JP2008216005A - アクティブソーナー装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】周波数変調がなされる送信信号を生成して出力する送信信号生成部2と、送信信号を音波として送波する送波部4と、送波部からの音波が目標11で反射されてなるエコーを含む音波を受波し、これを受信信号として出力する受波部5と、受信信号に含まれるエコーに対応するエコー信号を送信信号よりも帯域幅の小さい周波数変調信号に変換する信号処理部90とを備えた。
【選択図】 図1
Description
このようなアクティブソーナー装置において、受信信号からエコーに対応するエコー信号の取り出しは、送波する音波にCW信号を生成した場合、フーリエ変換すれば、周波数を取り出すことができる。
一方、CW信号が残響などの雑音に弱いことから、送波する音波にLFM信号を用いることがある。
同図に示すように、従来、この種のアクティブソーナー装置1aは、送信信号を生成して出力する送信信号生成部2と、送信信号増幅部3で増幅された送信信号を音波にして送波する送波部4と、目標で反射したエコー及びその他の雑音を含む音波を受信信号として出力する受波部5と、受信信号増幅部6、帯域濾波部7、A/D変換部8により増幅、濾波及びA/D変換された受信信号を処理する信号処理部12とを備えている。
レプリカ相関は、受信信号に対して時間をずらしながら受信信号と標本となる信号(レプリカ信号)との相関度を計算する信号処理方式であり、相互相関ともいわれる。信号処理部は、送信信号をレプリカ信号として、受信信号との相関度を計算している。
図14に、レプリカ相関によるエコー信号の検出の概念図を示す。
同図に示すように、受信信号Gに対して時間をずらしながらレプリカ信号Rとの相関を求めることにより、波形が最も類似した時刻で相関度のピークpを出現させる。そして、この最も相関の高いときに、エコーが到達した時刻te’としている。
信号処理部12は、受信信号とレプリカ信号とを、時刻をずらしながら乗算手段124で積を求めていき、これを逆フーリエ変換手段125で逆フーリエ変換することにより、図14に示したようなレプリカ相関を得ている。
特許文献1には、パルス幅の中間で周波数が増加から減少へ、又は、減少から増加へ反転するLFM信号からなる送信信号を音波にして送波し、受信信号に含まれたエコー信号の周波数が増加する部分及び減少する部分の双方に対するレプリカ相関を求め、この結果からエコー信号のドップラーシフトを計測する技術が記載されている。
特許文献3には、送信信号に対し、同一周波数だけ高い周波数及び低い周波数にシフトされた2つのレプリカ信号を利用して受信信号とレプリカ相関を行うことにより、一定時間における2つの相関結果の最大振幅幅の比からドップラーシフトを含むエコー信号を求める技術が記載されている。
特許文献5には、周波数が上昇するLFM信号と、周波数が下降するLFM信号の2つのLFM信号を送波し、受波した2つの信号の時間をそろえて相関処理を行い、ドップラーシフトの影響を除去する技術が記載されている。
一方、図15に示すように、エコー信号Eにドップラーシフトがあるときには、エコー信号Eとレプリカ信号Rの間に差異が生じてしまうので、相関度が小さくなる。そのため、ドップラーシフトが大きいと、エコー信号Eの検出が難しい。また、相関度が小さくなるので、エコー信号Eの雑音に対する比(S/N比)が小さい場合の検出が特に難しくなる。
また、この問題を解決する技術として、レプリカ信号を複数用いる前記の特許文献3、複数の送信信号を送信して、送信信号のうちのひとつをレプリカ信号とする特許文献5があるが、これらの装置は、構成が複雑になったり、処理負荷が増大するなどしてしまうという新たな問題が発生した。
また、レプリカ相関を用いないので、この点でも、検出性能の向上が期待できる。
さらに、送信信号に周波数変調がなされた信号を送波部で音波にして送波しているので、残響などの雑音に対しても強い音波を送波できる。
また、切り出された受信信号に含まれるエコー信号を、帯域幅の小さい周波数変調信号にしたので、周波数スペクトルにエコー信号部分のピークが大きくあらわれる。これにより、受信信号にエコー信号以外の雑音が含まれる比率が比較的大きくても、確実にエコー信号を検出できる。
このような構成とすると、切り出された受信信号のエコー信号は、送信信号の周波数変調の変化率に対応して変化するサンプリング周波数でサンプリングされる。そのため、エコー信号は、送信信号よりも小さな帯域幅の周波数変調波信号となる。
このような構成からなるアクティブソーナー装置は、エコー信号を、受信信号に含まれるエコー信号が送信信号よりも帯域幅の小さい周波数変調信号に、確実に変換することができる。
これにより、サンプリング手段は補間機能が、A/D変換部でサンプリングされていても、n番目のサンプルを取り出すときに、時間tsnの前後のA/D変換でのサンプルを適宜補間して、時間tsnに対応するサンプルを求めることができる。
g(t)=mt+c 式(2)
式(2)において、mは周波数掃引勾配、cは、m>0のとき送信信号の下限周波数fl、m<0のとき送信信号の上限周波数fhとなる値である。
この構成によれば、送信信号生成部は、線形周波数変調信号を生成する。
これにより、送信信号が周波数が上昇するだけの簡単な波形となるので、エコー信号の波形も簡単になる。そのため、信号処理部で、複雑な処理を簡単にできる。
この構成によれば、切出し開始位置と、エコー信号の最初が一致するとき、その切り出された受信信号に含まれるエコー信号は、その周波数がg(0)とほぼ同じ値に変換される。そのため、ドップラーシフト量を容易に算出できる。
これにより、アクティブソーナー装置は、受信信号に含まれるエコー信号が、受信信号のどの時刻部分にあるかわからなくても、切出し開始位置が所定時間遅らされて処理され、受信信号全部を総当り的に調べるので、切り出された受信信号のいずれかに確実にエコー信号を含ませることができる。
この構成のアクティブソーナー装置は、切り出された受信信号の切出し開始位置と、検出されたエコー信号の最初とが異なっていても、複数の周波数スペクトルからエコーの到達時刻及びエコー信号の周波数を、補正して出力できる。
この構成のアクティブソーナー装置は、信号処理部で、エコー信号を送信信号よりも帯域幅の小さい周波数変調信号に変換しているので、検出手段でのエコー信号を検出するための閾値を低くでき、検出性能を向上できる。
また、レプリカ相関を用いないので、この点でも、検出性能の向上が期待できる。
さらに、送信信号に周波数変調がなされた信号を送波部で音波にして送波しているので、残響などの雑音に強くできる。
なお、従来のアクティブソーナー装置と同様のものには、同一の符号を付している。
なお、関数g(t)は、少なくとも、0≦t<Htの範囲内において、g(t)>0の関係を満たす関数である。
周波数ft=g(t)=m・t+c 式(2)
ここで、式(2)において、mは周波数掃引勾配、cは、m>0のとき送信信号Fの下限周波数fl、m<0のとき送信信号Fの上限周波数fhとなる値である。
なお、周波数掃引勾配mは、送信信号Fの帯域幅fbw[Hz](送信信号Fの上限周波数fhから送信信号Fの下限周波数flを減算した値)を送信信号Fの送信時間幅Ht[sec]で割った値(m=fbw/Ht)である。
本実施形態においては、m>0,c=flとしている。この関数g(t)で生成される信号は、FM信号の中でもLFM信号(線形周波数変調波信号)と言われるものとなる。
この送波部4には、既存の送波器を用いてもよい。
送波部4で送られた音波は、目標に当たって反射してエコー(反射波)となる。
帯域濾波部7は、受信信号Gからエコー信号Eが含まれうる必要な周波数帯域を取り出すために設けられている。
また、受信信号Gは、帯域濾波部7と信号処理部90の間に介装されたA/D変換部8により、信号処理部90による処理の前に、予め、所定のサンプリング周波数fsでデジタル化される。
サンプリング周波数fsは、いわゆるサンプリング定理により、少なくとも、送信信号Fの上限周波数fhの2倍よりも大きな値でなければならない(fs>2・fh)。
本実施形態では、なお、サンプリング周波数fsは、信号処理部90での処理の際に、スプリアスの発生を小さくするために、大きな値とすることが望ましい。本実施形態では、サンプリング周波数fsは、送信信号Fの中心周波数の20倍(fs=20・fc)に設定されている。
本実施形態においては、時間幅Hsは、送信時間幅Htの2倍(Hs=2・Ht)に設定されている。
図3(a)に示すように、上記の関係から、サンプリング手段92の周波数fs’=fs・g(t)/g(0)となるように定められており、n番目とn−1番目の間の周期TsnがTsn=1/fs’となる。
本実施形態では、図4に示すように、サンプリング手段92の補間機能は、線形補間によって行われるものであり、tsnの値が、サンプルの間にあるときには、tsnの前後にあるA/D変換によるサンプルSa,Saの双方を通る直線上においてtsnに対応する点をサンプルSnとして取り出している。
スペクトル算出手段94は、再構成された受信信号セルをフーリエ変換し、受信信号セルの周波数成分の周波数スペクトルを算出している。
切出し開始位置を遅延させる遅延時間Tcは、切出し幅Hsとの関係がTc≦Hsに設定される。本実施形態においては、Tc=Hs/2に設定される。
そして、検出結果(P1’〜P3’)を切出し開始位置が時刻順になるように列設してスペクトログラムとする。
図2(c)に示すように、このスペクトログラムは、例えば、時間、周波数及び各周波数のレベルからなる三次元のデータである。また、このスペクトログラムは、例えば、CRTなどのディスプレイモニタに出力表示される。このとき、スペクトログラムは、横軸に時間、縦軸に周波数、輝度又は色彩(実施形態では輝度)で周波数のレベルで表されるグラフにより表示される。
本実施形態では、時間幅Hsを送信時間幅Htの2倍、遅延時間Tcを時間幅Hsの1/2としているので、エコー信号Eの検出結果が2〜3個(図は3個の場合を示している)あらわれる。
この補間についての概念を、エコー信号Eの検出結果P1’〜P3’が3個あらわれる場合で説明する。この場合、検出した周波数のレベルを切出し幅分の時間平均と考え、各周波数スペクトルの周波数成分のレベルの最大値M1〜M3を、遅延時間Tcの中央のレベルとする。
そして、これらの周波数成分のレベルの最大値が異なる(M2>M1,M3)ときは、閾値kを越えた複数のエコー信号Eのレベルを補間し、時刻−周波数レベルのエコー到達時刻補正グラフを作成し、これに補間曲線L1を描く、補間曲線L1の頂点Lmの時刻を、エコーが到達した時刻(te’)として算出する。
また、算出したエコーが到達した時刻、及び、ドップラーシフト量から、目標までの距離と、目標の移動速度とを算出する算出部(図示せず)が設けられている。
以下、アクティブソーナー装置1の作用を説明する。
図1,図2及び図6に示すように、送信信号生成部2は、上記の関数g(t)に従って、時間とともに周波数ftが高くなるいわゆるLFM信号を、送信信号Fとして生成する(図2(a),図6(a))。
この送信信号Fは、送波部4から音波として送波できるように、送信信号増幅部3で、電力増幅され、送波部4に入力される。
そして、送波部4は、増幅された送信信号Fが入力されると、送信信号Fを音波として水中に送波する。
水中に送波された音波は、目標で反射してその一部がエコーとなる。
受波部5から出力された受信信号Gは、受信信号増幅部6に入力されて、微弱信号の増幅がなされ、帯域濾波部7に出力される。
帯域濾波部7では、エコー信号Eがドップラーシフトした場合を考慮し、この周波数が含まれるように、受信信号Gから所望の帯域部分を取り出され、これをA/D変換部に出力する(図6(b))。
次に、A/D変換部では、サンプリング周波数fsでサンプリングし、アナログ信号をデジタル信号に変換し、これを信号処理部90に出力する。
信号処理部90に入力された受信信号Gは、まず、信号切り出し手段91で、受信信号Gを切出して受信信号セル(図6ではC2の処理の場合を示している)、サンプリング手段92に出力する(Ch1−1,図6(d))。
次に、1番目のサンプリングは、上記式(1)のg(t)にt=0を代入し(Ch1−3)、ts1=1/fsとなり、このときの振幅の値を、サンプリングしてサンプルを取り出す(Ch1−5)。
2番目のサンプリングは、式(1)のg(t)のtにts1(=1/fs)を代入し(Ch1−3)、ts2=1/fs+fl/((ts1)×fs))となり、このときの振幅の値を、サンプリングしてサンプルを取り出す(Ch1−5)。
このようにして、3番目以降のサンプリングにおいても、順次tsnを求めてサンプリングしてサンプルSnを取り出していく。そして、Hs<tsnとなるまで、上記の処理を続ける(Ch1−4N)。
このようにして、取り出されたサンプル(S0,S1・・・Sn−1,Sn,Sn+1・・・)の集合は、サンプルデータとして、再構成手段93に出力される(Ch1−4Y,Ch1−6)。
次に、図6(g)に示すように、スペクトル算出手段94は、再構成された受信信号セルC2’が入力されると、この受信信号セルC2’の受信信号Gをフーリエ変換し、周波数スペクトルP1〜P3を算出する(Ch1−8)。
そのため、スペクトル算出手段94においては、帯域幅が小さくなったエコー信号Eがフーリエ変換されて、周波数スペクトルP1〜P3の算出がなされる。
そして、スペクトル算出手段94で算出された周波数スペクトルP1〜P3は、検出処理部95の検出手段96に出力される(Ch1−9)。
これにより、受信信号Gに含まれるエコー信号Eが、受信信号Gのどの時刻部分にあるかわからなくても、切出し開始位置が遅らされて処理され、受信信号G全部を総当り的に調べるので、受信信号セルのいずれかに確実にエコー信号Eを含ませることができる。
図2(c)及び図6(h)に示すように、検出手段96において、スペクトル算出手段からの周波数スペクトルP1〜P3の入力があると、周波数スペクトルP1〜P3から設定した閾値を越えるレベルの周波数成分を選別する。
この際、再構成された後の受信信号セルC1〜C3(C2’)のエコー信号Eは、送信信号よりも帯域幅の小さい周波数変調信号にされており、これをフーリエ変換すると、周波数スペクトルP1〜P3にエコー信号E部分のピークが顕著にあらわれる。これにより、受信信号Gにエコー信号E以外の雑音が含まれる比率が比較的大きくても、エコー信号Eを確実に検出できる。
そして、図6(i)に示すように、検出手段96は、周波数スペクトルP1〜P3において、選別した結果(P1’〜P3’)を、切出し開始位置順に並べ、スペクトログラムとする。
図2(d)及び図6(j)に示すように、エコー到達時刻算出手段97において、遅延時間幅の中央に、周波数スペクトル中の最大の周波数レベルの値をプロットし(本実施形態ではM1〜M3の3個)、時刻−周波数レベルのグラフを作成する。次に、これらのプロットされた点M1〜M3から補間曲線L1を形成し、補間曲線L1の頂点Lmの時刻を、エコーが到達した時刻te’として算出する。
次に、エコー信号周波数算出手段98において、検出された複数のエコー信号Eの検出結果の周波数から補間線L2を求め、エコー到達時刻算出手段97で求めたエコー到達時刻te’に対応する周波数fe’を補間線L2から算出する。
また、このエコー信号Eの周波数fe’と、送信信号Fの周波数の下限周波数flとの差から、ドップラーシフト量を算出する。そして、このドップラーシフト量から目標の移動速度を算出する。
また、サンプリング手段92及び再構成手段93で処理された後のエコー信号Eは、帯域幅が小さくなっており、ほとんど周波数変調のない信号となり、擬似的なCW信号とすることができる。そのため、受信信号Gを、単にフーリエ変換するだけで、エコー信号の周波数成分を求めることができ、周波数のピークも容易に検出できる。これにより、検出性能を向上させることができる。
この場合、エコー信号Eの含まれた受信信号セルC1〜C3は、信号処理部90において、以下のように処理される。
ts0=0
ts1=1/20000
ts2=1/20000+975/(975.025×20000)
・・・
となる。そして、周期ts1=1/20000[sec]で再配置する。
このようにサンプリングされたエコー信号Eは、再配置されると、次のような周波数のエコー信号Eに変換される。
図9(a)には、受信信号セルのうち、C1,C2及びC3の3つの受信信号セルでエコー信号Eの検出があった場合であって、受信信号セルC1では、受信信号セルC1の切出し開始位置から0.14[sec]後にエコー信号Eの最初があり、受信信号セルC2では、受信信号セルC2の切出し開始位置から0.04[sec]後にエコー信号Eの最初があり、受信信号セルC3では、受信信号セルC3の切出し開始位置がエコー信号Eの途中にある場合を示している。
また、受信信号セルC1の切出し終了位置は、エコー信号Eの途中に位置することから、この時のエコー信号Eの周波数fh1’は、送信信号の送信開始から0.06[sec]後の周波数ft=g(0.06)であって、切出し開始位置から時刻0.20secのときのサンプリング周波数で決められる。
そのため、上記と同様に、エコー信号Eの下限周波数fl2’は、切出し開始位置から時刻0.04secのときのサンプリング周波数で決められる。また、エコー信号Eの上限周波数fh2’は、切出し開始位置から時刻0.20secのときのサンプリング周波数で決められる。
したがって、fl2’=975×975/(975+0.04×500)≒955.4Hz、fh2’=1025×975/(975+0.14×500)≒956.3Hzとなる。そのため、サンプリング手段92及び再構成手段93で処理されると、受信信号セルC2において、エコー信号Eは、955.4Hz〜956.3Hzというわずかな帯域幅を持った、CW信号とほとんど同等の信号となる。
したがって、fl3’=1005×975/(975+0×500)=1005.0Hz、fh3’=1025×975/(975+0.04×500)≒1004.4Hzとなる。そのため、サンプリング手段92及び再構成手段93で処理されると、受信信号セルC3において、エコー信号Eは、1004.4Hz〜1005.0Hzというわずかな帯域幅を持った、CW信号とほとんど同等の信号となる。
そのため、上記したように、実際のエコー信号Eの到達時刻とほとんど同じ値を取り出すことができる。また、この時の周波数は、補間線L2により、約977.4Hzとなり、これについても、ほとんど同じ値を取り出すことができる。なお、補間線L2は、点q1(0[sec],910.6[Hz])、点q2(1.0[sec],955.9[Hz])、点q3(2.0[sec],1004.7[Hz])を通るスプライン曲線である。これらの点は、y値に、エコー信号Eの下限周波数と上限周波数の和を2で除算した値を用いている。
f’=(Vs−Vp)・ft/(Vs−Vo) 式(4)
式(4)において、Vsは音速、Vpはアクティブソーナー装置1の移動速度、Voは目標の移動速度である。
そのため、エコーの各周波数成分が、f’=g(t)・(1520/1500)となる。このうちの一部としては、例えば、エコー(エコー信号E)の下限周波数fl’=988Hz,上限周波数fh’≒1038.7Hzとなる。また、送信時間幅Htも0.1secから0.1×(1500/1520)=0.0987secと短くなる。
図10には、この場合のスペクトログラム及びエコー時刻補正グラフを合わせたグラフ図の例を示している。
図10(a)には、例えば、上記と同様に、3つの受信信号セルC1〜C3でエコー信号Eの検出があった場合であって、受信信号セルC1では、受信信号セルC1の切出し開始位置から0.14[sec]後にエコー信号Eの最初があり、受信信号セルC2では、受信信号セルC2の切出し開始位置から0.04[sec]後にエコー信号Eの最初があり、受信信号セルC3では、受信信号セルC3の切出し開始位置がエコー信号Eの最初から0.06[sec]後にある場合を示している。
したがって、fl2’=988×975/(975+0.04×500)≒968.14Hz、fh2’=1038.7×975/(975+0.1398684×500)≒969.2Hzとなる。サンプリング手段92及び再構成手段93で処理されたあと、受信信号セルC2において、エコー信号Eは、955.4Hz〜969.2Hzというわずかな帯域幅を持った、CW信号とほとんど同等の信号となる。
すなわち、fl3’=1018.4×975/(975+0×500)=1018.4Hz、fh3’=1038.7×975/(975+0.04×500)≒1018.5Hzとなる。サンプリング手段92及び再構成手段93で処理されたあと、受信信号セルC3において、エコー信号Eは、1018.4Hz〜1018.5Hzというわずかな帯域幅を持った、CW信号とほとんど同等の信号となる。
また、この時の周波数は、補間線L2により、約986.7Hzとなり、これについても、ほとんど同じ値を取り出すことができる。なお、補間線L2は、点q1(0[sec],922.7[Hz])、点q2(1.0[sec],968.6[Hz])、点q3(2.0[sec],1018.4[Hz])を通る線である。これらの点は、y値に、各受信信号セルにおいて、エコー信号Eの下限周波数と上限周波数の和を2で割った値を用いている。
したがって、受信信号セルC1に含まれるエコー信号Eは、939.8Hz〜942.6Hzの帯域幅をもつ信号に変換される。また、受信信号セルC2に含まれるエコー信号Eは、988Hz〜988.6Hzの帯域幅をもつ信号に変換される。
以下に、検出手段96に設定される閾値kについて説明する。
一般に、この時に必要なエコー信号のSN比を、検出閾値(DT:Detection Threshold)という。
すなわち、エコー信号のSN比がDTを越えた時に、エコー信号が入力したと判定する。また、DTが小さいほど、検出性能が良いといえる。
一般的に、未知の受信信号に対するソーナー装置のDTは、下記式(5)で表される。
DT=5log(d/(w・Ht)) 式(5)
式(5)において、dは検出確率と誤警報確率から得られる検出指標、w[Hz]は残響及び/又は雑音の周波数帯域幅、Ht[sec]は、送信信号の送信時間幅である。
処理利得=10log(W・Ht) 式(6)
式(6)中、W[Hz]は受信信号の周波数帯域幅、Ht[sec]は、送信信号の送信時間幅である。
DT=5log(d)−10log(W・Ht)+α 式(7)
式(7)中、dは検出確率と誤警報確率から得られる検出指標、w[Hz]は残響及び/又は雑音の周波数帯域幅、Ht[sec]は、送信信号の送信時間幅、W[Hz]は受信信号の周波数帯域幅である。
DT=10log(d/(2W・Ht))[dB] 式(8)
式(8)中、W[Hz]は、受信信号の帯域幅、Ht[sec]は、送信信号の送信時間幅、dは検出確率と誤警報確率から得られる検出指標である。
上記の計算例での数値を用い、送信信号は、中心周波数fc=1kHz,周波数帯域幅fbw=50Hz,送信時間幅Ht=0.1secのLFM信号とした。受信信号の帯域幅Wは、帯域濾波部7で150Hzにして制限した。さらに、信号処理部90による雑音の増加分α=0.5dBとした。検出指標dの値は、検出確率p(D)=50%、誤検出確率p(FA)=0.01%、正規分布の白色雑音を仮定してd=13.8としている。
本発明の実施形態にかかるアクティブソーナー装置1においては、信号処理部90での処理は、エコー信号がドップラーシフトしていたり、信号切出し位置がエコー信号の最初と一致していなかったりすると完全なCW信号にはならないが、エコー信号の周波数帯域幅の広がりによるレベルの低下は僅かであるため、完全なCW信号が入力されたものとしてDTの計算をしている。
また、検出指標d、送信信号の帯域幅fbw、受信信号の帯域幅Wの値によって、2つの方式の優位性が変わることもあるが、受信信号の帯域幅Wは、ドップラーシフトを考慮して送信信号の帯域幅fbwよりも大きくするので、実用上において優位性もほとんど変わることは少ない。
また、図11及び図12は、受信信号に含まれる雑音として、受信信号に含まれる残響を考えない場合の理論値の計算例であるが、例えば、受信信号中に送信信号の残響が存在する場合には、LFM信号である送信信号の残響の周波数帯域幅は、送信信号の帯域幅fbwと等しく50Hzとなる。この残響は、信号処理部90で受信信号が処理されると、残響の周波数帯域幅は、1/Htの10Hzとなる。これにより、DTを低減することができ、検出性能を向上できる。
例えば、関数g(t)は、式(2)に限定されるものでなく、例えば、g(t)=a(t+b)2+cであらわされる二次関数など、どのような関数であってもよい。
また、再構成手段は、前記式(1)から求まる周期ts1−ts0間隔でサンプルを再配置することとしたが、この間隔に限定されず、例えば、tsn−tsn−1間隔で再配置してもよい。
また、送波部と受波部が別の位置にあってよい。
また、送波部、受波部、及び、目標が水中にある場合としたが、これに限定されるものでなく、空気中であってもよい。
2 送信信号生成部
3 送信信号増幅部
4 送波部
5 受波部
6 受信信号増幅部
7 帯域濾波部
8 A/D変換部
10 表示部
11 目標
90 信号処理部
91 信号切り出し手段
92 サンプリング手段
93 再構成手段
94 スペクトル算出手段
95 検出処理部
96 検出手段
97 エコー到達時刻算出手段
98 エコー信号周波数算出手段
Claims (10)
- 音波を送受波可能なアクティブソーナー装置であって、
周波数変調がなされる送信信号を生成して出力する送信信号生成部と、前記送信信号を音波として送波する送波部と、該送波部からの音波が目標で反射されてなるエコーを含む音波を受波し、これを受信信号として出力する受波部と、前記受信信号に含まれる前記エコーに対応するエコー信号を前記送信信号よりも帯域幅の小さい周波数変調信号に変換する信号処理部とを備えることを特徴とするアクティブソーナー装置。 - 前記信号処理部は、前記受信信号から所定時間幅分を切り出す信号切り出し手段と、切り出された受信信号を、前記送信信号の周波数変調の変化率に対応して変化するサンプリング周波数でサンプリングするとともに該サンプリングによるサンプルデータを出力するサンプリング手段と、前記サンプルデータを任意の周期で再配置して受信信号を再構成し、これを出力する再構成手段と、該再構成された受信信号の周波数スペクトルを算出しこれを出力するスペクトル算出手段とを備えてなることを特徴とする請求項1記載のアクティブソーナー装置。
- 前記送信信号生成部は、送信信号の周波数ftを、送信生成開始時刻からの時間tをパラメータとする関数g(t)で生成し、
前記受波部と前記信号処理部との間に介装され、前記受信信号を、所定のサンプリング周波数fsでデジタル化するA/D変換部を設け、
前記サンプリング手段は、切出し開始位置から時間ts後の受信信号をサンプリングする周波数fs’と、A/D変換部のサンプリング周波数fsとの関係が、g(0):fs=g(ts):fs’の関係を満たすようにサンプリングすることを特徴とする請求項3記載のアクティブチューナー装置。 - 前記サンプリング手段は、前記A/D変換部でデジタル化された受信信号を補間する補間機能を備えることを特徴とする請求項3又は4記載のアクティブソーナー装置。
- 前記関数g(t)が、下記式(2)で定められることを特徴とする請求項4記載のアクティブソーナー装置。
g(t)=mt+c 式(2)
式(2)において、mは周波数掃引勾配、cは、m>0のとき送信信号の下限周波数fl、m<0のとき送信信号の上限周波数fhとなる値である。 - 前記再構成手段は、前記式(1)から求まる周期ts1−ts0間隔で前記サンプルを再配置することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のアクティブソーナー装置。
- 前記信号処理部は、前記信号切り出し手段、サンプリング手段、再構成手段、及び、スペクトル算出手段を、切出し開始位置を所定時間ずつ遅らせてループ処理せしめることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載のアクティブソーナー装置。
- 前記信号処理部から出力される複数の周波数スペクトルに基づいて、前記エコー信号を検出するとともに、該検出されたエコー信号から前記エコーの到達時間及び当該エコー信号の周波数を算出する検出処理部を備えることを特徴とする請求項8記載のアクティブソーナー装置。
- 前記信号処理部から出力されるエコー信号を含む受信信号から前記エコー信号を検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のアクティブソーナー装置。
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