JP2008212063A - 乾燥耐性ベクター、乾燥耐性能を有する植物の製造方法および乾燥耐性植物 - Google Patents

乾燥耐性ベクター、乾燥耐性能を有する植物の製造方法および乾燥耐性植物 Download PDF

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知宏 清末
Yuji Miyazaki
祐二 宮崎
Tomotaka Takase
智敬 高瀬
Hiroshi Abe
洋 安部
Masatomo Kobayashi
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Abstract

【課題】 植物への導入により、植物に乾燥に対する耐性を付与することができる新たなベクターを用いて、乾燥に対する耐性を有する植物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 LKP2遺伝子を含むベクターを、植物に乾燥ストレスに対する耐性能を付与するための乾燥耐性ベクターとして使用する。前記ベクターにおいて、LKP2遺伝子は、発現プロモーターの制御下に挿入されていることが好ましい。また、アグロバクテリウム法により植物に導入する場合には、乾燥耐性ベクターは、例えば、T−DNAの右側境界配列(RB)と左側境界配列(LB)との間に、前記発現プロモーターとLKP2遺伝子とが挿入されていることが好ましい。このような乾燥耐性ベクターをアグロバクテリルムに導入し、これを目的の植物に感染させれば、乾燥耐性能が向上した植物を作出することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、植物に乾燥ストレスに対する耐性能を付与するためのベクターで、乾燥耐性能を有する植物の製造方法、および、乾燥耐性植物に関する。
多くの植物は、水や無機物を吸収するために、土壌に根を発達させている。このため、外部が植物にとって不利な環境に変化しても、植物自身はそこから移動することができない。そこで、植物は、環境変化によるストレスに速やかに応答し、適応するシステムを備えている。しかしながら、環境ストレスの中でも、乾燥や塩分濃度の上昇によって引き起こされるストレス(水分ストレス)は、植物の生育に直接的に影響を与えることが多い。そこで、例えば、乾燥ストレスに応答する遺伝子(DREBIA)を改変し、乾燥ストレスへの応答を阻害することによって、乾燥ストレスに耐性を示す植物を作出することが試みられている(非特許文献1および非特許文献2)。
また、近年、地球の砂漠化や温暖化が深刻な問題となっており、特に、砂漠や水資源に乏しい地域においては、植物の生育が極めて困難な状況にある。このような環境問題を改善するためにも、乾燥ストレスに対する耐性能を付与し、水分の供給が困難である厳しい環境においても生育可能な植物を作出することが求められている。
Kasuga et al.,;Plant Cell Physiol.45(3):346−350(2004) Kasuga et al.,Nature Biotechnol.17(3):287−291(1999) Schultz et al.,The Plant Cell,Vol.13,2659−2670,(2001) Yasuhara et al.Journal of Experimental Botany,Vol.55,No.405,pp.2015−2027,(2004) Fukamatsu et al.,Plant Cell Physiol.46(8):1340−1349(2005)
そこで、本発明は、植物への導入により、植物に乾燥ストレスに対する耐性能を付与することができる新たなベクター、乾燥ストレスに対する耐性能を有する植物の製造方法ならびに乾燥ストレスに対する耐性能を有する植物の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のベクターは、植物に、乾燥ストレスに対する耐性能を付与するための乾燥耐性ベクターであって、LKP2遺伝子を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法は、乾燥ストレスに対する耐性能を有する乾燥耐性植物の製造方法であって、植物に、本発明の乾燥耐性ベクターを導入することを特徴とする。また、本発明の植物は、本発明の製造方法により得られる乾燥耐性植物である。
本発明者らは、鋭意研究の結果、植物体において人為的にLKP2遺伝子を発現させることによって、植物体の乾燥に対する耐性能を向上できることを見出し、本発明に到った。LKP2遺伝子は、LOV kelch protein2(以下、「LKP2」という)の遺伝子である。LKP2は、(1)青色光受容部でありタンパク質−タンパク質間相互作用に関わるLOVドメインと、(2)ユビキチンプロテアソーム系を介したタンパク質分解に関与するSCF複合体の構成因子F−box motif、および、(3)ユビキチン化の基質タンパク質の認識領域と考えられているkelch repeat、という3つのドメインからなるタンパク質である。そして、LKP2遺伝子ならびにLKP2については、以下のことが報告されている(非特許文献3〜5)。まず、LKP2を過剰発現させることで、明所下で胚軸が伸長すること、長日条件下で花芽形成が遅延すること、連続明所・連続暗所下での概日リズムが失われることが報告されている。また、LKP2全長、および、その各機能ドメイン(LOV、F−box、kelch)を過剰発現させることで、シロイヌナズナの開花時期、1個体当たりの乾燥重量、種子収量が変わること、LKP2が核内で機能し、概日時計中心振動体構成因子のTOC1(Timing of CAB1)、PRR5(Pseudo Response Regulator 5)、Di19(Dehydration inducible 19)、CO(CONSTANS)、COL(CONSTANS−Like)等と相互作用することが報告されている。しかしながら、このような機能を示すLKP2遺伝子ならびにLKP2が、植物の乾燥に対する耐性と直接的または間接的に関係する可能性は何ら報告されておらず、そのような示唆もされていない。このような技術常識の中、本発明者らは、鋭意研究の結果、メカニズムは不明であるが、植物中で人為的にLKP2を発現させることで、植物の乾燥ストレスに対する耐性能(乾燥耐性能)を向上させることを実現した。したがって、本発明のLKP2遺伝子を含む乾燥耐性ベクターや製造方法によれば、例えば、水分の供給が困難である厳しい環境においても生育可能な植物を作出することができる。このため、本発明は、農業の分野や、近年、深刻化している砂漠化等の環境問題に対しても、極めて有用な技術といえる。
<乾燥耐性ベクター>
本発明の乾燥耐性ベクターは、前述のように、植物に、乾燥ストレスに対する耐性能を付与するための乾燥耐性ベクターであって、LKP2遺伝子を含むことを特徴とする。なお、本発明において、「機能的に配置」、「機能的に結合」とは、それが意図する機能を発揮しうる状態で配置または結合していることを意味する。また、本発明において、LKP2遺伝子の発現とは、例えば、LKP2遺伝子の転写および翻訳(LKP2の合成)を含む。
本発明において、LKP2遺伝子は、例えば、ゲノムDNAの配列でもよいし、cDNA配列であってもよい。LKP2遺伝子としては、例えば、以下の(A)または(B)のDNAがあげられる。
(A)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA
(B)前記(A)において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、且つ、前記LKP2と同様の機能を有するタンパク質をコードするDNA
前記(A)のDNAは、LKP2遺伝子のCDS(LKP2のアミノ酸配列をコードする、終止コドンを含む配列)である。前記(B)において、前記塩基数は制限されないが、例えば、50塩基に対して、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個である。また、前記(B)のDNAは、LKP2と同様の機能を喪失しない範囲であれば、例えば、前記(A)のDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであってもよいし、前記いずれかのDNAとの相同性が90%以上のDNAでもよい。ハイブリダイズのストリンジェントな条件とは、例えば、当該技術分野における標準の条件があげられるが、例えば、温度条件は、各配列番号で示された塩基配列のTm値の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃である。条件の具体例として、5×SSC溶液、10×Denhardt溶液、100μg/mlサケ精子DNAおよび1%SDS中、65℃でのハイブリダイゼーション、0.2×SSCおよび1%SDS中、65℃、10分の洗浄(2回)があげられる。また、相同性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、より好ましくは97.5%以上である。
また、LKP2遺伝子は、例えば、配列番号2に示すLKP2のアミノ酸配列をコードする他の塩基配列からなるDNAであってもよい。
なお、シロイヌナズナのLKP2遺伝子ならびにLKP2の配列は、例えば、NCBIアクセッションNo.AB038797にコードされている。本発明において、LKP2遺伝子は、LKP2と同様の機能を有するファミリータンパク質(例えば、ZTL)をコードする遺伝子であってもよい。
本発明の乾燥耐性ベクターは、植物に導入された際に、LKP2遺伝子を発現するものであればよく、LKP2遺伝子以外の構造は制限されない。乾燥耐性ベクターとしては、例えば、さらに発現プロモーターを有し、前記発現プロモーターの制御下にLKP2遺伝子が挿入されていることが好ましい。この場合、乾燥耐性ベクターは、目的の植物体に導入した際に、例えば、植物体の染色体に組み込まれてもよいし、植物体の染色体には組み込まれず、植物体において独立したエピソームとして存在してもよい。前者の場合、LKP2遺伝子は、発現プロモーターの制御下に位置する状態で、植物体のゲノムに組み込まれることが好ましい。また、乾燥耐性ベクターは、植物体に導入され、組換えによって植物体の染色体に組み込まれることにより、LKP2遺伝子が発現プロモーターの制御下に配置するような構造であってもよい。この場合、前記発現プロモーターは、例えば、植物体の染色体が本来備えるプロモーターであってもよいし、予め、染色体に組み込んだ外来の発現ベクターであってもよい。
前記発現プロモーターとしては、制限されないが、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)の35Sプロモーター(P35S)、マンノピン合成酵素遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター等があげられる。本発明の乾燥耐性ベクターにおいて、LKP2遺伝子の位置は、例えば、発現プロモーターの制御下であればよく、通常、プロモーターの下流側(3’側)に機能的に配置される。
本発明の乾燥耐性ベクターは、種々のベクターにLKP2遺伝子が挿入されていればよく、前記ベクターの種類は、制限されず、例えば、後述するようなベクターの導入方法に応じて適宜決定できる。前記ベクターとしては、例えば、プラスミドベクターがあげられる。
後述するようなアグロバクテリウムを介した形質転換(アグロバクテリウム法)を行う場合は、例えば、バイナリーベクターが好ましく、これにLKP2遺伝子を挿入すれば、本発明の乾燥耐性ベクターとして使用できる。前記バイナリーベクターの種類は特に制限されないが、Tiプラスミドベクターや、T−DNAの右側境界配列(RB)と左側境界配列(LB)とを有するベクター等があげられる。このようなバイナリーベクターは、前記T−DNAのRBとLBとの間に目的のLKP2遺伝子を挿入すれば、植物に導入した際に、RBからLBの領域を植物の染色体に組み込むことができる。この場合、前述のようにRBとLBとの間には、さらに発現プロモーターが挿入され、この発現プロモーターの制御下にLKP2遺伝子が機能的に配置されていることが好ましい。LKP2遺伝子を挿入するバイナリーベクターとしては、例えば、pBE2113、pBIN19等が使用できる。また、例えば、プロトプラスト法(エレクトロポレーション法)やパーティクルガン法を行う場合には、従来これらの方法に使用されている各種プラスミドを使用することもできる。
本発明の乾燥耐性ベクターは、さらに、植物への導入の有無を確認できることから、選択マーカーをコードする配列(選択マーカー配列)を有することが好ましい。選択マーカー配列としては、特に制限されず、公知の薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー等のマーカーをコードする配列があげられる。前記薬剤耐性マーカーとしては、特に制限されず、例えば、カナマイシン耐性マーカー、ネオマイシン耐性マーカー、ゼオシン耐性マーカー、ピューロマイシン耐性マーカー、ハイグロマイシン耐性マーカー等があげられる。前記蛍光タンパク質マーカーとしては、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)、EGFP(変異型GFP:Enhanced GFP)等があげられる。これらの選択マーカー配列は、その配列にしたがってPCR等により合成してもよいし、前記選択マーカーコード配列を有する市販のベクターから調製することもできる。
<乾燥耐性植物の製造方法>
本発明の製造方法は、乾燥耐性能を有する植物の製造方法であって、植物に、本発明の乾燥耐性ベクターを導入することを特徴とする。このような製造方法により、乾燥ストレスに対して耐性を示す本発明の乾燥耐性植物を生産することができる。
本発明の製造方法においては、本発明の乾燥耐性ベクターを目的の植物に導入すればよく、例えば、ベクターの導入方法や条件等は制限されない。
本発明の乾燥耐性ベクターの導入方法は、制限されず、アグロバクテリウム法、プロトプラスト法(エレクトロポレーション法)、パーティクルガン法等があげられる。これらの導入方法は、従来公知の方法に従って行うことができる。
アグロバクテリウム法を採用する場合、例えば、以下のようにして本発明の乾燥耐性植物を生産することができる。本発明の乾燥耐性ベクターとしては、例えば、前述のような、LKP2遺伝子を挿入したバイナリーベクターが好ましい。この本発明の乾燥耐性ベクターを、Vir領域を有するプラスミドを持つアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)に導入する。そして、目的の植物体に前記アグロバクテリウムを感染させ、培地で培養を行う。この際、前述のように乾燥耐性ベクターが選択マーカー配列を有していれば、例えば、薬剤等を含有する培地で培養することによって、乾燥耐性ベクターが導入された形質転換体を容易に選択できる。このようにして得られた形質転換体は、導入されたLKP2遺伝子の発現によって、乾燥に対して耐性を示す。
本発明において、本発明の乾燥耐性ベクターを導入する目的の植物は、制限されない。具体例としては、例えば、アブラナ科の植物等があげられ、前記アブラナ科の植物としては、例えば、シロイヌナズナ、ブロッコリー等があげられる。
このようにして得られる本発明の植物(形質転換体)は、導入されたLKP2遺伝子の発現によって、乾燥に対して耐性を示す。このため、本発明の植物であれば、例えば、砂漠のような、雨量が少なく水資源が少ない地域等であっても、生育が可能である。なお、本発明において植物とは、例えば、植物体全体でも、葉、種子等の植物体の一部でもよく、また、プロトプラスト、カルス等の植物細胞であってもよい。
[実施例]
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は下記の実施例により制限されない。
シロイヌナズナにLKP2遺伝子発現ベクターを導入し、乾燥に対する耐性が向上されているか否かを確認した。
<乾燥耐性ベクターの構築>
(1)pBE2113Not/GFP−LKP2
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(L.)Heynh.accession Columbia、以下同様)のcDNAから、下記プライマーセット1を用いたPCRによって、LKP2コード領域を増幅させた。なお、下記プライマーセット1は、フォワードプライマー(配列番号3)が5’側にStuIサイトを、リバースプライマー(配列番号4)が5’側にBamHIサイトを備える。PCRによって得られた増幅物をLKP2遺伝子増幅物という。
(プライマーセット1)
フォワードプライマー(StuIサイト)
5’−GAGATCTAGACAATGAGTAAAGGAGAAGAA−3’ (配列番号3)
リバースプライマー(BamHIサイト)
5’−TCTCAGGCCTTTGTATAGTTCATCCATGCC−3’ (配列番号4)
他方、プラスミドpsmRS−GFPから、下記プライマーセット2を用いたPCRによって、S65Tで修飾されたシロイヌナズナのRS−GFP(smRS−GFP)コード領域を増幅させた(Davis SJ, Vierstra RD. 1998. Soluble, highly fluorescent variants of green fluorescent protein (GFP) for use in higher plants. Plant Molecular Biology 36, 521−528.)。なお、下記プライマーセット2は、フォワードプライマーが5’側にXbaIサイトを、リバースプライマーが5’側にStuIサイトを備える。PCRによって得られた増幅物をGFP遺伝子増幅物という。
(プライマーセット2)
フォワードプライマー(XbaIサイト)
5’−GAGAAGGCCTTATGCAAAATCAAATGGAGT−3’ (配列番号5)
リバースプライマー(StuIサイト)
5’−TCTCGGATCCGATCAAGTACTTGCAGTGGT−3’ (配列番号6)
そして、LKP2遺伝子増幅物とGFP遺伝子増幅物とをStuIで処理し、両者をライゲーションした。これにより、GFP遺伝子の下流にLKP2遺伝子が結合した断片(以下、「GFP−LKP2断片」という)が得られた。なお、図1(B)に、GFP−LKP2断片の概略を示す。同図(B)における数値は、LKP2遺伝子がコードするLKP2のアミノ酸残基数を示す。このGFP−LKP2断片をXbaIおよびBamHIで処理し、バイナリーベクターpBE2113のXbaI−BamHIサイトに挿入した。この組換え発現ベクターをpBE2113Not/GFP−LKP2という。pBE2113Notの構成の一部の概略を図1(A)に示す。同図に示すように、pBE2113Notは、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35Sプロモーターを備える発現ベクターである。同図(A)において、「E12」は、CaMVの35Sプロモーター上流領域E12配列(−419〜−90bpの2回繰り返し配列)であり、「P35S」は、CaMVの35Sプロモーターであり、「Ω」は、タバコモザイクウィルス(TMV)の5’非翻訳領域エンハンサーΩ領域であり、「NOS−T」は、ノパリン合成酵素遺伝子nos3’非翻訳領域終止シグナル(転写ターミネーター及びmRNAポリアデニル化シグナル)であり、「RB」は、アグロバクテリウムT−DNAの右側境界配列(Right Border:25bp)であり、「LB」は、前記T−DNAの左側境界配列(Left Border:25bp)である。pBE2113Not/GFP−LKP2は、前述のように制限酵素で処理したGFP−LKP2断片をpBE2113のXbaI−BamHIサイトに挿入しているため、GFP−LKP2断片が、T−DNAのRBとLBとに挟まれた構造となる。
(2)pBE2113Not/LKP2−GFP
また、GFP遺伝子とLKP2遺伝子の配置を逆にした組換え発現ベクターpBE2113Not/LKP2−GFPを構築した。これには、LKP2遺伝子用の前記プライマーセット1に代えて、下記制限酵素サイトを含むプライマーセット3を、GFP遺伝子用の前記プライマーセット2に代えて、下記制限酵素サイトを含む下記プライマーセット4を使用した。そして、同様にPCR反応を行い、LKP2遺伝子のPCR産物とGFP遺伝子の増幅産物を得た。GFP遺伝子の増幅産物をSmaIおよびNotIで処理し、バイナリーベクターpBE2113のSmaI、NotIサイトに挿入した。LKP2遺伝子のPCR産物をBamHIで処理し、これを、GFP遺伝子の増幅産物を挿入した前記バイナリーベクターpBE2113のBamHIサイトに挿入した。この組換え発現ベクターをpBE2113Not/LKP2−GFPという。
(プライマーセット3)
フォワードプライマー(BamHIサイト)
5’−AGGATCCGTATGCAAATCAAATGGAGTGGG−3’ (配列番号7)
リバースプライマー(BamHIサイト)
5’−GGATCCAGTACTTGCAGTGGTAGAAGTTGC−3’ (配列番号8)
(プライマーセット4)
フォワードプライマー(SmaIサイト)
5’−CCCGGGTACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGA−3’ (配列番号9)
リバースプライマー(NotIサイト)
5’−GCGGCCGCTTACTTGTACAGCTCGTCCATG−3’ (配列番号10)
なお、GFP遺伝子増幅物をpBE2113に挿入して、コントロール発現ベクター(LKP2遺伝子(−))を作製した。
これらの発現ベクターは、RBとLBとの間に、プロモーターP35SとLKP2遺伝子(および/またはGFP遺伝子)とが挿入され、前遺伝子は前記プロモーターの制御下に配置されている。したがって、従来公知の方法に従って、これらの発現ベクターを導入したアグロバクテリウムを植物体に感染させれば、RBからその下流に位置するLBまでの領域が、組換えにより植物体のゲノム中に組み込まれる。そして、組み込まれた発現プロモーターP35Sの制御下にあるLKP2遺伝子(および/またはGFP遺伝子)が過剰に発現することとなる。
<形質転換体の作製>
作製した各種組換え発現ベクター(pBE2113Not/GFP−LKP2、pBE2113Not/LKP2−GFP、コントロール発現ベクター)を、アグロバクテリウム法によりシロイヌナズナの植物体に導入した。なお、特に示さない限り、アグロバクテリウム法は、インプランタインフィルトレーション法(Clough SJ, Bent AF. 1998. Floral dip: a simplified method for Agrobacterium−mediated transformation of Arabidopsis thaliana. The Plant Journal 16, 735−743.)に従って行った。まず、花序の多数出来たシロイヌナズナの花茎を、前記各組換え発現ベクターを保有するアグロバクテリウムの懸濁溶液に浸し、さらに育成して種子を収穫した。そして、収穫した種子を、前記アグロバクテリウムを除去するためのカルベニシリン(100μg/mL)と、遺伝子導入植物を選択するための選択薬剤カナマイシン(50μg/mL)とを含む1/2MS寒天培地で生育させ、遺伝子(RBからLBの領域)が導入された植物体を選択した。
<水分含量測定>
選択した植物体を、1/2MS寒天培地で、22℃、白色光下(90−100μmol/m/s)の長日条件(16時間明、8時間暗)下、2週間生育させた。得られた植物体を培地から抜き取って、プラスチックシャーレに移し、22℃で放置した。そして、前記植物体における水分量の経時的な減少を確認した。具体的には、放置開始時における植物体全体の重量を100%として、これに対する各時点での植物体全体の重量の割合(%)の割合を求めた。なお、植物体全体の重量減少が少ない程(前記割合の低下が緩やかな程)、水分の減少が少なく、乾燥耐性に優れることを意味する。これらの結果を図2に示す。同図のグラフは、横軸が時間(分)、縦軸が、放置開始時の植物体全体の重量(100%)に対する各時点での植物体全体の重量の割合(%)を示す(mean±SE,n=8)。同図において、GFP(◆)は、コントロール発現ベクター(LKP2遺伝子(−))を導入した形質転換体、LKP2−GFP#1(■)および#2(▲)は、pBE2113Not/LKP2−GFPを導入した形質転換体、GFP−LKP2(●)は、pBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体の結果を示す。
同図に示すように、コントロール発現ベクターを導入した形質転換体と比較して、pBE2113Not/LKP2−GFPgおよびpBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体は、重量の減少が抑制された。つまり、植物体中の水分の減少が抑制されていることから、pBE2113Not/LKP2−GFPまたはpBE2113Not/GFP−LKP2を導入して、LKP2遺伝子を過剰発現させることによって、乾燥に対する耐性が向上したといえる。
<乾燥ストレス耐性試験>
選択した植物体をポットに植え、短日条件下で生育させた。そして、30日間育成させた後、短日条件下、水の供給を停止して生育状態を観察した。この結果を、図3に示す。図3は、所定時期における植物体の外観を示す写真である。同図において上段の写真は、コントロール発現ベクターを導入した形質転換体(GFP)の結果であり、下段は、pBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体の結果である。また、「Before treatment」は、水の供給を停止した時点の外観、「Drought 30days」は、水の供給を停止してから30日目の外観、「Drought 36days」は、水の供給を停止してから36日目の外観である。
同図に示すように、コントロール発現ベクターを導入した形質転換体(GFP)とpBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体は、水の供給を停止してから30日目までは、生育に顕著な差は見られなかった。しかしながら、36日目には、コントロールの形質転換体は、生存率が0%となったのに対して、pBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体は、26%が生存していた。このことから、pBE2113Not/GFP−LKP2の導入により、LKP2遺伝子を過剰発現させることによって、乾燥に対する耐性が向上したといえる。
また、長日条件においても同様の生育を行った。この結果を、図4に示す。図4は、所定時期における植物体の外観を示す写真である。同図において上段の写真は、コントロール発現ベクターを導入した形質転換体(GFP)の結果であり、下段は、pBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体の結果である。また、「Before treatment」は、水の供給を停止した時点の外観、「Drought 7days、13days、16days」は、水の供給を停止してから7、13、16日目の外観、「Rewater 2days」は、さらに、水の供給を再開してから2日目の外観である。
同図に示すように、コントロールの形質転換体(GFP)とpBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体は、水の供給を停止してから7日目までは、生育に顕著な差は見られなかった。しかしながら、13日目には、コントロールの形質転換体の多くにしおれが観察され、pBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体には、しおれが観察されなかった。そして、16日目には、両方の形質転換体にしおれが確認された。しかしながら、再度水の供給を開始したところ、コントロールの形質転換体は、全てが枯死したのに対して、pBE2113Not/GFP−LKP2を導入した形質転換体は、50%が回復した。これらの結果からも、LKP2遺伝子を過剰発現させることで乾燥耐性が向上していることがわかる。
本発明のLKP2遺伝子を含む乾燥耐性ベクターや製造方法によれば、例えば、水分の供給が困難である厳しい環境においても生育可能な植物を作出することができる。このようにして得られる植物は、乾燥耐性能に優れることから、本発明は、農業の分野や、近年、深刻化している砂漠化等の環境問題に対しても、極めて有用な技術といえる。
図1は、本発明の一実施例における乾燥耐性ベクターの構築の一例を示す概略図である。 図2は、本発明の他の実施例において、植物体における水分量の経時的な減少を示すグラフである。 図3は、本発明のさらにその他の実施例において、水の供給を停止した際の植物体の外観の変動を示す写真である。 図4は、本発明のさらにその他の実施例において、水の供給を停止した際ならびに水の供給を再開した際の植物体の外観の変動を示す写真である。

Claims (10)

  1. 植物に、乾燥ストレスに対する耐性能を付与するための乾燥耐性ベクターであって、
    LKP2遺伝子を含むことを特徴とする乾燥耐性ベクター。
  2. 前記LKP2遺伝子が発現プロモーターの制御下に挿入されている、請求項1記載の乾燥耐性ベクター。
  3. 前記乾燥耐性ベクターが、プラスミドベクターである、請求項1または2記載の乾燥耐性ベクター。
  4. 前記乾燥耐性ベクターが、Tiプラスミドベクターである、請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥耐性ベクター。
  5. 前記乾燥耐性ベクターが、T−DNAの右側境界配列(RB)と左側境界配列(LB)との間に、LKP2遺伝子が挿入されたベクターである、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥耐性ベクター。
  6. 前記乾燥耐性ベクターが、アグロバクテリウム法に使用するベクターである、請求項1から5のいずれか一項に記載の乾燥耐性ベクター。
  7. 乾燥ストレスに対する耐性能を有する乾燥耐性植物の製造方法であって、
    植物に、請求項1から6のいずれか一項に記載の乾燥耐性ベクターを導入することを特徴とする製造方法。
  8. 前記植物が、アブラナ科の植物である、請求項7記載の製造方法。
  9. 前記アブラナ科の植物が、シロイヌナズナである、請求項8記載の製造方法。
  10. 請求項7から9のいずれか一項に記載の製造方法により得られる乾燥耐性植物。
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