JP2008210703A - 燃料電池用アノード、膜電極接合体及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池用アノード、膜電極接合体及び燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】出力密度を向上することが可能な燃料電池用アノードと、このアノードを備えた膜電極接合体及び燃料電池とを提供する。
【解決手段】触媒を担持したカーボン粒子と、プロトン伝導性ポリマーとを以下の(1)式に示す重量比で含有する触媒層11を具備することを特徴とする。
1/2.5≦(Wc/Wp)≦1/1 (1)
但し、Wcは前記触媒を担持したカーボン粒子の重量で、Wpは前記プロトン伝導性ポリマーの重量である。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池用アノード、膜電極接合体及び燃料電池に関するものである。
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補給すれば連続して長時間発電することができるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
直接メタノール型燃料電池(DMFC:direct methanol fuel cell)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯機器用の電源として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、例えば、特許文献1〜3に記載の方式が知られている。
特許文献1,2は、燃料極表面に密接している燃料極拡散層に近接するように気体透過性層を設け、この気体透過性層に形成した流路を用いて燃料を供給することを開示している。具体的には、気体透過性層と燃料極拡散層との隙間に、液体燃料を導入し、この液体燃料が流路を流れることにより、燃料極拡散層を通して燃料極に液体燃料が供給される。
一方、特許文献3は、メタノールと水からなる液体燃料を電気浸透流ポンプを用いてアノードに供給することを開示している。
特表2005−518646 米国特許公報US6,981,877B2 米国公開公報US2006/0029851A1
本発明は、出力密度を向上することが可能な燃料電池用アノードと、このアノードを備えた膜電極接合体及び燃料電池とを提供しようとするものである。
本発明に係る燃料電池用アノードは、触媒を担持したカーボン粒子と、プロトン伝導性ポリマーとを以下の(1)式に示す重量比で含有する触媒層を具備することを特徴とする。
1/2.5≦(Wc/Wp)≦1/1 (1)
但し、Wcは前記触媒を担持したカーボン粒子の重量で、Wpは前記プロトン伝導性ポリマーの重量である。
本発明に係る膜電極接合体は、アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されるプロトン伝導性電解質膜とを具備し、
前記アノードは、触媒を担持したカーボン粒子と、プロトン伝導性ポリマーとを前記(1)式に示す重量比で含有する触媒層を具備することを特徴とする。
本発明に係る燃料電池は、触媒を担持したカーボン粒子とプロトン伝導性ポリマーとを前記(1)式に示す重量比で含有する触媒層を含むアノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されるプロトン伝導性電解質膜とを備えた膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードの複数個所に対して燃料を供給する燃料分配機構と、
液体燃料を収容すると共に、前記燃料分配機構と流路を介して接続された燃料収容部と
を具備することを特徴とする。
本発明によれば、出力密度を向上することが可能な燃料電池用アノードと、このアノードを備えた膜電極接合体及び燃料電池とを提供することができる。
本発明は、燃料電池用アノードの触媒層が、触媒を担持したカーボン粒子(以下、触媒担持カーボン粒子と称す)とプロトン伝導性ポリマーとを以下の(1)式に示す重量比で含有することにより、燃料電池の出力密度が向上されることを見出したものである。
1/2.5≦(Wc/Wp)≦1/1 (1)
但し、Wcは触媒担持カーボン粒子の重量で、Wpはプロトン伝導性ポリマーの重量である。
重量比(Wc/Wp)が1/2.5未満であると、電気伝導性の悪化による性能劣化が起こり易くなる。一方、重量比(Wc/Wp)が1/1を超えると、触媒粒子の脱落や触媒上で生成するプロトンの輸送性の輸送不足の問題が生じ易くなり、得られる燃料電池の出力密度が低下する。好ましい範囲は、1/2≦(Wc/Wp)≦1/1.5である。
上記の重量比を考慮すると、プロトン伝導性ポリマーの付着量は、電極の単位面積あたり1〜100mg/cm2が好ましく、10〜50mg/cm2がより好ましい。
重量比(Wc/Wp)は、以下に説明する方法で測定可能である。まず、触媒層が導電性多孔質基材上にある場合には、導電性多孔質基材から触媒層を剥がし採る。この触媒層に熱分析を行う。熱分析においては、昇温中、最初に触媒層から水が蒸発し、次いで、プロトン伝導性ポリマー、カーボン粒子、触媒の順に反応(酸化)が生じる。この反応による重量変化から重量比(Wc/Wp)を算出する。この熱分析の代わりに、触媒の定量分析と触媒担持率から重量比(Wc/Wp)を求めても良い。
触媒には、白金又は白金合金(例えばPtRu合金)を使用することができる。アノードにおける白金又は白金合金の担持量は、耐一酸化炭素被毒性とコストの観点から、電極の単位面積あたり0.5〜10mg/cm2が好ましく、1〜5mg/cm2がより好ましい。また、カーボン粒子には、例えば、カーボンブラック粒子を使用することができる。
プロトン伝導性ポリマーは、触媒担持カーボン粒子を導電性多孔質基材に結着させる機能と、電気化学反応によって発生するプロトンを伝導させる機能とを有する。プロトン伝導性ポリマーは、例えばデュポン社製のナフィオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸ポリマーが好適であるが、これに限定されるものではない。
プロトン伝導性ポリマーに加えて、他のバインダー樹脂を少量含有してもよいが、その場合の含有量は、バインダー成分(プロトン伝導性ポリマーと他のバインダー樹脂の合計重量)中に30重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。他のバインダー樹脂としては、プロトン伝導性を有しないフッ素系樹脂などが挙げられ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ四フッ化エチレン等の水性ディスパージョンを用いることができる。
また、触媒層には、触媒担持カーボン粒子以外に、カーボンブラックなどの導電性物質を用いてもよい。
触媒層を塗布する導電性多孔質基材としては、例えば、カーボンや導電性高分子などの繊維からなるペーパー、不織布、織布、編物や、導電性の多孔質膜などが挙げられるが、カーボンペーパーが好ましい。導電性多孔質基材の触媒層を結着(担持)させる側には、予め導電性撥水層を形成しておくことが好ましい。導電性撥水層は、カーボンブラックを含有する溶解性フッ素樹脂を導電性多孔質基材に塗布し、乾燥させるか、カーボンブラックを含有するフッ素樹脂ディスパージョンを導電性多孔質基材に塗布後に焼結させる方法により形成することができる。
アノードは、例えば、以下に説明する方法で製造される。即ち、触媒担持カーボン粒子とプロトン伝導性ポリマーとを含有するペーストを調製し、これを導電性多孔質基材上に塗布し、加熱乾燥させて、アノードを得ることが出来る。その後、必要に応じてこれに、例えば、プロトン供給性物質の溶液を含浸させ、加熱乾燥させることによって、プロトン供給性物質を有するアノードを得ることができる。しかし、アノードの製造方法は、特に、限定されるものではない。
上述したアノードは、カソードとの間にプロトン伝導性電解質膜を配置した膜電極接合体の形態で燃料電池に使用される。
カソードは、触媒粒子及びバインダー樹脂を含有する触媒層と、この触媒層が担持される導電性多孔質基材とを備える。
触媒粒子には、例えば、白金などの貴金属を使用することができる。触媒粒子は、カーボン粒子(例えばカーボンブラック粒子)に担持されていても、無担持のまま使用しても良く、触媒粒子の担持形態が任意である。
触媒層には、導電助剤としてのカーボンブラック粉末を含有させたり、電気化学反応によって発生するプロトンの伝導体となるプロトン伝導性ポリマーをバインダー樹脂として含有させることができる。なお、特定重量比のプロトン伝導性ポリマーを用いる代わりに、他のバインダー樹脂を使用可能である。
カソードは、例えば、以下に説明する方法で製造される。即ち、白金微粒子を担持させた導電性カーボンブラック粉末と、必要に応じて導電助剤としてのカーボンブラックを適宜の結着剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液やデュポン社製のナフィオン(登録商標)のようなパーフルオロスルホン酸樹脂溶液)を用いてペーストとし、これを導電性多孔質基材(例えば、東レ(株)製カーボンペーパー)上に塗布し、加熱乾燥させた後、更に、必要に応じてその上にプロトン伝導性イオン交換電解質ポリマー(例えば、デュポン社製のナフィオン)の溶液を塗布し、加熱乾燥させることによって、カソードを得ることができる。しかし、本発明において、カソードの製造方法は、特に限定されるものではない。
カソードにおいて、導電性多孔質基材の触媒層を結着(担持)させる側には、予め導電性撥水層を形成しておくことが好ましい。導電性撥水層は、アノードにおいて説明したのと同様な方法により形成することができる。なお、導電性多孔質基材には、アノードで説明したのと同様な種類を挙げることができる。
一方、プロトン伝導性イオン交換電解質膜には、公知の固体高分子膜型燃料電池に用いられているようなパーフルオロスルホン酸樹脂からなる陽イオン交換膜、例えば、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられるが、しかし、これに限定されるものではない。
本実施形態は、カソードに供給される酸化剤として空気、アノードに供給される燃料として液体燃料を使用する高分子電解質型燃料電池に適用可能である。例えば、液体燃料と酸化剤の供給をポンプなどの補器を用いて行うアクティブ型燃料電池、液体燃料の気化成分を燃料極に供給するパッシブ型(内部気化型)燃料電池、セミパッシブ型の燃料電池などが挙げられる。中でも、セミパッシブ型のDMFC、特に燃料分配機構と燃料収容部とを備えたセミパッシブ型DMFCに適用すると、高い効果を得られる。
以下、燃料分配機構と燃料収容部とを備えたセミパッシブ型燃料電池について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示す燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル2と、この燃料電池セル2に燃料を供給する燃料分配機構3と、液体燃料を収容する燃料収容部4と、これら燃料分配機構3と燃料収容部4とを接続する流路5とから主として構成されている。
燃料電池セル2は、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極/酸化剤極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン伝導性の電解質膜17とから構成される膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を有している。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体も兼ねている。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電体も兼ねている。アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は導電性多孔質基材で構成されている。
アノードガス拡散層12やカソードガス拡散層15には、必要に応じて導電層が積層される。これら導電層としては、例えばAuのような導電性金属材料からなるメッシュ、多孔質膜、薄膜等が用いられる。電解質膜17と燃料分配機構3およびカバープレート18との間には、それぞれゴム製のOリング19が介在されており、これらによって燃料電池セル(MEA)2からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。
図示を省略したが、カバープレート18は酸化剤である空気を取入れるための開口を有している。カバープレート18とカソード16との間には、必要に応じて保湿層や表面層が配置される。保湿層はカソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。
燃料収容部4には、燃料電池セル2に対応した液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部4には燃料電池セル2に応じた液体燃料が収容される。
液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、複数の燃料排出口22を有する燃料分配機構3の特徴がより顕在化するのは燃料濃度が濃い場合である。このため、燃料電池1は、濃度が80%以上のメタノール水溶液もしくは純メタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。
燃料電池セル2のアノード(燃料極)13側には、燃料分配機構3が配置されている。燃料分配機構3は配管のような液体燃料の流路5を介して燃料収容部4と接続されている。燃料分配機構3には燃料収容部4から流路5を介して液体燃料が導入される。流路5は燃料分配機構3や燃料収容部4と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構3と燃料収容部4とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。燃料分配機構3は流路5を介して燃料収容部4と接続されていればよい。
液体燃料を燃料収容部4から燃料分配機構3まで送る機構は特に限定されるものではない。例えば、使用時の設置場所が固定される場合には、重力を利用して液体燃料を燃料収容部4から燃料分配機構3まで落下させて送液することができる。また、多孔体等を充填した流路5を用いることによって、毛細管現象で燃料収容部4から燃料分配機構3まで送液することができる。さらに、燃料収容部4から燃料分配機構3への送液はポンプで実施してもよい。あるいは、燃料分散機構3から燃料電池セル2への燃料供給が行われる構成であればポンプに代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
燃料分配機構3は図2に示すように、液体燃料が流路5を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口21と、液体燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口22とを有する燃料分配板23を備えている。燃料分配板23の内部には図1に示すように、燃料注入口21から導かれた液体燃料の通路となる空隙部24が設けられている。複数の燃料排出口22は燃料通路として機能する空隙部24にそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口21から燃料分配機構3に導入された液体燃料は空隙部24に入り、この燃料通路として機能する空隙部24を介して複数の燃料排出口22にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口22には、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、燃料電池セル2のアノード(燃料極)13には液体燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配機構3とアノード13との間に気液分離膜等として設置してもよい。液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口22からアノード13の複数個所に向けて排出される。
燃料排出口22は燃料電池セル2の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板23のアノード13と接する面に複数設けられている。燃料排出口22の個数は2個以上であればよいが、燃料電池セル2の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cm2の燃料排出口22が存在するように形成することが好ましい。燃料排出口22の個数が0.1個/cm2未満であると、燃料電池セル2に対する燃料供給量を十分に均一化することができない。燃料排出口22の個数を10個/cm2を超えて形成しても、それ以上の効果が得られない。
燃料分配機構3から放出された燃料は、上述したように燃料電池セル2のアノード(燃料極)13に供給される。燃料電池セル2内において、燃料はアノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- (1)
この反応で生成した電子(e-)は集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード(空気極)16に導かれる。また、(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O (2)
上述した燃料電池2の発電反応において、発電する電力を増大させるためには触媒反応を円滑に行わせると共に、燃料電池セル2の電極全体をより有効に発電に寄与させることが重要となる。このような点に対して、燃料電池セル2に対して燃料を供給する燃料排出口が1箇所の場合には、燃料排出口近傍の燃料濃度は発電に十分な濃度となるものの、燃料排出口から離れるにつれて燃料濃度が急速に低下する。このため、燃料電池全体で見た場合の平均出力は、燃料の供給が少ない部分の影響を受けて低い値に留まってしまう。
燃料濃度を高めるための手段としては、液体燃料の供給量を増加させることが考えられる。しかし、単に液体燃料の供給量を増加させた場合、燃料排出口近傍の燃料濃度が上がりすぎて、燃料が反応することなく空気極へ流れてしまうクロスオーバーと呼ばれる現象が発生する。クロスオーバーは燃費の低下、空気極での燃料の直接反応に伴う電圧低下、それによる出力低下等の原因となる。
また、燃料極に接する面に液体燃料が流れる溝を形成し、その部分に液体燃料を流すことも試みられており、大型の燃料電池では実用化されている。しかし、この手法では溝を液体燃料が流れるにつれて、反応により燃料が順次消費されるため、燃料濃度が減少して出力の低下を十分に抑制することができない。さらに、従来は燃料を高速で流すために循環ポンプが使用されているため、装置の大型化が避けられない。
この実施形態の燃料電池1においては、上述したように複数の燃料排出口22を有する燃料分配機構3を適用している。燃料分配機構3に導入された液体燃料は空隙部24を介して複数の燃料排出口22に導かれる。燃料分配機構3の空隙部24はバッファとして機能するため、複数の燃料排出口22からそれぞれ規定濃度の燃料が排出される。そして、複数の燃料排出口22は燃料電池セル2の全面に燃料が供給されるように配置されているため、燃料電池セル2に対する燃料供給量を均一化することができる。
すなわち、アノード(燃料極)13の面内における燃料の分布が平準化され、燃料電池セル2での発電反応に必要とされる燃料を全体的に過不足なく供給することができる。従って、燃料電池1の大型化や複雑化等を招くことなく(つまり、燃料を循環させない燃料電池1の利点を損なうことなく)、燃料電池セル2で効率的に発電反応を生起させることができる。よって、少ない触媒量で十分なプロトン生成量を達成することができるため、触媒担持カーボン粒子の重量をプロトン伝導性ポリマーよりも多くする、換言すれば(Wc/Wp)が1を超えると、プロトン輸送性の低下により高い出力密度を得られなくなる。(Wc/Wp)を前述した(1)式に示す範囲に特定することにより、十分なプロトン生成量を達成しつつ、プロトン輸送性を向上することができるため、燃料電池の出力密度が向上される。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)
白金−ルテニウム合金を54重量%担持させた導電性カーボンブラック粉末触媒(田中貴金属社製TEC61E54DM)10g、パーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(デュポン社製Nafion(登録商標)溶液DE−2020CS、固形分濃度20%)90g、純水24g、1−プロパノール8g、2−プロパノール15gをサンドグラインダー分散機(アイメックス社製)においてディゾルバー撹拌翼により2500rpmで6時間分散・混合し、スラリーとしたものを撥水処理済みのカーボンペーパー上にアプリケータ塗工機により塗布し、75℃で3分間加熱して乾燥させた。この白金/ルテニウムの貴金属量は3mg/cm2であった。このようにして得られた電極板を12cm2(3cm×4cm)に打ち抜き、アノードとした。
次に、白金を70重量%担持させた導電性カーボンブラック粉末触媒(田中貴金属社製TEC10E70TPM)16g、パーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(デュポン社製Nafion溶液DE−2020)29g、純水39g、1−プロパノール31g、2−プロパノール30gをサンドグラインダー分散機(アイメックス社製)においてディゾルバー撹拌翼により2500rpmで2時間分散・混合し、スラリーとしたものを撥水処理済みのカーボンペーパー上にアプリケータ塗工機により塗布し、75℃で3分間加熱して乾燥させた。この白金の貴金属量は2mg/cm2であった。このようにして得られた電極板を12cm2(3cm×4cm)に打ち抜き、カソードとした。
このようにして得られたアノードとカソードの間にプロトン伝導性イオン交換電解質膜としてパーフルオロスルホン酸ポリマー膜(デュポン社製ナフィオン(登録商標)112)を配置し、温度150℃のホットプレスにて加熱加圧して、電極−プロトン交換膜接合体(膜電極接合体)を得、これを用いて試験用の燃料電池セルを組み立てた。
この燃料電池セルを燃料電池評価装置に組み込み、カソード側は25℃50%の空気雰囲気に調整し、またアノード側は近傍の温度が40℃になるようメタノールをポンプで適宜供給した。この条件下で測定した出力密度は、32mW/cm2であった。
(実施例2〜5)
実施例1において、白金−ルテニウム担持カーボン粒子触媒とプロトン伝導性ポリマーの重量の比(Wc/Wp)を1/1.8とする代わりに、各実施例で1/1.0、1/1.5、1/2.0、1/2.5として(白金−ルテニウムの貴金属量は実施例1と同じ)、実施例1と同様にしてアノードを作製し、これを電極として燃料電池セルを組み立てた。
このように、実施例1と同様に作製した膜−電極接合体の出力密度は、25〜30mW/cm2であった。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の白金−ルテニウム担持カーボン粒子触媒とプロトン伝導性ポリマーの重量の比(Wc/Wp)を1/0.8(白金−ルテニウムの貴金属量は実施例1と同じ)とした以外は、実施例1と全く同様に作製した電極をアノードとし、実施例1と同様に作製した膜−電極接合体の出力密度は、19mW/cm2であった(表1参照)。
(比較例2)
実施例1の白金−ルテニウム担持カーボン粒子触媒とプロトン伝導性ポリマーの重量の比(Wc/Wp)を1/0.5(白金−ルテニウムの貴金属量は実施例1と同じ)とした以外は、実施例1と全く同様に作製したが、ポリマー量が少なすぎて触媒の結着力が弱く、塗布した触媒面に触れると、触媒粉末が一部脱落してしまい、実用的な膜−電極接合体を得ることができなかった。
(比較例3)
実施例1の白金−ルテニウム担持カーボン粒子触媒とプロトン伝導性ポリマーの重量の比(Wc/Wp)を1/2.8(白金−ルテニウムの貴金属量は実施例1と同じ)とした以外は、実施例1と全く同様に作製した電極をアノードとし、実施例1と同様に作製した膜−電極接合体の出力密度は、18mW/cm2であった(表1参照)。
Figure 2008210703
上記表1から明らかな通りに、1/2.5≦(Wc/Wp)≦1/1を満たす実施例1〜5の燃料電池は、重量比(Wc/Wp)が前記範囲を外れている比較例1,3の燃料電池に比して高い出力密度を得られた。中でも、1/2≦(Wc/Wp)≦1/1.5を満たす実施例1,3,4の燃料電池の出力密度が優れていた。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、上記した説明と同様の作用効果が得られる。MEAへ供給される液体燃料の蒸気においても、全て液体燃料の蒸気を供給してもよいが、一部が液体状態で供給される場合であっても本発明を適用することができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池を示す断面図。 図1に示す燃料電池に用いられる燃料分配機構を示す斜視図。
符号の説明
1…燃料電池、2…燃料電池セル(MEA)、3…燃料分配機構、4…燃料収容部、5…流路、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…アノード(燃料極)、14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…カソード(空気極)、17…電解質膜、21…燃料注入口、22…燃料排出口、23…燃料分配板、24…空隙部。

Claims (5)

  1. 触媒を担持したカーボン粒子と、プロトン伝導性ポリマーとを以下の(1)式に示す重量比で含有する触媒層を具備することを特徴とする燃料電池用アノード。
    1/2.5≦(Wc/Wp)≦1/1 (1)
    但し、Wcは前記触媒を担持したカーボン粒子の重量で、Wpは前記プロトン伝導性ポリマーの重量である。
  2. 前記プロトン伝導性ポリマーはパーフルオロスルホン酸ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用アノード。
  3. 前記触媒は白金−ルテニウム合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用アノード。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の燃料電池用アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されるプロトン伝導性電解質膜とを具備することを特徴とする膜電極接合体。
  5. 請求項1〜3いずれか1項に記載の燃料電池用アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されるプロトン伝導性電解質膜とを備えた膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードの複数個所に対して燃料を供給する燃料分配機構と、
    液体燃料を収容すると共に、前記燃料分配機構と流路を介して接続された燃料収容部と
    を具備することを特徴とする燃料電池。
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