JP2008215580A - 車両の制御装置および制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パワーオンダウンシフト時に同期回転数に達しない場合における油圧の応答遅れに起因する変速時間の遅延を抑制する。
【解決手段】ECUは、パワーオンダウンシフト要求があると(S100にてYES)、ガタ詰制御を実行するステップ(S104)と、定圧待機制御を実行するステップ(S106)と、スイープ条件が成立すると(S108にてYES)、サージ制御を実行するステップ(S110)と、スイープ制御を実行するステップ(S112)と、終了時条件が成立すると(S114にてYES)、終了時制御(1)を実行するステップ(S116)と、スイープ条件が成立しないと(S108にてNO)、定圧待機制御を継続するステップ(S118)と、終了時条件が成立すると(S120にてYES)、終了時制御(2)を実行するステップ(S122)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】図6

Description

本発明は、自動変速機が搭載された車両の制御装置に関し、特に、パワーオンダウンシフト時に同期回転数に達しない場合における油圧の応答遅れに起因する変速時間の遅延を抑制する自動変速機の制御に関する。
従来より、クラッチやブレーキ等の摩擦係合要素を係合状態にする組み合わせにより、所望の変速段を形成する自動変速機が周知である。この自動変速機においては、アクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)や車速に応じて変速が行なわれる。たとえば、車両の走行中にアクセル開度が急に増大した場合には、ダウンシフト(以下の説明において、パワーオンダウンシフトという)等が行われる。
たとえば、特開2005−337410号公報(特許文献1)は、パワーオンダウンシフト時に、入力回転数の上昇速度が異なる場合でも適切なタイミングで係合油圧をかけることで、変速ショックやエンジン回転の吹き上がりを防止する自動変速機の変速制御方法を開示する。この変速制御方法は、ダウンシフト時に第1係合要素を解放するとともに、第2係合要素を係合する自動変速機であって、パワーオン状態でのダウンシフト指令時に、第1係合要素の油圧を制御して入力回転数を低速段の回転数に近づけるとともに、入力回転数が低速段の回転数に近づいた時点で第2係合要素に変速完了のための係合油圧を出力するようにした変速制御方法である。変速制御方法は、変速途中の入力回転数の時間変化率を求めるステップと、変速途中の入力回転数とその時間変化率とから低速段の入力回転数に到達するまでの時間を推定するステップと、推定時間と第2係合要素の係合油圧の応答時間とが近似するように第2係合要素に係合油圧を出力するタイミングを決定するステップと、上記タイミングで第2係合要素に係合油圧を出力するステップと、を有する。
上述した公報に開示された変速制御方法によると、入力回転数とその時間変化率とから低速段の入力回転数に到達するまでの時間を推定し、この推定時間と第2係合要素の係合油圧の応答時間とが近似するように第2係合要素に係合油圧を出力するタイミングを決定したので、入力回転数が低速段の回転数に到達した時点で第2係合要素の油圧も係合完了状態の油圧に到達することができる。したがって、入力回転数の上昇速度が異なる場合でも、変速ショックやエンジン回転の吹き上がりを防止できる。
特開2005−337410号公報
しかしながら、このパワーオンダウンシフトは、アクセル開度が増大してエンジン回転数が上昇することにより、自動変速機の入力軸回転数が予め定められる同期回転数まで上昇することを前提として行なわれる。したがって、自動変速機の入力軸回転数に応じて変速中の油圧制御(摩擦係合要素への供給油圧の制御)を行なうパワーオンダウンシフトにおいては、変速中にアクセル開度が減少されることで自動変速機の入力軸回転数が同期回転数まで上昇しないことにより、変速の進行が遅延する場合があり得る。
上述した公報に開示された変速制御方法においては、予め定められた変化率で係合側の油圧を増加させることにより、変速を強制的に進行させる制御(以下、スイープ制御ともいう)を実施しているが、初期制御からスイープ制御への移行時に、油圧指令値に対してピストンエンド圧まで油圧が上昇するまでの間、実油圧の応答が遅れるという問題がある。そのため、変速時間の遅延を回避することができない。上述した公報に開示された変速制御方法においては、スイープ制御開始時の実圧の応答遅れの問題について何ら考慮されていないため、この問題を解決することができない。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、パワーオンダウンシフト時に同期回転数に達しない場合における油圧の応答遅れに起因する変速時間の遅延を抑制する車両の制御装置、制御方法およびその方法をコンピュータで実現されるプログラムならびにそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
第1の発明に係る車両の制御装置は、油圧回路に出力された指令値に基づいて供給される油圧により、解放状態の第1の摩擦係合要素が係合され、係合状態の第2の摩擦係合要素が解放されることによりダウンシフト後の変速段を形成する自動変速機を搭載する車両の制御装置である。この制御装置は、自動変速機の状態に関連する物理量を検出するための検出手段と、アクセル開度の増大によりダウンシフト後の変速段の形成が開始された後に、自動変速機の状態に基づいて変速の遅延を示す条件が成立するか否かを判定するための判定手段と、条件が成立すると、第1の摩擦係合要素に供給される油圧に対応する指令値が予め定められた時間だけステップ的に上昇させて、予め定められた時間が経過すると、指令値をステップ的に低下させるように出力するための手段と、予め定められた指令値を初期値として予め定められた変化率で増加するように指令値を出力するための手段とを含む。第5の発明に係る車両の制御方法は、第1の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第1の発明によると、アクセル開度が増大すると、第1の摩擦係合要素が係合され、第2の摩擦係合要素が解放されて、パワーオンダウンシフトが実施される。このとき、変速の進行の遅延を示す条件(たとえば、自動変速機の出力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応した予め定められた回転数よりも低い状態が継続するという条件)が成立すると、指令値がステップ的に上昇する。これにより、条件が成立した時点で、予め定められた変化率で指令値を上昇させる場合と比較して、第1の摩擦係合要素の実油圧を速やかに増加させることができる。また、予め定められた時間経過後にステップ的に低下させるため、変速中に係合側の油圧がかかり過ぎることがなく、変速ショックの発生を抑制することができる。また、指令値のステップ的な変化の後に予め定められた指令値を初期値として予め定められた変化率で増加するように指令値を出力すると、ダウンシフトを緩やかに進行させることができる。そのため、変速時間の遅延および変速ショックを抑制することができる。したがって、パワーオンダウンシフト時に同期回転数に達しない場合における油圧の応答遅れに起因する変速時間の遅延を抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、検出手段は、自動変速機の入力軸の回転数を検出するための手段を含む。制御装置は、検出された回転数とダウンシフト後の同期回転数との回転数差を演算するための手段と、条件が成立した場合、演算された回転数差が予め定められた範囲内になると、第1の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力するための手段をさらに含む。第6の発明に係る車両の制御方法は、第2の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第2の発明によると、条件が成立した場合においては、指令値のステップ的な変化により係合側の油圧が上昇する。同期回転数との回転数差が予め定められた範囲内になると、自動変速機の入力軸の回転数が同期回転数に到達したことを判定することができる。そのため、第2の摩擦係合要素が完全係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力することにより、係合側の油圧のかかり過ぎに起因する変速ショックの発生を抑制して変速することができる。
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、検出手段は、自動変速機の入力軸の回転数を検出するための手段を含む。制御装置は、検出された回転数とダウンシフト後の同期回転数との回転数差を演算するための手段と、条件が成立しない場合であって、検出された回転数差が予め定められた範囲内になると、第1の摩擦係合要素の係合油圧に対応する指令値が予め定められた時間だけステップ的に上昇させた後に、ステップ的に低下するように指令値を出力するための手段と、予め定められた指令値を初期値として第1の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力するための手段とをさらに含む。第7の発明に係る車両の制御方法は、第3の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第3の発明によると、条件が成立しない場合においては、指令値のステップ的な変化および予め定められた変化率での増加が行なわれないため、係合側の油圧は、比較的低い状態となる。同期回転数との回転数差が予め定められた範囲内になると、自動変速機の入力軸の回転数が同期回転数に到達したことを判定することができる。そのため、指令値をステップ的に変化させることにより、油圧を応答性よく上昇させることができる。これにより、速やかに第2の摩擦係合要素を完全係合させて、ダウンシフト後の変速段を形成することができる。
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、検出手段は、自動変速機の入力軸の回転数を検出するための手段を含む。条件は、変速段の形成が開始されてから予め定められた時間が経過するまで、検出された入力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数よりも低い状態が継続するという条件である。第8の発明に係る車両の制御方法は、第4の発明に係る車両の制御装置と同様の構成を有する。
第4の発明によると、変速段の形成が開始されてから予め定められた時間が経過するまで、検出された入力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数よりも低い状態が継続すると、変速の進行が遅延していることを判定することができる。そのため、条件が成立した時点で、指令値をステップ的に上昇させることにより、変速のショックおよび油圧の応答遅れを抑制しつつ、変速時間の遅延を抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FF(Front engine Front drive)車両である。なお、FF以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、ディファレンシャルギヤ5000と、ドライブシャフト6000と、前輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本発明に係る車両の制御装置は、ECU8000により実現される。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ3200を介してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。
オートマチックトランスミッション2000の出力ギヤは、ディファレンシャルギヤ5000と噛合っている。ディファレンシャルギヤ5000にはドライブシャフト6000がスプライン嵌合などによって連結される。ドライブシャフト6000を介して、左右の前輪7000に動力が伝達される。
ECU8000には、車速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012のストロークセンサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024とがハーネスなどを介在させて接続されている。
車速センサ8002は、ドライブシャフト6000の回転数から車両の速度を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。シフトレバー8004の位置は、ポジションスイッチ8006により検知され、検知結果を表す信号がECU8000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション2000の変速段が自動で形成される。また、運転者の操作に応じて、運転者が任意の変速段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。ストロークセンサ8014は、ブレーキペダル8012のストローク量を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)が調整される。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数を検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数(以下、タービン回転数ともいう)NTを検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを検知し、検知結果を表す信号をECU8000に送信する。なお、エンジン1000の出力軸は、トルクコンバータ3200の入力軸に接続され、トルクコンバータ3200の出力軸は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸に接続されるため、エンジン1000の出力軸の回転数は、トルクコンバータ3200の入力軸の回転数と同じ回転数となる。また、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数は、トルクコンバータ3200の出力軸の回転数と同じ回転数である。
ECU8000は、車速センサ8002、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、ストロークセンサ8014、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションに位置することにより、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、1速〜6速段の変速段のうちのいずれかの変速段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。1速〜6速段のうちのいずれかの変速段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション2000は前輪7000に駆動力を伝達し得る。
シフトレバー8004がN(ニュートラル)ポジションであることにより、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにN(ニュートラル)レンジが選択された場合、ニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になるように、オートマチックトランスミッション2000が制御される。
図2を参照して、オートマチックトランスミッション2000内に設けられたプラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸3100を有するトルクコンバータ3200に接続されている。プラネタリギヤユニット3000は、遊星歯車機構の第1セット3300と、遊星歯車機構の第2セット3400と、出力ギヤ3500と、ギヤケース3600に固定されたB1ブレーキ3610、B2ブレーキ3620およびB3ブレーキ3630と、C1クラッチ3640およびC2クラッチ3650と、ワンウェイクラッチF3660とを含む。
第1セット3300は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。第1セット3300は、サンギヤS(UD)3310と、ピニオンギヤ3320と、リングギヤR(UD)3330と、キャリアC(UD)3340とを含む。
サンギヤS(UD)3310は、トルクコンバータ3200の出力軸3210に連結されている。ピニオンギヤ3320は、キャリアC(UD)3340に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ3320は、サンギヤS(UD)3310およびリングギヤR(UD)3330と噛合している。
リングギヤR(UD)3330は、B3ブレーキ3630によりギヤケース3600に固定される。キャリアC(UD)3340は、B1ブレーキ3610によりギヤケース3600に固定される。
第2セット3400は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。第2セット3400は、サンギヤS(D)3410と、ショートピニオンギヤ3420と、キャリアC(1)3422と、ロングピニオンギヤ3430と、キャリアC(2)3432と、サンギヤS(S)3440と、リングギヤR(1)(R(2))3450とを含む。
サンギヤS(D)3410は、キャリアC(UD)3340に連結されている。ショートピニオンギヤ3420は、キャリアC(1)3422に回転自在に支持されている。ショートピニオンギヤ3420は、サンギヤS(D)3410およびロングピニオンギヤ3430と噛合している。キャリアC(1)3422は、出力ギヤ3500に連結されている。
ロングピニオンギヤ3430は、キャリアC(2)3432に回転自在に支持されている。ロングピニオンギヤ3430は、ショートピニオンギヤ3420、サンギヤS(S)3440およびリングギヤR(1)(R(2))3450と噛合している。キャリアC(2)3432は、出力ギヤ3500に連結されている。
サンギヤS(S)3440は、C1クラッチ3640によりトルクコンバータ3200の出力軸3210に連結される。リングギヤR(1)(R(2))3450は、B2ブレーキ3620により、ギヤケース3600に固定され、C2クラッチ3650によりトルクコンバータ3200の出力軸3210に連結される。また、リングギヤR(1)(R(2))3450は、ワンウェイクラッチF3660に連結されており、1速段の駆動時に回転不能となる。
ワンウェイクラッチF3660は、B2ブレーキ3620と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチF3660のアウターレースはギヤケース3600に固定され、インナーレースはリングギヤR(1)(R(2))3450に回転軸を介して連結される。
B1ブレーキ3610、B2ブレーキ3620、B3ブレーキ3630、C1クラッチ3640およびC2クラッチ3650は、入力側の摩擦部材と、出力側の摩擦部材と、摩擦部材に押圧力を付与するピストンと、油圧をピストンに付与する油圧室とから構成される摩擦係合要素であって、入力側の摩擦部材および出力側の摩擦部材は、たとえば、入力側および出力側にそれぞれ複数の摩擦部材を有する多板クラッチにより構成される。
図3に、各変速段と、各クラッチ要素および各ブレーキ要素の作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組み合わせで各ブレーキ要素および各クラッチ要素を作動させることにより、1速〜6速の前進側の変速段と、後進側の変速段とが形成される。
図3に示すように、C1クラッチ3640は、1速段〜4速段の全ての変速段において係合される。すなわち、C1クラッチ3640は、1速段〜4速段における入力クラッチであるといえる。C2クラッチ3650は、5速段および6速段において係合される。すなわち、C2クラッチ3650は、5速段および6速段における入力クラッチであるといえる。
なお、本実施の形態においては、2つの入力クラッチを有する自動変速機に本発明を適用する場合について説明するが、2つ以上の入力クラッチを有する自動変速機であれば特に限定されるものではない。
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006により調圧され、ライン圧が生成される。
プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300により調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を介してマニュアルバルブ4100およびSL(4)4240に供給される。
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102内の作動油がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102内の作動油およびRレンジ圧油路4104内の作動油がドレンポート4105から排出される。
Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230および油路4106を経由して、最終的には、B1ブレーキ3610、B2ブレーキ3620、C1クラッチ3640およびC2クラッチ3650に供給される。Rレンジ圧油路4104に供給された油圧は、最終的には、B2ブレーキ3620に供給される。
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
SL(1)4210は、C1クラッチ3640に供給される油圧を調圧する。SL(2)4220は、C2クラッチ3650に供給される油圧を調圧する。SL(3)4230は、B1ブレーキ3610に供給される油圧を調圧する。SL(4)4240は、B3ブレーキ3630に供給される油圧を調圧する。SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、およびSLT4300は、ECU8000から送信される制御信号により制御される。
SLT4300は、アクセル開度センサ8010により検知されたアクセル開度に基づいたECU8000からの制御信号に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を介して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3620に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLソレノイドバルブ(図示せず)およびSLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とにより制御される。
SLソレノイドバルブがオフで、SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3620には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。
SLソレノイドバルブがオンで、SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3620には、Rレンジ圧が供給される。
以上のような車両の構成において、本発明は、ECU8000が、アクセル開度の増大によりダウンシフト後の変速段の形成が開始された後に、オートマチックトランスミッション2000の状態に基づいて変速の遅延を示す条件が成立するか否かを判定して、条件が成立すると、係合側の摩擦係合要素に供給される油圧に対応する指令値が予め定められた時間Tbだけステップ的に上昇するように指令値を出力する点、および、予め定められた時間Tbが経過すると、指令値をステップ的に低下させて、予め定められた指令値を初期値として予め定められた変化率で増加するように指令値を出力する点を特徴とする。本実施の形態において、「変速の遅延を示す条件」とは、前記変速段の形成が開始されてから予め定められた時間Tcが経過するまで、前記検出された入力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数よりも低い状態が継続するという条件である。
図5に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の機能ブロック図を示す。
ECU8000は、入力インターフェース(以下、入力I/Fと記載する)300と、演算処理部400と、記憶部500と、出力インターフェース(以下、出力I/Fと記載する)600とを含む。
入力I/F300は、エンジン回転数センサ8020からのエンジン回転数信号と、入力軸回転数センサ8022からのタービン回転数信号と、出力軸回転数センサ8024からの出力軸回転数信号と、アクセル開度センサ8010からのアクセル開度信号と、スロットル開度センサ8018からのスロットル開度信号とを受信して、演算処理部400に送信する。
演算処理部400は、変速要求判定部402と、ガタ詰制御部404と、定圧待機制御部406と、スイープ条件判定部408と、サージ制御部410と、スイープ制御部412と、終了時条件判定部414と、終了時制御部416と、解放制御部418とを含む。
変速要求判定部402は、運転者からのパワーオンダウンシフト要求があるか否かを判定する。たとえば、変速要求判定部402は、アクセル開度が増大することにより、変速線図において、現在形成されている変速段よりも低速側の変速段が要求されると、運転者からのパワーオンダウンシフト要求があることを判定する。
変速線図はたとえば、スロットル開度と出力軸回転数とに対応する線図であって、各変速段に対応したアップシフト線およびダウンシフト線が予め設定される。変速要求判定部402は、アクセル開度が予め定められたしきい値以上となるときに(すなわち、パワーオンのときに)、入力I/Fを経由して受信するスロットル開度信号と出力軸回転数信号とに基づいて変速線図上に特定される位置がダウンシフト線を横切る場合に、パワーオンダウンシフト要求があることを判定する。なお、変速要求判定部402は、パワーダウンシフト要求があることを判定すると、パワーダウンシフト判定フラグをオンするようにしてもよい。
ガタ詰制御部404は、パワーダウンシフト要求が判定されると、ダウンシフトが行なわれることにより解放状態から係合状態にされるクラッチまたはブレーキ(以下、係合側の摩擦係合要素という)に対してガタ詰制御を実行する。ここで「ガタ詰制御」とは、係合側の摩擦係合要素に対する指令値を予め定められた時間Taが経過するまで、ステップ的に上昇させて、摩擦係合要素を係合直前まで速やかに移動させる制御である。たとえば、ガタ詰制御部404は、指令値を予め定められた値Pa(1)までステップ的に上昇させる。なお、ガタ詰制御部404は、たとえば、パワーオンダウンシフト判定フラグがオンになると、ガタ詰制御を実行するようにしてもよい。
定圧待機制御部406は、ガタ詰制御後の係合側の摩擦係合要素に対して定圧待機制御を実行する。ここで「定圧待機制御」とは、ダウンシフトが行なわれることにより係合状態から解放状態にされるクラッチまたはブレーキ(以下、解放側の摩擦係合要素という)に対するフィードバック制御に影響を与えないように係合開始前の状態で待機する制御のことである。本実施の形態においてはSL(1)4210〜SL(4)4240のうち係合側の摩擦要素に対応するリニアソレノイドに対して、予め定められた指令値Pa(2)を出力するものとして説明するが、特にこのような制御態様に限定されるものではない。
スイープ条件判定部408は、オートマチックトランスミッション2000の状態に関連する物理量に基づいて変速の遅延を示す条件(以下、スイープ条件ともいう)が成立するか否かを判定する。なお、スイープ条件判定部406は、たとえば、スイープ条件が成立すると、スイープ条件判定フラグをオンするようにしてもよい。
本実施の形態において、「オートマチックトランスミッション2000の状態に関連する物理量」とは、タービン回転数NTである。また、「変速の遅延を示す条件」とは、変速段の形成が開始されてから予め定められた時間Tcが経過するまで、タービン回転数NTが、ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数NT(1)よりも低い状態が継続するという条件である。ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数NT(1)は、変速後の変速段における同期回転数よりも低い回転数であって、たとえば、実験等により適合される。変速後の変速段における同期回転数は、出力軸回転数センサ8024により検出される出力軸回転数NOと変速後の変速段における変速比とを乗じて算出される。
サージ制御部410は、予め定められた時間Tbが経過するまで、係合側の摩擦係合要素に対応する油圧の指令値をステップ的に上昇するように出力して、予め定められた時間Tbが経過すると、油圧の指令値をステップ的に低下するように出力する処理(以下、サージ制御という)を実行する。
具体的には、サージ制御部410は、スイープ条件が成立すると、予め定められた指令値Pa(3)を生成して、出力I/F600を経由して係合側の摩擦係合要素に対応するリニアソレノイド(SL(1)4210〜SL(4)4240のうちのいずれか)に出力する。さらに、サージ制御部410は、予め定められた時間Tbが経過すると、Pa(3)よりも小さい予め定められた指令値Pa(4)を生成して、出力I/F600を経由して係合側の摩擦係合要素に対応するリニアソレノイドに出力する。なお、サージ制御部410は、たとえば、スイープ条件判定フラグがオンであると、サージ制御を実施するようにしてもよい。
スイープ制御部412は、係合側の摩擦係合要素に対応する油圧の指令値が予め定められた変化率で増加するように出力する処理(以下、スイープ制御という。)を実行する。
具体的には、スイープ制御部412は、サージ制御が実行された後、指令値Pa(4)を初期値として予め定められた変化率で指令値が時間変化に対して線形に増加するように出力する。
なお、指令値Pa(4)および予め定められた変化率は、各変速段において一律に設定される値(すなわち、各リニアソレノイドに対して一律に設定される指令値)であってもよいし、変速後の変速段ごとに設定される値であってもよい。
終了時条件判定部414は、タービン回転数NTと同期回転数との回転数差が予め定められた範囲内であるという条件(以下、終了時条件ともいう)が成立するか否かを判定する。
具体的には、終了時条件判定部414は、入力I/F300を経由して受信するタービン回転数信号と出力軸回転数信号と変速後の変速段における変速比とに基づいて、回転数差を演算する。終了時条件判定部414は、演算された回転数差が予め定められた範囲内であるか否かを判定して、判定結果に応じて、終了時条件が成立したことを判定する。
本実施の形態において、終了時条件判定部414は、タービン回転数NTが同期回転数−定数αよりも大きいか否かを判定して、タービン回転数NTが同期回転数−定数αよりも大きいことを判定すると、終了時条件が成立したことを判定する。なお、終了時条件判定部414は、たとえば、回転数差が予め定められた範囲内であることを判定すると、終了時条件判定フラグをオンするようにしてもよい。
終了時制御部416は、スイープ条件が成立している場合(すなわち、スイープ条件判定フラグがオンである場合)、回転数差が予め定められた範囲内であることが判定されたときに、係合側の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるように指令値を出力する処理(以下、終了時制御(1)という)を実行する。
さらに、終了時制御部416は、スイープ条件が成立していない場合(すなわち、スイープ条件判定フラグがオフである場合)、回転数差が予め定められた範囲内であることが判定されたときに、予め定められた時間Tdが経過するまで、係合側の摩擦係合要素に対応する油圧の指令値をステップ的に上昇するように出力する。さらに、終了時制御部416は、予め定められた時間Tdが経過すると、油圧の指令値をステップ的に低下するように出力する。その後、終了時制御部416は、予め定められた指令値を初期値として、係合側の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるように指令値を出力する処理(以下、終了時制御(2)という)を実行する。
解放制御部418は、パワーダウンシフト要求が判定されると、解放側の摩擦係合要素が解放されるように油圧を制御する。具体的には、解放制御部418は、変速後の変速段に対応しない摩擦係合要素に対して供給される油圧が低下するように、解放側の摩擦係合要素に対応するリニアソレノイドに対する制御信号を生成して、出力I/F600を経由して生成した制御信号を油圧回路4000に送信する。
また、本実施の形態において、変速要求判定部402と、ガタ詰制御部404と、定圧待機制御部406と、スイープ条件判定部408と、サージ制御部410と、スイープ制御部412と、終了時条件判定部414と、終了時制御部416と、解放制御部418とは、いずれも演算処理部400であるCPU(Central Processing Unit)が記憶部500に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
記憶部500には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部400からデータが読み出されたり、格納されたりする。
以下、図6を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU8000は、パワーオンダウンシフト要求があるか否かを判定する。パワーオンダウンシフト要求があると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS100に戻される。
S102にて、ECU8000は、タービン回転数および油圧指令値のモニタを開始する。具体的には、ECU8000は、入力軸回転数センサ8022により検出されるタービン回転数NTおよび現在の変速段におけるSL(1)4210〜SL(4)4240に対する油圧の指令値のモニタを開始する。
S104にて、ECU8000は、ガタ詰制御を実行する。S106にて、ECU8000は、定圧待機制御を実行する。S108にて、ECU8000は、スイープ条件が成立するか否かを判定する。スイープ条件が成立すると(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS118に移される。
S110にて、ECU8000は、サージ制御を実行する。S112にて、ECU8000は、スイープ制御を実行する。S114にて、ECU8000は、終了時条件が成立するか否かを判定する。終了時条件が成立すると(S114にてYES)、処理はS116に移される。もしそうでないと(S114にてNO)、処理はS114に戻される。S116にて、ECU8000は、終了時制御(1)を実行する。
S118にて、ECU8000は、定圧待機制御を継続して実行する。S120にて、ECU8000は、終了時条件が成立するか否かを判定する。終了時条件が成立すると(S120にてYES)、処理はS122に移される。もしそうでないと(S120にてNO)、処理はS108に移される。S122にて、ECU8000は、終了時制御(2)を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の動作について、図7を参照しつつ説明する。
たとえば、オートマチックトランスミッション2000において、3速段から2速段へのダウンシフトの場合を想定する。C1クラッチ3640およびB3ブレーキ3630が係合状態になることにより3速段が形成され、C1クラッチ3640およびB1ブレーキ3610が係合状態になることにより2速段が形成されることから3速段から2速段へのダウンシフト時においては、B1ブレーキ3610が係合側の摩擦係合要素であって、B3ブレーキが解放側の摩擦係合要素となる。
時間T(0)において、運転者がアクセルペダルを踏み込むことによりアクセル開度がしきい値を超えてパワーオンとなると、時間T(1)において、3速段から2速段へのパワーオンダウンシフトの変速要求(変速指令)があることが判定される(S100にてYES)。
このとき、タービン回転数NTおよび油圧の指令値のモニタが開始され(S102)、B1ブレーキ3610に対してガタ詰制御が実行される(S104)。そのため、ECU8000は、係合側指令値の変化(実線)に示すように、SL(3)4230に対して予め定められた指令値Pa(1)をステップ的に出力する。係合側の実油圧の変化(破線)に示すように、ステップ的な指令値の変化に追従するように油圧が上昇して、ピストンが係合側に移動する。
ECU8000は、時間T(1)の変速指令の時点から予め定められた時間Taが経過した後の時間T(2)において、ピストンが係合直前の位置まで移動してガタ詰制御が終了した後、定圧待機制御を実行する(S106)。すなわち、ECU8000は、B1ブレーキ3610に対応するSL(3)4230に対する指令値を予め定められた値Pa(2)とし、指令値を維持した状態とする。
また、ECU8000は、時間T(1)において、解放側指令値(実線)に示すように、B3ブレーキ3630に対応するSL(4)4240に対する指令値Pb(1)をPb(2)まで低下する。B3ブレーキ3630の実油圧は、解放側実油圧(破線)に示すように、指令値の低下に追従するように低下していく。そして、時間T(3)において、B3ブレーキ3630の係合力の低下によりタービン回転数NTの上昇が開始する。
時間T(4)において、運転者がアクセルペダルの踏み込みをやめるなどして、アクセルしきい値を下回ってパワーオフとなると、エンジン1000は、被駆動状態となり、タービン回転数NTの上昇率が低下する。また、時間T(5)において、解放側指令値が完全解放を示す指令値となり、解放側実油圧も指令値の低下に遅れて低下していき、B3ブレーキ3630が完全解放状態となる。
時間T(1)の変速指令の時点から予め定められた時間Tcが経過する時間T(6)において、タービン回転数NTが2速段に対応して設定される回転数NT(1)以下であると、スイープ条件が成立するため(S108にてYES)、サージ制御が実行される(S110)。そのため、係合側指令値の変化(実線)に示すように、B1ブレーキ3610に対応するSL(3)4230に対する指令値を予め定められた指令値Pa(3)にステップ的に上昇させる。このとき、係合側実油圧の変化(破線)に示すように、B1ブレーキ3610に供給される油圧は、指令値のステップ的な上昇に追従するように上昇を開始する。
時間T(6)から予め定められた時間Tbが経過する時間T(7)において、スイープ制御が実行される(S112)。すなわち、係合側指令値の変化(実線)に示すように、予め定められた指令値Pa(4)を初期値として、予め定められた変化率で増加するように指令値が出力される。このとき、係合側実油圧の変化(破線)に示すように、係合側指令値の予め定められた変化率での増加に応じて油圧が上昇する。このときの係合側実油圧の変化率は、時間T(6)から時間T(7)までの係合側実油圧の変化率よりも小さくなる。
時間T(8)において、タービン回転数NTが2速段の同期回転数−定数α以上になる回転数NT(2)になると、終了時制御(1)が実行される(S116)。係合側指令値の変化(実線)に示すように、B1ブレーキ3610が完全に係合する油圧になるように指令値が増加していく。そして、時間(9)において、完全係合に対応する指令値が出力される。そのため、係合側実油圧の変化(実線)に示すように、実油圧は、指令値の増加に伴って上昇し、時間T(10)において、完全に係合する油圧となる。
一方、時間T(6)において、アクセル開度がパワーオンの状態が継続するなどして、スイープ条件が成立しないと(S108にてNO)、定圧待機制御が継続して実行される(S118)。このとき、エンジン回転数は上昇を続けるため、タービン回転数NTは、速やかに2速段の同期回転数−定数αの値以上となり、終了時条件が成立する(S120にてYES)。そのため、終了時制御(2)が実行される(S122)。すなわち、予め定められた時間Tdが経過するまで、B1ブレーキ3610に対応する油圧の指令値をステップ的に上昇するように出力して、予め定められた時間Tdが経過すると、油圧の指令値をステップ的に低下するように出力した後、予め定められた指令値を初期値として、B1ブレーキ3610が完全に係合する油圧になるように指令値を出力する。サージ制御により、油圧が応答性よく立ち上がるため、速やかに完全係合となる油圧まで上昇し、変速が完了する。
以下、図8を参照して、スイープ条件が成立した場合に、スイープ制御の前にサージ制御を実施せずに、終了時制御の際にサージ制御を実施する場合のタービン回転数、係合側指令値、係合側実油圧、解放側指令値、解放側実油圧およびアクセル開度の変化について説明する。なお、時間T(6)までは、図7と同様の変化を示すため、その詳細な説明は繰り返さない。
図8に示すように、時間T(6)において、タービン回転数NTが2速段に対応して設定される回転数NT(1)以下であると、スイープ条件が成立するため、スイープ制御が実行される。そのため、係合側指令値の変化(実線)に示すように、B1ブレーキ3610に対応するSL(3)4230に対する指令値を予め定められた指令値Pa’(3)を初期値として、予め定められた変化率で増加するように指令値が出力される。このとき、係合側実油圧の変化(破線)に示すように、係合側指令値の予め定められた変化率での増加に対して、徐々に予め定められた変化率になるように実油圧が上昇する。そのため、図7の時間T(7)から時間T(8)におけるスイープ制御時の実油圧の応答性に比較して、図8の時間T(6)から時間T’(7)までの実油圧の応答性に遅れが生じている。
また、エンジン1000が被駆動状態であることおよび係合側実油圧の応答性の遅れにより、タービン回転数NTは、時間T(6)から時間T’(7)までの間で低下した後、係合側実油圧の上昇に応じて増加する。
時間T’(7)において、タービン回転数NTが2速段の同期回転数−定数α以上になると、サージ制御が実行される。そのため、係合側指令値の変化(実線)に示すように、B1ブレーキ3610に対応するSL(3)4230に対する指令値が予め定められた時間Teが経過するまで予め定められた指令値Pa’(4)にステップ的に上昇される。このとき、係合側実油圧の変化(破線)に示すように、B1ブレーキ3610に供給される油圧は、指令値のステップ的な上昇に追従するように上昇を開始する。
しかしながら、サージ制御による指令値のステップ的な上昇により、係合側の実油圧は、急激に上昇する(油圧ブースト)こととなる。そのため、B1ブレーキ3610の係合が急激に進行して、タービン回転数NTが2速段の同期回転数に急激に近づくこととなる。このとき、タービン回転数NTの急変動により自動変速機にショックが発生する場合がある。
したがって、スイープ条件が成立した場合においては、サージ制御をスイープ制御前に実施することにより、スイープ制御時の係合側の摩擦係合要素の指令値に対して実油圧を応答性よく上昇させることができるため、タービン回転数の上昇を促進する。そのため、スイープ条件が成立した場合に、変速時間の短縮が図れる。さらに、終了時制御時においてサージ制御を実施しないため、実圧の急激な上昇を抑制することにより、ショックの発生が抑制される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、パワーオンダウンシフト時に、スイープ条件が成立すると、サージ制御が実行される。これにより、条件が成立した時点で、スイープ制御を実行する場合と比較して、係合側の摩擦係合要素の実油圧を速やかに増加させることができる。また、スイープ条件が成立した時点で、指令値をステップ的に上昇させて、予め定められた時間経過後に低下させるため、変速中に係合側の油圧がかかり過ぎることによる変速ショックの発生を抑制することができる。また、サージ制御の後にスイープ制御が実行されるため、ダウンシフトを緩やかに進行させることができる。そのため、変速時間の遅延および変速ショックを抑制することができる。したがって、パワーオンダウンシフト時に同期回転数に達しない場合における油圧の応答遅れに起因する変速時間の遅延を抑制する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
さらに、変速段の形成が開始されてから予め定められた時間Tcが経過するまで、検出された入力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数NT(1)よりも低い状態が継続すると、変速の進行が遅延していることを判定することができる。そのため、条件が成立した時点で、指令値をステップ的に上昇させることにより、変速のショックおよび油圧の応答遅れを抑制しつつ、変速時間の遅延を抑制することができる。
また、条件が成立した場合においては、指令値のステップ的な変化により係合側の油圧が上昇した状態となる。そのため、同期回転数との回転数差が予め定められた範囲内(すなわち、タービン回転数が同期回転数−定数α以上)になると、第2の摩擦係合要素が完全係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力することにより、係合側の油圧のかかり過ぎに起因する変速ショックの発生を抑制して変速することができる。
そして、条件が成立しない場合においては、指令値のステップ的な変化および予め定められた変化率での増加が行なわれないため、係合側の油圧は、比較的低い状態となる。そのため、同期回転数との回転数差が予め定められた範囲内になると、指令値をステップ的に変化させることにより、油圧を応答性よく上昇させることができる。これにより、速やかにダウンシフト後の変速段を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUにより制御されるパワートレーンを示す概略構成図である。 オートマチックトランスミッションにおけるギヤトレーンを示すスケルトン図である。 オートマチックトランスミッション2000の作動表を示す図である。 オートマチックトランスミッションにおける油圧回路の要部を示す図である。 本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUの機能ブロック図である。 本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUの動作を示すタイミングチャートである。 スイープ制御の前にサージ制御が実施されない場合の油圧の変化を示すタイミングチャートである。
符号の説明
300 入力I/F、400 演算処理部、402 変速要求判定部、404 ガタ詰制御部、406 定圧待機制御部、408 スイープ条件判定部、410 サージ制御部、412 スイープ制御部、414 終了時条件判定部、416 終了時制御部、418 解放制御部、500 記憶部、600 出力I/F、1000 エンジン、2000 オートマチックトランスミッション、3000 プラネタリギヤユニット、3100 入力軸、3200 トルクコンバータ、3210 出力軸、3610 B1ブレーキ、3620 B2ブレーキ、3630 B3ブレーキ、3640 C1クラッチ、3650 C2クラッチ、3660 ワンウェイクラッチF、4000 油圧回路、4004 オイルポンプ、4006 プライマリレギュレータバルブ、4100 マニュアルバルブ、4200 ソレノイドモジュレータバルブ、4210 SL1リニアソレノイド、4220 SL2リニアソレノイド、4230 SL3リニアソレノイド、4240 SL4リニアソレノイド、4300 SLTリニアソレノイド、4500 B2コントロールバルブ、5000 ディファレンシャルギヤ、6000 ドライブシャフト、7000 前輪、8000 ECU、8002 車速センサ、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 ストロークセンサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ。

Claims (8)

  1. 油圧回路に出力された指令値に基づいて供給される油圧により、解放状態の第1の摩擦係合要素が係合され、係合状態の第2の摩擦係合要素が解放されることによりダウンシフト後の変速段を形成する自動変速機を搭載する車両の制御装置であって、
    前記自動変速機の状態に関連する物理量を検出するための検出手段と、
    アクセル開度の増大により前記ダウンシフト後の変速段の形成が開始された後に、前記自動変速機の状態に基づいて変速の遅延を示す条件が成立するか否かを判定するための判定手段と、
    前記条件が成立すると、前記第1の摩擦係合要素に供給される油圧に対応する指令値が予め定められた時間だけステップ的に上昇させて、前記予め定められた時間が経過すると、指令値をステップ的に低下させるように出力するための手段と、
    予め定められた指令値を初期値として予め定められた変化率で増加するように指令値を出力するための手段とを含む、車両の制御装置。
  2. 前記検出手段は、前記自動変速機の入力軸の回転数を検出するための手段を含み、
    前記制御装置は、
    前記検出された回転数とダウンシフト後の同期回転数との回転数差を演算するための手段と、
    前記条件が成立した場合、前記演算された回転数差が予め定められた範囲内になると、前記第1の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力するための手段とをさらに含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記検出手段は、前記自動変速機の入力軸の回転数を検出するための手段を含み、
    前記制御装置は、
    前記検出された回転数とダウンシフト後の同期回転数との回転数差を演算するための手段と、
    前記条件が成立しない場合であって、前記検出された回転数差が予め定められた範囲内になると、前記第1の摩擦係合要素の係合油圧に対応する指令値が予め定められた時間だけステップ的に上昇させた後に、ステップ的に低下するように指令値を出力するための手段と、
    予め定められた指令値を初期値として前記第1の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力するための手段とをさらに含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
  4. 前記条件は、前記変速段の形成が開始されてから予め定められた時間が経過するまで、前記検出された入力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応して設定される回転数よりも低い状態が継続するという条件である、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
  5. 油圧回路に出力された指令値に基づいて供給される油圧により、解放状態の第1の摩擦係合要素が係合され、係合状態の第2の摩擦係合要素が解放されることによりダウンシフト後の変速段を形成する自動変速機を搭載する車両の制御方法であって、
    前記自動変速機の状態に関連する物理量を検出する検出ステップと、
    アクセル開度の増大により前記ダウンシフト後の変速段の形成が開始された後に、前記自動変速機の状態に基づいて変速の遅延を示す予め定められた条件が成立するか否かを判定するステップと、
    前記条件が成立すると、前記第1の摩擦係合要素に供給される油圧に対応する指令値が予め定められた時間だけステップ的に上昇させて、前記予め定められた時間が経過すると、指令値をステップ的に低下させるように出力するステップと、
    予め定められた指令値を初期値として予め定められた変化率で増加するように指令値をに出力するステップとを含む、車両の制御方法。
  6. 前記検出ステップは、前記自動変速機の入力軸の回転数を検出するステップを含み、
    前記制御方法は、
    前記検出された回転数とダウンシフト後の同期回転数との回転数差を演算するステップと、
    前記条件が成立した場合、前記演算された回転数差が予め定められた範囲内になると、前記第1の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力するステップをさらに含む、請求項5に記載の車両の制御方法。
  7. 前記検出ステップは、前記自動変速機の入力軸の回転数を検出するステップを含み、
    前記制御方法は、
    前記検出された回転数とダウンシフト後の同期回転数との回転数差を演算するステップと、
    前記条件が成立しない場合であって、前記演算された回転数差が予め定められた範囲内になると、前記第1の摩擦係合要素の係合油圧に対応する指令値が予め定められた時間だけステップ的に上昇させた後に、ステップ的に低下するように指令値を出力するステップと、
    予め定められた指令値を初期値として前記第1の摩擦係合要素が完全に係合する油圧になるまで増加するように指令値を出力するステップとをさらに含む、請求項5に記載の車両の制御方法。
  8. 前記予め定められた条件は、前記変速段の形成が開始されてから予め定められた時間が経過するまで、前記検出された入力軸の回転数が、ダウンシフト後の変速段に対応する回転数よりも低い状態が継続するという条件である、請求項5〜8のいずれかに記載の車両の制御方法。
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