JP2008181151A - 全固体紫外レーザー発振器 - Google Patents

全固体紫外レーザー発振器 Download PDF

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Abstract

【課題】非線形光学結晶、たとえば単結晶四ホウ酸リチウムLB4を用いて、安定的に高変換効率を達成し、実用化に耐える全固体紫外レーザー発振器を提供する。
【解決手段】波長532nmのコヒーレント光を発振するグリーンレーザー発振器10と、このグリーンレーザー発振器10からの光を入射光として入射するLB4結晶ボックス23とを備える。LB4結晶ボックス23には、入射光を変換して266nmの出射光を出射させる単結晶四ホウ酸リチウムLB4が、位相整合角度を満足するように配置されていると共に、このLB4結晶を200〜600℃に加熱保持する加熱装置が内蔵されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、光波長変換システムを用いた全固体紫外レーザー発振器に関する。更に詳しくは、第2高調波発生素子としての非線形光学結晶、たとえば単結晶四ホウ酸リチウム(Li247、以下「LB4」という。)に、コヒーレント光を入射し、これを1/2波長の光に変換して出射する光波長変換方法、及び光波長変換システムに関する。
波長が短いレーザー光は、記録媒体へのデータ記録、記録媒体からデータの読みだしの光源として使用した場合に、記録密度を大きくできるという利点を有している。また材料の加工の用途に使用した場合に、熱影響が少なく、かつ精密な加工が可能となる利点を有している。さらに医療用の光源、超LSIのリソグフィ用光源なども短い波長のレーザー光の利用が適している。
このように、様々な分野で、波長の短いレーザー光が求められている。そのため、短い波長のレーザー光を安定して出射する、小型、軽量、長寿命の光源が要望されている。
しかしながら、従来500nm以下の波長の光を出射する適切な光源が存在しなかった。たとえば、半導体レーザーとしては波長400nm程度までのレーザー光は出射できるものが知られてきたが、出力が非常に低いという問題がある。
短波長大出力レーザーとしては、エキシマレーザーが知られている。エキシマレーザーは、1970年にソビエト連邦のBasovらによって、液体キセノン(Xe)を電子ビームで励起する方法で初めて実現され、さらに1976年に、放電励起によって発振することにも成功した。放電励起方式のエキシマレーザーは、紫外線のパルス繰り返し発振レーザーで、ArF(193nm),KrF(248nm),XeCl(308nm)などの化合物が発する紫外光を光共振器により増大させ、レーザー光として取り出したものである。エキシマレーザーは、高分子材料のアブレーション加工、表面改質、マーキング、薄膜作製、医薬品の製造、同位体分離などに応用が期待されている。しかしながら、エキシマレーザーは、例えば繰り返し数百pps(pulse per second)のパルスレーザーの場合、10-2秒毎に10-9秒間のパルス光しか発生せず、インターバルに比べてレーザーの発光時間が著しく短いことから、応用分野における加工や成膜過程で問題がある。またエキシマレーザーは、媒質ガスの寿命が短いこと、レーザー装置の小型化が困難であること、保守性が悪いこと、運転コストが高いこと、有毒ガスを用いること等の問題を有している。このように、現在、常温で、長時間安定的に、紫外線領域の光を発生する半導体レーザーなどの実用化は達成されていない。
そこで、第2高調波発生(SHG:secondary harmonic-wave generation)素子などの非線形光学素子の研究が近年活発化している。SHG素子は入射光の波長の1/2の波長の光を発生するから、たとえば、赤外線領域のレーザー光から紫外線領域の光を発生することができ、各種応用分野への工業的価値はきわめて大きい。
SHG素子のような波長変換素子として用いられている結晶としては、たとえば、特開平3−65597号公報に開示されているKTP(KTiOPO4 )、特開昭63−279231号公報に開示されているBBO(β−BaB24 )、CLBO(CsLiB610)、LBO(LiB35)が知られている。
しかしながら、KTPを用いた波長変換素子は、結晶の大型化が難しいうえ、結晶内部で屈折率が変化する。したがって一個の結晶から切り出したKTP素子でも、屈折率が異なるので位相整合角度が異なるから、高い精度の波長変換素子を実現することが難しいという不利益を有している。さらに、KTPは結晶内にいわゆる”巣”が入りやすいので、高い品質のKTPを大量に提供しにくいという不利益を有している。
また、BBO、CLBOを用いた変換素子は、高い変換効率は有するものの、耐湿性、耐レーザー損傷性、2光子吸収による出力の不安定化などの問題を抱えている。
また、LBOを用いた変換素子は、最短のSHG波長(2倍波)が277nmであり、波長変換範囲が狭い。そのため、Nd:YAGレーザーの4倍波(266nm)を発生させることができない。また、大型の結晶ができないという欠点もある。
そこで、本件出願人は、先に単結晶のLB4(Li247)を変換素子として用いた波長変換方法を提案した(特願平8−250523号)。
この単結晶LB4は、広範囲の波長に対して透明度が高く、レーザー光による損傷が少ない。また、良質で大型の結晶を容易に製造できる。また、加工性に優れ、潮解性が小さく取り扱い性にも優れている。さらに、寿命も長い。
したがって、LB4によれば、長期的に安定して動作し、長寿命を示し、加工性に富み、小型、軽量、低価格な光学変換素子とすることができるものである。
波長変換素子による変換効率は、主に結晶の非線形光学定数や位相整合の角度許容幅といった結晶の固有の物性値によって決まるものである。ところが、上記単結晶LB4は、BBOやCLBOに比較して、変換効率が低いという欠点を有している。そのため、変換効率の低い単結晶LB4は、紫外線領域の光を出射する波長変換素子としては、不適切であると考えられてきた。
低い変換効率を改善して、平均出力の高い出射光を得るために、様々な技術的手法が採用可能である。たとえば、レンズによって入射光を集光させて入射光のピークパワー密度を高める方法、結晶長を長くする方法、波長変換結晶を複数個使用する方法、高出力でビーム広がりの小さい高品質なビーム特性を有するレーザー発振器を光源として使用する方法などが、従来から採用されている。
しかしながら、このような技術的手法による変換効率の改善は、以下のように限界があるものであった。
まず、レンズによって入射光を集光させて入射光のピークパワー密度を高める方法では、ピークパワー密度を無制限に高くできるものではなく、入射光によるレーザー損傷を考慮しなければならない。
すなわち、波長変換素子の結晶素子の端面には、通常減反射用の反射防止膜がコーテイングされているが、この反射防止膜の耐レーザー損傷性は、一般にそれ程充分なものではなく、入射光のピークパワー密度が高すぎると損傷してしまう可能性がある。また、さらに高いピークパワー密度で入射した場合には、結晶素子自身の誘電破壊を招くおそれがある。したがって、入射光のピークパワー密度は、反射防止膜の特性を含めた波長変換素子全体のレーザー損傷閾値を考慮して制限せざるを得ない。
また、入射光のピークパワー密度向上により高い変換効率が得られた場合でも、非線形光学結晶に特有の2光子吸収という問題がある。これは、結晶自身の2光子吸収により、出射光ビームパターンの中心にドーナツ状に穴があいた形状となり、出力が極めて不安定になる現象である。2光子吸収は、出射光のビーム強度の2乗に比例して強くなるため、特に強度が高いビーム中心部では、吸収による結晶内部の加熱の影響が大きく、屈折率が変化して位相整合性が崩れるものと考えられる。
なお、従来は、湿気から非線形結晶を保護するため、あるいは温度による位相整合を行うため、非線形光学結晶を40〜200℃程度に加熱保持することが行われている。
さらに、レンズによって入射光を集光させると、入射ビームの広がりが増大するため、位相整合の角度許容範囲を超えてしまい、かえって、変換効率の低下につながる。
また、結晶長を長くする方法では、結晶長が長くなると位相整合の角度許容幅が狭くなることと、結晶による吸収が増大することから、一定以上の長さを越えると、変換効率が次第に飽和していく傾向が見られる。また、結晶の長尺化によりウォークオフによってビームパターンに歪みが生じるという問題がある。このように、結晶長を長くする方法が有効な方法であるとは、必ずしも言い難い。
また、波長変換結晶を複数個使用する方法は、波長変換されずに結晶内を通過してきたビームを次の結晶に入射させて、再利用する方法である。この方法によれば、変換効率を上げるだけでなく、複数個の結晶によって発生した波長変換光の干渉効果により、出力増加が期待される。しかし、この方法によると、入射光のビーム広がりが大きい場合やビーム径が小さい場合に、充分な干渉効果が得られないという問題点がある。
また、高品質なビーム特性を有するレーザー発振器を光源とする方法であるが、確かに、変換効率を上げる意味で高出力でビーム広がりの小さいビームを使用することは理想である。しかしながら、そのような発振器を低コストで製作することは困難である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、非線形光学結晶、たとえば、単結晶四ホウ酸リチウムLB4を用いて、安定的に高変換効率を達成し、実用化に耐える全固体紫外レーザー発振器を提供することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するため、固有の波長λのコヒーレント光を発振するレーザー発振器と、光波長変換システムとを備え、前記光波長変換システムが、前記レーザー発振器からのグリーン光を入射光として、1/2λの波長の紫外光を出射させる非線形光学結晶と、この非線形光学結晶を200〜400℃に加熱保持する加熱手段とを備え、前記入射光の波長が400〜600nmであり、前記非線形光学結晶がLiからなり、前記加熱手段が前記非線形光学結晶の2光子吸収による発熱の影響を軽減するために前記非線形光学結晶を加熱保持するものであり、前記入射光のビーム広がりが0.3〜4mrad、時間パルス幅が1×10−3〜80nsec、ピークパワー密度が1MW/cm2以上であり、安定的に高変換効率であることを特徴とする全固体紫外レーザー発振器を提供する。
また、本発明は、固有の波長λのコヒーレント光を発振するレーザー発振器と、このレーザー発振器からの光を入射光として、1/2λの波長の光を出射させる非線形光学結晶と、この非線形光学結晶を200〜600℃に加熱保持する加熱手段とを備えることを特徴とする光波長変換システムを提供する。
上記各発明において、加熱保持の温度は、200〜400℃とすることがより望ましい。
また、上記各発明における入射光の波長の望ましい範囲は1000nm以下であるが、より望ましくは400〜800nm、更に望ましくは400〜600nm、最も望ましくは480〜540nmである。
また、上記各発明において、前記入射光のビーム広がりは10mrad以下、より望ましくは0.3〜4mradとすることが望ましい。
また、時間パルス幅は100nsec以下、より望ましくは1×10-3〜80nsecとすることが望ましい。
さらに、ピークパワー密度は、1MW/cm2以上であることが望ましい。
以下、本発明の技術的意義を、実験結果を参照しつつ説明する。
本発明者は、まず、非線形光学結晶であるLB4結晶について、入射光のピークパワー密度と変換効率との関係を実験により求めた。結果を図1に示す。実験に用いた入射光の発振器、及びLB4結晶の条件は、以下のとおりである。
まず、入射光の発振器としては、Nd:YAGレーザーとSHG素子としてLBO結晶とを組み合わせたものを用いた。すなわち、LB4結晶への入射光は、Nd:YAGレーザーからの近赤外光(1064nm)の2倍波であるグリーンレーザー(532nm)である。なお、繰り返し周波数5KHz以上の入射光を得るための発振器と、繰り返し周波数100Hz以下の入射光を得るための発振器とは、別のものを用いた。
ピークパワー密度は、入射光の平均出力を繰り返し周波数、ビーム面積及び時間パルス幅で除したものである。そこで、この実験では、YAGレーザーに与える励起光のパワーを調整することにより入射光の平均出力を調整した。また、集光レンズを用いて、ビーム径(ビーム面積)を調整した。
一方、LB4結晶は、結晶長35mmのもの、又は60mmのものを用いた。
なお、LB4結晶の断面積は変換効率に影響を与えないが、主として断面が15mm×15mmのLB4結晶を用いた。
図1において、符号X1(黒塗りの◇)は、結晶長35mm、繰り返し周波数1Hz、ビーム径5.5mmのデータである。
また、符号X10(黒塗りの□)は、結晶長35mm、繰り返し周波数10Hz、ビーム径5.5mm又は11mm(ピークパワー密度200MW/cm2未満:11mm,ピークパワー密度200MW/cm2以上:5.5mm)のデータである。
また、符号X100(黒塗りの△)は、結晶長35mm、繰り返し周波数100Hz、ビーム径5.5mm又は11mm(ピークパワー密度100MW/cm2未満:11mm,ピークパワー密度100MW/cm2以上:5.5mm)のデータである。
また、符号Y10(□)は、結晶長60mm、繰り返し周波数10Hz、ビーム径11mmのデータである。
また、符号Y100(△)は、結晶長60mm、繰り返し周波数100Hz、ビーム径11mmのデータである。
以上のデータを得る際の時間パルス幅は3nsecに固定し、平均出力を0〜26Wの範囲で変化させて、ピークパワー密度を調整した。なお、ビーム広がりは、ビーム径5.5mmのときが約1mrad、ビーム径11mmのときが約0.5mradであった。
また、符号Z5(黒塗りの○)は、結晶長35mm、繰り返し周波数5KHzのデータである。このデータを得る際の時間パルス幅は25nsecに、平均出力は30Wに固定し、ビーム径を0.4〜1.0mmの範囲で変化させて、ピークパワー密度を調整した。なお、ビーム広がりは、約数mrad(5mrad以下)であった。
また、符号Z10(◇)は、結晶長35mm、繰り返し周波数10KHzのデータである。このデータを得る際の時間パルス幅は30nsecに、平均出力は30Wに固定し、ビーム径を0.4〜1.0mmの範囲で変化させて、ピークパワー密度を調整した。なお、ビーム広がりは、約数mrad(5mrad以下)であった。
一般に、下記式(1)に示すように、入射光のピークパワーPが増すほど、変換効率ηが上がることが知られている。
η=a・tanh2(b・P0.5) (1)(但し、a及びbは、主として結晶の種類及び結晶長に応じて定まる定数)
図1のデータX1、X10、X100に示すように、結晶長35mmのLB4結晶に同じ発振器からの入射光を入射させた場合、入射光のピークパワー密度100MW/cm2以下のデータは、繰り返し周波数にかかわらず一致している。そのため、この範囲のデータを見る限りでは、ピークパワー密度を上昇させるに従い、原則通り式(1)に従って、符号X0で示すカーブをたどるものと予想される。
なお、符号X0で示すカーブのa,bをこの範囲のデータから求めると、a=32、b=0.085である。
また、データZ5、Z10に示すように、発振器が異なると同じ結晶長35mmでも、全ピークパワー密度範囲において、カーブX0とずれが見られる。しかしながら、低いピークパワー密度において、X0と、ほぼ同じ傾きの上昇カーブが得られた。なお、ずれの原因は、主として、ビーム広がりが大きいためと考えられる。
同様に、データY10、Y100に示すように、結晶長60mmのLB4結晶の場合、入射光のピークパワー密度50MW/cm2以下のデータは、繰り返し周波数にかかわらず一致している。そのため、この範囲のデータを見る限りでは、ピークパワー密度を上昇させても、原則通り式(1)に従って、符号Y0で示すカーブをたどるものと予想される。なお、符号Y0で示すカーブのa,bをこの範囲のデータから求めると、a=22、b=0.18である。
しかしながら、データX10、X100、Y100、Z5及びZ10に示すように、入射光のピークパワー密度が一定の値を超えると、式(1)で予想される理想的なカーブX0、Y0から離れて、かえって変換効率が低下する現象がこの実験により見出された。
また、これらのデータより、繰り返し周波数が高くなるほど、変換効率が低下に転じるピークパワー密度が低いことも明らかとなった。
また、結晶長が長いほど変換効率が高い傾向も見られた。
本実験においては、以上のように、入射光のピークパワー密度を変化させたときの変換効率を調べる一方、出射光の安定性も観察した。その結果、ちょうど変換効率が低下に転じて、式(1)に従うカーブX0、Y0からの乖離が生じるあたりから、出射光の出力が不安定になる2光子吸収の現象が見出された。そして、この出射光が不安定になる現象は、変換効率が低下に転じる以前にはほとんど観察されず、変換効率が低下に転じた後は、ピークパワー密度を上昇させればさせるほど、より顕著に観察されることが見出された。
すなわち、本発明者は、レーザー発振器の繰り返し周波数、及びLB4結晶の結晶長が一定の条件下で、最大の変換効率を与えるピークパワー密度は、「2光子吸収という出力を不安定化させる現象を実質上生じさせることなく、最大限の出射光の出力を与える入射光のピークパワー密度の最適値」(以下「最適ピークパワー密度」という。)にあたることを見出したものである。
このように、入射光のピークパワー密度は、最適ピークパワー密度とすることが最も望ましいが、実用上、最適ピークパワー密度を基準とする、一定範囲のピークパワー密度を採用することができる。
すなわち、入射光のピークパワー密度は、最適ピークパワー密度以下とすることが望ましい。最適ピークパワー密度より大きいピークパワー密度とすると、出射光の出力が不安定化するからである。しかしながら、2光子吸収は、最適ピークパワーを越えた後徐々に顕著になり、直ちに重大な影響を与えるわけではないので、最適ピークパワー密度の10倍以下とすれば、実用上差し支えない。また、最適ピークパワー密度の2倍以下とすれば、さらに、出力の不安定化を抑制することができる。
また、できるだけ高い出射光のパワーを効率よく得るために、最適ピークパワー密度の0.1倍以上とすることが必要であるが、0.5倍以上とすることが望ましい。
なお、非線形結晶の長寿命化を考慮すると、入射光のピークパワー密度を最適ピークパワー密度の0.8倍以下とすることが望ましい。したがって、最も望ましい入射光のピークパワー密度は、最適ピークパワー密度の0.5〜0.8倍である。
また、最適ピークパワー密度を境として、変換効率が低下すると共に出力が不安定化する現象は、波長が短い程、特にいわゆるグリーン光から紫外光に変換する際に顕著に観察される。したがって、本発明は、入射光の波長が1000nm以下の時に特に有効なものであるが、入射光の望ましい波長範囲は、400〜800nm、より望ましい波長範囲は400〜600nmである。
本発明者はさらに検討を進めた結果、非線形光学結晶を50℃以上に加熱保持することによって、この最適ピークパワー密度を大きくできることを見出した。
上述のように、従来から、湿気から非線形結晶を保護するため、あるいは温度による位相整合を行うため、非線形光学結晶を加熱保持することが行われている。
しかし、この場合でも加熱の程度は約200℃未満であり、本発明のように200℃以上に加熱保持することは行われていなかった。
本発明のように、比較的高温に加熱することによる効果を、表1と図2、及び表2と図3を用いて説明する。
表1は、入射光の平均繰り返し周波数を10KHzに、ビーム径を0.25mmに、時間パルス幅を28nsecに固定し、入射光の平均出力のみを変化させたときの変換効率を調べた結果である。また、図2は表1に記載したデータを横軸を入射光の平均出力、縦軸を変換効率としてまとめたグラフである。
同様に、表2は、入射光の平均繰り返し周波数を10KHzに、ビーム径を0.35mmに、時間パルス幅を28nsecに固定し、入射光の平均出力のみを変化させたときの変換効率を調べた結果である。また、図3は表1に記載したデータを横軸を入射光の平均出力、縦軸を変換効率としてまとめたグラフである。
なお、入射光の平均出力は、表2に示すように入射光のピークパワー密度に比例している。また、各表及び図中の温度(Temp)は、LB4の加熱保持温度(RTは室温:約25℃)を示すものである。
Figure 2008181151
Figure 2008181151
表1及び図2から明らかなように、室温条件においては、入射光の出力が約14Wに対応するピークパワー密度が、最適ピークパワー密度となっている。これに対して、LB4を60℃に加熱保持した場合には、入射光の出力が約17Wに対応するピークパワー密度が、最適ピークパワー密度となっている。そして、さらに加熱保持温度を高めると、測定範囲内では変換効率の極大値が観察されず、最適ピークパワー密度がさらに上昇していることがわかる。
また、表2及び図3から明らかなように、室温条件においては、入射光の出力が約16Wに対応するピークパワー密度(約57MW/cm2)が、最適ピークパワー密度となっている。これに対して、LB4を100℃以上に加熱保持した場合には、測定範囲内では変換効率の極大値が観察されず、最適ピークパワー密度がさらに上昇していることがわかる。さらに、LB4を加熱保持する温度が高くなるほど、より変換効率が上昇することがわかる。
このように、加熱によって、屈折率変化をもたらす2光子吸収による発熱の影響を軽減するだけでなく、最適ピークパワー密度を上昇させること、すなわち、2光子吸収という出力を不安定化させる現象を実質的に生じさせることなく、安定に出力を得られる入射光のピークパワー密度を上昇させることが可能となることが見出された。
この加熱保持による効果は、加熱保持温度が高温であればあるほど高いが、200℃以上とすることが必要である。これにより、2光子吸収による影響が軽減されて変換効率の低下を解消できると共に、変換効率の低下する現象が消失し、安定に高い出力を得ることができる。
一方、加熱保持温度を600℃よりも高くすることは望ましくない。600℃よりも高い温度となると、加熱手段周辺への熱流出を防止するための断熱手段が大がかりとなり、実用的でないからである。
また、加熱保持温度は400℃以下とすることが望ましい。加熱保持温度を400℃より高くしても、2光子吸収の影響低減効果が顕著に大きくならず、実用上の利益が小さいからである。
なお、入射光のビーム広がりがLB4結晶の位相整合条件によって決まる角度許容幅を超えてしまうと変換効率が低下する。したがって、望ましい入射光のビーム広がりは10mrad以下、より望ましい入射光のビーム広がりは0.3〜4mradである。
また、望ましい時間パルス幅は100nsec以下、より望ましい時間パルス幅は1×10-3〜80nsecである。
一般に高繰り返しになるほどパルス幅は広がり、パルスエネルギーも小さくなる。逆に、低繰り返しでは、パルス幅を狭くでき、パルスエネルギーを大きくできる。そのため、所望のピーク密度が得られる範囲で、上限値が定まる。
さらに、入射光のピークパワー密度は、1MW/cm2以上であることが望ましい。なお、入射光のピークパワー密度は、結晶のバルク損傷(誘電破壊)、あるいはコーティング膜、又は結晶端面の損傷が起きない範囲が上限となる。
以上詳述したように、本発明の波長変換方法及び波長変換システムによれば、最適ピークパワー密度を上昇させることができるので、入射光のピークパワー密度を高くしても安定な出力を得ることができる。したがって、単結晶四ホウ酸リチウムLB4等の非線形光学結晶を用いて、安定的に高変換効率を達成し、実用化に耐える全固体紫外レーザー発振器とすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図4は、本発明に係る光波長変換方法を採用した紫外レーザー発振器の実施形態を示す構成図である。図4の紫外レーザー発振器は、グリーンレーザー発振器10と波長変換システム20とから構成されている。
グリーンレーザー発振器10は、Nd:YAGレーザーからなる主発振器11と、主発振器11から出射される基本波(1064nm)を、2倍波であるグリーン光(532nm)に変換する変換器12とから構成されている。
また、波長変換システム20は、変換器12から出射されるグリーン光を、波長変換されずに通過した基本波から分離するためのセパレータ21、22と、セパレータ21、22により分離されたグリーン光が入射光として入射されるLB4結晶ボックス23と、LB4結晶ボックス23から出射する出射光を分離するプリズム24と、セパレータ21により分離された基本波を吸収するためのビームダンパ25とから構成されている。
ここで、LB4結晶ボックス23には、単結晶四ホウ酸リチウムLB4が、位相整合角度を満足するように配置されていると共に、このLB4結晶を600±1℃に加熱保持する加熱装置が内蔵されている。
本実施形態の紫外レーザー発振器では、LB4結晶ボックス23により、グリーン光が、その2倍波、すなわち基本波の4倍波である紫外光(266nm)に変換される。そして、プリズム24によって、波長変換された紫外光のみを取り出すことができる。
このとき、LB4結晶ボックス23の最適ピークパワー密度は、加熱をせずに常温のまま用いる場合よりも大きい値となっている。そして、セパレータ22からLB4結晶ボックス23に入射されるグリーン光のピークパワー密度は、この最適ピークパワー密度の0.5〜2倍である
本実施形態によれば、最適ピークパワー密度を上昇させると共に、この最適ピークパワー密度以下であって、最適ピークパワー密度に近いピークパワー密度の入射光とした。そのため、入射光のピークパワー密度を高くしても安定な出力を得ることができる。したがって、単結晶四ホウ酸リチウムLB4を用いて、安定的に高変換効率を達成し、実用化に耐える全固体紫外レーザー発振器とすることができる。
入射光のピークパワー密度と変換効率との関係を示すグラフである。 LB4結晶の加熱温度に応じた、入射光の平均出力と変換効率との関係を調べた結果を示すグラフである。 LB4結晶の加熱温度に応じた、入射光の平均出力と変換効率との関係を調べた結果を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る紫外レーザー発振器の構成図である。
符号の説明
10…グリーンレーザー発振器、20…波長変換システム、23…LB4結晶ボックス

Claims (1)

  1. 固有の波長λのコヒーレント光を発振するレーザー発振器と、光波長変換システムとを備え、
    前記光波長変換システムが、前記レーザー発振器からのグリーン光を入射光として、1/2λの波長の紫外光を出射させる非線形光学結晶と、この非線形光学結晶を200〜400℃に加熱保持する加熱手段とを備え、
    前記入射光の波長が400〜600nmであり、前記非線形光学結晶がLiからなり、前記加熱手段が前記非線形光学結晶の2光子吸収による発熱の影響を軽減するために前記非線形光学結晶を加熱保持するものであり、前記入射光のビーム広がりが0.3〜4mrad、時間パルス幅が1×10−3〜80nsec、ピークパワー密度が1MW/cm2以上であり、安定的に高変換効率であることを特徴とする全固体紫外レーザー発振器。
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