JP2008197449A - 位相差フィルム、および、位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

位相差フィルム、および、位相差フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、光学的にBプレートとしての性質を有し、単一のフィルムで広範な光学特性を達成可能な位相差フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、セルロース誘導体からなる基材と、上記基材上に直接形成され、棒状化合物を含有する位相差層とを有し、光学的にBプレートとしての性質を有する位相差フィルムであって、上記基材が、表面上に上記棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を備えることを特徴とする位相差フィルムを提供することにより、上記課題を解決するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法に関するものである。
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。図4に示すように、一般的な液晶表示装置100としては入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル101とを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル101は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
液晶表示装置は、液晶セルを構成する液晶分子の配列形態により種々の方式のものが実用化されているが、近年ではVA(Vertical Alignment)方式が主流となっている。このようなVA方式の液晶表示装置は、主として液晶テレビ用途に広く用いられるに至っている。
上記VA方式の液晶表示装置に用いられる液晶セルにおいては、液晶分子が垂直配向していることから、液晶セル全体としては光学的に正のCプレートとして作用する光学特性を備えることになる。例えば、図4に示す液晶表示装置100の液晶セル101がこのような光学特性を備えるとすると、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光は、液晶セル104のうち非駆動状態のセル部分を透過する際に、位相シフトされずに透過し、出射側の偏光板102Bで遮断される。これに対し、液晶セル101のうち駆動状態のセル部分を透過する際には直線偏光が位相シフトされ、この位相シフト量に応じた量の光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される。これにより、液晶セル101の駆動電圧をセル毎に適宜制御して、出射側の偏光板102B側に所望の画像を表示することができる。
このようなVA方式の液晶セル101のうち非駆動状態のセルの部分を直線偏光が透過する場合を考えると、上述したように液晶セル101は光学的に正のCプレートとして作用する光学特性を有しているため、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル101の法線に沿って入射した光は位相シフトされずに透過するものの、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル101の法線から傾斜した方向に入射した光は液晶セル101を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。これに伴って、液晶セル101内のあるセルが非駆動状態であり、本来的には直線偏光がそのまま透過され、出射側の偏光板102Bで遮断されるべき場合であっても、液晶セル101の法線から傾斜した方向に出射された光の一部が出射側の偏光板102Bから洩れてしまうことになる。このため、上述したような従来の液晶表示装置100においては、正面から観察される画像に比べて、液晶セル101の法線から傾斜した方向から観察される画像の表示品位が低下することが原因で悪化するという問題(視野角依存性の問題)があった。
このような液晶表示装置における視野角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されており、その代表的な方法として位相差フィルムを用いる方法がある。上記VA方式の液晶セルを採用した液晶表示装置の視野角依存性を、位相差フィルムを用いて改善する方法としては、通常、光学的に負のCプレートとしての性質を有する位相差フィルムと、光学的に正のAプレートとしての性質を有する位相差フィルムとの2枚の位相差フィルムを用いる方法が用いられる。このような2枚の位相差フィルムを用いる方法としては、例えば、図5(a)に示すような液晶セル101を、光学的に負のCプレートとしての性質を有する位相差フィルム103と、光学的に正のAプレートとしての性質を有する位相差フィルム104とで挟持する方法や、図5(b)に示すように入射側の偏光板102A上に光学的に負のCプレートとしての性質を有する位相差フィルム103と、光学的に正のAプレートとしての性質を有する位相差フィルム104とを積層する方法が用いられてきた。
このような2枚の位相差フィルムを用いて視野角依存性の問題を改善する方法は、位相差フィルムの組合せを変更することにより、様々の光学特性を有する液晶セルを用いた液晶表示装置の視野角依存性の問題を改善できる点において有用であり、現在でも広く用いられている。しかしながら、その一方でこのような方法では光学的に正のAプレートとしての性質を有する位相差フィルムと、光学的に負のCプレートとしての性質を有する位相差フィルムと、を2枚使用することが必須であったため、結果として液晶セルの厚みが大きくなってしまうという問題点があった。
このような問題点に対し、特許文献1には単一のフィルムで光学的に正のAプレートとしての性質と、光学的に負のCプレートとしての性質を併有する、いわゆる光学的にBプレートとしての性質を有する位相差フィルムが開示されている。このような位相差フィルムは、単一の位相差フィルムでVA方式の液晶表示装置の視野角を改善できる点において有用である。しかしながら、このような位相差フィルムは単一のフィルムで光学的に正のAプレートとしての性質と、負のCプレートとしての性質を発現させる必要がある結果、実現可能な光学特性の範囲が狭く、多様な液晶表示装置に応じて光学特性を適宜調整することが困難であるという問題点があった。
特許第3746050号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、光学的にBプレートとしての性質を有し、単一のフィルムで広範な光学特性を達成可能な位相差フィルムを提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明は、セルロース誘導体からなる基材と、上記基材上に直接形成され、棒状化合物を含有する位相差層とを有し、光学的にBプレートとしての性質を有する位相差フィルムであって、上記基材が、表面上に上記棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を備えることを特徴とする位相差フィルムを提供する。
本発明によれば、上記基材が表面配向性を備えるものであることにより、上記棒状化合物を光学的に正のAプレートとしての性質および光学的に負のCプレートとしての性質を発現するように配列させることが容易になる。このため本発明によれば上記棒状化合物の配列形態を調整し、広範な光学特性を発現することが可能な位相差フィルムを得ることができる。
本発明においては、上記基材が、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.55以上であること、または、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.1以上であることが好ましい。これにより何ら配向処理や、配向層等を設けることなく、上記基材に表面配向性を付与することができるからである。
また上記課題を解決するために本発明は、セルロース誘導体からなり、表面上に棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を有する基材を用い、上記基材上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工することにより、一方向に配列した棒状化合物を含有する位相差層形成用層を形成する位相差層形成工程と、上記位相差層形成用層が形成された基材を、上記棒状化合物の配列方向に対して垂直方向に延伸する延伸工程と、を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法を提供する。
本発明によれば、上記基材として上記表面配向性を備えるものが用いられることにより、上記位相差層形成工程において任意の方向に遅相軸を有する位相差層形成用層が形成された積層体を得た後、これを上記延伸工程において上記遅相軸とは垂直方向に延伸することによって位相差層を形成することができる。
このため、本発明によれば光学的にBプレートとしての性質を有し、単一のフィルムで広範な光学特性を達成可能な位相差フィルムを製造することができる。
本発明においては、上記基材が、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.55以上、または、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.1以上であることが好ましい。これにより何ら配向処理や、配向層等を設けることなく、上記基材に表面配向性を付与することができるからである。
また本発明においては、上記基材が長尺状のものであり、かつ、上記表面配向性が棒状化合物を上記基材の長手方向と平行な方向に配向させるものであることが好ましい。このような方法によれば、連続プロセスにより本発明を実施することが可能になることから、本発明によって高い製造効率で位相差フィルムを製造することが可能になるからである。
さらに本発明においては、上記延伸工程が、延伸方向に遅相軸を発現させるように上記位相差層形成用層が形成された基材を延伸するものであることが好ましい。これにより、本発明によって製造される位相差フィルムを、より光学特性の発現性に優れたものにできるからである。
本発明の位相差フィルムは、広範な光学特性を実現することが可能であるという効果を奏する。
本発明の位相差フィルムと、位相差フィルムの製造方法とに関するものである。
以下、本発明の位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法について順に説明する。
A.位相差フィルム
まず、本発明の位相差フィルムについて説明する。本発明の位相差フィルムはセルロース誘導体からなる基材と、上記基材上に直接形成され、棒状化合物を含有する位相差層とを有し、光学的にBプレートとしての性質を有するものであって、上記基材が、表面上に上記棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を備えることを特徴とするものである。
このような本発明の位相差フィルムについて図を参照しながら説明する。図1は本発明の位相差フィルムの一例を示す概略斜視図である。図1に例示するように、本発明の位相差フィルム10は、基材1と、上記基材1上に形成され、棒状化合物Aを含有する位相差層2とを有するものであり、位相差フィルム10全体として光学的にBプレートとしての性質を有するものである。
このような例において本発明の位相差フィルム10は、上記基材1が上記位相差層2に含まれる棒状化合物Aを一方向に配向させることが可能な表面配向性を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記基材が表面配向性を備えるものであることにより上記棒状化合物を、光学的に正のAプレートとしての性質および光学的に負のCプレートとしての性質を発現するように配列させることが容易になる。このため本発明によれば上記棒状化合物の配列形態を調整し、広範な光学特性を発現することが可能な位相差フィルムを得ることができる。
ここで、本発明において上記表面配向性を備える基材を用いることにより、広範な光学特性を発現することが可能な位相差フィルムを得ることができる理由について、詳しく説明する。
本発明によって広範な光学特性を達成可能な位相差フィルムを得ることができる理由は、主に、上記基材として表面配向性を備えるものを用いることにより、高い光学特性を達成可能な製造方法によって本発明の位相差フィルムを製造することができることに起因するものである。
すなわち、本発明に用いられる基材は棒状化合物に対する表面配向性を備えるものであるため、本発明の位相差フィルムの製造過程においては、まず、基材上に、該基材表面(位相差層塗工側の面)と平行な面内において任意の方向に遅相軸を有する位相差層形成用層が形成された後に、該基材表面と平行な面内において上記遅相軸に対して垂直方向に屈折率を発現させることによって位相差層が形成されることになる。このような方法で位相差層が形成されることにより、位相差層が備える位相差性の発現過程を、まず任意の方向に遅相軸を有するように発現させた後、徐々に遅相軸方向の屈折率を減少させ、次いで一旦面内の屈折率異方性を解消させた後に、さらに遅相軸の方向とは垂直方向に遅相軸が発現されるような過程にすることができる。そして、このような過程を経て位相差性が形成された位相差層は、他の過程で位相差性が付与された同一組成の位相差層に比べて、高い位相差性を発現できるものになる。
このため本発明によれば上記棒状化合物の配列形態を調整し、広範な光学特性を発現することが可能な位相差フィルムを得ることができるのである。
本発明の位相差フィルムは、少なくとも上記基材と、上記位相差層とを有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を備えるものであってもよい。
以下、本発明の位相差フィルムに用いられる各構成について順に説明する。
1.基材
まず、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材はセルロース誘導体からなり、後述する位相差層に含まれる棒状化合物を、表面上に一方向に配向させることが可能な表面配向性を備えることを特徴とするものである。本発明の位相差フィルムは基材としてこのような性質を有するものが用いられていることにより、広範な光学特性を実現することができるものになるのである。
以下、このような基材について詳細に説明する。
本発明に用いられる基材は、表面上に棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を備えることを特徴とするものである。ここで、本発明に用いられる基材が「表面配向性を有する」とは、基材自体が表面配向性を備えることを意味するものである。したがって、例えば、基材上に配向層が積層されることによって上記表面配向性が付与されたようなものは、本発明における基材には含まれないものとする。また、上記「表面配向性」とは、基材の表面上に棒状化合物を一方向に配向させることが可能な性質を意味するが、本発明においては上記棒状化合物の配向を当該化合物の長軸方向を基準として考えるものとする。したがって、上記「棒状化合物を一方向に配向させる」とは、棒状化合物を、当該化合物の長軸方向の向きが一定の方向に揃うように配列させることを意味するものである。
ここで、本発明に用いられる基材が表面配向性を有することは、当該基材上に、後述する位相差層に用いられる棒状化合物(代表的な例では、重合性液晶化合物)を含有する塗工液を塗工し、所定の塗膜形成条件にて塗膜形成した状態で、面内レタデーション値Reが5nm以上、より好ましくは10nm以上、厚み方向レタデーション値Rthが30nm以上、より好ましくは100nm以上発現することをいうものとする。このような、評価に用いる塗工液、及び塗膜形成条件は本願明細書の実施例1に記載の塗工液、及び塗膜形成条件を挙げることができる。
本発明に用いられる基材としては、上記表面配向性を有するものであれば特に限定されるものではないが、なかでも反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.55以上、より好ましくは1.55〜1.80の範囲内、さらに好ましくは1.60〜1.70の範囲内であるものを選択して用いることが好ましい。
また、本発明に用いられる基材は、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.1以上、より好ましくは1.1〜1.3の範囲内、さらに好ましくは1.1〜1.2の範囲内であるものを選択して用いることが好ましい。これらの基材を選択して用いることにより、基材に何ら配向処理を施すことなく上記基材に表面配向性を付与することができるからである。
ここで、これらの回折強度は、セルロース誘導体の結晶化が進むにしたがって増加するものである。このため本発明に好適に用いられる基材は、従来のセルロース誘導体が用いられた基材よりもセルロース誘導体の結晶化が進んでいるものということができる。このようにセルロース誘導体の結晶化が進んでいる基材は、表面配向性に優れ、発現可能な位相差性の発現範囲が広いものである。
なお、上記X線回折チャートは、以下の条件で測定されたものを用いるものとする。
装置名:RIGAKU RINP−1500
X線源:Cu
管電流:150mA
管電圧:50kV
走査速度:5°/min
発散スリット(DS:自動)1°
散乱スリット(SS:自動)1°
受光スリット(RS:自動)0.3mm
モノクロ受光スリット(RSm:手動)0.6mm
本発明に用いられる基材はセルロース誘導体からなるものである。本発明に用いられるセルロース誘導体としては、上記表面配向性を発現できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステルを用いることが好ましく、セルロースエステル類の中でもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
また、本発明においては上記セルロースアシレート類のなかでも炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルを用いることが好ましい。このような低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。トリアセチルセルロースは、比較的嵩高い側鎖を有する分子構造を有することから、この程度の平均酢化度を有するトリアセチルセルロースから基材を構成することにより、後述する位相差層に含まれる棒状化合物が基材に浸透し易くなるため、基材と位相差層との密着性を向上させることができるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。
ここで、トリアセチルセルロースからなる基材は、従来より写真フイルム用のベース基材として用いられてきたものであり、代表的には溶液製膜方法によって製造される。溶液製膜方法とは、トリアセチルセルロースを溶媒に溶解した溶液を、支持体上にキャスティングし、支持体上で自己支持性を付与する程度に乾燥処理等を行った後、支持体上から剥離して製膜する方法である。
トリアセチルセルロースからなる基材の溶液製膜方法としては、上記支持体としてエンドレスベルトを用い、キャスティング後、ベルト上で乾燥させることによって自己支持性を付与するベルト方式(例えば、特開2002−371142号公報)と、上記支持体として冷却ドラムを用い、キャスティング後、ドラム上で冷却ゲル化することによって自己支持性を付与するドラム方式(例えば、特開平11−221833号公報)と、が知られている。
上記ドラム方式ではドラム上で冷却ゲル化されることから、製造されるトリアセチルセルロース基材は、上記ベルト方式で製造されたものよりも結晶性が高くなる傾向がある。ここで、上述したように表面配向性はこのような結晶性に起因して発現されやすいことから、本発明に用いられるトリアセチルセルロースからなる基材としては、上記ドラム方式によって製造されたものの中から上記表面配向性を有するものを選択して用いることが好ましい。
本発明に用いられる基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることがより好ましい。透過率が低いと、上記棒状化合物等の選択幅が狭くなってしまう場合があるからである。
ここで、基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
また、本発明に用いられる基材の厚みは、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を有する範囲であれば特に限定されない。なかでも本発明に用いられる基材の厚みは10μm〜188μmの範囲内であることが好ましく、特に20μm〜125μmの範囲内であることが好ましく、特に30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。基材の厚みが上記の範囲よりも薄いと、本発明の位相差フィルムに必要な自己支持性を付与することができない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、本発明の位相差フィルムを裁断加工する際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
本発明に用いられる基材の形状は特に限定されるものではなく、シート状、長尺状等の任意の形状を有するものを用いることができる。
なお、本発明に用いられる基材がシート状である場合は、本発明の位相差フィルムを連続プロセスによって製造することが可能になるという利点がある。このとき上記基材が備える表面配向性は、棒状化合物を基材の長尺方向に対して平行な方向に配列させることが可能なものであることが好ましい。これにより、例えば、本発明の位相差フィルムを製造する際に、まず基材の長尺方向に対して平行な方向に遅相軸を有するAプレートとしての性質を付与をした後、基材を搬送しながら連続的に上記遅相軸に対して垂直な方向に延伸してCプレートとしての性質を付与することが可能になり、本発明の位相差フィルムを連続プロセスよって高生産性で製造可能なものにできるからである。
2.位相差層
次に、本発明に用いられる位相差層について説明する。本発明に用いられる位相差層は、上記基材上に直接形成され、本発明の位相差フィルムに光学的にBプレートとしての性質を付与する機能を有するものである。また、本発明に用いられる位相差層は棒状化合物を含有するものである。
なお、本発明において、位相差フィルムが基材上に「直接形成され」ているとは、基材と、位相差層との間に、例えば配向層等の他の層を介することなく、基材と、位相差層とが直接接触するように形成されていることを意味するものである。本発明においては、このように上記位相差層が上記基材上に直接形成されていることにより、本発明の位相差フィルムの製造工程において、上記棒状化合物を基材の表面配向性の作用によって配列することが可能になるのみではなく、上記位相差層と上記基材との密着性を向上させることができるという利点も有する。
以下、このような位相差層について説明する。
(1)棒状化合物
まず、上記棒状化合物について説明する。本発明に用いられる棒状化合物は、位相差層において配列されることにより、位相差層に光学的にBプレートとしての性質を付与できる電気双極子能率を有するものであれば特に限定されるものではない。
ここで、上記「棒状化合物」とは、分子構造の主骨格が棒状となってものを意味するものとする。
本発明に用いられる棒状化合物としては、分子量が比較的小さい化合物が好適に用いられる。分子量が小さい方が上述した基材を構成するセルロース誘導体と、棒状化合物との対する親和性を向上させることができるため、基材と位相差層との密着性をより向上させることができるからである。具体的には、分子量が200〜1200の範囲内であることが好ましく、特に400〜800の範囲内であることが好ましい。
なお、棒状化合物として、後述する重合性官能基を有する化合物を用いる場合、上記分子量は重合前の分子量を示すものとする。
また、本発明に用いられる棒状化合物としては、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。棒状化合物が液晶性材料であることにより、本発明に用いられる位相差層を、単位厚み当たりの光学特性の発現性に優れたものにできるからである。
上記液晶材料としては、光学的にBプレートとしての性質を発現できるように配列可能なものであれば特に限定されるものではないが、なかでもネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料よりも、光学的にBプレートとしての性質を発現するように配列させることが容易だからである。
さらに、上記ネマチック相を示す液晶性材料としては、メソゲン両端にスペーサを有する化合物を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は、柔軟性に優れるため、本発明における位相差層が白濁することを効果的に防止することができるからである。
本発明に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものが特に好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、棒状化合物の配列安定性に優れ、光学特性の変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。
本発明においては上記重合性官能基を有する棒状化合物と、上記重合性官能基を有さない棒状化合物とを混合して用いてもよい。
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する各種重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等を挙げることができる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基を挙げることができる。具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。又、カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和三重結合等が挙げられる。これらの中でも本発明においては、プロセス上の点からエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
本発明における棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であって末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。例えば両末端に重合性官能基を有するネマチック液晶性材料を用いれば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができ、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた位相差層を得ることができるからである。また、片末端に重合性官能基を有するものであっても、他の分子と架橋して配列安定化することができるからである。
このような棒状化合物の具体例としては、例えば、下記式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
Figure 2008197449
ここで、化学式(1)、(2)、(5)および(6)で示される液晶性材料は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190,3201−3215(1989)、またはD.J.Broerら、Makromol.Chem.190,2250(1989)に開示された方法に従い、あるいはそれに類似した方法によって調製することができる。また、化学式(3)および(4)で示される液晶性材料の調製は、例えばDE195,04,224に開示された方法を用いることができる。
また、末端にアクリレート基を有するネマチック液晶性材料の具体例としては、下記式(7)〜(17)に示すものも挙げることができる。
Figure 2008197449
なお、本発明に用いられる棒状化合物は、1種類であってもよく、または、2種以上であってもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。
(2)棒状化合物の配列形態
次に、本発明における位相差層内において棒状化合物が配列している形態について説明する。上述したように、本発明の位相差フィルムは、上記棒状化合物が位相差層内で配列することにより光学的にBプレートとしての性質が発現されているものである。
本発明における位相差層内で上記棒状化合物が配列している態様としては、本発明の位相差フィルムに光学的にBプレートとしての性質を付与できる態様であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記棒状化合物が変則ランダムホモジニアス配向を形成していることが好ましい。これにより、本発明の位相差フィルムの光学特性を広い範囲で任意に制御することが可能になるからである。
以下、このような変則ランダムホモジニアス配向について説明する。
上記変則ランダムホモジニアス配向は、少なくとも、次の3つの特徴を有するものである。すなわち、本発明における上記変則ランダムホモジニアス配向は、
第1に、位相差層の表面に対して垂直方向から位相差層を正視した場合において、棒状化合物の配列方向が異方性を有すること(以下、単に「異方性」と称する場合がある。)、
第2に、位相差層において棒状化合物が形成するドメインの大きさが可視光領域の波長よりも小さいこと(以下、単に「分散性」と称する場合がある)、
第3に、位相差層において棒状化合物分子が、該位相差層の表面に平行な平面(図1の例ではxy平面に平行な面)に存在していること(以下、単に「面内配向性」と称する場合がある。)、
を少なくとも備えるものである。
このような、変則ランダムホモジニアス配向について図を参照しながら具体的に説明する。図2(a)は上述した図1中のZで表す位相差層2の表面(xy平面)に対して垂直方向(法線方向、即ちZ方向)から本発明の位相差フィルム10を正視した場合の概略図である。また、図2(b)、(c)は、図2(a)におけるY−Y’線矢視断面図である。
まず、上記変則ランダムホモジニアス配向が具備する「異方性」について図2(a)を参照しながら説明する。上記「異方性」は、図2(a)に示すように、位相差層2の表面に対して垂直方向から本発明の位相差フィルム10を正視した場合に、位相差層2において棒状化合物Aが平均的に一方向に配列していることを示すものである。
即ち、xy平面(位相差層表面)内の各方向に配向する各棒状化合物Aの確率分布函数(確率密度函数)を求めると、該確率分布関数はxy平面内の特定方向にピーク(平均配向方向)を有し、かつ、配向方向には所定の分散(配向方向のバラツキ幅)を有する様に分布しているということである。さらに言い換えれば、該棒状化合物Aの長軸の配向方向は、完全に全分子が平行に揃っているのではなく、また、完全に乱雑でもない。その一例を図示したものが図2(a)である。
ここで、上述したように本発明においては上記棒状化合物Aの配列方向を説明するのに、図2(a)中のaで表す長軸方向(以下、分子軸と称する。)を基準として考えるため、上記棒状化合物Aが一方向に配列しているということは、上記位相差層2に含まれる棒状化合物Aの分子軸aが平均的には一方向に向いていることを意味する。
このように本発明における上記「異方性」は、上記棒状化合物Aが完全に一方向に配列していることまでを要求するものではなく、上記棒状化合物Aの配列方向が平均的に一方向に配列している程度で足り、その程度は位相差層2に光学的にBプレートとしての性質を付与できる程度でよい。このような「異方性」の程度については後述する。
次に、上記変則ランダムホモジニアス配向が具備する「分散性」について図2(a)を参照しながら説明する。上記「分散性」は、図2(a)に示すように、位相差層2において棒状化合物AがドメインA’を形成している場合に、ドメインA’の大きさが可視光領域の波長よりも小さいことを示すものである。本発明においては、上記ドメインA’の大きさが小さい程好ましいものであり、棒状化合物Aが単分子で分散している状態が最も好ましいものである。
次に、上記変則ランダムホモジニアス配向が具備する「面内配向性」について図2(b)を参照しながら説明する。上記「面内配向性」は、図2(b)に示すように、位相差層2において棒状化合物Aが、分子軸aを位相差層2の法線方向Z(図1に於けるz方向に対応)に対して略垂直(図1に於けるxy平面に略平行)になるように配向していることを意味する。本発明における上記「面内配向性」としては、図2(b)に示すように、上記位相差層2におけるすべての棒状化合物Aの分子軸aが上記法線方向Zに対して略垂直になっている場合のみを意味するものではなく、例えば図2(c)に示すように、上記位相差層2に分子軸a’が上記法線方向Zと垂直でない棒状化合物Aが存在していたとしても、位相差層2中に存在する棒状化合物Aの分子軸aの平均的な方向が上記法線方向Aに対して略垂直である場合を含むものである。即ち、図2に於いて、個々の棒状化合物Aの分子軸方向は分布を持っていても、棒状化合物の全分子について平均化した分子軸方向は実質上xy平面内に存在すればよい。
本発明の位相差フィルムは、上記棒状化合物が変則ランダムホモジニアス配向を形成していることにより、図1に示すx方向の屈折率nxと、y方向の屈折率nyと、z方向の屈折率nzに、nx>ny>nzの関係が成立させることが容易となるから、本発明の位相差フィルムは光学的にBプレートとしての性質を発現するものになる。
以上説明したように、上記変則ランダムホモジニアス配向は、上記「異方性」、「分散性」および「面内配向性」を示すことを特徴とするものであるが、上記棒状化合物が変則ランダムホモジニアス配向を形成していることは、以下の方法により確認することができる。
まず、本発明における変則ランダムホモジニアス配向が具備する「異方性」の確認方法について説明する。上記「異方性」は、本発明の位相差フィルムを構成する位相差層の面内レターデーション(以下、単に「Re」と称する場合がある。)を評価することにより確認することができる。
上記棒状化合物が上記「異方性」を有していることは、位相差層の面内レターデーション(Re)の値が、位相差層が光学的に正のAプレートとしての性質を示すことが可能な範囲内であることにより確認することができる。なかでも本発明においては、位相差層の面内レターデーション(Re)が、5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、なかでも10nm〜200nmの範囲内の範囲内であることが好ましく、特に40nm〜150nmの範囲内であることが好ましい。
ここで、上記Reは、本発明の位相差フィルムを構成する位相差層の面内における遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率nx、および、進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率nyと、位相差層の厚みd(nm)とにより、Re=(nx−ny)×dの式で表される値である。
なお、特筆しない限り本明細書内における面内レターデーション(Re)の値は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した値を指すものとする。
上記位相差層のReは、本来は位相差層単層について測定すればよい。但し、実際多くの場合は、位相差層は厚みが薄く、かつ、基材上に密着しているため、位相差層のみ分離しての測定が困難な場合が多い。したがって、通常は、位相差フィルム全体のReから位相差層以外の層が示すReを差し引くことにより求める。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについてRe測定し、前者のReから後者のReを差し引くことにより位相差層のReを求めることができる。Reは、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができる。
次に、上記変則ランダムホモジニアス配向が具備する「分散性」の確認方法について説明する。上記「分散性」は、本発明の位相差フィルムを構成する位相差層のヘイズ値が、上記棒状化合物のドメインの大きさが可視光領域の波長以下であることを示す範囲内であることにより確認することができる。なかでも本発明においては、位相差層のヘイズ値が0%〜5%の範囲内であることが好ましく、特に0%〜1%の範囲内であることが好ましく、さらには0%〜5%の範囲内であることが好ましい。
ここで、位相差層のヘイズ値についても、本来は位相差層単層について測定すればよい。但し、実際多くの場合は、位相差層は厚みが薄く、かつ、基材上に密着しているため、位相差層のみ分離しての測定が困難な場合が多い。したがって、通常は、位相差フィルム全体のヘイズ値から位相差層以外の層のヘイズ値を差し引くことにより求める。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについてヘイズ値を測定し、前者のヘイズ値から後者のヘイズ値を差し引くことにより位相差層のヘイズ値を求めることができる。上記ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定した値を用いるものとする。
本発明における上記ドメインの大きさは可視光の波長以下であるが、具体的な大きさとしては、380nm以下であるであることが好ましく、なかでも350nm以下であることが好ましく、特に200nm以下であることが好ましい。なお、本発明においては上記棒状化合物が単分子分散していることが好ましいため、上記ドメインの大きさの下限値は、棒状化合物の単分子の大きさである。このようなドメインの大きさは、偏光顕微鏡や、AFM、SEM、またはTEMにより位相差層を観察することにより評価することができる。
次に、上記変則ランダムホモジニアス配向が具備する「面内配向性」の確認方法について説明する。上記「面内配向性」は、本発明の位相差フィルムを構成する位相差層のReが上述した範囲にあること、および、本発明における位相差層が光学的に負のCプレートとしての性質を発現することが可能な程度の厚み方向のレターデーション(以下、単に「Rth」と称する場合がある。)を有することにより確認することができる。なかでも本発明における位相差層のRthは、50nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、なかでも75nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に100nm〜250nmの範囲内であることが好ましい。
ここで、上記Rthは、本発明の位相差フィルムを構成する位相差層の面内における遅相軸方向(屈折率が最も大きい方向)の屈折率nx、および、進相軸方向(屈折率が最も小さい方向)の屈折率nyと、厚み方向の屈折率nzと、位相差層の厚みd(nm)とにより、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dの式で表される値である。
なお、特筆しない限り本明細書内における厚み方向のレターデーション(Rth)の値は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定したにおける値を指すものとする。
なお、上記位相差層のRthについても、本来は位相差層単層について測定すればよい。但し、実際多くの場合は、位相差層は厚みが薄く、かつ、基材上に密着しているため、位相差層のみ分離しての測定が困難な場合が多い。したがって、通常、位相差フィルム全体のRthから位相差層以外の層が示すRthを差し引くことにより求める。すなわち、位相差フィルム全体、および、位相差フィルムから位相差層を切除したものについてRth測定し、前者のRthから後者のRthを差し引くことにより位相差層のRthを求めることができる。Rthは、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができる。
(3)その他の任意の化合物
本発明における位相差層には、上記棒状化合物以外に他の任意の化合物を含んでもよい。このような任意の化合物としては、例えば、光重合開始剤、重合禁止剤、レベリング剤、カイラル剤、シランカップリング剤等を挙げることができる。
また、本発明における位相差層には、上述した基材を構成するセルロース誘導体が含有されていてもよい。
(4)位相差層
本発明における位相差層の厚みは、上記棒状化合物の種類に応じて、位相差層に所望の光学特性を付与できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては位相差層の厚みが0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらに0.5μm〜8μmの範囲内であることが好ましく、特に0.5μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明における位相差層の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
さらに、本発明に用いられる位相差フィルムは、上述した基材上に直接形成されるものであるが、上記位相差層が上記基材上に積層されている態様としては、上記基材と上記位相差層とが明確な界面を形成するように積層されている態様であってもよく、あるいは、上記基材と上記位相差層との間に明確な界面がなく、上記棒状化合物の濃度が連続的に変化するように積層されている態様であってもよい。
3.任意の構成
本発明の位相差フィルムは、上記基材および上記位相差層以外に他の任意の構成を有していてもよい。本発明に用いられる他の構成としては本発明の位相差フィルムの用途に応じて任意の機能を有するものを用いることができる。このような他の構成としては、例えば、反射防止層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、帯電防止層、および、接着層等を挙げることができる。
上記反射防止層としては、例えば、透明基材フィルム上に、該透明基材よりも低屈折率の物質からなる低屈折率層を形成したもの、或いは透明基材フィルム上に、該透明基材フィルムよりも高屈折率の物質からなる高屈折率層、及び、該透明基材よりも低屈折率の物質からなる低屈折率層とを、この順に交互に各1層ずつ以上積層し、最表面が低屈折率層となるように構成したものなどが挙げられる。これら高屈折率層および低屈折率層は、層の幾何学的厚と屈折率との積で表される光学厚みが反射防止すべき光の波長の1/4となるように、真空蒸着、塗工等により形成される。高屈折率層の構成材料としては、酸化チタン、硫化亜鉛等が、低屈折率層の構成材料としては、弗化マグネシウム、氷晶石等が用いられる。
また、上記紫外線吸収層としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のフィルム中に、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等から成る紫外線吸収剤を添加して成膜したものが挙げられる。
また、上記赤外線吸収層としては、例えば、ポリエステル樹脂等のフィルム基材上に吸収層を塗工等により形成したものが挙げられる。吸収層としては、例えば、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等から成る赤外線吸収剤を、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等から成るバインダー樹脂中に添加して成膜したものが用いられる。
また上記接着層としては、上記位相差フィルムやその他の層を互いに接着できるものであれば特に限定されるものではない。本発明においては、このような接着層として一般的に公知の接着剤からなるものを用いることができる。
4.位相差フィルム
本発明の位相差フィルムは、光学的にBプレートとしての性質を有するものである。ここで、「光学的にBプレートとしての性質」とは、本発明の位相差フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内において当該遅相軸方向に垂直な方向の屈折率をny、および、厚み方向の屈折率をnzとした場合に、nx>ny>nzの関係が成立することを意味するものである。
本発明の位相差フィルムが備える光学特性の具体的な範囲は、本発明の位相差フィルムの用途に応じて適宜決定することができるものであるが、なかでも本発明の位相差フィルムは、厚み方向のレターデーション(Rth)が、60nm〜450nmの範囲内が好ましく、なかでも70nm〜400nmの範囲内が好ましく、特に80nm〜350nmの範囲内が好ましい。厚み方向のレターデーション(Rth)が上記範囲内であることにより、本発明の位相差フィルムをVA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置の視野角特性を改善するのに好適なものにできるからである。
また、本発明の位相差フィルムの面内レターデーション(Re)は、本発明の位相差フィルムの用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、面内レターデーション(Re)が、20nm〜150nmの範囲内が好ましく、なかでも30nm〜130nmの範囲内が好ましく、特に40nm〜110nmの範囲内が好ましい。面内レターデーション(Re)が上記範囲内であることにより、本発明の位相差フィルムを、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置の視野角特性を改善するのに好適な位相差フィルムとして用いることができるからである。
上記面内レターデーション(Re)および、厚み方向のレターデーション(Rth)は、波長依存性を有していてもよい。波長依存性を有することにより、可視光域の広い範囲において液晶表示装置の視野角特性を改善することが可能になるからである。
上記面内レターデーション(Re)および、厚み方向のレターデーション(Rth)の波長依存性の態様としては、長波長側の方が短波長側よりも値が大きい態様でもよく、また、短波長側の方が、長波長側よりも値が大きい態様でもよい。
また本発明の位相差フィルムは、JIS K7105に準拠して測定したヘイズ値が0%〜2%の範囲内であることが好ましく、特に0%〜1.5%の範囲内であることが好ましく、なかでも0%〜1%の範囲内であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムの形状は特に限定されるものではなく、その用途に応じてシート状、および、長尺状等のいずれの形状であってもよい。ここで、本発明の位相差フィルムが長尺状である場合、面内の遅相軸が長手方向に対して垂直な方向に向いていることが好ましい。すなわち、本発明の位相差フィルムは光学的にBプレートとしての性質を有することから面内の位相差性を有するものとなるが、面内の最も屈折率が高い方向が、基材の長手方向に対して垂直方向であることが好ましい。これにより、例えば、本発明の位相差フィルムを偏光子と連続的に貼り合わせることによって偏光フィルムを作製する際に、偏光子と、位相差フィルムとの光学特性の整合性を図ることが容易になるからである。
5.位相差フィルムの用途
本発明の位相差フィルムの用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置に用いられる光学補償板(例えば、視角補償板)、楕円偏光板、輝度向上板等に用いることができる。なかでも本発明の位相差フィルムは、液晶表示装置の視野角依存性改善のための光学補償板として好適に用いることができ、特に本発明の位相差フィルムは光学的にBプレートとしての性質を備えることから、VA方式の液晶表示装置用の光学補償板として最も好適に用いることができる。
また本発明の位相差フィルムは、偏光層と貼り合わせることにより、偏光フィルムとしての用途にも用いることができる。偏光フィルムは、通常偏光層とその両表面に保護層が形成されてなるものであるが、例えば、少なくとも一方側の保護層として本発明の位相差フィルムを用いることにより、光学補償機能を有する偏光フィルムとすることができる。
上記偏光層としては、特に限定されないが、例えばヨウ素系偏光層、二色性染料を用いる染料系偏光層やポリエン系偏光層などを用いることができる。ヨウ素系偏光層や染料系偏光層は、一般にポリビニルアルコールを用いて製造される。
6.位相差フィルムの製造方法
次に、本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。本発明の位相差フィルムは、基材としてセルロース誘導体からなり、上記表面配向性を有するものを用いること以外は、一般的に公知の方法を用いて製造することができる。なかでも本発明の位相差フィルムは、後述する「B.位相差フィルムの製造方法」の項において説明する方法によって最も高効率で製造することができる。
B.位相差フィルムの製造方法
次に本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。上述したように本発明の位相差フィルムの製造方法は、セルロース誘導体からなり、表面上に棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を有する基材を用い、上記基材上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工することにより、一方向に配列した棒状化合物を含有する位相差層形成用層を形成する位相差層形成工程と、上記位相差層形成用層が形成された基材を、上記棒状化合物の配列方向に対して垂直方向に延伸する延伸工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本発明の位相差フィルムの製造方法について図を参照しながら説明する。図3は本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の位相差フィルムの製造方法は、セルロース誘導体からなる基材1を用い(図3(a))、上記基材1上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工することにより、一方向に配列した棒状化合物を含有する位相差層形成用層2’を形成する位相差層形成工程と(図3(b))、上記位相差層形成用層2’が形成された基材を、上記棒状化合物の配列方向に対して垂直方向に延伸する延伸工程と(図3(c))、により、基材1上に棒状化合物を含有する位相差層2が積層された構成を有する位相差フィルム10を製造するものである(図3(d))。
このような例において、本発明の位相差フィルムの製造方法は、上記基材1が、表面上に棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記基材として上記表面配向性を備えるものが用いられることにより、上記位相差層形成工程において、該基材表面と平行な面内において任意の方向に遅相軸を有する位相差層形成用層が形成された積層体を得た後、これを上記延伸工程において、該基材表面と平行な面内において上記遅相軸とは垂直方向に延伸することによって、位相差層を形成することができる。
このため、本発明によれば光学的にBプレートとしての性質を有し、単一のフィルムで広範な光学特性を達成可能な位相差フィルムを製造することができる。
ここで、本発明の位相差フィルムの製造方法を用いて、広範な光学特性を達成可能な位相差フィルムを得ることができる理由については、上記「A.位相差フィルム」の項において説明した理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、少なくとも上記位相差層形成工程と、上記延伸工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
1.位相差層形成工程
まず、本発明に用いられる位相差層形成工程について説明する。本工程は、セルロース誘導体からなり、表面上に棒状化合物を一方向に配向させることが可能な表面配向性を有する基材を用い、上記基材上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工することにより、一方向に配列した棒状化合物を含有する位相差層形成用層を形成する工程である。このような工程により、基材と、上記基材上に形成された位相差層形成用層とを有する積層体であって、光学的に正のAプレートとしての性質を有する積層体が形成されることになる。
以下、このような位相差層形成工程について詳細に説明する。
なお、本工程に用いられる基材については、上記「A.位相差フィルム」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(1)位相差層形成用塗工液
まず、本工程に用いられる位相差層形成用塗工液について説明する。本工程に用いられる位相差層形成用塗工液は棒状化合物を含有するものである。本工程に用いられる位相差層形成用塗工液としては、上記棒状化合物を含有するものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記棒状化合物が溶媒に溶解されたものが用いられる。
ここで、本工程に用いられる棒状化合物については、上記「A.位相差フィルム」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記位相差層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記棒状化合物を所望の濃度に溶解できるものであり、かつ、本工程に用いられる基材を侵蝕しないものであれば特に限定されない。このような、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。本工程においてはこれらの溶媒の中でも、ケトン系溶媒を用いることが好ましく、なかでもシクロヘキサンが好適に用いられる。
なお、本工程に用いられる溶媒は1種類でもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
上記位相差層形成用塗工液中における上記棒状化合物の含有量としては、上記位相差層形成用塗工液を基材上に塗布する塗工方式等に応じて、上記位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできる範囲内であれば得に限定されない。なかでも本工程においては、上記棒状化合物の含有量が、上記位相差層形成用塗工液中、10質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、特に10質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
(2)位相差層形成用層の形成方法
次に、本工程において位相差層形成用層を形成する方法について説明する。上述したように本工程においては、基材上に位相差層形成用塗工液を塗工することにより位相差層を形成する。本工程に用いられる基材は上記表面配向性を備えるものであるため、基材上に位相差層形成用塗工液が塗布されると、当該表面配向性の作用によって棒状化合物が一方向に配列される。その結果として一方向に配列した棒状化合物を含有する位相差層形成用層を形成することができるのである。
本工程において、上記位相差層形成用塗工液を基材上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば特に限定されるものではない。本工程に用いられる塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができる。
上記位相差層形成用塗工液の塗膜の厚みについても、所望の平面性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、特に0.5μm〜30μmの範囲内が好ましく、なかでも0.5μm〜10μmの範囲内が好ましい。位相差層形成用塗工液の塗膜の厚みが上記範囲より薄いと形成される位相差層形成用層の平面性が損なわれる場合があり、また厚みが上記範囲より厚いと、溶媒の乾燥負荷が増大し、生産性が低下してしまう可能性があるからである。
上記位相差層形成用塗工液の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本工程における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
2.延伸工程
次に、本発明に用いられる延伸工程について説明する。本工程は上述した位相差層形成工程によって位相差層形成用層が形成された基材を、上記棒状化合物の配列方向に対して垂直方向に延伸する工程である。本工程によって光学的に負のCプレートとしての性質が付与されることにより、フィルム全体として光学的にBプレートとしての性質を有する位相差フィルムが製造されることになる。
本工程において上記位相差層形成用層が形成された基材を延伸する態様としては、本発明によって製造される位相差フィルムに所定の位相差性を発現させることができる態様であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程における延伸の態様は、延伸方向に遅相軸を発現させるように上記位相差層形成用層が形成された基材を延伸する態様であることが好ましい。このような態様で上記基材を延伸することにより、本発明によって製造される位相差フィルムを、より光学特性の発現性に優れたものにできるからである。
本工程において、上記位相差層形成用層が形成された基材を延伸する方法としては、所定の延伸倍率で均一に延伸できる方法であれば特に限定されるものではない。本工程に用いられる延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等を挙げることができる。
また、本工程において、上記光学異方性フィルムを延伸する延伸倍率としては、上記光学異方性フィルムに所望の光学異方性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、1.01倍〜1.4倍の範囲内であることが好ましく、特に1.1倍〜1.4倍の範囲内であることが好ましく、さらに1.15倍〜1.35倍の範囲内であることが好ましい。
3.他の任意の工程
本発明の位相差フィルムの製造方法は、上記位相差層形成工程、および、上記延伸工程以外に他の任意の工程を有してもよい。本発明に用いられる任意の工程としては、本発明によって製造される位相差フィルムの用途に応じて、所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような任意の工程としては、例えば、上記棒状化合物として重合性材料を用いる場合、上記重合性材料を重合する重合工程を挙げることができる。
なお、上記重合工程において、上記重合性材料を重合する方法としては、上記重合性材料が有する重合性官能基の種類に応じて任意に決定すればよい。
上記重合工程を実施するタイミングとしては、上記位相差層形成工程の後であれば特に限定されるものではない。したがって、上記位相差層形成工程後、上記延伸工程前に実施してもよく、あるいは、上記延伸工程後に実施してもよい。
4.その他
本発明においては、上記基材が長尺状のものであり、かつ、上記表面配向性が棒状化合物を上記基材の長手方向と平行な方向に配向させるものであることが好ましい。このような方法によれば、連続プロセスにより本発明を実施することが可能になることから、高い製造効率で位相差フィルムを製造することが可能になるからである。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
1.実施例1
棒状化合物として下記式(I)で表される光重合性液晶化合物を用い、重合開始剤(イルガキュア907:日本チバガイギー社製)を上記光重合性液晶化合物に対して5質量%とし、シクロヘキサノンに15質量%溶解させ、位相差層形成用塗工液とした。
基材として、厚み80μmの長尺トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製 TD80ULH:ドラム方式にて製膜)を用い、当該基材上に、上記位相差層形成用塗工液をバーコート法により塗工し、40℃のオーブンで2分間乾燥させた。さらに、形成された塗膜を、窒素雰囲気下で100mJ/mの紫外線を照射することによって硬化させた。
Figure 2008197449
ここで、上記基材の反射法におけるX線回折測定を行ったところ、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.62であり、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.15であった。
また、作製された積層体の光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ10.9nm、197.3nmであった。面内の遅相軸の方向は0°(基材の長手方向に対して平行な方向)であった。
次に、上記積層体を150℃に加温し、積層体を、該基材表面と平行な面内において、該基材の長手方向に対して垂直な方向に1.15倍延伸することにより位相差フィルムを作製した。
作製された位相差フィルムの光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ39.7nm、222.3nmであった。面内の遅相軸の方向は90°(基材表面と平行な面内において、該基材の長手方向に対して垂直な方向)であった。
2.実施例2
基材として、厚み80μmの長尺トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製 TDY80UL:ドラム方式にて製膜)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により位相差フィルムを作製した。
ここで、上記基材の反射法におけるX線回折測定を行ったところ、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.62であり、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.15であった。
作製された位相差フィルムの光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ37.8nm、249.4nmであった。また、面内の遅相軸の方向は90°(基材表面と平行な面内において、該基材の長手方向に対して垂直な方向)であった。
また、延伸前の積層体の光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ12.0nm、226.7nmであり、面内の遅相軸の方向は0°(基材の長手方向に対して平行な方向)であった。
3.比較例1
基材として、厚み80μmの長尺トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製 TF80UL:ベルト方式にて製膜)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により位相差フィルムを作製した。
ここで、用いた基材の反射法におけるX線回折測定を行ったところ、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.32であり、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.03であった。
作製された位相差フィルムの光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ72.5nm、184.3nmであった。また、面内の遅相軸の方向は90°(基材表面と平行な面内において、該基材の長手方向に対して垂直な方向)であった。
また、延伸前の積層体の光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ3.0nm、167.2nmであり、面内の遅相軸の方向は0°(基材の長手方向に対して平行な方向)であった。
4.比較例2
基材として、厚み80μmの長尺トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製 KC8UX2MW:ベルト方式)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により位相差フィルムを作製した。
ここで、用いた基材の反射法におけるX線回折測定を行ったところ、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.44であり、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.03であった。
作製された位相差フィルムの光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ72.3nm、183.6nmであった。また、面内の遅相軸の方向は90°(基材の長手方向に対して垂直な方向)であった。
また、延伸前の積層体の光学特性は、23℃、55%RHの環境下で、波長589nmの測定波長で測定した面内レターデーション、および、厚み方向のレターデーションがそれぞれ1.7nm、176.8nmであり、面内の遅相軸の方向は0°(基材の長手方向に対して平行な方向)であった。
本発明の位相差フィルムの一例を示す概略斜視図である。 本発明の位相差フィルムの他の例を示す概略図である。 本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。 一般的な液晶表示装置の一例を表す概略断面図である。 2枚の位相差フィルムを用いた液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 基材
2 … 位相差層
2’ … 位相差層形成用層
10 … 位相差フィルム
100 … 液晶表示装置
101 … 液晶セル
102A、102B … 偏光板
103,104 … 位相差フィルム

Claims (8)

  1. セルロース誘導体からなる基材と、前記基材上に直接形成され、棒状化合物を含有する位相差層とを有し、光学的にBプレートとしての性質を有する位相差フィルムであって、
    前記基材が、表面上に前記棒状化合物を一方向に配列させる表面配向性を備えることを特徴とする、位相差フィルム。
  2. 前記基材が、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.55以上であることを特徴とする、請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 前記基材が、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.1以上であることを特徴とする、請求項1に記載の位相差フィルム。
  4. セルロース誘導体からなり、表面上に棒状化合物を一方向に配列させる表面配向性を有する基材を用い、前記基材上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を直接塗工することにより、一方向に配列した棒状化合物を含有する位相差層形成用層を形成する位相差層形成工程と、
    前記位相差層形成用層が形成された基材を、前記棒状化合物の配列方向に対して垂直方向に延伸する延伸工程と、を有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記基材が、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=8.5°の強度I8.5と2θ=17°の強度I17との比I8.5/I17が1.55以上であることを特徴とする、請求項4に記載の位相差フィルムの製造方法。
  6. 前記基材が、反射法におけるX線回折チャートにおいて、入射X線の延長線と反射X線とのなす角を2θとしたとき、2θ=13.2°の強度I13.2と2θ=14.8°の強度I14.8との比I13.2/I14.8が1.1以上であることを特徴とする、請求項4に記載の位相差フィルムの製造方法。
  7. 前記基材が長尺状のものであり、かつ、前記表面配向性が棒状化合物を基材の長手方向と平行な方向に配向させるものであることを特徴とする、請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムの製造方法。
  8. 前記延伸工程が、延伸方向に遅相軸を発現させるように前記位相差層形成用層が形成された基材を延伸するものであることを特徴とする、請求項4から請求項7までのいずれかの請求項に記載の位相差フィルムの製造方法。
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