JP2008189556A - DNA結合能をもつ高等植物のSpo11類縁タンパク質の調製法 - Google Patents

DNA結合能をもつ高等植物のSpo11類縁タンパク質の調製法 Download PDF

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Akira Wakasa
暁 若狭
Makiko Kawagishi
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Abstract

【課題】 本発明は、DNA結合能を保持した可溶性Spo11タンパク質、及びその調製方法の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、Spo11タンパク質を大腸菌由来のトリガーファクター(TF)と融合した形態で発現させ、該融合タンパク質を大腸菌抽出物の可溶性画分に回収し、さらに、ヘパリンカラムクロマトグラフィーの過程を含む精製工程により、DNA結合能を保持した可溶性Spo11タンパク質を調製する方法を提供する。さらには、該方法によって調製したSpo11タンパク質を提供する。
【選択図】図4

Description

本発明は、タンパク質の調製法に関する。より詳細には、活性を保持した可溶性タンパク質の調製法に関する。
交配による品種改良において、減数分裂期の相同DNA組換え(遺伝的組換え、普遍的組換え、相同的組換えともいう)は重要な働きをしていると考えられている。その相同DNA組換えは、ゲノムDNAに多数存在する特定の部位にDNA二本鎖切断が導入されることで開始される。このDNA二本鎖切断は、真核生物では、パン酵母で発見されたSpo11タンパク質若しくはその類縁タンパク質、又は、該タンパク質が核になったタンパク質複合体が行うと考えられている(非特許文献1〜3)。
相同DNA組換えのメカニズムをより詳細に解明する上で、Spo11タンパク質(及び類縁タンパク質)及び該タンパク質を含む複合体の機能を明らかにすることは、極めて重要なことであるが、そのためには、まず、Spo11タンパク質の生化学的な機能解析を行う必要がある。活性を保持したSpo11タンパク質を調製する試みは、これまでに多数行われているが、Spo11タンパク質の発現自体が困難な上、発現した場合でも、可溶化したタンパク質を調製することに成功した例がない。Wuらは、大腸菌内で発現させた不溶性のSpo11(Rec12)タンパク質を、尿素、グアニジン塩酸等による変性−再折りたたみの過程を経て、可溶性のSpo11タンパク質を調製したことを報告している(非特許文献4)。Wuらは、調製されたSpo11タンパク質には、一本鎖DNAへニックを入れる活性及び二本鎖のスーパーコイルDNAに切断を入れる活性を有するとも報告しているが、精製タンパク質とDNAとが実際に接触あるいは結合したとの証拠は示されておらず、活性を有するとの報告には疑問が残る(非特許文献4)。
遺伝子の組み換え技術の進歩により、所望のタンパク質を自由に設計し、大腸菌を用いて大量に取得し得る可能性が示されてきたが、実際には、大腸菌内で発現したタンパク質は正常な立体構造を取らず、その結果、本来の活性を発揮しないことが多かった。そこで、大腸菌内で発現したタンパク質の構造を正常に折りたたませるために、分子シャペロンを利用する試みが行われ、ある程度の成果を上げている。トリガーファクター(trigger factor:TF)は、大腸菌由来の分子シャペロンの1種で、大腸菌を用いた組換えタンパク質の発現において、発現タンパク質を可溶化した状態で取得するために利用することができる。
大腸菌のTFは、全長432アミノ酸からなり、予想される生化学的機能に基づいて区別される、3つのドメインによって構成される(非特許文献5)。これら3つのドメインは、リボソームとの結合に重要な領域(1−118)を含むN末端ドメイン(1−144)、PPIase活性を有するPドメイン(145−247)及びC末端ドメイン(248−432)によって構成されている。結晶構造解析の結果から、TFは立体構造の中心にC末端ドメインが位置し、その両端にPドメイン及びN末端ドメインが配置されていることが示された(非特許文献6)。TFのシャペロン活性には、C末端ドメインが重要であることが予想されていたが、C末端ドメインを単独で単離するとシャペロン活性を示さず、N末端ドメイン又はPドメインと融合させて、C末端ドメインを構造上安定な状態にしないとシャペロン活性が保持されないことが報告されている(非特許文献5)。
Keeneyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 92:11274−11278,1995 Keeneyら,Cell,88:375−384,1997 Keeneyら,Genomics,61:170−182,1999 Wuら,Protein Expr Purif,38:136−144,2004 Merzら,J.Biol.Chem.,281:31963−31971,2006 Hesterkampら,J.Biol.Chem.,272:21865−21871,1997
本発明者らは、上記事情に鑑み、DNA結合能を保持したSpo11タンパク質を調製する方法について鋭意研究を行った結果、大腸菌由来のトリガーファクターとの融合タンパク質の形態で発現させることで、DNA結合能を持つ可溶性Spo11タンパク質を調製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
よって、本発明は、DNA結合能を持つ可溶性Spo11タンパク質の提供を目的とする。
また、本発明は、DNA結合能を持つ可溶性Spo11タンパク質を調製する方法の提供を目的とする。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(14)に関する。
(1)本発明の第1の態様は、「Spo11タンパク質を、トリガーファクターと融合させた融合タンパク質の形態で宿主大腸菌内で発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする、DNA結合能を有するSpo11タンパク質を調製する方法」である。
(2)本発明の第2の態様は、「前記融合タンパク質に、さらにGal4BDタンパク質を融合させることを特徴とする上記(1)に記載の方法」である。
(3)本発明の第3の態様は、「前記融合タンパク質の発現が以下の(a)又は(b)で示されるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することにより達成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖と高ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドがDNA結合能を有するポリヌクレオチド」である。
(4)本発明の第4の態様は、「前記組換えベクターが、上記(3)に記載の(a)又は(b)で示されるポリヌクレオチドを配列番号28で示される核酸配列からなるタンパク質発現用ベクターに作用可能に組み込んだものであることを特徴とする上記(3)に記載の方法」である。
(5)本発明の第5の態様は、「前記融合タンパク質の発現が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することにより達成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するポリペプチド」である。
(6)本発明の第6の態様は、「前記組換えベクターが、上記(5)に記載の(a)又は(b)で示されるポリペプチドをコードする核酸を含む配列番号28で示される核酸配列からなるタンパク質発現用ベクターに作用可能に組み込んだものであることを特徴とする上記(5)に記載の方法」である。
(7)本発明の第7の態様は、「前記可溶性成分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通す前に、アフィニティーカラムクロマトグラフィーに通し、得られた前記融合タンパク質を含む画分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の方法」である。
(8)本発明の第8の態様は、「前記ヘパリンカラムクロマトグラフィーに通して得られた前記融合タンパク質を含む画分を、さらにアフィニティーカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の方法」である。
(9)本発明の第9の態様は、「前記Spo11タンパク質が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の方法。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するポリペプチド」である。
(10)本発明の第10の態様は、「前記トリガーファクターが、配列番号8で表されるアミノ酸からなるポリペプチドであることを特徴とする上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の方法」である。
(11)本発明の第11の態様は、「前記ヘパリンカラムからの前記融合タンパク質の溶出の下限濃度が、0.0〜0.7Mであって、上限濃度が0.9.〜1.5MのNaCl又はKClの濃度勾配によって行われることを特徴とする上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の方法」である。
(12)本発明の第12の態様は、「以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなり、DNA結合能を有するSpo11タンパク質。
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列」である。
(13)本発明の第13の態様は、「上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の方法により調製されたDNA結合能を有するSpo11タンパク質」である。
(14)本発明の第14の態様は、「上記(12)又は(13)に記載のSpo11タンパク質に対する抗体」である。
本発明の方法によれば、可溶性かつ完全長のSpo11タンパク質であって、DNA結合能を保持したタンパク質を調製することができる。
本発明のSpo11タンパク質は、可溶性であり、かつ、完全長の形態を備えているため、完全長のSpo11タンパク質に対する抗体の作製の用に供することができる。
本発明のSpo11タンパク質を用いることで、減数分裂期相同DNA組換えにおいて誘導されるDNAの二本鎖切断の分子メカニズムを明らかにすることが可能となる。
本発明のSpo11タンパク質を用いることで、これまで明らかにされていなかった、Spo11タンパク質との相互作用因子(活性化因子など)の同定、及び、Spo11タンパク質を含む機能複合体の作用機序の解明が可能となる。
本発明の実施態様の1つは、「Spo11タンパク質を、トリガーファクターと融合させた融合タンパク質の形態で宿主大腸菌内で発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする、DNA結合能を有するSpo11タンパク質を調製する方法」である。
本発明の「Spo11タンパク質」とは、配列番号2、4、6、8又は10で表されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質」とは、配列番号2、4、6、8又は10で表わされるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、DNA結合能を有するタンパク質である。
あるいは、配列番号2、4、6、8又は10で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質としては、配列番号2、4、6、8又は10で表わされるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するタンパク質である。上記アミノ酸の欠失、付加及び置換は、タンパク質をコードする核酸に元々存在した変異であってもよく、また、該核酸を当該技術分野で公知の手法によって改変することによって新たに導入したものであってもよい。該改変は、例えば、特定のアミノ酸残基の置換は、市販のキット(例えば、MutanTM−G(TaKaRa社)、MutanTM−K(TaKaRa社))等を使用し、Guppedduplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法により塩基の置換を行なうことによって実施することができる。
本発明の調製方法において、Spo11タンパク質は、トリガーファクター(TFと称する)との融合タンパク質の形態で調製される。なお、TFは大腸菌由来のものが好ましい。この融合タンパク質を調製するために、Spo11タンパク質をコードする核酸(Spo11遺伝子と称する)とSpo11遺伝子の5’側にTFをコードする核酸を同一の発現ベクターに組み込むことができる。発現ベクターの構築において、Spo11遺伝子とTFをコードする核酸との間に介在配列(介在ヌクレオチド配列)を配置させてもよいが、Spo11タンパク質及びTFとの融合タンパク質が正しいアミノ酸配列によって構成される状態で発現可能なように、読み枠を合わせて構築する必要がある。また、この介在ヌクレオチド配列の部分を特定のペプチダーゼ(例えば、トロンビンなど)が認識し得るペプチド配列をコードする配列として構築することもできる。このように構築することにより、生産された融合タンパク質に特定のペプチダーゼ(例えば、トロンビン)を作用させることで、Spo11タンパク質とTFを分離し、Spo11タンパク質のみの形態を取得することが可能となる。さらに、該融合タンパク質のコード領域の5’側、3’側等に、タンパク質の精製に有効なタグ配列(例えば、Hisタグ、HAタグなど)をコードする核酸配列を配置してもよい。本発明のSpo11タンパク質には、Spo11タンパク質の全長が含まれているものであれば、Spo11タンパク質のみの形態、TF及び/又はタグ配列及び/又はGal4BDタンパク質との融合した形態のいずれも含まれるものとする。
本発明に使用されるTFは、大腸菌のtig遺伝子(配列番号11及び12)に由来するもので、pTIG2(Guthrieら,EMBO J.,7:1831−1835,1988)などのtig遺伝子を保持するベクターから取得することが好適である。取得したtig遺伝子を適当なタンパク質発現用のベクターに導入することで、TFとの融合タンパク質発現用のベクターを構築するができる。あるいは、tig遺伝子が予め構築された市販の発現プラスミド(例えば、pColdTF DNA(配列番号28)、TaKaRa社)にSpo11遺伝子を構築して、発現用のベクターを調製することもできる。本発明で使用可能なTFは、TFの部分アミノ酸から構成されるものであっても、シャペロン活性を有するものであれば、使用することができる。例えば、配列番号8で表されるアミノ酸配列において、248〜432番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(C領域と称する)を必須構成部分とし、1〜144番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(N領域と称する)又は145〜247番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド(P領域と称する)と融合した形態を用いてもよい。
本発明のSpo11タンパク質をコードする核酸は、配列番号1、3、5、7又は9で表されるヌクレオチド配列からなるDNAのみならず、配列番号1、3、5、7又は9で表されるヌクレオチド配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、DNA結合能を有するタンパク質をコードするDNAからなるものも含まれる。配列番号1、3、5、7又は9で表わされるヌクレオチド配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、配列番号1、3、5、7又は9で表わされるヌクレオチド配列と好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のポリヌクレオチド配列相同性を有する配列からなるDNA等が挙げられる。
ここで、ストリンジェントな条件とは、当業者によって容易に決定されるハイブリダイゼーション条件のことで、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な実験条件である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がその融点よりやや低い環境における再アニール能力に依存する。
具体的には、例えば、低ストリンジェントな条件として、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄段階において、37℃〜42℃の温度条件下、0.1×SSC、0.1%SDS溶液中で洗浄することなどが上げられる。また、高ストリンジェントな条件として、例えば、洗浄段階において、65℃、5×SSCおよび0.1%SDS中で洗浄することなどが挙げられる。ストリンジェントな条件をより高くすることにより、相同性の高いポリヌクレオチドを得ることができる。
本発明のSpo11遺伝子は、全ての真核生物のゲノムデータベース、又は、cDNAバンクデータからの抽出により推認することができる。なお、本願出願時点までに、パン酵母(出芽酵母)、分裂酵母、ヒトを含む哺乳類、又はショウジョウバエにおいては、各々、1種類、イネからは4種類以上、シロイヌナズナからは3種類の遺伝子が推認できている。本発明の調製方法において使用可能なSpo11遺伝子は、真核生物由来のものであれば、使用可能であるが、特に、イネ又はシロイヌナズナ由来のものが好ましい。
本発明の調製方法においては、TFとSpo11遺伝子を連結させた形態の他、さらにに、Gal4BDをコードする遺伝子を連結させた核酸を用いて、TF−Gal4BD−Spo11の融合タンパク質として発現させることもできる。Gal4BDは、出芽酵母由来のGal4タンパク質のUASGAL配列と結合する部分ポリペプチドである。Gal4BDをコードする核酸(例えば、配列番号13)は、出芽酵母のゲノムライブラリーなどから、定法に従って容易に取得することができる。Gal4BDタンパク質との融合体として発現させたSpo11タンパク質を用いると、UASGAL配列を含むゲノム上の特定領域にSpo11タンパク質をターゲティングさせることができるため、所望の領域においてSpo11タンパク質を機能させることが可能となる。また、特にイネのSpo11蛋白質の発現においては、Gal4BDとの融合体として発現させることで、非常に効率のよい発現が可能となる。
本発明のSpo11タンパク質を発現させるための発現ベクターは、予めTFをコードする遺伝子が挿入されている市販のベクター(例えば、pColdTF DNA、TaKaRa社)を利用し、Spo11遺伝子又はGal4BD−Spo11融合タンパク質をコードする核酸を該ベクターに挿入することで取得することができる。その他使用可能なベクターとしては、例えば、例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等を用いることもできる。
また、発現ベクターに用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであれば特に限定されない。例えば、tacプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター等が挙げられる。
上述のベクターに対するSpo11遺伝子又はTFをコードする核酸の挿入は、クローニングされたDNAをそのまま、又は所望により制限酵素で消化して、リンカーを付加し、ベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入することにより行うことができる。連結するDNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA又はTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。連結するDNAは、当該DNA中にコードされている本発明のポリペプチドが宿主細胞中で発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。
ペプチドをコードするDNA配列を含むベクターを構築することができる。また、本発明のSpo11タンパク質をコードする核酸を保持した発現ベクターを宿主大腸菌に導入する方法としては、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が利用可能である。
本発明のSpo11タンパク質は、宿主大腸菌を破砕して得られる可溶性画分から取得するこができる。宿主大腸菌を培養するにあたり、培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、宿主大腸菌に適した条件下で行う。例えば、培養する際の培地としては、LB培地、M9培地等が好ましい。所望によりプロモーターを効率よく働かせるために、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。培養は、通常約15〜37℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
Spo11タンパク質を培養菌体から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/又は凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離や濾過により、可溶性抽出液を取得する。得られた抽出液は、からDNA結合能を保持したSpo11タンパク質を精製にあたり、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、及びSDS−PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、Hisタグを用いた場合には、Ni−NTA樹脂やCoベースの樹脂を、HAタグを用いた場合には、抗HA抗体結合カラムが使用可能である)などの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。ただし、本発明のSpo11タンパク質は、プロテアーゼ等によるタンパク質分解の影響を受け易いため、Spo11タンパク質の完全長を安定に取得するためには、ヘパリンカラムクラマトグラフィーを精製過程のいずれかの工程で用いることが望ましい。また、TFタンパク質と有効に分離するためには、ヘパリンカラムクロマトグラフィーを用いてグラジエント溶出を行うことが有効である。グラジエントは、例えば、NaCl又はKClなどの塩による濃度勾配により実施することができ、例えば、塩濃度の下限を0M、0.3M、0,5M又は0.7Mとし、上限を0.9M、1.0M、1.2M又は1.5Mとすることができ、好ましくは、下限が0M、0.3M、0,5M又は0.7M、上限が0.9M、1.0M又は1.2Mであり、より好ましくは、下限が0,5M又は0.7M、上限が0.9M又は1.0Mであり、最も好ましくは下限が0.7M、上限が1.0Mである。
本発明の他の実施態様は、「本発明のSpo11タンパク質に対する抗体」である。本発明の抗体には、完全長のSpo11タンパク質と特異的に結合する抗体、及びそのFab又はF(ab’)などの抗体断片が含まれる。
本発明の「抗体」(Spo11タンパク質の活性(DNA結合能)を促進又は阻害する抗体を含む)には、DNA結合能を保持するSpo11タンパク質に対するモノエピトープ特異抗体、ポリエピトープ特異抗体、単一鎖抗体、及びこれらの断片が含まれる。これらの抗体には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体などが含まれる。
ポリクローナル抗体は、例えば、哺乳類宿主動物に対して、免疫原及びアジュバントの混合物をインジェクトすることにより調製することができる。通常は、免疫原及び/又はアジュバントを宿主動物の皮下又は腹腔内へ複数回インジェクトする。免疫原には本発明のDNA結合能を保持した可溶性Spo11タンパク質を使用することができる。アジュバントの例には、完全フロイト及びモノホスホリル脂質A合成−トレハロースジコリノミコレート(MPL−TDM)が含まれる。
モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。
この方法には以下に示す4つの工程が含まれる:(i)宿主動物または、宿主動物由来のリンパ球を免疫する、(ii)モノクローナル抗体分泌性(又は潜在的に分泌性)のリンパ球を回収する、(iii)リンパ球を不死化細胞に融合させる、(iv)所望のモノクローナル抗体を分泌する細胞を選択する。
マウス、ラット、モルモット、ハムスター、又は他の適当な宿主動物が、免疫動物として選択され免疫原がインジェクトされる。或いは、免疫動物から取得したリンパ球をインビトロで免疫化してもよい。ヒト細胞が望ましい場合には、末梢血リンパ球(PBLs)が一般に使用される。しかしながら、他の哺乳類由来の脾臓細胞又はリンパ球がより一般的で好ましい。
免疫後、宿主動物から得られたリンパ球はハイブリドーマ細胞を樹立するために、ポリエチレングリコールなどの融合剤を用いて不死化細胞株と融合する。融合細胞としては、トランスフォーメーションによって不死化されたげっ歯類、ウシ、又はヒトのミエローマ細胞が使用されるか、ラットもしくはマウスのミエローマ細胞株が使用される。細胞融合を行った後、融合しなかったリンパ球及び不死化細胞株の成長又は生存を阻害する一又は複数の基質を含む適切な培地中で細胞を生育させる。通常の技術では、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く親細胞を使用する。この場合、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンがHGPRT欠損細胞の成長を阻害し、ハイブリドーマの成長を許容する培地(HAT培地)に添加される。このようにして得られたハイブリドーマから、所望の抗体を産生するハイブリドーマを選択し、該ハイブリドーマが生育する培地から、定法に従い、目的のモノクローナル抗体を取得することができる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.pColdTF−Galベクターの構築
TFとSpo11との間にGal4BDを挿入した融合タンパク質を発現させるベクターを構築するために、pColdTF(TaKaRa社)にGaleBDをコードするDNA(配列番号13)をクローニングした。GaleBDをコードするDNAは、pAS2−1(Clontech社)を鋳型とし、下記のプライマー対を用いてPCRにより増幅した。得られたGaleBDをコードするDNAをpCR2.1−Topoへ導入した。その後、プライマーに付加されたBamHIおよびベクターポリリンカー部分のEcoRIサイトを切断し、pColdTFのBamHI−EcoRIサイトへ導入し、pColdTF−Galを構築した。
GaleBDに対するプライマー
GalF:5’−GGGGATCCATGAAGCTACTGTCTTCTAT−3’(配列番号14;下線部はBamHIサイトを示す)
GalR:5’−GG GAGCTC GCGGCCGC GGCGCGCC CACCACCACCACCCGATACAGTCAACTGTCTTT−3’(配列番号15;下線部は左からSacI、NotI、AscIの各サイトを示す)
2.Spo11タンパク質発現ベクターの構築
2−1.シロイヌナズナのSpo11タンパク質(AtSpo11−1)
シロイヌナズナの減数分裂期を含む未成熟葯よりRNAを抽出し、oligo(dT)プライマーを利用した逆転写反応によってcDNAを作製した。このcDNAに対して、下記のプライマー対を用いて、AtSpo11−1をコードする遺伝子(配列番号1)をPCR増幅した後、プライマーに設定しておいたNdeI及びBamHIサイトにて切断し、pGEM−Teasyベクター(Promega社)へTAクローニングした。次に、pGEM−Teasyにクローニングされた各遺伝子を、プライマーに設定しておいたNdeI及びBamHIサイトにて切断し、pColdTF(TaKaRa社)にサブクローニングして発現ベクター(pColdTF−AtSpo11−1)を構築した。
AtSpo11−1に対するプライマー対
At1−F:5’− CATATGGAGGGAAAATTCGCTATTTCAGAA −3’(配列番号16)
At1−R:5’− GGATCCTCAAGGAGAGCTTACTTCACGACG−3’(配列番号17)
下線部はNdeIおよびBamHIサイトを示す。
2−2.シロイヌナズナのSpo11タンパク質(AtSpo11−2)
シロイヌナズナの減数分裂期を含む未成熟葯よりRNAを抽出し、oligo(dT)プライマーを利用した逆転写反応によってcDNAを作製した。このcDNAに対して、下記のプライマー対を用いて、AtSpo11−2をコードする遺伝子(配列番号3)をPCR増幅した後、プライマーに設定しておいたNdeI及びBamHIサイトにて切断し、pGEM−Teasyベクター(Promega社)へTAクローニングした。次に、pGEM−Teasyにクローニングされた各遺伝子を、プライマーに設定しておいたNdeI及びBamHIサイトにて切断し、pColdTF(TaKaRa社)にサブクローニングして発現ベクター(pColdTF−AtSpo11−2)を構築した。
AtSpo11−2に対するプライマー対
At2−F:5’− CATATGGAGGAAAGTTCAGGACTATCATCG −3’(配列番号18)
At2−R:5’− GGATCC TTATATGTATTTGCCTTGCACGATC−3’(配列番号19)
下線部はNdeIおよびBamHIサイトを示す。
2−3.イネのSpo11タンパク質(OsSpo11A)
イネ(品種:日本晴)の減数分裂期を含む未成熟葯よりRNAを抽出し、oligo(dT)プライマーを利用した逆転写反応によってcDNAを作製した。このcDNAに対して、下記のプライマー対を用いて、OsSpo11Aをコードする遺伝子(配列番号5)をPCR増幅した後、プライマーに設定しておいたNdeI及びBamHIサイトにて切断し、pColdTF(TaKaRa社)にサブクローニングして発現ベクター(pColdTF−OsSpo11A)を構築した。下記プライマーOsA−F(配列番号20)のNdeIサイトをAscIサイトへ変更したプライマーおよびOsA−R(配列番号21)のBamHIサイトをSpeIサイトへ変更したプライマーを用い、再増幅後、pColdTF−GalベクターのAscI−XbaIサイトへ導入し、pColdTF−Gal−OsSpo11Aを構築した。
OsSpo11Aに対するプライマー対
OsA−F:5’−GGAATTCCATATGGCGGGGAGGGAGAAGAGG−3’(配列番号20)
OsA−R:5’−CGGGATCCTTATATATGTCTTCCTTGTTTG−3’(配列番号21)
下線部はNdeIサイトおよびBamHIサイトを示す。
2−4.イネのSpo11タンパク質(OsSpo11B)
イネ由来のOsSpo11Bをコードする遺伝子(配列番号7)の3’末端部を、イネのcDNA(上述)に対して、下記のOsB−F221(配列番号22)およびOsB−R(配列番号23)プライマー対にてPCR増幅後、pT7BlueへTAクローニングしpT7Blue−OsSpo11B−Cを構築した。さらに、5’末端部をイネcDNAに対して、下記のOsB−F(配列番号24)およびOsB−R256(配列番号25)プライマー対にてPCR増幅後、プライマー配列に付加されたSacIサイトおよび増幅断片内部のAatIIサイトで切断し、これをpT7Blue−OsSpo11B−Cのベクター配列上のSacIおよび遺伝子内部のAatIIサイトへ導入し、pT7Blue−OsSpo11Bを構築した。その後ベクター上のサイトSacI(平滑化)およびSpeIにて断片を切り出し、pColdTF−GalのNotI(平滑化)およびXbaIサイトへ導入し、pColdTF−Gal−OsSpo11Bを構築した。
OsSpo11Bに対するプライマー対
OsB−F221:5’−GACGTC TCGTCGGTGTACCTCTCC−3’(配列番号22)
下線部はAatIIサイトを示す。
OsB−R:5’−GGAATTCAAATGTAATCACCCTGTACAATC−3’(配列番号23)
OsB−F:5’−TTT GAGCTC CCATGGCGGAGGCGGGAGT−3’(配列番号24)
下線部はSacIサイトを示す。
OsB−R256:5’−AGGAGGCGTAGGAGAGGTACACCGACGA−3’(配列番号25)
2−5.イネのSpo11タンパク質(OsSpo11C)
イネ由来のOsSpo11Cをコードする遺伝子(配列番号9)を、イネのcDNA(上述)に対して、下記のプライマー対にてPCR増幅後、pT7BlueにTAクローニングした。ベクター配列に存在するEcoRIサイトし、pColdTF−GalベクターのEcoRIサイトへ導入し、pColdTF−Gal−OsSpo11Cを構築した。
OsSpo11Cに対するプライマー対
OsC−F:5’−ATGTCGGAGAAGAAGCGCCGCGGCGGGGCA−3’(配列番号26)
OsC−R:5’−TCAAATCCAGTCCTGTTGCTGCAGCTTGAG−3’(配列番号27)
3.Spo11タンパク質の調製
上述の方法で構築した各Spo11発現ベクターを大腸菌(BL21(DE3)pLysS株)に導入した。
形質転換した大腸菌を4LのLB培地にてOD600=0.4になるまで、37℃で液体培養し、IPTGを0.4mMになるように加え、さらに、15℃にて24時間培養した。次に、培養した大腸菌を、遠心分離によって回収し、菌体1g当たり20mlの50mMリン酸バッファー(pH7.0)、300mMNaClに懸濁した。さらに、リゾチームを最終濃度0.6mg/ml、Briji58を0.5%となるように加え、菌体の粘性が低下するまでソニケーションを行った(約3分程度)。その後、60,000×g、30分間、遠心分離を行い、その上清を回収した(図1)。回収された上清を、TFのN末端に付随しているHis−tag(pCpldTFに予めコードされている)を利用し、TALON CellThru Resinカラム(Clontech社)に通した。50mMリン酸バッファー(pH7.0)、300mMNaClにてカラムの洗浄を行い、その後、50mMリン酸バッファー(pH7.0)、300mMNaCl、0〜150mMイミダゾールによって、グラジエント溶出を行った。
目的サイズのタンパク質が溶出されているフラクションを、Heparin Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス)カラムに通し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)にて洗浄を行った。その後、0〜1MNaClグラジエント溶出を行った。
TFとの融合体として、大腸菌内でタンパク質を発現させる場合、TFのみの発現も生じるため、これを分離する必要がある。特に、Spo11タンパク質との融合体を発現させる場合には、TFのみの発現が顕著であったため、有効な分離手段を導入する必要があった。発明者らは、TFのみのタンパク質とTF−Spo11タンパク質の分離がヘパリンカラムによって有効に行われることを見出した。ヘパリンカラムクロマトグラフィーをグラジエント溶出により実施することで、TFのみ又は不完全な融合タンパク質(大腸菌由来のプロテアーゼによって消化されたタンパク質などを含む)を有効に除去することに成功した(図2)。TFのみのタンパク質は0.8M程度までに、TF−Spo11タンパク質はそれよりも高い塩濃度で溶出されることから(図3)、1.0M付近の塩濃度のグラジエントを緩やかにすることで(例えば、0.5〜1.2M、0.5〜1.0M、0.5〜0.9M、0.7M〜1.2M、0.7〜1.0M、0.7〜0.9Mなど)、より有効に夾雑タンパク質との分離が可能となる。
目的のタンパク質が溶出されているフラクションから溶液を回収し、Microcon YM−30(ミリポア社)によって適量までタンパク質の濃縮を行った。その後、ゲル濾過クロマトグラフィーを行うために、Superdex200(GEヘルスケアバイオサイエンス)カラムに通し、目的タンパク質のフラクションを回収した。回収したタンパク質をMicrocon YM−30にて濃縮し、DNA結合実験等に用いた。
4.DNA結合実験
調製したSpo11タンパク質のDNA結合能について検討を行った。Spo11タンパク質(0.4μg、0.8μg、1.2μg、図4参照)とDNA(pUC18、100ng)とを反応液中(50mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、1mM DTT、0.02% BSA)で、37℃、5分間反応させた後、アガロースゲル電気泳動を行った(図4)。その結果、Spo11タンパク質が結合して、量依存的に上方にシフトしたDNAのバンドを確認した(図4、レーン8〜10)。一方、Spo11タンパク質を欠いたTFのみを発現させた調製物では、バンドのシフトが起こらなかった(図4、レーン3〜5)。以上のことから、本発明の方法により調製したSpo11タンパク質は可溶性の状態で取得することができ、かつ、DNA結合能を保持していることが明らかとなった。
同様の結果は、Gal4BD融合体として調製したSpo11タンパク質でも確認することができた(図5、レーン13〜17)。
本発明のSpo11タンパク質は、DNA結合能を有する可溶性のタンパク質として、初めて調製されたものである。Spo11タンパク質は、減数分裂期相同DNA組換えにおけるDNA二重鎖の切断過程において、重要な働きを行っていることから、本発明のSpo11タンパク質を用いた作用メカニズムの解明により、高等動植物の減数分裂期相同DNA組換えの人為的な制御方法を開発することが可能となる。さらに、本発明のSpo11タンパク質は、ゲノムの特定部位や特定遺伝子を標的とした効率的な遺伝情報修飾技術の開発の促進に多大なる効果をもたらすものである。
各種ベクターを用いてAtspo11−1タンパク質を発現させた場合の可溶化状態を確認したSDS−PAGEの結果を示す。pET17b(Novagen社)、pET44a(Novagen社)、pColdI(TaKaRa社)及びpColdTF(TaKaRa社)の各ベクターを使用した。Sは遠心後の上清、Pは遠心後の沈殿を表し、矢印がSpo11タンパク質のバンドを示す。 TF−AtSpo11−1タンパク質の精製プロファイルを示す。pColdTFベクターを用いてAtSpo11−1を発現させ、各精製過程のサンプルをSDS−PAGEで確認を行った。Sは遠心上清、Pは遠心沈殿を表す。His−tagは、TALON CellThru Resinカラム、HeparinはHeparin Sepharose6 Fast Flowを用いて精製したことを表す。 図3は、ヘパリンカラムクロマトグラフィーによるTFのみのタンパク質とTF−Spo11タンパク質の分離プロファイルを示すSDS−PAGEの結果である。 TF−AtSpo11タンパク質のDNA結合性を確認したゲルシフトアッセイの結果を示す。レーン2〜5は、TFタンパク質を、レーン7〜10はTF−AtSpo11タンパク質を用いて実験を行った結果である。レーン1,6:マーカー、レーン2,7:タンパク質なし、レーン3,8:タンパク質0.4μg、レーン4,9:タンパク質0.8μg、レーン5,10:タンパク質1.2μg。 TF−AtSpo11−1及びTF−Gal4BD−AtSpo11−1タンパク質のDNA結合性を確認した結果を示す。レーン3〜7は、TFタンパク質を、レーン8〜12はTF−AtSpo11タンパク質を、レーン13〜17はTF−Gal4BD−AtSpo11−1タンパク質を用いて実験を行った結果である。レーン1:マーカー、レーン2:タンパク質なし、レーン3,8,13:タンパク質0.4μg、レーン4,9,14:タンパク質0.8μg、レーン5,10,15:タンパク質1.2μg。

Claims (14)

  1. Spo11タンパク質を、トリガーファクターと融合させた融合タンパク質の形態で宿主大腸菌内で発現させ、該宿主大腸菌細胞を破砕し、可溶性成分を回収し、該可溶性成分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする、DNA結合能を有するSpo11タンパク質を調製する方法。
  2. 前記融合タンパク質に、さらにGal4BDタンパク質を融合させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記融合タンパク質の発現が以下の(a)又は(b)で示されるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することにより達成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
    (a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、
    (b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7又は配列番号9で表されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドがDNA結合能を有するポリヌクレオチド
  4. 前記組換えベクターが、請求項3に記載の(a)又は(b)で示されるポリヌクレオチドを配列番号28で示される核酸配列からなるタンパク質発現用ベクターに組み込んだものであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記融合タンパク質の発現が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターを前記宿主大腸菌内に導入することにより達成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
    (a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
    (b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するポリペプチド
  6. 前記組換えベクターが、請求項5に記載の(a)又は(b)で示されるポリペプチドをコードする核酸を含む配列番号28で示される核酸配列からなるタンパク質発現用ベクターに組み込んだものであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記可溶性成分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通す前に、アフィニティーカラムクロマトグラフィーに通し、得られた前記融合タンパク質を含む画分をヘパリンカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記ヘパリンカラムクロマトグラフィーに通して得られた前記融合タンパク質を含む画分を、さらにアフィニティーカラムクロマトグラフィーに通すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
  9. 前記Spo11タンパク質が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
    (a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、
    (b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、DNA結合能を有するポリペプチド
  10. 前記トリガーファクターが、配列番号8で表されるアミノ酸からなるポリペプチドであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記ヘパリンカラムからの前記融合タンパク質の溶出の下限濃度が、0.0〜0.7Mであって、上限濃度が0.9.〜1.5MのNaCl又はKClの濃度勾配によって行われることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
  12. 以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列からなり、DNA結合能を有するSpo11タンパク質。
    (a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8又は配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列
  13. 請求項1乃至11に記載のいずれかの方法により調製されたDNA結合能を有するSpo11タンパク質。
  14. 請求項12又は13に記載のSpo11タンパク質に対する抗体。
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