JP2008202942A - 核融合中性子生成装置 - Google Patents

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    • Y02E30/10Nuclear fusion reactors

Abstract

【解決手段】核融合中性子生成装置10は、重水素ガスがバックグラウンドガスとして導入された真空容器12、その中に配置された円筒形の陰極22、陰極22を挟むように真空容器12内に設けられる1対の陽極32を含み、一方の陽極32a側の真空容器12の外部には外部イオン源18が設けられる。陰極22および陽極32a,32bの内表面に、それぞれ、重水素を吸蔵した重水素吸蔵層(チタンコーティング)56が形成される。陰極22と陽極32との間の電界によってエネルギーを付与されたイオンが陽極間を往復運動するときに、バックグラウンドガスを電離して新たなイオンを発生させ、イオンを増倍する。このイオンが電極内表面に吸着されている重水素粒子に衝突して核融合を生起し、それによって中性子が生成される。
【効果】電極内表面に吸着されている重水素とイオンとによる核融合を中性子生成の主たる手段とするので、中性子生成率が向上する。
【選択図】図1

Description

この発明は核融合中性子生成装置に関し、特にたとえば燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入された真空容器と、その中に設けた1対の陽極およびその間に配置される陰極とを備える核融合装置を利用して中性子を発生する、新規な核融合中性子生成装置に関する。
たとえば、特許文献1や非特許文献1および2などで、加速器を用いた中性子生成装置が公知である。この種の中性子生成装置は、加速器から出たイオンを、燃料ガスを含んだ固体ターゲットに衝突させることによって中性子を発生する。特許文献1に開示されたものは、イオンの衝突によって生じる核破砕反応を利用するものであり、非特許文献1および2で知られたものは、イオンの衝突によって生じる核融合反応を利用する。この種の加速器型装置は大型であるので、小型化するのは難しい。
他方、小型化可能な核融合中性子生成装置として、IECF(Inertial Electrostatic Confinement Fusion)の核融合反応を利用する装置が、たとえば、特許文献2および特許文献3などで知られている。特許文献2および特許文献3に示す従来のIECFでは、いずれも、真空容器を兼ねた球状の陽極(接地電位)の中に、高い幾何学的透過率を持つグリッド状の球形陰極を同心となるように設置した構造となっていて、容器を真空排気した後に低圧(数Pa以下)の燃料ガスを充填する。そして、陰極に電流導入端子を通して高い負の電圧を印加すると電極間にグロー放電が発生し、イオンと電子が生成される。イオンは電極間の高電界により中心方向に加速されるが、陰極はグリッド状になっており高い透過率を持つため、大部分のイオンは陰極に衝突せず陰極内部の領域に達する。このようにして中心部に達した高エネルギーイオンは反対側の陰極開口部から外側に飛び出し、再び中心方向への力を受けて球中心部へと向かう。球中心部で高密度となった高エネルギーイオンが相互に衝突、あるいはバックグランドガスと衝突することにより核融合反応が発生し、それによって中性子が生成される。
なお、非特許文献3,4および5などにおいて、上記と同じ発生原理ではあるが球形ではない円筒型装置も提案されている。
特開平11−251095号公報 特開2002‐62387号公報 特開2004‐132718号公報 http://www.naka.jaea.go.jp/kyoryoku/bosyu/h18/gaiyou_fns.html プラズマ・核融合学会誌 Vol. 79 (2003), No. 3 pp.282-289(http://www.jstage.jst.go.jp/article/jspf/79/3/79_282/_article/-char/jaからダウンロード可能) Y. Iwamoto, T. Shirouzu, Y. Yamamoto, and N. Inoue, Preliminary results of cylindrical electrostatic confinement experiment, Fusion Technol., Vol. 39, (2001),pp. 552-556. Y. Yamamoto, R. Kusaba, T. Shirouzu, and N. Inoue, Effects of electrode shape on fusion reaction rate in a cylindrical electrostatic confinement device, Fusion Technol., Vol. 39, (2001), pp. 557-561. M. Daino, T. Higashi, Y. Iwamoto, and Y. Yamamoto, Study of a Compact Neutron Source using a Cylindrical Inertial Electrostatic Confinement Fusion (IECF), Proc. 19th IEEE/NPSS Symp. on Fusion Engineering, (2002).
上述のIECFの中性子生成装置では、核融合反応として空間中の反応(ビーム・ビーム反応およびビーム・バックグランド反応)を想定している。本来のIECF装置はイオン電流値の2乗に比例して増加するビーム・ビーム反応を利用することを想定しているが、発明者等の行なったシミュレーションによって、主として出力に寄与しているのは電流値に比例するビーム・バックグランド反応であることが明らかとなった。
このようなビーム・バックグラウンド反応の反応率を増加させるための1つの手法は、イオンのエネルギーを増加させることである。イオンのエネルギーを増加させるためには電極印加電圧を大きくする必要があり、そのためには放電特性上、ガス圧を低くする必要がある。また、バックグランドガスとの電荷交換反応によるイオンのエネルギー損失を低減するためにもガス圧を低くすることは有効である。しかし、ガス圧を低くすることはバックグランドガス密度を低下させることに他ならず、ビーム・バックグランド反応率は低下してしまうという矛盾が生じる。
つまり、従来のIECF型中性子生成装置では、反応率すなわち中性子生成効率を大幅に改善することが難しいという問題があった。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、核融合中性子生成装置を提供することである。
この発明の他の目的は、小型で効率のよい、核融合中性子生成装置を提供することである。
請求項1の発明は、燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入された真空雰囲気中に、対向する1対の陽極とその間に配置される陰極とを設けた、核融合中性子生成装置であって、1対の陽極間で往復運動するイオンが前記バックグラウンドガスを電離することによってイオンを増倍し、陽極と陰極との間の電界によってイオンを加速し、陰極の表面に吸着している粒子に加速したイオンを衝突させることによって核融合を生起して中性子を発生する、核融合中性子生成装置である。
請求項1の発明では、真空雰囲気はたとえば真空容器(12:実施例において対応または相当する部分を示す参照符号。以下同じ。)で形成され、この真空雰囲気中すなわち真空容器内には、たとえば重水素(D)のような燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入される。真空雰囲気中すなわち真空容器内には、1対の陽極(32a,32b)が対向して配置され、それらの間に、たとえば円筒型の陰極(22)が設置される。実施例では、陽極が真空容器とともに接地され、陰極に負の高電圧が印加される。陽極と陰極との間のこのような電位差(電界)によって、真空容器内の、たとえば重水素(D)イオンが、加速されて、陰極を挟む陽極間で往復運動する。このとき、イオンがバックグラウンドガスを電離し、新たなイオンを発生する。したがって、イオンが増倍される。
陽極と陰極との間の電位差(電界)によって、イオンが加速され、陰極方向へ移動する。その加速されたイオンが陰極の表面に吸着している粒子に衝突するとき核融合反応を生じ、それによって、中性子が発生される。
請求項1の発明では、上述のように、加速されたイオンがバックグランドガスを電離させることで新たなイオンを生成する。このイオン増倍作用により、外部イオン源から供給されるより多くのイオンが陰極(ターゲット)に衝突することになる。その結果、同一出力を期待する場合には、外部イオン源の規模を小さくすることが可能であり、ガス圧や電極間距離などの条件によっては外部イオン源そのものをなくすことも可能である。
さらに、イオンが陽極間で飛行する際、バックグランドガスを電離させる反応だけでなく、電荷交換反応も発生する。この反応では、電子がバックグランドガス分子からイオンに移動することでイオンが中性化され高速の中性粒子となる。一方、電子を奪われたバックグランドガス分子はイオンとなり、速度がほぼゼロの状態から加速され始める。そして、電荷交換により生じた高エネルギーの中性粒子は電界の影響を受けないため衝突時に持っていた運動量を保ったまま飛行を続ける。この高速中性粒子は陰極を通り抜け、反対側の陽極に衝突し、ここ(陽極表面)でも核融合反応を発生させる。したがって、反応率をさらに大きくすることができる。
さらに、IECFでは核融合反応として空間中の反応(ビーム・ビーム反応およびビーム・バックグランド反応)が想定されているのに対して、請求項1の発明では、加速されたイオンが電極に吸着あるいは吸蔵された燃料ガス粒子と衝突することによる核融合反応を利用する。したがって、実施例で採用した円筒型装置と従来のIECFとを比べれば、円筒型の形状やイオンの往復運動という点では両者は似通ってはいるものの、核融合に至る過程は全く別である。従来のIECF装置では先に説明したように矛盾を生じ、反応率の増大に限界がある。一方、この発明で利用する電極表面における反応では、電極表面に吸着または吸蔵された粒子の密度はガス圧に対する変化は少なく、また空間中の粒子数と比べても高密度に保たれており、ガス圧を低くしても反応率の低下を生じない。しかも、ガス圧を小さくすることによって印加電圧を高くとることができ、さらにイオンの平均自由行程も大きくでき、イオンエネルギーの増加という利点だけを活かして矛盾なく反応率すなわち中性子生成効率を高めることができる。
請求項2の発明は、陰極は陽極間を往復するイオンの行程を妨げないように設置される、請求項1記載の核融合中性子生成装置である。
請求項2の発明によれば、陰極が陽極間を往復するイオンの行程を妨げないので、陰極に衝突して核融合反応を発生させるまでの平均飛行距離が長くなる。その結果或る一つのイオンがバックグランドガスを電離させる確率が大きくなり、上記の増倍効果を効率的に実現できるようになる。
請求項3の発明は、燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入されている真空容器、真空容器中に対向して配置される1対の陽極、それらとは間隔を隔ててかつその主面が1対の陽極を結ぶ線に平行になるように、配置される陰極、および陰極の表面に形成され水素同位体を吸蔵している第1吸蔵層を備え、1対の陽極と陰極との間に印加した高電圧によって加速されたイオンが第1吸蔵層に存在する水素同位体と衝突することによって核融合を生起して中性子を生成する、核融合中性子生成装置である。
請求項3の発明では、真空容器(12)内に燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入され、真空容器中に、たとえば筒形状を有する陰極(22)と、その陰極の両端から間隔を隔てかつ互いに対向するように配置される1対の陽極(32a,32b)とを設置し、陰極と陽極との間に高電圧を印加する。さらに、陰極の表面に形成され水素同位体を吸蔵している第1吸蔵層(56)を備え、高電圧によって加速されたイオンが第1吸蔵層に存在する水素同位体粒子と衝突することによって核融合反応を生起し、中性子を生成する。
請求項3の発明によっても、請求項1の発明および請求項2の発明と同様の効果が期待できる。
請求項4の発明は、真空容器内にイオンを導入するための補助イオン源をさらに備える、請求項3記載の核融合中性子生成装置である。
請求項4の発明では、たとえばECRのような補助イオン源(18)を設ける。この補助イオン源からイオンを真空容器内に供給することによって、低いガス圧でも真空容器内での自己放電を維持できるので、上記した低ガス圧による利点を一層享受できる。
請求項5の発明は、1対の陽極のそれぞれの対向する表面に形成され水素同位体を吸蔵している第2吸蔵層をさらに備える、請求項3または4記載の核融合中性子生成装置である。
上述のように、イオンが陽極間で飛行する際、バックグランドガスを電離させる反応だけでなく、電荷交換反応も発生する。この反応では、電子がバックグランドガス分子からイオンに移動することでイオンが中性化され高速の中性粒子となる。その高エネルギーの中性粒子は、電界の影響を受けないため衝突時に持っていた運動量を保ったまま飛行を続け、陰極を通り抜け、反対側の陽極に衝突し、陽極表面でも核融合反応を発生させる。したがって、請求項5の発明に従って陽極の対向表面に第2吸蔵層を設けていれば、さらに効率よく中性子を生成することができる。
請求項6の発明は、吸蔵層はチタン層を含む、請求項3または5記載の核融合中性子生成装置である。
請求項6の発明によれば、第1吸蔵層(および第2吸蔵層)において大量の水素同位体を吸蔵しておけるので、反応率すなわち中性子生成効率を一層大きくすることができる。
この発明によれば、イオン増倍作用を利用し、さらに陰極表面に吸着した燃料ガス粒子とイオンとによって生じる核融合反応を主たる中性子生成手段として利用するため、中性子生成効率を矛盾なく増大させることができ、効率的に中性子を生成することができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この実施例の核融合中性子生成装置(以下、単に「装置」ということがある。)10は、真空容器12を含む。真空容器12はたとえば、ステンレスなどの金属からなる両端開口の円筒状の本体14を含み、この本体14の両端にはフランジ16aおよび16bが形成される。一方のフランジ16aには外部イオン源18が取り付けられ、他方のフランジ16bには本体14と同様にステンレスなどの金属からなる蓋20がたとえば、ボルト(図示せず)によって、取り付けられる。これによって、本体14の両端はともに密封されて真空容器12を形成する。なお、実施例の装置10では、真空容器12の本体14の直径は一例として100mmとした。そして、その真空容器12内に、真空容器12の両端に電気的に接続された陽極32(後述)および中央に陰極22(後述)を設置することによって、イオンや電子がこの真空容器12すなわち本体14の軸方向に加速力を受け、放電が行われるようになっている。
実施例のような円筒形の装置10では、後述のような色々な利点があるが、球形装置と比較して、放電部分が真空容器12の長手方向(軸方向)に偏在するため、放電による加熱が真空容器12の軸方向に均等にならない。そのため、放電中の脱ガスによる真空容器12内の圧力上昇が問題となる。特にこの実施例の装置10は、主として低ガス圧領域での補助放電を対象にしているため、このような真空度の悪化には注意を払う必要がある。そのため、実施例の装置10では、外部イオン源18や蓋20などの各接続部分の真空シールには銅ガスケットを使用するものを用い、高温でのベークアウトが行えるようにしている。
真空容器12すなわち本体14内には、たとえば、ステンレスなどの金属からなる両端開口の円筒状の陰極22が、本体14の軸方向における中心に設置される。陰極22の寸法は、一例として、外径50mmで、長さが100mmである。
なお、実験装置としてビューポート(図示せず)を設定する必要があるときには、この陰極22には、電界を乱すことなく内部の様子がビューポートを経由して観測できるよう、側面に、たとえばテンレスなどの金属製のメッシュを貼り付け、窓(図示せず)を形成するようにしてもよい。
陰極22は本体14内に、この本体14と同軸になるように、つまり、陰極22と本体14とが同心円を形成するように配置される。そのため、陰極22はその下方側面において、たとえば、セラミックのような高絶縁体からなる支持碍子24によって浮上して支持される。
陰極22の上方側面には電流導入端子26が取り付けられ、この電流導入端子26は、絶縁シース28に囲繞され、本体14に形成された孔30を通して外部に引き出される。ただし、孔30と絶縁シース28との間は上述の銅ガスケットで完全にシールされる。
本体14内には、本体14の軸方向において陰極22を挟むように、1対の陽極32aおよび32bが設置される。なお、これらの陽極を区別する必要があるときには、「32a」および/または「32b」と指称するが、区別する必要がないときは、同じ参照符号「32」を付すものとする。
陽極32は、たとえばステンレスなどの金属からなる直径80mm深さ40mmのコップ形状(有底上端開口)として形成され、開口が互いに対向するように配置される。陽極32の底部内面は、一例として、曲率半径が160mmの球の一部となるように、中央が低く周縁が高くなるように湾曲して形成される。陽極32aおよび32bは、陰極22を挟んで本体14の両端に、各底部の間隔が一例として320mmとなるように設置される。また、片側(外部イオン源18を設置する側)の陽極32aには後述するイオン源18からのイオンを供給するため、底部の中心部に引き出し用の孔34が開けられている。
この実施例における両電極22および32の形状および配置は、たとえば、先に挙げた非特許文献5などにおける二次元の定常シミュレーションによる結果から最適と結論づけられ、また3種類の陽極と3種類の陰極を組み合わせた実験により中性子生成率が最も高いことが実証された(非特許文献3)組み合わせである。しかしながら、このことは陰極や陽極の形状や配置をこのような実施例に限定することを意図したものではなく、陰極や陽極の形状や配置については任意の変形が可能である。
なお、陽極32bは、実施例では、真空容器12の蓋20に固着され、他方、陽極32aは、たとえば、ステンレスなどの金属からなる支持台36によって本体14内に固定的に支持される。したがって、2つの陽極32aおよび32bと真空容器12とは、ともに接地されるので、同電位となるが、陽極32と真空容器12とを必ずしも同電位に設定する必要はない。同電位にしない場合には、陽極32aおよび32bを、それぞれ、本体14および蓋20から絶縁した状態で保持すればよい。
なお、この実施例の装置10では、真空容器12は、図示しないが、たとえばステンレスなどの金属製の六方クロスを利用して作成した。「六方クロス」は、周知のように、中心から6方向に管(円筒部)を延長した構造となっている。6方向の内、対向する水平な2方向の円筒部は内径が100mmであり、この2つの円筒部を上述の真空容器12の本体14として用いた。また、残りの4方向の副円筒部は内径80mmであり、鉛直方向に延びる2本の円筒部に、それぞれ電流導入端子26および陰極支持碍子24を固定し、水平方向の2本の円筒部にはそれぞれビューポート、真空計および排気ポンプを接続した。ビューポートには鉛ガラスを取り付け、X線の漏洩を防ぐとともに、その鉛ガラスを通して陰極22付近の放電の様子を観測することができる。このビューポート外側にビデオカメラを設置し、遠隔モニタに様子を映し出したり、動画として記録したりするようにしてもよい。
実施例の装置10では、低ガス圧において放電を補助するため、外部イオン源18を片側の陽極32aの後方に設置した。この実施例の外部イオン源18としては、耐久性に優れかつコンパクトにできるECR(Electron Cyclotron Resonance)イオン源を用いた。このECRイオン源では磁界中にマイクロ波を入射させることでプラズマ放電を行う。なお、この外部イオン源18は、全体として、真空容器12と同じように、ステンレスなどの金属で構成されている。
この型のイオン源は本来、永久磁石を用いてコンパクトに構成することが可能であるが、磁界の調整を可能とするため、実施例では、電磁石38を用い、この電磁石38により必要な全ての磁界を得るようにした。電磁石38には、一例として、マイクロ電子製の水冷式空芯磁場コイルNMK‐18K型(コイル部外径248mm、内径80mm、長さ150mm)を使用した。コイルへの電流供給には出力電圧0‐60V、出力電流0‐50A、最大出力電力750Wの可変直流安定化電源(たとえば、高砂製作所EX‐750L2)を用いた。約30Aの電流をコイルに流すことにより必要な磁界(875G)を得ることができた。
また、マイクロ波をこの外部イオン源18の内部に供給するために、同軸端子40を用い、この同軸端子40に、たとえば、2.45GHzのマイクロ波をマイクロ波発振器(図示せず)から供給した。マイクロ波発振器としては、一例として、マグネトロン発振管を使用した高安定発振器MMG‐202VS型を用いた。この発振器は2.45GHzのマイクロ波を0‐200Wの範囲で連続可変に出力可能である。
同軸端子40は外部イオン源18の蓋42に、それの中心導体が蓋42を貫通するように、固着される。同軸端子40の蓋42を貫通した中心導体には、同じくステンレスなどの金属からなるアンテナ44が接続される。このアンテナ44は蓋42に固着され、保持される。
蓋42には、ステンレスなどの金属からなるプラズマ生成室46の内部にたとえば重水素などの燃料ガスを導入するためのガス導入管48が設けられる。同軸端子40から入力されたマイクロ波がアンテナ44から放射され、プラズマ生成室46において共鳴することによって、ガス導入管48から導入された重水素ガスが電離され、イオンが生成される。そのため、プラズマ生成室46の内部にはマイクロ波が共鳴するような寸法設計がなされる必要がある。このECRタイプのプラズマ源では、プラズマ生成室46のガス圧が約1Paで100W程度のマイクロ波を導入すると1017‐1018/m程度のプラズマ密度になると考えられている(石川順三,イオン源工学,(アイオニクス株式会社,1986))。
プラズマ生成室46で生成されたプラズマからイオンを引き出すために、多孔式の引き出し電極50を用いた。この引き出し電極50には、引き出し電圧端子52が接続され、この端子52には、たとえば、パルス電子製の直流高電圧安定化電源装置HDV‐5K60ST(出力電圧範囲0−±5kV)から、引き出し電圧が印加される。引き出し電圧に対して陽極32は正電位となりイオンが出づらくなることが懸念されるため、引き出し電極50の引き出し口54は陽極32aの底部より2mm程度飛び出した形状となっている。そして、プラズマ生成室46で生成され、引き出し電極50の引き出し口54から真空容器12すなわち本体14内にイオンが導入されることによって、後述のように、真空容器12内に必要な荷電粒子が供給され続けるため、低ガス圧運転が可能とされている。
なお、イオンは磁界に沿って運動するためソレノイド38の磁界の影響を受けて引き出し電極50の内壁に衝突し、効率的に引き出すことができない。そのため引き出し電極50を純鉄により制作し、電極内部への磁界の侵入を避けるようにしている。
このような構造の核融合中性子生成装置10においては、燃料ガスとして重水素Dを用いる。燃料ガスのDは、いずれも図示しないが、ボンベより圧力調整器、マスフローコントローラー、手動バルブを介してECRイオン源18を通して真空容器12すなわち本体14内に供給される。このマスフローコントローラーは供給するガスの質量流量を制御することが可能であり、最大10sccmから最小0.2sccmまでの範囲で最大誤差1.5%で制御可能である。
また、真空容器12内の真空排気はターボ分子ポンプとロータリーポンプによって行われる。ターボ分子ポンプには、たとえば一例として、排気能力50L/sec(N)の日本真空技術株式会社製UTM−50を用い、ロータリーポンプには、一例として、108L/minの排気能力をもつアルカテル製M2005を使用した。この排気装置で、最高真空度1.0×10−5Paに到達することが可能である。
実験においては、マスフローコントローラーの供給ガス量を設定することにより希望するガス圧に到達させるが、1Pa以上の高ガス圧に設定する場合には、排気能力がガス供給量を上回るため、真空容器とターボ分子ポンプ間のゲート弁の開度を調整することによって、排気能力を制限した上でガス供給量を調整する。
陰極22に電流を供給するための電源装置(図示せず)としては、一例として、パルス電子株式会社製の直流高電圧安定化電源HDV−50K40STを用いた。この電源装置は定電圧・定電流制御いずれも可能であり、電圧設定値は0−50kV、電流設定値は0−40mAの範囲で連続可変である。実施例では、陽極32を接地電位とし、陰極22にたとえば‐45kVの負電圧を印加することによって、陰極22に電流を導入する。また、電源装置からの高圧ケーブル(図示せず)と真空容器12の電流導入端子26の間にはサージ吸収用の保護抵抗(90Ω)が挿入されている。なお、電源装置からの出力電圧、電流値はモニタ端子より出力され、後述するデータロガーを用いて記録される。
核融合反応により生成された中性子の計測には、He(n;p)T反応を利用したHe比例計数管を用い、真空容器内のガス圧測定には定温度型ピラニ真空計および熱陰極型メタル電離真空計を用いた。さらに、各部の温度計測のために熱電対を利用した。そして、各測定データは、データロガーを経由してコンピュータに記録した。なお、このデータロガーによりガス圧や温度だけでなく、上述した電源装置の出力電圧・電流値も記録されるが、詳細は不要につき、いずれも省略する。
従来、IECF装置における核融合反応の発生機構としては上述のようにビーム・ビーム反応およびビーム・バックグランド反応が主要に考えられてきた。しかし、最近の研究により、陰極表面における核融合発生量も無視できない量となることが明らかとなってきている。外部イオン源18を用いる図1実施例の装置10においては、後述するように、低ガス圧化によりイオンの平均自由行程が延び、陰極22に到達するイオンの平均エネルギーが増加するという結果が得られた。このことにより、陰極22の表面における核融合反応に着目すると、この低ガス圧領域におけるイオンの平均エネルギー増加を中性子生成率に反映させることが可能であると期待できる。しかし、過去の研究では陰極の材質としてステンレスやモリブデンなどが用いられ、表面における反応は、陰極に高エネルギーで衝突したときに埋め込まれた(embedded)燃料ガス粒子に、高エネルギーの粒子が衝突して発生すると考えられている。そのため、電極表面における反応率はその電極を用いてそれ以前に行われた放電の履歴にもよるとされ、不確定な要因を含んでいる。
一方、チタン等の化学的に活性な材質に吸着された燃料ガス粒子をターゲットとすることで表面のターゲット密度を非常に大きくすることが期待できる。その値を概算すると、チタン原子の原子半径は約140pmであり六方細密構造をとることから、表面のチタン原子密度は約6×1019/m、吸着された重水素原子の密度は約1.2×1020/mとなる。温度300Kの理想気体密度が1Paにて約2.4×1020/mであることから、チタンによる吸蔵層では、厚みわずか1原子分が1Paのガス25cmに相当するターゲット密度を理想的には確保できることを意味している。そこで、図1に示すこの発明の実施例の核融合中性子生成装置10においては、陰極22の内表面(および陽極32の内表面)に、チタンによる重水素吸蔵層(チタンコーティング)56を形成し、主としてこの重水素吸蔵層56に吸着されている重水素粒子に対する核融合によって中性子を生成するようにした。
ただし、実施例ではこの吸蔵層56に重水素を吸蔵させたが、他の水素同位体粒子を吸蔵させるようにしてもよい。
発明者等の実験では、電極22の表面へのチタンのコーティングには、IECF装置本体とは別に設けた真空容器中に設置したステンレス製電極の近傍でチタンフィラメントを点灯させることによる蒸着方法を採用した。この方法では蒸着用の真空容器からIECF装置本体に電極を移動させる際に大気に晒されることになり、不要なガスを吸着してしまう危険を伴う。それを避けるためにはIECF装置内にチタンフィラメントを挿入して蒸着する方法も考えられるが、その方法では各電極近傍にフィラメントを設置することが形状的に困難であり、かつ碍子などにもチタンが付着して絶縁性の悪化を引き起こす恐れもある。電極近傍にフィラメントを設置できるようにポートを設けても蒸着終了後にフィラメントを撤去する必要が、また不要箇所への蒸着防止にマスキング等を施してもその除去の必要があるため、結局大気開放せざるを得なくなる。そのため、別容器内で蒸着する方法を採用した。なお、大気開放時の不要ガスの吸着を極力避けるため、重水素雰囲気中にて蒸着操作を行うことにより蒸着されたチタンを重水素で飽和させることとした。
蒸着用の真空容器としては、主円筒部の内径254mm高さ345mmのステンレス製六方クロスを用いた。そして、六方クロスの主円筒部が垂直方向になる状態で設置し、その真空容器中に重水素ガスを導入した。蒸着源には、一例としてチタン合金フィラメントを用いた株式会社アルバック製のチタンゲッタポンプPGT‐3F型を流用した。このポンプは、270Wで30秒通電、60秒休止サイクルの定格使用で寿命が75時間のチタン合金フィラメントを使用しており、実施例では定格運転で、陽極32および陰極22のそれぞれの内表面にチタンを蒸着した。
陽極32への蒸着は、図2に示すように、フィラメント中心と陽極底部との距離がたとえば52mmとなるように陽極を設置した状態で行った。また、高エネルギー粒子は陰極の内壁に衝突することが期待されるため、陰極22への蒸着の際には、図3に示すように陰極22の内部にフィラメントが配置されるように陰極をつり下げた状態で行った。
電源装置出力を48Aの定電流とし、30秒間通電60秒間休止を合計100分間繰り返した。電源装置を定電流制御としているためフィラメントの温度上昇とともに抵抗値が増加することによって電圧が上昇するので、電圧は必ずしも一定ではないが、実験では、通電時の電圧平均値は4.5Vであった。ここで使用したフィラメントの定格は通電時に270Wであるが、実験では、48A×4.5V=216Wであり、投入電力は定格の約80%であった。また、各サイクルにおいて通電開始より10秒程度経過後にガス圧は少し上昇し、その後通電終了後5秒程度経過するまで下降を続け、再び上昇して定常圧(約0.086Pa)に達する。この通電開始後最初のガス圧上昇はフィラメントそのものに吸着されていたガスが放出されたためであり、その後の低下は蒸着されたチタンが重水素ガスを吸着する(本来のゲッタポンプとしての働き)ためであると考えられ、電極表面に重水素飽和状態のチタンの層が形成されていると判断することができる。
次に、フィラメントのメーカーよりゲッタポンプの仕様として公表されているデータより、電極表面に蒸着されたチタンの密度を推計する。実験で用いたチタンゲッタポンプPGT‐3Fの排気特性において、ガス圧の低い領域では排気速度は一定となり、その値はチタンの蒸発速度に依存せずゲッタ表面積のみに(正確には排気導管のコンダクタンスにも)依存することがわかる。これは、低ガス圧領域では単位時間あたりゲッタ壁面に形成される蒸着膜面で吸着することの出来る分子数が壁面に到達する分子数を上回っているため、(排気速度)=(ゲッタ壁面に到達する分子数)となるからである。逆にガス圧の高い領域では排気流量が一定となり、その値はゲッタ表面積ではなく蒸発速度に依存することがわかる。これは、形成される蒸着膜面で吸着することのできるより多くのガス分子が膜面に到達するため、排気速度が蒸着膜面の形成速度すなわち蒸発速度により決定されるからである。この流量が一定となるガス圧領域で使用すれば蒸着されたチタンは雰囲気ガスにより飽和された状態となる。
このときの単位時間あたりに蒸着されたチタンにより吸着されるガス量を計算する。なお、時間あたりフィラメントから放出されるチタン原子数は使用とともに減少していくが、実験における蒸着時間はフィラメント寿命(3000サイクル)に対して十分短いため、サイクルあたりの平均蒸発量は一定と仮定する。標準サイクル(30秒通電60秒休止)を繰り返すことによる排気流量はゲッタポンプの仕様より約3.5×10−1PaL/sであることがわかる。したがって、単位時間あたりに蒸着したチタンに吸着される分子は、次の数1で与えられる。
Figure 2008202942
ただし、R,Nはそれぞれ気体定数、アボガドロ数である。
フィラメントは螺旋状であるが、粒子が等方的に放出される線光源であると近似し、また蒸着対象物はフィラメント長さL=170mmに対して十分小さいと考えると、フィラメントからの距離rの位置において単位時間あたり吸着されるガス密度は上で計算したUを用いてU/(2πrL)=8.0×1016/r/(ms)となる。陽極32については、フィラメント中心から高エネルギー粒子の衝突が最も期待できる陽極中心底部までの距離を上述のように52mmとなるように設置した。そのため、陽極中心底部への吸着速度は1.5×1018/(ms)であり、100分間の蒸着では面密度9×1021/mが期待できる。
陰極22に対する蒸着工程では、図3に示すように、フィラメントが陰極内部にくるように設置した。陰極内径が46mmであるため、吸着速度は3.5×1018/(ms)となる。形状的な制約から陰極中心軸とフィラメント中心とを一致させることはできなかったが、平均値は一致する。このとき、100分間の操作で平均面密度2.1×1022/mが期待できる。以上から、陽極32および陰極22ともに、表面に吸着された重水素密度は十分であるといえる。
ここで、実験の結果を説明する前に、電極22および32の表面における反応率がガス圧の変化に伴うエネルギー分布の変化により受ける影響についてシミュレーションコードを用いて評価する。その後、電極表面における反応を増加させる具体的方法として電極表面をチタンで蒸着コーティングする方法を採用した場合の図1の実施例の円筒形中性子生成装置10による核融合反応率を評価する。
1次元粒子シミュレーションによって、電極表面におけるビーム粒子と吸着された残留ガス粒子との反応を見積もった。電極表面はチタンによる重水素吸蔵層56でできており、チタン原子1個につき2個の重水素原子が吸着されていると仮定し、その密度は先に計算したとおり約1.2×1020/mとなる。
この電極表面における核融合反応率の評価では実験結果との比較を念頭に置いているため、図4に示すとおり、電極の大きさも実験装置に合わせることとした。実験装置については先に詳しく説明したが、陰極長10cm、陽極間距離32cmの軸方向収束型円筒形装置を用いたため計算でもr=5cm、r=16cmとした。ただし、rは球形装置の場合の陰極半径、rは同陽極半径を意味する。実験には円筒形装置を用いたため、球対称1次元の解析とは結果が異なる可能性もあるが、以下に示す検討を加えた結果、問題はないと判断した。
問題となる可能性のある球形と円筒形との相違点としては、電位形状の違い、粒子の収束形状の違い、そして陰極の扱いの違いが挙げられる。これらの点について検討すると、まず1点目について、電極間の真空電位は球対称系では1/rに比例するのに対しイオンの受ける力が軸方向の円筒系では直線状になる。しかし、核融合反応のほとんどがビーム・バックグランド反応によりもたらされ、その反応は陰極周辺で最も頻繁に起こっていること、陰極内部の電位は平坦であることが、発明者等が過去に行ったIECF装置の解析結果より明らかとなっていることから、電極間の電位形状の違いは問題にはならないと考える。そもそも陰極表面における反応について議論する際には印加電圧が問題であり、電極間の電位形状は問題とならない。2点目については、イオンが球中心に収束する場合はイオン速度が一定であれば密度は1/rに比例して増加するのに対し、円筒軸上を直線状に運動する場合にはイオン密度は一定である。しかしながら、イオン密度が影響を与えるのはビーム・ビーム反応率であり、これは対象としている電流領域では無視できるため、これも問題にはならない。3点目について、球形装置を対象とする計算では簡単な陰極モデルにより幾何学的透過率をイオンエネルギーに対する関数として数値計算によって求めた。対して、円筒形装置の解析では空間座標が2次元あるいは3次元のコードを用いてイオンの軌道を計算することでしか正確な透過率を求めることはできない。しかし、イオン源から供給されたイオンは最終的には陰極に衝突するため、この実施例での主要反応であるビーム・吸着粒子反応に着目する限りイオン供給電流と加速(印加)電圧が同じであれば装置形状の相違による結果の違いはないと考えることができる。これらの理由から、以下の評価においては、球形と円筒形とで本質的な違いはないと考え、便宜的に、球対称座標を採用したシミュレーションコードを用いた計算を実行した。
図5および図6に、それぞれ印加電圧Vc=−45kV、−90kVの場合の、ガス圧に対する各種中性子生成率の変化を示す。実施例で使用した電源装置の最大出力電圧が−50kVであり、通常最大−45kVで使用しているため、計算でも印加電圧45kVの場合と、その倍の場合とについて解析した。電流の低い領域ではビーム・ビーム反応以外による中性子生成率は電流値に比例するため、Iassistは5mAの場合に限定して計算し、縦軸は電流値で規格化した中性子生成率を示している。これらの図5および図6において示されているのは、ビーム・バックグランド反応による中性子生成率NPRBN、陰極表面に吸着された粒子とビーム粒子との反応による中性子生成率NPR、陽極表面における反応NPRの組み合わせであり、各線は両電極ともステンレス製(NPRBN)、陰極表面のみチタン(NPRBN+NPR)、陽極表面のみチタン(NPRBN+NPR)、両電極表面ともチタン(NPRBN+NPR+NPR)の場合をそれぞれ想定している。なお、グラフに示されているより高いガス圧(Vc=−45kVの場合のP>0.5Pa、Vc=−90kVの場合のP>0.2Pa)においてはグロー放電におけるP‐V曲線より上の領域になってしまうため時間とともに粒子数が増大を続ける状態となり、計算維持ができなかった。
これらの図5および図6より、電極表面における反応を考慮しない場合と両電極とも考慮した場合とでは、中性子生成率の最大値にV=−45kVの場合には約4倍、V=−90kVの場合には約3倍の差があることがわかる。また、低ガス圧では陰極22の表面における反応が増加、高ガス圧では陽極32の表面における反応が一旦増加して0.2Paにて最大値をとるが、それ以上のガス圧では減少する。ガス圧の低下に対して陰極表面における反応は増加するが、0.01Pa以下では或る値に収束していることもわかる。
陰極22の表面で吸着された粒子と反応を起こすのはイオンが主要であり、衝突するイオン電流とイオンエネルギーが陰極表面における反応に影響を与える。ガス圧の低下とともにイオンのバックグランドガスとの衝突頻度は少なくなり、十分低くなればイオン源より供給される電流がそのまま陰極に流れるイオン電流となり衝突イオン電流は一定となる。また、ガス圧の低下とともに陰極に衝突するイオンのエネルギーは増加するが、その値はせいぜい印加電圧までであり、結果として低ガス圧領域である値に収束するのである。このことは、イオンの平均寿命が0.001Pa以下である値に収束するという結果と一致する。イオン源から供給されたイオンがバックグランドガスと全く衝突せずに陰極に衝突する、すなわちP=0と仮定した場合の中性子生成率NPRC−maxは次式で表される。
Figure 2008202942
ここで、q,σ,nはそれぞれD の電荷=1.6×10−19C、核融合反応断面積、電極表面のD密度である。この式より計算されるNPRC−maxは、Vc=−45kV,−90kVの場合にそれぞれ2.8×10/s、1.1×10/sとなり、放電電流の計算結果がそれぞれの場合にIIEC=30mA,41mAであったので、計算結果から得られた収束値とほぼ一致する。
また、イオンが飛行する際、バックグランドガスを電離させる反応だけでなく、電荷交換反応も発生する。この反応では電子がバックグランドガス分子からイオンに移動することでイオンが中性化され高速の中性粒子となる一方、電子を奪われたバックグランドガス分子はイオンとなり、速度がほぼゼロの状態から加速され始める。このような電荷交換により生じた高エネルギーの中性粒子は電界の影響を受けないため衝突時に持っていた運動量を保ったまま飛行を続ける。ここで、陰極22は円筒形で粒子の飛行を妨げない形状となっているため高速中性粒子は陰極22を通り抜け、反対側の陽極32に衝突し、陽極32の表面においても核融合反応を発生させる。
次に、図1に示す実施例の装置10を用いた結果について述べる。実験では0.5Pa以下の低ガス圧領域においてECRイオン源18を作動させ、アシステッドグロー放電を行った。その結果、ガス圧が最低0.01Paになるまで放電を維持することができた。この限界値は排気ポンプ手前のゲートバルブを全開としても、要求されるガス供給量がマスフローコントローラーの最小分解能以下となり、ガス圧を一定に保てなくなるため定常的な放電が不可能となることによるものであり、給排気系の最適化によりさらに低いガス圧での放電は可能であると思われる。また、放電電流はグロー放電では電源装置の最大出力電流である44mAまで流すことができたのに対し、アシスト放電では最大7mA程度までしか流すことはできなかった。ここで、図7に印加電圧−45kV、陰極22および陽極32a,32bともにチタンコーティング(重水素吸蔵層56)を施した場合の各ガス圧に対する放電電流に対する中性子生成率の測定結果を示す。この図7より、中性子生成率は計算結果と同じく電流に対して直線的に増加することがわかる。
以上の結果より、計算結果の解析と同様に中性子生成率を放電電流値で規格化しても問題ないことがわかる。陰極22、陽極32をそれぞれについてステンレス製、チタンコーティングされたステンレス製の2通りずつ、計4通りの電極の組み合わせについて中性子生成率の計測を行った。図8に計測された中性子生成率を放電電流によって規格化した値のガス圧に対する変化を、4通りの電極の組み合わせに対して示す。この図8は計算結果を示した図5と比較されるべきものである。両結果を比較すると、全体的に値が2‐5倍ほど実験結果の方が小さいものの、中性子生成率の最大値は両電極ともチタンコーティングを施すことにより約3倍に増加していることがわかる。さらに、陰極22のみをチタンコーティングした場合の中性子生成率はガス圧の低下とともに増加する傾向を示しており、計算結果から得られた傾向と一致する。これは、ガス圧の低下によりイオンの電荷交換によるエネルギー損失が減少し、陰極に衝突するイオンの平均エネルギーが増加するためである。一方、陽極32にチタンコーティングを施したことによる中性子生成率の増加はほとんど見られず、陽極32のみにコーティングした場合には若干ではあるが両電極ともステンレス製を用いた場合より少ないという結果となった。これは、先に説明したとおり陰極22と陽極32への蒸着時間を共に100分にしたため、相対的に蒸着源より遠くなった陽極の方が重水素の表面密度は少ないことも理由の1つであろうが、最大の原因は電子ビームの照射により陽極表面に吸着された重水素が放出されてしまったことであると考えられる。
また、両電極ともステンレス製とした場合の結果は比較的各点がまとまっているのに対して、陰極22をチタンコーティングしたものにした場合はばらつきが大きくなっている。これは電極表面のチタンに吸着されるガス密度が温度にも依存するため、放電による温度変化の影響を受けているのではないかと推察できる。
次に、真空容器内部のイオンのエネルギー分布や電離反応の頻度、それらのガス圧に対する依存性等について、発明者等が行った粒子シミュレーション結果をもとに補足する。
発明者等が行なったグロー放電についての解析の結果、ガス圧を低下させることにより高電圧を印加できる特性を有することが分かった。また、ガス圧低下により電荷交換反応に関する平均自由行程が延び、イオンの加速距離が延長されることにより核融合反応断面積の大幅な増加が見込めることも分かった。
このような理由から、低ガス圧化が中性子生成率の向上に有効であると考えられるが、一方でガス圧が低くなるほど放電を維持するための電離反応による荷電粒子の供給が不足し、放電が不安定となり維持できなくなるという問題が発生する。そこで、図1の実施例では、ECRイオン源18を設置し、荷電粒子を供給することで放電をアシストするようにした。
このようなアシステッド放電をシミュレーションにより検討する際、打ち込むイオン種としてはD を、打ち込みイオン電流(=アシスト電流Iassist)は時間的に変化しない定常電流を、空間的に陽極表面より一様に入射される状態を仮定した。検討の結果、イオン源18よりイオンを入射して放電を補助することによりP−V曲線より下の、グロー放電が持続しない領域においても放電の持続が可能であることが明らかとなった。
そこで、次に、このようにして可能となった低ガス圧運転により電荷交換の頻度が減少し、それに伴うエネルギー損失がどの程度減少するのかを検討する。
検討のために、陰極内部のイオンエネルギー分布を1.印加電圧に相当するエネルギーを持つイオン、2.ごく低いエネルギーを持つイオン、3.両者の間のエネルギー領域に存在するイオンの3つに分類し、その生成機構を考える。
1.印加電圧に相当するエネルギー(たとえば印加電圧が60kVであれば60keV)をもつイオン
これらのイオンは陽極32から入射したイオンが電界により加速され、途中でバックグランドガスと衝突することなく陰極22内部まで到達したものである。ガス圧の低下とともにこのイオンの数は増加しており、バックグランドガスとの衝突によるエネルギー損失が改善されている。
2.ごく低いエネルギー(たとえば、< 1keV)に多数存在するイオン
図1の実施例の装置の解析では、印加電圧がたとえばV=60kVの場合、1.2keV以下のエネルギーをもつイオンは陰極22を通過できないため、これらのイオンは陰極外部から飛来したものではなく内部で生成されたものと考えられる。陰極内部の電位はほぼ平坦であり、この領域で生成された荷電粒子のエネルギーは非常に小さなものとなる。また、ガス圧が解析を行ったなかで最も低いときでもこれらのイオンの数は上記高エネルギーイオンの数より多くなっているが、これは速度が遅いため長時間この領域(陰極内部)にとどまり、密度が高くなるためである。
3.両者の間のエネルギー領域に分布しているイオン
これらは陽極‐陰極間にて高エネルギー粒子とバックグランドガスとの衝突により生成されたものが、その生成場所と陰極との電位差に相当するエネルギーを得たものと解釈できる。これらのイオンはやはり低ガス圧ほど少なく、高ガス圧ほど多くなっている。
このようなD のエネルギーに関する考察により、低ガス圧になるほどエネルギー損失が少なく高エネルギーを有するイオンの割合が高くなっていくことが確認された。
次に、低ガス圧化によるもう1つの利点と考えられる、高エネルギーイオンの循環(往復)回数の増加によるイオン電流値増倍効果、および電離反応によるイオン増倍効果についてシミュレーション結果をもとに考察する。
この循環回数の増加を評価する1つの指標として粒子の平均自由行程を用いることが考えられる。この平均自由行程λはバックグランドガス密度をn、反応断面積をσとして通常は、数3のように定義される。
Figure 2008202942
しかしながら、σはエネルギーの関数でありここで対象としている粒子はそれぞれそのエネルギーを場所や時間によって変化させるため、それらが一定の条件を仮定している上式を単純に適用することはできない。また、バックグランドガスとの反応が無視できるほど小さなガス圧領域では陰極への衝突が粒子の閉じこめ程度を決定する主要因になってくると考えられ、この影響をも含めた評価が必要となってくる。そこで、計算の際に各追跡超粒子の生成場所、消滅場所、生成から消滅までの粒子の総移動距離Lを記録し、Lの平均値/L(「/」は平均値記号)を平均自由行程に代わる正確な平均寿命として求め、バックグランドガスとの反応と陰極への衝突を総合的に考慮した閉じこめ性能の評価を行った。
図9に、陰極22の幾何学的透過率Tgおよび印加電圧Vを幾通りかに変化させた場合の、D の平均寿命/Lのガス圧に対する変化を示す。ガス圧が0.1Pa以上の高い領域ではTgおよびVの差による影響は小さく、1/Pにほぼ比例する。すなわち、このガス圧領域では式3による評価が成り立っており、イオンが消滅する主要な要因がバックグランドガスとの衝突によるものであることがわかる。先に指摘したように各粒子のエネルギーにより式3の値は変化するはずであるが、定電圧を印加していること、およびエネルギー変化に対する電荷交換に関する反応断面積の変化が10keV以下の領域では小さいため結果として式3が適用できたものと考えられる。
一方、低ガス圧では/Lの値は飽和し、ある値に漸近していくことがわかる。この値はTgが高いほど大きくなっているため、このガス圧領域におけるイオンの消滅の主要因は陰極への衝突であると考えることができる。つまり、イオンの消滅要因が低ガス圧では陰極への衝突、高ガス圧ではバックグランドガスとの反応であることが分かった。
各粒子のエネルギーとともにその量もまた、核融合反応率に影響を与える要因として挙げられる。これは高エネルギーイオンの循環によって増加する一方、それらとバックグランドガスとの反応により新たなイオンが生成されることによっても増加する。これがすなわちイオンの増倍効果である。そこで装置内粒子数のガス圧変化に対する推移を印加電圧がV=−60kVの場合について、Tg=0.92 および0.98の場合について図示したものが図10(A)(B)である。
この図10より、Tgの値によらずガス圧が0.1Pa程度を境にそれ以下ではガス圧の低下とともに、それ以上ではガス圧の上昇とともに粒子数が増加する傾向があること、装置内の高エネルギー粒子の大部分が外部より供給されているD であるが、その割合はガス圧の増加とともに減少していることがわかる。また、Tgの違いが粒子数へ与える影響は、0.1Pa以下のガス圧領域の方が顕著であることがわかる。そして、この低ガス圧域におけるTgが0.92の場合と0.98の場合の粒子数の比は、平均寿命/Lの比に等しく、/Lのガス圧に対する変化と同様にガス圧の低下とともにある一定値に漸近していくことがわかる(図9参照)。すなわち、ガス圧が0.1Pa以上の領域ではバックグランドガスとの反応による増倍効果が顕著となるため陰極幾何学的透過率Tgの影響は比較的小さく、逆にそれ以下の圧力領域では粒子の長寿命化による循環効果が有効となり幾何学的透過率が大きな影響を与えるようになってくることが明らかとなった。
このように、図1に示す実施例の装置10では、図10に示すように往復によるイオン電流増倍効果と電離反応による増倍効果があるので、外部イオン源18を使わない完全密閉型の中性子生成装置も実現可能である。つまり、加速されたイオンが上述のようにバックグランドガスを電離させることで新たなイオンを生成する。この作用によりイオン源から供給されるより多くのイオンが陰極(ターゲット)に衝突することになる。その結果同一出力に対するイオン源の規模を小さくすることが可能であり、ガス圧や電極間距離などの条件によってはイオン源そのものを省略することも可能である。
以上説明したように、従来のIECF装置においては低ガス圧化によりイオンの平均自由行程が延び、イオンの平均エネルギーが増加するにも拘わらず、ターゲットとなるバックグランドガス密度の低下により中性子生成率そのものは減少してしまったところ、実施例の装置10においては、低ガス圧化によるイオンエネルギーの増加を中性子生成率に反映させるため、電極表面に吸着されたガス粒子との反応に着目し、この反応率を増加させるための具体的方法として電極表面を吸着率の高いチタンで蒸着コーティングする方法を採用し、シミュレーション、実験の両面から検証を行った。
シミュレーションによる解析結果より、
(1)陰極表面における反応率がガス圧の低下によるイオンエネルギーの増加とともに増加し、最終的に0.1Pa以下ではある値に収束する。
(2)陽極表面における反応率は、0.1Pa以上の高ガス圧領域で高エネルギーイオンとバックグランドガスの電荷交換により生じた中性粒子による反応により増加する。
(3)放電電流あたりの中性子生成率の最大値が最大約4倍に増加する。
ことが示された。
次に図1に示す実施例の装置を用いた実験的検証を行った。電極にチタンをコーティングする方法としてゲッタポンプに使用されるチタンフィラメントを流用し、真空容器中で電極表面にチタン膜を蒸着しながら同時に重水素で飽和させることで不要なガスの吸着を極力避ける方法を採用した。陰極22、陽極32それぞれについてステンレス製電極とチタンコーティングを施した電極とを置き換えた計測を行った結果、
(1)陰極表面において発生していると考えられる中性子生成率のガス圧に対する変化は計算結果と同様の傾向(ガス圧の低下に伴い増加)を示した。
(2)放電電流あたりの中性子生成率の最大値も約3倍に増加することが確認された。
このように、図1に示す実施例の核融合中性子生成装置10では、シミュレーションによっても、さらに実証実験によっても、陰極22および陽極32の内表面に形成した重水素吸蔵層56に吸着されている重水素によって効率的に中性子が生成されることが分かった。
ただし、実施例では陰極および陽極の両方に重水素吸蔵層(チタンコーティング)56を形成したが、少なくとも陰極22にこれを形成すればよく、陽極32には形成しなくてもよい。なぜなら、陰極を挟んで2つの陽極間で移動するイオンビームは殆ど全てが陰極22の中空部を通過するので、中性子生成には陰極22の重水素吸蔵層56がより多く寄与しているからである。
また、実施例では、陰極22は円筒形状として説明したが、真円ではなくたとえば楕円形あるいは長円形などの円筒形、さらには、たとえば4角形のような角筒形の陰極が用いられてもよい。いずれの場合も、イオンなどの粒子が陽極間で往復移動する行程を妨げないようにするために、主表面(実施例で言えば重水素吸蔵層56を形成している表面)が軸方向すなわち陽極32を結ぶ線に沿うように配置する必要がある。
さらに、陰極は、1枚またはそれ以上の枚数の平板電極であってもよい。この場合も主表面(重水素吸蔵層56を形成している表面)を陽極32同士を結ぶ線に沿うように配置する必要があることはもちろんである。
このような陰極の形状や配置を採用することによって、イオンビーム透過率が向上するだけでなく、陰極の構造がシンプルで堅牢であり、取り扱いが容易である。また、筒状または板状の陰極は、メッシュまたはグリッド状陰極に比べて熱容量を大きくすることが可能であり、陰極の過熱への対策が比較的容易、長寿命化も期待できる。ただし、このことは図1実施例においてメッシュまたはグリッド状陰極を排除する意味ではなく、先に述べたようにイオンの飛行を妨げないように配置するのであれば、メッシュまたはグリッド状陰極の使用も可能である。この場合は、メッシュまたはグリッド状陰極の主面(重水素吸蔵層を形成している)が軸線と平行に成らないこともあり得る。
さらに、実施例のような筒型装置では、核融合反応の発生領域が円筒軸上となるため、たとえば陰極の長さによっては線光源を形成でき、線源と容器壁までの距離が近いため強い中性子束が得られる。しかも、この場合には、電流導入端子26はイオンビームの通路(陰極内部)外にあるため影響が少ない。
また、ECRプラズマ装置のような外部イオン源18を用いたので、そこから真空容器内にイオンを供給することによって、陰極22と陽極32との間の距離にもよるが、真空容器内ではたとえば0.6Pa以下の低ガス圧でも放電が十分維持できる。そのため、ガス圧を低くすることで高電圧の印加が可能となり、イオンの平均自由行程すなわち加速距離の延長により平均エネルギーが増加するので、イオンによる電極内表面に吸着保持されている重水素原子との核融合が効率的に生起され、中性子生成率が向上する。
ただし、外部イオン源18は必須のものではなく、外部からイオン供給することなく、真空容器内でたとえばグロー放電によって生成したイオンだけを利用するようにしてもよい。この場合には、上で説明したイオン増倍効果により、必要量のイオンを供給することができる。
また、実施例の装置は低ガス圧運転を指向したものであるが、必ずしも低ガス圧領域での運転でなくてもよい。その場合には、エネルギーの損失が大きくなるので、イオン自体のエネルギーが小さくなることも考えられるが、イオン・バックグラウンドガスによる中性子生成率が低ガス圧領域に比べて大きくなるので、全体としての生成率を大きく損なうものではない。
なお、実施例のように陽極を真空容器の一部として兼用してもよいし、真空容器を陽極とは完全に別部材で構成することも可能である。
さらに、実施例では燃料ガスを重水素とし、D−D反応(D+D→He+n,D+D→T+p)による2.5MeV中性子線を発生させたが、それ以外の燃料を用いることで異なる種類の核融合反応を発生させることも可能である。たとえば重水素と三重水素の混合とした場合にはD−T反応(D+T→He+n)による14.1MeV中性子を発生させることが可能であり、重水素とHeを用いた場合にはD−He反応(D+He→He+p)による14.7MeV陽子を発生させることが可能である。また、従来の空間中における反応を利用するIECF装置において重水素―He混合ガスを用いた場合にはD−He反応だけでなくD−D反応も同時に起こってしまうが、実施例ではこれを避けD−He反応のみを起こすことが可能である。すなわち、チタンはヘリウムなどの不活性なガスに対しては吸着性を示さないため、予め重水素のみを真空容器内に導入し電極表面に重水素吸蔵層を形成し、真空排気した後にHeガスのみを導入することで電極表面に重水素、空間中にはHeガスという状態を作り出すことができる。この状態ではイオンとして加速されるのはHeのみであるため、上記のD−Heのみを発生させることができる。
図1はこの発明の一実施例であるIECFを利用する中性子生成装置を示す構造図解図である。 図2は図1実施例における陽極の内表面にチタンコーティング(重水素吸蔵層)を形成する工程の一例を示す図解図である。 図3は図1実施例における陰極の内表面にチタンコーティング(重水素吸蔵層)を形成する工程の一例を示す図解図である。 図4は図1実施例におけるシミュレーションのための真空容器と電極配置を示す図解図である。 図5は図1実施例において、−45kVの放電電圧を与えたときのガス圧の関数としての放電電流によって正規化した中性子生成率(計算)を示すグラフである。 図6は図1実施例において−90kVの放電電圧を与えたときのガス圧の関数としての放電電流によって正規化した中性子生成率(計算)を示すグラフである。 図7は図1実施例において、印加電圧を−45kVとし、陰極および陽極ともにチタンコーティングを施した場合の各ガス圧における放電電流に対する中性子生成率(実測)を示すグラフである。 図8は図1実施例において、印加電圧を−45kVとし、陰極および陽極の4通りの組み合わせについてガス圧の関数としての放電電流によって正規化した中性子生成率(実測)を示すグラフである。 図9は図1実施例において、イオンの平均寿命とガス圧との関係(計算)を示すグラフである。 図10は図1実施例において、ガス圧と粒子数との関係(計算)を示すグラフであり、図10(a)は陰極の幾何学的透過率Tgが0.92のときを示し、図10(b)は陰極の幾何学的透過率Tgが0.98のときを示す。
符号の説明
10 …核融合中性子生成装置
12 …真空容器
14 …本体
18 …外部イオン源
22 …陰極
32,32a,32b …陽極
56 …チタンコーティング(重水素吸蔵層)

Claims (6)

  1. 燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入された真空雰囲気中に、対向する1対の陽極とその間に配置される陰極とを設けた、核融合中性子生成装置であって、
    前記1対の陽極間で往復運動するイオンが前記バックグラウンドガスを電離することによってイオンを増倍し、
    前記陽極と前記陰極との間の電界によってイオンを加速し、
    前記陰極の表面に吸着している粒子に前記加速したイオンを衝突させることによって核融合を生起して中性子を発生する、核融合中性子生成装置。
  2. 前記陰極は前記陽極間を往復するイオンの行程を妨げないように設置される、請求項1記載の核融合中性子生成装置。
  3. 燃料ガスがバックグラウンドガスとして導入されている真空容器、
    前記真空容器中に対向して配置される1対の陽極、
    前記真空容器中において前記1対の陽極の間に、それらとは間隔を隔ててかつその主面が前記1対の陽極を結ぶ線に平行になるように、配置される陰極、および
    前記陰極の表面に形成され水素同位体を吸蔵している第1吸蔵層を備え、
    前記1対の陽極と前記陰極との間に印加した高電圧によって加速したイオンが前記第1吸蔵層に存在する前記水素同位体と衝突することによって核融合を生起して中性子を生成する、核融合中性子生成装置。
  4. 前記真空容器内にイオンを導入するための補助イオン源をさらに備える、請求項3記載の核融合中性子生成装置。
  5. 前記1対の陽極のそれぞれの対向する表面に形成され水素同位体を吸蔵している第2吸蔵層をさらに備える、請求項3または4記載の核融合中性子生成装置。
  6. 前記吸蔵層はチタン層を含む、請求項3または5記載の核融合中性子生成装置。
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