JP2008196016A - 磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷延後の鋼板に脱炭焼鈍を施し、その後仕上げ焼鈍を施すにあたり、仕上げ焼鈍の昇温過程において鋼板の粒径を測定し、測定した前記粒径の変化から二次再結晶の開始を検知し、二次再結晶の開始を検知した後、昇温速度を20℃/hr以下に変更する。
【選択図】図1
Description
しかし、仕上げ焼鈍は、鋼板を積層状態で、密閉した状態でバッチ焼鈍するため、上記のようなオンラインの測定方法を採用することができないという問題がある。
そのような知見の結果なされた本発明の要旨は、次のとおりである。
(2)前記鋼板を積層した状態で仕上げ焼鈍するとともに、積層された鋼板の端面の結晶粒径を測定することを特徴とする(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)脱炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒径をd0、昇温過程において測定された結晶粒径をd1とするとき、d1/d0≧1.2となった後に、加熱速度を変更することを特徴とする(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(4)レーザ超音波法によって結晶粒径の測定を行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(5)前記方向性電磁鋼板が、質量%でC:0.02〜0.10%、Si:2.5〜4.5%、酸可溶性Al:0.010〜0.050%、N:0.003〜0.013%、S:0.015〜0.040%、Mn:0.040〜0.120%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(6)前記方向性電磁鋼板が、Sに変わり、S+0.405Se:0.005〜0.020質量%の範囲でSeを含有することを特徴とする(5)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(7)前記方向性電磁鋼板のBi、Sb、Sn、Pb、Te、Tl、In、Gaの一種以上を、総量で0.16質量%以下含有することを特徴とする(5)または(6)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(8)加熱速度を20℃/hr以下に変更する温度が850℃以上となるように前記方向性電磁鋼板の化学成分が調整されていることを特徴とする(5)〜(7)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
結晶粒径の測定には、前記のように特許文献3に記載されているようなレーザ超音波法を利用して行う。以下、レーザ超音波法による結晶粒径の測定について説明する。
その際、反射超音波の振動数の測定にはレーザ干渉計を用いる。パルスレーザ光の照射位置に測定用レーザ光を照射すると、測定用レーザ光は鋼板の表面で反射されるが、その際、鋼板の表面の超音波振動に起因するドップラーシフトを受けて周波数が変化する。周波数が変化した反射レーザ光は干渉計に入力され、干渉計によって周波数の変化を透過光強度の変化として検出することにより反射超音波の振動数を測定する。反射超音波の振動数は、結晶粒径と関連しているので、レーザ干渉計の検出値から計算によって結晶粒径が求められる。
脱炭焼鈍後の鋼板は、シート状に積層され、またはコイル状に巻かれた状態で積層され箱型の高温焼鈍炉内で仕上げ焼鈍される。焼鈍炉は、保護カバーとインナーカバーよりなり、積層された鋼板はインナーカバー内にセットされる。保護カバーとインナーカバーには、炉内温度などを測定するプルーブをセットするためにプルーブホールが設けられており、振動発生用と測定用のレーザ光を、それぞれプルーブホールを利用して鋼板に照射する。
脱炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒径d0に対する仕上げ焼鈍の昇温時に測定された結晶粒径d1の比d1/d0は、鋼板温度が770℃に至るまでは殆どその変化が観測されなかったが、その後徐々に増大し850℃において1.2倍に達し、以後急激に増大している。
方向性電磁鋼板における二次再結晶は、一次再結晶粒のうちの{110}〈001〉方位粒が他の粒を蚕食して成長する現象であり、この例では、二次再結晶は、800℃前後から開始していると推測される。
本発明者の検討によれば、結晶粒径が急激に増大する直前の比d1/d0≧1.2となった後に、できるだけすみやかに所定の加熱速度に低下させることにより、二次再結晶粒径のばらつきを低減できることを見出した。
しかし、加熱速度を低下させる時期は遅くなると高磁束密度が得られなくなるので、比d1/d0<1.6の間とする。
特許文献1では、900℃以上の温度域を2〜10℃/hrとしているが、本発明のように二次再結晶の開始を検知して加熱速度を変更する場合は、20℃/hr以下で十分2次再結晶を起こさせることができる。加熱速度の下限は、特許文献1のように2℃/hrでもよいが、加熱効率の点からは、7℃/hr以上が望ましい。
本発明では、方向性電磁鋼板用素材として、一般に方向性電磁鋼板用として知られている鋼が使用できる。
好ましい鋼の化学組成は、質量%でC:0.02〜0.10%、Si:2.5〜4.5%、酸可溶性Al:0.010〜0.050%、N:0.003〜0.013%、S:0.015〜0.040%、Mn:0.040〜0.120%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるもの、あるいは、上記成分のSに代えてS+0.405Se:0.005〜0.020質量%の範囲でSeを含有させたもの、さらには、Bi、Sb、Sn、Pb、Te、Tl、In、Gaの一種以上を総量で0.16質量%以下含有させたものである。
各成分の選定理由は次のとおりである。
また、Sb、Sn、Pb、Te、Tl、In、Gaも、Biと同様に磁気特性の改善に影響を及ぼすので、これらを含有する場合はBiも含め総量で0.16%以下にすることが望ましい。
Crは、脱炭焼鈍の酸化層を改善し、グラス被膜形成に有効な元素であり、0.3%以下の範囲で添加する。
Cuは、比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.4%を超えると鉄損低減効果が飽和するとともに、熱延時に「カッパーヘゲ」なる表面疵の原因になる。
Niは比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。また、熱延板の金属組織を制御して磁気特性を向上させるうえで有効な元素である。しかしながら、添加量が1%を超えると二次再結晶が不安定になる。
本発明では、その仕上げ焼鈍の昇温過程において、前述のように結晶粒径を測定して、加熱速度を変更することにより、磁気特性のバラツキなく、良好な磁気特性の方向性電磁鋼板を得ることができる。
次に、このコイルを脱炭焼鈍し、その過程で1次再結晶させた。これを長さ500mmの鋼板に切断した後、電解脱脂を実施し、焼鈍分離剤を塗布して順次積層し、この積層体を両側から400m×500mmの大きさで、厚みが100mmのレンガ2枚で挾み、箱型高温焼鈍炉に装填した。
検出された反射波の振動数を、鋼板の結晶粒径に換算するためのソフトウエアは、センサーコントローラーとして接続されたパソコンに組み込んでおき、反射波の信号を鋼板の結晶粒径として表示できるアルゴリズムを設定した。なお、焼鈍炉内には水素を導入する必要があるので、プロープホールは雰囲気漏れが無いよう十分にシールした。ここで高温焼鈍前の鋼板にレーザ光を当てて平均結晶粒径を測定したところ13.8μmであった。
また、従来技術として、鋼板温度が850℃になった時点で昇温速度を15℃/hrに下げた場合の試料も同様に作成し、磁気測定を行った。
測定された試料の磁束密度を区分に分け、各区分に該当する試料の数を数えた。その結果を表1に示す。
また、従来技術として、鋼板温度が860℃になった時点で昇温速度を17℃/hrに下げた場合の試料も同様に作成し、磁気測定を行った。その結果を表2に示す。
また、従来技術として、鋼板温度が860℃になった時点で昇温速度を10℃/hrに下げた場合の試料も同様に作成し、磁気測定を行った。その結果を表3に示す。
2 コイル
3 インナーカバー
4 インナーカバーの首部
5 インナーカバーに設けられた透明石英ガラス板
6 保熱カバー
7 保熱カバーに設けられた透明石英ガラス板
8 照射ヘッド
9 光ファイバー
10 パルスレーザ光
11 超音波測定用レーザ光
Claims (8)
- 方向性電磁鋼板の製造方法において、冷延後の鋼板に脱炭焼鈍を施し、その後仕上げ焼鈍を施すにあたり、仕上げ焼鈍の昇温過程において前記素材の結晶粒径を測定し、測定した前記粒径の変化から二次再結晶の開始を検知し、二次再結晶の開始を検知した後、加熱速度を20℃/hr以下に変更することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を積層した状態で仕上げ焼鈍するとともに、積層された鋼板の端面の結晶粒径を測定することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 脱炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒径をd0、昇温過程において測定された結晶粒径をd1とするとき、d1/d0≧1.2となった後に、加熱速度を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- レーザ超音波法によって結晶粒径の測定を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記方向性電磁鋼板が、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:2.5〜4.5%、酸可溶性Al:0.010〜0.050%、N:0.003〜0.013%、S:0.015〜0.040%、Mn:0.040〜0.120%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記方向性電磁鋼板が、Sに変わり、S+0.405Se:0.005〜0.020質量%の範囲でSeを含有することを特徴とする請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記方向性電磁鋼板が、Bi、Sb、Sn、Pb、Te、Tl、In、Gaの一種以上を、総量で0.16質量%以下含有することを特徴とする請求項5または6に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 加熱速度を20℃/hr以下に変更する温度が850℃以上となるように前記方向性電磁鋼板の化学成分が調整されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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