従来の無線通信装置は、間欠的なキャリアセンスに対して詳細な制御を行っておらず、無線通信を行う環境に関係なくインターバル時間の数値が固定であるので、間欠的なキャリアセンスにおいて電力を無駄に消費する場合が多いと云う問題がある。例えば、インターバル時間が2秒で固定されている無線通信装置では、無線通信環境が中継機(アクセスポイント)へ少し接続しにくいレベル(無線通信環境が普通より低いレベル)であっても、常に2秒間隔で電力消費量が多いキャリアセンスを行うので、実質的な無線通信処理(データの送受信)を行えなくてもキャリアセンスを繰り返すことで無線通信装置は電力を無駄に消費する。
また、無線通信環境がアクセスポイントへ殆ど接続できないレベル(上述した普通より低いレベルから更に低いレベル)でも、従来の無線通信装置では、無線通信環境が良好に変わるのを期待して、固定されたインターバル時間でキャリアセンスを繰り返すので無用に電力を消費する。なお、間欠的なキャリアセンスとは無関係であるが、従来の携帯電話機の中には、無線通信環境が悪くなると、無線通信の機会を出来るだけ確保するため、無線通信時期の間隔を短縮する処理を行うものがあり、このような携帯電話機では、無線通信環境の悪化に伴って消費電力が増大する。
一方、無線通信環境が普通のレベル又は良好なレベルでも、従来の無線通信装置は固定されたインターバル時間で間欠的にキャリアセンスを行うので、無線通信の接続確立までの時間にバラツキが生じ、一定的な接続確立性をユーザに提供できない問題がある。例えば、無線通信環境が良好なレベルであれば、直ちにアクセスポイントへ接続してキャリアセンスを行い、実質的な無線通信処理(データの送受信)を迅速に開始できるが、無線通信環境が普通レベルであれば、キャリアセンスを行ってから実質的な無線通信処理を開始するまでに、無線通信環境が良好なレベルに比べて多めの時間を一般に要する。そのため、無線通信環境が良好なレベルと普通のレベルでは、アクセスポイントへの接続確立にいたるまでの時間に差が生じ、同等の通信状況をユーザに提供できない。
上述した各問題は、間欠的なキャリアセンスを行う無線通信装置であれば、無線LAN以外の規格(例えばWireless USB、UWB(Ultra Wide Band)、Wireless1394等)で無線通信を行う装置で同様に生じる。
なお、特許文献1は、間欠的なキャリアセンスにおいて前回のキャリアセンスで最後に検知したチャンネルと同じ周波数のチャンネルで、次回のキャリアセンスにおける最初の検知を行うことにより、全体的なキャリアセンス時間を短縮するものであり、無線通信環境に応じて間欠的なキャリアセンスのインターバル時間の変更及びキャリアセンスを停止する旨の記載はない。また、特許文献2は、複数のチャンネルを同時にキャリアセンスして消費電力の削減を図るものであり、特許文献1と同様に無線通信環境に応じてインターバル時間の変更及びキャリアセンスの停止を行う旨の記載はない。さらに、特許文献3は、受信待機モード(所謂スリープモード)で消費電力を削減するために、信号の受信レベルに応じて特定の部分のみを作動させるものであり、特許文献1及び特許文献2と同様に無線通信環境に応じてインターバル時間の変更及びキャリアセンスの停止を行う旨の記載はない。
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、無線通信環境がアクセスポイントへ接続できないレベルであるときは、間欠的なキャリアセンスを停止して無駄に電力を消費することを防止するようにした無線通信装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、無線通信環境がアクセスポイントへ良好に接続できるレベル、又は普通に接続できるレベルであるときは、間欠的なキャリアセンスのインターバル時間を調整して、同等の確率で無線通信先との接続を行えるようにした無線通信装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る無線通信装置は、無線通信に係るキャリアセンスを間欠的に行う無線通信装置において、キャリアセンス時に無線通信環境に係る値を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果を、無線通信環境を表す基準レベルと比較する比較手段と、前記比較手段の比較により、前記検知結果が基準レベル未満である場合、キャリアセンスを停止する停止手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンス時に検知した無線通信環境に係る値が基準レベル未満である場合、無線通信装置は、無線通信環境が良好でないためアクセスポイントに殆ど接続できない状況であると判断して、キャリアセンスを自動で停止する。そのため、従来の無線通信装置のように無線通信環境が良好でないときでも、キャリアセンスを無用の繰り返すことが無くなり、電力を無駄に消費することを防止できる。なお、本発明の基準レベルは、無線通信環境が悪いレベル(無線通信先との接続が最低限可能なレベル)と、アクセスポイントに殆ど接続できないレベル(無線通信先との接続が殆ど不可能なレベル)とを分ける境界に相当したものを適用する。
また、本発明に係る無線通信装置は、無線通信に係るキャリアセンスを間欠的に行う無線通信装置において、キャリアセンス時に無線通信環境に係る値を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果を、無線通信環境を表す基準レベルと比較する比較手段と、前記比較手段の比較により、前記検知結果が基準レベルを超える場合、キャリアセンス間の間欠時間を第1時間に変更すると共に、前記検知結果が基準レベル未満である場合、キャリアセンス間の間欠時間を前記第1時間より短い第2時間に変更する時間変更手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンス時に検知した無線通信環境に係る値が基準レベルを超える場合、間欠時間を第1時間に変更し、検知した無線通信環境に係る値が基準レベル未満の場合、間欠時間を第1時間より短い第2時間に変更する。そのため、無線通信環境が基準レベル未満の場合、即ち、無線通信環境が普通レベルであるときの間欠時間(第2時間に相当)が、無線通信環境が基準レベルを超える場合、即ち、無線通信環境が良好なレベルであるときの間欠時間(第1時間)に比べて短くなるように間欠時間の変更が行われる。その結果、無線通信環境が普通のレベルであるときは頻繁にキャリアセンスを行い、直ちに無線通信の接続確立が可能な無線通信環境が良好なレベルと同等の接続状況を確保し、無線通信環境に左右されることなく無線通信の接続確立を画一的な精度(同等の確率)で行える。なお、本発明の基準レベルは、無線通信環境が良好なレベル(直ちに接続を確立できるレベル)と、無線通信環境が普通のレベル(無線通信環境が良好なレベルと、悪いレベルとの間のレベル)とを分ける境界に相当したものを適用する。
さらに、本発明に係る無線通信装置は、無線通信に係るキャリアセンスを間欠的に行う無線通信装置において、キャリアセンス時に無線通信環境に係る値を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果を、無線通信環境を表す第1基準レベル及び該第1基準レベルより低いレベルの無線通信環境を表す第2基準レベルと比較する比較手段と、前記比較手段の比較により、前記検知結果が第1基準レベルを超える場合、キャリアセンス間の間欠時間を第1時間に変更すると共に、前記検知結果が第2基準レベルを超えて第1基準レベル未満である場合、キャリアセンス間の間欠時間を前記第1時間より短い第2時間に変更する時間変更手段と、前記比較手段の比較により、前記検知結果が第2基準レベル未満である場合、キャリアセンスを停止する停止手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンス時に検知した無線通信環境に係る値に応じてキャリアセンス間の間欠時間が調整されると共に、無線通信環境に係るレベルが殆ど接続できない状況であるときは自動的にキャリアセンスが停止される。そのため、無線通信環境が良好であるレベルと、普通のレベルとに対する接続確立に至るまでの時間を同等にして、無線通信環境に左右されることなく同レベル(同確率)でアクセスポイントへの接続を確保できると共に、無線通信環境が通常レベルより低いときは、自動でキャリアセンスを停止して無用に電力を消費することを防止できる。
なお、本発明の本発明の第1基準レベルは、無線通信環境が良好なレベル(直ちに接続を確立できるレベル)と、無線通信環境が普通のレベル(無線通信環境が良好なレベルと、悪いレベルとの間のレベル)とを分ける境界に相当したものを適用し、第2基準レベルは、無線通信環境が普通のレベルと、無線通信環境が悪いレベル(無線通信は最低限可能なレベル)とを分ける境界に相当したものを適用することになる。
さらにまた、本発明に係る無線通信装置は、前記比較手段は、前記第2基準レベルより低いレベルの無線通信環境を表す第3基準レベルと前記検知結果を比較する手段を備え、前記時間変更手段は、前記比較手段の比較により、前記検知結果が前記第3基準レベルを超えて第2基準レベル未満である場合、キャリアセンス間の間欠時間を前記第1時間より長い第3時間に変更する手段を備え、前記停止手段は、前記比較手段の比較により、前記検知結果が第3基準レベル未満である場合、キャリアセンスを停止する手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンス時に検知した無線通信環境に係る値が、第3基準レベルを超えて第2基準レベル未満の場合、キャリアセンス間の間欠時間(第3時間に相当)を無線通信環境が良好なレベルのときの間欠時間(第1時間に相当)より長くする。そのため、従来の一般的な無線通信装置に適用されている無線通信の考え方とは逆にして、無線通信環境が悪いレベルのときは、間欠時間を長くして一定時間あたりのキャリアセンスの回数を減らし、消費電力の大きいキャリアセンスの頻度を抑えて消費電力の低減を達成できる。なお、このようなキャリアセンス間の間欠時間の変更は、無線通信装置が無線通信環境の良好なエリア内に位置するときは、迅速に無線通信を行える状態にする一方、無線通信装置が一旦、無線通信環境が良好なエリアから外れると、そもそも良好な無線通信が期待できないので、キャリアセンスの頻度を最小限に留めて、消費電力の低減を優先した処理に切り替えることを狙っている。
さらに、キャリアセンス時に検知した無線通信環境に係る値が第3基準レベル未満の場合、キャリアセンスを停止するため、もはやアクセスポイントへ接続できない無線通信環境になると、自動でキャリアセンスを停止して無駄な電力消費を抑える。なお、本発明の第3基準レベルは、無線通信環境が悪いレベル(無線通信が最低限可能なレベル)と、アクセスポイントに殆ど接続できないレベル(無線通信先との接続が殆ど不可能なレベル)とを分ける境界に相当したものを適用することになる。
本発明に係る無線通信装置は、前記停止手段がキャリアセンスを停止する場合、キャリアセンスの停止を表すデータを出力する出力手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンスを停止する場合、キャリアセンスの停止を表すデータを出力するので、無線通信装置のユーザへ無線通信環境の悪化に伴ってキャリアセンスが自動停止されたことを伝えられる。なお、このようにキャリアセンスの停止をユーザに伝えることで、無線通信環境の良好な箇所へ無線通信装置を移動させることをユーザに促すことが可能となり、無線通信環境が良好な箇所へ移動したときは、ユーザの無線通信の開始指示を受けて、間欠的なキャリアセンスを再開できる。
本発明に係る無線通信装置は、前記検知手段が、無線通信環境に係る値として、搬送波中の雑音成分に係る値を検知する手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、無線通信環境に係る値として、キャリアセンス時に検知される搬送波に含まれる雑音成分に係る値を検知するので、雑音成分に応じて数値のレベルで無線通信環境を客観的に特定できる。なお、搬送波中の雑音成分が多くなる原因は複数存在し、例えば、アクセスポイントまでの距離が遠いとき、アクセスポイントと無線通信装置との間に障害物が存在するとき、特設会場などにおいてランダムに外来ノイズ(規格に合致しない無線通信によるものが多い)が入るとき等が挙げられる。
また、本発明に係る無線通信装置は、前記検知手段が、無線通信環境に係る値として、キャリアセンス時に受信する無線通信に係る受信準備完了信号の受信回数を検知する手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、受信準備完了信号の受信回数を検知し、検知した受信回数に基づき無線通信環境に係るレベルを判定するので、本発明の無線通信装置の周囲に位置する他の無線通信装置の無線通信状況も考慮して客観的に無線通信環境を特定できる。
さらに、本発明に係る無線通信装置は、前記検知手段が、無線通信環境に係る値として、アクセス可能な無線通信中継機の搬送波の数を検知する手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、アクセス可能な無線通信中継機(例えば、無線LANのアクセスポイント)から発せられる搬送波の数を検知して、その数に応じた無線通信環境に係るレベルを判定するので、アクセス可能な無線通信中継機の数に応じて客観的に無線通信環境を特定できる。
さらにまた、本発明に係る無線通信装置は、前記検知手段が、無線通信環境に係る値として、搬送波の電力強度を検知する手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、キャリアセンス時に検知される搬送波の電力強度に基づき無線通信環境に係るレベルを判定するので、電力強度に応じて数値のレベルで無線通信環境を客観的に特定できる。
本発明に係る無線通信装置は、前記キャリアセンスが、無線通信に係る複数のチャンネルに対して行うようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、複数のチャンネルをキャリアセンスすることで、キャリアセンスを行う時間帯が長くなる場合でも無線通信環境に応じて間欠時間の調整、又はキャリアセンス自体の停止制御を行うので、無線通信環境の影響を抑えて画一的な通信接続性を確保できると共に、無用な電力消費を抑制できる。
また、本発明に係る無線通信装置は、前記キャリアセンスが、無線通信に係る一つのチャンネルに対して行うようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、一つのチャンネルをキャリアセンスすることで、キャリアセンスを行う時間帯が、複数のチャンネルをキャリアセンスする場合に比べて短くなる場合でも同様に、無線通信環境に応じて間欠時間の調整、又はキャリアセンス自体の停止制御を行うので、無線通信環境の影響に左右されることなく画一的な通信接続性を確保できると共に、無用な電力消費を抑制できる。
さらに、本発明に係る無線通信装置は、無線通信に係るアクセス制御を行うアクセス制御手段と、キャリアセンス間の間欠時間の開始に応じて、前記アクセス制御手段の作動を停止させる作動停止手段と、キャリアセンス間の間欠時間が終了するまでに、前記アクセス制御手段を作動させる作動開始手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、間欠的に行われるキャリアセンス間の間欠時間が開始すると、アクセス制御手段の作動が停止するので、間欠時間中は無線通信装置での電力消費が少なくなり、その結果、間欠的なキャリアセンスにおける全体的な電力消費を一層削減できる。また、間欠時間が終了するまでに、アクセス制御手段の作動を再開させるので、キャリアセンスについては間欠的なキャリアセンスの開始と同時に従来通り支障なく行える。
なお、アクセス制御手段は、プロセッサ(CPU)の処理によりソフトウエア的に行うこと、又は、専用の回路を設けてハード的に行うことの両方が適用可能である。ソフトウエア的に行う場合は、プロセッサにおけるアクセス制御手段に相当するブロック処理内容の作動を停止することで、プロセッサの作動レベルを抑えて省電力化を図れる。また、ハード的に行う場合は、該当する回路部分の作動を停止して省電力化を図れる。
本発明にあっては、無線通信環境がアクセスポイントに殆ど接続できないレベルである場合、キャリアセンスを自動で停止するので、従来の無線通信装置のようにアクセスポイントへ接続できないレベルでもキャリアセンスを無用に繰り返す事態を解消して、電力を無駄に消費することを防止できる。
また、本発明にあっては、無線通信環境が良好なレベルである場合、キャリアセンス間の間欠時間を第1時間に変更し、無線通信環境が良好なレベルより低い普通のレベルである場合、間欠時間を第1時間より短い第2時間に変更するので、無線通信環境に左右されることなく同等のアクセス状況を確保できる。
本発明にあっては、無線通信環境が良好なレベルである場合、キャリアセンス間の間欠時間を第1時間に変更し、無線通信環境が普通のレベルである場合、第1時間より短い第2時間に変更する一方、無線通信環境が普通のレベルより低い状況であれば、キャリアセンスを自動停止するので、無線通信環境が普通レベル以上であるときは、無線通信環境に関係なく同等の通信接続性を確保でき、無線通信環境が普通より低いレベルのときは無駄な電力消費を抑制できる。
本発明にあっては、無線通信環境が普通のレベルより低いレベル(最低限の無線通信が可能なレベル)である場合、キャリアセンス間の間欠時間を第1時間より長い第3時間に変更して、キャリアセンス回数を抑制し電力の消費を低減でき、また、無線通信環境がアクセスポイントへ殆ど接続できないレベルのときは、キャリアセンスを自動停止して確実に電力消費を抑制できる。
また、本発明にあっては、キャリアセンスを停止する場合、キャリアセンスの停止を表すデータの出力を行うので、無線通信装置のユーザへキャリアセンスの自動停止を伝えて、無線通信環境の良好な箇所へ無線通信装置を移動させることをユーザに促すことができる。
本発明にあっては、搬送波に含まれる雑音成分で無線通信環境に係る値を検知するので、雑音成分に応じた数値に基づき無線通信環境を客観的に特定できる。
また、本発明にあっては、受信準備完了信号の受信回数に基づき無線通信環境に係る値を検知するので、周囲に位置する他の無線通信装置の無線通信状況も考慮して客観的に無線通信環境を特定できる。
さらに、本発明にあっては、アクセス可能な無線通信中継機の搬送波の数に基づき無線通信環境に係る値を検知するので、無線通信装置がアクセスできる無線通信中継機の数に応じて客観的に無線通信環境を特定できる。
さらにまた、本発明にあっては、キャリアセンス時に検知される搬送波の電力強度に基づき無線通信環境に係る値を検知するので、無線通信環境を客観的に特定できる。
本発明にあっては、複数のチャンネルをキャリアセンスすることで、キャリアセンスを行う時間帯が長くなる場合でも無線通信環境の影響を抑えて画一的な通信状況を確保できると共に、無用な電力消費を抑制できる。
また、本発明にあっては、一つのチャンネルをキャリアセンスすることで、キャリアセンスを行う時間帯が、複数のチャンネルをキャリアセンスする場合に比べて短くなる場合でも無線通信環境の影響に左右されることなく画一的な通信状況を確保できると共に、無用な電力消費を抑制できる。
本発明にあっては、キャリアセンス間の間欠時間が開始に合わせてアクセス制御手段の作動を停止するので、間欠時間中の電力消費を一層削減でき、また、間欠時間が終了するまでに、アクセス制御手段の作動を再開させるので、キャリアセンスは従来通り支障なく行える。
図1は、本発明の実施形態に係る無線LANモジュール(無線通信装置に相当)20を組み込んだ携帯型音楽再生装置10の主要な内部構成を示している。携帯型音楽再生装置10は、本来の音楽再生機能に加えて無線LAN通信機能を備えたことが特徴であり、音楽再生機能に対応するメインモジュール11に、無線LAN通信機能に対応した無線LANモジュール20を内部で接続している。携帯型音楽再生装置10は、無線LAN通信を介して様々な音楽データを容易に取得できると共に、取得した音楽データをメインモジュール11で再生出力可能にしている。
携帯型音楽再生装置10が備える無線LANモジュール20は、無線通信の際に間欠的なキャリアセンスを行う仕様になっており、このキャリアセンスに対する制御を、一般的な無線通信装置の処理と逆にしていることが特徴である。即ち、無線通信環境が通常レベルより悪化すると、無線LANモジュール20は、無線通信先との接続を確立するために頻繁にキャリアセンスを試みるのではなく、接続確立より消費電力の低減を優先してキャリアセンスの頻度を落とすと共に、無線通信環境が接続できないレベルまで悪化すると、キャリアセンスを自動で停止して無駄な電力消費を抑制したことが特徴になっている。さらに、無線LANモジュール20は、無線通信環境が通常レベル(普通のレベルに相当)の場合と、良好なレベルの場合に対して同程度の確率で無線通信先との接続を確立できるように、無線通信環境が良好なレベルの場合のキャリアセンスのインターバル時間(間欠時間に相当)を、通常レベルの場合に比べて長目に変更することを特徴にしている。以下、本実施形態に係る携帯型音楽再生装置10を、メインモジュール11、無線LANモジュール20の順に説明する。
メインモジュール11は、RAM12、ROM13、記憶部14、音声出力処理部15、メイン制御部(プロセッサ)17、表示パネル18、操作部19を内部バス11a、11b等で接続した構成にしている。RAM12は、メイン制御部17の処理に伴うデータ及びファイル等を一時的に記憶し、ROM13は音楽再生用の制御処理等を規定した再生プログラム13a、選曲等を行う再生メニューデータ13b等を予め記憶している。記憶部14は、無線LAN通信を介して取得した音楽データDを記憶するものである。音声出力処理部15は、音楽データの再生処理、増幅等を行ってスピーカ16から音声を出力する処理を行う。
メイン制御部17は、表示パネル18及び操作部19を接続している。表示パネル18は、メイン制御部17の制御により、各種メニューデータに基づくメニュー画面等を表示する(図4(a)(b)参照)。また、操作部19は、上下左右キー及び決定キー等の複数のキーで構成されており、メニュー画面中の選択項目等に対するユーザの選択指示を受け付けて、受け付けた指示内容をメイン制御部17へ伝える。メイン制御部17は、ROM13に記憶された再生プログラム13aの規定に従って音楽データ(例えば、MP3ファイルの音楽データ)の再生に係る制御処理を行うと共に、各種設定用の処理等を行い、設定に関しては無線LANモジュール20との連係により、無線LANの設定に関する処理も行う。
一方、無線LANモジュール20は、米国電気電子技術者協会が定める無線LAN通信(IEEE802.11、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11k等)を行うものであり、チップ化された無線LAN用のRF(高周波)回路部21、及びMAC処理部25を有する。
RF回路部21はOSI参照モデルにおける物理層に相当し、無線LAN用のアンテナ24が接続されて周波数変換、I/Q変換、及び受信信号の増幅等の各種処理を行う。また、RF回路部21は、キャリアセンス時にキャリアの電力強度を検知する強度検知回路22(検知手段として電力強度を検知する手段に相当)、及びキャリア中の雑音成分としてキャリアのC/N比(搬送波電力/雑音電力)を検知するC/N検知回路23(検知手段として雑音成分に係る値を検知する手段に相当)を含んでいる。RF回路部21は、MAC処理部25に含まれるCPU27により、作動に対する制御が行われており、間欠的なキャリアセンス処理に伴い作動を開始する。なお、強度検知回路22は約−80dBmから−10dBmの範囲でキャリアの電力強度を検知する。
C/N検知回路23の検知対象であるC/N比(搬送波中の雑音成分に係る値)について少し説明する。無線LAN通信の伝播路が多重波伝播路になっている場合、例えば、無線LANの通信電波に、建物の反射および周辺に存在するアクセスポイントから出る通信電波によって干渉などが起こっている場合、受信波のレベルに変動(フェージング現象)が生じる。また、無線LAN通信を行う送受信機、及び反射物が移動することにより、搬送波の周波数偏移が生じる。上述したフェージング現象及び周波数偏移により、本来のC/N比が受信側で確保できなくなる。
IEEE802.11bでは、一次変調(DBPSK,DQPSK等)された搬送波をスペクトラム拡散するエネルギー分散およびエラー訂正処理により干渉波に対する耐性を確保しているが、耐性を確保できるレベルを超えると、上述したフェージング現象により、周波数軸上では送信側の信号スペクトラムに対して、受信側の信号スペクトラムにおける各サブキャリアのレベルが低下する(図3(a)参照)。また、レベル低下の程度が受信側での誤り訂正処理が可能なレベル(復調限度レベル)を下回るようなフェージング現象が生じると、再送が入り、著しく伝送効率が低下してデータ誤りが生じる(図3(a)の右側のグラフにおける右から2番目のサブキャリアを参照)。
このような現象を、図3(b)に示すように時間軸上で見ると、受信側で信号の波形歪みが増大することになる。即ち、送信側の信号波形が反射、散乱、アクセスポイントから出る通信電波との干渉の影響を受けることで、時間軸上では受信側の信号波形に歪みが生じる。よって、周波数上では各サブキャリアのレベル低下を測定すると共に、時間軸上では搬送波の波形歪みを測定することによりキャリアレベルでのC/N比の検知を行える。なお、検知されたC/N比の値(無線通信環境に係る値)が基準レベルより大きい状態は、搬送波に比べて雑音成分が小さいので受信する電波の品質が良い状態(無線LAN環境が良好なレベル)を意味し、検知されたC/N比の値が基準レベルより小さい状態は、雑音成分が大きいので受信する電波の品質が悪い状態(無線LAN環境が悪いレベル)を意味する。
また、MAC処理部25は図1に示すように、メモリ26、CPU27、メインモジュール11との接続を行う接続インタフェース28、RF回路部21との接続を行うRF用接続インタフェース29等を内部バス25aで接続した構成になっており、無線LAN通信においてデジタル変換/復調、及びアクセスコントロール等の処理を行う。なお、CPU27はクロック機能を内蔵し、計時する時間に合わせて後述する各種制御を行う。
メモリ26は、CPU27が行う無線LAN通信に係る制御処理の各種内容を規定したプログラムP、メニューデータ33、検知されるC/N比との比較用の基準レベルデータ34、警告画面データ39、C/N比に基づく無線通信(無線LAN)環境を表すレベルのそれぞれに設定内容(インターバル時間を調整する数値またはキャリアスキャンの停止)を対応付けた設定テーブル40等を記憶している。
メモリ26に記憶される基準レベルデータ34は、検知されたC/N比に基づき現在の無線通信環境を複数のレベルに分けるため、無線通信環境を表す計3個の基準レベル(第1基準レベル34a、第2基準レベル34b、第3基準レベル34c)を含んでおり各基準レベル34a〜34cの値の大きさは、第1基準レベル34aが最大であり、第2基準レベル34bが2番目に大きく、第3基準レベル34cが最小になっている(第1基準レベル34a>第2基準レベル34b>第3基準レベル34c)。なお、第1基準レベル34aは、良好なレベルの無線通信環境(無線LAN環境)と、通常レベル(普通レベルに相当)の無線LAN環境との境界に相当するレベルであり、第2基準レベル34bは、通常レベルと、最低限の無線通信状況を確保できる悪いレベルとの境界に相当するレベルであり、第3基準レベル34cは悪いレベルと、アクセスポイントとの接続が不可能な無線LAN環境のレベルとの境界に相当するレベルになっている。
これら各基準レベル34a〜34cは、メモリ26に記憶されたプログラムPの規定により、キャリアセンス時に検知されたC/N比(検知結果)と比較されて、検知されたC/N比に基づく現在の無線LAN環境に係るレベルを判定する処理が行われる。本実施形態では、検知結果であるC/N比が第1基準レベル34aを超える場合、無線LAN環境は「良」に相当する第1レベルに判定される。また、C/N比が第1基準レベル34a以下であるが第2基準レベル34bを超える場合、無線LAN環境は「中(通常程度)」に相当する第2レベルに判定される。さらに、C/N比が第2基準レベル34b以下であり且つ第3基準レベル34cを超える場合、無線LAN環境は「悪」に相当する第3レベルに判定される。さらにまた、C/N比が第3基準レベル34c以下である場合、無線LAN環境は「接続不可」に相当する第4レベルに判定される。
図5(a)は、メモリ26に記憶されている設定テーブル40の中身を示している。設定テーブル40は、上述した第1レベルから第3レベルのそれぞれに対してはインターバル時間用の数値を対応付けており、具体的には第1レベルに10秒(第1時間に相当)、第2レベルに5秒(第2時間に相当)、第3レベルに40秒(第3時間に相当)をデフォルトで対応付けている。各レベルに応じたインターバル時間用の数値はメニュー画面(図4(b)参照)で適宜変更可能であり、第1レベルは10秒〜29秒の範囲で変更でき、第2レベルは1〜9秒の範囲で変更でき、第3レベルは30秒〜50秒の範囲で変更できる。なお、本実施形態で述べる各レベルに対応付けた時間の数値は、あくまで一例であり、製品の特徴、仕様等に応じて様々な数値を適用できる。さらに、図5(a)の設定テーブル40は、第4レベルに対してはキャリアセンスを停止することを規定している。
上述した設定テーブル40における各レベルに対する設定内容の考え方を説明すると、先ず、無線LAN環境が「良」である第1レベルは、無線通信先(アクセスポイント)との接続を試みれば、直ちに接続を確立できる状態であるので、キャリアセンスの頻度を、ある程度抑えて第2レベルと同程度の接続状況となるように、インターバル時間を10秒から29秒の範囲内で設定可能にする。また、無線LAN環境が「中」である第2レベルは、通常レベルで無線通信先と接続可能であり、第1レベルと同等の接続状況(接続される確率)を確保するため、第1レベルより短い1秒から9秒の範囲でインターバル時間を変更可能にする。このような設定内容にすることで、無線LAN環境が通常レベル以上であれば、常に同等の接続状況をユーザに提供でき、ユーザは無線LAN環境を意識することなく一定の接続確率で無線通信を行える。
さらに、無線LAN環境が「悪」である第3レベルは、接続可能な限界(接続性が不安定)であり、無線通信の許容可能な通信レベルを維持してユーザの満足度を満たすことは困難なので、無線LANの通信環境を最小限で検知する頻度でキャリアセンスを行うようにして消費電力の低減を優先し、インターバル時間を長目の30秒から50秒の範囲内で時間を設定する。さらにまた、無線LAN環境が「接続不可」である第4レベルは、もはや無線通信先と接続できないので、キャリアセンスを停止して無駄に電力を消費することを防止する。
また、メモリ26に記憶される警告画面データ39は、図5(b)に示す警告画面39aを表示パネル18に表示するためのデータであり、無線LAN環境が第4レベルである場合に、MAC処理部25の接続インタフェース28(出力手段に相当)からメインモジュール11へ出力されて表示処理が行われる。警告画面39a中には、キャリアセンスの停止を表す文言が記載されていると共に、ユーザに無線LAN環境が良い場所への移動を促す文言が記載されている。なお、警告画面39aは、キャリアセンスの停止処理中、表示されるようになっている。
さらに、メモリ26に記憶されるメニューデータ33は、図4(a)(b)に示すメニュー画面35、36等を表示するためのデータであり、これら各メニュー画面35、36等は、設定準備段階において携帯型音楽再生装置10の表示パネル18に表示されるものである。具体的には、メインモジュール11の操作部19で無線LAN設定を行う指示を受け付けた場合、その旨がメインモジュール11からMAC処理部25のCPU27へ伝えられ、CPU27がメモリ26に記憶されるメニューデータ33をメインモジュール11へ送ることで、表示パネル18に各メニュー画面35、36が表示される。
図4(a)のメニュー画面35は、キャリアセンス時のチャンネル数の設定を受け付ける手段に相当し、全チャンネル、又はチャンネル1〜13中の所望チャンネルのいずれかを適宜選択できる選択欄35a、選択欄35aで選択された対象に決定する指示を受け付ける決定ボタン35b、選択された対象を解除するキャンセルボタン35cを設けている。選択欄35a、決定ボタン35b、キャンセルボタン35cは、メインモジュール11の操作部19での操作で選択を行えるようになっている(メニュー画面36でも同様)。なお、デフォルトでは、全チャンネルが設定されている。
図4(b)のメニュー画面36は、図5(a)の設定テーブル40における第1レベルに対応付ける時間の数値変更を行うものであり、第1レベル用の時間数値の設定を受け付ける手段に相当する。そのため、メニュー画面36は、10秒から29秒の範囲で数値を選択できる選択欄36a、選択欄36aで選択された対象に決定する指示を受け付ける決定ボタン36b、選択された対象を解除するキャンセルボタン36cを設けている。メニュー画面36は、デフォルトでは上述した設定テーブル40のデフォルト内容に対応して10秒が選択された状態になっている。なお、メモリ26に記憶されるメニューデータ33には、メニュー画面36と同等の内容である他のレベルにおける数値設定用のメニュー画面(図示せず)も含んでおり、これらの他のレベル用のメニュー画面も、図4(b)のメニュー画面36と同様に各レベルに応じた範囲で数値を変更できるようになっている。
また、メモリ26に記憶されるプログラムPは、CPU27が無線通信に係る各種処理を行う際の制御処理内容を規定しており、本実施形態では基本的な無線LAN通信および上述した設定準備段階での処理に加えて、本発明の特徴となる間欠的なキャリアセンスにおけるインターバル時間の変更処理、キャリアセンス自体の停止制御およびインターバル時間に無線LANモジュール20中のアクセス制御を行う部分の停止処理を規定している。なお、プログラムPが規定する基本的な無線LAN通信の処理には、データの送受信に係る無線通信を行う指示をユーザから受け付けると、間欠的なキャリアセンスを開始してから、アクセスポイントとの接続を確立してデータの送受信を行う内容等が規定されている。
また、プログラムPの本発明に関する具体的な処理内容は、以下の通りである。先ず、RF回路部21のC/N検知回路23でキャリアセンス時に検知されたC/N比を、CPU27が無線LAN環境に係る値(検知結果)として把握し、それからCPU27は比較手段として、検知結果をメモリ26に記憶される各基準レベル34a〜34cと比較し、現在のC/N比に基づく無線LAN環境が第1レベル〜第4レベルのいずれのレベルに相当するかを判定する。それからCPU27は、判定したレベルが第1レベル〜第3レベルである場合、時間変更手段としてインターバル時間の変更処理を行い、図5(a)の設定テーブル40に基づき判定したレベルに対応する数値を特定し、C/N比の検知を行ったキャリアセンス後のインターバル時間を、特定した数値に変更する処理を行う。なお、CPU27は、このような時間変更に係る処理を、間欠的なキャリアセンス全般の中におけるキャリアセンスを行う時間帯ごとに行って、各キャリアセンスの時間帯の後のインターバル時間を無線LAN環境に応じて自動変更する。
一方、判定したレベルが第4レベルである場合、CPU27は停止手段として、キャリアセンス自体の停止制御を行い、間欠的なキャリアセンスを停止すると共に、メモリ26から警告画面データ39を読み出して接続インタフェース28からメインモジュール11へ出力し、表示パネル18で図5(b)の警告画面39aを表示する。
また、上述したインターバル時間の変更処理を行う場合、CPU27は、インターバル時間に無線LANモジュール20中のアクセス制御を行う部分を停止する制御も行う。具体的には、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with
Collision Avoidance)で規定されるMAC層(OSI参照モデルのデータリンク層の一部に該当)及び物理層(本実施形態では、RF回路部21が該当)に相当する部分をインターバル時間に停止して、間欠的なキャリアセンスに対する消費電力の削減を図っている。なお、本実施形態ではプログラムPのソフトウエア的な処理によりCPU27が、OSI参照モデルにおけるMAC(Media Access Control)層として機能している。
図2は、CPU27がMAC層32として機能する内容を概念的に表したものである。MAC層32は、IEEE(米国電気電子技術者協会)の無線LAN規格(IEEE802.11系の規格)に基づくアクセス手法(例えばCSMA/CA)を規定し、CPU27にはMAC層32の中で上位層に相当するUpperMAC30、及び下位層に相当するLowerMAC31が設けられる。また、UpperMAC30には、CTS回数検知ブロック30a、及びキャリア数検知ブロック30bが含まれる。
CTS回数検知ブロック30aは、キャリアセンス時に他の無線装置から発せられるCTS(受信準備完了信号)の受信回数を計数して検知する手段(検知手段としてCTSの受信回数を検知する手段に相当)として機能する。また、キャリア数検知ブロック30bは、接続可能なアクセスポイント(無線通信中継機に相当)のキャリア数を計数して検知する手段(検知手段としてキャリア数を検知する手段に相当)として機能する。プログラムPは、インターバル時間での省電力を実現するため、CPU27のMAC層32として機能する部分及びRF回路部21の作動をインターバル時間に合わせて停止させることを規定している。なお、本実施形態では、MAC層32及びRF回路部21が、無線通信に係るアクセス制御を行うアクセス制御手段に相当している。
プログラムPが規定するMAC層32及びRF回路部21の作動停止処理を以下に、説明する。プログラムPは、キャリアセンスの終了に合わせてMAC層32及びRF回路部21(強度検知回路22とC/N検知回路23を含む)の作動を停止させる制御を、CPU27が作動停止手段として行うことを規定している。なお、MAC層32およびRF回路部21が作動を停止している場合でも、無線LANモジュール20の他の部分は作動しているため、このときも無線LANモジュール20は若干の電力は消費している。さらに、プログラムPは、インターバル時間が終了する所定の時間前に、停止していたMAC層32及びRF回路部21の作動を再開する制御を、CPU27が作動開始手段として行うことを規定している。
また、プログラムPは、間欠的なキャリアセンスにおける各キャリアセンスの時間帯では従来通り、CTS回数検知ブロック30a及びキャリア数検知ブロック30bを含めてUpperMAC30、LowerMAC31、並びにRF回路部21(強度検知回路22とC/N検知回路23を含む)を作動させて、無線LAN通信に係るアクセス制御を行うことを規定している。
図6は、プログラムPの規定に基づくCPU27の制御により、複数のキャリアセンスを間欠的に行う状況の一例を表した無線LANモジュール20のタイムチャート的なグラフを示す。このグラフは、図4(a)のメニュー画面35の設定により、IEEE802.11bで規定される13チャンネルの全てをキャリアセンスする場合を示し、グラフ中、時刻0〜t10、t11〜t12、t13〜t14の時間帯で全チャンネルに対するキャリアスキャンが行われる。なお、図6では、棒状グラフの一つが、1チャンネルに対するキャリアセンスを表しており、キャリアセンスを行う各時間帯における13チャンネルの全てに対応する棒状グラフの図示は省略している。また、キャリアセンスを行う各時間帯は、MAC層32及びRF回路部21が作動してCTSの受信回数カウント、使用中のキャリア数検知、キャリア強度検知、及びC/N比検知が行われるため、全チャンネルのキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t10、t11〜t12、t13〜t14間のそれぞれ時間帯)に、約2秒の時間を要する。
図6のグラフでは、最初の全チャンネルのキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t10)におけるC/N比検知に基づき、その時間帯での無線LAN環境は「良」の第1レベルと判定され、その結果、最初のキャリアセンスの時間帯の後のインターバル時間(時刻t10〜t11)は、10秒になっている(図5(a)の設定テーブル40参照)。また、2回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t11〜t12)におけるC/N比検知に基づき、その時間帯での無線LAN環境は「中」の第2レベルと判定され、それにより2回目のキャリアセンスの時間帯の後のインターバル時間(時刻t12〜t13)は5秒に変更されている。さらに、3回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t13〜t14)におけるC/N比検知に基づき、その時間帯での無線LAN環境は「悪」の第3レベルと判定され、それにより3回目のキャリアセンスの時間帯の後のインターバル時間(時刻t14〜t15)は40秒に変更されている。
このように本発明では、無線LAN環境が「良」の第1レベルと判定された後は、インターバル時間を10秒(時刻t10〜t11)にすると共に、無線LAN環境が「中」の第2レベルと判定された後は、第1レベルより短いインターバル時間を5秒(時刻t12〜t13)に変更するので、無線LAN環境が「中」以上であれば、アクセスポイントへの接続確率を同程度に揃えることができ、ユーザに無線LAN環境を意識させることなく、常に同等の通信レベルを提供できる。また、無線LAN環境が「悪」の第3レベルと判定された後は、インターバル時間を40秒(時刻t14〜t15)にするので、接続確率が低いことに配慮しキャリアセンスを控えて省電力を優先した処理を行う。また、無線LANモジュール20は、このように変動するインターバル時間の際、MAC層32およびRF回路部21の作動を停止させて、相乗的に更なる省電力化を行う。
具体的には、図6のグラフにおいて最初のキャリアセンスの時間帯が終了して時刻t10(インターバル時間の開始時刻)になると、CPU27の制御により無線LANモジュール20の中でMAC層32及びRF回路部21が作動を停止する。また、時刻t11(インターバル時間の終了時刻)より時間Tだけ前の時刻になると、CPU27の制御により、MAC層32及びRF回路部21の作動を再開してアクセス制御を行う。このように無線LANモジュール20では、インターバル時間の終了時刻より時間Tだけ前の時刻に、MAC層32及びRF回路部21の作動を再開するので、次のキャリアセンスを開始する時には確実にアクセス制御を行える状況になり、各種検知処理を支障なく行うことができる。なお、時間Tは0.5秒〜2秒程度の範囲で所定時間が予め設定されている。以降同様に、無線LAN環境が第1レベル〜第3レベルと判定されたときは、各インターバル時間の開始の時期及び終了時刻から時間Tだけ前の時期に合わせて、MAC層32およびRF回路部21は作動停止、作動再開を繰り返す。
その結果、本発明の無線LANモジュール20は、インターバル時間中の作動レベルを抑制するので、インターバル時間における消費電力が従来のAmWからBmW(B<A)へ低下して省電力を達成する。
また、図7のグラフは、図6のグラフにおける時刻t15以降の状態を示し、4回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t15〜t16)におけるC/N比検知に基づき、その時間帯での無線LAN環境は「接続不可」の第4レベルと判定され、それにより4回目のキャリアセンスの時間帯の後(時刻t16)、無線LANモジュール20はキャリアセンス自体を停止し、図5(b)の警告画面39aが表示パネル18に表示される。よって、本発明では、無線LAN環境が「接続不可」と判定されれば、もはやキャリアセンスを行わないので、キャリアセンスによる電力消費を無くすと共に、警告画面39aの表示により無線LAN環境の良好な箇所へユーザが移動するように促すことになる。なお、停止したキャリアセンスの再開は、無線通信を行うユーザからの指示を操作部19で受け付けることにより行われる。
図8は、図4(a)のメニュー画面35での設定操作により、チャンネル1〜13の中で1つのチャンネルが選択され、選択された単一のチャンネルに対して間欠的なキャリアセンスを行う場合の状況の一例を示した無線LANモジュール20のタイムチャート的なグラフである。単一のチャンネルに対する間欠的なキャリアセンスにおいても、上述したような処理が行われる。
具体的に図8のグラフでは、最初の単一のチャンネルに対してキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t20)のC/N比検知に基づき無線LAN環境は「悪」の第3レベルと判定され、それにより最初のインターバル時間(時刻t20〜t21)は40秒になっている(図5(a)の設定テーブル40参照)。また、2回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t21〜t22)におけるインターバル時間の変更処理により、C/N比検知に基づく無線LAN環境は「中」の第2レベルと判定され、それにより2回目のインターバル時間(時刻t22〜t23)は5秒に変更されている。さらに、3回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t23〜t24)におけるインターバル時間の変更処理により、C/N比検知に基づく無線LAN環境は「接続不可」の第4レベルと判定され、それにより3回目のキャリアセンスを行う時間帯の終了後(時刻t24)、無線LANモジュール20はキャリアセンス自体を停止する。この際、携帯型音楽再生装置10では警告画面39aを表示する。
また、図8のグラフにおいても、無線LANモジュール20は、各インターバル時間に合わせてMAC層32およびRF回路部21の作動を停止させるので、単一のチャンネルに対して間欠的なキャリアセンスを行う場合でも更なる省電力化を実現している。なお、1つのチャンネル当たりの処理時間は理論上、約100m秒であり、各キャリアセンスを行う時間帯の(時刻0〜t20、t21〜t22、t23〜t24)の時間は、種々の無線通信状況の影響を受けて処理時間が長引いても確実に処理を行えるように100m秒プラスアルファの時間になっている。そのため、図8のグラフでは、全チャンネルに対してキャリアスキャンを行う図6のグラフに示す場合に比べて、間欠的なキャリアセンスに対する全消費電力は低めになり、更なる消費電力の低減を図れる。
なお、本発明に係る無線通信装置は、上述した無線LANモジュール20の形態に限定されるものではなく、種々の変形例が存在する。先ず、無線LAN環境を判別するために用いる基準レベルデータ34に含まれる基準レベル34a〜34cの数は、3個に限定されるものではなく、無線LANモジュール20の仕様、及びグレード等に応じて適宜増減可能である。例えば、基準レベルの数を3個より多くした場合は、判別可能な無線LAN環境のレベルを多くでき、一段と細かいレベル分けを行って無線LAN環境に合わせた省電力処理及びキャリアセンスの停止処理を行える。また、逆に、基準レベルの数を3個より少なくした場合は、無線LAN環境のレベル判別に係る処理の負担を低減でき、特に基準レベルを1個にしたときは、C/N比の検知結果に基づいて、検知結果が基準レベル以上であるか又は基準レベル未満であるかと云う簡潔な処理でレベル分けを行える。
なお、基準レベルを1個にするときは、単一の基準レベルの内容は、上述した第1基準レベルと同様に良好なレベルの無線通信環境(無線LAN環境)と、通常レベル(普通レベルに相当)の無線LAN環境との境界に相当するレベルに設定すれば、無線通信環境が良好なレベルと、通常レベルとにおいて同等の接続確立性を確保できるので好適となる。
また、C/N比の検知結果に基づく無線LAN環境のレベル判定処理は、毎回のキャリアセンスごとに行う以外に、所定数のキャリアセンスごとに行ってもよい。
図9のグラフは、2回のキャリアセンスのうち1回の割合で無線LAN環境のレベル判定処理を行う場合を示している。即ち、最初のキャリアセンスを行う時間帯(時刻0〜t30)におけるC/N比検知に基づき無線LAN環境は「中」の第2レベルと判定され、以降、その後に続く2つのキャリアセンスの時間帯間のインターバル時間(時刻t30〜t31、t32〜t33)を、第2レベルに対応する5秒に変更している。なお、この場合、2回目のキャリアセンスを行う時間帯(時刻t31〜t32)では、C/N比検知に基づく無線LAN環境の判定処理を無線LANモジュール20は行っていない。また、3回目のキャリアセンスの時間帯(時刻t33〜t34)におけるC/N比検知に基づき無線LAN環境は「良」の第1レベルと判定され、以降、その後に続く2つの各キャリアセンスの時間帯間のインターバル時間(時刻t34〜t35、t36〜t37)は、第1レベルに対応した10秒に変更されている。
このように図9のグラフに示す処理パターンでは、2回のキャリアセンスの時間帯ごとに無線LAN環境のレベル判定処理が行われるため、図6および図8に示すグラフのように1回のキャリアセンスの時間帯ごとにレベル判定処理を毎回行う場合に比べてCPU27の処理負担を低減できる。また、無線LAN環境の変動が小さいほど、無線LAN環境のレベル判定処理を行う頻度を下げて、CPU27の処理負担を低減することが好適であり、3回以上のキャリアセンスの時間帯ごとにレベル判定処理を行うことも勿論適用可能である。なお、このように所定回数ごとにレベル判定処理を行うには、CPU27がレベル判定処理を行う割合に係るキャリアセンス時間帯の回数を計数し、計数した数値が設定した割合に達したキャリアセンスの時間帯のときにレベル判定処理を行うことになる。
図10は、変形例の無線LANモジュール50を示している。変形例の無線LANモジュール50は、図2のCPU27のソフトウエア的に行われるMAC層32の処理部分をハード的な回路で置き換えたような構成になっていることが特徴である。具体的に変形例の無線LANモジュール50は、ソフト的に機能するCTS回数検知ブロック30a及びキャリア数検知ブロック30bを含むUpperMAC30、並びにLowerMAC31等と、図1に示すRF回路部21とに対応したハード的な各種回路51〜54をそれぞれ設けると共に、これらの各回路51〜54を制御する回路制御部55、及びメインモジュール11との接続インタフェース57を、無線LANモジュール50は設けている。
RF回路51は、図1のRF回路部21に対応した処理を行う回路であり、キャリア強度の検知処理を行う強度検知部51a(キャリアの電力強度を検知する手段に相当)、及びC/N検知の処理を行うC/N検知部51b(雑音成分に係る値を検知する手段に相当)を含んでいる。アクセス制御回路52は、図2のUpperMAC30の各ブロック30a、30bを除いた部分、及びLowerMAC31に対応した部分である。また、CTS回数検知回路53(CTSの受信回数を検知する手段に相当)は、図2のCTS回数検知ブロック30aに対応した処理を行う回路であり、キャリア数検知回路54(キャリア数を検知する手段に相当)は、図2のキャリア数検知ブロック30bに対応した処理を行う回路である。なお、この変形例の無線LANモジュール50ではRF回路51、アクセス制御回路52、CTS回数検知回路53、及びキャリア数検知回路54が、無線通信に係るアクセス制御を行う処理部分(アクセス制御手段)に相当する。
さらに、回路制御部55は内部メモリ56を有し、この内部メモリ56にプログラム、メニューデータ、基準レベルデータ、設定テーブル、警告画面データ等を記憶している。回路制御部55は、内部メモリ56に記憶されたプログラムに基づき無線LAN環境の検知処理を行って無線LAN環境のレベルを判定し、判定したレベル結果に応じて各回路51〜54の作動停止を伴うインターバル時間の変更処理、又はキャリアセンス自体の停止処理を行う。
また、無線LANモジュール20、50の仕様簡略化を図る場合は、図4(a)のメニュー画面35を用いた設定処理を省略して、キャリアセンスの対象を全チャンネル又は特定のチャンネルに固定することも可能である。さらに、図4(b)のメニュー画面36を用いた設定処理を省略し、各レベルに対応付ける時間を固定にしてもよい。さらにまた、処理内容の簡略化を図るときは、間欠的なキャリアセンスのインターバル時間におけるアクセス制御に係る処理部分の停止処理を省略してもよい。
また、無線LAN環境が接続不可のレベルである場合で、キャリアセンス自体を停止するときに、停止を表す旨の出力内容は、図5(b)の警告画面39aに限定されるものではなく、警告音データに応じた音声を出力すること、または警告灯を新たに設けて警告灯を点灯または点滅させるデータを出力すること等も適用可能である。さらに、仕様を簡略化するときは、キャリアセンス自体の停止を表すデータの出力処理を省略してもよい。
さらにまた、上述した無線LANモジュール20では、無線LAN環境のレベルを判定するための検知は、C/N比に基づいて行うようにしているが、C/N比の検知の替わりに他の検知内容に基づき無線LAN環境に係る値を検知してもよい。例えば、図2に示すCTS回数検知ブロック30aで、キャリアセンス時にCTS(受信準備完了信号)の受信回数を計数して検知し、検知した受信回数に基づきCPU27が無線LAN環境に係る値に応じたレベル判定を行う。この場合、図1に示す無線LANモジュール20のメモリ26で記憶される基準レベルデータ34は、CTSの受信回数に対応したものになっており、例えば第1基準レベル34aとして「1回」、第2基準レベル34bとして「3回」、第3基準レベル34cとして「5回」と云う値が設定される。なお、CTSの受信回数に基づく無線LAN環境のレベル判定では、C/N比の場合とは逆に、CTSの受信回数が少ないほど無線LAN環境のレベルが良好となるため、CTSの受信回数(検知結果)が基準レベルを超える又は基準レベル未満であるかは、C/N比の場合と逆の見方に基づきCTSの受信回数と、各基準レベル34a〜34cとを比較してレベル判定を行う。
具体的には、CTSの受信回数が「0回」のときは、「1回」の第1基準レベル34aを超える無線LAN環境のレベルに相当するため、「良」の第1レベルと判定される。また、CTSの受信回数が「1回」または「2回」のときは、「3回」の第2基準レベル34bを超え且つ「1回」の第1基準レベル34a以下の無線LAN環境のレベルに相当するため、「中」の第2レベルと判定される。さらに、CTSの受信回数が「3回」または「4回」のときは、「5回」の第3基準レベル34cを超え且つ「3回」の第2基準レベル34b以下の無線LAN環境のレベルに相当するため、「悪」の第3レベルと判定される。さらにまた、CTSの受信回数が「5回」より多いときは、「5回」の第3基準レベル34c以下の無線LAN環境のレベルに相当するため、「接続不可」の第4レベルと判定される。
このように、CTSの受信回数に基づき各レベルが判定された後は、上記と同様に、図5(a)の設定テーブル40の対応関係に基づいてインターバル時間の変更又はキャリアセンス自体の停止が行われる。なお、CTSの受信回数に基づくレベル判定でも上述した変形例と同様に、基準レベルの個数を増減してレベル分けすることが可能であり、さらに、このようなCTSの受信回数に基づき無線LAN環境のレベルを判別する変形例は、図10に示す無線LANモジュール50でも適用できる。
また、無線LAN環境のレベル判定は、アクセス可能なアクセスポイント(無線通信中継機)から発せられる搬送波の数に基づいて行うことも可能である。この場合は、図2に示すキャリア数検知ブロック30bで、アクセス可能なアクセスポイントの使用可能なキャリア数(データ送信に使用可能なキャリアの数)を計数して検知し、この検知した数に基づきCPU27が無線LAN環境に係る値に応じたレベル判定を行う。このようなレベル判定を行うときは、図1に示す無線LANモジュール20のメモリ26で記憶される基準レベルデータ34を、計数した搬送波の数に対応したものにする必要があり、例えば第1基準レベル34aとして「4回」、第2基準レベル34bとして「1回」、第3基準レベル34cとして「0回」と云う値が設定される。なお、搬送波の数に基づく無線LAN環境のレベル判定は、搬送波の数が多いほどレベルが良好となり、このような見方に基づいて計数した搬送波の数と、各基準レベル34a〜34cとを比較してレベル判定を行う。
具体的には、計数した搬送波の数が「5回」以上のときは、「4回」の第1基準レベル34aを超える無線LAN環境のレベルに相当するため、「良」の第1レベルと判定される。また、計数した搬送波の数が「2回」から「4回」のときは、「1回」の第2基準レベル34bを超え且つ「4回」の第1基準レベル34a以下の無線LAN環境のレベルに相当するため、「中」の第2レベルと判定される。さらに、計数した搬送波の数が「1回」のときは、「0回」の第3基準レベル34cを超え且つ「1回」の第2基準レベル34b以下の無線LAN環境のレベルに相当するため、「悪」の第3レベルと判定される。さらにまた、計数した搬送波の数が「0回」のときは、「0回」の第3基準レベル34c以下の無線LAN環境のレベルに相当するため、「接続不可」の第4レベルと判定される。
このように、アクセス可能なアクセスポイントから発せられる搬送波の数に基づき各レベルが判定された後は、図5(a)の設定テーブル40の対応関係に基づいてインターバル時間の変更又はキャリアセンス自体の停止が行われる。なお、搬送波の数に基づくレベル判定でも上述した変形例と同様に、基準レベルの個数を増減してレベル分けすることが可能であると共に、この変形例も図10に示す無線LANモジュール50に適用できる。
さらにまた、無線LAN環境のレベル判定は、キャリアの電力強度に基づいて行うことも可能である。この場合は、図1に示すRF回路部21の強度検知回路22でキャリアセンス時にキャリアの電力強度を検知し、検知した電力強度に基づきCPU27が無線LAN環境に係る値に応じたレベル判定を行う。このようなレベル判定を行うときは、図1に示す無線LANモジュール20のメモリ26で記憶される基準レベルデータ34を、キャリアの電力強度に対応したものにする必要があり、例えば第1基準レベル34aとして「−15(dBm)」、第2基準レベル34bとして「−45(dBm)」、第3基準レベル34cとして「−70(dBm)」と云う値が設定される。なお、キャリアの電力強度に基づく無線LAN環境のレベル判定は、電力強度が大きいほどレベルが良好となり、このような見方に基づいて検知したキャリアの電力強度と、各基準レベル34a〜34cとを比較してレベルを判定する。
具体的には、検知したキャリアの電力強度が「−15(dBm)」以上のときは、「−15(dBm)」の第1基準レベル34a以上の無線LAN環境のレベルに相当するため、「良」の第1レベルと判定される。また、検知したキャリアの電力強度が「−45(dBm)」以上「−15(dBm)」未満のときは、「−45(dBm)」の第2基準レベル34b以上で「−15(dBm)」の第1基準レベル34a未満の無線LAN環境のレベルに相当するため、「中」の第2レベルと判定される。さらに、検知したキャリアの電力強度が「−70(dBm)」以上「−45(dBm)」未満のときは、「−70(dBm)」の第3基準レベル34c以上で「−45(dBm)」の第2基準レベル34b未満の無線LAN環境のレベルに相当するため、「悪」の第3レベルと判定される。さらにまた、検知したキャリアの電力強度が「−70(dBm)」未満のときは、「−70(dBm)」の第3基準レベル34c未満の無線LAN環境のレベルに相当するため、「接続不可」の第4レベルと判定される。
このように、検知したキャリアの電力強度に基づき各レベルが判定された後は、図5(a)の設定テーブル40の対応関係に基づいてインターバル時間の変更又はキャリアセンス自体の停止が行われる。なお、キャリアの電力強度に基づくレベル判定でも上述した変形例と同様に、基準レベルの個数を増減してレベル分けすることが可能であると共に、この変形例も図10に示す無線LANモジュール50に適用できる。
また、これらの無線LAN環境のレベル判定に適用する条件(C/N比検知、CTS受信回数、アクセスポイントの搬送波の数、キャリアの電力強度)は2以上を適宜組み合わせて、無線LAN環境のレベル判定を行うことも可能である。このように2以上の条件を組み合わせるときは、例えば、図11に示すような変形例の設定テーブル60を用いることになる。
図11の設定テーブル60は、図5(a)の設定テーブル40の替わりに、C/N比の検知および搬送波の数の2条件を組み合わせた変形例で無線LAN環境に係る値に応じたレベル判定を行うために使用されるものである。この設定テーブル60では、C/N比検知で分けられる第1レベル〜第3レベルのそれぞれに、計数した搬送波数に基づき分けられる第1レベル〜第3レベルを対応付けると共に、搬送波数で分けられた各レベルごとに設定内容を規定している。また、設定テーブル60は、C/N比検知に基づくレベルと、搬送波数に基づくレベルのいずれか一方でも第4レベルに判定されると、キャリアセンス自体を停止することを規定している。そのため、どのような条件が適用されても、無線LAN環境が第4レベルに判定されると、自動的にキャリアセンスが停止されて無駄に電力を消費することが防止される。
なお、C/N比検知、CTS受信回数、アクセスポイントの搬送波数、キャリアの電力強度の少なくとも2つに対して他の組み合わせ方を行った場合でも、図11の設定テーブル60に準じた内容の設定テーブルを用いて、無線LAN環境に係る値に応じたレベルを判定し、インターバル時間の変更又はキャリアセンス自体の停止処理を行うことになる。
また、本発明に係る無線通信装置は、図1、10に示すような無線LANモジュール20、50の形態で、携帯型音楽再生装置10に組み込まれることに限定されるものではなく、パーソナルコンピュータ、PDA、テレビジョン装置等の情報処理装置、及び携帯電話機、携帯型画像表示装置等の各種機器にも組み込むことが適用できる。また、本発明の無線通信装置は、各種機器に内蔵して組み込む以外に、独立した無線通信装置の構成にしてもよい。例えば、各種接続規格(PCMCIA規格、CFカード規格、USB規格、IEEE1394等)に対応したカード型形状で構成し、様々な情報処理装置と接続できる形態にしてもよい。さらに本発明の無線通信装置が対象とする無線通信は、無線LANに限定されるものではなく、間欠的なキャリアセンスを行うものであれば、Wireless USB、UWB(Ultra Wide Band)等の各種無線通信に対しても適用可能である。