又は請求項18〜21のいずれかに記載の酵母を用いたβ−グルカンの製造方法。
  24. 酵母の遺伝子機能欠損株におけるDNAポリメラーゼの校正機能を制御する工程を含む、外来遺伝子の発現能を有する酵母の製造方法。
  25. 請求項24に記載の酵母の製造方法により得られた酵母。
  26. 請求項24に記載の酵母の製造方法により得られた酵母を培地で培養し、外来遺伝子を発現させて外来タンパク質を生成させ、前記培養物から前記外来タンパク質を採取する外来タンパク質の製造方法。
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