JP2008215847A - 二次イオン質量分析用試料及びその作製方法、並びに二次イオン質量分析方法。 - Google Patents

二次イオン質量分析用試料及びその作製方法、並びに二次イオン質量分析方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】二次イオン質量分析を行なう際に、試料面における分析領域の周辺部位への一次イオンの付着を防止し、試料面の近接する複数箇所における高精度の分析を行なう。
【解決手段】試料1の試料面1aにおける一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲む部位、ここでは試料面1aで並列する複数のストライプ状に、元素としてSi+をイオン注入する。このイオン注入により、注入部位に体積膨張が生じ、ストライプ状の複数の障壁11が形成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、試料面に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記試料面から発生した二次イオンを検出する二次イオン質量分析に供される二次イオン質量分析用試料及びその作製方法、この二次イオン質量分析用試料を用いた二次イオン質量分析方法に関する。
半導体装置においては、ウェル領域やチャネルドープ領域等における不純物濃度及びその分布がデバイス特性に大きな影響を与える。近年では、半導体装置の微細化、薄層化の進展に伴って半導体基板や堆積させた薄膜の表面から浅い領域における不純物濃度分布を精度良く形成することが求められている。
このような要請に応えるためには、測定対象領域における不純物濃度分布を高精度に把握することが必要である。そのため、半導体基板や堆積させた薄膜の表面から深さ方向の不純物等の元素分布を測定するための代表的手段として、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)が主に用いられている。
特開昭63−282641号公報 特開平5−45309号公報 Phys. Rev. B 65 012110 2001
SIMS法は高感度な分析手法であり、微量元素の深さ方向分析に頻繁に用いられている。SIMSにおいて、砒素(As)やリン(P)等のエレクトロネガティブな元素の分析に際しては、セシウム(Cs)イオン(Cs+)やリチウム(Li)イオン(Li+)等のアルカリ金属イオンを一次イオンに用い、As-やP-等の負の二次イオンを検出する手法が一般的である。
しかしながら、一次イオンとして試料の分析領域に照射したCsイオン等のアルカリ金属イオンは、散乱等によって分析領域の周辺に飛び散り、付着する。このアルカリ金属イオンの付着は、当該分析領域の周辺で新たに分析を行なう必要性がある場合や、再度、分析の再現性を確認するための再測定に影響を与える。アルカリ金属イオンの付着汚染により、試料表面の仕事関数が変わり、負の二次イオン化率が変化するためである。
図5は、Csイオン照射によってSIMS法による分析を行なった後に、試料表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果である。Csイオン照射によって形成されたクレータの周囲に、飛散したCsが付着していることが判る。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、二次イオン質量分析を行なう際に、試料面における分析領域の周辺部位への一次イオンの付着を防止し、続いて分析領域の周辺部位で新たに分析を行なう必要性がある場合等においても分析精度の低下を来たすことなく、試料面の近接する複数箇所における高精度の分析を実現する二次イオン質量分析方法、並びに当該分析に供される二次イオン質量分析用試料及びその作製方法を提供することを目的とする。
本発明の二次イオン質量分析用試料は、試料面に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記試料面から発生した二次イオンを検出する二次イオン質量分析に供される二次イオン質量分析用試料であって、前記試料面の前記一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲むように、前記試料面への元素のイオン注入による障壁が形成されてなる。
本発明の二次イオン質量分析用試料の作製方法は、試料面に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記試料面から発生した二次イオンを検出する二次イオン質量分析に供される二次イオン質量分析用試料の作製方法であって、前記試料の前記試料面の前記一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲む部位に元素をイオン注入し、体積膨張による障壁を形成する。
本発明の二次イオン質量分析方法は、試料面における分析領域の少なくとも一部を囲む部位に元素をイオン注入し、体積膨張による障壁を形成して試料を作製し、前記試料の前記試料面における前記分析領域に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記分析領域から発生した二次イオンを検出する。
本発明によれば、二次イオン質量分析を行なう際に、試料面における分析領域の周辺部位への一次イオンの付着を防止し、続いて分析領域の周辺部位で新たに分析を行なう必要性がある場合等においても分析精度の低下を来たすことなく、試料面の近接する複数箇所における高精度の分析が実現する。
−本発明の基本骨子−
本発明者は、一次イオンとして試料の分析領域に照射されたCsイオン等のアルカリ金属イオンが分析領域から散乱した場合でも、当該分析領域の周辺部位への一次イオンの付着を防止すべく鋭意検討した結果、本発明に想到した。
非特許文献1では、Si中にSiイオン(Si+)を注入することにより、Siの注入部位が体積膨張することが報告されている。
本発明では、この報告に鑑みて、試料の試料面における一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲む部位に元素をイオン注入する。このイオン注入により、注入部位に体積膨張が生じ、障壁が形成される。この障壁の具体的形態としては、当該障壁を、試料面で並列する複数のストライプ状に形成し、隣接する障壁間の部分を分析領域とする場合や、当該障壁を、試料面で格子状に形成し、格子状に囲まれた各閉鎖部分を分析領域とする場合等が考えられる。
試料の試料面において、上記の障壁で分析領域の少なくとも一部を囲むことにより、一次イオンとして分析領域に照射されたアルカリ金属イオンが分析領域から散乱しても、アルカリ金属イオンの散乱の影響は当該障壁で遮断され、当該障壁で隔てられた隣接する未使用の分析領域には到達しない。従って、この未使用の分析領域は、上記した散乱の影響を受けず、一次イオンによる汚染が抑止される。従って、この未使用の分析領域を一次イオンの照射による新たな分析に供しても、分析精度の低下を来たすことなく、当該試料本来の高精度分析が可能となる。
ところで、特許文献1,2には、分析感度の向上を図ることを目的として、試料面の分析領域にイオン注入する技術が開示されている。しかしながらこれらの技術は、試料を分析感度向上に適した状態にすべく、飽くまでその分析領域の改良を指向するものであり、一次イオンの散乱の影響を遮断することを目的として分析領域の周辺部位にイオン注入する本発明とは目的及び構成共に全くことなく発明である。
−本発明を適用した好適な諸実施形態−
以下、本発明を適用した好適な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による二次イオン質量分析装置(以下、SIMS装置と記す)の概略構成を示す模式図である。
このSIMS装置は、真空排気口10aが設けられ、内部が所定の真空状態(真空度)に調節自在とされた真空チャンバー10と、真空チャンバー10内に設けられ、測定対象となる試料1を固定保持するとともに、X,Y,Z方向への移動と傾斜及び回転が可能な試料ホルダー2と、試料1に対して一次イオンを照射するイオン銃3と、一次イオンの照射により試料から発生した二次イオンを選択、加速して質量分析器5に導入する引き出し電極4と、導入された二次イオンを質量分析する質量分析器(例えば、四重極型質量分析器)5と、一次イオンの照射による試料1の帯電状態を適宜補正する中和電子銃6とを備えている。
ここで、引き出し電極4及び質量分析器5を含み二次イオン検出器8が構成されており、二次イオン検出器8にゴム製等のリング状の絶縁体7が設けられ、この絶縁体7で電気的に遮断された二次イオン検出器8の先端部分が引き出し電極4となる。本実施形態では、一次イオンとして、セシウム(Cs)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)等のアルカリ金属のイオンが用いられる。
図2は、第1の実施形態によるSIMS用試料を示す概略平面図である。
本実施形態では、試料1としてSi基板を用い、試料1の試料面1aにおける一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲む部位、ここでは試料面1aで並列する複数のストライプ状に、元素としてSi+をイオン注入する。このイオン注入により、注入部位に体積膨張が生じ、ストライプ状の複数の障壁11が形成される。これら障壁11において、隣接する障壁11間の部分が各分析領域12となる。
図3に、Si基板にSi+をイオン注入した後における基板表面のAFM(原子間力顕微鏡)像を示す。
ここでは、加速エネルギー80keV、ドーズ量6×1015/cm2の条件でイオン注入した。基板表面のイオン注入された部分では、体積膨張(swelling)が発生し、高さが高くなっていることが判る。
試料1としては、Si基板以外でも適用可能であり、例えばGe基板等が適用される。
イオン注入する元素としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外であり、試料母材に含まれる元素であることが好ましい。例えば、Heや各種の希ガス、Al、酸素等が適用可能である。例えば、試料母材がSi(基板)である場合、Heのイオン注入でも体積膨張が起こることが報告されている。また、酸素のイオン注入では、当該イオン注入により基板のSiがSiO2に変化するため、体積は約2倍となり、より効果的である。酸素イオンは、通常のSIMS分析で用いるため、酸素を利用する場合にはSIMS分析と同一チャンバー内で行なうことが可能であり、試料作製からSIMS分析までの処理を同一チャンバー内の一連のプロセスとして行なうことができ、より短時間で容易に実行することが可能となる。
非特許文献1によれば、Si中に同じようにSiイオンを注入した場合、加速エネルギーを80keVとしたイオン注入により、ドーズ量に従って下記のように高さが変化することが報告されている。
6×1014/cm2 :3.62nm
6×1015/cm2 :6.76nm
6×1016/cm2 :12.10nm
ここで、試料面における分析領域は、一次イオンの照射に伴ってエッチングされ、試料面は後退してゆく。これに伴い、分析領域の表面と障壁の最上部との距離は次第に広がってゆくことになる。即ち、分析領域への一次イオンの照射時間の経過とともに上記の距離は大きくなる。
近年のSIMS分析では、1keV以下の加速エネルギーの一次イオンを用いて、浅い領域の分析をする場合がほとんどである。そのときの一次イオンの注入深さは5nm程度であることを考慮すると、散乱等で飛び散る高さも同様に5nm程度であり、分析開始時の障壁の高さは5nm以上あれば十分に効果は得られると考えられる。
以上を踏まえると、障壁を確実に形成することを考慮すれば、イオン注入のドーズ量は6×1016/cm2以上が好ましく、また、イオン注入による試料面のスパッタリングを避けることを考慮すれば、ドーズ量は1×1017/cm2以下が好ましい。従って、当該イオン注入の適正ドーズ量は6×1016/cm2以上1×1017/cm2以下の範囲内の値とすることが好適である。
従来では、試料面は一度分析すると一次イオンの飛散により汚染されてしまうため、次の測定では分析位置を大きく(最低でも5mm以上)離さなければならず、周辺部位に更に分析領域がある場合には、測定データの統一が難しく、 分析精度の低下を余儀なくされていた。
これに対して本実施形態では、試料1の試料面1aにおいて、上記のようにストライプ状の障壁11で分析領域12の一部を囲むことにより、一次イオンとして分析領域12に照射されたアルカリ金属イオンが分析領域12から散乱しても、アルカリ金属イオンの散乱の影響は障壁11で遮断され、障壁11で隔てられた隣接する未使用の分析領域12には到達しない。従って、この未使用の分析領域12は、上記した散乱の影響を受けず、一次イオンによる汚染が抑止される。従って、この未使用の分析領域12を一次イオンの照射による新たな分析に供しても、分析精度の低下を来たすことなく、当該試料本来の高精度分析が可能となる。
上記のように作製された試料1を用い、図1に示したSIMS装置により分析を行なうには、試料1の試料面1aにおける所定の分析領域12にイオン銃3からアルカリ金属イオンを一次イオンとして照射し、分析領域12から発生した二次イオンを、引き出し電極4により質量分析器5に導入し、質量分析を行なう。
そして引き続き、例えば、一次イオンの照射を終了した分析領域12と障壁11を隔てて隣接する分析領域12に、上記と同様に一次イオンを照射し、発生した二次イオンの質量分析を行なう。この隣接する分析領域12は、障壁11により、上記の分析時における一次イオンの影響を受けず汚染されていないため、高精度の質量分析を行なうことができる。この作業を試料1の試料面1aにおける所望の分析領域12に対して適宜に順次行ない、分析を終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、SIMSによる分析を行なう際に、試料1の試料面1aにおける分析領域12の周辺部位への一次イオンの付着を防止し、続いて分析領域12の周辺部位で新たに分析を行なう必要性がある場合等においても分析精度の低下を来たすことなく、試料面1aの近接する複数箇所における高精度の分析が実現する。
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態と同様に試料を作製し、図1のSIMS装置による分析に供する場合について説明するが、試料の形態が若干異なる点で相違する。なお、第1の実施形態で説明した構成部材等と同じものについては同符号を付し、詳しい説明を省略する。
図2は、第1の実施形態によるSIMS用試料を示す概略平面図である。
本実施形態では、試料1としてSi基板を用い、試料1の試料面1aにおける一次イオンが照射される分析領域を囲むように、ここでは試料面1aで格子状に、元素としてSi+をイオン注入する。このイオン注入により、注入部位に体積膨張が生じ、格子状の障壁13が形成される。この障壁13においては、格子状に囲まれた各閉鎖部分が分析領域14となる。
本実施形態では、試料1の試料面1aにおいて、上記のように格子状の障壁13で各分析領域14を囲むことにより、一次イオンとして1つの分析領域14に照射されたアルカリ金属イオンが分析領域14から散乱しても、アルカリ金属イオンの散乱の影響は障壁13で遮断され、障壁13で隔てられた隣接する未使用の分析領域14には到達しない。従って、この未使用の分析領域14は、上記した散乱の影響を受けず、一次イオンによる汚染が抑止される。従って、この未使用の分析領域14を一次イオンの照射による新たな分析に供しても、分析精度の低下を来たすことなく、当該試料本来の高精度分析が可能となる。
上記のように作製された試料1を用い、図1に示したSIMS装置により分析を行なうには、試料1の試料面1aにおける所定の分析領域14にイオン銃3からアルカリ金属イオンを一次イオンとして照射し、分析領域14から発生した二次イオンを、引き出し電極4により質量分析器5に導入し、質量分析を行なう。
そして引き続き、例えば、一次イオンの照射を終了した分析領域14と障壁13を隔てて隣接する分析領域14に、上記と同様に一次イオンを照射し、発生した二次イオンの質量分析を行なう。この隣接する分析領域14は、障壁13により、上記の分析時における一次イオンの影響を受けず汚染されていないため、高精度の質量分析を行なうことができる。この作業を試料1の試料面1aにおける所望の分析領域14に対して適宜に順次行ない、分析を終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、SIMSによる分析を行なう際に、試料1の試料面1aにおける分析領域14の周辺部位への一次イオンの付着を防止し、続いて分析領域14の周辺部位で新たに分析を行なう必要性がある場合等においても分析精度の低下を来たすことなく、試料面1aの近接する複数箇所における高精度の分析が実現する。
第1の実施形態による二次イオン質量分析装置(以下、SIMS装置と記す)の概略構成を示す模式図である。 第1の実施形態によるSIMS用試料を示す概略平面図である。 Si基板にSi+をイオン注入した後における基板表面のAFM(原子間力顕微鏡)像の写真を示す図である。 第2の実施形態によるSIMS用試料を示す概略平面図である。 Csイオン照射によってSIMS法による分析を行なった後における試料表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像の写真を示す図である。
符号の説明
1 試料
1a 試料面
2 試料ホルダー
3 イオン銃
4 引き出し電極
5 質量分析器
6 中和電子銃
7 絶縁体
8 二次イオン検出器
10 真空チャンバー
11,13 障壁
12,14 分析領域

Claims (7)

  1. 試料面に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記試料面から発生した二次イオンを検出する二次イオン質量分析に供される二次イオン質量分析用試料であって、
    前記試料面の前記一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲むように、前記試料面への元素のイオン注入による障壁が形成されてなることを特徴とする二次イオン質量分析用試料。
  2. 前記障壁は、前記試料面で並列する複数のストライプ状に形成されており、隣接する前記障壁間の部分が前記分析領域とされてなることを特徴とする請求項1に記載の二次イオン質量分析用試料。
  3. 前記障壁は、前記試料面で格子状に形成されており、前記格子状に囲まれた各閉鎖部分が前記分析領域とされてなることを特徴とする請求項1に記載の二次イオン質量分析用試料。
  4. 試料面に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記試料面から発生した二次イオンを検出する二次イオン質量分析に供される二次イオン質量分析用試料の作製方法であって、
    前記試料の前記試料面の前記一次イオンが照射される分析領域の少なくとも一部を囲む部位に元素をイオン注入し、体積膨張による障壁を形成することを特徴とする二次イオン質量分析用試料の作製方法。
  5. 前記障壁を、前記試料面で並列する複数のストライプ状に形成し、隣接する前記障壁間の部分を前記分析領域とすることを特徴とする請求項4に記載の二次イオン質量分析用試料の作製方法。
  6. 前記障壁を、前記試料面で格子状に形成し、前記格子状に囲まれた各閉鎖部分を前記分析領域とすることを特徴とする請求項4に記載の二次イオン質量分析用試料の作製方法。
  7. 試料面における分析領域の少なくとも一部を囲む部位に元素をイオン注入し、体積膨張による障壁を形成して試料を作製し、
    前記試料の前記試料面における前記分析領域に一次イオンを照射し、前記一次イオンの照射により前記分析領域から発生した二次イオンを検出することを特徴とする二次イオン質量分析方法。
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