以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の第1の側面は、互いの間に電圧が印加される第1の電極(例えば、図2の下部電極42)および第2の電極(例えば、図2の上部電極48)と、前記第1の電極の表面に形成され、前記第1の電極を前記第2の電極から構造的に絶縁する絶縁部(例えば、図2の絶縁膜43および撥水膜44)と、前記絶縁部と前記第2の電極との間に配置される、極性を有する液体(例えば、図2の極性液体47)とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して前記絶縁部に電界を印加することにより、前記絶縁部の表面の前記液体に対する濡れ性を制御し、前記液体の変形または変位を発生させる液体デバイス(例えば、図2の液体デバイス31)であって、前記絶縁部が、第1の層(例えば、図2の絶縁膜43)と第2の層(例えば、図2の撥水膜44)の2層構造により形成され、前記第1の層は、前記第2の層と前記第1の電極表面との間に形成され、前記第2の層よりも高誘電性ならびに高絶縁性を有し、前記第2の層は、前記第1の層と前記液体との間に形成され、前記第1の層よりも高撥水性を有する液体デバイスである。
前記第1の電極は、複数の電極からなり、前記第1の電極全体の表面が平面でなく、前記第1の層は、前記第1の電極全体の表面の凹凸を吸収し、前記第1の層の表面が平面となるように形成されている(例えば、図6)ようにすることができる。
本発明の第2の側面は、互いの間に電圧が印加される第1の電極(例えば、図2の下部電極42)および第2の電極(例えば、図2の上部電極48)と、前記第1の電極の表面に形成され、前記第1の電極を前記第2の電極から構造的に絶縁する絶縁部(例えば、図2の絶縁膜43および撥水膜44)と、前記絶縁部と前記第2の電極との間に配置される、極性を有する液体(例えば、図2の極性液体47)とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して前記絶縁部に電界を印加することにより、前記絶縁部の表面の前記液体に対する濡れ性を制御し、前記液体の変形または変位を発生させる液体デバイス(例えば、図2の液体デバイス31)を製造する液体デバイス製造装置(例えば、図9の製造装置101)であって、前記第1の電極が配置された透明な基板(例えば、図11の透明電極付き基板201)表面に、前記絶縁部として、高誘電性ならびに高絶縁性を有する第1の層(例えば、図12の絶縁膜202)を形成させる第1の形成手段(例えば、図9の絶縁膜形成部133)と、前記第1の形成手段により形成された前記第1の層の表面に、前記絶縁部として、前記第1の層よりも高撥水性を有する第2の層(例えば、図13の撥水膜203)を形成させる第2の形成手段(例えば、図9の撥水性薄膜形成部134)とを備える液体デバイス製造装置である。
前記第1の形成手段は、前記第1の電極が複数の電極からなり、前記第1の電極全体の表面が平面でない場合、前記第1の電極全体の表面の凹凸を吸収して表面が平面となるように前記第1の層を形成させる(例えば、図6)ことができる。
本発明の第2の側面はまた、互いの間に電圧が印加される第1の電極(例えば、図2の下部電極42)および第2の電極(例えば、図2の上部電極48)と、前記第1の電極の表面に形成され、前記第1の電極を前記第2の電極から構造的に絶縁する絶縁部(例えば、図2の絶縁膜43および撥水膜44)と、前記絶縁部と前記第2の電極との間に配置される、極性を有する液体(例えば、図2の極性液体47)とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して前記絶縁部に電界を印加することにより、前記絶縁部の表面の前記液体に対する濡れ性を制御し、前記液体の変形または変位を発生させる液体デバイス(例えば、図2の液体デバイス31)を製造する液体デバイス製造装置(例えば、図9の製造装置101)の液体デバイス製造方法であって、前記第1の電極が配置された透明な基板(例えば、図11の透明電極付き基板201)表面に、前記絶縁部として、高誘電性ならびに高絶縁性を有する第1の層(例えば、図12の絶縁膜202)を形成させる第1の形成ステップ(例えば、図10のステップS3)と、前記第1の形成ステップの処理により形成された前記第1の層の表面に、前記絶縁部として、前記第1の層よりも高撥水性を有する第2の層(例えば、図13の撥水膜203)を形成させる第2の形成ステップ(例えば、図10のステップS4)とを備える液体デバイス製造方法である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図2は、本発明を適用した液体デバイスの構成例を説明するための断面図である。
液体デバイスとは、静電的な濡れ性を制御するエレクトロウェティングを利用することで、液体の変形ならびに変位を発生させ、その現象を用いることで、所望の効果を得る電気光学素子である。図2には、自分自身を図中上下方向に透過する透過光に対して光学的な影響を及ぼす液体デバイス31の構成例が示されている。
図2に示されるように、液体デバイス31は、下部基板41、下部電極42、絶縁膜43、撥水膜44、リブ45-1、リブ45-2、無極性液体46、極性液体47、上部電極48、および上部基板49よりなる多層構造を形成している。
下部基板41および上部基板49は、ガラスまたはシリコン等の、光を透過する透明の部材により形成される。
下部電極42および上部電極48は、後述するように絶縁膜43および撥水膜44に対して電圧を印加するための電極であり、例えばITO(酸化インジウムスズ)やZnO(酸化亜鉛)等の透明電極により形成される。もちろん、これらと同様の性質を有する他の素材を使用してもよい。この液体デバイス31の下部電極42および上部電極48には、後述するように制御部51により電圧が印加される。
絶縁膜43および撥水膜44は、下部電極42および上部電極48を構造的に絶縁させるための絶縁部である。絶縁膜43は、例えば、高分子系材料や無機系材料のような、少なくとも撥水膜44よりも絶縁性が高く、誘電率も高い材質のものが用いられる。この絶縁膜43の材質の具体的な例については後述する。
撥水膜44は、可動部分となる無極性液体46や極性液体47と接触するため、これらに対して疎水性の大きい材質であることが望ましく、少なくとも絶縁膜43より撥水性の高い物質により形成される。また、上述したように、撥水膜44は、下部電極42および上部電極48を構造的に絶縁させるための層でもあるので、誘電率も大きい材質である方が望ましい。例えば、フッ素系のポリマーであるPVdFやPTFE等により形成される。他には、例えば、デュポン社製のテフロン(登録商標)AF(AF1601S系)や、旭硝子社製サイトップ等が挙げられる。ただし、これらの撥水膜の比誘電率はいずれも2程度であり、絶縁膜43の比誘電率と比較して極めて小さいものである。もちろん、これらと同様の性質を有する他の素材を使用してもよい。
リブ45-1およびリブ45-2は、並べられた液体デバイス同士で光が透過する部分を区切る隔壁であり、その光が透過する部分に塗布される無極性液体46(および極性液体47の一部)の周囲を囲むように形成される。液体デバイス31は、単体で利用することもあるが、平面状に複数配置した状態で利用することも多い。例えば、画像表示装置や撮像装置等において、1つの液体デバイス31が1画素に対応するように、複数の液体デバイス31が平面状に配置されて利用される場合がある。リブ45-1およびリブ45-2は、このような場合に隣り合う液体デバイス同士を区切る隔壁である。
つまり、図2は断面図なので、2つに分離されているように示されているが、実際には、リブ45-1およびリブ45-2は繋がっており、1つの部材として形成される。なお、以下においてリブ45-1とリブ45-2を互いに区別して説明する必要の無い場合、リブ45と称する。また、このリブ45に囲まれた部分をリブピクセルと称する。このリブ45は、極性液体47と無極性液体46に溶解しない事、および反応しない事が望まれ、典型的には高分子の樹脂が用いられ、例えばエポキシ系やアクリル系の樹脂が用いられる。もちろん、これらの樹脂と同様の性質を有する他の素材を使用してもよい。
無極性液体46および極性液体47は、リブピクセルに形成される。これらの2液滴は、互いに混在せずに分離するので2つの層を形成する。無極性液体46には、例えば、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、若しくはウンデカン等の炭化水素系の材料、シリコンオイル等が使用される。極性液体47には、典型的には、水や塩化カリウムや塩化ナトリウム等の電解質を溶かした水溶液が使用される。
上述したように、この液体デバイス31に対して、電圧を印加するための制御部51が設けられる。制御部51には、電源61とスイッチ部62が設けられている。スイッチ部62は、両側端子の間を電気的に接続するオン動作と、両側端子の間を電気的に切断するオフ動作の2つの状態を有する。電源61の電源電圧は、所定の範囲内で可変であり、その範囲内であれば任意に設定可能である。この電源電圧の範囲は任意であるが、例えば、最小値を0ボルトとし、最大値を、後述するように無極性液体46が十分に変形し、かつ、絶縁破壊等の不具合が生じない程度の電圧としてもよい。
制御部51は、スイッチ部62の動作と電源61の電源電圧の制御により、下部電極42および上部電極48の間に、可能な範囲内で任意の大きさの電圧を印加することができるようになされている。例えば、図2の例の場合、電源61の一方の電極は、スイッチ部62を介して上部電極48に接続され、電源61の他方の電極は、下部電極42に接続されている。スイッチ部62がオン動作、すなわち接続されると、電源61において設定された電圧が下部電極42および上部電極48に印加され、スイッチ部62がオフ動作、すなわち、切断されると、下部電極42および上部電極48間の電位差がゼロになる。この電源61は、どのような電源であってもよく、スイッチ部62も、電源61による下部電極42と上部電極48との間への電圧の印加を制御することができるものであればどのようなものであってもよい。
このように上部電極48と下部電極42の間に電圧が印加されることにより、極性液体47に電界が生じるようになされている。つまり、上部電極48と下部電極42との間に任意の電圧が印加されることにより、極性液体47と撥水膜44の濡れ性(表面張力)がその電圧の大きさに応じて変化するので、その極性液体47の変形(移動)によって無極性液体46が変形(移動)させられる。この無極性液体46の変形(移動)量に応じて、液体デバイス31のリブピクセル内を図中上下方向に透過する透過光に対して、透過率を制御したり、光路を制御したりするなどの、光学的な影響を及ぼす。
なお、無極性液体46は、極性液体47と混在せず、電圧印加により撥水膜44と極性液体47との濡れ性の変化によって、結果として変形(移動)するものであればどのような液体であってもよい。また、極性液体47は、無極性液体46と混在せず、下部電極42と上部電極48との間に印加された電圧により撥水膜44との濡れ性が変化するような、透明な液体であればどのようなものであってもよい。また、応答速度向上のために、無極性液体46および極性液体47は低粘度であることが望ましい。
このように、本発明を適用した液体デバイス31においては、下部電極42を上部電極48より構造的に絶縁する絶縁部として、撥水膜44の他に、絶縁膜43を新たに設けている。
図3の上側に示される液体デバイスアレイ71Aは、従来の液体デバイスをアレイ状に配置したものであり、図3の下側に示される液体デバイスアレイ71Bは、本発明を適用した液体デバイス31をアレイ状に配置したものである。
図3に示されるように、従来の液体デバイスアレイ71Aにおいては、下部電極42の上面に撥水膜44のみが形成されているのに対し、本発明を適用した液体デバイスアレイ71Bにおいては、下部電極42と撥水膜44との間に絶縁膜43が新たに形成されている。
撥水膜44は、疎水性を有するとともに絶縁性も有するので、これだけでも下部電極42と上部電極48を構造的に絶縁させることが可能であるが、絶縁強度が弱く、十分な強度を保つためには膜厚を厚くする必要がある。しかしながら膜厚を厚くすると誘電率が低下するため、駆動電圧が高くなり消費電力の増大等の恐れがある。
そこで、本発明を適用した液体デバイスアレイ71Bにおいては、下部電極42と撥水膜44との間に、撥水膜44よりも絶縁性が高く、かつ、誘電率の高い絶縁膜43を新たに形成することにより、絶縁強度を補い、絶縁破壊を抑制する。つまり、液体デバイスアレイ71Bは、絶縁性を絶縁膜43により実現し、撥水性を撥水膜44により実現している。また、液体デバイスアレイ71Bは、撥水性と高比誘電性は相反する特性であり撥水膜44において実現が困難であった高誘電率化も、絶縁膜43により実現している。さらに、絶縁膜43により、強度が強く保たれるので、撥水膜44の薄膜化も実現される。
絶縁膜43の素材は、より高絶縁性かつ高誘電率を有するものが望ましく、例えば、高分子系材料ならびに無機系材料が挙げられる。高分子材料はその分子設計より高誘電性を有するものがあるが、それに比べて、薄膜時における電気的な安定性や絶縁破壊強度はそれほど高くない。これに対して、無機系材料では高絶縁性かつ高誘電性を有するものがある。例えば、Spin-On-glass(SOG)がある。SOGはシリカ系の無機コーティング材であり、スピンコート法などでその溶液を被覆、成膜させ、比較的低温で焼成することによりガラス化させるものである。このシリカ系の無機絶縁コーティング材の例としては、電極保護用絶縁ハードコート膜として市販されているAT-201、AT-732、AT-902(日産化学工業株式会社製)がある。これらの比誘電率および焼成温度を図4の表に示す。
図4の表に示されるように、これらのコーティング材の焼成温度は300℃程度であり、基板にガラスを用いたときにも適応可能であり、一般的なSOGの焼成温度500℃以上よりも低く、液体デバイスの製造が容易になる。また、シリカ(SiO2)としての比誘電率がおおよそ2であるのに対し、6.5乃至20と極めて大きく、比誘電率も約2程度である一般的な撥水膜44と比べても極めて大きいので、従来の液体デバイスよりも高誘電率化を実現することができる。もちろん、絶縁膜43を、これらと同様の性質を有する他の素材を使用して形成するようにしてもよい。
さらに、液体デバイスアレイにおいては、図5に示されるように下部電極42がパターニングを施されている場合がある。図5の上側に示される液体デバイスアレイ71Cは、その場合の、従来の液体デバイスをアレイ状に配置したものであり、図5の下側に示される液体デバイスアレイ71Dは、その場合の、本発明を適用した液体デバイス31をアレイ状に配置したものである。
例えば、図3に示される液体デバイスアレイ71Aや液体デバイスアレイ71Bの場合、液体デバイスアレイを構成する各液体デバイスには共通の電圧が印加されるので、各液体デバイスは、互いに同様に動作する。これに対して、図5に示される液体デバイスアレイ71Cや液体デバイスアレイ71Dの場合、下部電極42A乃至下部電極42Cのように各液体デバイスの下部電極42が互いに独立しており、それぞれに対して異なる電圧の印加が可能になる。つまり、各液体デバイスが互いに独立して動作することができる。
図3に示されるように、下部電極42が液体デバイスアレイ全体において層として形成され、パターニングが施されていない場合(所謂、ベタ電極の場合)、下部電極42の厚さは、液体デバイスアレイ全体において均一であるが、図5に示されるように、下部電極42にパターニングが施されている場合、下部電極42の厚さが、液体デバイスアレイ全体均一にならない。さらに、各液体デバイスにおいても下部電極42の厚さが全体で均一にならないこともある。
このような場合、図5の上側に示されるように、従来の液体デバイスアレイ71Cにおいては、下部電極42の凹凸により撥水膜44にも凹凸が形成されるが、図5の下側に示されるように、本発明を適用した液体デバイスアレイ71Dにおいては、絶縁膜43により上面が平坦化されるため、撥水膜44に凹凸が生じない。
従って、図6の上側に示されるように、従来の液体デバイスアレイ71Cにおいては、点線の円で囲まれた部分のように、電極形状によって撥水膜44の膜厚が局所的に薄くなる部分が発生する恐れがあった。また、点線の円で囲まれた電極エッジ部は、電界集中する部分でもあり、このため絶縁破壊が発生しやすくなる恐れがあった。換言すれば、絶縁破壊を低減させるために、さらに撥水膜44の膜厚を厚くする必要が生じ、誘電率が低下する恐れもあった。これに対して、図6の下側に示されるように、本発明を適用した液体デバイスアレイ71Dにおいては、下部電極42上に形成される絶縁膜43により、下部電極42の凹凸を吸収して上面を平坦化するので、撥水膜44はその平面上に均一の膜厚で塗布される。従って、液体デバイスアレイ71Dは、電界集中する電極エッジ部からの絶縁破壊の発生を抑制することができる。換言すれば、絶縁破壊が抑制されるので、比誘電率が比較的低い撥水膜44の薄膜化を実現し、液体デバイスの高誘電率化を図ることができる。
以下に、実験結果を示す。なお、この実験は、絶縁膜43の効果を確認することが目的であるため、液体デバイス31の構成の内、実験に不要な構成は簡略化している。
最初に、図3に示されるような、下部電極42の微細パターニングが施されていない、ベタ電極構造において、従来のように撥水膜単独のものと、本発明のように絶縁膜43と撥水膜44の二層化構造のものとで絶縁破壊の発生条件を比較した。
ここでは、図2に示される多層化構造において、無極性液体46を省略し、極性液体47として水のみを、撥水膜44の層と上部電極48の層との間に充填させている。また、下部電極42と上部電極48との間の距離は100μmとし、この下部電極42と上部電極48の間に30Hzの矩形波を、その振幅電圧を変えて印加し、絶縁破壊によって生じる膜の劣化(茶色への変色)ならびに水の電気分解によるガス発生を確認した。図7に示されるグラフは、その絶縁破壊が確認されたときの振幅電圧(以下において絶縁破壊振幅電圧と称する)と撥水膜44の膜厚(以下において撥水膜厚と称する)との関係を示している。
なお、図7において、白丸(○)は、従来の液体デバイスの構成のように、絶縁膜43を設けず、撥水膜44のみの場合の絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示しており、黒丸(●)は、無機系材料の絶縁膜43の膜厚が100nmの場合の絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示しており、黒四角(■)は、無機系材料の絶縁膜43の膜厚が50nmの場合の絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示している。
図7に示されるように、白丸で示される撥水膜44のみの場合、膜厚が500nm以下になると、振幅20V程度で容易に絶縁破壊が発生してしまう。これに対して、黒四角で示されるように、膜厚50nmの絶縁膜43を付与すると、撥水膜44の膜厚が100nmでも20V程度までは絶縁破壊が生じなくなる。さらに膜厚100nmの絶縁膜43を付与すると、撥水膜44の膜厚が100nmでも40V程度まで絶縁破壊が生じなくなる。つまり、絶縁膜43を設けることにより、明らかに絶縁破壊の発生が抑制される。
また、比誘電率が2で膜厚が500nmの撥水膜44の静電容量は1m2単位面積あたり3.54×10-5Fである。これに対して、比誘電率が20で膜厚が100nmの絶縁膜43と、比誘電率が2で膜厚が100nmの撥水膜44の2層の合成静電容量は1.16×10-4Fであり、後者の方が高静電容量化となる。すなわち、同じ印加電圧でも、本発明のような絶縁膜43と撥水膜44とによる2層化構造を形成する場合の方が、従来のような撥水膜44単独の場合よりも、エレクトロウェティングによる発生力は約4.5倍大きくなる。
次に、同様の実験を、図5に示されるような、下部電極42に微細パターニングが施された、パターニング電極構造の液体デバイスに対して行った。
つまり、この場合も、図2に示される多層化構造において、無極性液体46を省略し、極性液体47として水のみを、撥水膜44の層と上部電極48の層との間に充填させている。また、下部電極42と上部電極48との間の距離は100μmとし、この下部電極42と上部電極48の間に30Hzの矩形波を、その振幅電圧を変えて印加し、絶縁破壊によって生じる膜の劣化(茶色への変色)ならびに水の電気分解によるガス発生を確認した。
なお、下部電極42として、下部基板41上に、ITOの電極を、膜厚30nm、電極幅30μm、電極間隔5μmでライン状に複数配置している。以下においては、このようにライン状に配置された電極をライン電極と称する。
図8に示されるグラフは、この場合の、絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示している。図8において、白丸(○)は、従来の液体デバイスの構成のように、絶縁膜43を設けず、撥水膜44のみの場合の絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示している。このとき、隣り合うライン電極同士で印加する矩形波の位相を揃えており、絶縁破壊振幅電圧は、下部電極42と上部電極48との間の電圧を示している。
また、白四角(□)は、白丸の場合と同様に撥水膜44のみの場合の絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示しているが、このとき、隣り合うライン電極同士で印加する矩形波の位相は180度ずつずらしている。つまり、この場合、ライン電極間では振幅電圧の2倍の電位差が生じる。なお、このときの絶縁破壊振幅電圧は、下部電極42同士、すなわち、ライン電極間の電位差を示している。
さらに、黒丸(●)は、液体デバイス31のように、膜厚が100nmの無機系材料の絶縁膜43を新たに設けた場合の、隣り合うライン電極同士で印加する矩形波の位相を揃えているときの絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示しており、黒四角(■)は、黒丸の場合と同様に膜厚が100nmの無機系材料の絶縁膜43を新たに設けた場合の、隣り合うライン電極同士で印加する矩形波の位相は180度ずつずらしたときの絶縁破壊振幅電圧と撥水膜厚との関係を示している。
図8に示されるように、絶縁膜43を設ける場合であっても設けない場合であっても、各ライン電極に位相を揃えた矩形波を印加するときの方が、隣り合うライン電極に互いに位相が180度ずれた矩形波を印加するときよりも負荷が小さく、絶縁破壊電圧は高くなる。
それにも関わらず、無機系材料の絶縁膜43を新たに設けた場合、負荷がより大きくなる、隣り合うライン電極に互いに位相が180度ずれた矩形波を印加するときでも、絶縁破壊電圧は、従来の撥水膜44のみの場合の、負荷がより小さくなる、各ライン電極に、位相を揃えた矩形波を印加するときよりも高くなる。つまり、パターニング電極構造の場合も、印加電圧の位相条件に関わらず、無機系材料の絶縁膜43を新たに設けたときの方が、従来の撥水膜44のみのときよりも、絶縁破壊電圧が高くなる。
ところで、撥水膜44のみの場合、絶縁破壊強度は、ベタ電極構造の最初の実験と、パターニング電極構造の今回の実験とで互いに同じになるはずであるが、実際には、今回の実験のパターニング電極構造の場合の方が低くなった。これは、撥水膜をコーティングする主溶剤が極めて特殊なフッ素を含む溶液であり、ITO電極と下地のガラス基板との濡れ性が異なるため、電極間隔5μmの微小領域と電極上の30μmとの領域でムラが発生してしまい、均一かつ緻密な撥水膜44が形成されなかったことに起因するものと推測できる。
これに対して、絶縁膜43をコーティングする場合、表面の濡れ性が均一になるので、そのようなムラが発生せず、均一かつ緻密な撥水膜44が形成される。従って、ベタ電極構造の最初の実験と、パターニング電極構造の今回の実験とで実験結果に差が生じない。つまり、絶縁膜43を形成することにより、このような濡れ性の差による撥水膜44のムラを抑制され、均一かつ緻密な撥水膜44が形成されるようになる。これにより、撥水膜44のムラによる絶縁破壊電圧の低下を抑制することができる。
なお、絶縁膜43の膜厚を50nmにした場合、隣り合うライン電極同士で印加する矩形波の位相は180度ずつずらしたときの絶縁破壊強度は、撥水膜44のみの場合と略同じであり、その効果が十分に得られなかった。つまり、十分な効果を得るためには絶縁膜43の膜厚をある程度厚くする必要がある。
次にこの本発明を適用した液体デバイス31の製造について説明する。
図9は、液体デバイス31の製造装置の主な構成例を示すブロック図である。
図9において、液体デバイス31を製造する製造装置101は、制御部111、製造部112、およびドライブ113を有している。制御部111は、実際に液体デバイス31の製造を行う製造部112の動作を制御する処理部であり、製造部112が行う液体デバイス31の製造の各工程の動作を制御する、透明電極付き基板作成部131、基板洗浄部132、絶縁膜形成部133、撥水性薄膜形成部134、ブラックマトリクス形成部135、隔壁形成部136、表面処理部137、オイル溶液塗布部138、純水注入部139、余剰オイル除去部140、および封止部141を有する。
また、ドライブ113は、必要に応じて装着された、所定のリムーバブルメディア121に記憶されている、例えば製造部112の制御に関する情報等のような、各種情報を読み出して制御部111に供給する。制御部111は、その情報を用いて製造部112の制御を行うことができる。すなわち、制御部111は、情報を記憶する記憶媒体を有しており、このドライブ113に装着されたリムーバブルメディア121を利用して最新の情報を取得して記憶し、その最新の情報に基づいて製造部112を制御することができる。
図10のフローチャートを参照して、制御部111の各処理部により実行される製造処理の流れの例を説明する。必要に応じて図11乃至図20を参照して説明する。
製造処理が開始されると、制御部111の透明電極付き基板作成部131は、ステップS1において、製造部112を制御し、ガラスやシリコン等の透明の部材を下部基板41とし、その下部基板41にITO膜等の透明電極を下部電極42として形成し、図11に示されるように、透明な、所定のサイズの透明電極付き基板201を作成する。なお、上部基板50および上部電極49も同様に生成されるので、それらの説明については省略する。
透明電極付き基板201が生成されると、基板洗浄部132は、ステップS2において、その透明電極付き基板201をLCD(Liquid Crystal Display)等のガラス基板等の洗浄工程にも用いられる洗剤等により、超音波基板洗浄機にて洗浄し、その後、脱イオン水にて十分に洗剤を除去する。さらに、基板洗浄部132は、製造部112のUVオゾンドライ処理装置においてドライ洗浄も行う。
ステップS3において、絶縁膜形成部133は、製造部112を制御し、図12に示されるように、透明電極付き基板201表面に、絶縁膜202(絶縁膜43)を成膜する。絶縁膜形成部133は、所定の膜厚になるように原液濃度を調整し、透明電極付き基板201を回転させながら溶液を滴下し、遠心力を利用して均一な膜をつけるスピンコート法により、絶縁膜202を成膜する。スパッタリング法や蒸着法などの成膜法の場合、膜厚が極めて薄すぎる、得られた膜の密度が粗で、液体等が侵入しやすいなどの問題が生じる恐れがある。スピンコート法により、無機コーティング材の溶液を被覆、成膜させることによりこれらの問題を回避することができる。絶縁膜形成部133は、絶縁膜202を成膜後、膜密度を損なわないように50℃刻みで各30分間かけて昇温し、300℃で1時間焼成する。得られる膜厚としては、50〜200nmである。さらに膜厚を厚くする必要がある場合には、この工程を繰り返す。なお、昇温速度が速い場合ならびにスピンコートの回転数を極めてゆっくりとして、最初から厚膜のものを得ようとした場合には、膜に微細な亀裂が発生するなど問題が生じる恐れがある。
撥水性薄膜形成部134は、ステップS4において、製造部112を制御し、図13に示されるように、透明電極付き基板201に成膜された絶縁膜202表面に、さらに撥水性を有する撥水膜203を成膜する。この撥水膜203の形成方法は、湿式と乾式の2つに大別される。湿式法としては、例えば、撥水性材料が溶解している溶液を用いる、スピンコート法、ディップコート法、若しくはスクリーン印刷法等があり、乾式法としては、例えば蒸着法がある。
なお、従来のように撥水膜203を単独で用いる場合、所望な絶縁性を発現させるためには、撥水膜203の膜厚は500nm以上、より好ましくは800nm以上必要であった。図13に示されるように、絶縁膜202と撥水膜203の二層化構造とする場合、撥水膜203の膜厚は100nm程度以上あればよい。このような膜厚の調整は、原液濃度ならびにスピンコーティング時の回転数の調整により実現することができる。
また、撥水性薄膜形成部134は、必要に応じて、撥水膜203表面を改質したり、汎用レジスト剤に界面活性剤を付与し、撥水面へ塗布したりするようにしてもよい。乾式法としては、例えば、紫外線オゾン処理法や酸素プラズマアッシング法等がある。なお、これらの表面処理は、処理しすぎると絶対必要な撥水性まで欠如してしまうため、必要最小量行うのが望ましい。
撥水膜203が形成されると、ブラックマトリクス形成部135は、ステップS5において、製造部112を制御して、余分な光が入射しないよいうに、各リブピクセル同士を光学的に区切るブラックマトリクスを形成する。具体的には、ブラックマトリクス形成部135は、製造部112を制御して、スピンコート法により、レジスト材料を均一に成膜した後、フォトリソ法により、露光、現像等を行い、例えば、図14に示されるように、撥水膜203上に、黒色顔料若しくは色素を含有したブラックレジストによる隔壁204-1乃至隔壁204-4を、ブラックマトリクスとして形成させる。
一般的には撥水性材料は撥油性も有しており、レジスト溶液を塗布してもその上に成膜することができない。高アスペクトのパターンが可能な化薬マイクロケム社製SU8などはその高粘度性ならびに添加してある界面活性材等の効果で成膜が可能であるが、透明性を有しており、遮光がない。そこで、ブラックレジストと呼ばれるものでも同様に界面活性材を適宜調整することで、撥水膜上に膜が形成できるようにする。これらのレジスト材料を塗布後、それぞれ標準手順(露光強度、現像条件など)に従い、所望なパターニングを形成する。
なお、図14においては、隔壁204-1乃至隔壁204-4のように4つの隔壁として示されているが、実際には、網目状に形成される。従って、隔壁204-1乃至隔壁204-4は、実際には、互いに繋がり1つの部材として形成される。なお、以下において、これらの隔壁204-1乃至隔壁204-4を互いに区別して説明する必要の無い場合、隔壁204と称する。
一般的にこのブラックマトリクスの材料の膜厚は、1(μm)乃至2(μm)程度が上限となる。そこで隔壁形成部136は、ステップS6において、製造部112を制御し、スピンコートによるレジスト塗布、露光、現像等を行い、例えば図15に示されるように、隔壁204-1乃至隔壁204-4のそれぞれの上に、例えばSU-8のような高アスペクト比で隔壁を形成できるレジスト材料による隔壁205-1乃至隔壁205-4を形成させる。
つまり、この隔壁205-1乃至隔壁205-4も、実際には網目状に形成され、互いに繋がり1つの部材として形成される。以下において、これらの隔壁205-1乃至隔壁205-4を互いに区別して説明する必要の無い場合、隔壁205と称する。
以上のように、ブラックマトリクスである隔壁204の上に、例えばSU-8による隔壁205が形成されることにより、隔壁205の高さが調整される(所望の高さの隔壁が形成される)。なお、隔壁205は、例えば、エポキシ樹脂のレジストを用い、公知のフォトリソグラフィー技術等により作製することもできる。
なお、隔壁205の高さは、レジストの濃度の設定により制御可能できる。例えば、隔壁205がSU-8を用いて形成される場合、その隔壁205の所望の厚みに応じて、主溶剤であるシクロペンタノンを用いて、予め濃度調整される。
以上のようにして隔壁205が形成されると、表面処理部137は、ステップS7において、例えば、紫外線オゾン処理法や酸素プラズマアッシング法等の乾式の方法を用いて、形成された隔壁204および隔壁205の表面処理を行う。表面処理部137は、例えば図16に示されるように、隔壁204-1乃至隔壁204-4、並びに、隔壁205-1乃至隔壁205-4のそれぞれに対して、表面処理206-1乃至表面処理206-4を施す。なお、表面処理206-1乃至表面処理206-4を互いに区別して説明する必要の無い場合、表面処理206と称する。
以下においては、この表面処理206-1が施された隔壁204-1および隔壁205-1をまとめてリブ207-1と称し、同様に、表面処理206-2が施された隔壁204-2および隔壁205-2をまとめてリブ207-2と称し、表面処理206-3が施された隔壁204-3および隔壁205-3をまとめてリブ207-3と称し、表面処理206-4が施された隔壁204-4および隔壁205-4をまとめてリブ207-4と称する。また、リブ207-1乃至リブ207-4を互いに区別して説明する必要の無い場合、リブ207と称する。
このような表面処理206により、リブ207の極性液体47に対する濡れ性が制御される。
リブの表面処理が終了すると、下部電極42と上部電極48との電極間距離を予め定められた所定の値に保つようにするために、間隙形成材を、透明電極付き基板201の外周部分、すなわち、下部基板41の、下部電極42が配置されている部分の周辺部に散布する。この間隔形成材の素材には、例えば、接着剤にシリカ球を混ぜたものやシール接着剤タイプ等が用いられる。図示は省略するが、この間隔形成材は、通常、リブ207より高くなるように散布される。
リブ207が形成されると、オイル溶液塗布部138は、ステップS8において、製造部112を制御して、例えば図17に示されるように、オイル溶液208を、無極性液体46として、そのオイル溶液208が各リブピクセル内に充填されるように、透明電極付き基板201上に全体的に塗布する。
オイル溶液208が塗布されると、純水注入部139は、ステップS9において、製造部112を制御して、例えば図18に示されるように、着色されたオイル溶液208が被覆された面へ純水209を極性液体47として流し入れる。なお、この純水209を注入する際、ディスペンサなどを用いて、純水が透明電極付き基板201の表面方向に対して、広がる速度を一定にする。また、予め純水209が満たされた水槽へオイルが被覆された基板を一定速度、一定角度で、入れ込む手法を用いるようにしてもよい。
隔壁で囲まれた領域に保持されるオイル溶液の量は、隔壁で囲まれた領域の大きさ、隔壁の高さ、場合によって注液前に隔壁に対してUVオゾン処理による濡れ性改質処理強度により規定することができる。例えば、液体レンズ可変デバイス系においては、隔壁で囲まれた領域に孤立した液体レンズが形成できるように、また、液体シャッタデバイス系においては、隔壁内全体にオイルが充填されるように調整する。
例えばディスペンサを用いて純水209が注入されると、余剰となった着色オイルの一部が浮遊してしまうので、それを除去する必要がある。余剰オイル除去部140は、ステップS10において、製造部112を制御し、純水209の表面に浮遊する余剰なオイル溶液208を取り除く。
図19は、余剰オイルを除去した後の様子を示す図である。図19に示されるように、純水209が注入され、余剰オイルが除去されると、リブ207-1とリブ207-2の間のリブピクセルには適量のオイル溶液208-1が層を形成し、リブ207-2とリブ207-3の間のリブピクセルには適量のオイル溶液208-2が層を形成し、リブ207-3とリブ207-4の間のリブピクセルには適量のオイル溶液208-3が層を形成する。このように、各リブピクセルには、オイル溶液208の層と純水209の層が形成される。なお、この時、濡れ性の関係から極性液体47と無極性液体46の比重に関わらず、無極性液体46は下側に、極性液体47は上側に層を形成し安定する。
余剰オイルが除去されると、封止部141は、ステップS11において、製造部112を制御して、例えば図20に示されるように、極性液体47の上側から、透明電極付き基板201に対向するように、透明電極付き基板210を、間隙形成材を介して貼り合わせ、貼り合わされたパネル周縁を封止樹脂で封止する。封止樹脂は、例えば、アイオノマー、接着性ポリエチレンなどを用いることができる。
封止が終了すると、製造処理は終了される。
以上のようにして製造装置101は、液体デバイス31を製造することができる。
次に、以上のようにして生成される、本発明を適用した液体デバイス31の具体的な利用例について説明する。
図21は、本発明を適用した画像表示装置の構成例を示すブロック図である。
図21において画像表示装置301は、画像を表示する装置であり、発光光源部311、画像表示部駆動部312、および画像表示部313を有している。画像表示装置301は、発光光源部311より出射された光が画面表示部313を透過してユーザに届く透過型のディスプレイである。
発光光源部311は、所謂バックライトと称される、画像表示のための光源であり、例えば、熱陰極管や冷陰極管等が用いられる。もちろん、それらと同様に画像表示の光源として機能するものであればどのようなものを用いてもよい。
画像表示部駆動部312は、外部より供給される画像情報(例えば映像信号等)に基づいて、画像表示部313(画像表示部313を形成する各液体デバイス321)の動作を制御する。
画像表示部313は、画像表示部駆動部312に制御されて発光光源部311より出射される光の透過を制御する液体デバイス321が平面状または曲面状に複数並べられた、画像の表示を行うデバイスである。
この液体デバイス321は、図2を参照して説明した、本発明を適用した液体デバイス31を応用したものであり、具体的には、無極性液体46として、黒色の色素を含む液体、若しくは、染料を溶解させて黒色に着色させた液体を用いる。この染料は無極性液体46に溶解し、極性液体47に溶解しないものが用いられる。また、無極性液体46に、無極性液体46にも溶解しない顔料を混ぜてもよい。つまり結果として無極性液体46が、図2を参照して説明した特性を有したまま、光を透過させない状態になっていればよく、色は黒以外であってもよい。
また、図2に示される制御部51は、図21の例において、画像表示部駆動部312に対応する。換言すれば、画像表示部駆動部312は、図2の制御部51のように、各液体デバイス321に対して、所定の範囲で任意の電圧を印加するための、電源61とスイッチ部62と同等の機能を有する。実際には、各液体デバイス321に対する制御を総合的に行うため、画像表示部駆動部312の構成はより複雑であるが、以下においては、説明の簡略化のため、画像表示部駆動部312の、そのような制御機能を、電源61およびスイッチ部62として表して説明する。
図21に示されるように、発光光源部311は、光が出射される平面状または曲面状の発光面を有し、画像表示部313の液体デバイス321は、その発光面に略対向するように並べられて配置される。液体デバイス321は、詳細については後述するが、発光光源部311の発光面より出射された光の透過量、すなわち、自分自身を透過する透過光の強度(透過光強度)を制御する光学シャッタとして動作する。各液体デバイス321が、画像表示部駆動部312の制御によって、画像情報に基づいて透過光強度を制御することにより、液体デバイス321群全体、すなわち、画像表示部313全体の、発光光源部311と反対側の表面に、画像情報に対応する画像が表示される。換言すると、画像情報に基づいて動作する液体デバイス321を透過した光が、画像表示部313を基準として発光光源部311と反対側に位置するユーザの目に届くことにより、そのユーザには、画像表示部313の表面(ユーザ側の面)に、画像情報に対応する画像が表示されているように見える。
すなわち、画像表示部313の発光光源部311と反対側の表面(液体デバイス321が並べられることにより形成される、発光光源部311と反対側の面)が画像表示面となる。なお、一般的に、液体デバイス321には、発光光源部311の発光周期よりも速い応答速度が求められる。
発光光源部311の発光面より出射される光は光源より出射された直接光でなくてもよく、例えば、反射板等に反射された間接光であってもよい。また、発光面より出射される光は、一般的には発光面全体において均一な白色光が望ましいが、必ずしも均一でなくても良いし、白色光でなくてもよい。
一般的には、発光光源部311の発光面の面積および形状が、画像表示部313の画像表示面の面積および形状と同一であり、さらに、その発光面と画像表示面が互いにはみ出さずに重なるように、発光光源部311と画像表示部313が所定の間隔で平行に配置されるのが望ましいが、必ずしも、発光面と画像表示面の面積および形状が互いに同一でなくてもよいし、発光面と画像表示面が互いにはみ出さずに重なっていなくてもよいし、発光光源部311と画像表示部313が所定の間隔で平行に配置されなくても良い。例えば、発光光源部311と画像表示部313が、一体として形成されてもよい。
また、画像表示部313において、液体デバイス321は、どのようなパターンで並べて配置するようにしてもよく、例えば、行列状やハニカム構造のように規則的なパターンで並べるようにしてもよいし、不規則なパターンで並べるようにしてもよい。
図22に液体デバイス321の配列の一例を示す。は、図22の例においては、x方向に液体デバイス321-1、液体デバイス321-2、液体デバイス321-3、液体デバイス321-4、・・・、また、y方向に液体デバイス321-1、液体デバイス321-5、液体デバイス321-6、・・・のように、複数の液体デバイス321が行列状に隙間無く並べて配置されている。
換言すると、図22の場合、下部基板41と上部基板49に挟まれた空間がリブ45により行列状に簡略的に仕切られて複数のリブピクセルが形成されている。この複数のリブピクセルのそれぞれに無極性液体46と極性液体47が充填されており、各リブピクセルの構成が個々の液体デバイス321として動作するようになされている。
なお、図22においては説明の簡略化の為、隣り合う液体デバイス321において下部電極42および上部電極48が接触しているように示されているが、実際には、少なくとも互いに独立して動作させる液体デバイス321同士の下部電極42および上部電極48は、それぞれ互いに接触しないように配置される。一般的には、各液体デバイス321の下部電極42および上部電極48は、隣接する液体デバイス321の下部電極42および上部電極48と接触しないように配置され、他の液体デバイス321と独立して電圧を印加することができるように構成されている。つまり、画像表示部駆動部312は、各液体デバイス321を互いに独立して動作させることができる。
次に、このような構造の液体デバイス321の動作について説明する。図23は、スイッチ部62がオフ状態、すなわち、切断状態にされ、下部電極42および上部電極48に電圧が加えられていない状態の液体デバイス321の様子を示す図である。
図23に示されるように、スイッチ部62がオフ状態であり、下部電極42および上部電極48間の電位差がゼロである場合、若しくはゼロに近似するとみなされる場合、撥水膜44が疎水性であるので、表面張力の関係から無極性液体46が極性液体47よりも撥水膜44側に存在して状態が維持されている。つまり、下部電極42および上部電極48間に電圧が印加されていない場合、図23に示されるように、着色された無極性液体46が、リブピクセル全体、すなわち、光の透過部分全体に広がった状態で安定する。
従って、このとき、図23中において下側になる、液体デバイス321の背面側の発光光源部311から発せられた光(視覚情報)351は、液体デバイス321に到達するものの、無極性液体46が黒色の色素を有する素材により構成されていたり、黒色の染料により着色されていたり、黒色の顔料が混ぜこまれていたりするので、液体デバイス321を透過することができない。つまり、発光光源部311から発せられた光は、無極性液体46により遮断されてしまう。
図24は、スイッチ部62がオン状態、すなわち、接続状態にされ、電源61により、下部電極42および上部電極48の間に、電源61において設定可能な範囲で最大の電圧が印加された状態の液体デバイス321の様子を示す図である。
下部電極42および上部電極48間に電源61の電源電圧が印加されると、下部電極42近傍の絶縁膜43および撥水膜44において電界方向へ分極電荷が発生し、近傍の絶縁膜43および撥水膜44の表面に電荷が蓄積され、所謂電荷二重層状態になる。極性液体47は、極性を有するので、この電荷のクーロン力により下部電極42近傍の撥水膜44へ引き寄せられる。すなわち、撥水膜44の極性液体47に対する濡れ性が、下部電極42および上部電極48間への印加電圧の大きさに応じて変化する。これに対して無極性液体46は、無極性であるがゆえに、そのような力が発生しない。従って、黒色の無極性液体46は、撥水膜44近傍に移動してきた極性液体47によって押し出されて移動し、図24に示されるように、液体デバイス321のリブ45に囲まれた部分の一部に集まった状態で安定する。図24の例の場合、最大の電圧が印加されているので、黒色の無極性液体46は、撥水膜44近傍に集まるように変形した極性液体47によって最大限押し出されて変形し、液体デバイス321のリブ45に囲まれた部分の一部に最も集まった状態で安定する。
つまり、この状態のとき、黒色の無極性液体46は、リブピクセルの一部分、すなわち、図24において上下方向となる光の透過方向に対して垂直な光の透過面の一部分に最も集中し、リブピクセルのそれ以外の多くの部分は、無色透明な極性液体47の層のみとなる。すなわち、光の透過面において無極性液体46が存在しない部分が最も多くなる。従って、発光光源部311から発せられた光351、つまり視覚情報のほとんどは、液体デバイス321のリブピクセル内の、黒色の無極性液体46の層が存在しない、極性液体47の層のみの部分を透過し、遮断されずに透過光352として、図24中上側として示される液体デバイス321の前面である画像表示面より出射される。つまり、この液体デバイス321の透過光強度が最大になる。
なお、電源61の電源電圧の大きさに応じて、下部電極42および上部電極48間への印加電圧の大きさが変化するので、結果として無極性液体46の変形量も変化する。従って、画像表示部駆動部312は、電源61の電源電圧の大きさを制御することにより、無極性液体46の形状を、図23の例と図24の例の間の状態において安定させることもできる。つまり、画像表示部駆動部312は、対応する液体デバイス321の透過光強度、すなわち、光学シャッタの開き具合を任意に制御することができる。
以上のように、液体デバイス321は、発光光源部311の出射光の、自分自身を透過する光量を制御する。すなわち、液体デバイス321は、発光光源部311からの射出光強度を任意に変化させる光学シャッタとして動作する。
なお、図24においては、下部電極42および上部電極48間に電源61の電源電圧が印加された際に無極性液体46がリブ45-2近傍に集まるように示されているが、この無極性液体46が移動する位置は任意である。無極性液体46は、下部電極42および上部電極48間に電源61の電源電圧が印加されていない状態において、リブピクセル内の底面(撥水膜44側の面)全体に広がり、下部電極42および上部電極48間に電源61の電源電圧が印加された状態において、リブピクセル内の光の透過面に対して一部分に集まるようになされていればよい。
また、下部電極42および上部電極48間への電圧の印加によって実際に無極性液体46が膨張または収縮するとは限らないが、以下においては、無極性液体46が、図23に示されるように、リブピクセル内の光の透過面全体に広がることを膨張と称し、図24に示されるように、リブピクセル内の光の透過面の一部分に集まることを収縮と称する。つまり、下部電極42および上部電極48間に印加される電圧が小さくなる、若しくは、ゼロになると無極性液体46は膨張し、逆に、下部電極42および上部電極48間に印加される電圧が大きくなると無極性液体46は収縮する。
なお、この無極性液体46の量は、リブ45の高さによって制御可能であるが、液体デバイス321のリブピクセル内の光の透過面の面積に対して適量であることが望ましく、多すぎても少なすぎても好ましくない。
つまり、無極性液体46の量は、下部電極42および上部電極48間に電圧が印加されていない状態において、十分に膨張して光の透過率を十分に抑制し、下部電極42および上部電極48間に可能な範囲で最大の電圧が印加された状態において、十分に収縮して光の透過率を十分に高くすることができるような量にすること、すなわち、これらの2状態において、光の透過率の変化量が十分に大きくなるような適度な量することが望ましい。
また、液体デバイス321の応答速度は速い程望ましく、上述した2状態の遷移の速さ(無極性液体46の膨張速度と収縮速度)が速い程望ましい。すなわち、無極性液体46は、上述した2状態において、光の透過率の変化量が十分に大きくなるような範囲内で、低粘度、かつ、その量が少ないほど望ましい。
この無極性液体46の量は、リブ45の高さだけでなく、リブ45の表面に施される紫外線オゾン処理の処理時間、および各部材の素材等によっても制御される。
以上のような液体デバイス321は、液体デバイスを用いていない従来の光学シャッタと比較して、偏光フィルタ等が不要なため、光の取り出し効率を格段に向上させることができる。すなわち、液体デバイス321は、より高速に動作し、かつ、光の取り出し効率をより向上させることができる。また、液体デバイス321は、30V以下の駆動電圧でも動作可能であり、従来の光学シャッタと比較して低電圧で動作することができる。
図21の画像表示装置301は、各液体デバイス321における光学シャッタの開閉により、発光光源部311からの光を画像表示面全体に対して部分的に遮断したり、透過させたりし、各液体デバイス321の透過光の有無によって2色のみで表現される所謂2値画像を画像表示面に表示させることができる。例えば、発光光源部311が白色光を出射する場合、画像表示面には、光学シャッタが開かれた状態の液体デバイス321の部分が白色として表現され、光学シャッタが閉じられた状態の液体デバイス321の部分が黒色として表現される2値画像が表示される。
また、画像表示装置301は、各液体デバイス321における光学シャッタの開閉の程度を任意または多段階に制御したり、光学シャッタを開いた状態の長さを任意または多段階に制御したりすることにより、各液体デバイス321の光の透過率を任意または多段階に制御して、各液体デバイス321の透過光の明暗の度合いによって表現される所謂グレースケール画像を画像表示面に表示させることができる。例えば、発光光源部311が白色光を出射する場合、画像表示面には、白色および黒色の他に白色と黒色の中間色である灰色も含むグレースケール画像が表示される。
さらに、画像表示装置301が、例えば赤色、青色、および緑色を用いて表現される所謂カラー画像を画像表示面に表示させることができるようにしてもよい。例えば、図25に示されるように、画像表示部313の各液体デバイス321の無極性液体46の色を赤色、青色、または緑色にすることにより、カラー画像を画像表示面に表示させることができる。
図25は、本発明を適用した液体デバイスを、カラー画像を表示する画像表示装置に適用する場合の、液体デバイスの配置例を示す図であり、図22に対応する図である。つまり、図25の場合、液体デバイス321の並び方は図22と同様であるが、各液体デバイス321の無極性液体46が黒色でなく、赤色、青色、または緑色になされている。例えば、右上左下の斜線模様で示される、液体デバイス321-1の無極性液体46-1、および、液体デバイス321-4の無極性液体46-4は赤色であり、縦線模様で示される液体デバイス321-2の無極性液体46-2は緑色であり、右下左上の斜線模様で示される液体デバイス321-3の無極性液体46-3は青色である。
また、図25において、液体デバイス321-5や液体デバイス321-6のように、上面に「R」の文字で示した液体デバイス321の無極性液体46はいずれも赤色であり、上面に「G」の文字で示した液体デバイス321の無極性液体46はいずれも緑色であり、上面に「B」の文字で示した液体デバイス321の無極性液体46はいずれも青色である。つまり、図25の例の場合、無極性液体46の色が、y方向には互いに同色となり、x方向には「赤」、「緑」、「青」の順で繰り返すように液体デバイス321が並べられている。なお、このようなアレイ状に並べられた液体デバイス321群における各液体デバイス321の無極性液体46の色の並びは、任意であり、例えば、ベイヤ配列のように、図25に示される以外の並び方であってもよい。また、無極性液体46の色数は、2色であってもよいし4色以上であってもよい。
なお、図25の「R」、「G」、および「B」の表記は、説明の便宜上付したものであり、実際の液体デバイス321に印刷される文字ではない。
図25の例に示されるように、液体デバイス321の無極性液体46の色が黒色でなく、赤色、緑色、若しくは青色である場合、つまり、無極性液体46に赤色、緑色、若しくは青色の素材を用いた場合、無極性液体46に赤色、緑色、若しくは青色の染料を溶解させた場合、または、無極性液体46に赤色、緑色、若しくは青色の顔料を混ぜた場合、液体デバイス321は、その無極性液体46の膨張時においても、発光光源部311からの光を透過する。
すなわち、この場合、無極性液体46は透明であり、発光光源部311からの光の内、所定の波長の光、つまり無極性液体46の色と同色の光を透過させることができる。この場合、近隣の液体デバイス321より出射される透過光同士が重なることにより、ユーザには、表示画像が、赤、緑、および青以外の色も含むように見える。
ただし、この場合、液体デバイス321は、発光光源部311からの光の色を変化させるのみであり、遮断することはない。従って、部品点数は、図22の場合と同様であり少ないので製造コストが低減されるものの、色再現性は低い。
これに対して、図26に示されるようにカラーフィルタを用いて色を再現するようにしてもよい。図26は、その場合の液体デバイス321の構成例を示す図であり、図2に対応する図である。図26の例の場合、液体デイバス321には、上部電極48および上部基板49の間に、赤色、緑色、または青色の光のみを透過させる透明のカラーフィルタ361が設けられている。すなわち、液体デバイス321の透過光は、必ずカラーフィルタ361を透過することになる。
このときの無極性液体46の色は黒色であり、膨張時には光を遮断する。つまり、無極性液体46が収縮し、光学シャッタが開いた状態となったとき、発光光源部311より出射された光は、液体デバイス321のリブピクセル内の、無極性液体46の層が存在せず、極性液体47の層のみが存在する部分を透過し、カラーフィルタ361を透過し、液体デバイス321より出射される。従って、液体デバイス321は、無極性液体46が収縮し、光学シャッタが開いた状態のとき、カラーフィルタ361の色の透過光を出射し、無極性液体46が膨張し、光学シャッタが閉じた状態のとき、透過光を遮断する。従って、無極性液体46の色が赤色、緑色、または青色である場合と比較して、部品点数が増えるので、製造コストが高くなる可能性があるもののその差は大きなものではなく、逆に色再現性は大幅に向上する。
このような液体デバイス321の配置例を図27に示す。図27に示されるように、この場合も、図25に示される場合と同様に、カラーフィルタ361の色が、y方向には互いに同色となり、x方向には赤色、緑色、青色の順で繰り返すように液体デバイス321が並べられている。
例えば、右上左下の斜線模様で示される、液体デバイス321-1のカラーフィルタ361-1、および、液体デバイス321-4のカラーフィルタ361-4の色は赤色であり、縦線模様で示される液体デバイス321-2のカラーフィルタ361-2の色は緑色であり、右下左上の斜線模様で示される液体デバイス321-3のカラーフィルタ361-3の色は青色である。また、液体デバイス321-5や液体デバイス321-6のように、上面に「R」の文字で示した液体デバイス321のカラーフィルタ361の色はいずれも赤色であり、上面に「G」の文字で示した液体デバイス321のカラーフィルタ361の色はいずれも緑色であり、上面に「B」の文字で示した液体デバイス321のカラーフィルタ361の色はいずれも青色である。また、図27の場合、全ての液体デバイス321の無極性液体46の色は黒色である。
図25の場合と同様に、各液体デバイス321のカラーフィルタ361の色の並びは、任意であり、例えば、ベイヤ配列のように、図27に示される以外の並び方であってもよい。また、カラーフィルタ361の色数は、2色であってもよいし4色以上であってもよい。さらに、図27の「R」、「G」、および「B」の表記は、説明の便宜上付したものであり、実際の液体デバイス321に印刷される文字ではない。
また、図22の場合と同様に、各液体デバイス321の無極性液体46の色は任意であり、無極性液体46が光を透過しないようになされていればよい。
以上においては、画像表示装置301が、画像表示部313の背面に発光光源部311を有する透過型のディスプレイであるように説明したが、これ以外にも、例えば反射型のディスプレイであっても良い。
図28は、本発明を適用した反射型の画像表示装置の構成例を示すブロック図である。図28は、図21に対応する図であり、図28に示される画像表示装置401は、図21の画像表示装置301と同様に画像表示部駆動部312および画像表示部313を有しているものの、発光光源部311の代わりに光反射板411を有する。
光反射板411は、反射率の高い金属板等により構成され、液体デバイス321の透過光を反射して、液体デバイス321に返す。なお、光反射板411は、酸化チタン等よりなる、反射した光が空間に対して均一に散乱するように光を反射する白色散乱板により構成されるようにしてもよい。
画像表示装置401の場合、画像表示部313の前面側より入射された入射光が、画像表示部313を透過し、光反射板411に反射され、再度画像表示部313を透過してユーザの目に届く。これにより、ユーザには、画像表示面に画像が表示されるように見える。
つまり、図示は省略するが、画像表示部313を基準として、光反射板411と反対側となる、ユーザが存在する側に光源が設置され、その光源より画像表示部313に向かって光が出射される。なお、この光は、照明光のように人工的なものであっても、太陽光であっても、それらの両方であってもよい。
この場合の液体デバイス321の構造は、図21に示される画像表示装置301の場合と基本的に同様である。ただし、この場合、液体デバイス321には、一旦、上部基板49側より光が入射する。画像表示部313に入射された入射光のうち、光学シャッタが開いた状態の液体デバイス321に入射されたものが、その液体デバイス321を透過し、光反射板411において反射される。その反射光に対する液体デバイス321の作用は、図23および図24を参照して説明した、画像表示装置301の液体デバイス321の場合と同様である。
ただし、この場合、光学シャッタが閉じた状態においては、液体デバイス321の上部基板49側より入射された光は膨張した無極性液体46において遮断されるが、そのときに、無極性液体46による反射光の発生を抑制するようにするのが望ましい。つまり、光学シャッタが閉じた状態の液体デバイス321の位置において画像が黒色表現されるようにするのが望ましく、例えば、無極性液体46の色を黒色のような多くの波長の光を吸収する色にするのが望ましい。
なお、図28に示される画像表示装置401の場合、画像表示部313と光反射板411を一体化して構成し、液体デバイス321を図29や図30に示されるように構成してもよい。
図29に示される例の場合、下部基板41の下側、つまり画像表示部313の背面側に、さらに、白色散乱板421の層が形成されている。この白色散乱板421は、上述したように、反射光が空間に均一に散乱するように光を反射する層であり、酸化チタン等より構成される。つまり、この場合、図29において上側より入射される入射光は、この白色散乱板421によって反射され、再度、図29の上側に向かって出射される。
図30に示される例の場合、透明な下部電極42の代わりに金属等よりなる非透明な下部電極432を用いている。この場合、図30において上側より入射される入射光は、この下部電極432によって反射され、再度、図30の上側に向かって出射される。
図29の例の場合、反射光が綺麗な白色光となるので、図30の場合と比較して、表示される画像の画質が向上するが、逆に、構成が複雑になり製造コストが高いという特徴がある。
なお、このような反射型の画像表示装置401の場合も、液体デバイス321の無極性液体46を非透明の黒色とすることにより、図21を参照して説明した透過型の画像表示装置301の場合と同様に、2値画像やグレースケール画像を表示することができる。
また、図25を参照して説明したように、無極性液体46が色を赤色、緑色、または青色である液体デバイス321を所定のパターンで配置し、画像表示部313がカラー画像を表示することができるようにしてもよい。このとき、無極性液体46を半透明としてもよいし、非透明としても良い。無極性液体46が非透明の場合、液体デバイス321に前面より入射された入射光は、この無極性液体46により反射され、所定の色の光として前面より出射される。つまり、この場合、光を反射させるための、光反射板411や白色散乱板421等の構成を省略することができる。その場合、光学シャッタを閉じるほど、反射光は強くなり、光学シャッタを開くほど、反射光は弱くなる。つまり、画像表示部駆動部312の制御方法が上述した他の例の場合とは逆になる。
また、反射型の画像表示装置401の場合も、透過型の画像表示装置301の場合と同様に、液体デバイス321が、図31および図32に示されるようにカラーフィルタ361を有するようにしてもよい。図31は、カラーフィルタ361と白色散乱板421を有する場合の液体デバイス321の構成例を示しており、図32は、カラーフィルタ361と非透明な下部電極432を有する場合の液体デバイス321の構成例を示している。つまり、図31は、図29に対応し、図29に示される構成にカラーフィルタ361を追加した構成の例を示す図であり、図32は、図30に対応し、図30に示される構成にカラーフィルタ361を追加した構成の例を示す図である。
図31および図32の場合、白色散乱板421または下部電極432において反射された反射光は、カラーフィルタ361を透過して液体デバイス321を透過する。つまり、黒色の無極性液体46が収縮し、光学シャッタが開いた状態の液体デバイス321においては、透過型の画像表示装置301の場合と同様に、カラーフィルタ361の色の光が前面より出射され、黒色の無極性液体46が膨張し、光学シャッタが閉じた状態の液体デバイス321において、透過型の画像表示装置301の場合と同様に、透過光が遮断される。つまり、この場合も、光学シャッタが閉じた状態の液体デバイス321の位置において画像が黒色表現されるようにするのが望ましく、例えば、無極性液体46の色を黒色のような多くの波長の光を吸収する色にするのが望ましい。
以上のように、反射型の画像表示装置は、透過型の画像表示装置の場合と基本的に同様に実現することができ、2値画像、グレースケール画像、またはカラー画像のいずれも表示することができる。
なお、単色の光を発光する発光光源の代わりに、複数色の光を発光するカラー発光光源を用いるようにしてもよい。図33は、その場合の本発明を適用した画像表示装置の構成例を示すブロック図である。
図33において、画像表示装置501は、図21の画像表示装置301と同様に、画像表示部駆動部312および画像表示部313を有するが、画像表示装置301の発光光源部311の代わりに、発光光源部駆動部510およびカラー発光光源部511を有する。
カラー発光光源部511は、例えば、LED(Light Emitting Diode)を光源とし、各LEDが発光することにより、画像表示部313に対向する発光面より、赤色、緑色、および青色の光を時分割で順次繰り返し発光する。カラー発光光源部511の発光面全体に渡って、赤色に発光する赤色LED、緑色に発光する緑色LED、および青色に発光する青色LEDがアレイ状に配置されており、各LEDは、発光光源部駆動部510の制御に従って発光する。
発光光源部駆動部510は、入力される画像情報に同期して、カラー発光光源部511の各LEDの発光を制御し、発光面より各色の光を、所定のパターンで順次繰り返し出射させる。
つまり、発光光源部駆動部510の制御に基づいて、カラー発光光源部511の発光面全体より、赤色の光、緑色の光、および青色の光が、所定の時分割パターンで出射される。従って、ある時刻においては発光面全体より赤色の光が出射され、他のある時刻においては発光面全体より緑色の光が出射され、さらに他の時刻においては発光面全体より青色の光が出射される。
カラー発光光源部511の発光面に配置される各LEDは、どのようなものを用いても良く、その大きさ、形状、発光量、および色数等は任意であり、互いに異なるようにしてもよい。また、各色のLEDの配置パターンが互いに異なるようにしても良いし、3色のLEDがベイヤ型配列のように所定の規則的なパターンで配置されても良いし、不規則なパターンで配置されてもよい。つまり、発光面において、LEDの配置位置は任意であるが、例えば、発光量が互いに同一の赤色LED、緑色LED、および青色LEDをそれぞれ、発光面全体に均一に分散して複数配置する等して、結果として、各色の光が発光面全体より均一の光量出射される、すなわち、部分的な光量の偏りが無く、かつ、各色間でも光量の差が無いようにするのが望ましい。
なお、ここでは光源の例としてLEDを用いて説明するが、LEDの代わりに他の光源を用いるようにしてもよい。
3色の時分割パターンおよびその時分割周期の長さは任意であるが、例えば人間の目ではその発光色の変化を確認することができず、各色が混色されて見える程、十分に短いのが望ましい。
つまり、画像表示部313の全液体デバイス321を光学シャッタが開いた状態で固定したときに、画像表示面を見たユーザに、3色の光がともに最大量で均一に混色し、画面全体において均一であり、かつ、時間的変化も無い白色の画像のように見えるのが望ましい。
画像表示部313は、このような3色の光をバックライトとし、画像表示部駆動部312による画像情報に基づいた制御に従って各液体デバイス321で各色の光の透過を制御することにより、3色の混色具合を制御し、カラー画像を画像表示面に表示させる。
この場合、透過光が赤色、緑色、または青色であるので、この場合の液体デバイス321の構成は、図23に示される構成と同様である。つまり、無極性液体46は、黒色の色素を含む液体であるか、黒色の染料が溶解されているか、若しくは、黒色の顔料が混ぜ込まれており、非透明の黒色の液体として構成される。また、カラーフィルタや白色散乱板等も設けられておらず、かつ、下部電極42も透明電極が用いられる。
液体デバイス321は、各色の光の透過を制御することにより3色の混色具合を制御する。つまり、液体デバイス321は、その液体デバイス321より出射される光の色、すなわちユーザに見える色を、時分割で出射される3色のバックライトの各色を混色させることにより作るように駆動する。つまり、1つの液体デバイス321において任意の色を作ることが可能である。なお、この場合の「混色」は、結果として画像を見るユーザに見える色を作ることであり、実際に各色の光を混在させることではない。つまり、詳細については後述するが、各色の光は時間的に分離されている。
各液体デバイス321は、互いに独立して駆動するようにしてもよいし、複数の液体デバイス321をグループ化し、グループ単位で駆動するようにしてもよい。
図34乃至図36を参照して、この混色のための、カラー発光光源部511の点灯パターンと液体デバイス321の駆動パターンの例を説明する。図34乃至図36において、横軸は時系列を示し、縦軸は、輝度を示す。
図34の例の場合、カラー発光光源部511は、標準で周波数30Hzのフレームの1周期、または、周波数60Hzフィールドの1周期をR帯域、G帯域、B帯域、およびその他に4分割し、R帯域において赤色LEDを一定輝度で点灯させ、G帯域において緑色LEDを一定輝度で点灯させ、B帯域において青色LEDを一定輝度で点灯させる。このとき、各色のLEDの点灯時の輝度は互いに等しい。また、少なくともR帯域、G帯域、およびB帯域の長さは互いに等しい。つまり、カラー発光光源部511の発光面からは、R帯域において赤色の光が出射され、G帯域において緑色の光が出射され、B帯域において青色の光が出射されるが、各色の光の光量は互いに等しい。
これに対して、液体デバイス321は、光学シャッタの開き具合をアナログ的に変化させ、透過光の光量、すなわち光の透過量をアナログ的に制御する。画像表示部駆動部312は、電源61の電圧をアナログ的に調整することにより、各液体デバイス321の下部電極42および上部電極48に任意の電圧を印加し、無極性液体46の変化量、つまり収縮または膨張の程度を任意に制御する。これにより、液体デバイス321は、リブピクセル内を透過する光の量をアナログ的に制御することができる。従って、液体デバイス321は、図34に示されるように各色の光の透過量をそれぞれ任意に制御することにより、混色させる各色の光量を任意に制御することができ、任意の色を作ることができる。
なお、その他の帯域において、カラー発光光源部511は、どの色のLEDも発光させない。つまり、バックライトの色は黒色となる。また、その他の帯域において全LEDを点灯させバックライトの色を白色にするようにしてもよい。さらに、一部のLEDのみ点灯させるようにしてもよい。このその他の帯域におけるバックライトの色は、赤色、緑色、青色以外であれば何色でもよい。
なお、このようなその他の帯域を設けずに、フレームまたはフィールドの1周期をR帯域、G帯域、およびB帯域の3帯域に分割するようにしてもよい。ただし、一般的に、このような時分割に発光された各色を混色するフィールドシーケンシャルカラー方式を用いる場合、ユーザが表示画面の右上から左下に視線を動かしたときに、本来の色と変わって見えてしまう色割れが発生し易い。フレームまたはフィールドの1周期を3分割でなく、上述したように4分割することにより、この色割れの発生を低減させることができる。
図34の例においては、液体デバイス321は、光学シャッタの開き具合により、透過光の光量を制御するように説明したが、これ以外にも、光学シャッタの開いている時間を制御することにより、透過光の光量を制御するようにしてもよい。
図35の例の場合、カラー発光光源部511の各色のLEDは、図34の例と同様のパターンで、一定輝度で一定時間ずつ点灯するが、画像表示部313の各液体デバイス321は、図34の例と異なるパターンで動作する。図35の例の場合、液体デバイス321は、光学シャッタを開けている時間をアナログ的に制御する。
つまり、画像表示部駆動部312は、スイッチ部62のオンおよびオフの時間をアナログ的に調整することにより、各液体デバイス321の下部電極42および上部電極48に電圧を印加する時間を任意に制御し、無極性液体46が収縮して安定している状態の時間、若しくは膨張して安定している状態の時間を任意に制御する。つまり、この場合、液体デバイス321は、光学シャッタを開いている状態と閉じている状態の2つの状態でしか安定せず、この安定する2つの状態の時間の長さによって、リブピクセル内の光が透過する時間を制御し、その透過光の光量を制御する。このようにして、液体デバイス321は、図35に示されるように各色の光の透過量をそれぞれ任意に制御することにより、混色させる各色の光量を任意に制御することができ、任意の色を作ることができる。
なお、図34の例と図35の例を組み合わせ、各液体デバイス321が、光学シャッタの開き具合と、その開く時間の両方を制御することにより、各色の透過光の光量を制御して任意の色を作るようにしてももちろんよい。
また、図36に示されるように、カラー発光光源部511の各LEDの点灯時の輝度を変化させるようにしてもよい。
図36の例の場合、R帯域、G帯域、およびB帯域をそれぞれさらに5分割した小帯域を設け、各LEDが、各小帯域において、互いに異なる輝度で点灯するようになされている。図36の例の場合、LEDは、最初の小帯域において最大輝度で点灯し、それ以降の各小帯域において、1つ前の小帯域のときより輝度を小さくして点灯する。つまり、カラー発光光源部511は、R帯域全体において、立ち上がり時に最も明るく徐々に暗くなるように赤色光を発光し、G帯域全体において、立ち上がり時に最も明るく徐々に暗くなるように緑色光を発光し、B帯域全体において、立ち上がり時に最も明るく徐々に暗くなるように青色光を発光し、その他の帯域において全LEDを消灯する。
このようなパターンで発光するカラー発光光源部511に対して、画像表示部313の各液体デバイス321は、小帯域毎に光学シャッタの開閉を制御する。つまり、画像表示部駆動部312は、画像情報に基づいて、スイッチ部62のオンオフを、小帯域毎に制御する。これにより、液体デバイス321は、カラー発光光源部511の発光面より出射された光の透過または遮断を、小帯域毎に制御することができる。上述したように、各小帯域における、カラー発光光源部511の発光面より出射された光の輝度が異なるので、液体デバイス321は、各小帯域の光を選択的に透過させることにより、その色の光量を多段階に制御することができる。
例えば、図36の例の場合、液体デバイスは、R帯域において、1番目の小帯域と4番目の小帯域の光を透過し、G帯域において、2番目の小帯域、4番目の小帯域、および5番目の小帯域の光を透過し、B帯域において、全ての小帯域の光を透過している。R帯域、G帯域、およびB帯域の各色の帯域において透過させた各小帯域の光の量の合計が、その色の光量になるので、液体デバイス321は、光を透過させる小帯域の組み合わせによって、各色の光量を多段階に制御することができる。従って、液体デバイス321は、混色させる各色の光量を多段階に制御することができ、実質的に任意の色を作ることができる。
なお、各色の帯域を分割する小帯域の数は任意である。また、各色の帯域において、輝度が線形的に変化するようにしてもよい。さらに、図34の例のように、液体デバイス321の光学シャッタの開き具合も同時に制御するようにしてもよいし、図35の例のように、液体デバイス321の光学シャッタの開いている時間を任意に制御するようにしてもよい。
以上のように、本発明を適用した液体デバイス321は、多様な方式の画像表示装置に適用することができる。
このような光学シャッタとして動作する液体デバイス321に対して以下のような実験を行った。
まず、基準とする「比較例1」として、従来の構成である、絶縁膜43を有さない撥水膜44のみの液体デバイスを用いる。そして、本発明を適用した構成である、絶縁膜43を有する液体デバイスを各種条件毎に「実施例1」乃至「実施例3」とする。これらの「比較例1」と「実施例」について、互いに実験結果を比較する。つまり、「実施例1」乃至「実施例3」の液体デバイスは、基本的に液体デバイス321と同様の構造を有する。「比較例1」の液体デバイスは、絶縁膜43を有さないこと以外は、基本的に液体デバイス321と同様の構造を有する。
最初の実験においては、図37の表に示されるように、各液体デバイスの絶縁膜43および撥水膜44の膜厚を条件とし、各条件における、下部電極42と上部電極48との間に印加される印加電圧の振幅電圧と、液体デバイスを透過する透過光の透過率との関係、すなわち、印加電圧の大きさと光シャッタの開き具合の関係を比較する。
つまり、図37に示されるように、基準とする「比較例1」として、従来の構成の液体デバイスの撥水膜44の膜厚を300nmとする。この場合、絶縁膜43は形成されない。また、「実施例1」として、本発明を適用した液体デバイスの絶縁膜43の膜厚を100nmとし、撥水膜44の膜厚を150nmとし、「実施例2」として、本発明を適用した液体デバイスの絶縁膜43の膜厚を100nmとし、撥水膜44の膜厚を80nmとし、「実施例3」として、本発明を適用した液体デバイスの絶縁膜43の膜厚を200nmとし、撥水膜44の膜厚を80nmとする。
この「比較例1」、「実施例1」、「実施例2」、および「実施例3」の各場合について、印加電圧の大きさと光シャッタの開き具合の関係を比較する。
なお、「比較例1」、「実施例1」、「実施例2」、および「実施例3」のいずれの場合も、撥水膜44上には、リブ45として、ブラックレジストを用いた隔壁を幅5μm、隔壁間隔300μm、膜厚3μmとなるようにフォトリソ工程にて作製する。また、無極性液体46として、一般的なブラック系の顔料として、カーボンブラックをオイル材料(例えば、脂肪族炭化水素系溶媒。その代表としてドデカンがある)に分散させたものを用いる。対向するITO電極のギャップ、すなわち、下部電極42と上部電極48の間隔を100μmにとする。また、1ピクセルのサイズは300μm角とする。
このような構造の液体デバイスに対して、撥水膜44が形成される下部基板42を基準電位として、図38に示されるような波形のDuty=50%/正極性の単極性パルスを印加する。そのときの、振幅電圧と透過率の関係を図39および図40のグラフに示す。
図39において、白丸(○)は、「比較例1」の振幅電圧と透過率の関係を示しており、黒丸(●)は、「実施例1」の振幅電圧と透過率の関係を示しており、黒四角(■)は、「実施例2」の振幅電圧と透過率の関係を示している。
液体デバイスが膜厚300nmの撥水膜44のみで絶縁膜43を有さない「比較例1」の場合、振幅電圧の増大に伴って透過率が増大する。このとき、振幅電圧が20Vを過ぎると一部のピクセルで絶縁破壊が発生してしまう。これに対して、液体デバイスが絶縁膜43と撥水膜44との二層化構造を有する「実施例1」と「実施例2」の場合、「比較例1」のときよりもより低電圧で透過率が増大しており、本素子構造が低電圧化に寄与していることが明らかである。また、20V以下であれば、撥水膜44の膜厚が薄い「実施例2」の場合も絶縁破壊は全く発生しない。
つまり、「実施例1」と「実施例2」の場合、絶縁破壊が発生する振幅電圧よりも低い電圧において十分に透過率を上げることができ、消費電力を低下させるとともに信頼性を向上させることができる。
また、図40において、白丸(○)は、「実施例2」の振幅電圧と透過率の関係を示しており、黒四角(■)は、「実施例3」の振幅電圧と透過率の関係を示している。
「実施例2」と「実施例3」では撥水膜44の膜厚が共通(80nm)であるが、絶縁膜43の膜厚が異なり、「実施例2」では100nmであるのに対して、「実施例3」ではそれより厚い200nmである。しかしながら、「実施例2」と「実施例3」では、図40に示されるように、電圧−透過率曲線はほぼ同一となる。ただし、「実施例3」の場合の方が絶縁破壊に対して強く、30Vの電圧を印加しても絶縁破壊は発生しない。
撥水膜44を形成させるプロセスとして、スピンコート法を用いているが、実際には、100nm以下の薄膜をある大きさで極めて均一に成膜させることがかなり困難で、ムラが発生しやすい。しかしながら撥水膜44に薄い部分があるとそこで絶縁破壊が発生する恐れが高くなる。絶縁膜43を厚く形成させることにより、その影響を緩和させることが可能であるが、図40のグラフに示されるように、絶縁膜43を厚く形成しても駆動電圧の増大は十分に抑制される。
つまり、下部電極42や上部基板41のコーティングを絶縁膜43と撥水膜44の2層化構造とし、絶縁膜43の膜厚を十分に厚くすることにより、液体デバイスの高静電容量化と絶縁破壊の抑制を同時に実現することができる。すなわち、本発明を適用することにより液体デバイスの消費電力の低下、および信頼性の向上を実現させることができる。
さらに、「実施例1」の構造条件において、図41に示されるように、絶縁膜43の材質を変えて、振幅電圧と透過率の関係を比較した。
図41の表に示されるように、基準とする「実施例1」においては、絶縁膜43として、比誘電率が20のものを適用し、「実施例4」においては、比誘電率が14のものを絶縁膜43として適用し、「実施例5」においては、比誘電率6.5のものを絶縁膜43として適用した。絶縁膜43と撥水膜44の膜厚、並びに、下部電極42と上部電極48の間隔(電極間ギャップ)は、いずれも、各実施例において互いに共通であり、絶縁膜43の膜厚は100nm、撥水膜44の膜厚は150nmである。また、電極間ギャップは100μmである。
これらの実施例の振幅電圧と透過率との関係を図42のグラフに示す。図42において、白丸(○)は、「実施例1」の振幅電圧と透過率の関係を示しており、黒丸(●)は、「実施例4」の振幅電圧と透過率の関係を示しており、黒四角(■)は、「実施例5」の振幅電圧と透過率の関係を示している。
図42のグラフに示されるように、絶縁膜43の比誘電率がより大きいほど、低電圧化により大きく寄与する。
以上のような液体デバイスにおいて、エレクトロウェティングの発生力をより低電圧で高めるためには、理論上は、絶縁膜43および撥水膜44を薄膜化、高比誘電率化することが望ましい。しかしながら、現時点において実際には絶縁膜43として利用可能な物質の比誘電率は最大で約20程度である。また、薄膜化により絶縁破壊が発生しやすくなるとともに、製造時において膜厚をムラ無く均一にすることがより困難になる。そして膜厚にムラが生じると、薄い部分において絶縁破壊がさらに発生しやすくなる。現時点における実際の製造技術において、プロセス性に富んだスピンコート法により100nm以下の膜厚で絶縁膜43や撥水膜44を安定的にムラ無く均一に形成することは困難である。
従って、絶縁膜43および撥水膜44を形成し、下部電極42と上部電極48を構造的に絶縁させる絶縁部を2層化することにより、従来の構成よりも比誘電率および信頼性を高めることができ、絶縁膜43および撥水膜44のそれぞれの膜厚については任意であるものの、このような実際上の各種条件下において、液体デバイスの駆動電圧をより低電圧化し、かつ、信頼性をより向上させるためには、絶縁膜43の膜厚を100nm以上として絶縁性を高め、撥水膜44を薄膜化するのが望ましい。もちろん、新たな材質や新たな製造方法が開発されるなどして上述した条件に当てはまらない場合はこの限りではなく、異なる膜厚が望ましい構成となることも考えられる。以上においては、光学シャッタとして利用される液体デバイスについて説明したが、光学シャッタ以外の用途として利用される他の液体デバイスにおいても同様である。
次に、液体デバイス31の他の利用例について説明する。
図43は、本発明を適用した画像表示装置の実施形態の構成を表している。画像表示装置601は、画像表示部611および視差発生部612を有している。
画像表示部611は、外部より供給される、画像情報に基づいて、発光画素を発光させることにより、視差の情報を含む視差画像を2次元表示する。視差とは、1つのものを見ても、見る位置により互いに異なる画像に見えることである。例えば、立体表示方法の1つである光線再生法(インテグラルフォトグラフィー法(以下において、IP法と称する))は、多くの視差画像を用いることにより、立体物を見る角度によって見え方(視覚画像)が異なる現象を再現する。つまり、視差が発生するように表示された1枚の視差画像を見るユーザには、その位置(例えば左右方向)によって画像(視差画像の内容)が異なって見える。
視差画像は、例えば所定の画素単位で所定順に並べられた複数の平面画像により構成される。例えば、2枚の平面画像よりなり、水平方向に視差を発生させる視差画像は、各平面画像の部分画像が、水平方向に所定の画素単位で交互に並べられている。この部分画像は、元の平面画像を水平方向に所定の画素単位で垂直方向に分割して得られる、水平方向の画素数がその所定の画素数で、垂直方向の画素数が元の画像の垂直方向の画素数である画像である。視差画像においては、これらの部分画像が、交互に、それぞれの元の平面画像の並び順に並べられている。つまり、並べられた部分画像を水平方向に1つずつ飛ばして繋げると、元の一方の平面画像が復元される。他方の部分画像を繋げると、他方の平面画像が復元される。
従って、画像表示部611において2次元表示された視差画像を直接ユーザが見ても、その視差画像には複数の画像が含まれており、ユーザは正しくそれらの画像を理解することができない。
視差発生部612は、画像表示部611の、視差画像が表示される面に重畳されており、外部より供給される制御情報に基づいて、画像表示部611に表示された視差画像に対して視差を発生させるように動作し、視差発生部612を介して画像表示部611において2次元表示された視差画像を見たユーザが、その見る位置に応じて異なる画像を見ることができるようにする。
なお、視差画像の生成方法の一例を上述したが、画像の合成方法は、視差発生部612の視差発生方法と対応するものであれば、上述した方法以外の方法であってももちろんよい。
視差発生部612は、後述するように、上述した液体デバイス31を利用した、液体の界面を利用してレンズ効果を得る液体レンズ群を有している。視差発生部612は、この液体レンズのレンズ効果を利用して、画像表示部611に表示される視差画像の視差を発生させる。
つまり、図43の画像表示装置601は、画像表示部611が視差画像を2次元表示し、その画像表示部611の各画素に液体レンズを対応させるように設置された視差発生部612が、その視差画像の視差を発生させる。これにより、画像表示部611に2次元表示された視差画像を、視差発生部612を介して見るユーザには、その視差画像が、元の視差画像としてではなく、見る位置により内容が変化する画像として見える。つまり、視差が生じている。
このような視差により、例えば、ユーザの左右の目において互いに異なる角度からの画像が見えるようにして画像の立体表示が可能になる。また、例えば、画面を右前方より見るユーザと、左前方より見るユーザのそれぞれに対して互いに異なる画像が見えるようにすることもできる。もちろん、画像表示装置601は、左右方向だけでなく上下や斜め等、任意の方向に視差を発生させることができる。
図44は、図43の視差発生部612の詳細な構成例を示す図である。
視差発生部612は、制御部621および光路制御部622を有している。制御部621は、外部より供給される制御情報に基づいて、光路制御部622を制御し、画像表示部611において表示される視差画像の視差の発生に関する制御処理を行う処理部であり、判定部631、形状制御部632、および位置制御部633を有している。判定部631は、各種の判定を行う。形状制御部632は、液体レンズの無極性液体の形状に関する制御処理を行い、位置制御部633は、その無極性液体の位置(変動)に関する制御処理を行う。
なお、判定部631、形状制御部632、および位置制御部633は、制御部621の有する機能を示すものであり、実際には、互いに、または外部と情報を授受しあうことができるようになされている。
光路制御部622は、画像表示部611からの出射光の光路を制御する。すなわち、光路制御部622は、画像表示部611に表示される視差画像の視差を発生させる。光路制御部622は、画像表示部611における視差画像の表示面に対向する平面上に、アレイ状に(平面状に)配置された複数の液体レンズ641を有している。液体レンズ641のそれぞれは、液体の界面を利用して通過光の光路を制御する光学素子であり、画像表示部611の互いに異なる複数の画素に対応するように配置されている。つまり、各液体レンズ641は、画像表示部611の複数の発光画素(液体レンズ641毎に互いに異なる発光画素群)に対向して設けられており、それらの発光画素からの出射光がその液体レンズ641を通過するようになされている。この液体レンズ641は、後述するように、液体の位置を変位させることにより、透過光の光路を制御する液体変位デバイスである。
図45は、図44の液体レンズ641の詳細な構成例を示す図であり、液体レンズ641を光の通過方向に切断したときの断面の構成例を示す模式図である。この液体レンズ641は、図2を参照して説明した、本発明を適用した液体デバイス31を応用したものであり、基本的に液体デバイス31と同様の構成を有する。つまり、液体レンズ641は、液体デバイス31と同様に、下部基板41、下部電極42、絶縁膜43、撥水膜44、リブ45-1、リブ45-2、無極性液体46、極性液体47、上部電極48、および上部基板49を有する。ただし、この液体レンズ641の場合、無極性液体46は、着色されておらず無色透明の液体が適用される。なお、極性液体47と無極性液体46は、互いに混在せず、屈折率が互いに大きく異なり、かつ、共に低粘度のものであることが好ましい。
また、下部電極42は、パターニングされており、下部電極42-1乃至下部電極42-4の4本のライン電極として構成されている。以下において、下部電極42-1乃至下部電極42-4を互いに区別して説明する必要の無い場合、下部電極42と称する。なお、説明の便宜上、図45においては、各下部電極42を大きく均等に示しているが、下部電極42-1乃至下部電極42-4の各幅は任意であり、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。一般的には、下部電極42の各幅は、リブ45−1とリブ45−2との間の長さに比べて図45に示される例よりも狭いことが多く、また、下部電極42−1および下部電極42−2がリブ45−1近傍に配置され、下部電極42−3および下部電極42−4がリブ45−2近傍に配置されることが多い。すなわち、下部電極42−2と下部電極42−3との間が他の下部電極間と比べて大きく開くように各下部電極42が配置されることが多い。
その下部電極42-1乃至下部電極42-4は、それぞれ、制御部621の接続選択部651にそれぞれ接続されている。図45に示されるように、制御部621は、各液体レンズ641に対して、下部電極42と上部電極48との間に任意の電圧を印加するための電源61と、その電源61による電圧を印加する電極を、下部電極42-1乃至下部電極42-4の中から選択し、その選択した電極を電源61に接続する接続選択部651の機能を有する。
実際には、制御部621は、各液体レンズ641に対してそれぞれ同様の機能を有するため、より複雑な構成を有するが、ここでは説明の簡略化のため、制御部621が電源61および接続選択部651を有するものとして説明する。
図45に示されるように、電源61の一方の電極は上部電極48に接続され、他方の電極は、接続選択部651の一方の電極に接続されている。接続選択部651の他方の電極は複数の電極よりなり、各電極はそれぞれ下部電極42-1乃至下部電極42-4のいずれかに接続されている。つまり、接続選択部651が下部電極42-1乃至下部電極42-4の中からいずれかを選択して電源61に電気的に接続すると、電源61において設定された任意の電圧がその下部電極42と、上部電極48との間に印加される。
図2を参照して説明した液体デバイス31の場合と同様に、この電圧の印加により、極性液体47と撥水膜44との濡れ性が変化し、極性液体47が、電圧を印加された下部電極42の周囲に集まるように変形(移動)する。その極性液体47の変形により、無極性液体46が押されて変形(移動)し、結果として、無極性液体46と極性液体47との界面が変形し、この液体レンズ641を図45中上下方向に、下から上に向かって透過する透過光の光路(出射方向)を変化させる。この液体レンズ641の動作の詳細については後述するが、この無極性液体46と極性液体47との界面の変形によって、液体レンズ641は、透過光の出射方向を制御することができる。
なお、図45に示される液体レンズ641は、下部電極42-1乃至下部電極42-4のいずれにも電圧が印加されていない(OFF状態である)。このとき、無極性液体46と極性液体47の界面は平面状となり、液体レンズ641は、図中上下方向に透過する透過光に対して影響を及ぼさないようにされる。
この液体レンズ641は、実際には、図46に示されるように、複数の液体レンズがアレイ状(平面状)に並べられた液体レンズアレイ655として形成される。このとき、図46に示されるように、下部基板41、絶縁膜43、撥水膜44、極性液体47、上部電極48、および上部基板49のような複数の液体レンズアレイで共有可能な部材は、それぞれ1つの部材として形成される。
次に、図47乃至図50を参照して、液体レンズ641の動作について説明する。
図45に示されるように、下部電極42-1乃至下部電極42-4のいずれも電圧が印加されていない状態のとき、無極性液体46と極性液体47の界面は平坦となるが、図47や図49に示されるように、接続選択部651が下部電極42-1乃至下部電極42-4の内、いずれかの電極を電源61に接続させ、その下部電極42と上部電極48との間に電圧を印加させると、その下部電極42の位置や印加電圧の大きさ等に応じて、無極性液体46と極性液体47の界面が湾曲し、レンズ状となる。このとき、無極性液体46と極性液体47の屈折率の差によって、その湾曲された界面を透過する透過光の光路が変化する。
つまり、図45の状態であれば、ほとんどの透過光が無極性液体46と極性液体47の界面に対して垂直に透過するため、その光路はほとんど影響を受けない。従って、液体レンズ641の透過光のほとんどは、上部基板49の上面に対して略垂直に液体レンズ641より出射される。
これに対して、図47や図49に示されるように、下部電極42と上部電極48との間に電圧が印加されると、無極性液体46と極性液体47の界面が湾曲し、レンズ状となるので、液体レンズ641の透過光のほとんどは、その光路が屈折し、上部基板49の上面に対して垂直でない方向に液体レンズ641より出射される。
そして、この透過光の出射方向は、接続選択部651や電源61が、下部電極42-1乃至下部電極42-4のいずれにどれくらいの大きさの電圧を印加させるかによって制御される。つまり、制御部621は、印加電圧の大きさや、どの下部電極42に対して電圧を印加するかを制御することにより、無極性液体46が収縮する位置や、その収縮の度合いを制御することができ、それにより、透過光の出射方向を制御することができる。
図47は、無極性液体46を、液体レンズ641の図中右側部分に収縮させた場合の例を示している。図47において、接続選択部651は、下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4を電源61に接続しており、これらの電極は「ON」状態となっている。つまり、下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4と上部電極48との間には、電源61において設定された電圧が印加される。これに対して、接続選択部651は、下部電極42-3を電源61に接続させておらず開放している。つまり、下部電極42-3は、「OFF」状態であり、下部電極42-3と上部電極48との間には電源61による電圧の印加はなされていない。
このように下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4と、上部電極48との間に電源61の電圧が印加されると、下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4近傍の撥水膜44(および絶縁膜43)において電界方向へ分極電荷が発生し、近傍の撥水膜44(および絶縁膜43)の表面に電荷が蓄積され、所謂電荷二重層状態となる。極性液体47は極性を持っているために、クーロン力により下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4近傍の撥水膜44へ寄ろうとする。つまり、下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4近傍の撥水膜44近傍には極性液体47が近づいてくる。これに対して無極性液体46は無極性であるがゆえに、そのような力は発生しない。そのため、下部電極42-1、下部電極42-2、および下部電極42-4近傍の撥水膜44近傍の無極性液体46は、極性液体47により押しのけられ、上部電極48との間に電圧が印加されていない下部電極42-3近傍の撥水膜44近傍に集まり、液滴状となり、極性液体47との界面がレンズ状となる。
つまり、結果として、図47に示されるように、撥水膜44近傍の無極性液体46と極性液体47との界面の図中水平方向の位置は、下部電極42-2の下部電極42-3側の端近傍と、下部電極42-4の下部電極42-3側の端近傍となる。すなわち、無極性液体46は、撥水膜44近傍の、電圧が印加されていない部分に液滴状に収縮する。
このとき、無極性液体46と極性液体47との界面は、2液体の屈折率の違いと、界面の形状により、画像表示部611からの出射光(液体レンズ641の通過光)の光路を屈折させる。これにより液体レンズ641は、後述するように視差画像の視差を実際に発生させる。
なお、この界面の湾曲率は、無極性液体46と極性液体47の屈折率に基づいて、通過光の屈折率が最適となるように予め調整されているようにしてもよい。つまり、液体レンズ641を構成する各部の材質、大きさ、形状等だけでなく、電極間に印加される電圧も、通過光の屈折率が最適になるように、予めまたは適宜、決定されるようにしてもよい。
図48は、図47の状態における光路の例を示している。図48において、液体レンズ641は、画像表示部611の発光画素661乃至発光画素669からの出射光(視覚情報)が入射されるように配置されている。この時、画像表示部611の発光画素661乃至発光画素669の出射光(視覚情報)は立体表示用の光線(視差画像を含む画像)である。また、発光画素661乃至発光画素669は、無極性液体46のレンズ特性を考慮し、その焦点距離(両矢印671で示される距離)だけ、液体レンズ641と離されて設けられる。
発光画素661乃至発光画素669からの出射光(つまり、液体レンズ641の通過光)は、無極性液体46と極性液体47との界面の形状により屈折されて液体レンズ641より出射される。例えば、図48の場合、発光画素661を点光源とすると、その発光画素661から出射され、無極性液体46と極性液体47との界面を介して、液体レンズ641より出射される光は、理想的には、発光画素661と液滴状の無極性液体46の中心とを結ぶ方向に向かう平行光となる。同様に、例えば、発光画素669を点光源とすると、発光画素669から出射され、無極性液体46と極性液体47との界面を介して、液体レンズ641より出射される光は、理想的には、発光画素669と液滴状の無極性液体46の中心とを結ぶ方向に向かう平行光となる。このように、液体レンズ641は、発光画素661乃至発光画素669からの各出射光を互いに異なる方向に向かう光として出射させることができる。このとき、液体レンズ641は、理想的には、通過光を平行光もしくは平行光に近い光として出射させることができる。
図49は、図47に示される場合と反対に、無極性液体46を、液体レンズ641の図中左側に移動させた場合の例を示している。図49において、接続選択部651は、下部電極42-1、下部電極42-3、および下部電極42-4を電源61に接続しており、これらの電極は「ON」状態となっている。これに対して、接続選択部651は、下部電極42-2を電源61に接続させておらず開放している(「OFF」状態)。
図47の場合と同様に、電圧の印加により、極性液体47に対してクーロン力が発生する。そのため、下部電極42-1、下部電極42-3、および下部電極42-4近傍の撥水膜44近傍の無極性液体46は、極性液体47により押しのけられ、上部電極48との間に電圧が印加されていない下部電極42-3近傍の撥水膜44近傍に集まり、液滴状となり、極性液体47との界面がレンズ状となる。
つまり、結果として、図49に示されるように、撥水膜44近傍の無極性液体46と極性液体47との界面の図中水平方向の位置は、下部電極42-1の下部電極42-2側の端近傍と、下部電極42-3の下部電極42-2側の端近傍となる。すなわち、無極性液体46は、撥水膜44近傍の、電圧が印加されていない部分に液滴状に収縮する。
従って、図50に示されるように、発光画素661乃至発光画素669からの出射光(つまり、液体レンズ641の通過光)は、図48の場合と同様に、無極性液体46と極性液体47との界面の形状により屈折されて液体レンズ641より出射される。例えば、図50の場合、発光画素661を点光源とすると、その発光画素661から出射され、無極性液体46と極性液体47との界面を介して、液体レンズ641より出射される光は、理想的には、発光画素661と液滴状の無極性液体46の中心とを結ぶ方向に向かう平行光となる。同様に、例えば、発光画素669を点光源とすると、発光画素669から出射され、無極性液体46と極性液体47との界面を介して、液体レンズ641より出射される光は、理想的には、発光画素669と液滴状の無極性液体46の中心とを結ぶ方向に向かう平行光となる。
図50の場合と図48の場合においては、無極性液体46の位置が互いに異なる。従って、液体レンズ641を通過する光の出射方向は、互いに異なる。つまり、接続選択部651は、図47(図48)と図49(図50)に示されるように、上部電極48との間に電圧を印加する下部電極42を選択することにより、無極性液体46の位置を制御することができる。すなわち、接続選択部651は、上部電極48との間に電圧を印加する下部電極42を、例えば、表示された視差画像の同期信号の整数倍に同期して切り替えることにより、無極性液体46の位置を変動させることができる。このようにすることにより、液体レンズ641の出射光の出射方向が変動する。つまり、液体レンズ641は、1つの発光画素より出射された光を複数の方向に出射させることもできる。換言すると、視差発生部612は、各液体レンズ641が発生させる視差数を増加させ、画像表示部611において表示された視差画像の視差数を、元々視差画像において設定されている視差数よりも増加させることもできる。
なお、図47や図49において、接続選択部651は、「ON」状態にする下部電極42を選択するが、この選択は、制御部621の形状制御部632および位置制御部633の両方の制御結果によるものである。
また、このような視差数の増加方法を利用し、IP法によって通常の2次元画像を立体表示することも可能である。
なお、図48および図50において発光画素661乃至発光画素669を示したが、1個の液体デバイスに対して割り当てる(出射光が透過するようにする)発光画素の数は任意であり、8個以下であってもよいし、10個以上であってもよい。
以上のように、本発明を適用した液体デバイス31は、無極性液体46の位置を変位させる液体変位デバイスとしても利用することができる。
このような液体変位デバイスである液体レンズ641について以下のように実験を行った。
この実験対象とする液体変位デバイスの構成は、いずれの例においても、図45に示される液体レンズ641の構成と基本的に同様であるが、基準とする「比較例2」においては、絶縁膜43を有さない撥水膜44のみの、従来の液体デバイスの構成とする。
図51に示される表のように、各条件の例を設定する。すなわち、基準とする「比較例2」の液体変位デバイスの撥水膜44の膜厚は800nmとし、絶縁膜43は形成しない。これに対して、「実施例6」および「実施例7」の液体変位デバイスは、いずれも絶縁膜43の膜厚を100nmとし、撥水膜44の膜厚を150nmとする。
下部電極42と上部電極48との間隔である電極間ギャップは、「比較例2」、「実施例6」、および「実施例7」のいずれの場合も100μmとする。そしてその下部電極42と上部電極48の間に印加する矩形波の振幅電圧は、「比較例2」の場合20Vととし、「実施例6」の場合10Vととし、「実施例7」の場合15Vととする。
さらに、「比較例2」、「実施例6」、および「実施例7」のいずれの場合も、液体変位デバイスの1ピクセルのサイズを300μm角とし、無極性液体46にはドデカンを用い、300μm角の領域にφ=250μmのドデカン液滴による孤立した液体レンズを形成させる。
また、この液体変位デバイスに印加する駆動波形は、「比較例2」、「実施例6」、および「実施例7」のいずれの場合も、撥水膜44が形成される下部基板41を基準電位として、図38に示されるようなDuty=50%/正極性の単極性パルスを印加する。
そして、「比較例2」、「実施例6」、および「実施例7」のそれぞれの、無極性液体46を変位させるために印加されたパルス波の周波数(変位周波数)と、その無極性液体46の変位量との関係を図52のグラフに示す。なお、「比較例2」、「実施例6」、および「実施例7」のいずれの場合も、電極構造から規定される最大変位量を35μmとする。
液体変位デバイスとしては、基本的に、より低電位で、より高速に、かつ、より大きく変位するのが望ましい。
図52において、白丸(○)は、「比較例2」の変位周波数と変位量の関係を示しており、黒丸(●)は、「実施例6」の変位周波数と変位量の関係を示しており、黒四角(■)は、「実施例7」の変位周波数と変位量の関係を示している。
図52のグラフに示されるように、「比較例2」の場合、変位周波数が60Hz程度まではライン電極構造から規定される最大変位量35μmを保持することができるが、変位周波数を増大していくと、60Hz以上では変位量が減少してしまう。なお、「比較例2」の条件では振幅電圧が25V程度で絶縁破壊が生じてしまう。さらに撥水膜44を薄くするとより絶縁破壊が発生しやすくなる。例えば、撥水膜44の膜厚が500nmのとき、振幅電圧が10V程度で絶縁破壊が発生してしまう。
これに対して、「実施例6」では、パルスの振幅電圧を10Vに落とし、「実施例7」では15Vに落としているものの、同じ変位周波数で比較すると、「実施例6」や「実施例7」の場合の方が、「比較例2」の場合よりも変位量の低下が少ない。また、「実施例6」や「実施例7」の場合の方が、「比較例2」の場合よりも絶縁破壊の発生も低減される。
つまり、この液体変位デバイスとして利用する場合も、本発明の液体デバイスのように絶縁膜43と撥水膜44との2層化構造とする方が、従来の液体デバイスのような撥水膜44単独構造の場合よりも、より低電位で、無極性液体46を、より高速、かつ、より大きく変位させることができる。さらに、絶縁破壊の発生も低減させることができる。
以上のように、本発明を適用した液体デバイス31は、絶縁膜43と撥水膜44との2層化構造を有することにより、どのような応用例においても、高静電容量化を実現するとともに、絶縁破壊を抑制することができ、消費電力を低下させ、信頼性を向上させることができる。
つまり、本発明を適用した電気光学素子及びエレクトロウェティングを用いた素子において、従来の撥水膜単独で撥水性および電気的な絶縁性をともに機能させていたものに対し、絶縁性がより優れた無機絶縁膜に持たせ、さらにその無機絶縁膜の比誘電率を高い材料を適用させることにより、撥水性だけを出現させるための撥水膜をより薄膜化させることが可能となり、結果として得られる2層膜の静電容量は増大し、強いてはエテクトロウェティングの低電圧化に寄与することが可能となる。
なお、液体デバイス31は、上述した以外のどのようなものに利用しても良く、例えば、透過光の焦点の距離および位置を制御する液体レンズとして利用してもよいし、液体の流路制御や液体ポンプ等にも利用することも可能である。それらのデバイスとして利用する場合も、上述した例と同様に、本発明を適用した液体デバイス31は、高静電容量化を実現するとともに、絶縁破壊を抑制することができ、消費電力を低下させ、信頼性を向上させることができる。
なお、以上においては、液体デバイス31が無極性液体46と極性液体47を有するように説明したが、これ以外にも例えば図1に示されるように、液体デバイス31が極性液体のみを有するようにしてもよい。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフウェアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
この記録媒体は、例えば、図9に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(登録商標)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア121により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROMや、記憶部に含まれるハードディスクなどで構成される。これらの構成は例えば制御部111に内蔵される。
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
なお、以上において、1つの装置として説明した構成を分割し、複数の装置からなるシステムとして構成するようにしてもよい。また、各部の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システムや装置全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置またはある処理部の構成の一部を他の装置または処理部の構成に含めるようにしてもよい。つまり、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
31 液体デバイス, 41 下部基板, 42 下部電極, 43 絶縁膜, 44 撥水膜, 45 リブ, 46 無極性液体, 47 極性液体, 48 上部電極, 49 上部基板, 61 電源, 62 スイッチ部, 101 製造装置, 111 制御部, 133 絶縁膜形成部, 134 撥水性薄膜形成部, 301 画像表示装置, 321 液体デバイス, 601 画像表示装置, 612 視差発生部, 641 液体レンズ