JP2008192798A - 面発光レーザ - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン注入型の面発光レーザ素子の素子抵抗を低減し、レーザ発振のしきい値電流を抑える。
【解決手段】面発光レーザは、上部DBRミラー15と、下部DBRミラー12の間に配置された活性層13を有し、電流狭窄構造14によって発光領域18を規定している。上部又は下部DBRミラーを構成する積層のうち、活性層13の近傍に配置される特定層が、mを1以上の自然数、媒質内発振波長をλとして、((m/2)+1/4)λの厚みを有し、選択的にイオンが注入されて電流狭窄構造14を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、面発光レーザに関し、更に詳しくは、電流狭窄構造を有する垂直共振器型面発光半導体レーザ素子に関する。
垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Semiconductor Laser、以下、単に面発光レーザと称する)は、その名の示す通り、光の共振する方向が基板面に対して垂直であり、光インターコネクションを始め、通信用光源として、或いは、センサー用途などの様々なアプリケーション用デバイスとして注目されている。
面発光レーザが注目される理由は、面発光レーザが、従来の端面発光型半導体レーザと比較して、素子の2次元配列構造を容易に形成できること、ミラーの形成前に劈開する必要がないので、ウエハレベルのテストができること、活性層の体積が格段に小さいので、極めて低いしきい値電流で発振ができ、消費電力が小さいこと、などの種々の利点を有していることが挙げられる。
面発光レーザでは、低しきい値電流での発振を実現するため、電流狭窄構造が形成されている。この電流狭窄構造の作製には、AlAs層を選択的に酸化する選択酸化法(例えば、特許文献1参照)や、電流開口部を残してイオン注入を行うイオン注入法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
選択酸化法は、電流狭窄構造の厚みが例えば20nm程度と小さいので、その狭窄構造に起因する素子抵抗の増大を抑えることが出来る利点がある。しかし、その反面、選択酸化によって応力歪みが発生し、その応力歪みによって素子が発振中に破壊するなど、素子信頼性を損なうという欠点がある。一方、イオン注入法では、そのような応力歪みが発生しない利点がある。
図7は、イオン注入法により形成される電流狭窄構造を有する従来の面発光レーザを示す。面発光レーザ100は、GaAs基板11上に順次に形成される、下部分布ブラッグ反射鏡(DBRミラー)12、量子井戸構造を有する活性層13、及び、上部DBRミラー15から成る半導体材料から成る積層構造を有する。上部DBRミラー15の上部には上部電極16が、また、GaAs基板11の裏面には下部電極17が形成され、上部電極16と下部電極17との間に電源電圧が印加される。
上部電極16から注入された電流は、電流狭窄構造14によって活性層13の中央部の発光領域18に導かれ、上部DBRミラー15と下部DBRミラー12との間でレーザ発振が発生する。発振したレーザは、図の場合には上部電極16の内側の領域から上方に発射される。
図7のイオン注入型の面発光レーザ素子とは別に、発光面積を広くし、かつ基本横モード発振を得るための手段として、非特許文献1に示されるような構造のフォトニック結晶面発光レーザが提案されている。この構造の一例を図8に示す。この構造では、上部DBRミラー15の積層内に、2次元アレイ状に配列された円孔から成る円孔配列20が形成されている。周期的な2次元円孔配列20により、光が感じる屈折率が僅かに低下し、この2次元円孔配列20は、中央の円孔がない点欠陥領域に対してクラッドとして働く。このように弱い屈折率閉じ込め効果による横モード制御を行うため、基本横モードのみを発振させるための発光領域の面積を大きくすることができる。この面発光レーザにおいても、例えばイオン注入型の電流狭窄構造14が形成される。
特開2005−317816号公報 特開2005−129960号公報 IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics, Vol.9, No.5, pp.1439-1445, September/October 2003
ところで、イオン注入法で作製される電流狭窄構造では、イオンが有する注入エネルギーの分布のため、注入深さの制御が困難である。このため、電流狭窄構造の厚みが1.5μm程度と大きくなり、DBRミラーの複数層にまたがって電流狭窄構造が形成される。この電流狭窄構造が形成される領域では、注入電流が分布ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector : DBR)の界面である多数のヘテロ障壁を通過するため、素子抵抗が増大するという問題がある。この問題は、基本横モード発振を得るため、発光領域の開口径を小さくすると、すなわち電流狭窄領域を広くすると、特に顕著であった。
本発明は、上記に鑑み、イオン注入法で作製される電流狭窄構造を有する従来の面発光レーザを改良し、もって、素子抵抗が低く且つ基本横モード発振が容易に得られる面発光レーザ素子を提供することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するためになされたものである。すなわち本発明の面発光レーザは、上部分布ブラッグ反射鏡(DBRミラー)と、下部DBRミラーと、前記上部DBRミラーと前記下部DBRミラーとの間に配置された活性層とを含む半導体材料の積層構造を基板上に備える面発光レーザにおいて、
前記上部又は下部DBRミラーを構成する積層のうち、前記活性層の近傍に配置される特定層が、mを1以上の自然数、媒質内発振波長をλとして、((m/2)+1/4)λの厚みを有し、前記特定層に選択的にイオンが注入されて電流狭窄構造が形成されていることを特徴とする。
本発明に係る面発光レーザでは、イオン注入が主として活性層近傍の特定層である1層になされており、この特定層の厚みがmを1以上の自然数として(m/2+1/4)λであるため、イオン注入領域を構成する層数が従来の面発光レーザに比して少なくなり、電流狭窄領域において電流が通過するヘテロ障壁の数が減少する。このため素子抵抗が低い面発光レーザの実現が可能となる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、理解を容易にするために、各図面で同様な要素には、同じ符号を付している。
第1の実施形態
本実施形態による面発光レーザ素子の断面斜視図を図1に示す。この面発光レーザ素子10は、発振波長850nmとなるように設計されている。面発光レーザ素子10は、以下の製造プロセスによって作製される。製造プロセスを図2〜図4に示した。まず、n型GaAs基板11の上に、MOCVD法でそれぞれ厚みがλ/4n(λは空気中の発振波長、nは屈折率)のn型Al0.8Ga0.2Asとn型Al0.2Ga0.8Asを交互に積層して、35ペアの多層膜からなる下部分布ブラッグ反射鏡構造(DBRミラー)12を形成する。各層のキャリア濃度は1×1018cm-3とする。
次に、下部DBRミラー12上に、図示しない下部クラッド層、4層のGaAs/AlGaAs量子井戸構造の活性層13、図示しない上部クラッド層を順次に積層する。更にその上に、厚みがλ/4nのp型Al0.8Ga0.2Asと、厚みが25λ/4n(m=12に相当し、膜厚は1520nm)と厚くしたp型Al0.2Ga0.8Asを成長する。更に、その上にそれぞれ厚みがλ/4nのp型Al0.8Ga0.2Asと、型Al0.2Ga0.8Asを交互に積層して、29ペアからなる上部DBRミラー15を形成する。各層のキャリア濃度は1×1018cm-3とする。厚みが25λ/4nとした上部DBRミラー15の2層目のp型Al0.2Ga0.8Asの厚さは、後述するイオン注入で形成される絶縁領域層の厚さ約1500nmとほぼ等しくなるように設計される。この上部DBRミラー15の最上層の表面には、p型のGaAs層が形成され、全体の層構造を構成している。この状態の積層を図2に示した。厚みが25λ/4nのp型Al0.2Ga0.8As層は、符号14Aで示されている。
次に、図2の層構造の表面に、プラズマCVD法でSiNx膜21を成膜したのち、その上に通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーにより、フォトレジスト19を直径10μmの円柱状に加工する。ここでイオン注入マスクとして用いるフォトレジスト19に代えて、Au(金)を用いてもよい。その後、イオン注入装置により、水素イオン(プロトン)を加速エネルギー400keV、ドーズ量4×1014cm-2にて注入し、25λ/4n厚みのp型AlGaAs層14Aの外周部分を、注入領域14Bに変える。これによって、注入されなかった部分14Aを発光領域18とする電流狭窄構造14が形成される。この状態を図3に示した。なお注入するイオンは、水素に限らず、高抵抗な絶縁層を形成可能な材料であれば良く、例えば酸素などでもよい。フォトレジスト19を除去した後に、温度450℃にてアニールを行い、その後SiNx膜21を除去する。
次に、上記層構造の表面に、再度プラズマCVD法でSiNx膜22を成膜したのち、その上に通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーとRIE(反応性イオンエッチング)により、SiNx膜22を選択的にエッチングして、リング状(環状)の開口を形成する。形成した開口内に、例えばAuZnを蒸着して、リング形状の上部電極16を形成する。その後、基板11を厚さ200μm程度になるように研磨し、その裏面に例えばCr/Auを蒸着して、下部電極17を形成する。この状態を図4に示した。
上記の面発光レーザ素子の特性を計算シミュレーションにより評価したところ、素子抵抗は80Ω程度と見積もられた。一方、上部DBRミラーの2層目のp型Al0.2Ga0.8Asの厚さをλ/4nとした従来型の素子では、素子抵抗は140Ω程度と高かった。以上のように、イオン注入型の面発光レーザ素子において、電流狭窄構造を形成するイオン注入層の厚みを大きくすることにより、素子抵抗が大幅に低減できることが判った。なお、本発明は、イオン注入型に限らず、全ての面発光レーザ素子に適用できる。
なお、上記実施形態では、イオン注入は大きな厚みを有する上部DBRミラー内の1層についてのみなされているが、イオン注入される層は、その大きな厚みを有する1層に接する又は近接する他の1以上の層にイオンが注入されていてもよい。このような例を図5に示した。
第2の実施形態
本実施形態は、非特許文献1に記載されたフォトニック結晶面発光レーザに本発明を適用した例である。本実施形態に係る面発光レーザの断面斜視図を図6に示す。面発光レーザは、発振波長が1300nmとなるように設計されている。作製方法は、2次元円孔配列を形成する点以外においては,第1の実施形態とほぼ同様に行うことができる。
まず、n型GaAs基板11の上に、MOCVD法でそれぞれ厚みλ/4n(λは発振波長、nは屈折率)のn型Al0.9Ga0.1Asとn型GaAsとを交互に積層して、35ペアの多層膜からなる下部DBRミラー12を形成する。各層のキャリア濃度は、1×1018cm-3とする。次に、その上に、ガスソースMBE法により、図示しない下部クラッド層、3層のGaInNAsSb/GaNAs量子井戸構造の活性層13、及び、図示しない上部クラッド層を順次に積層する。
次いで、その上に、MOCVD法で厚みがλ/4nのp型Al0.9Ga0.1As層と、厚みが17λ/4n(m=8に相当、膜厚は1540nm)のp型GaAs層24Aとを積層する。更に、その上にそれぞれの厚みがλ/4nのp型Al0.9Ga0.1As層とp型GaAs層とを交互に積層して、20ペアからなる上部DBRミラー15を形成する。各層のキャリア濃度は1×1018cm-3とする。
次に、上記積層構造の表面に、プラズマCVD法でSiNx膜を成膜したのち、その上に通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーにより、イオン注入マスクとして用いるフォトレジストを、直径10μmの円柱状に加工する。なお、フォトレジストの代りにAu(金)を用いてもよい。その後、イオン注入装置により、水素イオン(プロトン)を加速エネルギー400keV、ドーズ量4×1014cm-2にて注入し、17λ/4nのp型GaAs層24Aの外周部分を、注入領域24Bに変える。これによって、注入されなかった部分24Aを発光領域18とする電流狭窄構造24が形成される。フォトレジストを除去した後に、温度550℃にてアニールを行い、その後SiNx膜を除去する。
次に、上記積層構造の表面に、プラズマCVD法でSiNx膜22を成膜したのち、通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーとRIE(反応性イオンエッチング)とにより、SiNx膜に、周期が5μm、円孔直径が2μmである三角格子状の円孔配列構造を形成する。このSiNx膜中に形成した円孔配列構造をマスクとして、Cl2を用いたICP(誘導結合プラズマ)ドライエッチングにより、積層構造に深さ4μm程度の2次元円孔配列20を形成する。さらにRIEにより、SiNxマスクを除去する。
次に、2次元円孔配列20を形成した積層構造の表面に、プラズマCVD法でSiNx膜22を成膜したのち、その上に通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーとRIE(反応性イオンエッチング)とにより、SiNx膜22を選択的にエッチングして、リング状開口を形成する。その開口内に例えばAuZnを蒸着して、リング形状の上部電極16を形成する。その後、基板11を厚さ200μm程度になるように裏面から研磨し、その裏面に例えばCr/Auを蒸着して、下部電極17を形成する。
上記フォトニック結晶構造を有する面発光レーザの特性を、計算シミュレーションにより評価したところ、素子抵抗は90Ω程度と見積もられた。上部反射鏡構造の2層目のp型Al0.2Ga0.8Asの厚さをλ/4nとした従来型のフォトニック結晶面発光レーザでは、素子抵抗は150Ω程度と高かった。従って、本実施形態のイオン注入型のフォトニック結晶面発光レーザ素子では、素子抵抗が大幅に低減できることがわかった。
なお、従来のフォトニック結晶面発光レーザでは、AlAs選択酸化層を用いた電流狭窄構造が採用されていた。この従来構造では、AlAsと、AlAsが酸化したAlOxとの間で屈折率差が大きいため、高電流の注入時や高速変調時にはモードが不安定になることがあった。一方、本発明の構造によると、電流狭窄構造を形成するにあたり、屈折率差を生じないイオン注入法を用い、フォトニック結晶面発光レーザのDBRミラー内の主として1層の部分にイオン注入を行い、この1層の厚さを媒質内発振波長の(m/2)+1/4倍としているので、モードが安定で、かつ素子抵抗の低いフォトニック結晶面発光レーザ素子を得ることができる。
以上、本発明をその好適な実施態様に基づいて説明したが、本発明の面発光レーザは、上記実施態様の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施態様の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
本発明の第1の実施形態に係る面発光レーザ素子の一部を切り欠いて示す斜視図。 図1の面発光レーザを、その製造プロセス中の一工程段階で示す斜視図。 図1の面発光レーザを、図2に後続する工程段階で示す斜視図。 図1の面発光レーザを、図3に後続する工程段階で示す斜視図。 第1の実施形態の変形例に係る面発光レーザ素子の一部を切り欠いて示す斜視図。 第2の実施形態に係る面発光レーザ素子の一部を切り欠いて示す斜視図。 イオン注入型の従来の面発光レーザ素子の一部を切り欠いて示す斜視図。 フォトニック結晶型の従来の面発光レーザ素子の一部を切り欠いて示す斜視図。
符号の説明
10:面発光レーザ
11:基板
12:下部DBRミラー
13:活性層
14:電流狭窄構造
14A:p型Al0.2Ga0.8As層
14B:注入領域
15:上部DBRミラー
16:上部電極
17:下部電極
18:発光領域
19:フォトレジスト
21:SiNx膜
22:SiNx膜
24:電流狭窄構造
24A:p型GaAs層
24B:注入領域

Claims (9)

  1. 上部分布ブラッグ反射鏡(DBRミラー)と、下部DBRミラーと、前記上部DBRミラーと前記下部DBRミラーとの間に配置された活性層とを含む半導体材料の積層構造を基板上に備える面発光レーザにおいて、
    前記上部又は下部DBRミラーを構成する積層のうち、前記活性層の近傍に配置される特定層が、mを1以上の自然数、媒質内発振波長をλとして、((m/2)+1/4)λの厚みを有し、前記特定層に選択的にイオンが注入されて電流狭窄構造が形成されていることを特徴とする面発光レーザ。
  2. 前記自然数mが5以上であることを特徴とする、請求項1に記載の面発光レーザ。
  3. 前記自然数mが8以上であることを特徴とする、請求項1に記載の面発光レーザ。
  4. 特定層の厚さが1μm以上で2μm以下であることを特徴とする、請求項1から3の何れか一に記載の面発光レーザ。
  5. 前記注入されたイオンが水素イオンであることを特徴とする、請求項1から4の何れか一に記載の面発光レーザ。
  6. 前記注入されたイオンが酸素イオンであることを特徴とする、請求項1から4の何れか一に記載の面発光レーザ。
  7. 前記基板がn型GaAs基板であることを特徴とする、請求項1から6の何れか一に記載の面発光レーザ。
  8. 前記上部分布DBRミラーには、中央部に空孔欠陥を有する2次元空孔配列が、基本横モードレーザ発振を実現するように形成されていることを特徴とする、請求項1から7の何れか一に記載の面発光レーザ。
  9. 発振波長が1μm以上で1.6μm以下であることを特徴とする、請求項1から8の何れか一に記載の面発光レーザ。
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