JP2008179508A - 合わせガラス、溶融性フリット、及び曲げ加工方法 - Google Patents

合わせガラス、溶融性フリット、及び曲げ加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 離型剤の使用量を低減させることができる合わせガラス、溶融性フリット、及び曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】 合わせガラス10は、熱処理を伴う曲げ加工が施された前面板ガラス1及び背面板ガラス3と、互いに対向する前面板ガラス1及び背面板ガラス3間の中間膜5と、前面板ガラス1及び中間膜5間の塗布層4とを備える。塗布層4は、黒セラ層4aと、黒セラ層4a上の導電層4bから成り、黒セラ層4a及び導電層4bには、結晶性が高い銀が所定量添加されたフリットが調製される。曲げ加工では、塗布層4が形成された前面板ガラス1上に離型剤が散布される。
【選択図】図3

Description

本発明は、合わせガラス、溶融性フリット、及び曲げ加工方法に関し、特に、離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工が施され、互いに対向する少なくとも2枚の板ガラスを含む合わせガラス、並びに、該合わせガラスが備える溶融性フリット、及び該曲げ加工を行うための曲げ加工方法に関する。
合わせガラスは、例えば所定の曲率を有する自動車用のフロントガラスに使用される。フロントガラスは、自動車の外側に面する前面板ガラスと、自動車の内側に面する背面板ガラスと、前面板ガラス及び背面板ガラス間に配設された中間膜とを備える。また、前面板ガラス及び中間膜間において、前面板ガラスの内側面の周縁部上には、黒色顔料成分を含有する溶融性ガラスフリットから成るセラミックカラー(以下、「黒セラ」という)が配設される。この黒セラは、自動車の意匠性を向上させるために使用される。
上記合わせガラスは、概略的には、以下のように製造される。
まず、黒セラが周縁部上に配設された平板状の板ガラスと、この板ガラスに所定の厚さの離型剤を介して重ねられた平板状の板ガラスとに対して熱処理を伴う曲げ加工を、例えばプレス法によって施し、2枚の板ガラスに略同一の所定の曲率を付与する。黒セラは、上記熱処理により溶融し、この熱処理及びその後の冷却によって焼結して前面板ガラスに定着する。次いで、曲げ加工が施された2枚の板ガラスは一旦離され、離型剤が除去された2枚の板ガラス間に中間膜が配設される。
上記黒セラは、溶融性ガラスフリットから成るので、前面板ガラスに定着する際に、背面板ガラスにも定着する場合がある。そこで、結晶性が高い結晶化タイプの溶融性ガラスフリットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この結晶化タイプのガラスフリットによれば、上記プレス法で用いる金属製プレス型の板ガラスからの離れ易さ(以下、「離れ性」という)が高い。
また、自動車用のフロントガラスでは、自動車のデアイサー又はアンテナの一部を構成する金属を成分として含有する溶融性ガラスフリットをペースト状にした導電性ペーストが上記黒セラ上に配設されることが多い。該金属は、デアイサー又はアンテナの導電性を確保するためのものであり、該金属として銀を用いる場合には、溶融性ガラスフリットの全質量に対して50〜99質量%の範囲内で添加される(例えば、特許文献2参照)。即ち、銀の含有量は、導電性ペースト全質量において33.3〜49.8質量%の範囲内にある。
特開2002−362940号公報 特開平10−092224号公報
上記結晶化タイプの溶融性フリットは、金属及びガラス間の離れ性は高いが、熱処理によって板ガラスに定着されるものであるためガラス及びガラス間の離れ性が高くはない。したがって、曲げ加工時には依然として板ガラス間に離型剤を用いる必要がある。また、ガラス及びガラス間の離れ性が高すぎると、溶融性ガラスフリットが板ガラスに定着しなくなる。
また、黒セラ及び導電性ペーストには、熱処理により溶融した際に離型剤が混入する。これにより、溶融性ガラスフリット、特に導電性ペーストの性能が劣化する場合があるので、離型剤の使用量を低減させることが求められている。
本発明の目的は、離型剤の使用量を低減させることができる合わせガラス、溶融性フリット、及び曲げ加工方法を提供することにある。
上述の目的を達成するために、請求項1記載の合わせガラスは、離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工が施され、互いに対向する少なくとも2枚の板ガラスと、前記2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設されて、前記曲げ加工時に前記離型剤に接触する溶融性フリットとを備える合わせガラスにおいて、前記フリットは、結晶性の高い結晶化タイプであって、且つ鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであり、前記フリットには、前記曲げ加工時における前記2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が所定量添加されていることを特徴とする。
請求項2記載の合わせガラスは、請求項1記載の合わせガラスにおいて、前記フリットは、導電性を確保するための金属を33.3〜49.8質量%の範囲内で含有し、前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後におけるフリット全質量において50.0〜90.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする。
請求項3記載の合わせガラスは、請求項2記載の合わせガラスにおいて、前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後におけるフリット全質量において70.0〜80.0質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする。
請求項4記載の合わせガラスは、請求項2又は3記載の合わせガラスにおいて、前記フリットは、デアイサー又はアンテナの一部を構成することを特徴とする。
請求項5記載の合わせガラスは、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の合わせガラスにおいて、前記2枚の板ガラスの一方の内側面に配設された他のフリットを備え、前記フリットは前記他のフリット上に配設されていることを特徴とする。
請求項6記載の合わせガラスは、請求項1記載の合わせガラスにおいて、前記フリットはセラミックカラーから成り、前記銀は、その含有量が、当該銀の添加後におけるフリット全質量において0.01〜32.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする。
請求項7記載の合わせガラスは、請求項6記載の合わせガラスにおいて、前記銀の含有量は9.09質量%以上であることを特徴とする。
請求項8記載の合わせガラスは、請求項6又は7記載の合わせガラスにおいて、前記セラミックカラーは顔料成分を含有することを特徴とする。
請求項9記載の合わせガラスは、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の合わせガラスにおいて、前記離型剤は、その厚さが1nm〜1mmの範囲内で前記曲げ加工時に用いられ、該曲げ加工終了後に除去されたことを特徴とする。
請求項10記載の合わせガラスは、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の合わせガラスにおいて、前記フリットはガラスを成分として含むことを特徴とする。
請求項11記載の合わせガラスは、請求項10記載の合わせガラスにおいて、前記ガラスは、Bi23 が50〜62質量%、SiO2 が25〜40質量%、TiO2 が5〜8質量%、Li2Oが3〜6質量%、K2O が0〜3質量%、CeO2 が0〜3質量%の範囲内にあることを特徴とする。
請求項12記載の合わせガラスは、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の合わせガラスにおいて、前記2枚の板ガラス間に配設された中間膜をさらに備えることを特徴とする。
請求項13記載の合わせガラスは、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の合わせガラスにおいて、車両用のガラスに適用されることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項14記載の溶融性フリットは、離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工が施されるべき少なくとも2枚の板ガラスであって、互いに対向する2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設されて、前記曲げ加工時に前記離型剤に接触する溶融性フリットにおいて、結晶性の高い結晶化タイプであると共に、鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであって、且つ前記曲げ加工時における前記2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が所定量添加されていることを特徴とする。
請求項15記載の溶融性フリットは、請求項14記載の溶融性フリットにおいて、導電性を確保するための金属を33.3〜49.8質量%の範囲内で含有し、前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後における全質量において50.0〜90.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする。
請求項16記載の溶融性フリットは、請求項15記載の溶融性フリットにおいて、前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後におけるフリット全質量において70.0〜80.0質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする。
請求項17記載の溶融性フリットは、請求項15又は16記載の溶融性フリットにおいて、デアイサー又はアンテナの一部を構成することを特徴とする。
請求項18記載の溶融性フリットは、請求項15乃至17のいずれか1項に記載の溶融性フリットにおいて、前記2枚の板ガラスの一方の内側面に配設された他のフリット上に配設されることを特徴とする。
請求項19記載の溶融性フリットは、請求項14記載の溶融性フリットにおいて、セラミックカラーから成り、前記銀は、その含有量が、当該銀の添加後における全質量において0.01〜32.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする。
請求項20記載の溶融性フリットは、請求項19記載の溶融性フリットにおいて、前記銀の含有量は9.09質量%以上であることを特徴とする。
請求項21記載の溶融性フリットは、請求項19又は20記載の溶融性フリットにおいて、前記セラミックカラーは顔料成分を含有することを特徴とする。
請求項22記載の溶融性フリットは、請求項14乃至21のいずれか1項に記載の溶融性フリットにおいて、前記離型剤はその厚さが1nm〜1mmの範囲内であることを特徴とする。
請求項23記載の溶融性フリットは、請求項14乃至22のいずれか1項に記載の溶融性フリットにおいて、ガラスを成分として含むことを特徴とする。
請求項24記載の溶融性フリットは、請求項23記載の溶融性フリットにおいて、前記ガラスは、Bi23 が50〜62質量%、SiO2 が25〜40質量%、TiO2 が5〜8質量%、Li2Oが3〜6質量%、K2O が0〜3質量%、CeO2 が0〜3質量%の範囲内にあることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項25記載の曲げ加工方法は、離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工を互いに対向する少なくとも2枚の板ガラスに施す曲げ加工方法において、前記結晶性の高い結晶化タイプであると共に、鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであって、且つ2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が添加されている溶融性フリットを調製する第1のステップと、前記フリットを前記2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設する第2のステップと、前記フリットに前記離型剤を接触させる第3のステップと、前記2枚の板ガラスに熱処理を伴う曲げ加工を施す第4のステップとを有することを特徴とする。
請求項26記載の曲げ加工方法は、請求項25記載の曲げ加工方法において、前記第3のステップでは、前記離型剤をその厚さが1nm〜1mmの範囲内となるように使用し、前記曲げ加工実施後に前記離型剤を除去する第5のステップを更に有することを特徴とする。
請求項1記載の合わせガラス、請求項14記載の溶融性フリット、又は請求項25記載の曲げ加工方法によれば、結晶化タイプで且つPbフリータイプの溶融性フリットに所定量添加されている銀が曲げ加工時における対向する2枚の板ガラス間の接着を防止するので、離型剤の使用量を低減させることができ、もって製造コストを低減させることができる。
請求項2記載の合わせガラス、又は請求項15記載の溶融性フリットによれば、溶融性フリットにおいて、銀及び導電性を確保するための金属の含有量が50.0〜90.9質量%の範囲内にあるので、導電性を確保するための金属を含有する溶融性フリットであっても、離型剤の使用量を確実に低減させることができる。
請求項3記載の合わせガラス、又は請求項16記載の溶融性フリットによれば、銀及び導電性を確保するための金属の含有量が70.0〜80.0質量%の範囲内にあるので、溶融性フリットとしての性能を低下させることなく、離型剤の使用量を確実に低減させることができる。
請求項4記載の合わせガラス、又は請求項17記載の溶融性フリットによれば、溶融性フリットがデアイサー又はアンテナの一部を構成するので、デアイサー又はアンテナの一部を含む合わせガラスの製造コストを低減させることができる。
請求項5記載の合わせガラス、又は請求項18記載の溶融性フリットによれば、溶融性フリットが他のフリット上に配設されているので、溶融性フリットを他のフリットに容易に定着させることができる。
請求項6記載の合わせガラス、又は請求項19記載の溶融性フリットによれば、セラミックカラーから成る溶融性フリットにおいて、銀の含有量が0.01〜32.9質量%の範囲内にあるので、離型剤の使用量を確実に低減させることができる。
請求項7記載の合わせガラス、又は請求項20記載の溶融性フリットによれば、銀の含有量が9.09質量%以上であるので、離型剤の使用量をより確実に低減させることができる。
請求項8記載の合わせガラス、又は請求項21記載の溶融性フリットによれば、セラミックカラーが顔料成分を含有するので、意匠性を向上させることができる。
請求項9記載の合わせガラス、請求項22記載の溶融性フリット、又は請求項26記載の曲げ加工方法によれば、曲げ加工時に離型剤の厚さが1nm〜1mmの範囲内で用いるので、離型剤の使用量をさらに低減させることができる。
請求項10記載の合わせガラス、又は請求項23記載の溶融性フリットによれば、ガラスを成分として含むので、2枚の板ガラスの一方の内側面に溶融性フリットを容易に定着させることができる。
請求項11記載の合わせガラス、又は請求項24記載の溶融性フリットによれば、Bi23 を含むので、溶融性フリットの定着を容易に行うことができ、Bi23 及びSiO2 を含むので、溶融性フリットの結晶性を向上させることができる。
請求項12記載の合わせガラスによれば、中間膜を備えるので、中間膜に応じた機能を付与することができる。
請求項13記載の合わせガラスによれば、車両用のガラスに適用されるので、車両の製造コストを低減させることができる。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工が施され、互いに対向する少なくとも2枚の板ガラスと、前記2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設されて、前記曲げ加工時に前記離型剤に接触する溶融性フリットとを備える合わせガラスにおいて、前記フリットは、結晶性の高い結晶化タイプであって、且つ鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであり、前記フリットには、前記曲げ加工時における前記2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が所定量添加されていると、離型剤の使用量を低減させて、もって合わせガラスの製造コストを低減させることができることを見出した。
また、本発明者は、上記溶融性フリットが導電性を確保するための金属を33.3〜49.8質量%の範囲内で含有する場合には、銀及び金属の含有量が、銀の添加後における溶融性フリット全質量において50.0〜90.9質量%の範囲内にあるように銀が添加されていると、導電性を確保するための金属を含有する溶融性フリットであっても、離型剤の使用量を確実に低減させることができることを見出した。
さらに、本発明者は、上記溶融性フリットがセラミックカラーから成る場合には、銀の含有量が当該銀の添加後におけるフリット全質量において0.01〜32.9質量%の範囲内にあるように銀が添加されていると、離型剤の使用量を確実に低減させることができることを見出した。
本発明は、上記研究の結果に基づいてなされたものである。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る合わせガラスの構成を概略的に示す断面図であり、図2は、図1の合わせガラス10の正面図である。
図1の合わせガラス10は、所定の曲率を有する自動車用のフロントガラスに使用される。合わせガラス10は、自動車の外側に面する前面板ガラス1と、自動車の内側に面する背面板ガラス3と、互いに対向する前面板ガラス1及び背面板ガラス3間に配設された中間膜5と、前面板ガラス1及び中間膜5間において前面板ガラス1の内側面の周縁部上(図2参照)に形成された塗布層4とを備える。前面板ガラス1及び背面板ガラス3は、例えば軟化点が730〜740℃のソーダライムシリケートガラスから成る。
また、合わせガラス10は、図1に示すように、背面板ガラス3の外側周縁部上に配設された接着剤で構成された接着層6を介して、自動車のフロントガラスの枠体7に固着される。
前面板ガラス1及び背面板ガラス3の所定の曲率は、後述する図3の製造工程における離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工によって付与される。中間膜5は、PVB(poly-(vinyl butyral))などから成り、また、双方の表面に塗布された接着剤により前面板ガラス1及び背面板ガラス3を接着する。
塗布層4は、前面板ガラス1の内側面の周縁部上に形成された黒色顔料成分を含む溶融性ガラスフリットから成るセラミックカラー(以下、「黒セラ」という)層4aと、黒セラ層4a上に形成された金属含有溶融性ガラスフリット(以下、「導電性フリット」という)から成る略茶色の導電層4bとから成る。導電層4bは、自動車のデアイサー又はアンテナの一部を構成し、その導電性を確保するために、導電層4bを構成するガラスフリットはその全質量において33.3〜49.8質量%の範囲内で金属を含有する。この金属としては、通常、導電性の高い銀(Ag)が用いられる。黒セラ層4aは、不透明又は半透明であり、略茶色の導電層4b及び上記接着層6が自動車の外部から視認されにくいようにして、自動車の意匠性を確保する。黒セラ及び導電性フリットの軟化点は、540〜580℃の範囲内にあることが好ましい。
また、導電層4bは、黒セラ層4aの表面を全て被覆しない程度に配置される(図4(a))。後述する曲げ加工により、上記黒セラ層4aの黒セラは、前面板ガラス1に定着され、上記導電層4bの導電性フリットは黒セラ層4aに定着される。これらのガラスフリット、即ち黒セラ及び導電性フリットは、ガラスを成分として含み、また、鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであり、且つ、結晶性の高い結晶化タイプである。
ガラスフリットの成分であるガラスは、Bi23 及びSiO2 を含むことが好ましい。Bi23 を含むので、フリットの前面板ガラス1への定着を容易に行うことができ、Bi23 及びSiO2 を含むので、例えば、後述する熱処理及びその後の冷却においてBi2SiO5 の結晶を析出して、フリットの結晶性を向上させることができる。
これらのガラスフリットには所定量の銀粉末が添加されており、これを以下に詳細に説明する。なお、銀粉末の平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、これにより、後述するスクリーン印刷を容易に実行することができる。
上記黒セラ層4aにおいては、上記ガラスフリット全質量に対して、0〜49質量%の範囲内で、好ましくは10質量%以上の銀粉末が添加される。即ち、黒セラ層4aにおける銀の含有量は、添加後のガラスフリット(黒セラ)全質量において0.01〜33.3質量%の範囲内にあり、好ましくは9.09質量%以上にある。なお、含有量が上限値33.3質量%を超えると、黒セラの結晶性が高くなりすぎて黒セラ層4aの前面板ガラス1への定着を阻害したり、黒セラ層4aにおける銀の含有量が多くなりすぎて導電層4bの導電性を阻害したりする一方、下限値0.01質量%を下回ると、黒セラの結晶性を十分に向上させることができず、所望の効果を奏することができなくなる。
上記導電層4bにおいては、上記導電性を確保するための金属を、例えば99質量%含有するガラスフリット全質量に対して1〜900質量%の範囲内、好ましくは134〜301質量%の範囲内で銀粉末が添加される。即ち、導電層4bにおける銀の含有量は、添加後のガラスフリット(導電性フリット)全質量において50.0〜90.9質量%の範囲内、好ましくは70〜80質量%の範囲内にある。上記金属によりデアイサー又はアンテナの導電性が確保されているので、この添加された銀は、導電性フリットの結晶性を向上させるためのものであり、これにより、曲げ加工時における前面板ガラス1及び背面板ガラス3間の接着を防止することができる。なお、含有量が上限値90.9質量%を超えると、導電性フリットの結晶性が高くなりすぎて導電層4bの黒セラ層4aへの定着が阻害されてガラスフリットとしての性能を低下させるだけでなく、銀は高価なので製造コストが高くなる一方、下限値50.0質量%を下回る場合には、従来の銀を含有するガラスフリットと同様に導電性フリットの結晶性が低いので所望の効果を奏することができない。
図3は、図1の合わせガラス10の製造工程を示すフローチャートであり、図4は、図3の各ステップにおける合わせガラス10の状態を示す断面図である。
図3において、まず、ステップS1では、所定量の銀粉末が添加されて調製された黒セラ及び導電性フリットを、それぞれ、所定の有機ビヒクル(vehicle)によりペースト状にする。続くステップS2では、図4(a)に示すように、前面板ガラス1となるように母材のソーダライムガラスから所定の形状に切り出された平板状の板ガラス1’の周縁部上にペースト状にした黒セラ(黒セラペースト)をスクリーン印刷により塗布して乾燥させることにより黒セラ層4aを形成すると共に、形成された黒セラ層4a上にペースト状にした導電性フリット(Agペースト)をスクリーン印刷により塗布して乾燥させることにより導電層4bを形成する。これにより、板ガラス1’,3’間の接着を防止するための銀を成分として含む塗布層4が形成される。
続くステップS3では、塗布層4を含む板ガラス1’の面上に、例えば酸化マグネシウムから成る離型剤を従来よりも少ない使用量で散布して非接着層2を形成する(図4(b))。なお、離型剤は、散布に限られず、少なくとも塗布層4を構成する黒セラペースト及びAgペーストに接触すればよい。また、塗布される離型剤の厚さは、従来よりも小さいことが好ましく、1nm〜1mmの範囲内であることが好ましい。
次いで、非接着層2を介して板ガラス1’上に、背面板ガラス3となる上記板ガラス1’と同一の形状を有する板ガラス3’を重ね、重ねられた2枚の板ガラス1’,3’に対して熱処理を伴う曲げ加工を施すことにより、略同一の曲率が付与された前面板ガラス1及び背面板ガラス3を形成する。(図4(c))。熱処理は、前面板ガラス1及び背面板ガラス3の軟化点よりも低く且つ黒セラ及び導電性フリットの軟化点よりも高い温度雰囲気、例えば600〜640℃の温度雰囲気下で実行される。
曲げ加工としては、例えば熱処理における温度雰囲気を利用することにより板ガラスを湾曲させる自重曲げ工法が採用される。自重曲げ工法を採用することにより、2枚の板ガラス1’,3’に略同一の所定の曲率を付与することを容易にすることができる。塗布層4を構成する黒セラ及び導電性フリットは、熱処理により溶融し、この熱処理及びその後の冷却によって焼結して前面板ガラス1に定着する。
ステップS5では、曲げ加工が施された2枚の板ガラスは一旦離され、離型剤が除去される。なお、離型剤は、上記熱処理により溶融した黒セラ及び導電性フリットに離型剤が僅かながら混入するため、完全に除去することができない。
続くステップS6では、2枚の板ガラス1,3間に中間膜5を配設し(図4(d))、中間膜5を介して2枚の板ガラス1,3を接着する。必要に応じてオートクレーブ(不図示)中で加熱及び図4(e)に示す矢印方向への加圧を行い、中間膜5を2枚の板ガラス1,3に定着させる。その後、製造された合わせガラス10は洗浄され(ステップS7)、本処理を終了する。
図3及び図4の製造工程によれば、板ガラス1’上に結晶性の高い銀を成分として含む黒セラペースト及びAgペーストで塗布層4を形成し(ステップS2)、板ガラス1’及び塗布層4上に従来よりも少ない使用量で離型剤を散布するので(ステップS3)、離型剤の使用量を少なくしても、銀の高い結晶性により前面板ガラス1及び背面板ガラス3間の離れ性を向上させることができ、もって、合わせガラス10の製造コストを低減させることができる。また、離型剤の使用量が低減されているので、曲げ加工時の熱処理によって溶融した離型剤が塗布層4に混入する可能性を低下させて、黒セラ層4aの黒色が劣化したり、導電層4bの導電性が劣化したりすることなどによる塗布層4の性能の劣化を防止することができる。
上記図3のステップS4では、1回の曲げ加工により2枚の平板状の板ガラスに略同一の曲率を付与したが、1回の曲げ加工により複数の平板状の板ガラスに略同一の曲率を付与してもよい。この場合、背面板ガラス3となる平板状の板ガラスの周縁部上にも、上記同様の黒セラ層4a又は黒セラ層4a及び導電層4bが形成され、各板ガラス間に離型剤が使用される。
なお、上記実施の形態において、上記銀が所定量添加されているガラスフリットは、黒セラ層4a及び導電層4bの双方に適用されるのが好ましいが、一方に適用されてもよい。また、該銀を含有するガラスフリットは、少なくとも離型剤に接触する部分において適用されればよく、離型剤に接触しない部分においては、銀を含有することがなく非結晶化タイプのガラスフリットを適用してもよい。
また、本実施の形態に係る合わせガラスは、自動車用のフロントガラスに適用したが、いかなるものに適用してもよく、例えば、電車を含む車両などの乗り物を含む移動体用のガラスに適用してもよい。また、フロントガラスに限られず、リアガラス、サイドガラスなどに適用してもよい。
また、本実施の形態に係る曲げ加工方法は、自重曲げ工法に適用したが、例えば金属製のプレス型を用いるプレス法などに適用してもよい。この場合、本実施の形態に係る溶融性フリットは、複数の板ガラス間の離れ性を向上させるためだけでなく、プレス型及び板ガラス間の離れ性を向上させるために用いることもできる。
本発明者は、合わせガラス10の製造において使用される離型剤の使用量を低減させるために、導電層4bを構成する導電性フリットに対して銀粉末の添加量(質量%)を変化させたときの離型剤の使用量を研究した。その研究結果を表1に示す。
上記導電性フリットとしては、無鉛ガラス粉末が63〜78.99質量%、耐熱ウィスカが5〜12質量%、三酸化二ビスマス粉末が0〜1質量%、耐熱顔料粉末が16〜26質量%の範囲内にある溶融性ガラスフリットであって、上記無鉛ガラス粉末として、Bi23 が50〜62質量%、SiO2 が25〜40質量%、TiO2 が5〜8質量%、Li2Oが3〜6質量%、K2O が0〜3質量%、CeO2 が0〜3質量%の範囲内にあるガラスフリットと、上記溶融性ガラスフリットが導電性を確保するための成分として50〜99質量%の範囲内で該ガラスフリットの全質量に対して添加された銀粉末とから成るものを用いた。即ち、銀粉末の含有量は、導電性フリットの全質量において33.3〜49.8質量%の範囲内にある。また、Agペーストは、上記導電性フリットに表1に示すような添加量の銀粉末を添加した後、所定の有機ビヒクルでペースト状にすることにより得た。
なお、表1において、銀添加量(質量%)は、上記導電性フリット全質量に対して添加された銀粉末の質量の割合を示し、銀含有量(質量%)は、銀粉末添加後における導電性フリット全質量に対する銀粉末の質量の割合を示す。また、離型剤使用量は、離型剤の最も少ない場合の使用量を示しており、その使用量が多いか、又は少ないで評価し、離型剤使用量が少ないほど合わせガラス10の製造コストが低減されたことを示す。
Figure 2008179508
表1から、例えば導電性を確保するための銀粉末がガラスフリット全質量に対して99質量%添加されている導電性フリットに、結晶化を向上させる成分としての銀粉末をさらに1〜900質量%添加したものを調製すると、即ち導電性フリット全質量における銀粉末の含有量が50.0〜90.9質量%の範囲内であると、導電性フリットが導電性を確保するための金属を含む場合であっても、離型剤使用量を少なくして、合わせガラス10の製造コストを低減させることができるのが分かった。
また、本発明者は、黒セラ層4aを構成する黒セラについても上記と同様の研究を行った。黒セラとして、上記溶融性ガラスフリットにおいて、導電性を確保するための金属、即ち銀を実質的に含有していないものを使用した。その研究結果を表2に示す。
Figure 2008179508
表2から、実質的に銀を含有していない黒セラに、結晶化を向上させる成分としての銀粉末をさらに10〜49質量%添加したものを調製すると、即ち黒セラ全質量における銀の含有量が0.01〜32.9質量%の範囲内で、好ましくは9.09以上であると、離型剤使用量を少なくして、合わせガラス10の製造コストを低減させることができるのが分かった。
また、上記2つの実施例では、離型剤の厚さは、離型剤使用量が非常に少ないときに1nmであり、離型剤使用量が多いときには1mmを超えた。このことから、離型剤の厚さが1nm〜1mmの範囲内にあると、離型剤の使用量を少なくすることができることが分かった。
本発明の実施の形態に係る曲げ加工方法は、例えば自動車用のフロントガラスに適用することができる。
本発明の実施の形態に係る合わせガラスの構成を概略的に示す断面図である。 図1の合わせガラスの正面図である。 図1の合わせガラスの製造工程を示すフローチャートである。 図3の各ステップにおける合わせガラス10の状態を示す断面図である。
符号の説明
10 合わせガラス
1,1’,3,3’ 板ガラス
2 非接触層
4 塗布層
4a 黒セラ層
4b 導電層
5 中間膜
6 接着剤
7 枠体

Claims (26)

  1. 離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工が施され、互いに対向する少なくとも2枚の板ガラスと、前記2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設されて、前記曲げ加工時に前記離型剤に接触する溶融性フリットとを備える合わせガラスにおいて、前記フリットは、結晶性の高い結晶化タイプであって、且つ鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであり、前記フリットには、前記曲げ加工時における前記2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が所定量添加されていることを特徴とする合わせガラス。
  2. 前記フリットは、導電性を確保するための金属を33.3〜49.8質量%の範囲内で含有し、前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後におけるフリット全質量において50.0〜90.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス。
  3. 前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後におけるフリット全質量において70.0〜80.0質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする請求項2記載の合わせガラス。
  4. 前記フリットは、デアイサー又はアンテナの一部を構成することを特徴とする請求項2又は3記載の合わせガラス。
  5. 前記2枚の板ガラスの一方の内側面に配設された他のフリットを備え、前記フリットは前記他のフリット上に配設されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の合わせガラス。
  6. 前記フリットはセラミックカラーから成り、前記銀は、その含有量が、当該銀の添加後におけるフリット全質量において0.01〜32.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス。
  7. 前記銀の含有量は9.09質量%以上であることを特徴とする請求項6記載の合わせガラス。
  8. 前記セラミックカラーは顔料成分を含有することを特徴とする請求項6又は7記載の合わせガラス。
  9. 前記離型剤は、その厚さが1nm〜1mmの範囲内で前記曲げ加工時に用いられ、該曲げ加工終了後に除去されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の合わせガラス。
  10. 前記フリットはガラスを成分として含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の合わせガラス。
  11. 前記ガラスは、Bi23 が50〜62質量%、SiO2 が25〜40質量%、TiO2 が5〜8質量%、Li2Oが3〜6質量%、K2O が0〜3質量%、CeO2 が0〜3質量%の範囲内にあることを特徴とする請求項10記載の合わせガラス。
  12. 前記2枚の板ガラス間に配設された中間膜をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の合わせガラス。
  13. 車両用のガラスに適用されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の合わせガラス。
  14. 離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工が施されるべき少なくとも2枚の板ガラスであって、互いに対向する2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設されて、前記曲げ加工時に前記離型剤に接触する溶融性フリットにおいて、結晶性の高い結晶化タイプであると共に、鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであって、且つ前記曲げ加工時における前記2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が所定量添加されていることを特徴とする溶融性フリット。
  15. 導電性を確保するための金属を33.3〜49.8質量%の範囲内で含有し、前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後における全質量において50.0〜90.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする請求項14記載の溶融性フリット。
  16. 前記銀は、当該銀及び前記金属の含有量が、前記銀の添加後におけるフリット全質量において70.0〜80.0質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする請求項15記載の溶融性フリット。
  17. デアイサー又はアンテナの一部を構成することを特徴とする請求項15又は16記載の溶融性フリット。
  18. 前記2枚の板ガラスの一方の内側面に配設された他のフリット上に配設されることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の溶融性フリット。
  19. セラミックカラーから成り、前記銀は、その含有量が、当該銀の添加後における全質量において0.01〜32.9質量%の範囲内にあるように添加されていることを特徴とする請求項14記載の溶融性フリット。
  20. 前記銀の含有量は9.09質量%以上であることを特徴とする請求項19記載の溶融性フリット。
  21. 前記セラミックカラーは顔料成分を含有することを特徴とする請求項19又は20記載の溶融性フリット。
  22. 前記離型剤はその厚さが1nm〜1mmの範囲内であることを特徴とする請求項14乃至21のいずれか1項に記載の溶融性フリット。
  23. ガラスを成分として含むことを特徴とする請求項14乃至22のいずれか1項に記載の溶融性フリット。
  24. 前記ガラスは、Bi23 が50〜62質量%、SiO2 が25〜40質量%、TiO2 が5〜8質量%、Li2Oが3〜6質量%、K2O が0〜3質量%、CeO2 が0〜3質量%の範囲内にあることを特徴とする請求項23記載の溶融性フリット。
  25. 離型剤を用いた熱処理を伴う曲げ加工を互いに対向する少なくとも2枚の板ガラスに施す曲げ加工方法において、前記結晶性の高い結晶化タイプであると共に、鉛を実質的に含有していないPbフリータイプであって、且つ2枚の板ガラス間の接着を防止するための銀が添加されている溶融性フリットを調製する第1のステップと、前記フリットを前記2枚の板ガラスの一方の内側面上に配設する第2のステップと、前記フリットに前記離型剤を接触させる第3のステップと、前記2枚の板ガラスに熱処理を伴う曲げ加工を施す第4のステップとを有することを特徴とする曲げ加工方法。
  26. 前記第3のステップでは、前記離型剤をその厚さが1nm〜1mmの範囲内となるように使用し、前記曲げ加工実施後に前記離型剤を除去する第5のステップを更に有することを特徴とする請求項25記載の曲げ加工方法。
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