図14に示すように昨今は無線LANのアクセスポイントの増設に伴って、無線LAN端末1が多数のアクセスポイントAP1〜AP5へアクセスできる場所が増加している。このような場所に位置する無線LAN端末1は、各アクセスポイントAP1〜AP5から発せられるビーコンに基づき各アクセスポイントAP1〜AP5の存在を認識すると共に、各アクセスポイントAP1〜AP5へ順次キャリアスキャンを行い、各アクセスポイントAP1〜AP5のアクセス状況(アクセスの安定度)を検知する。
検知した結果は通常、図15に示すように、無線LAN端末1の表示部2にアクセス状況画面3として表示される。図15に示すアクセス状況画面3では、アクセス可能なアクセスポイントAP1〜AP5ごとのアクセス状況を表したアクセスポイント欄3a〜3eが選択可能に配置され、各アクセスポイント欄3a〜3eは、アクセスの不安定さを表す言葉(良、普、悪、不安定)とアイコン4を記述したものになっている。また、各アクセスポイント欄3a〜3eの中から、選択された欄に応じたアクセスポイントが無線LANの接続先として特定される仕様になっている。
アクセスポイントの選択は、無線通信を安定して行うために、アクセス状況が不安定なアクセスポイントを選択対象から外して、安定したアクセス状況のアクセスポイントを見極めることが重要となる。しかし、従来の無線LAN端末1では、図15に示すように、アクセスの安定度には関係なくアクセス可能なアクセスポイントを全て表されるので、アクセス状況が安定したアクセスポイントを見極めることが困難である。さらに、アクセス可能なアクセスポイントが多くなる程、表示されるアクセスポイントの数が増加するので、多くの中から接続先を見極めるためのユーザの負担が過大になると云う問題が生じる。
無線LANでは、アクセスポイントへのアクセス状況の安定度は、その時の周囲環境により随時変動する。例えば、同時期に無線通信を行おうとする無線LAN端末が周囲に多数存在する場合、無線LAN端末とアクセスポイントとの間に物理的な障害物が位置するようになった場合などでは、アクセスポイントへのアクセス状況は不安定になる。このようなアクセス状況の安定度の変動が、接続先に用いるアクセスポイントの見極めを一層難しくしている。なお、特許文献1は、接続先となるアクセスポイントのハンドオーバに関するものなので、複数のアクセス可能なアクセスポイントの中から、不安定なアクセス状況のものを切り捨て、アクセス状況が安定しているものを容易に選択可能にすることに貢献できない。
また、アクセスポイントの見極めおよび選択は、キャリアスキャンを行う時と、無線通信を行っている最中に接続先のアクセスポイントのアクセス状況が不安定になり、他のアクセスポイントを探す時などに必要となる。また、上述した無線通信に関する問題は、無線LANを主にして説明したが、無線通信中継機を通じて無線通信を行う他の無線通信規格(例えばWireless USB、UWB(Ultra Wide Band)、Wireless1394等)でも同様に生じ得る。
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、複数の無線通信中継機へアクセス可能な状況であれば、アクセス状況の不安定なものを除外して、無線通信の接続先の選択を容易に行えるようにした無線通信装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る無線通信装置は、無線通信中継機にアクセスして無線通信を行う無線通信装置において、アクセス可能な無線通信中継機を検知する検知手段と、前記検知手段が複数の無線通信中継機を検知した場合、各無線通信中継機に係るアクセス感度を基準レベルと比較する比較手段と、前記比較手段の比較に基づいて、基準レベルを超えないアクセス感度の無線通信中継機があるか否かを特定する特定手段と、前記特定手段が、前記基準レベルを超えないアクセス感度の無線通信中継機があることを特定した場合、前記無線通信中継機をアクセス対象から除外する除外手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、アクセス可能な無線通信中継機を複数検知すると、各無線通信中継機に係るアクセス感度を基準レベルと比較し、比較に基づき特定したアクセス感度が基準レベルを超えない無線通信中継機をアクセス対象から除外するので、残った無線通信中継機だけがアクセス対象になる。その結果、ユーザは、基準レベルを超えた良好なレベルのアクセス感度を有する無線通信中継機の中から接続先を見極めて選択すれば済むため、アクセス可能な無線通信中継機を全て確認する必要がなくなり、接続先の見極めおよび選択に係るユーザ負担が低減されるようになる。なお、基準レベルは、支障なく無線通信を行える無線通信先を選択するためには、無線通信の状況が不安定な範囲(アクセス状況が不安定な範囲)と、安定する範囲(アクセス状況が安定な範囲)との境界に設定することが良好だが、より安定した無線通信先を選択対象として残すことを望む場合は、基準レベルを上記の境界から、安定する範囲の方へ設定すること好適である。そのため、基準レベルはユーザの使用形態等に合わせて適宜変更可能にすることが好ましい。
また、本発明に係る無線通信装置は、表示部と、前記検知手段が検知した複数の無線通信中継機の中から、前記基準レベルを超えるアクセス感度の無線通信中継機を示す情報を前記表示部に選択可能に表示する処理を行う手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、除外されずに残った無線通信中継機を示す情報を選択可能に表示するので、表示内容を見れば、ユーザは接続先に用いることができる無線通信中継機の一覧を一目で確認できると共に、接続先として選択する無線通信中継機の見極めを容易に行える。なお、無線通信中継機を示す情報とは、各無線通信中継機を識別できるように表した文字、アイコン等が該当し、また、各無線通信中継機に係るアクセス状況を表す文字、アイコン等も含むものとする。
さらに、本発明に係る無線通信装置は、前記検知手段が、キャリアセンスを行う際にアクセス可能な無線通信中継機を検知することを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンスの際に、アクセス可能な無線通信中継機の検知を行うので、キャリアセンスを行う際、無線通信中継機のアクセス状況の見極めを要する接続先に係る選択負担を低減できる。
さらにまた、本発明に係る無線通信装置は、前記除外手段による除外から残った無線通信中継機よりアクセス対象の無線通信中継機の選択を受け付ける選択受付手段と、前記選択受付手段が選択を受け付けた無線通信中継機に対してキャリアセンスを行うキャリアセンス手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、残った無線通信中継機の中から選択を受け付けた無線通信中継機に対してキャリアセンスを行うので、キャリアセンスの対象となる無線通信中継機は、アクセス状況が不安定な無線通信中継機は自然と除外されることになり、安定したキャリアセンスを行える。
また、本発明に係る無線通信装置は、前記キャリアセンス手段が、間欠的なキャリアセンスを行う手段を備え、前記キャリアセンス手段が行う間欠的なキャリアセンスに係る間欠時間を、前記無線通信中継機に係るアクセス感度に応じて変更する変更手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンスを間欠的に行うと共に、間欠的なキャリアセンスに係る間欠時間を、選択を受け付けた無線通信中継機に係るアクセス感度に応じて変更するので、キャリアセンスに係る間欠時間が現在の無線通信環境に応じて適宜変更され、その結果、間欠的なキャリアセンスにおける無線通信装置の消費電力の削減および無線通信の効率化を実現できる。たとえば、無線通信環境が、安定して無線通信を行える最低限の状況であるとき、無線通信中継機との接続は比較的確立されにくくなるので、間欠時間をデフォルト的な基準時間より長くすれば、短い間隔で無用にキャリアセンスを繰り返すことが防止され、それに伴いキャリアセンスによる電力消費を抑制できる。一方、無線通信環境が良好であれば、無線通信中継機との接続確立が容易であるため、間欠時間をデフォルト的な基準時間より短くすれば、すぐに無線通信中継機との接続が確立されるので、迅速に実質的な無線通信に移行して効率の良い無線通信を行える。
本発明に係る無線通信装置は、前記検知手段が、一つの無線通信中継機との接続確立時に検知を行うことを特徴とする。
本発明にあっては、一つの無線通信中継機との接続を確立している時に、アクセス可能な他の無線通信中継機の検知を行うので、接続を確立している一つの無線通信中継機のアクセス状況が悪化して、他の接続先を探す必要が生じた際における、接続先の選択に係るユーザの負担を低減できる。
本発明に係る無線通信装置は、前記比較手段が、無線通信に係る受信準備完了信号の受信回数を、無線通信中継機に係るアクセス感度として基準レベルと比較することを特徴とする。
本発明にあっては、無線通信中継機に係るアクセス感度として、受信準備完了信号(例えば、無線LAN規格におけるCTS)の受信回数を用いるので、受信準備完了信号の受信回数に基づいて、無線通信中継機に係るアクセス感度が比較判断されることになる。その結果、周囲に存在する他の無線通信中継機の無線通信状況を反映して、現時点でのアクセス感度を基準レベルと比較し、アクセス感度の悪い無線通信中継機をアクセス対象から除外できる。
なお、アクセス感度として、受信準備完了信号の受信回数を用いる場合は、比較の基準となる基準レベルも受信準備完了信号の受信回数に応じてアクセス感度を判別できるレベル値(閾値)を適用することになる。また、受信準備完了信号の受信回数が多いほど、同時期に無線通信を行おうとする他の無線通信装置が周囲に多く存在するため無線通信の混雑度が高くなってアクセス状況(アクセス感度)が悪くなり、受信準備完了信号の受信回数が少ないほど、アクセス状況(アクセス感度)が良くなる。そのため、アクセス感度に受信準備完了信号の受信回数を用いる場合、アクセス感度が基準レベルを超えない無線通信中継機とは、受信準備完了信号の受信回数が基準レベルに係る閾値(例えば「2」)より多いものが該当する。
本発明に係る無線通信装置は、前記比較手段が、無線通信中継機の搬送波の雑音成分に係る値を、無線通信中継機に係るアクセス感度として基準レベルと比較することを特徴とする。
本発明にあっては、無線通信中継機に係るアクセス感度として、搬送波の雑音成分に係る値(例えば、C/N比)を用いるので、搬送波に含まれる雑音成分に基づき、無線通信中継機に係るアクセス感度が比較判断されることになる。その結果、雑音成分が多い搬送波を発する無線通信中継機をアクセス対象から除外できる。なお、アクセス感度として、搬送波の雑音成分に係る値を用いる場合は、比較の基準となる基準レベルのレベル値(基準値)も搬送波の雑音成分に係る値に応じてアクセス感度を判別できるものを適用する。また、搬送波の雑音成分に係る値の一例であるC/N比は小さいほど、キャリアに含まれる雑音成分が多く、アクセス状況(アクセス感度)は悪くなり、C/N比が大きいほど、キャリアに含まれる雑音成分が少ないためアクセス状況(アクセス感度)は良くなる。そのため、アクセス感度に搬送波の雑音成分に係る値を用いるとき、アクセス感度が基準レベルを超えない無線通信中継機とは、搬送波の雑音成分に係る値が基準レベルに係る値(基準値)を下回るものが該当する。
本発明に係る無線通信装置は、前記比較手段が、無線通信中継機の搬送波の電力強度を、無線通信中継機に係るアクセス感度として基準レベルと比較することを特徴とする。
本発明にあっては、無線通信中継機に係るアクセス感度として、搬送波の電力強度を用いるので、搬送波の電力強度に基づき、無線通信中継機に係るアクセス感度が比較判断されることになる。それにより、電力強度が弱い搬送波を発する無線通信中継機をアクセス対象から除外できる。なお、アクセス感度として、搬送波の電力強度を用いる場合は、比較の基準となる基準レベルも搬送波の電力強度に応じてアクセス感度を判別できる値(基準値)を適用することになる。また、搬送波の電力強度は小さいほど、アクセス状況(アクセス感度)は悪く、搬送波の電力強度が大きいほど、アクセス状況(アクセス感度)は良くなる。そのため、アクセス感度に搬送波の電力強度を用いるとき、アクセス感度が基準レベルを超えない無線通信中継機とは、搬送波の電力強度が基準レベルに係る値(基準値)を下回るものが該当する。
本発明にあっては、ユーザは、アクセス状況が良好な一定のアクセス感度を有する無線通信中継機の中から接続先を選択すれば済むようになり、複数の無線通信中継機へアクセスできる場合における無線通信の接続先の選択に係るユーザ負担を低減できる。
また、本発明にあっては、基準レベルを超えるアクセス感度の無線通信中継機を示す情報を選択可能に表示するので、アクセス状況が不安定でない無線通信中継機を一目で確認できると共に、確認した中から、ユーザの嗜好に応じた無線通信中継機を接続先として容易に選択できる。
本発明にあっては、キャリアセンスを行う際に、アクセス可能な無線通信中継機の検知を行うので、キャリアセンスに用いる接続先の選択を容易に行える。
また、本発明にあっては、除外により残った無線通信中継機の中から選択を受け付けた無線通信中継機に対してキャリアセンスを行うので、アクセス状況が不安定な無線通信中継機をキャリアセンスの選択対象から確実に外すことができ、キャリアセンスを安定して行える。
さらに、本発明にあっては、キャリアセンスを間欠的に行うと共に、間欠的なキャリアセンスに係る間欠時間を、選択を受け付けた無線通信中継機に係るアクセス感度に応じて変更するので、間欠的なキャリアセンスにおける無線通信装置の消費電力の削減および無線通信の効率化を図れる。
さらにまた、本発明にあっては、接続先の無線通信中継機のアクセス状況が悪化し、他の接続先を探す必要が生じた場合でも、接続先の選択に係るユーザの負担を低減できる。
本発明にあっては、無線通信中継機に係るアクセス感度として、受信準備完了信号(例えば、無線LAN規格におけるCTS)の受信回数を用いるので、受信準備完了信号の受信回数に基づいて、無線通信中継機に係るアクセス感度を比較判断できる。
また、本発明にあっては、無線通信中継機に係るアクセス感度として、搬送波の雑音成分に係る値を用いるので、搬送波に含まれる雑音成分に基づき、無線通信中継機に係るアクセス感度を比較判断できる。
さらに、本発明にあっては、無線通信中継機に係るアクセス感度として、搬送波の電力強度を用いるので、搬送波の電力強度に基づき、無線通信中継機に係るアクセス感度を比較判断できる。
図1は、本発明の実施形態に係る無線LANモジュール(無線通信装置に相当)20を組み込んだ携帯型音楽再生装置10の主要な内部構成を示している。携帯型音楽再生装置10は、本来の音楽再生機能に加えて無線LAN通信機能を備えたことが特徴であり、無線LAN通信機能に対応した無線LANモジュール20を内蔵し、その無線LANモジュール20を音楽再生機能に対応するメインモジュール11に接続している。携帯型音楽再生装置10は、無線LAN通信を介して様々な音楽データを容易に取得できると共に、取得した音楽データをメインモジュール11で再生出力可能にしている。
携帯型音楽再生装置10が備える無線LANモジュール20は、インフラストラクチャモードで無線通信を行う際、例えば図14に示すように、複数のアクセスポイントAP1〜AP5へアクセスできる状況に位置すれば、各アクセスポイントのアクセス状況を検知し、アクセス状況が不安定なアクセスポイントを自動的に接続対象から除外し、残ったアクセスポイントのみを接続対象にすることを特徴にしている。無線LANモジュール20は、各アクセスポイントに係るアクセス状況の検知を、キャリアセンスを行う際および無線通信中に接続確立しているアクセスポイントのアクセス状況が不安定になった時に行う仕様になっている。なお、各アクセスポイントは、SSID(Service Set Identifier 識別信号に相当)を含むビーコンを発するので、無線LANモジュール20は、図14に示すような状況であっても、各アクセスポイントAP1〜AP5をそれぞれ識別して、アクセス可能なアクセスポイントが複数であるか否かを検知できると共に、アクセスポイントごとのアクセス感度を判別できる。
また、本実施形態の無線LANモジュール20は、キャリアセンスを間欠的に行うと共に、キャリアセンス時には、現在のアクセス状況に連動してキャリアセンスの間欠時間(インターバル時間に相当)を自動で変更し、キャリアセンス時における消費電力の削減および無線通信の効率化を実現している。以下、本実施形態に係る携帯型音楽再生装置10を、メインモジュール11、無線LANモジュール20の順に説明する。
図1に示すメインモジュール11は、RAM12、ROM13、記憶部14、音声出力処理部15、メイン制御部(プロセッサ)17、表示パネル18、操作部19を内部バス11a、11b等で接続した構成にしている。RAM12は、メイン制御部17の処理に伴うデータ及びファイル等を一時的に記憶し、ROM13は音楽再生用の制御処理等を規定した再生プログラム13a、選曲等を行う再生メニューデータ13b等を予め記憶している。記憶部14は、無線LAN通信を介して取得した音楽データDを記憶するものである。音声出力処理部15は、音楽データの再生処理、増幅等を行ってスピーカ16から音声を出力する処理を行う。
メイン制御部17は、表示パネル18及び操作部19を接続している。表示パネル18は、メイン制御部17の制御により、各種メニューデータに基づくメニュー画面、および複数のアクセスポイントへアクセス可能な場合は、各アクセスポイントのアクセス安定度を表した一覧などを表示する。また、操作部19は、上下左右キー及び決定キー等の複数のキーで構成されており、メニュー画面中の選択項目等に対するユーザの選択指示を受け付けて、受け付けた指示内容をメイン制御部17へ伝える。メイン制御部17は、ROM13に記憶された再生プログラム13aの規定に従って音楽データ(例えば、MP3ファイルの音楽データ)の再生に係る制御処理を行うと共に、各種設定用の処理等を行い、設定に関しては無線LANモジュール20との連係により、無線LANの設定に関する処理も行う。
一方、無線LANモジュール20は、米国電気電子技術者協会が定める無線LAN通信(IEEE802.11、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11k等)を行うものであり、チップ化された無線LAN用のRF(高周波)回路部21、及びMAC処理部25を有する。
RF回路部21はOSI参照モデルにおける物理層に相当し、無線LAN用のアンテナ24が接続されており、周波数変換、I/Q変換、及び受信信号の増幅等の各種処理を行う。また、RF回路部21は、キャリアセンス時にアクセスポイントに係るキャリアの電力強度を検知する強度検知回路22、及びキャリア中の雑音成分としてキャリアのC/N比(搬送波電力/雑音電力)を検知するC/N検知回路23を含んでいる。RF回路部21は、MAC処理部25に含まれるCPU27により、作動に対する制御が行われており、キャリアセンス処理に伴い作動を開始する。また、強度検知回路22は、各アクセスポイントに係るアクセス感度として、約−80dBmから約−10dBmの範囲でキャリアの電力強度を検知する。
なお、C/N検知回路23の検知対象であるC/N比(搬送波中の雑音成分に係る値)は、周囲の状況によって変動する。即ち、無線LAN通信の伝播路が多重波伝播路になっている場合、無線LANの通信電波に、建物の反射および周辺に存在するアクセスポイントから出る通信電波によって干渉などが起こると、受信波のレベルに変動(フェージング現象)が生じる。また、無線LAN通信を行う送受信機、及び反射物が移動することにより、搬送波の周波数偏移が生じる。このようなフェージング現象及び周波数偏移により、本来のC/N比が受信側で確保できなくなり、C/N比が変動する原因になっている。
図1に示すMAC処理部25は、メモリ26、CPU27、メインモジュール11との接続を行う接続インタフェース28、RF回路部21との接続を行うRF用接続インタフェース29等を内部バス25aで接続した構成になっており、無線LAN通信においてデジタル変換/復調、及びアクセスコントロール等の処理を行う。なお、CPU27はクロック機能を内蔵し、計時する時間に合わせて後述する各種制御を行う。
メモリ26は、CPU27が行う無線LAN通信に係る制御処理の各種内容を規定したプログラムP、メニューデータ33、各アクセスポイントのアクセス感度として検知されるキャリアの電力強度との比較用の基準値データ34、表示用データ35、キャリアの電力強度に基づく無線LAN環境のレベルごとにキャリアセンスの間欠時間の値を対応付けた設定テーブル40等を記憶している。
メモリ26に記憶される基準値データ34は、複数のアクセス可能なアクセスポイントの中からアクセス状況(アクセス感度)が悪いアクセスポイントを切り捨てる際に用いられる第1基準値(基準レベルに相当)34aを含んでいる。さらに、基準値データ34は、キャリアセンス時の間欠時間の自動変更を行うために、アクセスポイントのアクセス状況ごとに応じた基準値として第2基準値34bおよび第3基準値34cを含んでいる。
本実施形態では、一例として第1基準値34aとして、「−70dBm」が設定されており、以下、第2基準値34bとして「−50dBm」、第3基準値34cとして「−30dBm」が設定されている。第3基準値34cは、アクセス対象となるアクセスポイントに係る無線LAN環境(アクセス状況)が良レベルと、普通レベルとを区分けする境界値になっており、第2基準値34bは、普通レベルと、悪レベルとを区分けする境界値になっている。なお、これらの各基準値34a〜34cの値はユーザの使い勝手等に応じて適宜変更可能な仕様にすることは勿論可能である。
また、各基準値34a〜34cは、強度検知回路22で検知されたアクセスポイントに係るキャリアの電力強度とCPU27により比較されることが、メモリ26に記憶されたプログラムPで規定されており、比較対象となるアクセスポイントから発せられる電力強度が第1基準値34aを超えない場合(例えば、第1基準値34a以下の場合)、そのアクセスポイントをアクセス対象から除外することもプログラムPに規定されている。また、アクセス対象となるアクセスポイントに対して検知されたキャリアの電力強度が第3基準値34cを超える場合、アクセス状況がCPU27により良レベルと判定され、第2基準値34bを超えて第3基準値34c以下の場合は、普通レベルと判定され、第1基準値34aを超えて第2基準値34b以下の場合は、悪レベルと判定されることもプログラムPは規定している。このように判定された各レベルに対するインターバル時間への変更を容易に行うため、メモリ26には設定テーブル40が記憶されている。
図4は、メモリ26に記憶されている設定テーブル40の中身を示している。設定テーブル40は、上述した良レベルから悪レベルのそれぞれに対して、間欠的なキャリアセンスのインターバル時間用の数値を対応付けており、具体的には良レベルに10秒(第1時間に相当)、普通レベルに5秒(第2時間に相当)、悪レベルに40秒(第3時間に相当)をデフォルトで対応付けている。各レベルに応じたインターバル時間用の数値はメニュー画面で適宜変更可能であり、良レベルは10秒〜29秒の範囲で変更でき、普通レベルは1〜9秒の範囲で変更でき、悪レベルは30秒〜50秒の範囲で変更できるが、これらの時間の数値は、あくまで一例であり、製品の特徴、仕様等に応じて様々な数値を適用できる。
上述した設定テーブル40における各レベルに対する設定内容の考え方を説明すると、先ず、無線LAN環境が「良」である良レベルは、アクセスポイントとの接続を試みれば、直ちに接続を確立できる状態であるので、キャリアセンスの頻度を、ある程度抑えて普通レベルと同程度の接続状況となるように、インターバル時間を10秒から29秒の範囲内で設定可能にしている。また、無線LAN環境が「普通」である普通レベルは、通常レベルでアクセスポイントと接続可能であり、良レベルと同等の接続状況(接続される確率)を確保するため、良レベルより短い1秒から9秒の範囲でインターバル時間を変更可能にしている。このような設定内容にすることで、無線LAN環境が普通レベル以上であれば、常に同等の接続状況をユーザに提供でき、ユーザは無線LAN環境を意識することなく一定の接続確率で無線通信を行える。
さらに、無線LAN環境が「悪」である悪レベルは、アクセスポイントへのアクセス状況が少し不安定であり、無線通信の許容可能な通信レベルを維持してユーザの満足度を満たす下限となるので、無線LANの通信環境を最小限で検知する頻度でキャリアセンスを行うようにして消費電力の低減を優先し、インターバル時間を長目の30秒から50秒の範囲内で時間を設定している。なお、アクセス対象から除外される第1基準値34a以下の状況は、もはや無線通信先と通常レベルの接続が期待できないレベルに相当する。
また、図3は、メモリ26に記憶された表示用データ35に基づいて生成されるアクセスポイント一覧画面36を示している。アクセスポイント一覧画面36は、表示用データ35に含まれるアイコン等を用いてCPU27の制御により生成されて、生成された内容がMAC処理部25の接続インタフェース28(出力手段に相当)からメインモジュール11へ出力されて、表示パネル18で表示する処理が行われる。アクセスポイント一覧画面36は、アクセス可能な複数のアクセスポイントの中から、キャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるアクセスポイントが除外されて残ったアクセスポイントを示す情報として、アクセスポイント欄36a、36bを選択可能に配置した構成になっている。
アクセスポイント一覧画面36は、図15のアクセス状況画面3と比べて、アクセス状況が不安定なアクセスポイントが示されないため、複数のアクセスポイントへアクセス可能な場所にいても、使用に耐え得るアクセスポイントだけが表示されるので、ユーザのアクセスポイントの選択に係る負担が低減されている。なお、アクセスポイント一覧画面36は、図15のアクセス状況画面3と同様に、アクセスポイント欄36a、36bのいずれかが、操作部19の操作により選択されると、選択されたアクセスポイント欄に応じたアクセスポイントが無線LANの接続先として特定されるようになっている。
また、メモリ26に記憶されるプログラムPは、CPU27が無線通信に係る各種処理を行う際の制御処理内容を規定しており、本実施形態では基本的な無線LAN通信等に加えて、上述したように本発明の特徴となる複数のアクセスポイントへアクセス可能な場合に、図3のアクセスポイント一覧画面36を表示する制御処理を行うこと、また、間欠的なキャリアセンスにおけるインターバル時間の変更処理等を規定している。なお、プログラムPが規定する基本的な無線LAN通信の処理の内容には、データの送受信に係る無線通信を行う指示をユーザから受け付けると、間欠的なキャリアセンスを開始すること等が含まれている。
プログラムPの本発明に関する具体的な処理内容は、以下の通りである。先ず、各アクセスポイントから発せられるビーコンにより、複数のアクセスポイントが存在するか否かをCPU27が検知することをプログラムPは規定している。また、複数のアクセスポイントを検知した場合は、CPU27がキャリアセンスを行う際にRF回路部21の強度検知回路22で検知した各アクセスポイントに係るキャリアの電力強度をアクセス感度として、第1基準値34aと比較して、第1基準値34aを超えない(本実施形態では、第1基準値34a以下の)複数のアクセス可能なアクセスポイントから除外する処理を行う。この場合、CPU27は更に、除外により残ったアクセスポイントを示す情報を選択可能に配置したアクセスポイント一覧画面36(図3参照)を生成して、表示パネル18に表示する処理を行う。
さらに、アクセスポイント一覧画面36のアクセスポイント欄36a、36bのいずれかを操作部19での操作により選択を受け付けると、CPU27は選択されたアクセスポイント欄のアクセスポイントを間欠的なキャリアセンスを行うアクセス対象として特定する。さらにまたCPU27は、特定したアクセスポイントに係るキャリアの電力強度を、第2基準値34bおよび第3基準値34cと比較し、比較結果に基づきアクセスポイントのアクセス感度のレベル(良、普通、悪)を判別し、判別した結果(選択を受け付けたアクセスポイントに係るアクセス感度に相当)に対応する時間を図4の設定テーブルから決定し、その決定した時間を間欠的なキャリアセンスのインターバル時間として特定する。以降、CPU27は、間欠的なキャリアセンスを継続する間、キャリアセンスを行う時間帯で、強度検知回路22で検知したキャリアの電力強度と、各基準値34b、34cとの比較を行って決定した時間へインターバル時間を変更する制御を行う。
CPU27は、このような時間変更に係る処理を、間欠的なキャリアセンス全般の中におけるキャリアセンスを行う時間帯ごとに行って、各キャリアセンスの時間帯の後のインターバル時間を無線LAN環境に応じて自動変更する。なお、アクセス可能なアクセスポイントが1つしか検知できず、また、その1つのアクセスポイントのキャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるときは、そのアクセスポイントに接続を頼らざるを得ないので、そのアクセスポイントに対して間欠的なキャリアセンスを行う制御をCPU27は行う。また、本実施形態では、その1つのアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34aを超える場合は、再度、アクセスポイントが複数存在するかをCPU27が検知するようにしている。
さらに本発明では、プログラムPのソフトウエア的な処理によりCPU27がCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)で規定されるMAC層(Media Access Control OSI参照モデルのデータリンク層の一部に該当)としても機能している。
図2は、CPU27がMAC層30として機能する内容を概念的に表したものである。MAC層30は、IEEE(米国電気電子技術者協会)の無線LAN規格(IEEE802.11系の規格)に基づくアクセス手法(例えばCSMA/CA)を定めたものであり、CPU27にはMAC層30の中で上位層に相当するUpperMAC31、及び下位層に相当するLowerMAC32が設けられる。また、UpperMAC31には、CTS回数検知ブロック31a、及びキャリア数検知ブロック31bが含まれる。
CTS回数検知ブロック31aは、キャリアセンス時に他の無線装置から発せられるCTS(受信準備完了信号)の受信回数を計数して検知する手段として機能する。また、キャリア数検知ブロック31bは、各アクセスポイントから発せられる識別信号(ビーコンに含まれる信号)に基づきアクセス可能なアクセスポイントの数を計数して複数のアクセスポイントが存在するか否かを検知する手段として機能する。なお、メモリ26に記憶されたプログラムPは、間欠的なキャリアセンスにおけるインターバル時間での省電力を実現するため、CPU27のMAC層30として機能する部分及びRF回路部21の作動をインターバル時間に合わせて停止させることも規定している。なお、本実施形態では、MAC層30及びRF回路部21が、無線通信に係るアクセス制御を行うアクセス制御手段に相当する。
図5に示す第1フローチャートは、間欠的なキャリアセンスを行う際の無線LANモジュール20(CPU27)のアクセスポイントの除外に関する処理手順を整理したものである。以下、この第1フローチャートに従って、複数のアクセスポイントへアクセス可能な場合に、アクセス状況が不安定なアクセスポイントを除外する内容をステップ的に説明する。
先ず、無線LANモジュール20は、アクセスポイントが発するビーコンを受信して、複数のアクセスポイントが存在するか否かを検知し(S1)、複数のアクセスポイントが存在することを検知した場合(S1:YES)、各アクセスポイントに係るキャリアの電力強度と第1基準値34aを比較して、第1基準値34a以下のアクセスポイントが存在するか否かを特定する(S2)。
第1基準値34a以下のアクセスポイントが存在することを特定した場合(S2:YES)、無線LANモジュール20は、そのようなアクセスポイントをアクセス対象から除外する(S3)。なお、除外した後は、再度、第1基準値34a以下のアクセスポイントが存在するか否かのステップ(S2)へ戻る。一方、第1基準値34a以下のアクセスポイントが存在しないことを特定した場合(S2:NO)、無線LANモジュール20は、第1基準値34aを超える(アクセス感度が安定した)アクセスポイントを示す情報を載せたアクセスポイント一覧画面36(図3参照)を生成して表示する(S4)。それから、表示されたアクセスポイント一覧画面36で、いずれか1つのアクセスポイント欄の選択を受け付けると、無線LANモジュール20は、選択に係るアクセスポイントをアクセス対象として特定し、そのアクセスポイントに対して間欠的なキャリアセンスを行う(S6)。
なお、ビーコンの受信により検知したアクセスポイントの数が複数でなく、1つのみの場合(S2:NO)、無線LANモジュール20は、そのアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるか否かを判断し(S5)、第1基準値34a以下である場合(S5:YES)、アクセスポイントに関する選択の余地がないため、その1つのアクセスポイントに対して間欠的なキャリアセンスを行う(S6)。また、その1つのアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34aを超える場合(S5:NO)、そのアクセスポイントに接続を試みれば、すぐにでも接続できると判断し、直ちにキャリアスキャンを行わずに、再度、複数のアクセスポイントの存在を検知するステップ(S1)に戻り、無線LAN環境(複数のアクセスポイントが存在するか否か)の検知を引き続き行う。
さらに本発明では、上述した図5の第1フローチャートにおける間欠的なキャリアスキャンを行うステップ(S6)で、キャリアスキャンを行うアクセスポイントのアクセス感度に応じてCPU27がインターバル時間の変更制御を行うと共に、無線LANモジュール20に含まれるアクセス制御を行う部分をインターバル時間に併せて停止する制御も行う。具体的にはCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)で規定されるMAC層30(図2参照)及び物理層(本実施形態では、RF回路部21が該当)に相当する部分の作動をインターバル時間に停止し、間欠的なキャリアセンスに対する消費電力の削減を図っている。
MAC層30及びRF回路部21の作動停止処理について、プログラムPは以下のように規定している。即ちプログラムPは、各キャリアセンスの時間帯の終了に合わせてMAC層30及びRF回路部21(強度検知回路22、C/N検知回路23を含む)の作動を停止させる制御を、CPU27が作動停止手段として行うことを規定している。なお、MAC層30およびRF回路部21が作動を停止している場合でも、無線LANモジュール20の他の部分は作動しているため、このときも無線LANモジュール20は若干の電力を消費する。さらに、プログラムPは、インターバル時間が終了する所定の時間前に、停止していたMAC層30及びRF回路部21の作動を再開する制御を、CPU27が作動開始手段として行うことを規定している。
また、プログラムPは、間欠的なキャリアセンスにおける各キャリアセンスの時間帯では従来通り、CTS回数検知ブロック31a及びキャリア数検知ブロック31bを含めてUpperMAC31、LowerMAC32、並びにRF回路部21(強度検知回路22とC/N検知回路23を含む)を作動させて、無線LAN通信に係るアクセス制御を行うことを規定している。
図6は、プログラムPの規定に基づくCPU27の制御により、図5の第1フローチャートの間欠的なキャリアスキャンのステップ(S6)における処理例を表したタイムチャート的なグラフを示している。このグラフは、IEEE802.11bで規定される13チャンネルの全てをキャリアセンスする場合を示し、グラフ中、時刻0〜t10、t11〜t12、t13〜t14の時間帯で全チャンネルに対するキャリアスキャンが行われる。なお、図6では、棒状グラフの一つが、1チャンネルに対するキャリアセンスを表しており、キャリアセンスを行う各時間帯における13チャンネルの全てに対応する棒状グラフの図示は省略している。また、キャリアセンスを行う各時間帯は、MAC層30及びRF回路部21が作動してCTSの受信回数カウント、アクセスポイント数検知、キャリアの電力強度検知、及びC/N比検知が行われるため、全チャンネルのキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t10、t11〜t12、t13〜t14間のそれぞれ時間帯)に、約2秒の時間を要する。なお、図6のグラフにおいて、キャリアセンスを行う時間帯間の時間(t10〜t11、t12〜t13、t14〜t15等)がインターバル時間に相当し、このようにインターバル時間を挟んでキャリアセンスを行うことで、キャリアセンスが間欠的に行われることになる。
図6のグラフの例では、最初の全チャンネルのキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t10)で検知されたキャリアの電力強度とメモリ26に記憶された各基準値34a〜34cとの比較に基づき無線LAN環境としてのアクセス感度は「良レベル」と判定された場合を示しており、その結果、最初のキャリアセンスの時間帯の直後のインターバル時間(時刻t10〜t11)は、10秒になっている(図4の設定テーブル40参照。以下同様)。また、2回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t11〜t12)における比較結果に基づき、その時間帯での無線LAN環境は「普通レベル」と判定され、それにより2回目のキャリアセンスの時間帯の直後のインターバル時間(時刻t12〜t13)は5秒に変更されている。さらに、3回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t13〜t14)における比較結果に基づき、その時間帯での無線LAN環境は「悪レベル」と判定され、それにより3回目のキャリアセンスの時間帯の直後のインターバル時間(時刻t14〜t15)は40秒に変更されている。
このように本発明では、無線LAN環境(アクセス対象に選択されたアクセスポイントのアクセス状況)が「良レベル」と判定された後は、インターバル時間を10秒(時刻t10〜t11)にすると共に、無線LAN環境が「普通レベル」と判定された後は、第1レベルより短いインターバル時間を5秒(時刻t12〜t13)に変更するので、無線LAN環境が「普通レベル」以上であれば、アクセスポイントへの接続確率を同程度に揃えることができ、ユーザに無線LAN環境を意識させることなく、常に同等の通信レベルを提供できる。また、無線LAN環境が「悪3レベル」と判定された後は、インターバル時間を40秒(時刻t14〜t15)にするので、接続確率が低いことに配慮しキャリアセンスを控えて省電力を優先した処理を行う。また、無線LANモジュール20は、このように変動するインターバル時間の際、MAC層30およびRF回路部21の作動を停止させて、相乗的に更なる省電力化を達成している。
具体的には、図6のグラフにおいて最初のキャリアセンスの時間帯が終了して時刻t10(インターバル時間の開始時刻)になると、CPU27の制御により無線LANモジュール20の中でMAC層30及びRF回路部21が作動を停止する。また、時刻t11(インターバル時間の終了時刻)より時間Tだけ前の時刻になると、CPU27の制御により、MAC層30及びRF回路部21の作動を再開してアクセス制御を行う。このように無線LANモジュール20では、インターバル時間の終了時刻より時間Tだけ前の時刻に、MAC層30及びRF回路部21の作動を再開するので、次のキャリアセンスを開始する時には確実にアクセス制御を行える状況になり、各種検知処理を支障なく行うことができる。なお、時間Tは0.5秒〜2秒程度の範囲で所定時間が予め設定されている。以降同様に、各インターバル時間の開始の時期及び終了時刻から時間Tだけ前の時期に合わせて、MAC層30およびRF回路部21は作動停止、作動再開を繰り返す。
その結果、本発明の無線LANモジュール20は、インターバル時間中の作動レベルを抑制するので、インターバル時間における消費電力が従来のAmWからBmW(B<A)へ低下して省電力を達成する。なお、図6のグラフでは、全てのチャンネル(13チャンネル)をキャリアセンスする場合を表しているが、本発明は全チャンネル中のいずれか1つのチャンネルに対して間欠的なキャリアスキャンを行う場合でも、図6のグラフに示す内容と同等の処理を行える。また、キャリアスキャンを間欠的に行わない場合でも、図6のグラフに関する処理(インターバル時間の変更、一部分の処理停止)を除く処理(例えば図5の第1フローチャートに関する処理等)については、適用可能である。
さらに、本実施形態では、アクセスポイントとの接続確立時でも、無線LAN環境の変化により、接続中のアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34a以下になると、上述したキャリアセンス時と同様の処理を行う機能を、無線LANモジュール20が具備している。即ち、無線通信の最中に接続しているアクセスポイントのアクセス感度が悪化した状態で、アクセスが安定しているアクセスポイントが他に複数存在すれば、図3に示すようなアクセスポイント一覧画面36を表示し、安定した使用が可能なアクセスポイントのみをユーザが容易に選択できる機会を提供している。
図7に示す第2フローチャートは、1つのアクセスポイントに接続している最中に、接続先のアクセスポイントのアクセス状況が不安定になった場合、その場所で複数の他のアクセスポイントへアクセス可能か否かを判断し、アクセス可能なアクセスポイントの中からアクセス状況が不安定なものを除外して、実質的に使用できるアクセスポイントのみを接続先の選択対象にする処理手順を整理したものである。以下、この第2フローチャートに従って、本発明のアクセスポイントへの接続中の処理について説明する。
先ず、無線LANモジュール20は、接続中のアクセスポイントが安定しているか否かを確認するため、接続中のアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるか否かを判断する(S10)。接続中のアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるため、アクセス状況が不安定な場合(S10:YES)、無線LANモジュール20は、その場所でアクセス可能なアクセスポイントが他に存在するかを、ビーコンの受信により検知する(S11)。それから、無線LANモジュール20は、アクセス可能なアクセスポイントが複数であるか否かをビーコンに含まれる識別信号により判別(検知)し(S12)、複数のアクセス可能なアクセスポイントが存在する場合(S12:YES)、各アクセスポイントに係るキャリアの電力強度と第1基準値34aとを比較して、キャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるアクセスポイントが存在するか否かを特定する(S13)。
キャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるアクセスポイントが存在することを特定した場合(S13:YES)、無線LANモジュール20は、そのようなアクセスポイントをアクセス対象から除外する(S14)。なお、除外した後は、再度、第1基準値34a以下のアクセスポイントが存在するか否かのステップ(S13)へ戻る。一方、第1基準値34a以下のアクセスポイントが存在しないことを特定した場合(S13:NO)、無線LANモジュール20は、キャリアの電力強度が第1基準値34aを超えてアクセス感度が安定しているアクセスポイントを示す情報を載せたアクセスポイント一覧画面36(図3参照)を生成して表示する(S15)。さらに、無線LANモジュール20は、アクセスポイント一覧画面36で、いずれか1つのアクセスポイントの選択を受け付けると、その選択に係るアクセスポイントへ接続を切り替えて無線LAN通信を行う(S16)。
なお、接続中のアクセスポイントが安定している場合(S10:NO)は、接続を切り替える必要が無いので、無線LANモジュール20は現在の接続を維持する(S17)。また、アクセス可能なアクセスポイントが他に存在しない場合(S11:NO)も、接続を切り替える対象が無いので、無線LANモジュール20は現在の接続を維持する(S17)。
さらに、アクセスポイントは存在するが、複数ではない場合(S12:NO)、すなわち、他にアクセス可能なアクセスポイントが1つのみ存在するとき、無線LANモジュール20は、その1つのアクセスポイントに係るキャリアの電力強度が第1基準値34a以下であるか否かを判断する(S18)。その1つのアクセスポイントに係る電力強度が第1基準値34a以下である場合(S18:YES)、接続中のアクセスポイントに対して優位性がないため、無線LANモジュール20は現在の接続を維持する(S17)。一方、その1つのアクセスポイントに係る電力強度が第1基準値34a以下でない場合(S18:NO)、接続中のアクセスポイントに対してアクセス感度が良いと云う優位性があるため、無線LANモジュール20は、その1つのアクセスポイントへ接続を切り替えて無線LAN通信を行う(S16)。
このように、アクセスポイントへ接続を確立している最中でも、接続先のアクセスポイントのアクセス状況が不安定になれば、本発明では、周囲にアクセス可能なアクセスポイントが複数存在するか否かを検知し、複数存在すれば安定して使用できるアクセスポイントのみをユーザに提示するので(第2フローチャートのS15および図3参照)、ユーザは新たな接続対象を容易に選ぶことができる。
なお、本発明に係る無線通信装置は、上述した無線LANモジュール20の形態に限定されるものではなく、種々の変形例が存在する。先ず、無線LAN環境を判別するために用いる基準値データ34に含まれる各基準値34a〜34cの数は、3個に限定されるものではなく、無線LANモジュール20の仕様、及びグレード等に応じて適宜増減可能である。例えば、基準値の数を3個より多くした場合は、判別可能な無線LAN環境のレベルを多くでき、一段と細かいレベル分けを行って無線LAN環境に合わせた省電力処理及びキャリアセンスの停止処理を行える。また、逆に、基準値の数を3個より少なくした場合は、無線LAN環境のレベル判別に係る処理の負担を低減できる。
また、上述した説明では、アクセス可能な複数のアクセスポイントの中からアクセス感度の悪いアクセスポイントを除外すること、および間欠的なキャリアセンスのインターバル時間の変更については、検知したキャリアの電力強度の値に基づき行うようにしているが、アクセス感度としては、電力強度以外にC/N比の検知結果、CTSの受信回数を判断条件に適用することも可能である。このように他の事項(C/N比の検知結果またはCTSの受信回数)をアクセス感度の判断条件に適用する場合は、メモリ26に記憶する各基準値34a〜34cも、適用する判断条件に応じた内容にする。
さらに、アクセス感度の悪いアクセスポイントを除外すること、および間欠的なキャリアセンスのインターバル時間の変更については、アクセス感度として複数の判断条件を組み合わせて行うことも可能である。例えば、判断条件として、キャリアの電力強度およびC/N比を組み合わせた条件を適用し、このような条件に対して検知したキャリアの電力強度またはC/N比のいずれかが、それぞれの基準値を超えなければ、そのようなアクセスポイントは、アクセス感度が悪いものとしてアクセス対象から除外してもよい。同様に、判断条件として、キャリアの電力強度およびCTSの受信回数の組合せ、C/N比の検知結果およびCTSの受信回数、ならびに上述した3つの種類の組合せも勿論適用可能である。
また、インターバル時間の変更に関して、上述した判断条件の組合せを適用する場合は、メモリ26に記憶する設定テーブルの内容も、適用する組合せに応じた内容のものを用いる必要がある。
図8は、キャリアの電力強度と、C/N比の検知結果を組み合わせた場合に用いる設定テーブルの一例として設定テーブル60を示している。設定テーブル60は、検知されるキャリアの電力強度に基づき判定される各レベル(良レベル、普通レベル、悪レベル)に、C/N比の検知結果に基づき判定される各レベル(良レベル、普通レベル、悪レベル)を対応付けて、両者が対応付けされたそれぞれの組合せごとにインターバル時間用の数値を設定した内容になっている。このように2つの判断条件を組み合わせることにより、より詳細に無線LAN環境を設定できると共に、それらの無線LAN環境ごとにインターバル時間を割り当てることができ、実際の無線LAN環境に更にマッチしたインターバル時間の変更を行える。なお、図8のような設定テーブル60を用いる場合は、キャリアの電力強度に応じて各レベルを判定するために3つの基準値と、C/N比に応じて各レベルを判定するための3つの基準値をそれぞれメモリ26に記憶させておく必要がある。また、図8の設定テーブル60で規定される時間の考え方は、基本的に図4に示す設定テーブル40と同様であり、キャリア強度に基づく各レベルにおいて、C/N比の検知に基づく普通レベルの時間が一番短く、良レベルの時間が二番目に短く、そして悪レベルの時間が最も長くなっている。
図9の設定テーブル61は、別の設定テーブルの一例を示しており、キャリアの電力強度と、CTSの受信回数(カウント)を判断条件として組み合わせた場合に用いるものである。設定テーブル61は、キャリアの電力強度に基づき判定されるレベル(良レベル、普通レベル、悪レベル)ごとに、CTSの受信回数(カウント)がCTS用閾値以上か未満であるかを対応づけて、それらの対応付けごとにインターバル時間用の数値を設定している。そのため、設定テーブル61を用いることで、周囲に位置する他の無線LAN端末の動向(同時期に無線通信を行おうとしているか否か等)の影響も含めて無線LAN環境を判別でき、その判別した内容に応じてインターバル時間も設定できる。なお、図9のような設定テーブル61を用いる場合は、キャリアの電力強度に応じて各レベルを判定するために3つの基準値と、CTSの受信回数のレベル分け用に1つのCTS用閾値(例えば、閾値として2回という回数が該当)を、それぞれメモリ26に記憶させておく必要がある。
図10の設定テーブル62は、さらに別の設定テーブルの一例を示しており、C/N比の検知結果と、CTSの受信回数(カウント)を判断条件として組み合わせた場合に用いるものである。設定テーブル62は、C/N比の検知結果に基づき判定されるレベル(良レベル、普通レベル、悪レベル)ごとに、CTSの受信回数(カウント)がCTS用閾値以上か未満であるかを対応づけて、それらに対応付けごとにインターバル時間用の数値を設定する。従って、設定テーブル62を用いれば、周囲のノイズ発生状況と、周囲に位置する他の無線LAN端末の動向(同時期に無線通信を行おうとしているか否か等)の影響も含めて無線LAN環境を判別でき、その判別した内容に応じてインターバル時間も設定できる。なお、図10のような設定テーブル62を用いる場合は、C/N比の電力強度に応じて各レベルを判定するために3つの基準値と、CTSの受信回数のレベル分け用に1つの閾値をそれぞれメモリ26に記憶させておく必要がある。
図11に示す設定テーブル63は、さらに別の設定テーブルの一例であり、キャリアの電力強度、CTSの受信回数、およびC/N比の検知結果の3つの判断条件を組み合わせた内容になっている。設定テーブル63は、キャリアの電力強度に基づき判定されるレベル(良レベル、普通レベル、悪レベル)ごとに、CTSの受信回数(カウント)がCTS用閾値以上か未満であるかを対応付けると共に、さらに、CTS用閾値以上と未満のそれぞれにC/N比の検知結果に基づき判定されるレベル(良レベル、普通レベル、悪レベル)を対応付けて、それらの対応付けによる組合せごとにインターバル時間用の数値を設定した内容になっている。よって、設定テーブル63を用いれば、周囲の状況を全般的に判断して無線LAN環境を判別でき、その判別した内容に応じてインターバル時間も設定できる。図11のような設定テーブル63を用いる場合は、キャリアの電力強度に応じて各レベルを判定するために3つの基準値と、CTSの受信回数のレベル分け用に1つの閾値と、C/N比の電力強度に応じて各レベルを判定するために3つの基準値とをそれぞれメモリ26に記憶させておく必要がある。なお、図11の設定テーブル63で規定される時間の考え方も、基本的に図4に示す設定テーブル40と同様になっており、キャリア強度に基づく各レベルに対応するCTSカウントの閾値以上および閾値未満のそれぞれにおいて、C/N比の検知に基づく普通レベルの時間が一番短く、良レベルの時間が二番目に短く、そして悪レベルの時間が最も長くなっている。
また、図12のグラフは、間欠的なキャリアセンスにおける無線LAN環境を、毎回行わずに、所定数のキャリアセンス毎に行っても良いことを表した変形例を示している。即ち、図12のグラフでは、2回のキャリアセンスのうち1回の割合で無線LAN環境のレベル判定処理を行う場合を示している。具体的には、最初のキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t30)における検知されたキャリアの電力強度と第1基準値34aとの比較結果に基づき無線LAN環境は「普通レベル」と判定され、以降、その後に続く2つのキャリアセンスの時間帯間のインターバル時間(時刻t30〜t31、t32〜t33)を、「普通レベル」に対応する5秒に変更している。なお、この場合、2回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t31〜t32)では、検知されたキャリアの電力強度と第1基準値34aとの比較処理を無線LANモジュール20は行っていない。
また、3回目のキャリアセンスの時間帯(時刻t33〜t34)における検知されたキャリアの電力強度と第1基準値34aとの比較結果に基づき無線LAN環境は「良レベル」と判定され、以降、その後に続く2つの各キャリアセンスの時間帯間のインターバル時間(時刻t34〜t35、t36〜t37)は、「良レベル」に対応した10秒に変更されている。
このように図12のグラフに示す処理パターンでは、2回のキャリアセンスの時間帯ごとに無線LAN環境のレベル判定処理が行われるため、図6に示すグラフのように1回のキャリアセンスの時間帯ごとにレベル判定処理を毎回行う場合に比べてCPU27の処理負担を低減できる。また、無線LAN環境の変動が小さいほど、無線LAN環境のレベル判定処理を行う頻度を下げて、CPU27の処理負担を低減することが好適であり、3回以上のキャリアセンスの時間帯ごとにレベル判定処理を行うことも勿論適用可能である。なお、このように所定回数ごとにレベル判定処理を行うには、CPU27がレベル判定処理を行う割合に係るキャリアセンス時間帯の回数を計数し、計数した数値が設定した割合に達したキャリアセンスの時間帯のときにレベル判定処理を行うことになる。
図13は、ハード面での変形例となる無線LANモジュール50を示している。変形例の無線LANモジュール50は、図2のCPU27のソフトウエア的に行われるMAC層30の処理部分をハード的な回路で置き換えたような構成になっている。具体的に無線LANモジュール50は、ソフト的に機能するCTS回数検知ブロック31a及びキャリア数検知ブロック31bを含むUpperMAC31、並びにLowerMAC32等と、図1に示すRF回路部21とに対応したハード的な各種回路51〜54をそれぞれ設けると共に、これらの各回路51〜54を制御する回路制御部55、及びメインモジュール11との接続インタフェース57を、無線LANモジュール50は設けている。
RF回路51は、図1のRF回路部21に対応した処理を行う回路であり、アクセスポイントに係るキャリアの電力強度の検知処理を行う強度検知部51a、及びC/N比の検知の処理を行うC/N検知部51bを含んでいる。アクセス制御回路52は、図2のUpperMAC31の各ブロック31a、31bを除いた部分、及びLowerMAC32に対応した部分である。また、CTS回数検知回路53は、図2のCTS回数検知ブロック31aに対応した処理を行う回路であり、キャリア数検知回路54は、図2のキャリア数検知ブロック31bに対応した処理を行う回路である。なお、この変形例の無線LANモジュール50ではRF回路51、アクセス制御回路52、CTS回数検知回路53、及びキャリア数検知回路54が、無線通信に係るアクセス制御を行う処理部分(アクセス制御手段)に相当する。
さらに、回路制御部55は内部メモリ56を有し、この内部メモリ56にプログラム、メニューデータ、基準値データ、設定テーブル、表示用データ等を記憶している。回路制御部55は、内部メモリ56に記憶されたプログラムに基づいて、上述した図5、7の第1、2フローチャートに示すような複数のアクセス可能なアクセスポイントから、アクセス状況が不安定なアクセスポイントを除外する処理、および図6のグラフに示すような無線LAN環境のレベルに基づくインターバル時間の変更処理等を行う。
なお、図13の無線LANモジュール50においても、上述した各種変形例の処理が適用可能である。また、無線LANモジュール20、50の仕様簡略化を図る場合は、間欠的なキャリアセンスのインターバル時間におけるアクセス制御に係る処理部分の停止処理を省略してもよい。
また、本発明に係る無線通信装置は、図1、13に示すような無線LANモジュール20、50の形態で、携帯型音楽再生装置10に組み込まれることに限定されるものではなく、パーソナルコンピュータ、PDA、テレビジョン装置等の情報処理装置、及び携帯電話機、携帯型画像表示装置等の各種機器にも組み込むことが適用できる。また、本発明の無線通信装置は、各種機器に内蔵して組み込む以外に、独立した無線通信装置の構成にしてもよい。例えば、各種接続規格(PCMCIA規格、CFカード規格、USB規格、IEEE1394等)に対応したカード型形状で構成し、様々な情報処理装置と接続できる形態にしてもよい。さらに本発明の無線通信装置が対象とする無線通信は、無線LANに限定されるものではなく、間欠的なキャリアセンスを行うものであれば、Wireless USB、UWB(Ultra Wide Band)等の各種無線通信に対しても適用可能である。