以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の反射防止フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に下引層、ハードコート層、反射防止層を有する反射防止フィルムにおいて、該下引層がポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの変性体のいずれかよりなる高分子バインダー及び微粒子を含有し、且つ該ハードコート層が活性線硬化樹脂、シリコーン界面活性剤とポリオキシエーテル化合物とを含有することを特徴とし、干渉ムラが低減され、反射率が低く、反射防止層の耐薬品性、耐湿熱密着性、帯電防止性に優れる反射防止フィルムを実現したものである。
本発明者らは上記課題について鋭意検討を加えた結果、下引層に高分子バインダー及び微粒子を含有させることにより、下引層がポリエステル基材とハードコート層の界面で反射する光を散乱させ、または下引層の屈折率をポリエステル基材の屈折率とハードコート層の屈折率の間に調整させること、更に界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤とポリオキシエーテル化合物とを含有したハードコート層を設けることで、ハードコート層自身の平滑性や反射防止層の塗布性及び密着性を改良することにより、前記干渉ムラの発生が大幅に改善されることを見出し、本発明を成すに至った次第である。
即ち、下引層にバインダーと粒子を含有することにより、ハードコート層とポリエステルフィルム間で反射する光を散乱させることができ、また、屈折率1.70〜3.00の屈折率をもつ粒子を含有することにより下引層の屈折率が屈折率1.50前後の(メタ)アクリレートモノマーよりなるハードコート層と屈折率が1.64〜1.67のポリエステルフィルム基材の中間にすることができ、よって光学干渉層となり干渉を低減させることができる。
更にハードコート層の膜厚が部分的に変化すると、反射防止層表面の反射光とハードコート層とポリエステルフィルム間での反射光による干渉がムラとなる。ムラの低減にはハードコート層の塗布性を良化させることと、ハードコートフィルムを巻き取り保存したときのブロッキングによるハードコート層の変形の抑制が必要だが、塗布性はシリコーン活性剤で、ブロッキング防止にはポリオキシエーテル化合物が効果があり、これらの併用はお互いの効果を妨げないばかりか、反射防止層のリコート性を保つことができる。よって本発明の構成により、反射防止層の耐薬品性、耐湿熱密着性、帯電防止性、反射防止機能を総合的に良好にできることを見出したものである。
また、前記ハードコート層に含まれるポリオキシエーテル化合物がポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であること、前記下引層に含まれる微粒子は平均一次粒子径5〜100nm、屈折率1.70〜3.00の金属酸化物であること、前記反射防止層がアンチモン酸亜鉛粒子を有すること、前記ポリエステルフィルムが含水性を有するポリエステルフィルムであること、更には前記反射防止層が外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含む低屈折率層を有することが、本発明の効果を得る上で更に好ましい態様であることを併せて見出したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
《下引層》
本発明では、後述するポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層として下引層が設けられ、その上層として少なくともハードコート層及び反射防止層が設けられる。更に、該下引層はポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれら樹脂同士の変性体のいずれか一種以上から構成される高分子バインダーと微粒子を含有し、更に該微粒子は平均一次粒子径5〜100nm、屈折率1.70〜3.00の金属酸化物であることが好ましい。
〈高分子バインダー〉
下引層を構成する高分子バインダーは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれら樹脂同士の変性体のいずれか一種以上から構成される。高分子バインダーは、水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有し、水に可溶なものも好ましく用いることができる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂として、下記の多塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。すなわち、多価塩基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、以下に例示されるモノマーを共重合することで得られる。即ち、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエンである。
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂としては、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤等で構成される。ポリオールの例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールのようなポリエーテル、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどを含むグリコールとジカルボン酸との脱水反応により製造されるポリエステル、カーボネート結合を有するポリカ−ボネート、アクリル系ポリオール、ひまし油等がある。ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。鎖延長剤あるいは架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水等が挙げられる。
高分子バインダーはリサイクル時の着色の問題からポリエステル樹脂及びアクリル樹脂のいずれか一種以上から構成されることが好ましい。さらにはポリエステル及びアクリル樹脂の混合体から構成されることが好ましい。良好な接着性を得る観点から、高分子バインダーの屈折率は1.45から1.60の範囲であることが好ましい。
〈微粒子〉
下引層を構成する微粒子は平均一次粒子径が5〜100nmであることが好ましい。平均一次粒子径が上記範囲内にあると、光学散乱の発生、下引層の透明度劣化、微粒子同士の凝集による光学散乱の発生を回避でき、下引層の透明性を向上することができる。
微粒子には、屈折率が1.70〜3.00の金属酸化物を用いることが好ましい。屈折率が上記範囲内にあると、後述するポリエステルフィルムとの屈折率差を解消でき、更に高分子バインダーに対する微粒子の体積分率を適正に保つことができるため下引層の物性を維持できる。屈折率が3.00を越えると非常に特殊な物質なり、工業的に用いるのは難しい。
微粒子として用いる金属酸化物としては、例えば、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物やATO、ITOといった、2種以上の金属を含む金属酸化物を例示することができる。これらの金属酸化物を2種以上使用しても良い。
下引層中の微粒子は、体積分率で50%以下が好ましく、その範囲内では高分子バインダーの含有量を多くとれ、下引層の物性が向上するために接着性の観点でも好ましい。これらの微粒子は環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。
〈脂肪族ワックス〉
下引層には脂肪族ワックスを含有させることが好ましい。その場合、含有量は好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。この含有量の範囲内ではフィルム表面の滑性が向上し、またポリエステルフィルム基材への密着性やハードコートや粘着剤等に対する易接着性を満足できるため好ましい。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。就中、ハードコートや粘着剤等に対する易接着性と滑性が良好なことから、カルナウバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。
〈下引層の製造方法〉
本発明において下引層の塗設に用いられる上記組成物は、下引層(以下『塗膜』いうことがある)を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を添加することができる。
本発明に用いる水性塗液の固形分濃度は、通常20質量%以下であるが、特に1〜10質量%であることが好ましい。この割合が1〜20質量%にあると、ポリエステルフィルムへの塗れ性や、塗液の安定性や下引層の外観が良好であり好ましい。
水性塗液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、更には配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、更には縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。かかる界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進機能や塗液の安定性を向上させるものであり、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10質量%含まれていることが好ましい。
塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.01〜0.3μm、好ましくは0.02〜0.25μmの範囲となるような量であることが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘイズ値が高くなったりする可能性があり好ましくない。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
《ポリエステルフィルム》
本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、これらの上記ポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。
ポリエステルは、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機または有機滑剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
ポリエステルフィルムは、例えば上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に延伸し、必要に応じて更に180〜230℃で1〜60秒間熱処理を行い、熱処理温度より10〜20℃低い温度で幅方向に0〜20%収縮させながら再熱処理を行うことにより得ることができる。なお、ガラス転移温度をTgと略記する。
ポリエステルフィルムの厚みは、液晶、ハードコート、タッチパネル、防眩処理、PDP用電磁波シールドフィルム、有機EL等の支持体として使用する場合に必要な強度を得るために25〜300μmであることが好ましく、特に30〜250μmであることが好ましい。
本発明において、含水性を有するポリエステルフィルムも好ましく用いられる。
ここで、「含水性を有するポリエステルフィルム」とは、平衡含水率が0.5%以上であるポリエステルフィルムをいう。好ましくは平衡含水率が0.5〜10%、特に好ましくは0.5〜5%であるポリエステルフィルムである。
特に好ましい含水性のポリエステルフィルムは、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂から形成されたポリエステルフィルムであって、その平衡含水率が上記の範囲内にあるポリエステルフィルムである。
本発明において、平衡含水率0.5〜10%のポリエステルフィルムは平衡含水率0.5〜10%のポリエステル樹脂単独で形成してもよく、当該平衡含水率範囲に維持できる限りにおいて、平衡含水率0.5〜10%のポリエステル樹脂に他種の樹脂成分、各種添加剤等を含有させてもよい。その外、平衡含水率0.5%未満のポリエステル樹脂と積層されていてもよく、また他の材質のフィルム上に積層されていてもよく、支持体に用いられる樹脂は特に限定されない。
ここで、平衡含水率とは、試料の中に平衡状態で含まれる水分量を試料質量に対する百分率で表したものである。具体的な求め方としては、ポリエステルフィルム、あるいは他のフィルム上に積層されている場合には、基体より引き剥がした該ポリエステル樹脂層フィルムを、23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させた後、サンプルを微量水分計(例えば、三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後、カールフィッシャー法で定量する方法である。
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分をグリコール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、また初めに芳香族ジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとグリコール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のグリコール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いて製造できる。この際、必要に応じてエステル交換触媒、重合反応触媒、耐熱安定剤等を用いて製造される。
本発明においては、始めにジカルボン酸のジアルキルエステルを用いた場合でも、また一旦ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル化反応させるエステル化法を用いた場合でも、原料およびその共重合成分に言及する場合、芳香族ジカルボン酸、グリコール換算の量をいうこととする。
上記プロセスにおいては、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはポリアルキレングリコール等の共重合成分をエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことにより得られるポリエステル樹脂が、特に好ましい。
本発明に用いられる平衡含水率0.5〜10%のポリエステル樹脂としては、具体的には、少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により得られたポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂構造中にスルホン酸またはその塩から選ばれる基を有しているポリエステル樹脂が好ましい。
これらのスルホン酸基は、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸またはグリコールを所定量テレフタル酸等のジカルボン酸或いはエチレングリコール等のグリコールの共重合成分として混合し、ポリエステルを製造することにより、ポリエステル樹脂中に導入することができる。
この様にして得られるポリエステル樹脂中に含まれる硫黄元素含有量は、0.15〜2質量%であることが好ましい。
これら硫黄元素含量が2%以下である場合には、機械的強度に優れ、また0.15%以上では、スルホン酸基数が充分な割合で存在し、顕著な効果を得ることができる。
ポリエステル樹脂中の硫黄元素は、全てがスルホン酸基またはその塩から選ばれる基由来である必要はないが、50%以上、好ましくは80%以上がスルホン酸またはその塩としてポリエステル中に含まれるスルホン酸基に由来するものであることが好ましい。
ポリエステル樹脂中の硫黄元素の定量方法は、特に限定されないが、例えば、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)により定量できる。具体的には、試料に炭酸ナトリウムを添加して、1000℃で加熱溶融して得られた分解物に水を加えて水溶液とし、これをセイコー電子工業(株)製SPS−4000を用いて、ICP−AES分析にて求めることができる。
上記スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂は、従って、少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により製造される際に用いられる全芳香族ジカルボン酸に対して、1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはグリコールを共重合成分として用いることにより得ることができる。また、スルホン酸をポリエステルに導入するには、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸を、全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%用いて製造することが原料の入手のしやすさ等から見てより好ましい。
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂は、更にポリアルキレングリコールを、生成したポリエステルの全量に対して0.1〜10質量%共重合成分として用いて製造されることが好ましい。
本発明に用いるポリエステル樹脂においては、特にポリエステルの主成分がテレフタル酸およびエチレングリコールを用いて得られるポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
本発明に用いられるポリエステルの製造に用いられる芳香族ジカルボン酸としては前記テレフタル酸のほか、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などがあり、またこれらの低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を使用することができる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシリレングリコールなどがある。なかでもテレフタル酸とエチレングリコールの反応により得られたポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。
主成分がポリエチレンテレフタレートであるとは、ポリエチレンテレフタレートの繰返し単位が50モル%以上の共重合体、あるいはブレンドされている場合は、ポリエチレンテレフタレートを50質量%以上含有していることをいう。好ましくはポリエチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上の共重合体、あるいはブレンドされている場合は、ポリエチレンテレフタレートを80質量%以上含有していることである。
本発明において用いられる、ポリエステル中にスルホン酸基を含有させるために用いられるスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)で置換した化合物が用いられる。
また、グリコール中にスルホン酸およびその塩から選ばれる基を導入したものを用いてもよいが、ポリエステル中にスルホン酸基を含有させるために好ましい化合物として好ましいのは、前記スルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸である。
これらのスルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸成分が製造時に用いられる全芳香族ジカルボン酸の10モル%以下であると延伸性や機械的強度に優れ、また1モル%以上では、十分な乾燥性が得られるため好ましい。
更に、本発明に用いられるポリエステルは、ポリアルキレングリコールを共重合成分として含有することが好ましく、前述したように、ポリエステルが、反応生成物のポリエステル全量に対してポリアルキレングリコールを0.1〜10質量%用い製造されることが好ましい。また、更に好ましくは0.2〜8質量%である。ポリアルキレングリコールが0.1質量%以上では乾燥性に優れるため好ましく、10質量%以下であると高いヤング率を維持し、機械的強度に優れるため好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが用いられるが、このうちポリエチレングリコールが好ましく、分子量(数平均分子量)としては特に限定されないが300〜20000が好ましく、さらに好ましくは600〜10000、特に1000〜5000のものが好ましく用いられる。これらの分子量はGPCを用いることにより測定できる。
本発明の反射防止フィルムに用いられるポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。
上記以外の他の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体として、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を用いることができる。また製造の際、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸及びヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、セバシン酸及びダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステルなどのエステル形成可能な誘導体)を全ジカルボン酸の10モル%以下の量で使用することも好ましい。
本発明で使用することができるグリコールとしては、エチレングリコールおよび前記のグリコールの他、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、p,p′−ジヒドロキシフェニルスルフォン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレン(例、エチレン、プロピレン)グリコール、及びp−フェニレンビス(ジメチロールシクロヘキサン)などを挙げることができ、これらは用いられるグリコールの10モル%以下の量で使用することも好ましい。
本発明に用いられるポリエステルは、例えば、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば、極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物も用いて共重合体されたものでもよい。
また、本発明に用いられるポリエステルには、フィルムの耐熱性を向上する目的で、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環又はシクロヘキサン環を有する化合物を共重合させることも好ましい。シクロヘキサン環にスルホン酸基を有することも好ましい。
シクロヘキサン環を有する化合物もしくはシクロヘキサン環にスルホン酸基を有する化合物は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその誘導体等のジカルボン酸であってもあるいはグリコールであっても好ましい。
本発明に用いられるポリエステルの固有粘度(Intrinsic Viscousity)は0.35〜0.65の範囲のものが好ましく用いられる。0.35以上では得られるフィルムの脆弱性に劣ることがなく、0.65以下であると、溶融押し出し時に溶融粘度が適切であり、平面性に優れるフィルムを得やすくなる。
固有粘度の算出はウベローデ型粘度計を用いて行った。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、これにサンプルを溶かして濃度0.2,0.6,1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製する。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零(C→0)に補外し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
また、本発明に用いられるポリエステルはガラス転移温度(Tg)が55℃以上であることが好ましく、更に60℃以上であることが好ましい。55℃未満では得られたフィルムの高温高湿下での寸法安定性に劣る場合がある。Tgは示差走査熱量計で測定するところのベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値として求められたものである。
本発明に用いられるポリエステルには、酸化防止剤が含有されていてもよい。特にポリエステルが、ポリオキシアルキレン基を有する化合物を含む場合に効果が顕著となる。含有させる酸化防止剤はその種類につき特に限定はなく、各種の酸化防止剤を使用することができるが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤を挙げることができる。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の含有量は、通常、ポリエステルに対して0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
本発明に係るポリエステルフィルムには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性付与手段としては、特に限定はないが、ポリエステルに不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリエステルの合成時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、或いは界面活性剤、マット剤等をフィルム表面に塗布する方法等が一般的である。
(紫外線吸収剤)
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて紫外線吸収剤を添加することもできる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物などが挙げられる。又、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤、特願2000−214134号の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔UVA1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していて良い。
以下に一般式〔UVA1〕で示される紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN 171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN 109、Ciba製)
また本発明において、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔UVA2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基又は−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。又、アルキル基、アルケニル基、フェニル基へ置換してもよい置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など、ヒドロキシル基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基又はハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
以下に一般式〔UVA2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
市販されているものとしては、TINUVIN P、TINUVIN 324、TINUVIN 320、TINUVIN 326、TINUVIN 327、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 770、TINUVIN 780、TINUVIN 144、TINUVIN 120、UVITEX OB(日本チバガイギー(株)製)等から適宜選択して使用することもできる。
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
(蛍光増白剤)
また、本発明に用いられるポリエステルフィルムには蛍光増白剤を含有することができる。蛍光増白剤は通常市販されているもの、あるいは新規物質の中から耐光性に基づいて任意に選択することができる。例えば、特開2002−53824の段落番号[0029]〜[0034]に記載のものが挙げられる。一般に蛍光増白剤は約320〜約410nmの波長の光を吸収して、約410〜約500nmの波長の光を放射する性質を有する化合物よりなる。
蛍光増白剤としては、更に下記一般式〔OBA1〕のものが挙げられる。
式中、R1およびR4は水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、R2およびR3はアルキル基を表す。[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表す。一般式〔OBA1〕で表される化合物は、好ましくは下記一般式〔OBA2〕で表される化合物である。
式中、R5およびR7は前記R2と同義の基であり、R6およびR8は前記R3と同義である。nは1または2の整数を表す。これらの化合物は特開平11−29556号記載の方法で合成することができる。一般式〔OBA2〕で表される化合物の具体例は、特開2002−53824号公報の段落番号[0050]〜[0060]に記載されている。
これらの蛍光増白剤は2種以上併用することもできる。添加量は蛍光増白剤の性質、紫外線吸収剤の有無、性質、添加量によって変化するので一義的には決められない。一般的には厚さ50μmの膜であれば0.1〜30質量%、好ましくは1〜10質量%である。
本発明に用いられるポリエステルの合成方法は、特に限定があるわけではなく、前述したように従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤を添加することができる。この際、共重合成分である金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸類やポリエチレングリコールをエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことが好ましい。
また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
本発明で用いられるポリエステルフィルムは縦方向とそれに直交する横方向に、各々延伸倍率1〜10倍に二軸延伸されたものが好ましく用いられる。
即ち、未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させることが好ましい。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。好ましくは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。延伸温度については、ポリエステルの構造成分や、積層の構成成分により異なるが、例えば、未延伸フィルムを80〜150℃の加熱ロール群で加熱し、長手方向に1〜10倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。長手方向延伸速度は1000〜50000%/分の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。続いて、幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。幅方向の延伸倍率は1〜10倍、延伸速度は1000〜20000%/分、温度は80〜150℃の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行う。その場合の延伸条件としては、長手方向の延伸は、温度80〜180℃、延伸倍率1.1〜2.0倍、幅方向の延伸方法としてはテンターを用いる方法が好ましく、温度80〜200℃、延伸倍率1.1〜2.0倍で行うのが好ましいが、特に限定されない。トータルの延伸倍率は、長手方向に3〜10倍、幅方向に3〜10倍であることが好ましい。より好ましくは、長手方向に3.5〜9倍、幅方向に3.5〜9倍であり、さらに好ましくは、長手方向に4〜8倍、幅方向に4〜8倍である。また、延伸工程の後半では、延伸温度を2段階以上で徐々に高めながら延伸することが好ましい。
上記ポリエステルフィルムを得るには、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されないが、以下の様な方法で行うことができる。この場合、縦方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向)を、横方向とはフィルムの製膜方向と直角方向(幅手方向)のことをいう。
先ず、原料のポリエステルをペレット状に成型し、熱風乾燥又は真空乾燥した後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。次いで、得られた未延伸シートを複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸する方法である。
次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm(融点)−20℃の温度範囲内で、横延伸し次いで熱固定する。
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると巾方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると巾方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tm−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整して決定すればよい。
本発明に用いられるポリエステルフィルムは、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.200〜0.310nmであることが好ましい。
本発明でいう自由体積は、ポリエステル樹脂分子鎖に占有されていない空隙部分を表している。これは、陽電子消滅寿命法を用いて測定することが出来る。具体的には、陽電子を試料に入射してから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数濃度等に関する情報を非破壊的に観察することにより求めることが出来る。
〈陽電子消滅寿命法による自由体積半径の測定〉
下記測定条件にて陽電子消滅寿命と相対強度を測定した。
(測定条件)
陽電子線源:22NaCl(強度1.85MBq)
ガンマ線検出器:プラスチック製シンチレーター+光電子増倍管
装置時間分解能:290ps
測定温度:23℃
総カウント数:100万カウント
試料サイズ:20mm×15mmにカットした切片を20枚重ねて約2mmの厚みにした。試料は測定前に24時間真空乾燥を行った。
照射面積:約10mmφ
1チャンネルあたりの時間:23.3ps/ch
上記の測定条件に従って、陽電子消滅寿命測定を実施し、非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ1、τ2、τ3とし、それに応じた強度をI1,I2,I3(I1+I2+I3=100%)とした。最も寿命の長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて自由体積半径R3(nm)を求めた。τ3が空孔での陽電子消滅に対応し、τ3が大きいほど空孔サイズが大きいと考えられている。
τ3=(1/2)〔1−{R3/(R3+0.166)}+(1/2π)sin{2πR3/(R3+0.166)}〕−1
ここで、0.166(nm)は空孔の壁から浸出している電子層の厚さに相当する。
以上の測定を2回繰り返し、その平均値を求めた。
陽電子消滅寿命法は、例えばMATERIAL STAGE vol.4,No.5 2004 p21−25、東レリサーチセンター THE TRC NEWS No.80(Jul.2002)p20−22、「ぶんせき,1988,pp.11−20」に「陽電子消滅法による高分子の自由体積の評価」が掲載されており、これらを参考にすることが出来る。
本発明に用いられるポリエステルフィルムの自由体積半径は、0.200〜0.310nmであることが好ましく、更に好ましい範囲は、0.250〜0.305nmである。自由体積半径が0.250nm未満であるポリエステルフィルムを製造するのは工業的に困難であったりすることがある。また、自由体積半径が0.310nmを超えるフィルムでは、機械的強度や柔軟性等の物性が劣り好ましくない。
ポリエステルフィルムの自由体積半径を上記範囲に制御するには、一例として加熱処理や加圧処理を用いることができる。
例えば、ポリエステルフィルムの延伸過程において、緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。この場合の熱処理温度は、150℃〜250℃、好ましくは、170〜230℃、さらに好ましくは180〜220℃で、時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。さらに、熱処理温度からの冷却過程で、好ましくは100〜220℃の温度範囲で長手および幅方向に、好ましくは幅方向に対して1〜6%の範囲で弛緩処理を行う。弛緩処理は1段でもよいし、多段で行ってもよく、温度分布の変化を設けてもよい。
続いて、60〜140℃の温度で10〜400kN/mの線圧でフィルムの厚み方向に加圧処理(カレンダリング)を施す。加圧処理において、より好ましい温度は65〜125℃であり、さらに好ましい温度は70〜110℃である。加圧処理において、より好ましい線圧は100〜375kN/mであり、さらに好ましい線圧は200〜350kN/mである。また、処理時間は、特に限定されないが、1秒〜30分が好ましく、より好ましくは2秒〜10分、さらに好ましくは3秒〜5分である。該加圧処理工程を施すことで、ポリエステルの自由体積を減少させることができる。
また、延伸工程の後、熱処理工程の前に、特に限定されないが、180℃〜250℃の温度で長手方向および幅方向のうちの少なくとも一方向に対して、1.1〜2倍に延伸してもよい。その温度条件として、より好ましくは190〜240℃、さらに好ましくは200〜230℃の温度範囲で、長手方向または幅方向の少なくとも一方向に対して、より好ましくは1.15〜1.8倍、さらに好ましくは1.2〜1.5倍に延伸を施すこともできる。
加圧処理した後、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、自由体積半径が所望の範囲内にあるポリエステルフィルムを得ることができる。
また、上記フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で本発明に係る下引層を設けることが好ましく、更には帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、大気圧プラズマ放電処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
本発明において、上記のようにして製膜されたポリエステルフィルムの面方向においての屈折率は、横方向の屈折率(nTD)と縦方向の屈折率(nMD)との差の絶対値|nTD−nMD|が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.04以下、更に好ましくは0.025以下である。
本発明で用いられるポリエステルフィルムの厚みは、通常10〜500μm、好ましくは25〜300μm、更に好ましくは30〜250μm、より好ましくは30〜150μmである。巻き取り前に幅手両端部に膜厚の1〜25%程度の高さのナーリングで、幅0.1〜3cm程度の加工を施すことが好ましい。
本発明で用いられるポリエステルフィルムの面内方向におけるリターデーションR0(nm)は、0〜1000nm以下であることが好ましく、0〜800nm以下であることがより好ましく、0〜500nm以下であることが更に好ましい。
また、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とフィルムの幅手方向(フィルムの長尺方向)とのなす角度が0°±10°もしくは90°±10°であることが好ましく、更に0°±5°もしくは90°±5°であることが好ましく、より好ましくは0°±1°もしくは90°±1°であることであり、0°±0.1°もしくは90°±0.1°であることが特に好ましい。
本発明で用いられるポリエステルフィルムは、上記ポリエステルフィルムからなる単独(単層)のフィルムでもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ポリエステルからなる層を少なくとも1層含む、複数の樹脂層からなる多層フィルムとしてもよい。上記ポリエステル層をA、その他の樹脂層をB及びCとすると、例えばA/B、A/B/A、B/A/B、B/A/Cのように構成できる。もちろん4層以上の構成にすることもできる。この様に多層構成にすることで、例えば、強度や水バリアー性の高いフィルムをコア層や外層に積層することにより、複数の機能を同時に付与することもできる。
上記その他の樹脂層としては、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂(セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート)、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂等でもよく、あるいは前述のポリエステルなどが好ましく用いられる。例えば、スルホン酸基含有ポリエステル層/スルホン酸基を含有しないポリエステル層(例えば、PET)/スルホン酸基含有ポリエステル層といった多層構成とすることもできる。
(マット剤等の微粒子)
また、滑り性を付与するためマット剤等の微粒子を添加する場合は、最外層のみに添加すれば効果が得られるので、透明性等を劣化させずに機能付与することが可能となる。
添加できる微粒子としては特に限定はされないが、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が好ましく用いられる。二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
本発明において用いられる微粒子の粒径は0.01〜1μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
多層フィルムを製造する方法としては、共押し出しによる方法、エクストルージョンラミネートによる方法、ドライラミネーションによる方法などを好ましく用いることができる。
(導電性付与物質)
本発明において、反射防止フィルムの表面が導電性を有することが好ましく、表面比抵抗(23℃、25%RH)が1×1012Ω/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは、1×1011Ω/cm2以下、更に好ましくは1×1010Ω/cm2以下である。
本発明においては、吸湿性物質又は導電性物質を含有させることにより反射防止フィルムに導電性を付与することができる。これら導電性を付与させる物質としては、例えば、界面活性剤、導電性ポリマー、無機金属酸化物を挙げることができる。
用いることができる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン酸、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等の様なカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むものが好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、脂肪族或いは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環第4アンモニウム塩類、及び脂肪族又は複素環を含むホスホニウム又はスルホニウム塩類等が好ましい。
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類等が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、サポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類)、グリシドール誘導体(例えば、アルケニルコハク酸ポリセリド、アルキルフェノールポリグリセリド)、多価アルコール脂肪酸エステル類等のアルキルエステル類等が好ましい。
導電性ポリマーは特に限定されず、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよいが、その中でも好ましいのは、アニオン性、カチオン性である。より好ましいのは、アニオン性では、スルホン酸系、カルボン酸系、カチオン性では、3級アミン系、4級アンモニウム系のポリマー又はラテックスである。
これらの導電性ポリマーは、例えば、特公昭52−25251号、特開昭51−29923号、特公昭60−48024号記載のアニオン性ポリマー又はラテックス、特公昭57−18176号、同57−56059号、同58−56856号、米国特許第4,118,231号等に記載のカチオン性ポリマー又はラテックスを挙げることができる。
《反射防止層》
次いで、ポリエステルフィルム上に設ける反射防止層について説明する。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成されている。得に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体または防眩層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
〔ハードコート層:活性線硬化樹脂層〕
本発明の反射防止フィルムには、ポリエステルフィルム/下引層と低屈折率層の間にハードコート層として活性線硬化樹脂を含有する層を設けることを特徴としている。
本発明に係る「活性線硬化樹脂層」とは、紫外線や電子線のような活性線(「活性エネルギー線」ともいう。)照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
こうして得た硬化樹脂層には耐傷性、滑り性や屈折率を調整し、また作製された反射防止フィルムに防眩性を付与するために無機化合物または有機化合物の微粒子を含んでもよい。
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、さらには、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理を行う。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2であるが、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
ハードコート層塗布液には溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
ハードコート層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.1μmのクリアハードコート層、またはRaが0.1〜1μmである防眩性ハードコート層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製非接触表面微細形状計測装置WYKO NT−2000を用いて測定することができる。
さらにハードコート層には、シリコーン系界面活性剤とポリオキシエーテル化合物を含有させる。これらは塗布性を高め、これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
(界面活性剤)
本発明に用いられるシリコーン界面活性剤について説明する。
尚、本発明に用いられるシリコーン界面活性剤はシリコーンオイルも含む。
シリコーン界面活性剤としては、シリコーンオイルのメチル基の一部を親水性基に置換した界面活性剤である。置換の位置は、シリコーンオイルの側鎖、両末端、片末端、両末端側鎖等がある。親水性基としては、ポリエーテル、ポリグリセリン、ピロリドン、ベタイン、硫酸塩、リン酸塩、4級塩等がある。
これらの中で、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。
次にシリコーンオイルについて説明する。シリコーンオイルとしては、ケイ素原子に結合した有機基の種類により、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルに大別出来る。ストレートシリコーンオイルとは、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したものをいう。変性シリコーンオイルとは、ストレートシリコーンオイルから二次的に誘導された構成部分をもつものである。一方、シリコーンオイルの反応性からも分類することが出来る。これらをまとめると、以下のようになる。
シリコーンオイル
1.ストレートシリコーンオイル
1−1.非反応性シリコーンオイル:ジメチル、メチルフェニル置換等
1−2.反応性シリコーンオイル:メチル水素置換等
2.変性シリコーンオイル
ジメチルシリコーンオイルに、さまざまな有機基を導入することで生まれたものが、変性シリコーンオイル
2−1.非反応性シリコーンオイル:アルキル、アルキル/アラルキル、アルキル/ポリエーテル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル置換等、
アルキル/アラルキル変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を長鎖アルキル基或いはフェニルアルキル基に置換えたシリコーンオイル、
ポリエーテル変性シリコーンオイルは、親水性のポリオキシアルキレンを疎水性のジメチルシリコーンに導入したシリコーン系高分子界面活性剤、
高級脂肪酸変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を高級脂肪酸エステルに置換えたシリコーンオイル、
アミノ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をアミノアルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル、
エポキシ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をエポキシ基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル、
カルボキシル変性或いはアルコール変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をカルボキシル基或いは水酸基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル
2−2.反応性シリコーンオイル:アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコール置換等、これらの内、本発明の目的効果の点から、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは2000〜50000が適当である。
これら、シリコーン界面活性剤(シリコーンオイル)の具体的商品として、例えば、SH200、BY16−873、PRX413(ジメチルシリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、SH510、SH550、SH710(メチルフェニルシリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、SH203、SH230、SF8416(アルキル変性シリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、SF8417、BY16−208、BY16−209、BY16−849、BY16−872(アミノ変性シリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、SF8411、SF8413、BY16−855D(エポキシ変性シリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、BY16−848、BY16−201(アルコール変性シリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、BY16−152(メタクリレート変性シリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、FZ−2222、FZ−2207(ジメチルポリシロキサン・ポリエチレンオキサイド直鎖状ブロックコポリマー;日本ユニカー(株)製のFZシリーズ)、KF−101、KF−102,KF−105(エポキシ変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、KF−8008、KF−861,KF−8002(アミノ変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、KF−6001、KF−6002(カルビノール変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、X−22−164A、X−22−2404(メタクリル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、KF−412、KF−414(アルキル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、KF−910(エステル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、SH3749、SH3748、SH8400、SF8410、SF8427、BY16−004、SF8428、SH3771、SH3746、BY16−036(ポリエーテル変性シリコーンオイル;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)、BYK−UV3500,BYK−UV3510、BYK−333、BYK−331、BYK−337(ポリエーテル変性シリコーンオイルビックケミ−ジャパン社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(ポリエーテル変性シリコーンオイル;GE東芝シリコーン製)、KF−351、KF−351A、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−6004(ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、等が挙げられるがこれらに限定されない。
一方、非イオン性のポリオキシエーテル化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、エマルゲン1108、エマルゲン1118S−70(以上花王社製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの市販品としては、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン130K(以上花王社製)、ポリオキシエチレンセチルエーテルの市販品としては、エマルゲン210P、エマルゲン220(以上花王社製)、ポリオキシエチレンステアリルエーテルの市販品としては、エマルゲン220、エマルゲン306P(以上花王社製)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの市販品としては、エマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS−114、エマルゲンMS−110(以上花王社製)ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルの市販品としては、エマルゲン705,エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。これら非イオン性のポリオキシエーテル化合物の中でも好ましくは、ポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であり、一般的に一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1) C18H35−O(C2H4O)nH
式中、nは2〜40を表す。
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10である。また一般式(1)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
具体的商品としては、エマルゲン404(ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル)、エマルゲン408(ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル)、エマルゲン409P(ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル)、エマルゲン420(ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル)、エマルゲン430(ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル)以上花王社製、日本油脂製NOFABLEEAO−9905(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル)等が挙げられる。
尚、()がnの数字を表す。非イオン性のポリオキシエーテル化合物は単独或いは2種以上を併用しても良い。
シリコーン界面活性剤とポリオキシエーテル化合物とのハードコート層中の含有質量比は、1.0:1.0〜0.10:1.0であり、更に好ましくは0.70:1.0〜0.20:1.0であり、前記質量比で含有することで本発明の目的効果を発揮する。
非イオン性のポリオキシエーテル化合物とシリコーン界面活性剤の好ましい添加量は、両者のトータル量で、前記(メタ)アクリレートモノマーに対して0.1質量%〜8.0質量%が好ましく、更に好ましくは、0.2質量%〜4.0質量%であり、該範囲において耐薬品性、表面硬度、耐湿熱性密着に特に優れた反射防止層が得られる。
また、フッ素界面活性剤、アクリル系共重合物、アセチレングリコール系化合物又は他の非イオン性界面活性剤、ラジカル重合性の非イオン性界面活性剤等を併用しても良い。
フッ素界面活性剤の市販品としては住友スリーエム社製フロラードFC−430、FC170、大日本インキ化学工業社製メガファックF177、F471、F482等が挙げられる。アクリル系共重合物としてはビックケミー・ジャパン社製、BYK−361N、BYK−358Nなどが挙げられる。
他の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート等のポリオキシアルキルエステル化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル化合物、等が挙げられる。
アセチレングリコール系化合物としてはサーフィノール104E、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、ダイノール604(以上、日信化学工業(株)社製)などが挙げられる。
ラジカル重合性の非イオン性界面活性剤としては、例えば、「RMA−564」、「RMA−568」、「RMA−1114」[以上、商品名、日本乳化剤(株)製]等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系重合性界面活性剤などを挙げることが出来る。
また、ハードコート層は、2層以上の重層構造を有し、その中の1層は例えば導電性微粒子、または、イオン性ポリマーを含有する所謂帯電防止層としてもよいし、また、種々の表示素子に対する色補正用フィルタとして色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)を含有させてもよいし、また電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにすることは好ましい。
ハードコート層塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。
ハードコート層は塗布乾燥後に、紫外線を照射するのがよく、必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は0.05〜0.2W/m2であることが好ましい。
〈低屈折率層〉
本発明に係る低屈折率層の屈折率は、支持体である透明基材フィルムの屈折率より低く、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
本発明に用いられる低屈折率層形成用組成物については、外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。該外殻層を有し内部が多孔質または空洞である粒子は、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物若しくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)4
(式中、Rはアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。)
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
(中空シリカ系微粒子)
中空シリカ系微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。なお、低屈折率層には(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
なお、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は被覆層(粒子壁ともいう。)で覆われている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空微粒子の平均粒子径は、形成される低屈折率層の平均膜厚の3/2〜1/10好ましくは2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、さらに屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から中空微粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al2O3、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。さらに前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、または、シード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOX)に換算し、MOX/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOX/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、または、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液または加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。なおシリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。なお、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多すぎると、シリカ保護膜が厚くなりすぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4−n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4−n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いらる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。なお、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
外殻層を有し、内部が多孔質または空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層中の含有量は、10〜50質量%であることが好ましい。低屈折率の効果を得る上で、15質量%以上が好ましく、50質量%を超えるとバインダー成分が少なくなり膜強度が不十分となる。特に好ましくは20〜50質量%である。
前記一般式(OSi−1)で表される、有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
低屈折率層への添加方法としては、これらのテトラアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記中空シリカ系微粒子の分散液に加え、テトラアルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を中空シリカ系微粒子の表面に沈着させる。このとき、テトラアルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
また、本発明では低屈折率層に、下記一般式(OSi−2)で表されるフッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有させることも出来る。
前記一般式(OSi−2)で表されるフッ素置換アルキル基含有シラン化合物について説明する。
式中、R1〜R6は炭素数1〜16、好ましくは1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12、好ましくは6〜10のアリール基、炭素数7〜14、好ましくは7〜12のアルキルアリール基、アリールアルキル基、炭素数2〜8、好ましくは2〜6のアルケニル基、または炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルコキシ基、水素原子またはハロゲン原子を示す。
Rfは−(CaHbFc)−を表し、aは1〜12の整数、b+cは2aであり、bは0〜24の整数、cは0〜24の整数を示す。このようなRfとしては、フルオロアルキレン基とアルキレン基とを有する基が好ましい。具体的に、このような含フッ素シリコーン系化合物としては、(MeO)3SiC2H4C2F4C2H4Si(MeO)3、(MeO)3SiC2H4C4F8C2H4Si(MeO)3、(MeO)3SiC2H4C6F12C2H4Si(MeO)3、(H5C2O)3SiC2H4C4F8C2H4Si(OC2H5)3、(H5C2O)3SiC2H4C6F12C2H4Si(OC2H5)3で表されるメトキシジシラン化合物等が挙げられる。
バインダーとして、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含んでいると、形成される透明被膜自体が疎水性を有しているので、透明被膜が充分緻密化しておらず、多孔質であったり、またクラックやボイドを有している場合であっても、水分や酸・アルカリ等の薬品による透明被膜への進入が抑制される。さらには、基板表面や下層である導電層中に含まれる金属等の微粒子と水分や酸・アルカリ等の薬品とが反応することもない。このため、このような透明被膜は、優れた耐薬品性を有している。
また、バインダーとして、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含んでいると、このような疎水性のみならず、滑り性がよく(接触抵抗が低く)、このためスクラッチ強度に優れた透明被膜を得ることができる。さらに、バインダーが、このような構成単位を有するフッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含んでいると、下層に導電層が形成されている場合には、バインダーの収縮率が、導電層と同等か近いものであるため導電層と密着性に優れた透明被膜を形成することができる。さらに、透明被膜を加熱処理する際に、収縮率の違いから、導電層が剥離して、透明導電性層に電気的接触のない部分が生じることもない。このため、膜全体として充分な導電性を維持できる。
フッ素置換アルキル基含有シラン化合物と、前記外殻層を有し、内部が多孔質または空洞である中空シリカ系微粒子とを含む透明被膜は、スクラッチ強度が高い上に、消しゴム強度または爪強度で評価される膜強度が高く、鉛筆硬度も高く、強度の上で優れた透明被膜を形成することができる。
本発明に係る低屈折率層にはシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
低屈折率層のその他のバインダーとして用いられるポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、フルオロアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂が挙げられる。
低屈折率層は、全体で5〜80質量%のバインダーを含むことが好ましい。バインダーは、中空シリカ系微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。バインダーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。
(溶媒)
本発明に係る低屈折率層は有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
低屈折率層塗布組成物中の固形分濃度は1〜4質量%であることが好ましく、該固形分濃度が4質量%以下にすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1質量%以上にすることによって乾燥負荷が軽減される。
〈高屈折率層〉
本発明においては、反射防止層として、上述の低屈折率層の他に、下記のような高屈折率層を有することが好ましい。
本発明に係る高屈折率層には金属酸化物微粒子が含有されることが好ましい。金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることが出来、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあっても良い。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが特に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することが出来る。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
高屈折率層の屈折率は、具体的には、支持体である透明基材フィルムの屈折率より高く、23℃、波長550nm測定で、1.5〜2.2の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子の種類、添加量が支配的である為、金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.85〜2.50であることが更に好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑える事も出来る。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
前記金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層の厚さは5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。
使用する金属酸化物微粒子と後述する電離放射線硬化型樹脂等のバインダーとの比は、金属酸化物微粒子の種類、粒子サイズなどにより異なるが体積比で前者1に対して後者2から前者2に対して後者1程度が好ましい。
本発明において用いられる金属酸化物微粒子の使用量は高屈折率層中に5質量%〜85質量%が好ましく、10質量%〜80質量%であることがより好ましく、20〜75質量%が最も好ましい。使用量が少ないと所望の屈折率や本発明の効果が得られず、多すぎると膜強度の劣化などが発生する。
上記金属酸化物微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
また金属酸化物微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
本発明では、更にコア/シェル構造を有する金属酸化物微粒子を含有させてもよい。シェルはコアの周りに1層形成させてもよいし、耐光性を更に向上させるために複数層形成させてもよい。コアは、シェルにより完全に被覆されていることが好ましい。
コアは酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型等)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ等を用いることができるが、ルチル型の酸化チタンを主成分としてもよい。
シェルは酸化チタン以外の無機化合物を主成分とし、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。例えば、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、硫化亜鉛等を主成分とした無機化合物が用いられる。この内アルミナ、シリカ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)であることが好ましい。また、これらの混合物でもよい。
コアに対するシェルの被覆量は、平均の被覆量で2〜50質量%である。好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは4〜25質量%である。シェルの被覆量が多いと微粒子の屈折率が低下し、被覆量が少な過ぎると耐光性が劣化する。二種以上の無機微粒子を併用してもよい。
コアとなる酸化チタンは、液相法または気相法で作製されたものを使用できる。また、シェルをコアの周りに形成させる手法としては、例えば、米国特許第3,410,708号、特公昭58−47061号、米国特許第2,885,366号、同第3,437,502号、英国特許第1,134,249号、米国特許第3,383,231号、英国特許第2,629,953号、同第1,365,999号に記載されている方法等を用いることができる。
本発明に係る高屈折率層もしくは前述の低屈折率層には、下記一般式(CL1)で表される化合物またはそのキレート化合物を含有することができ、硬度などの物性を改善させることができる。
一般式(CL1) AnMBx-n
式中、Mは金属原子、Aは加水分解可能な官能基または加水分解可能な官能基を有する炭化水素基、Bは金属原子Mに共有結合またはイオン結合した原子団を表す。xは金属原子Mの原子価、nは2以上でx以下の整数を表す。
加水分解可能な官能基Aとしては、例えば、アルコキシル基、クロル原子等のハロゲン、エステル基、アミド基等が挙げられる。上記式(2)に属する金属化合物には、金属原子に直接結合したアルコキシル基を2個以上有するアルコキシド、または、そのキレート化合物が含まれる。好ましい金属化合物としては、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドまたはそれらのキレート化合物を挙げることができる。チタンアルコキシドは反応速度が速くて屈折率が高く、取り扱いも容易であるが、光触媒作用があるため大量に添加すると耐光性が劣化する。ジルコニウムアルコキシドは屈折率が高いが白濁し易いため、塗布する際の露点管理等に注意しなければならない。また、チタンアルコキシドは紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドの反応を促進する効果があるため、少量添加するだけでも塗膜の物理的特性を向上させることができる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
遊離の金属化合物に配位させてキレート化合物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを挙げることができる。これらのキレート化剤を用いることにより、水分の混入等に対しても安定で、塗膜の補強効果にも優れるキレート化合物を形成できる。
金属化合物の添加量は、高屈折率層に含まれる該金属化合物由来の金属酸化物の含有量が0.3〜5質量%であるように調整することが好ましい。0.3質量%未満では耐擦傷性が不足し、5質量%を超えると耐光性が劣化する傾向がある。
本発明に係る高屈折率層には、電離放射線硬化型樹脂を、金属酸化物微粒子のバインダーとして、塗膜の成膜性や物理的特性の向上のために含有させることが出来る。電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、または光重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。官能基としては(メタ)アクリロイルオキシ基等のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、シラノール基等が挙げられる。中でも不飽和二重結合を2個以上有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを好ましく用いることができる。必要に応じて光重合開始剤を組み合わせてもよい。このような電離放射線硬化型樹脂としては、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートもしくはそれらの混合物が用いられる。例えば多官能アクリレート化合物等が挙げられ、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。ここで、多官能アクリレート化合物とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレート化合物のモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
電離放射線硬化型樹脂の添加量は、高屈折率組成物では固形分中の15質量%以上50質量%未満であることが好ましい。
本発明に係る電離放射線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤と分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物とを質量比で3:7〜1:9含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明に係る高屈折率層をコーティングする際に用いられる有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。
〔バックコート層〕
本発明の反射防止フィルムは、活性線硬化樹脂層を設けた側と反対側の面にバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、活性線硬化樹脂層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられる反射防止フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層の塗布に用いられる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、または炭化水素類(トルエン、キシレン)等があげられ、適宜組み合わされて用いられる。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。
バックコート層を塗設する順番は本発明の反射防止フィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。または2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。また、バックコート層は偏光子との接着性を改善するための易接着層を兼ねることも好ましい。
(反射防止フィルムの反射率)
本発明に係る反射防止フィルムの反射率は分光光度計により測定を行うことができる。その際、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行ってから、可視光領域(400〜700nm)の反射光を測定する。反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が1.5%以下であることが好ましく、最低反射率は0.8%以下であることが好ましい。また、可視光の波長領域において平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。
また、反射防止処理を施した表示装置表面の反射色相は、反射防止膜の設計上可視光領域において短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、FPDテレビ等の最表面に使用する場合にはニュートラルな色調が好まれる。この場合、一般に好まれる反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で0.17≦x≦0.27、0.07≦y≦0.17である。
高屈折率層と低屈折率層の膜厚は、各々の層の屈折率より反射率、反射光の色味を考慮して常法に従って計算で求められる。
本発明の各層を塗布する前に表面処理することが好ましいが、表面処理方法としては、洗浄法、アルカリ処理法、フレームプラズマ処理法、高周波放電プラズマ法、電子ビーム法、イオンビーム法、スパッタリング法、酸処理、コロナ処理法、大気圧グロー放電プラズマ法等が挙げられる。
コロナ処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことであり、春日電機(株)や(株)トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行うことが出来る。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。コロナ処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることが出来るが、材質はアルミニウム、ステンレスなどから選択が出来る。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ処理が、安定かつ均一に実施されるように、前記A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることが出来、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属で出来たロールに、セラミック、シリコン、EPTゴム、ハイパロンゴムなどがライニングされているロールが好ましく用いられる。本発明に用いられるコロナ処理に用いる周波数は、20kHz以上100kHz以下の周波数であり、30kHz〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ処理の均一性が劣化し、コロナ処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。コロナ処理の出力は、1〜5w・min./m2であるが、2〜4w・min./m2の出力が好ましい。電極とフィルムとの距離は、5mm以上50mm以下であるが、好ましくは、10mm以上35mm以下である。間隙が開いてくると、一定の出力を維持するためにより高電圧が必要になり、ムラが発生し易くなる。また、間隙が狭くなりすぎると、印加する電圧が低くなりすぎ、ムラが発生し易くなる。更にまた、フィルムを搬送して連続処理する際に電極にフィルムが接触し傷が発生する。
アルカリ処理方法としては、ハードコート層を塗設したフィルムをアルカリ水溶液に浸す方法であれば特に限定されない。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等が使用可能であり、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
アルカリ水溶液のアルカリ濃度、例えば水酸化ナトリウム濃度は0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
アルカリ処理温度は通常10〜80℃、好ましく20〜60℃である。
アルカリ処理時間は5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。アルカリ処理後のフィルムは酸性水で中和した後、十分に水洗いを行うことが好ましい。
反射防止層の各層は、ポリエステルフィルム/下引層上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法を用いて、塗布により形成することができる。塗布に際しては、透明基材フィルムが、幅が1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、上記塗布を行い、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。
更に、本発明の反射防止フィルムは、ポリエステルフィルム/下引層上に前記ハードコート層及び反射防止層を積層した後、ロール状に巻き取った状態で50〜160℃で加熱処理を行う製造方法によって製造されることが好ましい。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば、50℃であれば、好ましくは3日間以上30日未満の期間、160℃であれば10分以上1日以下の範囲が好ましい。通常は、巻外部、巻中央部、巻き芯部の加熱処理効果が偏らないように、比較的低温に設定することが好ましく、50〜60℃付近で7日間程度行うことが好ましい。
加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
機能性薄膜がコーティングされた反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、特に限定されないが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックが好ましく、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。またガラス繊維などの充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
このようにして長巻のプラスチックフィルム基材上に機能性薄膜がコーティングされ、プラスチックコアに巻き取られたロールを、巻き取った状態で前記加熱処理を行うとき、該ロールを回転させることが好ましく、回転は、1分間に1回転以下の速度が好まく、連続でも良く断続的な回転であっても良い。又、加熱期間中に該ロールの巻き替えを1回以上行うことが好ましい。
コアに巻き取られた長巻の反射防止フィルムロールを加熱処理中に回転させる為加熱処理室に専用の回転台を設けることが好ましい。
回転は、断続の場合は停止している時間を10時間以内とすることが好ましく、停止位置は、円周方向に均一となる様にすることが好ましく、停止時間は10分以内とすることがより好ましい。最も好ましくは、連続回転である。
連続回転での回転速度は、1回転に要する時間は好ましくは10時間以下とすることであり、早いと装置的に負担となるため実質的には、15分から2時間の範囲が好ましい。
尚、回転機能を有する専用の台車の場合には、移動や保管中にも反射防止フィルムロールを回転させることが出来て好ましく、この場合、保管期間が長い場合に生じるブラックバンド対策として回転が有効に機能する。
《表示装置》
本発明の反射防止フィルム面を表示装置の鑑賞面側に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明の反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の反射防止フィルムは反射防止層の反射光の色ムラが著しく少なく、また、反射率が低く、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
特に、本発明の反射防止フィルムを、プラズマディスプレイの前面板フイルターとして加工し、装着したプラズマディスプレイは光干渉ムラもなく優れた視認性を有する表示装置であった。また、30型以上の大画面のプラズマディスプレイ表示装置でも、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
[ポリエチレンテレフタレートフィルムの製膜と下引層塗布]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.63dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍に延伸した後、その両面に表1に示す固形分組成で濃度6%の水性下引塗布液をロールコーターで均一に塗布した。ポリエステルフィルム1−7の下引層のみアセトン80質量部、メタノール20質量部の混合溶剤に3質量%の濃度になるように溶解させた。
次いでこの塗布フィルムを95℃で乾燥し、横方向に3.5倍に延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させて熱固定し、厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。
なお、下引層の膜厚は100nmであった。各成分は次の通り。
ポリエステル1:
酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸70モル%/イソフタル酸25モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000、屈折率1.57、密度1.2g/cm3)。なお、ポリエステル1は、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル48部、イソフタル酸ジメチル14部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1.33×102Paの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステル1を得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を2.66×103Paの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去した。ポリエステル1の水分散体を得た。
ポリエステル2:
酸成分がテレフタル酸90モル%/イソフタル酸5モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=70℃、平均分子量13000、屈折率1.56、密度1.2g/cm3)。なお、ポリエステル2は、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、テレフタル酸ジメチル55部、イソフタル酸3部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル5部、エチレングリコール35部、ジエチレングリコール3部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1.33×102Paの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステル2を得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を2.66×103Paの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去した。ポリエステル2の水分散体を得た。
アクリル:
メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃、分子量350000、屈折率1.50、密度1.2g/cm3)。なお、アクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硫酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマーである、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%のアクリルの水分散体を得た。
ウレタン:
ポリオール成分がシクロヘキサングリコール40モル%/ポリエチレングリコール(分子量1000)5モル%、ポリイソシアネート成分がヘキサメチレンジイソシアネート50モル%、親水性付与成分がジメチロールプロピオン酸5モル%、中和成分がトリエチルアミン5モル%で構成される(Tg=60℃、分子量200000、屈折率1.51)。シクロヘキサングリコール29質量部、ポリエチレングリコール(分子量1000)25質量部、ジメチロールプロピオン酸3質量部、酢酸エチル25質量部の混合物にヘキサメチレンジイソシアネート52質量部を加え、徐々に温度を高めて70℃で反応させた。アミン当量を測定し、理論値に達したら、60℃に冷却した。この反応混合物に水200質量部、トリエチルアミン1質量部の混合液を攪拌しながら添加し、加熱下で酢酸エチルを留去し、固形分40%のウレタンの水分散体を得た。
セルロースエステル:ジアセチルセルロース(ダイセル化学工業社製 商品名L−50、表1中DACと記載)
無機粒子1:シリカフィラー(平均一次粒子径:300nm、屈折率:1.43)(日本触媒社製 商品名シーホスターKE−P30)
無機粒子2:シリカフィラー(平均一次粒子径:20nm、屈折率:1.46)(日産化学工業社製 商品名スノーテックスO)
有機粒子1:ポリメタクリル酸メチル架橋粒子(平均粒子径:150〜200nm、屈折率:1.49)(日本触媒社製 商品名エポスターMX100W)
有機粒子2:アクリルフィラー(平均一次粒子径:30nm、屈折率:1.50)(日本ペイント社製 商品名マイクロジェルE−2002)
ワックス:パラフィンワックス(中京油脂社製 商品名セロゾール428)
界面活性剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成工業社製 商品名ナロアクティー)
下引バインダーが本発明のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂ではないジアセチルセルロースのポリエステルフィルム1−7は下引層が白濁し、延伸によってひび割れ剥離してしまった。また高分子バインダーを含まずフィラーのみからなるポリエステルフィルム1−11〜1−14は下引層乾燥後にフィラーが脱落してしまった。
尚、上記ガラス転移温度(Tg:℃)は、サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定した。
また、固有粘度([η]dl/g)は、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。屈折率は、試料を90℃で板状に乾固させて、アッベ屈折率計(D線589nm)で測定した。分子量は下記方法により高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にして行った。
[ハードコート層の塗布]
得られた下引層塗布済ポリエステルフィルム1−1〜1−14に下記ハードコート層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が5μmになるようにハードコート層を設け、ハードコートフィルム1−1〜1−14を得た。
(ハードコート層塗布液)
アセトン 40質量部
酢酸メチル 40質量部
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 20質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 10質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 30質量部
ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製 商品名U−4HA) 25質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガキュア184) 10質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−オン
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907) 6質量部
ポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学社製 KF−351) 0.4質量部
ポリオキシアルキルエーテル(花王社製 エマルゲン1108) 0.6質量部
更に、ハードコートフィルム1−1のポリエーテル変性シリコーンオイル(新たに、BYK−331、ビックケミージャパン社製を加えた)、ポリオキシアルキルエーテル、及びフッ素活性剤(メガファックF−482、大日本インキ化学工業社製)を表2の界面活性剤及び添加量に変えた以外は同様にしてハードコートフィルム1−15〜1−23を得た。
[反射防止層の塗布]
次に上記作製したハードコートフィルム1−1〜1−23をロール状態(ハードコート層とハードコート層を形成していない面とが重なっている状態)のまま、40℃相対湿度80%の恒温槽で4日保存した。次に、保存後のハードコートフィルムを再び繰り出して、ハードコート層表面に下記のようにして中屈折率層、ついで低屈折率層の順に反射防止層を塗布し反射防止フィルム1−1〜1−23を得た。
(中屈折率層の塗布)
ハードコート層表面上に、下記中屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の膜厚が110nmとなるように中屈折率層を設けた。屈折率は1.60であった。
〈中屈折率層塗布液1〉
まず容器に下記割合で混合溶媒を作製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 2699質量部
メチルエチルケトン 900質量部
イソプロピルアルコール 5398質量部
これに下記割合の水を添加し攪拌した。
水 1質量部
この混合溶媒に
n−テトラブトキシチタン 21質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
ITO微粒子分散物(固形分20質量%)(触媒化成工業社製 ELECOM V2504) 587質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA 日本化薬社製)10%メチルエチルケトン溶液 285質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ製)10%メチルエチルケトン溶液 95質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207 日本ユニカー社製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 16質量部
(低屈折率層の塗布)
上記中屈折率層上に、下記の低屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して膜厚が92nmになるように低屈折率層を設け、反射防止フィルムを作製した。屈折率は1.38であった。
(テトラエトキシシラン加水分解物の調製)
テトラエトキシシラン29gとエタノール55gを混合し、これに酢酸の1.6質量%水溶液16gを添加した後に、25℃にて20時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。
(低屈折率層塗布液1(ゾルゲル))
まず容器に下記割合で混合溶媒を作製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 382質量部
イソプロピルアルコール 384質量部
この混合溶媒に
テトラエトキシシラン加水分解物 226質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
KBM503(シランカップリング剤・信越化学(株)製) 6質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207:日本ユニカー社製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 2質量部
[反射防止フィルムの評価]
上記作製した反射防止フィルムを用いて以下の項目について評価を行った。結果について表3に記載する。
(平面性)
巻き取ったハードコートフィルム原反試料を40℃、80%RHの条件下で4日間保存した。フィルム原反試料を500m巻き出して、1mの長さでサンプングし、フィルム試料表面に点灯している蛍光灯の管を反射させて映し、その歪み或いは細かい乱れを観察し、平面性を下記レベルにランク分けした。
○:画面の表面に蛍光灯を映して見たとき、蛍光灯が歪みみ無くきれいに見える
△:画面の表面に蛍光灯を映して見たとき、蛍光灯が少し歪みんで見える。使用上問題ないレベル
×:画面の表面に蛍光灯を映して見たとき、蛍光灯が激しく歪みんで見える。使用上問題となるレベル
(干渉ムラ)
反射防止フィルムの反射防止層を形成していない面をつや消し黒のスプレー塗料(カンペパピオ社製 ヒットスプレーつやけしブラック)にて均一に塗布する。
この試料について、斜めより三波長蛍光灯(FL20SS・EX−N/18(松下電器産業製)の付いた電気スタンド)で試料面を照射し、その時に見える干渉縞を目視で評価した。
○:干渉ムラが無く、きれいに見える
△:干渉ムラが確認出来るが、使用上問題ないレベル
×:干渉ムラが確認出来、使用上問題となるレベル
(ボトム反射率)
反射防止フィルムの測定面とは反対の面に黒テープを貼り、反対の面の反射光を無くし、分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)を用いて、分光反射率を測定した。分光反射率の最低値をボトム反射率とした。
(耐薬品性)
溶剤:反射防止処理面を、メチルエチルケトンを含浸したベンコットで強く擦り、反射防止処理面の状態の変化を観察した。
アルカリ:NaOH 0.5モル/L液を含浸したベンコットで強く擦り、反射防止処理面の状態の変化を観察した。
酸:酢酸0.5モル/L液を含浸したベンコットで強く擦り、反射防止処理面の状態の変化を観察した。
いずれも目視にて下記の膜剥がれを評価した。
○:変化なし
△:わずかに膜剥がれなどが発生する
×:膜剥がれなど外観に変化を生ずる
(耐湿熱密着性(くっつき)評価)
ハードコートフィルムをロール状に巻き取り後、ロール状フィルムを40℃、80%RHの雰囲気下で4日間放置後、巻きからの繰り出した際のくっつきを下記のように評価した。
◎:くっつきが全くなく変形のない平坦なフィルムで、巻きからの繰り出しがスムースであった
○:巻きからの繰り出し時、若干音があり、ごく僅かくっつき状の変形がみられた
×:巻きからの繰り出し時、かなり大きい音がして、くっつきが強く、波状に変形していた。
(帯電防止性)
サンプルを23℃、55%RHの環境下で24時間調湿後、川口電機社製テラオームメーターVE−30を用い印加電圧100Vで両面の表面比抵抗を測定した。帯電防止性は1×1010(Ω/□)以下であることが好ましく、1×1010(Ω/□)を超える場合を×、1×109(Ω/□)以上〜1×1010(Ω/□)以下を○、1×109(Ω/□)未満を◎とした。
表3の結果からわかるように本発明の反射防止フィルムは干渉ムラが低減され、また耐薬品性や耐湿熱密着性、帯電防止性に優れることが判明した。一方、下引層に粒子を含まない反射防止フィルムは干渉ムラがひどく、またバインダーを含まない下引層や下引層バインダーがポリエステル、アクリル、ウレタン以外の樹脂では下引層を塗布する過程で膜強度が保てず、剥離してしまい反射防止フィルムとして成り立たなかった。
また、ハードコート層にシリコン活性剤とポリオキシエーテル化合物を含む本発明の反射防止フィルムは平面性劣化が少なく干渉ムラも低減されていた。一方ポリオキシエーテルの代わりにフッ素活性剤を含むもの、ポリオキシエーテルを含まない反射防止フィルムは反射防止層を塗布する段階でハードコート層とハードコート層を形成していない面とが貼りつきを起こしており部分的にハードコート層の厚みが変化することによる干渉ムラの劣化と変形による反射防止層の色ムラが発生し好ましくない状態であった。さらにシリコン活性剤を含まないハードコート層はハジキ等の塗布欠陥が多数見られた。
実施例2
実施例1の反射防止フィルム1−1〜1−6、1−15〜1−19のハードコート層に含まれるエマルゲン1108をポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王社製 商品名エマルゲン404)に変えた以外は同様にして反射防止フィルム2−1〜2−6、2−15〜2−19を得た。得られた反射防止フィルムについてハードコートフィルムでの保存性評価で保存時間を4日から500時間に延ばす以外は実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
表4の結果のとおり、ハードコートフィルムでの保存時間が長くてもハードコート層とハードコート層を形成していない面の貼りつきはなく、干渉ムラの低減効果がさらに増して良好であった。
実施例3
下引層に含まれる粒子を下記の無機粒子3〜6とし、表5に示す固形分組成で濃度6%の水性下引塗布液をロールコーターで均一に塗布しポリエステルフィルム3−1〜3−6を得た。さらに実施例1のハードコート層、および反射防止層を塗布した反射防止フィルムを反射防止フィルム3−1〜3−6、ポリエステルフィルム3−1〜3−6上に実施例2のハードコート層および反射防止層を塗布した反射防止フィルムを3−7〜3−12として作製した。
無機粒子3:酸化チタンフィラー(平均一次粒子径:30nm、屈折率:2.70)(シーアイ化成社製 商品名酸化チタンスラリー)
無機粒子4:酸化亜鉛フィラー(平均一次粒子径:30nm、屈折率:2.00)(シーアイ化成社製 商品名酸化亜鉛スラリー)
無機粒子5:酸化錫フィラー(平均粒子径:30nm、屈折率:1.90)(シーアイ化成社製 商品名酸化錫スラリー)
無機粒子6:酸化セリウムフィラー(平均一次粒子径:10nm、屈折率:2.20)(シーアイ化成社製 商品名酸化セリウムスラリー)
作製した反射防止フィルム3−1〜3−12の評価結果を表7に示す。
本発明の金属酸化物粒子を下引層に含む反射防止フィルムは干渉ムラ低減効果がさらに向上した。
実施例4
実施例2の2−1〜2−6、2−15〜2−19、実施例3の3−1〜3−12について各々中屈折率層塗布液1を下記中屈折率塗布液2に変えた以外は2−1〜2−6、2−15〜2−19、3−1〜3−12と同様にして反射防止フィルム4−1〜4−6、4−15〜4−19、4−21〜4−32を作製した。
〈中屈折率層塗布液2〉
〈粒子分散液Aの作製〉
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)社製アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調整した。
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート(商品名:U−4HA 新中村化学工業社製)
0.6質量部
粒子分散液A 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.4質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.2質量部
10%FZ−2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本ユニカー社製) 0.4質量部
得られた反射防止フィルムについて、評価結果を表8に示す。
1−1〜1−6、1−15〜1−19、2−1〜2−6、2−15〜2−19、3−1〜3−12と比較して4−1〜4−6、4−15〜4−19、4−21〜4−32はボトム反射率が低下し、反射防止性能が向上した。
実施例5
実施例4の反射防止フィルムにおいて用いたポリエステルフィルムを下記ポリエステルフィルム2に変える以外は実施例4と同様にした。その結果、耐湿熱密着性がいずれも◎となった。
(ポリエステルフィルム2の作製)
〈ポリエステルA〉
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール64質量部に酢酸カルシウム水和物0.1質量部を添加し、常法によりエステル交換反応を行なった。得られた生成物に5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)39質量部(7モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)5.8質量部(5質量%/生成したポリエステル)、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.13質量部を添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、280℃、40Paで重合を行ない、ポリエステルAを得た。以下に示す方法に従って固有粘度を求めた。その結果、固有粘度は0.50であった。
固有粘度についてはウベローデ型粘度計を用いて以下の手順で算出した。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、サンプルを溶かして濃度0.2,0.6,1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製した。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零に補外(C→0)し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
〈ポリエステルフィルム2〉
ポリエステルAのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートを、ロール式縦延伸機を用いて、90℃で縦方向に4.0倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、100℃で横方向に1.2倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に2%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ35μmのポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム2)を作製した。
ポリエステルフィルム2の平衡含水率は、下記測定により4%であった。
〈平衡含水率〉
フィルムサンプルを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、表面の水分をふき取り、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法により定量した。
実施例6
実施例2の反射防止フィルム2−1〜2−4、実施例3の反射防止フィルム3−7〜3−10、実施例4の反射防止フィルム4−15、4−16、4−28〜4−31において、各々低屈折率層塗布液1を低屈折率塗布液2に変えた以外は実施例2の反射防止フィルム2−1〜2−4、実施例3の反射防止フィルム3−7〜3−10、実施例4の反射防止フィルム4−15、4−16、4−28〜4−31と同様にして反射防止フィルム6−1〜6−4、6−7〜6−10、6−15、6−16、6−28〜6−31として作製した。
(低屈折率層塗布液2)
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて26時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカゾル(固形分20%、触媒化成工業社製シリカゾル、商品名:ELCOM V−8209) 40質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート 3.0質量部
(川研ファインケミカル社製ALCH)
10%FZ−2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本ユニカー社製) 3.0質量部
評価結果を表9に示す。
反射防止フィルム6−1〜6−4、6−7〜6−10、6−15、6−16、6−28〜6−31はボトム反射率がさらに低下し、また干渉ムラの低減効果も大きく反射防止性能がより向上した。
実施例7
実施例6の反射防止フィルムにおいて用いたポリエステルフィルムを下記ポリエステルフィルム3に変える以外は実施例6と同様にした。その結果、干渉ムラ、耐湿熱密着性がいずれも◎となった。
(ポリエステルフィルム3の作製)
〈ポリエステルB〉
ポリエステルAの作製において、添加量を5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)22質量部(4モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)12.2質量部(10.5質量%/生成したポリエステル)に変更した以外は同様にして、ポリエステルBを得た。前期同様に測定した固有粘度は0.55であった。
〈ポリエステルフィルム3〉
ポリエステルBのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、85℃で縦方向に3.0倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、95℃で横方向に3.5倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン180℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン2200℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し、70℃の温度で250kN/mの線圧でフィルムの厚み方向に加圧処理(カレンダリング)を60秒間施した。次いで、フィルムを巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ35μmのポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム3)を作製した。
得られたポリエステルフィルム3は、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.275であった。
〈陽電子消滅寿命法による自由体積半径の測定〉
下記測定条件にて陽電子消滅寿命と相対強度を測定した。
(測定条件)
陽電子線源:22NaCl(強度1.85MBq)
ガンマ線検出器:プラスチック製シンチレーター+光電子増倍管
装置時間分解能:290ps
測定温度:23℃
総カウント数:100万カウント
試料サイズ:20mm×15mmにカットした切片を20枚重ねて約2mmの厚みにした。試料は測定前に24時間真空乾燥を行った。
照射面積:約10mmφ
1チャンネルあたりの時間:23.3ps/ch
上記の測定条件に従って、陽電子消滅寿命測定を実施し、非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ1、τ2、τ3とし、それに応じた強度をI1,I2,I3(I1+I2+I3=100%)とした。最も寿命の長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて自由体積半径R3(nm)を求めた。τ3が空孔での陽電子消滅に対応し、τ3が大きいほど空孔サイズが大きいと考えられている。
τ3=(1/2)〔1−{R3/(R3+0.166)}+(1/2π)sin{2πR3/(R3+0.166)}〕−1
ここで、0.166(nm)は空孔の壁から浸出している電子層の厚さに相当する。
以上の測定を2回繰り返し、その平均値を求めた。
実施例8
実施例1の比較の反射防止フィルム1−8〜1−10、1−20〜1−23及び実施例6の本発明の反射防止フィルム6−1〜6−4、6−7〜6−10、6−15、6−16、6−28〜6−31の反射防止層を形成していない面にエチレンエチルアクリレート、メチルアクリレート含有接着剤(綜研化学社製 商品名SK−1811)を乾燥後25μmの厚みになるようにロールコーターにより塗布後100℃で乾燥した。
その後、松下電器産業社製プラズマテレビジョン ビエラPX−600 42vの反射防止フィルムを注意深く剥がし取り、代わりに比較の反射防止フィルム1−8〜1−10、1−20〜1−23及び実施例6の本発明の反射防止フィルム6−1〜6−4、6−7〜6−10、6−15、6−16、6−28〜6−31の接合剤を塗布した面を貼り合わせた。
上記のようにして得られたプラズマディスプレイパネル1−8〜1−10、1−20〜1−23及び6−1〜6−4、6−7〜6−10、6−15、6−16、6−28〜6−31を床から80cmの高さの机の上に配置し、床から3mの高さの天井部に昼色光直管蛍光灯(松下電器産業社製 FLR40S・D/M−X)40W×2本を1セットとして1.5m間隔で10セット配置した。このとき評価者がプラズマディスプレイパネル表示正面に居るとき、評価者の頭上より後方に向けて天井部に蛍光灯がくるように配置した。プラズマディスプレイパネルは机に対する垂直方向から25°傾けて蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さ(視認性)を下記のようにランク評価した。
A:最も近い蛍光灯の写りこみから気にならない。
B:近くの蛍光灯の写りこみはやや気になるが、遠くは気にならない。
C:遠くの蛍光灯の写りこみも気になる。
D:蛍光灯の写りこみがかなり気になる。
評価の結果、本発明の反射防止フィルム6−1〜6−4、6−7〜6−10、6−15、6−16、6−28〜6−31を用いたプラズマディスプレイはいずれもAの評価結果であり、評価結果がCであった比較例の反射防止フィルム1−8〜1−10、1−20〜1−23を用いたプラズマディスプレイより視認性が明らかに良好であった。