JP2008184646A - 高張力厚鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止する。水冷停止した後さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持してもよい。
【選択図】なし
Description
本発明に係る高張力厚鋼板の素材となる鋼片は、Bを0.0005〜0.0020%含むものとする必要がある。以下、このことについて説明する。
Bは、既に述べたように、オーステナイト結晶粒界に偏析して、鋼の焼入れ性を顕著に向上させる作用を有する。さらに、Bを有効活用すれば、厚鋼板の板厚方向の焼入れムラを抑制できるので、板厚方向の特性バラツキを抑制することもできる。こうした効果を得るためには、0.0005%以上のB含有量が必要である。しかしながら、Bの含有量が0.0020%を超えると、ホウ化物の析出による靱性劣化および溶接性の低下を招く。したがって、Bの含有量は、0.0005〜0.0020%とする。
Cは、厚鋼板の強度上昇に極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.03%未満では所望の強度確保が困難になる場合があり、また、焼入れ性が低下して十分な焼入れ組織を生成させることが困難になる場合がある。一方、Cの含有量が過剰になり、特に、0.15%を超えると、溶接性および継手靱性の著しい低下を招く場合がある。このため、含有させる場合のCの含有量は0.03〜0.15%とすることが好ましい。より好ましいCの含有量は、0.03〜0.12%である。
Siは、Alとともに脱酸剤として有効な元素であり、また、厚鋼板の強度上昇にも極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.02%未満では前記した効果を得難い場合がある。一方、Siの含有量が過剰になり、特に、0.5%を超えると、溶接熱影響部靱性の低下を招く場合がある。このため、含有させる場合のSiの含有量は0.02〜0.5%とすることが好ましい。一層好ましいSiの含有量は、0.05〜0.3%である。
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させて靱性を確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.5%未満では前記した効果を得難い場合がある。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、焼戻し脆性が大きくなり、溶接性が劣化するなどの問題を生じる場合がある。このため、含有させる場合のMnの含有量は0.5〜2.0%とすることが好ましい。より好ましいMnの含有量は、0.7〜1.5%である。
Pは、厚鋼板の機械的特性、なかでも低温靱性を低下させる場合がある元素である。このため、Pの含有量は極力低減することが望ましい。しかしながら、Pの除去には著しいコスト上昇を伴うため、0.012%をP含有量の上限とすることが好ましい。より好ましいPの含有量は、0.010%以下である。
S:0.003%以下
Sは、粒界への偏析およびMnS生成を通じて、靱性および溶接性を低下させる場合がある元素である。このため、Sの含有量は極力低減することが望ましい。しかしながら、Sの除去には著しいコスト上昇が避けられないため、0.003%をS含有量の上限とすることが好ましい。一層好ましいSの含有量は、0.002%以下である。
Crは、鋼材の強度を上昇させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.2%未満では前記効果を得難い場合がある。一方、Crの含有量が1.2%を超えると、前記効果が飽和するばかりか、溶接性の著しい低下をもたらす場合がある。このため、含有させる場合のCrの含有量は0.2〜1.2%とすることが好ましい。より好ましいCrの含有量は0.3〜1.0%である。
Nbは、オーステナイトの低温域で微細なNb炭窒化物を形成することによりオーステナイト粒を微細化する作用を有する。さらに、析出したNb炭窒化物は圧延などによる加工を受けた未再結晶オーステナイト粒の回復、再結晶を抑制する効果を有しており、母材靱性の確保にも有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.005%未満ではこれらの効果を得難い場合がある。一方、Nbを0.030%を超えて含有させると、溶接時に割れを招く場合がある。このため、含有させる場合のNbの含有量は0.005〜0.030%とすることが好ましい。一層好ましいNbの含有量は、0.01〜0.025%である。
Vは、前記Crに比べて極めて少量を含有させることで析出強化による強度上昇効果が得られる元素である。しかしながら、その含有量が0.005%未満では前記効果を得難い場合がある。一方、Vを0.05%を超えて含有させても前記の効果が飽和し、また、溶接部靱性の劣化を招いてしまう場合がある。したがって、含有させる場合のVの含有量は0.005〜0.05%とすることが好ましい。なお、より好ましいV含有量の範囲は、0.01〜0.04%である。
Tiは、鋼中のフリーNを固定して、スラブ表面や厚鋼板表面の清浄性を確保するのに極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.002%未満では前記の効果を得難い場合がある。一方、Tiの含有量が過剰になり、特に、0.02%を超えると、衝撃特性の著しい低下をきたす場合がある。したがって、含有させる場合のTiの含有量は0.002〜0.02%とすることが好ましい。より好ましいTiの含有量は、0.005〜0.015%である。
Alは、鋼中のフリーNをAlNとして固定し無害化する作用を有する。しかしながら、Alの含有量がsol.Al(「酸可溶性Al」)として0.02%未満では前記の効果を得難い場合がある。一方、Alをsol.Alとして0.08%を超えて含有させても前記の効果が飽和したり、溶接熱影響部靱性の低下を招く場合がある。このため、含有させる場合のsol.Alの含有量は0.02〜0.08%とすることが好ましい。なお、より好ましいsol.Alの含有量は、0.03〜0.06%である。
Nは、固溶状態で存在した場合には母材および継手の靱性の低下を招くことがある元素である。このため、Nの含有量は極力低減して、0.005%以下とすることが好ましい。なお、より好ましいNの含有量は、0.004%以下である。
Oは、不可避不純物であり、酸化物として鋼中に存在するが、母材および継手の靱性を低下させたり、溶接性を劣化させる場合がある元素である。このため、Oの含有量は極力低減することが望ましく、0.002%以下とするのがよい。
Cuは、強度を向上させる作用を有する。しかしながら、Cuを0.8%を超えて多量に含有させると溶接性が損なわれたり、いわゆる「Cuチェッキング」による高温割れをきたす場合がある。このため、含有させる場合のCuの含有量は0.8%以下とすることが好ましい。
Moは、強度を上昇させる作用を有する。しかしながら、Moを0.8%を超えて含有させても前記効果が飽和してコストが嵩む場合があり、また、溶接性の著しい低下をきたす場合もある。このため、含有させる場合のMoの含有量は0.8%以下とすることが好ましい。
Niは、低温靱性および脆性破壊伝播停止特性を向上させる作用を有する。しかしながら、Niを1.8%を超えて含有させても、コスト上昇の割にはその効果が小さい場合がある。したがって、含有させる場合のNiの含有量は1.8%以下とすることが好ましい。
高張力厚鋼板は、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造や分塊圧延を行って得た鋼片を、「900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止する」ことによって、あるいは、「900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止し、その後さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持する」ことによって製造する。
熱間圧延は、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上となるように行う必要がある。
前記(B−1)項の熱間圧延を終了した後は、水冷開始までに20秒以上の時間を経過させる必要がある。
圧延終了後に前記(B−2)項の時間を経過した後は、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止する必要がある。
前記(B−3)項の圧延後の水冷を停止した後は、必要に応じてさらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持する条件での熱処理(焼戻し)を行ってもよい。
試験番号15および試験番号16の厚鋼板は、B含有量が本発明で規定する条件から外れているため、板厚方向の靱性バラツキが大きい。
Claims (5)
- 質量%で、B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
- 質量%で、B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止し、その後さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
- 鋼片が、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.012%以下、S:0.003%以下、Cr:0.2〜1.2%、Nb:0.005〜0.030%、V:0.005〜0.05%、Ti:0.002〜0.02%、sol.Al:0.02〜0.08%、B:0.0005〜0.0020%、N:0.005%以下およびO:0.002%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
- 鋼片が、質量%で、さらに、Cu:0.8%以下およびMo:0.8%以下の1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
- 鋼片が、質量%で、さらに、Ni:1.8%以下を含有するものであることを特徴とする請求項3または4に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
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