JP2008189978A - 熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動車用、家電用等の用途に好適な機械的強度、加工性及び熱的安定性に優れた熱延鋼板とその製造方法の提供。
【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.2%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.2%以下、sol.Al:0.001〜0.5%、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Ti+Nb:0.1%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼組成を有し、フェライトを主相とする鋼板で、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と平均結晶粒径D(μm)がD・X≦0.1を満足し、平均粒径200nm以下のセメンタイトがフェライト粒内に所定量析出している熱延鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、超微細な結晶粒を有する熱延鋼板及びその製造方法に関する。詳しくは、自動車用、家電用、機械構造用、建築用等の用途に用いられる素材として好適な機械的強度、加工性及び熱的安定性に優れた熱延鋼板及びその製造方法に関する。
自動車に用いられる構造用部材の素材として供される鋼板には、強度、加工性、靱性などに優れた機械的特性のみならず、部品組み立て時の溶接性や、使用時の耐食性が求められる場合がある。さらに、安全性確保の観点から衝撃吸収性も重要視されている。これらの機械的特性を総合的に高めるには、鋼板の組織を微細化することが有効である。そのため、鋼板の組織を微細にするための方法が数多く提案されてきている。
従来技術における組織微細化の手段の一つに大圧下圧延法がある、この方法は、圧下率を50%程度以上と大きくして、1パスの圧延で大きな歪みを蓄積させ、その後オーステナイトから微細フェライトへと変態させるか、もしくは大歪みを利用して比較的粗大なフェライトを微細フェライトへ再結晶させる手法である。かかる手法によれば、1000℃近傍以下の温度に加熱した後、700℃近傍の低温域で大圧下圧延を行うことによって、1〜3μmの超微細フェライト組織が得られる。しかし、この方法は、工業的に実現し難いばかりか、微細フェライト組織が熱処理によって粒成長し易いという問題点を有している。
他の組織微細化法として合金元素添加法がある。この方法は、オーステナイトの再結晶や回復を抑制する合金元素の微量添加によってフェライト結晶粒の微細化を促進するものである。Nb、Ti等の合金元素は、炭化物を形成したり、粒界に偏析したりして、オーステナイトの回復と再結晶を抑制するため、熱間圧延後のオーステナイト粒が微細化して、オーステナイトからの変態で得られるフェライト結晶粒も微細化する。この方法は、熱処理の際にもフェライトの粒成長を抑制する効果も持っているが、フェライトの体積率を低下させたり、析出の不均一による機械的特性のバラツキを生じたりすることによって、細粒化による特性向上が得られない場合がある。また、添加する合金元素の分だけ原料コストが嵩む。
したがって、これらの方法では微細な結晶組織の鋼板を得ても、細粒化による機械的特性の向上が得られない場合がある。また、その組織の熱的安定性も低く、組織を微細化して機械的特性を高めたとしても、その後の熱処理によって結晶粒が容易に粗大化してしまい、その機械的特性が極端に損なわれてしまうという問題点があった。
これらの細粒化方法に言及した先行文献として、特許文献1がある。ここでは、Ar+50℃からAr+100℃の温度域で1秒以内に一回もしくは二回以上の合計圧下率が50%以上の加工を加え、加工終了後の600℃以上の温度域で20℃/秒以上の冷却速度の強制冷却を行う方法が開示されている。
また、特許文献2には、動的再結晶温度域での圧下を5スタンド以上の圧下パスにて行い、かつ、この動的再結晶温度域で圧下を加える最初のスタンド入り側と最後のスタンド出側の温度差を60℃以下にする方法が開示されている。
特開昭59−205447号公報 特開平11−152544号公報
本発明は、超微細な結晶粒を有し、熱的安定性と機械的特性に優れる熱延鋼板及びその製造する方法を提供することを目的とする。具体的には、Ti、Nb、Vなどの析出強化型の合金元素を極力低減した機械的特性と熱的安定性に優れる微細粒熱延鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、種々の鋼板において検討をおこなった結果、以下の(a)〜(f)に示す知見を得た。
(a) Ti、Nb、Mo、Vなどの析出強化元素添加による細粒化では、フェライト変態の遅延化および特性のバラツキなどにより、延性および穴拡げ性といった機械的特性が著しく低下する場合がある。したがって、これらの析出強化元素の含有量は低減する必要がある。したがって、これらの元素の含有量は、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、かつ、Ti+Nb:0.1%以下とする必要がある。好ましくは、これらの元素は添加せずに不純物レベルの混入以下にとどめることである。
(b) 析出強化元素の含有量を低減した鋼板においては、圧延仕上げ後の冷却中にフェライト粒内にセメンタイトを微細に析出させ、該セメンタイトの平均粒径が200nm以下の体積個数密度を10〜10個/μmとすることにより高い強化能が得られると共に降伏強度比も上昇し、さらに穴拡げ性の向上効果も得られる。したがって、フェライト粒内にセメンタイトを微細に析出させ、該セメンタイトの粒径を200nm以下とし、フェライト粒内におけるその体積個数密度を10〜10個/μmとすることが好ましい。穴拡げ性向上の原因は定かでは無いが、粒内にセメンタイトが析出するため、相対的に粒界に析出するセメンタイト量が減少することが一因であると推測する。
(c) さらに、機械的特性と熱的安定性をともに優れたものとするためには、フェライトの平均結晶粒径を一定の範囲にとどめることに加えて、A点直下の700℃近傍の温度におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の増加速度X(μm/min)と、この平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)に上限を設けることが重要である。
フェライトの結晶粒径は小さくなるほど強度が増加するが、結晶粒径が小さくなりすぎると粒界エネルギーによる粒成長の駆動力が増加するため、高温における粒成長が促進されてしまうことがわかった。具体的には、平均結晶粒径が1.2μmを下回るようになると、高温での粒成長を抑止することが困難になり、逆に、平均結晶粒径が2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μmおよび7μmのいずれかを上回ると、微細化による機械的特性の向上が十分に期待できなくなることが判明した。したがって、機械的特性と熱的安定性を両立するためには、フェライトの平均結晶粒径の下限として1.2μmを採用し、そして、上限として2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μmおよび7μmのうちの小さい方の値を採用する必要がある。
高温におけるフェライト結晶粒の粒成長速度は、温度の上昇とともに増加する。一方、一般に溶接や溶融めっき工程でフェライトの粒成長が問題となり得る温度域はA点(730℃近傍)直下からA点近傍までの高温域であり、この温度範囲でフェライトの粒成長速度は大きく変化する。しかし、フェライトの平均結晶粒径が上記の範囲内にある鋼板の粒成長速度の温度特性は、700℃近傍の温度におけるフェライトの粒成長速度、すなわち、フェライトの平均結晶粒径D(μm)の増加速度X(μm/min)と、この平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)に上限を設ければ、溶接や溶融めっき工程でより高い温度に過熱された場合においても問題が発生しないことを見出した。そして、実験の結果、積D・Xを0.1μm/min以下に設定することが必要であることも判明した。なお、好ましくは、積D・Xは0.07μm/min以下であり、さらに好ましくは積D・Xは0.05μm/min以下である。
(d) さらに粒成長速度を低下させるためには、フェライト結晶粒内の転位密度を10/cm以下とすることが好ましい。より好ましくは10/cm以下とすることである。
本発明者らは、上記(a)〜(d)の知見に基づき、機械的特性と熱的安定性に優れる熱延鋼板を完成したものである。そして、本発明者らは、このようなる熱延鋼板を製造するための新しい方法についても、種々検討した結果、次の(e)〜(g)に示すとおり、高温域での圧延を採用することで、圧延が容易かつ高生産性の工業的方法を提供することができることを見出した。
(e) オーステナイト温度域から、多パス熱間圧延を開始し、最終の圧延パスをAr点以上かつ780℃以上の高温度で終了する。このとき、オーステナイト結晶粒内に歪みが蓄積される。そして、熱間圧延終了直後の0.4秒以内に、720℃以下の温度までの冷却を完了する。このとき、冷却途中においてはこの歪みの解放が抑制されるので、歪みはオーステナイト粒内に蓄積された状態であり、720℃以下の温度になってはじめて、オーステナイトからフェライトへの変態が活発化し、蓄積された歪みを核としてフェライト結晶粒が多数発生し、微細なフェライト組織を形成することになる。なお、従来は、最も速いものでも、圧延終了直後から0.2秒以上経過してから冷却が開始され、その冷却速度もせいぜい250℃/秒程度であった。従来は、Ar点が800℃の低炭素鋼を例にとると、低炭素鋼の熱間圧延をAr3点で終了したとしても、800℃以上から720℃以下の温度まで冷却する間に、従来は0.52秒以上経過していたから、0.4秒以内に720℃以下の温度までの冷却を完了することは困難であった。
(f) その後、600〜720℃の温度域で2秒以上30秒以下保持する。これによって、微細かつ結晶粒径が狭い範囲に分布する所望のフェライト組織を得ることができる。また、急速な変態によりフェライト中の固溶Cが過飽和になり、冷却過程でフェライト粒内に微細なセメンタイトが析出する。
(g) さらに、巻取温度を500℃以下の温度範囲で制御することによって良好な機械的特性が得られる。これは、巻取温度を500℃以下の温度範囲で制御することによって、巻取後の粒内および粒界におけるセメンタイトの粗大化を抑制することができるので、得られる鋼板の強度を維持することができるとともに、これらのセメンタイトを起点にしたき裂の発生が抑制されるためと推測される。
本発明は、このような知見に基づいて完成したものであり、次の(1)〜(4)に示す熱延鋼板と、次の(5)に示す熱延鋼板の製造方法を、その要旨とする。以下、それぞれ、本発明(1)〜本発明(5)という。本発明(1)〜本発明(5)を総称して、本発明ということがある。
(1) 質量%で、C:0.02〜0.2%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.2%以下、sol.Al:0.001〜0.5%、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、かつ、Ti+Nb:0.1%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼組成を有し、フェライトを主相とする鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)が下記の(1)式および(2)式を満足するとともに、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足し、平均粒径200nm以下のセメンタイトがフェライト粒内に10〜10個/μm析出していることを特徴とする熱延鋼板。
1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を、CおよびMnは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、そして、Xは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)を示す。
(2) さらに、質量%で、Ca、REM及びBのうちの1種又は2種以上を合計で0.005%以下含有する鋼組成を有することを特徴とする、上記(1)の熱延鋼板。
(3) 鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、フェライトの結晶粒径d(μm)が下記の(4)式を満足するフェライト結晶粒のフェライトに占める面積割合が80%以上であることを特徴とする、上記(1)又は(2)の熱延鋼板。
D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(4)式
ここで、dはフェライトの結晶粒径(μm)、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を示す。
(4) フェライト結晶粒内の転位密度が10/cm以下であることを特徴とする、上記(1)〜(3)までのいずれかの熱延鋼板。
(5) 上記(1)又は(2)の鋼組成を有する鋼片またはスラブを、多パス熱間圧延して熱延鋼板を製造する方法であって、最終の圧延パスをAr点以上かつ780℃以上の温度で終了し、0.4秒以内に720℃以下まで冷却した後、600〜720℃の温度域で2秒以上保持し、その後巻き取り温度500℃以下で巻き取ることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、熱的安定性と、強度-延性バランス及び強度-穴拡げ性バランスに優れ、さらに、降伏強度比が高く衝撃吸収性にも優れる熱延鋼板およびその製造方法を提供することができる。
以下に、本発明にかかる超微細結晶粒熱延鋼板について説明する。以下、各化学成分の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
C:
Cは、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させて、熱延の仕上げ温度を低下させることができるので、フェライト結晶粒の微細化を促進するのに有用な元素である。また、強度を確保するための元素である。このため、0.02%以上含有させる必要がある。なお、フェライト結晶粒の微細化をより促進するためには、0.03%以上含有させるのが好ましい。ただし、過度に含有させると、熱延後のフェライト変態が遅延し、フェライトの体積率が低下するため、また溶接性が劣化するため0.2%以下とする必要がある。溶接部の加工性を向上させるためには、C含有量を0.17%以下にするのが好ましく、0.15%以下とするのがより好ましい。
Si:
Siは、フェライトの強化と延性の向上に寄与し、脱酸作用も有する。かかる効果を得るためには0.01%以上含有させることが必要である。しかし、過剰に含有させると穴拡げ性が低下する。また、熱間圧延時の表面酸化の問題も生じる。したがって、Siの含有量は、Si:0.01〜1.0%とする。
Mn:
Mnは、強度確保のために含有させる必要がある。また、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させて、熱間圧延における仕上げ温度を低下させることを可能にするので、フェライト結晶粒の微細化を促進するため、含有させることが好ましい。一方、過度に含有させると、熱間圧延後のフェライト変態が遅延し、フェライトの体積率が低下する。したがって、Mnの含有量は、0.1〜2.0%とする。
P:
Pは、強度を増加させるため、含有していてもよい。しかし、過度に含有させると、粒界偏析による脆化が生じるので、Pの含有量を0.2%以下とする必要がある。好ましくは、0.1%以下である。下限は不純物レベルでもよい。通常、製鋼段階で0.01%程度混入してくる。
sol.Al:
sol.Alは、0.001%以上の含有により脱酸効果が得られる。しかし、過度に含有させると、高温でのオーステナイトが不安定化し熱間圧延における仕上げ温度を過度に上昇させる必要が生じること、また、安定した連続鋳造を困難にすることから、含有量を0.5%以下とする。
Ti:
Tiは、炭化物又は窒化物として析出し強度を増加させるため、また、この析出物がオーステナイトやフェライトの粗大化を抑制して、熱延時の結晶粒の微細化を促進し、熱処理の際には粒成長を抑制するため、添加しても良い。ただし、過度に含有させると、熱延工程より前の加熱時に粗大なTi炭化物又は窒化物が多量に発生して、延性や加工性を阻害するので、含有量を0.1%以下とする必要がある。好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。
また、フェライトの生成を容易にするため、Ti+Nbの合計含有量を0.1%以下とする必要がある。好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。
Nb:
Nbは、炭化物又は窒化物として析出し強度を増加させるため、また、この析出物がオーステナイトやフェライトの粗大化を抑制して、熱延時の結晶粒の微細化を促進し、熱処理の際には粒成長を抑制するため、添加しても良い。ただし、過度に含有させると、熱延工程より前の加熱時に粗大なNbCが多量に発生して、延性や加工性を阻害するので、含有量を0.1%以下とする必要がある。好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。
また、フェライトの生成を容易にするため、Ti+Nbの合計含有量を0.1%以下とする必要がある。好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。
V:
Vは炭化物として析出し強度を増加させるため、また、この析出物がフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進するため、添加しても良い。ただし、Ti、Nbと同様な理由で、延性や加工性を阻害するので、含有量を0.5%以下とする必要がある。好ましくは0.3%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。
Mo:
Moは、MoCを析出することによって強度を増加させるため、また、この析出物がフェライトの粗大化を抑制して、結晶粒の微細化を促進するため、添加しても良い。ただし、Ti、Nbと同様な理由で、延性や加工性を阻害するので、含有量を0.5%以下とする必要がある。好ましくは0.3%以下である。なお、下限は不純物レベルでもよい。
Ca、REM、B:
Ca、REM(希土類元素)及びBは、凝固中に析出する酸化物や窒化物を微細化して、鋳片の健全性を保つため、その1種又は2種以上を添加しても良い。ただし、高価であるため、合計含有量で0.005%以下とすることが好ましい。下限は不純物レベルでもよい。ここで、REMとは、ランタノイドの15元素とYおよびScを合わせた17元素を意味する。
なお、鋼中に混入する「不純物」としては、S、N、O等が挙げられる。これらは、できればその含有量を以下のように規定するのが好ましい。
S:
Sは硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量は0.05%以下に抑えるのが望ましい。そして、一段と優れた加工性を確保したい場合には、0.008%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.003%以下である。
N:
Nは加工性を低下させる不純物元素であり、その含有量は0.01%以下に抑えることが望ましい。より好ましくは、0.006%以下である。
O:
Oは、鋼の清浄度を上げて機械的特性を向上させるために低減させる方が好ましい。したがって、含有量は0.01%以下とする.好ましくは0.005%以下である。
(B)本発明に係る熱延鋼板の組織について
本発明に係る熱延鋼板は、フェライトを主相とし、主相とフェライト以外の第2相とからなる組織を有する鋼板である。ここで「主相」とは組織を構成する相のうち該組織に占める割合が最大となる相であるという意味である。主相のフェライトは、体積率で少なくとも50%以上が必要であり、50%未満では延性や加工性が損なわれる。好ましくは60%以上である。
フェライトの結晶粒径(直径)は、熱延鋼板の機械的特性と熱的安定性に大きく影響する。したがって、本発明に係る熱延鋼板に十分な強度と延性や熱的安定性を確保するために、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)を、下記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲にとどめる必要がある。
1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
すなわち、その一定の範囲とは、1.2μmを下限とし、そして、2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μm及び7μmのうちの小さい方の値を上限とする範囲のことである。なお、(2)式中で、CおよびMnは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を示す。
ここで、フェライトの平均結晶粒径Dの下限を1.2μmとするのは、1.2μm未満では、加工硬化係数が極端に減少して延性や加工性が劣化するだけでなく、微細フェライト組織の熱的安定性も劣化して、高温下で容易に粒成長するからである。より優れた延性や加工性や熱的安定性を得るためには、フェライトの平均結晶粒径Dの下限を1.5μmとするのが好ましい。一方、フェライトの平均結晶粒径Dの上限を2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)μm及び7μmのうちの小さい方の値とするのは、これらのいずれかの値を超えると、十分な強度が得られなくなるからである。より優れた強度を得るためには、フェライトの平均結晶粒径Dの上限を、2.4+5000/(5+350・C+40・Mn)μm及び5.5μmのうちの小さい方の値を上限とするのが好ましい。なお、ここでは、15°以上の結晶方位差を持つ大角の粒界で囲まれた領域を1つの結晶粒と定義し、15°未満の小角の粒界は無視する。
さらに鋼板の熱的安定性を高めるためには、フェライトの結晶粒径の分布を一定の範囲にとどめるのが好ましい。高温での粒成長が生じる一因は、粒界のエネルギーに基づく駆動力であり、微細なフェライト組織の中に比較的大きなフェライト結晶粒が混在していると、大きなフェライト結晶粒が粒界を駆動力として周囲の微細なフェライト結晶粒と容易に一体化し、粒成長が急速に進展する。このため、高温でのフェライト結晶粒の粒成長速度を抑制するためには、フェライト結晶粒を微細化してその平均結晶粒径D(μm)を上記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲にとどめることに加えて、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、フェライトの結晶粒径d(μm)が下記の(4)式を満足するフェライト結晶粒のフェライトに占める面積割合が80%以上であることが好ましい。
D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(4)式
すなわち、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、面積割合でフェライトの結晶粒径d(μm)の80%以上が、平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることが好ましい。好ましくは、85%以上のフェライト結晶粒が平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることであり、より好ましくは90%以上のフェライト結晶粒が平均結晶粒径D(μm)の1/3から3倍の範囲に収まるような粒径分布となることである。
また、さらに粒成長速度を低下させるためには、フェライト結晶粒内の転位密度を10/cm以下とするのが好ましく、10/cm以下とすることが、より好ましい。フェライト結晶粒内の転位密度を10/cm以下とするためには、圧延仕上げ温度をAr点より高い温度とすればよい。
フェライトの結晶粒径とその分布を表面から板厚の1/4の深さで定義する理由は、本発明の熱延鋼板のフェライト結晶粒径は板厚方向に変化するためである。本発明に係る鋼板は、この深さのフェライト結晶粒組織を上記の範囲にすることで、所望の機械的特性と熱的安定性を確保することができる。特に粒径の熱的安定性は、板の表面から内部に渡る広い範囲で統計を取ったときの粒径分布で決まるのではなく、特定の深さで統計を取ったときの粒径分布で決まる。従って、板厚の1/4の深さで表面に平行な断面で組織観察を行うか、もしくは、表面に垂直な断面で観察するのであれば、板厚の1/4の深さから100μm以内の領域で観察を行い、統計を取る。
板厚方向への緩やかな結晶粒径の変化は、鋼板の機械的特性の向上に寄与する。たとえば、板表面側でより細粒となっているため、鋼板表面近傍が大きく変形される曲げ性が向上する。また、表面近傍から発生する亀裂の伝搬を表面のより細粒化した組織が効果的に押さえるので、疲労特性も向上する。したがって、鋼板表面から100μmの深さ位置における結晶粒径d(μm)、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置における結晶粒径d(μm)および板厚の中心部分における結晶粒径d(μm)の間に、d≦0.7dおよびd≦0.9dとなるように板厚方向への結晶粒径変化を持たせたるのが好ましい。なお、d≦0.6dおよびd≦0.85dとなるように板厚方向への結晶粒径変化を持たせたるのが、より好ましい。このような板厚方向への緩やかな結晶粒径の変化をもたせるためには、最終パス圧延率が10%を超える条件で圧下すればよい。
さらに、上記フェライト粒内に平均粒径200nm以下のセメンタイトが10〜10個/μm析出させることにより、強度と降伏強度比の上昇および穴拡げ性の向上に寄与することができる。平均粒径が200nmを上回るセメンタイトは強化にほとんど寄与せず、また、析出密度が10個/μm未満の場合も強化や穴拡げ性の向上に寄与しない。ここで、セメンタイトの平均粒径とは、最大径およびこれと直交する方向で測定した径の平均値をいう。一方、析出密度が10個/μmを超えると、フェライト粒が硬くなりすぎると共に、軟質な無析出帯において、き裂が伝播しやすくなるために、延性や穴拡げ性が低下する。
フェライト以外の第2相は、パーライト、セメンタイト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトなどの一般に低炭素鉄鋼材料中に生成することが知られる相であれば良い。これらの相を適宜作り込むことによって、所望の機械的特性と熱的安定性が得られる。
そのためには、体積率で50%未満のベイナイト、30%未満のパーライト、5%未満のマルテンサイト及び3%未満の残留オーステナイトからなる群から選ばれた1種又は2種以上を総量で50%未満含有させることが好ましい。より好ましくは総量で40%未満である。ベイナイト、パーライト、粒状セメンタイトの各体積率が上記の値を超えると、加工性が阻害される。なお、粒内に析出する微細なセメンタイトは、SEM観察像において視認できないものもあるため、体積率の測定から除外する。
(C)高温での粒成長速度について
フェライトの平均結晶粒径が上記の(1)式及び(2)式を満足する一定の範囲内にある鋼板の粒成長速度の温度特性は、700℃近傍の温度におけるフェライトの粒成長速度によって決定される。したがって、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足することが必要となる。
D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
すなわち、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)と平均結晶粒径D(μm)の積D・X(μm/min)を、0.1μm/min以下に保つことで、溶接や溶融めっき工程における主要な熱履歴に対して安定となり、良好な熱的安定性が得られる。より優れた熱安定性を得るためには、積D・Xを0.07μm/min以下にするのが好ましく、0.05μm/min以下にするのがさらに好ましい。
なお、本発明に係る鋼板のフェライトの結晶粒径(直径)は、時間の平方根に比例する通常の粒成長とは異なり、700℃ではほぼ時間に比例して増加する。したがって、フェライトの平均結晶粒径の増加速度X(μm/min)は、700℃で1時間程度の間の粒径変化を測定して、その変化率を平均することによって、求めることとする。
(D)圧延について
圧延は、1000℃を超える温度から、レバースミルもしくはタンデムミルを用いて、オーステナイト温度域で行う。工業的生産性の観点からは、少なくとも最終の数段はタンデムミルを用いるのが好ましい。
連続鋳造や鋳造・分塊により得たスラブ、ストリップキャスティングにより得た鋼板などや、必要によってはそれらに一度、熱間又は冷間加工を加えたものを用い、それらが冷片であれば1000℃を超える温度に再加熱して圧延する。圧延の開始温度が1000℃以下になると、圧延荷重が過大になり、十分な圧延率を得ることが困難になるばかりか、十分な圧延率の圧延をAr点以上の温度で終了することも困難となり、所望の機械特性や熱的安定性を得られなくなる。好ましくは1025℃以上、より好ましくは1050℃以上の温度から圧延を開始する。上限は、オーステナイト粒の粗大化を抑制するため、また、設備費用や加熱燃料費を抑制するため、1350℃以下、好ましくは1250℃以下とする。初期のオーステナイト結晶粒が微細化し、最終のフェライト結晶粒も微細化し易くなるためである。
圧延仕上げ温度は、圧延後にオーステナイトからフェライトへと変態させるためにAr点以上かつ780℃以上の温度範囲とする。仕上げ温度が、Ar点を下回ると、圧延中にフェライトが発生する。また780℃未満の温度では、圧延荷重が増大し、十分な圧下を加えることが困難となるばかりか、圧延中に板表層部でフェライト変態が生じる場合がある。好ましくは、Ar点以上かつ800℃以上の温度で圧延を終了する。
なお、圧延を終了する温度は、Ar点以上かつ780℃以上の温度範囲であれば低い程良い。これは、圧延によってオーステナイトに導入された加工歪みの蓄積効果が大きくなり、結晶粒の微細化が促進されるためである。本発明で用いる鋼種のAr点は、概ね780から900℃である。
総圧下量は、フェライトの微細化を促進するため板厚減少率で90%以上、好ましくは92%、より好ましくは94%以上である。圧延終了温度から[圧延終了温度+100℃]までの温度範囲における板厚減少率で40%以上とすることが好ましい。より好ましくは、圧延終了温度から[圧延終了温度+80℃]までの温度範囲における板厚減少率で60%以上である。圧延は、連続した複数パスの圧延とする。1パス当たりの圧下量は、好ましくは15〜60%である。1パス当たりの圧下量を大きく取る方がオーステナイトへの歪みを蓄積させ、変態によって生成するフェライトの結晶粒径を微細化する意味からは好ましいが、圧延荷重の増大が必要となるので、圧延設備が大型化するだけでなく、板形状の制御も困難になる。本発明の方法では、1パス当たりの圧下量を40%以下とした複数パスの圧延でも微細なフェライト結晶粒を得ることができる。したがって、特に板形状の制御を容易にしたいときには、最終の2パスの圧下率を40%/パス以下とすることが好ましい。
(E)圧延後の冷却について
圧延を終了後、オーステナイトに導入された加工歪みを解放することなく、これを駆動力としてオーステナイトからフェライトへと変態させ、微細なフェライト結晶粒組織を生成させるために、圧延終了から0.4秒以内に720℃以下の温度まで冷却する。好ましくは圧延終了から0.2秒以内に720℃以下の温度まで冷却する。冷却は、水冷を用いるのが望ましく、そして、その冷却速度は、空冷期間を除外し強制冷却を行っている期間の平均冷却速度として、400℃/秒以上とするのが、好ましい。
ここで、720℃以下の温度に冷却されるまでの時間を規定する理由は、720℃を超える温度で、冷却を停止もしくは鈍化させると、微細なフェライトが生成する以前に、加工によって導入された歪みが解放されて、又は、歪みの存在形態が変化して、フェライトの核生成に有効ではなくなり、フェライト結晶粒が顕著に粗大化するためである。
温度が720℃以下に達すると、フェライト変態が活発化する変態温度域に入る。上記のフェライト組織が得られるフェライト変態温度域は、この温度から600℃までの間の温度域である。したがって、720℃以下に達した後、冷却を一次停止、もしくはその速度を鈍化させて、この温度域で2〜30秒保持させることによって、上記の熱的に安定で、粒内に微細なセメンタイトを析出させたフェライト結晶粒組織の形成を確実にすることができる。この温度域での保持時間が短いと上記の熱的に安定なフェライト結晶粒組織の形成が阻害されるおそれがあり、長すぎる場合には粒内セメンタイトの減少により強度が低下し、穴拡げ性は低下する。より好ましくは、620〜700℃の温度域で2〜25秒滞留させるのがよい。
さらに、巻取温度を500℃以下の温度範囲で制御することによって良好な機械的特性が得られる。これは、巻取温度を500℃以下の温度範囲で制御することによって、巻取後の粒内および粒界におけるセメンタイトの粗大化を抑制することができるので、得られる鋼板の強度を維持することができるとともに、これらのセメンタイトを起点にしたき裂の発生が抑制されるためと推測される。
(F)冷却設備について
本発明において、上記の冷却を行う設備は限定されない。工業的には、水量密度の高い水スプレー装置を用いることが好適である。例えば、圧延板搬送ローラーの間に水スプレーヘッダーを配置し、板の上下から十分な水量密度の高圧水を噴射することで冷却することができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼種A〜Fの鋼を溶製し、熱間鍛造によって30mm厚さにした。その後、1050℃以上に再加熱した後、試験用小型タンデムミルにて圧延を実施し、2.0mmの板厚に仕上げた。
Figure 2008189978
表2に、その圧延仕上げ温度と冷却条件を示す。全ての圧延において、仕上げ温度〜[仕上げ温度+100℃]の温度域内で3パス以上の多パス圧延を行なった。最終の2パスの圧延は、35%/パス以下の軽圧下圧延とした。圧延仕上げ後は、表2に記載したとおり、水冷によって500〜720℃の温度域内の所定の温度まで冷却した。なお、試験番号によっては、水冷後に空冷時間を設けることで600〜720℃における保持時間を設けた。
Figure 2008189978
表2には、600〜720℃の温度域における保持時間に加えて、そのうちの620〜700℃の温度域における保持時間をも示した。その後、約100℃/sの速度で室温付近までの水冷を行うか、又は、400〜600℃の温度域内の所定の温度までの水冷後に炉中で炉冷を行うことによって、種々の第2相の組織を有する鋼板を作製した。
このようにして得られた熱延鋼板の組織について、走査電子顕微鏡を用いることによって鋼板板厚の断面を観察した。フェライトの結晶粒径およびその粒径分布については、板表面から板厚の1/4の深さにて、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いて結晶方位解析を行うことで求めた。フェライト、パーライト、粒状セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイト体積率については、圧延方向と平行な板厚断面を鏡面研磨してナイタールまたはピクリン酸により現出させた組織の板表面から1/4の深さを走査電子顕微鏡により観察して、形態および炭化物の析出状態などから組織を判別して点算法で測定した。もしくは、圧延方向と平行な板厚断面を電解研磨などで試料調整し、いた表面から1/4の深さをEBSP法を用いて、形態および炭化物の析出状態なども考慮して判別し、画像解析により測定した。残留オーステナイト体積率についてはエメリー研磨後化学研磨した板表面から1/4の深さの板表面と平行な面において、CoKα線によりフェライトの(200)、(110)および(211)面積分強度とオーステナイトの(200)、(220)および(111)面積分強度を測定し、強度平均法と直接比較法により計算して求めた。
粒内セメンタイトについては、板表面から板厚の1/4の深さの薄膜試料を作成し、透過型電子顕微鏡を用いて、倍率40000〜200000倍で観察し、画像解析により平均粒径200nm以下のセメンタイトの体積個数密度(単位体積当たりの個数)を測定した。なお、測定するフェライト粒数は10個とし、無析出帯を除く範囲で測定した。
引張特性については、JIS5号引張試験片を用いて常温で引張速度10mm/minにて行い、引張強度TS(MPa)および全伸びEl(%)を評価した。TS×Elが15000以上、かつTS×HERが45000以上の鋼板を引張特性が良好であると判断した。
穴拡げ性については、90mm角の正方形の試験片の中心に、直径が10mmの穴をプレスにて打ち抜き、円錐ポンチでこの穴を拡げて、穴の縁にき裂が貫通した時の穴直径の増加率によって示される穴拡げ率により評価した。
熱的安定性については、700℃の塩浴に10、30又は60分間浸した後、急冷し、上記と同じ方法で粒径を測定し、焼鈍前粒径d(μm)と焼鈍後粒径d(μm)の差を、焼鈍時間(min)で割り算をすることによって、平均結晶粒径の増加速度X(μm/min)を算出した。
表3に、このようにして得られた熱延鋼板の組織とその性質および引張試験結果と穴拡げ性試験結果を示す。
なお、本実施例で製造した鋼板のフェライト相以外の第2相の組織は、パーライト、ベイナイト、そして、粒内の球状セメンタイト又は粒界セメンタイトであった。また、本発明の鋼板に関しては、鋼板表面から100μmの深さ位置におけるフェライト結晶粒径と板厚の中心部分におけるフェライト結晶粒径も上記のEBSP法により測定した。その結果、全ての本発明鋼板に関し100μmの深さ位置における結晶粒径は板厚中心における粒径の60%以下、板厚の1/4の深さにおける粒径は板厚中心における粒径の85%以下であった。
Figure 2008189978
比較例である試番6および10は、仕上圧延を終了後、720℃まで冷却するのに要した時間が、それぞれ、4.95秒および3.95秒と長いため、粗粒組織となり、また粒内セメンタイトも析出しておらず、成形性も劣っていた。
比較例である試番13は、Tiを0.21%添加しているため、TS−ElバランスおよびTS−HERバランスに劣る。
比較例である試番14は、Nbを0.15%添加している上に、仕上げ温度がAr点よりも低いため、フェライト粒径が極端に小さくなり、熱的安定性に劣る。さらに、加工フェライトとNb析出物の影響により、TS−ElバランスおよびTS−HERバランスに劣る。
一方、本発明例は、いずれも熱的に安定な組織を有しており、TS−ElバランスおよびTS−HERバランスに優れ、さらに、降伏強度比も0.8以上と高い。
本発明に係る熱延鋼板は、熱的安定性と、強度-延性バランス及び強度-穴拡げ性バランスに優れており、自動車の構造部材の素材、特に衝撃吸収部材の素材として好適である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.2%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.2%以下、sol.Al:0.001〜0.5%、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、かつ、Ti+Nb:0.1%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼組成を有し、フェライトを主相とする鋼板であって、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)が下記の(1)式および(2)式を満足するとともに、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径の700℃における増加速度X(μm/min)と前記平均結晶粒径D(μm)が下記の(3)式を満足し、平均粒径200nm以下のセメンタイトがフェライト粒内に10〜10個/μm析出していることを特徴とする熱延鋼板。
    1.2≦D≦7・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
    D≦2.7+5000/(5+350・C+40・Mn)・・・(2)式
    D・X≦0.1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)式
    ここで、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を、CおよびMnは、それぞれ、鋼中の各元素の含有量(質量%)を、そして、Xは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径D(μm)の700℃における増加速度(μm/min)を示す。
  2. さらに、質量%で、Ca、REM及びBのうちの1種又は2種以上を合計で0.005%以下含有する鋼組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板。
  3. 鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、フェライトの結晶粒径d(μm)が下記の(4)式を満足するフェライト結晶粒のフェライトに占める面積割合が80%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱延鋼板。
    D/3≦d≦3D・・・・・・・・・・・・・・・・(4)式
    ここで、dはフェライトの結晶粒径(μm)、Dは鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置におけるフェライトの平均結晶粒径(μm)を示す。
  4. フェライト結晶粒内の転位密度が10/cm以下であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の熱延鋼板。
  5. 請求項1又は2に記載の鋼組成を有する鋼片またはスラブを、多パス熱間圧延して熱延鋼板を製造する方法であって、最終の圧延パスをAr点以上かつ780℃以上の温度で終了し、0.4秒以内に720℃以下まで冷却した後、600〜720℃の温度域で2秒以上保持し、その後巻き取り温度500℃以下で巻き取ることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
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