JP2008186687A - プラズマ発生体およびプラズマ発生体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】周囲の雰囲気や稼動時の熱に起因する熱応力によってプラズマ発生体が破損する可能性を低減し、セル内を通過するPMや酸化性成分、HC等の流体を良好に浄化することができるプラズマ発生体およびプラズマ発生体の製造方法を提供すること。
【解決手段】プラズマ発生体は、平板状の第1電極1と、第1電極1上に対向して配置される平板状の第2電極2と、平面視でこれら電極同士の対向面の外周領域に設けられ、第1電極1及び第2電極2を一定の距離だけ離間させて支持する一対の側壁5と、からなるセル6を備え、セル6内には流体が流れるとともに、側壁5に、溝7が設けられている。
【選択図】図2
【解決手段】プラズマ発生体は、平板状の第1電極1と、第1電極1上に対向して配置される平板状の第2電極2と、平面視でこれら電極同士の対向面の外周領域に設けられ、第1電極1及び第2電極2を一定の距離だけ離間させて支持する一対の側壁5と、からなるセル6を備え、セル6内には流体が流れるとともに、側壁5に、溝7が設けられている。
【選択図】図2
Description
本発明は、プラズマ発生体およびプラズマ発生体の製造方法に関するものである。
従来から自動車や船舶等の内燃機関として、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンが用いられている。これらエンジンからの排気ガス中には、カーボン、SOF(Soluble Organic Fraction)、高分子有機化合物、硫酸ミスト等のPM、NOxやSOxの酸化性成分、HC等の流体が含まれている。近年、環境や人体への影響から排気ガス中に含まれるPMや酸化性成分、HC等の排出を抑制しようとする動きが高まってきている。このようなPMや酸化性成分、HC等の排出を抑制する方法として、プラズマ反応を利用してPMや酸化性成分を浄化するという技術が提案されている。
このようなプラズマ反応により流体を浄化するためのプラズマ発生体は、一対の電極と、一対の電極をそれぞれ支持する絶縁体と、一対の電極間を一定の距離だけ離間して対向させるための側壁とからなるセルを備えている。プラズマ反応による浄化は、対向する一対の電極間に高電圧を印加させてプラズマ場を発生させ、このプラズマ場内にPMや酸化性成分、HC等の流体を通過させることにより、PMや酸化性成分、HC等の流体を反応、分解させるものである。このようなプラズマ発生体は、自動車や船舶等のエンジン等からの排気ガスの浄化に適用する場合において、高温の環境下において使用される。
特開2004−92589号公報
特開2005−93107号公報
しかしながら、自動車等のエンジンを作動させると、プラズマ発生体は、エンジンから排出される500℃以上の高温の排気ガスによって、作動直後に500℃以上の高温の状態へと急激に昇温される。また、プラズマ発生体を稼動した際、電極等から発生した熱がプラズマ発生体に蓄積されていくことによりプラズマ発生体が高温になることがある。このようなプラズマ発生体の急激な温度変化やプラズマ発生体の極端な温度上昇は、プラズマ発生体の絶縁体と側壁とに発生する熱応力を大きくし、この熱応力がセルを形成する絶縁体と側壁との内壁面の境に集中してこの内壁面の境を起点としてクラックを発生させることが懸念される。その結果、プラズマ発生体が破損すると、電極間にプラズマ場が発生しなくなり、セル内を通過するPMや酸化性成分、HC等の流体を良好に浄化することができないということが想定される。
本発明は、この想定に鑑み案出されたもので、その目的は、周囲の雰囲気や稼動時の熱に起因する熱応力によってプラズマ発生体が破損する可能性を低減し、セル内を通過するPMや酸化性成分、HC等の流体を良好に浄化することができるプラズマ発生体を提供することにある。また、プラズマ発生体の製造方法を提供することにある。
本発明のプラズマ発生体は、平板状の第1電極と、該第1電極上に対向して配置される平板状の第2電極と、平面視でこれら電極同士の前記対向面の外周領域に設けられ、前記第1電極及び第2電極を一定の距離だけ離間させて支持する一対の側壁と、からなるセルを備え、前記セル内には流体が流れるとともに、前記側壁に、溝或いは穴が設けられている。
また、前記セルが、上下方向に複数積層されている。
また、前記溝或いは穴は、上下方向に沿って貫通している。
また、前記溝或いは穴は、その延在方向に直交する断面の形状が、実質的に角部のない形状或いは、角部に面取りが成された形状である。
また、前記溝或いは穴は、その内周面に導体が被着されており、該導体は、前記第1電極または前記第2電極に電気的に接続されている。
また、前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれ第1絶縁体及び前記第2絶縁体により支持されているととともに、前記第1絶縁体、前記第2絶縁体、前記側壁が、同一材料からなる。
本発明のプラズマ発生体の製造方法は、上記プラズマ発生体を製造するための方法であって、前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ第1絶縁体及び前記第2絶縁体により支持されているととともに、前記第1絶縁体、第2絶縁体、前記側壁が、セラミックグリーンシートを同時焼成することにより形成され、前記第1電極及び第2電極が、メタライズペーストを前記セラミックグリーンシートと同時に焼成することにより形成される。
また、本発明のプラズマ発生体は、平板状の第1電極と、該第1電極上に対向して配置される平板状の第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極をそれぞれ支持する第1絶縁体及び第2絶縁体と、平面視でこれら電極同士の前記対向面の外周領域に設けられ、前記第1電極及び第2電極を一定の距離だけ離間させる一対の側壁と、からなるセルを備え、前記セル内には流体が流れるとともに、前記第1絶縁体或いは第2絶縁体には、溝或いは穴が設けられる。
本発明のプラズマ発生体は、側壁に溝或いは穴のうち少なくとも一つが設けられている。この溝或いは穴により、プラズマ発生体の側壁に発生する熱応力が、側壁に溝或いは穴が形成されていない場合に比べて低減される。これは、溝或いは穴が設けられていることから、側壁に生じた熱応力による変形が溝或いは穴により緩和されることによる。これにより、第1電極あるいは第2電極と側壁とで構成される内壁面の角部を起点として側壁にクラックが発生することが抑制でき、プラズマ発生体が破損する可能性を低減できる。これにより、セル内を通過するPMや酸化性成分等の流体を良好に反応、分解させて浄化することができる。
また、セルが厚み方向に複数積層され、それぞれのセル内でプラズマ場を発生させることで、それぞれのセル内を通過するPMや酸化性成分等の流体を反応、分解させて浄化することができ、効率良く流体を浄化することができる。
また、好ましくは、溝或いは穴は、厚み方向に沿って貫通していることから、プラズマ発生体の外表面に露出する面積を広くできるとともに、溝或いは穴において気体が循環しやすくなる。このため、プラズマ発生体の熱を効率良く放散することでプラズマ発生体が高温化することを抑制し、プラズマ発生体が破損する可能性を低減することができる。
また、好ましくは、溝或いは穴は、その延在方向に直交する断面における形状が、実質的に角部のない形状或いは、角部に面取りが成された形状であることから、熱応力が角部に集中することが抑制できる。これにより、プラズマ発生体に生じた熱応力により、溝或いは穴の角部やその周辺からクラックが発生する可能性を低減できる。
また、好ましくは、溝或いは穴は、その内周面に導体が形成されており、導体は、第1電極または第2電極に電気的に接続されていることから、プラズマ発生体全体の抵抗値を低減することができるので、溶断破壊により断線する可能性を低減することができ、セル内にプラズマ場を良好に発生させることができる。
また、溝或いは穴は、その内周面に導体が被着されていることから、金属からなる導体により溝或いは穴に接する側壁の機械的強度が強くなり、熱応力が集中したとしても、プラズマ発生体が破損する可能性を低減することができる。これにより、セル内を通過するPMや酸化性成分等の流体を良好に反応、分解させて浄化することができる。
また、好ましくは、第1電極及び第2電極は、それぞれ第1絶縁体及び第2絶縁体により支持されているととともに、第1絶縁体、第2絶縁体、側壁が、同一材料からなることから、これら各部材の熱特性を同一のものにできる。すなわち、これら部材間の熱膨張率の差が小さい、或いは熱膨張率が等しくなるので、これら各部材間に熱応力が発生することを抑制し、セルが熱により変形することを抑制できる。
本発明のプラズマ発生体の製造方法は、第1電極及び第2電極がそれぞれ第1絶縁体及び前記第2絶縁体により支持されているととともに、第1絶縁体、第2絶縁体、側壁が、セラミックグリーンシートを同時焼成することにより形成され、第1電極及び第2電極が、メタライズペーストをセラミックグリーンシートと同時に焼成することにより形成されることから、プラズマ発生体を構成するセラミックスやメタライズが焼結により強固に一体化し、長期間の使用や高温環境下での使用においても、熱応力に対して耐久性に優れたものとすることができる。
また、流体がセル内を通過する際に接触する第1絶縁体、第2絶縁体、側壁が耐蝕性に優れたセラミックスからなることから、PMや酸化成分等の流体によりプラズマ発生体が腐食する可能性を低減したものとすることができる。
これにより、セル内を通過するPMや酸化性成分等の流体を長期間にわたって安定して反応、分解させて良好に浄化することができる。
また、本発明のプラズマ発生体は、平板状の第1電極と、第1電極上に対向して配置される平板状の第2電極と、第1電極及び第2電極をそれぞれ支持する第1絶縁体及び第2絶縁体と、平面視でこれら電極同士の前記対向面の外周領域に設けられ、第1電極及び第2電極を一定の距離だけ離間させる一対の側壁と、からなるセルを備え、セル内には流体が流れるとともに、第1絶縁体或いは第2絶縁体には、溝或いは穴が設けられる。この溝或いは穴により、プラズマ発生体の第1絶縁体或いは第2絶縁体に発生する熱応力が、第1絶縁体或いは第2絶縁体に溝或いは穴が形成されていない場合に比べて低減される。これは、溝或いは穴が設けられていることから、第1絶縁体或いは第2絶縁体に生じた熱応力による変形が溝或いは穴により緩和されることによる。これにより、セルの短部等の内壁面の角部を起点として第1絶縁体或いは第2絶縁体にクラックが発生することが抑制でき、プラズマ発生体が破損する可能性を低減できる。これにより、セル内を通過するPMや酸化性成分等の流体を良好に反応、分解させて浄化することができる。
本発明のプラズマ発生体について説明する。図1(a)は、本発明のプラズマ発生体の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA方向から見た側面図である。図2(a)は、図1(a)のB−B’線における断面図、図2(b)は、図1(b)のC−C’線における断面図、図2(c)は、図1(b)のD−D’線における断面図である。図3は、図1におけるプラズマ発生体の斜視図の一例である。これらの図において、1は第1電極、2は第2電極、3は第1絶縁体、4は第2絶縁体、5は側壁、6はセル、7は溝、9は外部端子である。
本発明のプラズマ発生体は、平板状の第1電極1と、第1電極1上に対向して配置される平板状の第2電極2と、平面視でこれら電極1、2同士の対向面の外周領域に設けられ、第1電極1及び第2電極2を一定の距離だけ離間させて支持する一対の側壁5と、からなるセル6を備え、セル6内には流体が流れるとともに、側壁5に、溝7が設けられている。
また、第1絶縁体3は、第1電極1の支持体であり、第2絶縁体4は、第2電極2の支持体である。
第1絶縁体3および第2絶縁体4は、例えば、セラミックスから成る場合、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、コーディエライト等の電気絶縁材料から成る。第1絶縁体3および第2絶縁体4が、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、次にセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1500〜1800℃)で焼成することによって製作される。
第1電極1および第2電極2は、後述するセル6内にプラズマ場を発生させるための電極として機能する。第1電極1および第2電極2は、それぞれの支持体である第1絶縁体3および第2絶縁体4の表面または内部に被着形成されており、一定の距離だけ離間して互いに対向するように配設されている。なお、第1電極1および第2電極2は、第1絶縁体3、第2絶縁体4の外表面まで導出されており、後述する外部端子9に電気的に接続される。第1電極1および第2電極2は、タングステンやモリブデン、銅、銀等の金属粉末メタライズからなり、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、第1絶縁体3および第2絶縁体4用のセラミックグリーンシートの所定の位置に、第1電極1および第2電極2用のメタライズペーストを印刷塗布し、第1絶縁体3および第2絶縁体4用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって第1絶縁体3および第2絶縁体4の所定のパターンに形成することができる。なお、メタライズペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー、有機溶剤、必要に応じて分散剤等を加えてボールミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで製作される。そしてセラミックグリーンシート同士の焼結挙動のミスマッチングによる第1絶縁体3や第2絶縁体4の反りの抑制、あるいは焼結後の絶縁基板との接合強度向上などの目的で、ガラスや金属酸化物などの粉末を添加することにより、メタライズの焼結挙動や、絶縁基板との接合界面状態のコントロールをしても良い。
なお、図2に示すように、第1電極1および第2電極2は、第1絶縁体3および第2絶縁体4の内部に形成していると、第1電極1および第2電極2がセル6内を通過する流体に直接接触しにくくなるので、この流体により第1電極1および第2電極2が腐食し、プラズマ場の強度の低下を抑制することができるため好ましい。そして、第1或いは第2絶縁体3,4が例えば酸化アルミニウム質焼結体、コーディエライトからなる場合は、それぞれの絶縁体の表面から第1或いは第2電極1,2までの最短距離が100μm以上となる位置に形成しておくことが好ましい。
また、第1電極1および第2電極2が第1絶縁体3および第2絶縁体4の表面に形成される場合には、これら電極の露出する表面には、ニッケルや金等の耐蝕性に優れる金属を被着しておくことが好ましい。また、プラズマ発生体が高温下の環境にて使用される場合は、熱により金属同士の拡散が行われやすくなることから、ニッケルや金等の耐蝕性に優れる金属を単層で被着しておいても構わない。例えば、ニッケルめっき層と金めっき層とを順次被着している場合、熱によりニッケルが金めっき層内部の粒界に沿って、金めっき層の表面まで拡散してしまう。このような拡散が生じた場合、その領域によって拡散の度合い、金属原子濃度が一様でないため、各領域における導電特性にばらつきが生じてしまい、プラズマ場の強度が低下する可能性やプラズマ場の強度がばらつく可能性がある。このため、プラズマ発生体を高温下の環境にて使用する場合は、第1電極1および第2電極2の露出する表面に金めっき層のみを0.1〜10μm程度被着させておいても構わない。
また、第1電極1と第2電極2との間隔は、必要とするプラズマ場の強度や第1電極1および第2電極2に印加する電圧等によって適宜決定される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMや酸化成分等の流体を反応、分解して、浄化するプラズマ発生体における第1電極1と第2電極2との間隔は、0.5mm〜2.0mm程度が好ましい。
側壁5は、第1絶縁体3および第4絶縁体4の外周部に設けられ、第1絶縁体3と第2絶縁体4とを支持することにより、第1電極1と第2電極2との間に一定の間隔を形成する。そして、第1絶縁体3と第2絶縁体4と側壁5とにより、流体が流れる領域となるセル6が形成される。
側壁5は、例えば、セラミックスから成る場合、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成る。側壁5が、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、次にセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1500〜1800℃)で焼成することによって製作される。
第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5の少なくともいずれか一つの外表面には、外部端子9が被着形成されている。外部端子9は、外部電源から第1電極1および第2電極2に電圧を印加するための導電路として機能し、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5の少なくともいずれか一つの外表面に導出された第1電極1および第2電極2のそれぞれに電気的に接続されている。外部端子9は、タングステンやモリブデン、銅、銀等の金属粉末メタライズからなり、スクリーン印刷法等の印刷手段を用いて、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5用のセラミックグリーンシートの所定の位置に外部端子7用のメタライズペーストを印刷塗布し、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによってプラズマ発生体の所定の位置に形成することができる。外部端子9用のメタライズペーストは、第1電極1および第2電極2用のメタライズペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーや有機溶剤の量により印刷に適した粘度に調製される。
なお、外部端子9の露出する表面には、ニッケルや金等の耐蝕性に優れる金属を被着しておくことが好ましい。なお、外部端子9が酸化腐食するのを防止するとともに、外部端子7と外部電源の電源端子との接合を強固なものとするために、厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次被着されていることが好ましい。なお、外部端子9においても、上述と同様に、高温下にて使用する場合には、ニッケルや金等の耐蝕性に優れる金属を単層で被着しておいても構わない。
そして、外部電源の電源端子を圧接や接合等の手段により外部端子9に電気的に接続し、外部端子9を通して第1電極1と第2電極2とに電圧を印加すると、第1電極1と第2電極2との対向面(平面視で第1電極1と第2電極2とが重畳する領域)の間にプラズマ場を発生させることができる。これにより、プラズマ発生体の一方側面から他方側面にかけて形成されたセル6内を通過する流体は、第1電極1と第2電極2との間のプラズマ場を通過することとなるので、反応、分解して、浄化される。例えば、NOX(窒素酸化物)は、例えば下記の反応(1)および(2)により分解して、N2およびO2が生成されて浄化される。
2NO2 → 2NO+O2・・・・・・・・・・・(1)
2NO+O2 → N2+2O2・・・・・・・・・・(2)
なお、第1電極1と第2電極2との間にプラズマ場を発生させるために、周波数の高い交流電圧が印加される。印加される交流電圧は、必要とされるプラズマ場の強度等によって適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMや酸化成分等の流体を反応、分解して、浄化するプラズマ発生体において印加される交流電圧およびその周波数は、例えば、1kV〜100kV、10MHz〜100MHzである。
2NO+O2 → N2+2O2・・・・・・・・・・(2)
なお、第1電極1と第2電極2との間にプラズマ場を発生させるために、周波数の高い交流電圧が印加される。印加される交流電圧は、必要とされるプラズマ場の強度等によって適宜選択される。例えば、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMや酸化成分等の流体を反応、分解して、浄化するプラズマ発生体において印加される交流電圧およびその周波数は、例えば、1kV〜100kV、10MHz〜100MHzである。
そして、本発明においては、側壁5に溝7が設けられている。この溝7により、プラズマ発生体の側壁5に発生する熱応力が、側壁5に溝7が形成されていない場合に比べて低減される。これは、溝7が設けられていることから、側壁5に生じた熱応力による変形が溝7により緩和されることによる。これにより、第1電極1あるいは第2電極2と側壁5とで構成される内壁面の角部を起点として側壁5にクラックが発生することが抑制でき、プラズマ発生体が破損する可能性を低減できる。これにより、セル6内を通過するPMや酸化性成分等の流体を良好に反応、分解させて浄化することができる。
また、図4に示すように、溝7の代わりに、穴8を設けても構わない。なお、図4(a)は、本発明のプラズマ発生体の実施の形態の一例を示す平面図であり、図4は、図4(a)のE−E’線における断面図、図4(c)は、図4(b)のF−F’線における断面図である。穴8における場合においても、上述の溝7の場合と同様に第1電極1あるいは第2電極2と側壁5とで構成される内壁面の角部を起点として側壁5にクラックが発生することが抑制でき、プラズマ発生体が破損する可能性を低減できる。これにより、セル6内を通過するPMや酸化性成分等の流体を良好に反応、分解させて浄化することができる。なお、溝7とは、側壁5の外側面に形成されたものであり、穴8とは、側壁5の外側面よりも内側、すなわち、側壁5の外側面とセル6との間の領域に形成されたものをいう。
このような溝7或いは8は、側壁5用のセラミックグリーンシートの必要とする領域に溝7或いは穴8用の貫通孔を、金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法により形成しておくことにより、プラズマ発生体の側壁5の所定の領域に形成することができる。
なお、溝或いは穴は、側壁5に限って形成されるものではなく、第1絶縁体3および第2絶縁体4のうち側壁5に積層された領域に設けても構わない。この場合、第1絶縁体3または第2絶縁体4に溝或いは穴を設ける場合は、第1絶縁体3用のセラミックグリーンシートまたは第2絶縁体4用のセラミックグリーンシートに上述と同様の方法を用いることにより、容易に形成することができる。さらに、側壁5に形成された溝7或いは穴8と、絶縁体に形成された溝或いは穴とを連接してもよいことは言うまでもない。このような溝或いは穴用の貫通孔は、側壁5用のセラミックグリーンシートを第1絶縁体3用のセラミックグリーンシートまたは第2絶縁体4用のセラミックグリーンシートと積層した後に、上述と同様の方法を採用することにより容易に形成することができる。
また、図5、図6に示すように、セル6が上下方向に複数積層されていることが好ましい。なお、図5、図6は、本発明のプラズマ発生体の実施の形態の一例を示す断面図である。セル5が複数積層されているとは、流体が流れる領域であるセル6が上下方向に複数形成されていることを示している。なお、図5、図6に示したように、セル6を複数積層させる場合、第1電極および第2電極2は、交互に対向して上下方向に配設される。これにより、それぞれのセル6内でプラズマ場を発生させることで、それぞれのセル6内を通過するPMや酸化性成分等の流体を反応、分解させて浄化することができ、効率良く流体を浄化することができる。
また、溝或いは穴は、例えば、プラズマ発生体のセル6よりも外側の領域を、プラズマ発生体の上面から下面にかけて、すなわち第1絶縁体3から側壁5を超えてさらに第2絶縁体4まで貫通していることが好ましい。これにより、プラズマ発生体の外表面に露出する面積を広くできるとともに、溝7或いは穴8において気体が循環しやすくなる。このため、プラズマ発生体の熱を効率良く放散することでプラズマ発生体が高温化することを抑制し、プラズマ発生体が破損する可能性を低減することができる。
このような溝7或いは穴8用の貫通孔は、金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法により、第1絶縁体3用のセラミックグリーンシートと、第2絶縁体4用のセラミックグリーンシートと、側壁5用のセラミックグリーンシートとのそれぞれに貫通孔を形成しておき、これらの貫通孔のそれぞれが重なるようにしてこれらのセラミックグリーンシートを積層することで、プラズマ発生体の所定の領域に形成することができる。また、溝7或いは穴8用の貫通孔は、第1絶縁体3用のセラミックグリーンシートと、第2絶縁体4用のセラミックグリーンシートと、側壁5用のセラミックグリーンシートとを積層してセラミックグリーンシート積層体を形成した後に、このセラミックグリーンシート積層体に金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法により形成しても良い。この場合は、セラミックグリーンシート積層体の厚み等により形成できる厚みには制限があるが、溝7或いは穴8用の貫通孔を一括して効率良く形成することができるとともに、積層ずれ等による溝7或いは穴8がずれるのを抑制することができる。
また、溝7或いは穴8は、その延在方向に直交する断面における形状が、実質的に角部のない形状或いは、角部に面取りが成された形状であることが好ましい。実質的に角部のない形状或いは、角部に面取りが成された形状とは、平面視における溝7或いは穴8の内周面の形状が円弧状や、それぞれの角部の角度が90°以上の鈍角からなるである形状であることをいう。このことにより、熱応力が角部に集中することが抑制できる。これにより、プラズマ発生体に生じた熱応力により、溝7或いは穴8の角部やその周辺からクラックが発生する可能性を低減できる。
また、図7、8に示すように、溝7或いは穴8は、その内周面に導体10が形成されており、導体10は、第1電極1または第2電極2に電気的に接続されていることが好ましい。図7は、本発明のプラズマ発生体の実施の形態の一例を示す断面図である。図8(a)は、図7のG−G’線における断面図であり、(b)は、図7のH−H’線における断面図であり、(c)は、図7のI−I’線における断面図である。このことにより、プラズマ発生体全体の抵抗値を低減することができるので、溶断破壊により断線する可能性を低減することができ、セル6内にプラズマ場を良好に発生させることができる。
また、溝7或いは穴8は、その内周面に導体10が被着されていることから、金属からなる導体10により溝7或いは穴8に接する側壁5の機械的強度が強くなり、熱応力が集中したとしても、プラズマ発生体が破損する可能性を低減することができる。これにより、セル6内を通過するPMや酸化性成分等の流体を良好に反応、分解させて浄化することができる。
このような導体10は、タングステンやモリブデン、銅、銀等の金属粉末メタライズからなる。まず、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5用のセラミックグリーンシートに形成された溝7或いは穴8用の貫通孔の内周面に導体10用のメタライズペーストをスクリーン印刷法等の印刷手段により印刷塗布しておく。そして、導体10用のメタライズペーストは、第1電極1または第2電極2用のメタライズペーストと接続するように形成しておく。そして、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁部5用のセラミックグリーンシートと同時に焼成することにより、導体10は、溝7或いは穴8の内周面に被着形成されるとともに、第1電極1または第2電極2とに電気的に接続される。なお、導体10用のメタライズペーストは、第1電極1、第2電極2、外部端子9用のメタライズペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーや有機溶剤の量により溝7或いは穴8用の貫通孔への印刷に適した粘度に調製される。
また、第1電極1及び第2電極2は、それぞれ第1絶縁体3及び第2絶縁体4により支持されているととともに、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5が、同一材料からなることが好ましい。このことから、これら各部材の熱特性を同一のものとできる。すなわち、これら部材間の熱膨張率の差が小さい、或いは熱膨張率が等しくなるので、これら各部材間に熱応力が発生することを抑制し、セルが熱により変形することを抑制できる。
本発明のプラズマ発生体の製造方法は、第1電極1及び第2電極2がそれぞれ第1絶縁体3及び第2絶縁体4により支持されているととともに、第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5が、セラミックグリーンシートを同時焼成することにより形成され、第1電極1及び第2電極2が、メタライズペーストを前記セラミックグリーンシートと同時に焼成することにより形成されている。このことから、プラズマ発生体を構成するセラミックスやメタライズが焼結により強固に一体化し、長期間の使用や高温環境下での使用においても、熱応力に対して耐久性に優れたものとすることができる。
また、流体がセル5内を通過する際に接触する第1絶縁体3、第2絶縁体4、側壁5が耐蝕性に優れたセラミックスからなることから、PMや酸化成分等の流体によりプラズマ発生体が腐食する可能性を低減したものとすることができる。これにより、セル内を通過するPMや酸化性成分等の流体を長期間にわたって安定して反応、分解させて良好に浄化することができる。
そして、本発明のプラズマ発生体は、供給部と排出部と外部電源とを備えた反応装置に取り付けられる。すなわち、反応装置は、プラズマ発生体と、反応、分解して浄化する流体をプラズマ発生体のセル6内に供給する供給部と、浄化した流体を排出する排出部と、プラズマ発生体の第1電極1および第2電極2に電圧を印加するための外部電源とを備えている。これにより、PMや酸化性成分等の流体を良好に浄化することができる。
なお、反応装置にプラズマ発生体以外の排気ガスの浄化機構を取り付けておいて良い。例えば、プラズマ発生体の前後にフィルターや触媒を付着しても良く、これにより排気ガス中のPMや酸化成分等の流体の排出をさらに低減させることができる。このようなフィルターとして、セラミック製のDPF(Diesel Particulate Filter)等があり、触媒として白金等を用いることができる。
なお、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述においては、自動車、船舶、発電機等に使用されるディーゼルエンジン等の排気ガスの浄化について説明を行っているが、その他の用途に使用されるプラズマ発生体およびその反応装置に適用しても良い。例えば、消臭、ダイオキシン分解、花粉分解等に使用される空気洗浄機器やプラズマエッチング、薄膜装置等に搭載されるプラズマ発生体および反応装置等に適用することができる。また、プラズマ反応によりセル8内を通過する流体を反応または分解させるためのプラズマ発生体およびその反応装置に適用することが可能である。また、図9に示すように、穴8は、プラズマ発生体の表面に露出しておらず、プラズマ発生体の内部に設けられているものであっても構わない。また、溝7或いは穴8は、その両方をプラズマ発生体に設けたものであっても構わない。
1・・・第1電極
2・・・第2電極
3・・・第1絶縁体
4・・・第2絶縁体
5・・・側壁
6・・・セル
7・・・溝
8・・・穴
9・・・外部端子
10・・・導体
2・・・第2電極
3・・・第1絶縁体
4・・・第2絶縁体
5・・・側壁
6・・・セル
7・・・溝
8・・・穴
9・・・外部端子
10・・・導体
Claims (8)
- 平板状の第1電極と、
該第1電極上に対向して配置される平板状の第2電極と、
平面視でこれら電極同士の前記対向面の外周領域に設けられ、前記第1電極及び第2電極を一定の距離だけ離間させて支持する一対の側壁と、からなるセルを備え、
前記セル内には流体が流れるとともに、前記側壁に、溝或いは穴が設けられたプラズマ発生体。 - 前記セルが、上下方向に複数積層されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生体。
- 前記溝或いは穴は、上下方向に沿って貫通していることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のプラズマ発生体。
- 前記溝或いは穴は、その延在方向に直交する断面の形状が、実質的に角部のない形状或いは、角部に面取りが成された形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプラズマ発生体。
- 前記溝或いは穴は、その内周面に導体が被着されており、該導体は、前記第1電極または前記第2電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプラズマ発生体。
- 前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれ第1絶縁体及び第2絶縁体により支持されているととともに、前記第1絶縁体、前記第2絶縁体、前記側壁が、同一材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプラズマ発生体。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のプラズマ発生体を製造するための方法であって、前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ第1絶縁体及び第2絶縁体により支持されているととともに、
前記第1絶縁体、前記第2絶縁体、前記側壁が、セラミックグリーンシートを同時焼成することにより形成され、前記第1電極及び第2電極が、メタライズペーストを前記セラミックグリーンシートと同時に焼成することにより形成されることを特徴とするプラズマ発生体の製造方法。 - 平板状の第1電極と、
該第1電極上に対向して配置される平板状の第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極をそれぞれ支持する第1絶縁体及び第2絶縁体と、
平面視でこれら電極同士の前記対向面の外周領域に設けられ、前記第1電極及び第2電極を一定の距離だけ離間させる一対の側壁と、からなるセルを備え、
前記セル内には流体が流れるとともに、前記第1絶縁体或いは第2絶縁体には、溝或いは穴が設けられたプラズマ発生体。
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JP2007018602A JP2008186687A (ja) | 2007-01-30 | 2007-01-30 | プラズマ発生体およびプラズマ発生体の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020531743A (ja) * | 2017-09-18 | 2020-11-05 | ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハーVitesco Technologies GmbH | 排気ガス後処理用の電気加熱式加熱ディスク |
US11230953B2 (en) | 2020-03-18 | 2022-01-25 | Vitesco Technologies GmbH | Electrically heatable heating disk for exhaust gas aftertreatment |
-
2007
- 2007-01-30 JP JP2007018602A patent/JP2008186687A/ja active Pending
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