JP2008200011A - 細胞内移行性ペプチド、それを含有する医薬組成物及びその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リソソームでの分解を受けずに薬物をその活性を保ったまま細胞質へ移行させることができる細胞内移行性を有するペプチドを提供する。また、該ペプチドを用いて細胞内に薬物を移行させる方法を提供する。
【解決手段】特定な配列で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該アミノ酸配列において1または2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有する細胞内移行性ペプチド、またはこれらアミノ酸配列を部分配列として包含する細胞内移行性ペプチド、またこれらペプチドと薬物とを含有する医薬組成物。
【選択図】なし
【解決手段】特定な配列で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、該アミノ酸配列において1または2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有する細胞内移行性ペプチド、またはこれらアミノ酸配列を部分配列として包含する細胞内移行性ペプチド、またこれらペプチドと薬物とを含有する医薬組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、細胞内移行性を有するペプチド、該ペプチドと薬物とを含有する医薬組成物および該ペプチドをキャリアとして薬物を細胞内に移行させる方法に関する。
近年、ゲノム・プロテオーム解析の進展に伴い、ペプチド、タンパク質、核酸、糖などの高分子化合物を用いて細胞内機能の制御を行おうとする試みがなされている。しかしながら、これらは既存の低分子薬物と比較し高い分子量を持つものが多く、また親水性の特徴を持つため、単独では細胞内に移行することは出来ず、細胞内に導入し作用を果たさせることは困難であった。
これらの問題を解決するために現在までに様々な試みがなされている。これらの中にはエレクトロポレーション、リポソームを用いた膜融合法、リン酸カルシウムによる核酸の導入、インビトロでの単独細胞を標的としたマイクロインジェクションなどがある。しかし、これらの方法はいずれも細胞内移行の際に細胞障害性を示し、また効率も十分ではなかった。さらに生体内で用いる場合にはインビトロでの効率と比較しさらに効率が低下し、現在までに十分な効果を果たさせることは出来ていない。
生体内でも有効な方法として、感染性のウイルスや、改変ウイルスを用いた方法が提案されているが、これらの方法には潜在的に感染の危険性があり、また、送達させる薬物の導入効率などの問題があり、十分な成果は示されていない。
近年、新しい方法として細胞透過性ペプチド(CPPs)または細胞内移行性ペプチドと呼ばれる細胞内移行性を持つペプチドを用いた方法が試みられている。CPPsは細胞膜への親和性、細胞内移行性を持つペプチドの総称で、HIV-1ウイルスの転写因子の一部であるTATタンパク質やショウジョウバエ由来のAntennapedia、ヘルペスウイルス由来のVP22、また高い塩基性を持つオリゴアルギニンなど多数のCPPsが現在までに知られている。これらのペプチドを送達させたい薬物と化学的または遺伝子工学的に連結することにより連結した薬物の細胞内移行効率を上昇させうることが報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、これらの細胞内移行性ペプチドの細胞内移行効率は、導入環境・細胞種、ペプチドの種類により大きく異なることが報告されている(非特許文献2)。また、既存の細胞内移行性ペプチドは、短いものでも10アミノ酸残基以上の特定の配列を必須条件とする。薬物の薬理活性に影響を与えずに細胞内移行性を付与するためには、より分子量の小さなキャリアが望まれている。
さらに、これまで報告されている細胞内移行性ペプチドはアルギニン、リシン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸の含有率が高いものが多い。塩基性アミノ酸の含有率が高いと、薬物とのコンジュゲート形成時に薬物の生物学的活性に影響を与える傾向が強く、また非特異的な親和性が高まるため、凝集性の上昇や非特異的な吸着、生体内でのタンパク質分解酵素への感受性の増加など、目的とする細胞内移行の妨げになる傾向がある。
さらに、これまでに知られている細胞内移行性ペプチドの多くは、細胞外から細胞内への移行は確認されているものの、細胞質への移行に関しては明確に示されていない。一般的に、細胞内にエンドサイトーシス等により取り込まれた薬物は、細胞内の物質分解構造体であるリソソームと小胞に包まれたまま融合し、分解されることが知られており、細胞内移行したすべての薬物が細胞質中へ移行するわけではない。細胞内に移行した薬物が十分な薬理活性を示すためには、薬物のリソソームでの分解を回避し、細胞質への移行効率を高めることが求められている。
HIV-1ウイルス由来のTatペプチド(特許文献1)など一部のペプチドに関しては、細胞質への移行性が検討されているが、これらの検討は組織化学的観察による細胞内の局在の確認にとどまっており、細胞内に移行したペプチドおよび薬物の薬理活性が受ける影響に関しては明らかでない。また、Tatペプチドの検討では、多くの臓器、細胞を比較した包括的な報告はなく、組織、臓器ごとの条件を限定した報告が別々のグループよりなされているのみであり、実際の利用可能範囲に関しては明らかではない。
近年、様々な細胞、臓器、組織への細胞内移行性を持つペプチド配列を見出すことを目的として、ランダムなペプチドを提示するファージペプチドライブラリーを用いる研究が行われている。この手法では、特定の細胞への親和性を示すペプチドのスクリーニングのみならず、生体に投与してスクリーニングを行うインビボ・スクリーニングも行われている。例えば、特定の腫瘍細胞にインビボで親和性を持つペプチドの探索(非特許文献3)や、腸管からの移行性に優れたペプチドのスクリーニング(特許文献2)などが報告されているが、これらは細胞内への移行性等に関して詳細な検討を行っていない。また、ファージライブラリーに細胞障害性を持たせることで細胞内に移行し作用するペプチド配列を探索する研究(特許文献3)もなされているが、この研究においても特定の細胞や特定条件下での移行性を確認しているのみであって、得られたペプチドの応用範囲、効率に関しては明確ではない。以上のように、すべての細胞において万能に利用出来る細胞内移行性ペプチドについては、まだ報告されていない。
特許第2869396号公報
特許第3830525号公報
特開2006−219435号公報
グプタ ビー(Gupta B)、他2名、「細胞透過性ペプチドやタンパクを持いた高分子と小さな粒子の細胞内送達(Intracellular delivery of large molecules and small particles by cell-penetrating proteins and peptides.)」、アドバンス ドラッグ デリバリー レビュー(Advance Drug Delivery Review)、2004年、第57巻、第4号、ページ637〜651
ジョリオット エー(Joliot A)、他1名、「細胞透過性ペプチド:技術から仕組みまで(Transduction peptides: from technology to physiology.)」、ネイチャーセルバイオロジー(Nature Cell Biology)、2004年、第6巻、第3号、ページ189〜196
ジェシカ アール(Jessica R)、他4名、「マウスにおけるヒト腫瘍細胞の可視化のための生体内ファージスクリーニング(In vivo selection of phage for the optical imaging of PC-3 human prostate carcinoma in mice)」、ネオプラシア(Neoplasia)、2006年、第8巻、第9号、ページ772〜780
本発明の目的は、リソソームでの分解を受けずに薬物をその活性を保ったまま細胞質へ移行させることができる細胞内移行性を持つペプチドを提供することにある。また、該ペプチドを用いて、細胞内に薬物を移行させる方法を提供することにある。
上記の課題を克服するために、本発明者らは、ランダムペプチドファージライブラリーをもちいて、HeLa細胞内への移行性を有し、かつ細胞内での分解を受けずに細胞質に移行するペプチドのスクリーニングを行い、目的とする細胞内移行性を有するペプチドを取得した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)以下の(A)、(B)または(C)のいずれかのペプチド。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド。
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列、または配列番号1で表されるアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失もしくは挿入されたアミノ酸配列を部分アミノ酸配列として含有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド。
(2)(1)に記載のペプチドと薬物とを含有する医薬組成物。
(3)(1)に記載のペプチドをコードする核酸。
(4)(1)に記載のペプチドをキャリアとして用いて細胞内に薬物を移行させる方法。
(1)以下の(A)、(B)または(C)のいずれかのペプチド。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド。
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列、または配列番号1で表されるアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失もしくは挿入されたアミノ酸配列を部分アミノ酸配列として含有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド。
(2)(1)に記載のペプチドと薬物とを含有する医薬組成物。
(3)(1)に記載のペプチドをコードする核酸。
(4)(1)に記載のペプチドをキャリアとして用いて細胞内に薬物を移行させる方法。
本発明のペプチドは、アミノ酸残基が少なくて分子量が小さく、かつ塩基性アミノ酸の含有が少ないので、薬物の活性に影響を与えず薬物に修飾を行い、薬物の細胞内への移行性を高めることが可能である。
また、本発明のペプチドは、リソソームでの分解をを受けずに薬物を細胞質へ移行させる効率が高いので、薬物をその活性を保ったまま細胞内に移行させるキャリアとして使用することが出来る。
本発明のペプチドは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド(A)、または配列番号1に表されるアミノ酸配列において、1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド(B)、またはこれらのアミノ酸配列を部分アミノ酸配列として含有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド(C)である。
本発明において、細胞内移行性とは、細胞の外部と内部を隔てる細胞膜を通過し、細胞外部から細胞内部へ移行しうることを表わす。細胞の外部から内部への移行の経路としては特に限定されるものではないが、細胞膜の直接通過、エンドサイトーシス、ファゴサイトーシス、ピノサイトーシスによる移行、細胞膜のポア形成に伴う通過が例に挙げられる。細胞の種類は、脂質2重層により構成される細胞であればよく、菌類などの原核細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞などの真核細胞のいずれの細胞でも良い。好ましくは哺乳類の細胞であり、さらに好ましくは内皮細胞、上皮細胞であり、例を挙げると血管内皮細胞、口腔上皮細胞、消化管粘膜上皮細胞、胃上皮細胞、小腸上皮細胞、大腸上皮細胞、皮膚上皮細胞、子宮内膜上皮細胞、卵管上皮細胞などがある。
ペプチドが細胞内移行性を有するか否かは、例えば実施例3に示す方法を用いて評価することが出来る。すなわち、評価するペプチド配列を呈示するfUSE5ファージを作製し、実施例3に示す条件でHeLa細胞に反応させ、抗ファージ抗体および蛍光標識2次抗体を用いてファージを染色し、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて検出を行った場合に、反応に用いた細胞の70%以上において細胞の内部にファージに由来する蛍光の輝点が認められる場合に、そのペプチドは細胞内移行性を有すると判断出来る。
本発明のペプチドを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸か合成アミノ酸かに関わらず、カルボキシル基とアミノ基を持つ分子であればよく、ヒドロキシル化、リン酸化、あるいはグリコシル化等の生体内で通常見られる翻訳後修飾をされたアミノ酸であってもよい。好ましくは、哺乳類細胞内に通常存在する天然アミノ酸およびその光学異性体である。例を挙げると、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、アスパラギン酸(Asp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、プロリン(Pro)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、メチオニン(Met)、システイン(Cys)、フェニルアラニン(Phe)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、イソロイシン(Ile)などからなるアミノ酸である。
本発明の配列番号1に表されるアミノ酸配列において、1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有するペプチド(B)において、置換、欠失、挿入または付加されるアミノ酸の数は、1個であることが望ましい。また、置換、欠失または挿入により変異した配列において、もとのアミノ酸配列の連続する3つ以上のアミノ酸の並びが保存されていることが好ましく、連続する5つ以上のアミノ酸の並びが保存されていることがさらに好ましい。
また、本発明は、上述の配列番号1に表されるアミノ酸配列、または配列番号1に表されるアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を部分配列として含有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド(C)を含む。例えば、本発明の実施例で示されるように、ペプチドのスクリーニングにおいて用いられたfUSE5ファージの外殻タンパクpIIIとの融合ペプチドが、好適に用いられる。また、生理活性を有するペプチド医薬品と本発明のペプチドの両方の配列を含有するペプチドも好適に用いられる。
また、上述の配列番号1に表されるアミノ酸配列、または配列番号1に表されるアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列のいずれか同一もしくは異なる複数のアミノ酸配列を複数箇所に部分配列として含有するペプチドは、より高い細胞移行性を有するので、さらに好ましい。これらのアミノ酸配列が連結部なく直接連結したアミノ酸配列、またはこれらのアミノ酸配列は10個以下の連結アミノ酸配列を介して連続してタンデムにつながったペプチドは、特に好ましいペプチドである。
また配列番号1に表されるアミノ酸配列、または配列番号1に表されるアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を部分配列として含有し、かつ細胞内移行性を有する本発明のペプチド(C)の分子量は限定されるものではないが、分子量が大きい場合は細胞内移行性が低下する可能性があるので、好ましくは分子量が3万以下、もっとも好ましくは1万以下である。実施例で示すとおり、本実施例で使用したfUSE5ファージは本発明のペプチド1つを含有するpIIIタンパク質を5つ有しており、細胞内移行性を示している。
なお、本発明でいうペプチドとは、2つ以上のアミノ酸がアミド結合で連結された物質を広く意味しており、数十から数百あるいは数千のアミノ酸が連結したような通常タンパク質と呼ばれる物質を含む。
本発明のペプチドは、一般的な化学合成法により製造することが出来る。製造する方法には、通常の液相法及び固相法によるペプチド合成法が含まれる。かかるペプチド合成法としては、より詳しくは、所望のアミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法が挙げられる。本発明のペプチドの合成は、これらのいずれによることもできる。
上記ペプチド合成に採用される縮合反応は、公知の各種方法に従うことができる。その具体例としては、例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)、ウッドワード法等を例示できる。これら各方法に利用できる溶媒は、この種ペプチド縮合反応に使用されることがよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等またはこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸やペプチドにおけるカルボキシル基は、例えばメチルエステル、エチルエステル、第三級ブチルエステル等の低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル等のアラルキルエステル等のエステル化により保護することができる。また、側鎖に官能基を有するアミノ酸であるTyrの水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第三級ブチル基等で必要に応じて保護されてもよい。更に、例えばArgのグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、2−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。上記保護基を有するアミノ酸、ペプチド及び最終的に得られる本発明のペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応も、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸等を用いる方法等によって、実施することができる。
その他、本発明のペプチドは、遺伝子工学的手法を用いて常法により調製することもできる。例を挙げると、本発明のペプチドをコードする遺伝子が挿入された組換えDNAにより形質転換又は形質導入された宿主細胞を用いて、本発明のペプチドを調製する方法や、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽等を用いた無細胞タンパク質合成系を用いて本発明のペプチドを調製する方法であるが、これに限らない。
上記のようにして得られる本発明のペプチドは、通常の方法によって精製することができる。例えば、イオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用されている方法を、適宜選択することができる。
また、本発明のペプチドは、生物学的に活性な薬物と共にこれらを含有した医薬組成物として用いることが出来る。医薬組成物内の本発明のペプチドと薬物は、コンジュゲートを形成していることが好ましい。ここでいう「コンジュゲート」を形成しているとは、2つ以上の物質が同時に動きうる状態を意味する。例えば、その物質間が共有結合により結合しているもの、イオン結合により静電的に結合しているもの、また化学結合が存在しない場合であっても立体構造により他方がもう他方の動きを制限し共に動きうる状態にしたものも含まれる。例えば、本発明のペプチドを表面に修飾したミセル、リポソーム、高分子などの微粒子の中に生物学的に活性な薬物が封入されているものも「コンジュゲート」を形成している医薬組成物に含まれる。より好ましくは、本発明のペプチドと生物学的に活性な薬物とが、強い化学結合で結ばれているものであり、なかでも共有結合で結ばれているものが好ましい。例えば、ペプチド中のアミノ基、カルボキシル基やシステインのもつチオール基と本発明のペプチドとが共有結合により結合している医薬組成物が好ましい。
本発明の医薬組成物に含まれる薬物の種類としては、タンパク質に限定されるものではなく、実際に臨床使用されているものあるいは臨床使用が期待されているもの等を幅広く利用できる。好ましくは、消化管などの生体バリアの透過性に乏しいペプチド、タンパク質、核酸または遺伝子である。また、薬物の分子量が大きい場合は細胞内に移行するのに障害となる可能性があるので、薬物の分子量は500000以下であることが好ましく、より好ましくは分子量が30000以下である。本発明の医薬組成物に含まれる好ましい薬物としては、例えば、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、インスリン、アンジオテンシン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、ガストリン、成長ホルモン、プロラクチン(黄体刺激ホルモン)、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)、サイトトロピックホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、プロチレリン、黄体形成ホルモン(LH)、コルチコトロピン、ソマトロピン、チロトロピン(甲状腺刺激ホルモン)、ソマトスタチン(成長ホルモン刺激因子)、視床下部ホルモン(GnRH)、G−CSF、エリスロポエチン、HGF、EGF、VEGF、アンジオポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン類、スーパーオキサイドジムスターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、リゾチーム、ワクチン等が挙げられ、好ましくはインスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インターフェロン類、インターロイキン類、G−CSFである。
また、本発明のペプチドは、細胞内での薬理活性の評価等を目的として用いられるウイルス、ファージ、細菌、細胞などとのコンジュゲートとしても用いることが出来る。
本発明のペプチドとタンパク質をコンジュゲートとする場合には、融合タンパク質としてもよい。本発明のペプチドを融合する位置としては、本発明のペプチドが融合対象のタンパク質の外側に提示されており、かつ融合による対象タンパク質の活性、機能への影響が低いことが好ましく、対象タンパク質のN末端またはC末端に融合することがより好ましい。融合させる対象のタンパク質の種類は特に限定されるものではないが、対象タンパク質の分子量が極端に大きい場合は細胞膜を通過するのに障害となる可能性があるので、対象タンパク質の分子量は500000以下であることが好ましく、より好ましくは分子量が30000以下である。
本発明のペプチドとの融合タンパク質の製造は、一般的な化学合成法により行うことが出来る。例を示すと、本発明のペプチドとインスリンを混合し縮合剤を添加して結合させる方法や、ペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems Medel 433)を用いる方法が挙げられる。また、塩基配列情報に基づいて遺伝子工学的手法を用いて常法により製造することも出来る。例を挙げると、タンパク発現プロモーターを有する遺伝子発現ベクターに本発明の細胞内移行性ペプチドおよび融合させるタンパク質をコードする塩基配列を組み込み製造する方法を用いることができる。
本発明の医薬組成物の形状としては、本発明のペプチドと薬物に加えて、薬学的に許容される添加剤を含む粉末形態、水等の媒体および該媒体以外の薬学的に許容される基剤との混合物等を含む液状形態、薬学的に許容される基剤との組み合わせにより固形化または半固形化した形態等が挙げられる。前記基剤としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機物質が挙げられ、例えば賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、吸収促進剤等が挙げられる。
経口投与のためには、本発明のペプチドと薬物を含む組成物を腸溶性のカプセルや粘膜付着性のヒドロキシプロピルセルロースやスマートハイドロゲル(poly(methacrylic acid) grafted with poly(ethylene glycol) P(MAA-g-EG))などに包含した医薬組成物とすることが、消化酵素によるペプチドおよび薬物の分解回避の上でとくに好ましい。
また、本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸も含む。具体的には、本発明のペプチドを発現しうるプラスミドベクター、ウイルスベクター、ファージミド、トランスポゾンなどである。本発明のペプチドとの融合タンパク質をコードする組換え核酸も含まれる。
また、この組換え核酸は、例えば、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドとの融合タンパク質の工業的生産や、体内より取り出した生体由来の細胞への本発明のペプチドをコードする発現ベクターの導入、体内に本発明のペプチドを投与し、体内の細胞に本発明のペプチドまたは融合タンパク質を発現させることなどに、好ましく用いられる。特に、生体外にて本発明のペプチドまたは本発明のペプチドとの融合タンパク質を生産する方法として好適に用いられる。
本発明において用いる「組換え核酸」とは、人工的に作成されたDNAまたはRNAを表す。これはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシルなどの核酸を結合させ合成したものや、生物に含まれるDNAまたはRNAの一部を切り出し一部塩基を除去、他の塩基と結合などの修飾により作成したもの、またそれらを複製したものも本発明の「組換え核酸」に含まれる。
本発明は、本発明のペプチドをキャリアとして用いて細胞内に薬物を移行させる方法を含む。ここでいう薬物は、本発明の医薬組成物に含まれる薬物として上記するものと同様である。また、細胞および細胞内への移行とは、本発明のペプチドの細胞内移行性の説明として上記するものと同様である。
本発明のペプチドをキャリアとして用いて細胞内に薬物を移行させる方法としては、上記のように、本発明のペプチドと薬物とを共に含有した医薬組成物とし、これを生体内に投与する方法が挙げられる。医薬組成物としては、本発明のペプチドと薬物とが、例えば融合タンパク質として、コンジュゲートを形成している医薬組成物を用いることが好ましい。
本発明のペプチドを含む医薬組成物を生体内に投与することによって細胞内に薬物移行させる方法としては、例えば注射により生体内に投与し細胞内に移行させる方法、経口投与、経肺投与、経鼻投与、点眼投与などがあげられる。
特に、本発明の実施例では、本発明のペプチドを提示するファージをHeLa細胞内に感染性を保ったまま送達し、回収できることを示している。HeLa細胞は子宮頸癌由来の上皮系腫瘍細胞である。このことは、本発明のペプチド、本発明のペプチドのアミノ酸配列を含有する生理活性ペプチド、または本発明のペプチドを含有する医薬組成物を、子宮頸癌を構成する細胞内に生理活性を保ったまま移行させることができる。すなわち、例えば、このペプチドと腫瘍細胞にアポトーシスを誘導することの出来る薬物を連結することで、有効な治療方法とすることが期待出来る。
また、同様に、実施例に示すように、本発明のペプチドは、腸管由来細胞Caco−2細胞内への移行能を有する。このことは経口投与等の方法で腸管へ投与した本発明のペプチド、および本発明のペプチドを含む医薬組成物が腸管内での長い滞留性と、腸管壁の細胞への高い集積性とが期待され、腸管からの吸収を促進させる目的や、腸管の炎症に用いることが出来る。
また、同様に実施例において本発明のペプチドは血管内皮細胞内への移行能を有することが明らかである。このことは、腫瘍部位の腫瘍血管をターゲットとした治療法や、動脈硬化等の治療を目的として血管内皮細胞に作用させる薬物のターゲッティングへの応用が期待出来る。
また、上記の細胞種に限定されず、その他の細胞への集積性も期待出来、インビボ、インビトロ問わず細胞への薬物集積性を高める用途に利用することが期待出来る。
また、生体外において本発明のペプチドをキャリアとして用いて細胞内に薬物を移行させることも出来る。例を挙げると、培養プレート内にて培養されている細胞に本発明のペプチド、または本発明のペプチドと薬物を添加することで、培養細胞内に薬物を移行させることができる。ここで用いる細胞の種類に制限は無いが、真菌細胞や酵母などの単細胞生物、多細胞生物より単離された初代培養細胞、株化された株化細胞などを用いることができる。特に、実施例で示すように、子宮頚癌由来細胞株、大腸由来細胞株、血管内皮細胞へ薬物を効果的に移行させることができる。
以下本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1 細胞内移行性ファージのスクリーニング
<方法>
〔1〕HeLa細胞の調製
スクリーニングに用いたHeLa細胞(ヒト子宮頸部癌由来細胞株)は、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM培地を用いて12穴培養プレート中にて24〜48時間培養し、細胞を接着させた。細胞は、使用直前にリン酸生理緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、ファージを含む溶液を添加した。
<方法>
〔1〕HeLa細胞の調製
スクリーニングに用いたHeLa細胞(ヒト子宮頸部癌由来細胞株)は、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM培地を用いて12穴培養プレート中にて24〜48時間培養し、細胞を接着させた。細胞は、使用直前にリン酸生理緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、ファージを含む溶液を添加した。
〔2〕スクリーニング第1ラウンド
ファージペプチドライブラリーとしては、15merのランダムアミノ酸配列をファージpIII蛋白の融合蛋白として呈示する、fUSE5ファージライブラリーを使用した。上記〔1〕で調製したHeLa細胞に、2x109TU(transforming unit)のファージを含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。培養後の細胞は、1ml PBSで4回洗浄して結合していないファージを除去した後、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含む50mMグリシン塩酸緩衝液(pH2.4)0.5mlを添加し室温で5分間インキュベートすることで、結合ファージを解離させて回収した。回収液に0.1mlの1Mトリス塩酸(pH8.0)を添加して中和し、この溶液を第1ラウンドのファージ回収液とした。
ファージペプチドライブラリーとしては、15merのランダムアミノ酸配列をファージpIII蛋白の融合蛋白として呈示する、fUSE5ファージライブラリーを使用した。上記〔1〕で調製したHeLa細胞に、2x109TU(transforming unit)のファージを含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。培養後の細胞は、1ml PBSで4回洗浄して結合していないファージを除去した後、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含む50mMグリシン塩酸緩衝液(pH2.4)0.5mlを添加し室温で5分間インキュベートすることで、結合ファージを解離させて回収した。回収液に0.1mlの1Mトリス塩酸(pH8.0)を添加して中和し、この溶液を第1ラウンドのファージ回収液とした。
得られたファージ回収液0.15mlと対数増殖期の大腸菌K91kan株0.15mlを混合し、室温で10分間感染反応を行った後、10mlのLB培地に添加し、37℃、80rpmの条件で30分間振とう培養の後、カナマイシン(40mg/ml)およびテトラサイクリン(20mg/ml)それぞれ20μlを添加した。振とう速度を130rpmに上げて終夜培養を行い、ファージの増幅を行った。
培養液を10000rpm、4℃で10分間遠心し、上清(増幅したファージを含む)8mlを回収した。1/6容量(1.33ml)のPEG/NaCl溶液(2.5M塩化ナトリウムを含有する20%PEG8000)を添加して4℃終夜静置することでファージを沈殿させた。10000rpm、4℃10分間の遠心でファージを沈殿画分に回収し、1mlのPBSに溶解した。この溶液を10000rpで10分間遠心し、上清0.9mlを回収してこれに0.15ml(1/6容量)のPEG/NaCl溶液を添加した。4℃で30分〜終夜反応を行い、沈殿したファージを遠心(10000rpm10分間)で回収した。沈殿は、0.1mlのPBSに溶解して4℃で保存した。この溶液を第1ラウンドのファージ増幅液とした。
〔3〕スクリーニング第2ラウンド
上記〔2〕で得られた第1ラウンド後のファージ増幅液10μl(5x109TUファージ)を含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを、上記〔1〕の方法で調製したHeLa細胞に添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。培養後の細胞は、1ml DMEM(FCS不含)で3回洗浄して結合していないファージを除去した後、今度はファージを含まない1%FCS含有DMEM培地0.5mlを添加して37℃ 5%CO2の条件下で7時間培養を継続した。培養後の細胞は、1mlPBSで3回洗浄し、0.25%トリプシン−EDTA液(GIBCO社No.25200-056)0.5mlを添加して37℃で10分間反応を行い、細胞外部に残存しているファージを分解した。反応後の溶液は、細胞を含む全量を1.5mlチューブに移し、最終濃度0.2mMとなるようにフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)を添加してトリプシン反応を停止し、5000rpmで3分間遠心した。上清を除去し、沈殿(細胞画分)を0.2mM PMSF含有PBS0.5mlに再けん濁させた。この遠心洗浄操作を2回繰り返した後、沈殿(細胞画分)に、0.1mM PMSFおよび10μg/mlロイペプチンを含む0.1Mトリエチルアミン0.2mlを添加して室温で5分間反応を行うことで、細胞膜を破壊し、細胞内のファージを回収した。回収液に1MTris塩酸0.1mlを加えて中和し、10000rpm10分間遠心して得られた上清を、第2ラウンドの回収ファージ液とした。
上記〔2〕で得られた第1ラウンド後のファージ増幅液10μl(5x109TUファージ)を含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを、上記〔1〕の方法で調製したHeLa細胞に添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。培養後の細胞は、1ml DMEM(FCS不含)で3回洗浄して結合していないファージを除去した後、今度はファージを含まない1%FCS含有DMEM培地0.5mlを添加して37℃ 5%CO2の条件下で7時間培養を継続した。培養後の細胞は、1mlPBSで3回洗浄し、0.25%トリプシン−EDTA液(GIBCO社No.25200-056)0.5mlを添加して37℃で10分間反応を行い、細胞外部に残存しているファージを分解した。反応後の溶液は、細胞を含む全量を1.5mlチューブに移し、最終濃度0.2mMとなるようにフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)を添加してトリプシン反応を停止し、5000rpmで3分間遠心した。上清を除去し、沈殿(細胞画分)を0.2mM PMSF含有PBS0.5mlに再けん濁させた。この遠心洗浄操作を2回繰り返した後、沈殿(細胞画分)に、0.1mM PMSFおよび10μg/mlロイペプチンを含む0.1Mトリエチルアミン0.2mlを添加して室温で5分間反応を行うことで、細胞膜を破壊し、細胞内のファージを回収した。回収液に1MTris塩酸0.1mlを加えて中和し、10000rpm10分間遠心して得られた上清を、第2ラウンドの回収ファージ液とした。
得られたファージ回収液0.15mlと対数増殖期の大腸菌K91kan株0.15mlを混合し、室温で10分間感染反応を行った後、10mlのLB培地に添加し、37℃、80rpmの条件で30分間振とう培養の後、カナマイシン(40mg/ml)およびテトラサイクリン(20mg/ml)それぞれ20μlを添加した。振とう速度を130rpmに上げて終夜培養を行い、ファージの増幅を行った。その後、上記〔2〕の第1ラウンド後と同じ方法でファージの精製を行い、第2ラウンド後のファージ増幅液0.1mlを得た。
〔4〕スクリーニング第3ラウンド
上記〔3〕で得られた第2ラウンド後のファージ増幅液10μl(5x109TUファージ)を含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを、上記1の方法で調製したHeLa細胞に添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。その後、上記〔3〕の第2ラウンドと全く同様の方法で細胞内移行ファージの回収および増幅を行い、第3ラウンド後増幅ファージを得た。
上記〔3〕で得られた第2ラウンド後のファージ増幅液10μl(5x109TUファージ)を含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを、上記1の方法で調製したHeLa細胞に添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。その後、上記〔3〕の第2ラウンドと全く同様の方法で細胞内移行ファージの回収および増幅を行い、第3ラウンド後増幅ファージを得た。
〔5〕スクリーニング第4ラウンド
上記〔4〕で得られた第3ラウンド後のファージ増幅液10μl(7x109TUファージ)を含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを、上記1の方法で調製したHeLa細胞に添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。その後、上記〔3〕の第2ラウンドと全く同様の方法で細胞内移行ファージの回収および増幅を行い、第4ラウンド後増幅ファージを得た。
上記〔4〕で得られた第3ラウンド後のファージ増幅液10μl(7x109TUファージ)を含む1%FCS含有DMEM培地0.5mlを、上記1の方法で調製したHeLa細胞に添加して37℃ 5%CO2の条件下で2時間培養を行った。その後、上記〔3〕の第2ラウンドと全く同様の方法で細胞内移行ファージの回収および増幅を行い、第4ラウンド後増幅ファージを得た。
実施例2 ファージクローンの単離と配列決定
実施例1の〔4〕,〔5〕で得られた第3ラウンド後回収ファージおよび第4ラウンド後回収ファージを、対数増殖期の大腸菌K91kan株に感染させ、カナマイシンおよびテトラサイクリンを含有するLB−agarプレートにまき、37℃で終夜培養後に得られたコロニー(シングルクローン)を各7個ランダムに選んで個別に培養して、〔2〕に記載のPEG/NaCl沈殿法で精製することで、14個のファージクローンを得た。得られたファージのpIII蛋白のランダムペプチド配列を含む領域の塩基配列を解析することで、呈示するペプチド配列を決定した。
実施例1の〔4〕,〔5〕で得られた第3ラウンド後回収ファージおよび第4ラウンド後回収ファージを、対数増殖期の大腸菌K91kan株に感染させ、カナマイシンおよびテトラサイクリンを含有するLB−agarプレートにまき、37℃で終夜培養後に得られたコロニー(シングルクローン)を各7個ランダムに選んで個別に培養して、〔2〕に記載のPEG/NaCl沈殿法で精製することで、14個のファージクローンを得た。得られたファージのpIII蛋白のランダムペプチド配列を含む領域の塩基配列を解析することで、呈示するペプチド配列を決定した。
<結果>
解析した14クローンファージの呈示するペプチド配列はすべて同一であり、挿入アミノ酸配列として、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有していた。15merペプチドを挿入したライブラリーから選択されたにもかかわらず6merペプチドを呈示するファージであったが、これはファージの遺伝子欠失変異によるものと考えられる。
解析した14クローンファージの呈示するペプチド配列はすべて同一であり、挿入アミノ酸配列として、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有していた。15merペプチドを挿入したライブラリーから選択されたにもかかわらず6merペプチドを呈示するファージであったが、これはファージの遺伝子欠失変異によるものと考えられる。
実施例3 HeLa細胞に反応させたファージの共焦点蛍光顕微鏡観察
<方法>
HeLa細胞を10%FCSを含むDMEM培地中で96ウェルガラスボトムプレートに0.2ml播種し、37℃で24〜48時間培養して底面に細胞を接着させた。150μlPBSで2回洗浄後、1%FCSを含むDMEM培地で希釈した実施例2で精製した細胞内移行性のファージクローン(配列番号1で表されるアミノ酸配列保有)を2x1010TU/mlの濃度で添加し、室温で2時間反応を行った。反応後の細胞を150μlのPBSで3回洗浄後、4%パラホルムアルデヒドを含むPBS 100μlを添加して37℃で10分間固定化反応を行った。PBSで3回洗浄した後、0.2%TritonX−100を含有するPBS100μlを添加して室温30分間反応させ、さらにPBSで3回洗浄後、0.1%BSAを含むPBS 100μlを添加して10分間ブロッキング反応を行った。PBSで3回洗浄後、0.1%BSA/PBSで1000倍希釈した抗M13ファージ抗体(アマシャム社、マウスモノクローナル抗体)100μl、0.1%BSA/PBSで2000倍希釈したフルオレセイン標識抗マウスIgG抗体(ザイメッド社)100μl、0.1%BSA/PBSで1000倍希釈したAlexa488標識抗フルオレセイン抗体(モレキュラープローブ社)50μlを、順次室温でそれぞれ30分間、30分間、15分間反応させた。各反応後は、細胞を150μlPBSで3回洗浄した。最終反応後の細胞を共焦点レーザー蛍光顕微鏡(オリンパスFV1000)で観察し、細胞へのファージの結合取込を評価した。
<方法>
HeLa細胞を10%FCSを含むDMEM培地中で96ウェルガラスボトムプレートに0.2ml播種し、37℃で24〜48時間培養して底面に細胞を接着させた。150μlPBSで2回洗浄後、1%FCSを含むDMEM培地で希釈した実施例2で精製した細胞内移行性のファージクローン(配列番号1で表されるアミノ酸配列保有)を2x1010TU/mlの濃度で添加し、室温で2時間反応を行った。反応後の細胞を150μlのPBSで3回洗浄後、4%パラホルムアルデヒドを含むPBS 100μlを添加して37℃で10分間固定化反応を行った。PBSで3回洗浄した後、0.2%TritonX−100を含有するPBS100μlを添加して室温30分間反応させ、さらにPBSで3回洗浄後、0.1%BSAを含むPBS 100μlを添加して10分間ブロッキング反応を行った。PBSで3回洗浄後、0.1%BSA/PBSで1000倍希釈した抗M13ファージ抗体(アマシャム社、マウスモノクローナル抗体)100μl、0.1%BSA/PBSで2000倍希釈したフルオレセイン標識抗マウスIgG抗体(ザイメッド社)100μl、0.1%BSA/PBSで1000倍希釈したAlexa488標識抗フルオレセイン抗体(モレキュラープローブ社)50μlを、順次室温でそれぞれ30分間、30分間、15分間反応させた。各反応後は、細胞を150μlPBSで3回洗浄した。最終反応後の細胞を共焦点レーザー蛍光顕微鏡(オリンパスFV1000)で観察し、細胞へのファージの結合取込を評価した。
比較として、細胞内移行性を示さない6merペプチド呈示ファージ(配列番号2で表されるアミノ酸配列を呈示)およびスクリーニング前の15merライブラリーファージを同じ濃度で用いて同じ方法で細胞への反応、染色を行った。
<結果>
細胞内移行性スクリーニングで得られたファージ(呈示配列:配列番号1)を反応させた場合には、細胞表面への顕著なファージの結合および細胞内へのファージの取込を示す像が得られた。コントロールファージ(呈示配列:配列番号2)および、スクリーニング前の15merライブラリーファージを同じ濃度で細胞に反応させた場合には、細胞表面および内部の蛍光は全く認められなかった。(図1)
実施例4 Caco2細胞に反応させたファージの共焦点蛍光顕微鏡観察
<方法>
ヒト腸管上皮細胞Caco−2を用いて、実施例3のHeLa細胞と同様の方法で、ファージの反応、染色を行った。
細胞内移行性スクリーニングで得られたファージ(呈示配列:配列番号1)を反応させた場合には、細胞表面への顕著なファージの結合および細胞内へのファージの取込を示す像が得られた。コントロールファージ(呈示配列:配列番号2)および、スクリーニング前の15merライブラリーファージを同じ濃度で細胞に反応させた場合には、細胞表面および内部の蛍光は全く認められなかった。(図1)
実施例4 Caco2細胞に反応させたファージの共焦点蛍光顕微鏡観察
<方法>
ヒト腸管上皮細胞Caco−2を用いて、実施例3のHeLa細胞と同様の方法で、ファージの反応、染色を行った。
<結果>
HeLa細胞の場合と同様に、細胞内移行性スクリーニングで得られたファージ(呈示配列:配列番号1)を反応させた場合には、細胞表面への顕著なファージの結合および細胞内へのファージの取込を示す像が得られた。コントロールファージ(呈示配列:配列番号2)およびスクリーニング前の15merライブラリーファージを同じ濃度で細胞に反応させた場合には、細胞表面および内部の蛍光は全く認められなかった。(図2)
実施例5 血管内皮細胞(HUVEC)に反応させたファージの共焦点蛍光顕微鏡観察
<方法>
実施例3,4と同様の方法で、ヒト血管内皮細胞HUVECを用いてファージの反応、染色を行った。
HeLa細胞の場合と同様に、細胞内移行性スクリーニングで得られたファージ(呈示配列:配列番号1)を反応させた場合には、細胞表面への顕著なファージの結合および細胞内へのファージの取込を示す像が得られた。コントロールファージ(呈示配列:配列番号2)およびスクリーニング前の15merライブラリーファージを同じ濃度で細胞に反応させた場合には、細胞表面および内部の蛍光は全く認められなかった。(図2)
実施例5 血管内皮細胞(HUVEC)に反応させたファージの共焦点蛍光顕微鏡観察
<方法>
実施例3,4と同様の方法で、ヒト血管内皮細胞HUVECを用いてファージの反応、染色を行った。
<結果>
HeLa細胞の場合と同様に、細胞内移行性スクリーニングで得られたファージ(呈示配列:配列番号1)を反応させた場合には、細胞表面へのファージの結合および細胞内へのファージの取込を示す像が得られた。
HeLa細胞の場合と同様に、細胞内移行性スクリーニングで得られたファージ(呈示配列:配列番号1)を反応させた場合には、細胞表面へのファージの結合および細胞内へのファージの取込を示す像が得られた。
Claims (4)
- 以下の(A)、(B)または(C)のいずれかのペプチド。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド。
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列、または配列番号1で表されるアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失もしくは挿入されたアミノ酸配列を部分アミノ酸配列として含有し、かつ細胞内移行性を有するペプチド。 - 請求項1に記載のペプチドと薬物とを含有する医薬組成物。
- 請求項1に記載のペプチドをコードする核酸。
- 請求項1に記載のペプチドをキャリアとして用いて細胞内に薬物を移行させる方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007042809A JP2008200011A (ja) | 2007-02-22 | 2007-02-22 | 細胞内移行性ペプチド、それを含有する医薬組成物及びその使用方法 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008200011A true JP2008200011A (ja) | 2008-09-04 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2008200011A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013513382A (ja) * | 2009-12-11 | 2013-04-22 | グワンジュ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー | 細胞内ターゲット結合用二座ペプチドバインダー |
JP2014500867A (ja) * | 2010-11-09 | 2014-01-16 | ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア | 皮膚浸透性および細胞侵入性(space)ペプチドとその使用法 |
-
2007
- 2007-02-22 JP JP2007042809A patent/JP2008200011A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013513382A (ja) * | 2009-12-11 | 2013-04-22 | グワンジュ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー | 細胞内ターゲット結合用二座ペプチドバインダー |
JP2014500867A (ja) * | 2010-11-09 | 2014-01-16 | ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア | 皮膚浸透性および細胞侵入性(space)ペプチドとその使用法 |
US9441014B2 (en) | 2010-11-09 | 2016-09-13 | The Regents Of The University Of California | Skin permeating and cell entering (SPACE) peptides and methods of use thereof |
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