JP2008162014A - プラスチック発泡複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
さまざまな用途に対応して、軽量性と機械強度のバランスがとれたプラスチック発泡複合体を提供すること。
【解決手段】
本発明のプラスチック発泡複合体は表皮1とコア2から成る。コア2は、プラスチックの連続する膜を壁面に持つ複数の小室の集合体から成り、各小室には架橋ポリオレフィンの高発泡体が充満している。また、コア2はプラスチックの表皮と、コアの全面を覆うプラスチックの膜を介して接着している。本発明のプラスチック発泡複合体は、まず、発泡剤と有機過酸化物を配合したポリオレフィンの粒状体の全面に、熱可塑性プラスチックの被覆を設けた二層粒状体を作り、次に該二層粒状体と熱可塑性プラスチックの粉末または細粒を回転成形の金型に投入し、回転を加えながら発泡剤と有機過酸化物が分解する温度に加熱することにより製造する。
【選択図】図1
さまざまな用途に対応して、軽量性と機械強度のバランスがとれたプラスチック発泡複合体を提供すること。
【解決手段】
本発明のプラスチック発泡複合体は表皮1とコア2から成る。コア2は、プラスチックの連続する膜を壁面に持つ複数の小室の集合体から成り、各小室には架橋ポリオレフィンの高発泡体が充満している。また、コア2はプラスチックの表皮と、コアの全面を覆うプラスチックの膜を介して接着している。本発明のプラスチック発泡複合体は、まず、発泡剤と有機過酸化物を配合したポリオレフィンの粒状体の全面に、熱可塑性プラスチックの被覆を設けた二層粒状体を作り、次に該二層粒状体と熱可塑性プラスチックの粉末または細粒を回転成形の金型に投入し、回転を加えながら発泡剤と有機過酸化物が分解する温度に加熱することにより製造する。
【選択図】図1
Description
本発明は、プラスチックの表皮を持つプラスチック発泡複合体及びその製造方法に関するものである。本発明のプラスチック発泡複合体は、断熱性、クッション性、浮揚性を備え、高い機械強度を持つ材料ならびに成形品として、さまざまな用途に利用される。
プラスチックの発泡体は、極めて小さい気泡とこれを取り巻く薄い気泡膜で成り、気体の占める体積分率が高く対流が少ないので、断熱性、クッション性、浮揚性が良好でかつ安価である。そのため、広い分野で大量に用いられている。プラスチックの発泡体はこのような特長を持つ反面、強度が低いため単独では使用しにくい。プラスチックの薄い気泡膜は水分を透過させるため、プラスチックの発泡体は吸湿し断熱性が低下する。また、プラスチックの発泡体は小さい圧力でもクリープし、時間の経過で収縮しやすく、耐候性が悪いなどの欠点もある。これらの欠点を補うため、プラスチック発泡体の表面にプラスチックの表皮を設ける技術が開発された。その一つは、まずプラスチックの表皮を回転成形方法で作り、次に、注入発泡によりポリウレタンのコアを内部に形成する方法である。この方法では、表皮とコアの接着が弱く、成形体の曲げ強度、衝撃強度が十分でない。他の一つは、まずプラスチックの表皮をブロー成形で作り、その中に発泡体粒子を入れこれを加熱し発泡させてコアを形成する方法である。この技術では、表皮の変形を防ぐため、コアの形成を高温で行うことができない。コアの内部に粒子の間隙が残りやすく、表皮とコアの接着も不十分で成形体に歪が残る。そのため、成形体は、曲げ強度、衝撃強度が低く、時間経過で変形しやすい。大型成形体を作ることも難しい。これらはいずれも、二工程で成形するため、コストも高い。
発明者の一人は過去に、プラスチックの粉末と、有機過酸化物および発泡剤を配合したポリオレフィンの粒状体を金型に入れ、金型を回転しながら加熱する回転成形により、表皮とコアの発泡体が一体化したプラスチック発泡複合体を作る方法を開発した(USP3814778およびUSP3914361)。この技術によると、発泡体の機械強度は改善され、断熱性の低下やクリープもある程度抑えられる。しかし、コアを例えば20倍超の高倍率に発泡させて成形体の軽量化を図ると、機械強度が大きく低下する傾向があり、改良が必要であった。
発明者らは、コアの内部に、非発泡または低発泡プラスチックの区画を設ける方法を開発した(例えば、特許文献1参照)。この方法は、発泡複合体の機械強度を向上させる方法として有効であるが、コアを高倍率に発泡させることが困難である上、区画の比率を高めると成形体の見かけ比重が増大し、軽量性の特徴が失われる。現状では、軽量で高い機械強度を持つプラスチック発泡複合体は得られていない。
また、発明者らの最近の研究によれば、架橋ポリオレフィンの発泡体をコアとするプラスチック発泡複合体に、成形後かすかな臭いが残ることがある。用途によっては、臭いのないプラスチック発泡複合体が必要となるが、その解決方法はまだ見出されていない。
国際公開WO/089219A1号パンフレット
これまで、軽量で高い機械強度を持つプラスチック発泡複合体の開発は成功していない。また、公知の方法で作る、架橋ポリオレフィンの発泡体をコアに持つプラスチック発泡複合体は、成形後も長く臭気が残留する場合があるので、用途によっては問題となる。本発明は、これらの課題を解決し、さまざまな用途に対応して、軽量性と機械強度のバランスがとれたプラスチック発泡複合体を提供することを目的としている。
発明者らは、プラスチックの表皮と架橋ポリオレフィン発泡体のコアから成るプラスチック発泡複合体を回転成形により作る公知の方法において、架橋ポリオレフィンの発泡体を、プラスチック膜を壁面とする複数の小室内に充満させ、小室を一体化して成るコアを、膜を介して表皮と接着させる改良を加えることにより、軽量性と機械強度が従来以上に高められたプラスチック発泡複合体を安定して成形できることを見出した。また、このプラスチック発泡複合体が無臭であることを見出した。
本発明の製造方法において、発泡剤と有機過酸化物を配合したポリオレフィンの粒状体の全面に、熱可塑性プラスチックの被覆を設けた二層の粒状体を成形し、これより小さなプラスチックの粉末または細粒とともに金型に投入し、金型を回転しながら有機過酸化物と発泡剤が分解する温度に加熱することにより、架橋ポリオレフィンの発泡体はプラスチック膜を壁面とする複数の小室内に充満し、小室は集合し一体化してコアを形成し、膜を介してコアが表皮と接着することを見出した。
本発明のプラスチック発泡複合体は、これまでのプラスチック発泡体では困難とされていた、軽量性と機械強度という二つの特性のバランスがとれている。本発明の製造方法によると、発泡剤の分解ガスは粒状体の膨張に効率よく使われるので、軽量なコアができる。また、コアと接着した均一な厚さの表皮形成が促進されるので、丈夫なプラスチック発泡複合体が安定して得られる。臭気が成形品に残留するとう問題もない。そのため、本発明のプラスチック発泡複合体は、軽量、断熱性、浮揚性、耐衝撃性の要求が強い用途に広く利用できる。また、食品、医療用品、乳幼児用品、精密機器、光学機器、電子部品などを収納する容器等にも利用できる。
本発明のプラスチック発泡複合体は、プラスチックの表皮を持つ発泡体であって、架橋ポリオレフィンの発泡体が、プラスチック膜を壁面とする複数の小室内に充満し、小室が集合してコアを形成し、コアが膜を介して表皮と接着していることを特徴とする、プラスチック発泡複合体である。
本発明において、架橋ポリオレフィンの発泡体が、ポリオレフィンに有機過酸化物と発泡剤を配合し、加熱して有機過酸化物を分解させることによりポリオレフィンをゲル化し、さらに発泡剤を分解させて作った20倍超の倍率の発泡体であると、プラスチック発泡複合体は、発泡体本来の軽量性と、本発明の特長である高い機械強度を併せ持つので好ましい。上記発泡体の倍率が30倍超であると、超軽量のプラスチック発泡複合体となるので、さらに好ましい。より好ましくは、33〜100倍、最も好ましくは、35〜85倍である。
本発明の発泡体のポリオレフィンは、架橋可能なポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンの共重合体などである。ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、またはその2種以上の混合物であると、20倍超の倍率の発泡体が特に安定して得られるので好ましい。
ポリオレフィンに配合して用いる有機過酸化物は、ポリオレフィンに、その軟化点以上の温度で練和可能な、高い分解温度を持つ有機過酸化物であり、ジ−t−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−t−ブチルパーオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、またはこれらの2種以上の混合物であると、発泡剤とともにポリオレフィンに練和し、回転成形時に、発泡と同一工程で架橋を行うことができるので好ましい。その配合量が0.1〜1.0PHR、さらには0.2〜0.8PHRであると、発泡ポリオレフィンが均一微細な発泡構造を持つので好ましい。また、ポリオレフィンに配合する有機過酸化物とともに、反応性二重結合を分子中に2個以上有する架橋助剤、例えば1,2−ポリブタジエントリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートを使用すると、有機過酸化物単独ではゲル化しにくいポリオレフィンでも、20倍超の発泡倍率が安定して得られるので好ましい。
ポリオレフィンに配合して用いる発泡剤は、ポリオレフィンに、その軟化点以上の温度で練和可能な、高い分解温度を持つ発泡剤であり、アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンジアミン、またはそれらの混合物であると、架橋剤とともにポリオレフィンに練和し、回転成形時に、架橋と同一工程で発泡を行うことができるので好ましい。通常、ポリオレフィンを20倍超の高倍率に膨張させるためには、発泡剤を10PHR以上、好ましくは15〜40PHR配合する。公知技術では、30〜40PHRの発泡剤を配合すると成形体中にボイドが残りやすいので好ましくないが、本製造方法によると、発泡体にボイドはほとんど発生しない。
なお、発泡剤の分解を促進する発泡助剤を併用すると、その分解温度を下げることができる。ステアリン酸亜鉛、亜鉛華、尿素などの発泡助剤が使われる。
なお、発泡剤の分解を促進する発泡助剤を併用すると、その分解温度を下げることができる。ステアリン酸亜鉛、亜鉛華、尿素などの発泡助剤が使われる。
本発明の、プラスチック膜を壁面とする小室の形状は特に規定されないが、本発明の製造方法により形成される小室は、球形またはラグビーボールに近い多面体構造になる。複数の小室が集合して一体のコアを形成し、コアと表皮は、プラスチック膜が介在して強固に溶着する。この特殊な構造は、プラスチック発泡複合体の優れた機械強度と密接に関係し、小室の大きさが、内容積にて平均2〜30cm3であると、プラスチック発泡複合体に加わる外部応力が内部で分散され、その機械強度を高めるので好ましい。
小室の壁となるプラスチック膜は、平均厚さが0.05〜2mmであると、発泡体を相互に接着し、表皮と強固に接着しやすいので好ましい。膜の厚さがこれより薄いと、発泡体を内包する小室間および表皮側に不連続な空隙部分または裂け目が生じやすく、発泡体の発泡倍率の低下およびプラスチック発泡複合体の機械強度の低下を招く。成形体に長期間臭いが残る原因にもなる。膜の厚さが0.08〜2mmであると、その不安もなくなるので、さらに好ましい。
プラスチック膜には、ポリオレフィン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂など、融点または軟化温度が200℃以下の熱可塑性樹脂を用いるが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アイオノマー、またはその2種以上の混合物の膜であると、本発明の製造方法によりその厚さを自由に変えることができる上、優れた特性を持つプラスチック発泡複合体が得られるので好ましい。
表皮の平均の厚さは、回転成形により成形しやすい0.5〜10mmが好ましいが、0.8〜8mmであると、高倍率の発泡体と膜構造から成るコアと強固に接着することにより、優れた特性を持つプラスチック発泡複合体が得られるのでさらに好ましい。表皮が薄いと機械強度が極端に低下する。また、表皮が厚いと、軽量で安価といった発泡体本来の特長が失われる。また、公知の回転成形で作るプラスチック発泡複合体と同様、本発明の表皮は、どの部分も平均厚さの1/2以上の厚さを持つ、均一のものであることが望ましい。厚さが不均一であると、最小厚さの部分が弱点となり、成形体は吸湿しやすく外部応力に対して弱いなどの欠点を持つ。
表皮のプラスチックには、ポリオレフィン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂など、融点または軟化温度が170℃以下の、通常回転成形に用いられる熱可塑性樹脂を用いる。表皮が低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、またはアイオノマーであると、コアを覆う膜の全面と溶着して強固に接着しやすく、優れた特性を持つプラスチック発泡複合体が得られるので好ましい。表皮に、膜のプラスチックと相溶性を有するプラスチックを使用すると、表皮とコアの接着力は強固になるので、プラスチック発泡複合体の機械強度は高く、臭いが残ることもない。それぞれのプラスチックは、溶解性パラメーターに4.5(MPa)1/2を超える差がないものであることが望ましい。
本発明のプラスチック発泡複合体は、その用途によりさまざまな形状に成形できる。したがって、コアの厚さを一概に規定することはできない。しかし、厚みが一定な例えば板状体であれば、コアの厚さは10〜100mmであることが好ましい。10mm未満であると、ランダムな方向性を持つ複数の小室を形成することが困難であり、プラスチック発泡複合体の機械強度にも方向性が生じて好ましくない。コアが100mm超の成形体は、コアの中に中空部分を設けることにより材料の節約が可能なので、その必要性が低い。本発明のプラスチック発泡複合体は、その独特な構造の効果により、コアの中に中空部分を設けることによる特性の低下が少ない。例えば肉厚の成形体や大型の成形体では、小室が集合する中央の位置に、プラスチック発泡複合体の外形と相似形の中空部分を設けることが好ましい。従来のプラスチック発泡複合体の中空成形体では、例えば浮揚材として水中で使用する場合、外力により表皮が壊れると内部に水が入りやすかったが、本発明の中空成形体では、表皮が壊れてもコアの内部に浸水が起こらない。本発明の、中空部分を設けたプラスチック発泡複合体は、大型の浮揚材として、長期間の使用に耐えるものである。
本発明の製造方法によると、金型の内面に、まずプラスチックの粉末または細粒が付着し、均一な厚さの表皮が形成される。次に、表皮の内面に、二層の粒状体が付着する。発泡剤の分解が始まると、粒状体は表皮面から金型の中央に向かって膨張を開始し、粒状体同士が接触すると、被覆の膜の溶融により最密充填に近い状態を作り出す。次の段階では、膨張する粒状体が被覆の膜を広げて小室を形成し、発泡体が室内に充満する。膜は隔壁となり、粒状体の気泡が破れて粗面になることを防ぐ。膜は、隣り合う発泡体の膜と溶融して表皮側の2倍の厚さになるので、空孔や裂け目が生じにくく連続性が保たれ、発泡剤の分解ガスを中に保持する。小室の集合体は表皮の内部で一体化し、その外面の膜は、膨張する内圧により平滑な表皮と溶融し強固に接着する。本発明に独特な、このプラスチック膜の小室形成は、まず、ポリオレフィンをゲル化させる量の有機過酸化物と、ポリオレフィンを20倍超の倍率に膨張させる量の発泡剤を配合したポリオレフィンの全面に、熱可塑性プラスチックの被覆を設けた二層の粒状体を成形しておき、次に二層の粒状体を、これより小さなプラスチックの粉末または細粒とともに金型に投入し、金型を回転しながら、有機過酸化物と発泡剤が分解する温度に加熱することにより達成される。
本発明の製造方法において、プラスチックの粉末または細粒は、通常回転成形に用いる0.03〜2mmの粒径を持つものを使用する。二層の粒状体は、その形状が、粉末または細粒とともに金型の中で流動しやすい球、円筒、ラビオリ状、俵状、またはバレル状のもので、表皮の形成を阻害しないように、粉末または細粒より大きいものを使用する。外形が俵状、またはバレル状であり、胴長3〜15mm、最大胴径3〜15mmで、0.5〜2mm厚さの被覆を全面に持つ粒状体であると、滑らかで均一な厚さの表皮とプラスチック膜が形成され、得られるプラスチック発泡複合体の特性も優れているので好ましい。
二層の粒状体は、プラスチックのさまざまな成型方法により作ることができるが、本発明の俵状、またはバレル状粒状体は、二層押出しが可能な押出機を用い、有機過酸化物と発泡剤を配合したポリオレフィンを、有機過酸化物と発泡剤が分解しない温度でロッド状に押出し、その上にプラスチックを被覆して二層のロッドとし、溶融状態にある二層のロッドを、俵状、またはバレル状に連続的に成型加工し、冷却後粒状体にすると、均一な厚さのプラスチック被覆を持つ俵状、またはバレル状粒状体が連続的に安定して得られるので好ましい。特に、キャタピラ式およびギア式成型機は、溶融状態にある二層のロッドを、高速で巻取りながら、俵状またはバレル状に成型できるので、本発明の俵状粒状体およびバレル状粒状体の成型に好適である。
本発明の回転成形は、通常の設備を使い、公知の成形条件を適用して行うことができる。加熱の方法と条件は、表皮、膜、粒状体それぞれの材料の融点または軟化温度、ならびに有機過酸化物および発泡剤の分解温度を考慮して定め、必要な場合は二段加熱方法を採用する。公知の技術を適用して、部品のインサート、アウトサート、構造材との一体成形ができる。本発明の製造方法により成形するプラスチック発泡複合体は、公知の回転成形では得られない高い機械強度を持つので、部品や構造材とプラスチック発泡複合体との固着も極めて強固である。
本発明のプラスチック発泡複合体は、軽量で、しかも、これまでのプラスチック発泡体およびプラスチック発泡複合体では達成することができなかった高い機械強度を持つので、発泡体の長所である軽量、断熱性、浮揚性、耐衝撃性の要求が強い用途に広く利用できる。また、臭いがないことも相まって、食品、医療用品、乳幼児用品、光学機器、電子部品の容器、収納箱、貯槽として利用可能で、繰返しの使用、長期間の使用にも耐えるものである。
本発明のプラスチック発泡複合体のコアの見かけ比重は、好ましくは0.010〜0.30、さらに好ましくは0.015〜0.25である。なお、コアの見かけ比重は、発泡複合体の重量と体積を測定し、表皮を除いたコアの重量と体積を算出して得た値である。
また、本発明のプラスチック発泡複合体の圧縮強さは、好ましくは0.30〜10kg/cm2、さらに好ましくは0.50〜10kg/cm2である。なお、圧縮強さは、プラスチック発泡複合体から側面の表皮を切除し、JIS・K7208の方法に準じて圧縮強さを測定し、降伏点(5%変形)をもって圧縮強さの値としたものである。
本発明のプラスチック発泡複合体のコアの見かけ比重は、好ましくは0.010〜0.30、さらに好ましくは0.015〜0.25である。なお、コアの見かけ比重は、発泡複合体の重量と体積を測定し、表皮を除いたコアの重量と体積を算出して得た値である。
また、本発明のプラスチック発泡複合体の圧縮強さは、好ましくは0.30〜10kg/cm2、さらに好ましくは0.50〜10kg/cm2である。なお、圧縮強さは、プラスチック発泡複合体から側面の表皮を切除し、JIS・K7208の方法に準じて圧縮強さを測定し、降伏点(5%変形)をもって圧縮強さの値としたものである。
本発明において、表皮を2〜10倍に膨張した低倍率発泡体にすると、柔軟な感触、優れたクッション性および衝突安全性などの特長を持つプラスチック発泡複合体となる。さらに、プラスチックの連続する膜を2〜5倍に膨張した低倍率発泡体にすることも可能である。これらは、特に安全性の要求が厳しい航空機、自動車、車両などの用途、また、病院、託児所、老人ホームなどの用途に好適である。
ついで、本発明を以下の実施例を用いてさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
MFR1.5g/10minのLDPEにパーカドックス(ジ−t−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン)0.31PHRとADCA(アゾジカーボンアミド)20PHRを配合し、二層押出しが可能な押出機を使ってこれを径4mmのロッドに押し出し、その上にMFR7g/10minのHDPEを2mmの厚さに被覆し、溶融状態の二層のロッドを8mm間隔で圧縮しつつ切断し、二層粒状体を作った。切断により接合した部分の最小厚さは0.6mmであった。内法100×100×25mmの金型を使用し、金型にMFR1g/10minのHDPE粉末58gとこの二層粒状体17.7g、14.3g、12.1g、または9.6gを入れ、これを電気加熱式揺動回転型成形機に取り付け、主軸10rpm、副軸5rpmで回転しながら230℃で30分間加熱し、次いで30分間水冷することにより、4種類の発泡複合体を作った。
図1はこの発泡複合体の断面写真である。膜で仕切られた均一な大きさの小室に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっている。小室内の発泡体は、左から40倍、50倍、60倍、70倍に発泡していた。図2は40倍発泡の発泡複合体の断面写真である。小室は直径が約20mmの球形に近い多面体構造であり、膜は厚さが約0.24mmであり、断面のどこをとっても全部繋がった連続膜となっている。表皮と発泡体の間も切れ目なく膜が存在し、表皮と膜および、膜と発泡体はいずれも密着している。
比較のため、同じ回転成形法により、表皮と発泡体からなる発泡複合体を作った。また、表皮と発泡体は上記と同じだが、発泡体のコア中に厚さが約0.5mmで約2倍に発泡した区画状発泡体が存在する発泡複合体を作った。実施例と比較例の発泡複合体の断面構造を、図3の模式図に示す。図中(1)の比較例において、20倍に発泡した発泡体の区画を形成する、2倍に発泡した区画状発泡体には、多数の不連続部分がある。(2)の実施例では、そのような不連続部分はない。
6種類の発泡複合体を切断し、断面構造を測定した結果を表1に示す。また、発泡複合体の重量を測定し、表皮を除いたコアの見かけ比重を算出した結果、および、あらかじめ四つの側面の表皮を発泡複合体から切除し、JIS・K7208の方法に準じて圧縮強さを測定した結果を表1に示す。なお、全ての発泡複合体において圧縮破壊が起こらなかったので、降伏点(5%変形)をもって圧縮強さとした。
上記の測定とは別に、6種類の発泡複合体の臭気測定を、次の方法の感応試験で実施した。年令20歳台、40歳台、および60歳台の男女合計6人により、発泡複合体の臭気を一人でも感じた者がいた場合は臭気ありの判定、全員臭気が感じられなかった場合を臭気なしの判定として、成形から10日後、1ヵ月後、1年後の変化を測定した。その結果、実施例の4種類の発泡複合体は、いずれも10日後から1年後まで臭気なしの結果であったが、比較例の2種類の発泡複合体は、いずれも10日後から1年後まで臭気ありの結果であった。
MFR1.5g/10minのLDPEにパーカドックス(ジ−t−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン)0.31PHRとADCA(アゾジカーボンアミド)20PHRを配合し、二層押出しが可能な押出機を使ってこれを径4mmのロッドに押し出し、その上にMFR7g/10minのHDPEを2mmの厚さに被覆し、溶融状態の二層のロッドを8mm間隔で圧縮しつつ切断し、二層粒状体を作った。切断により接合した部分の最小厚さは0.6mmであった。内法100×100×25mmの金型を使用し、金型にMFR1g/10minのHDPE粉末58gとこの二層粒状体17.7g、14.3g、12.1g、または9.6gを入れ、これを電気加熱式揺動回転型成形機に取り付け、主軸10rpm、副軸5rpmで回転しながら230℃で30分間加熱し、次いで30分間水冷することにより、4種類の発泡複合体を作った。
図1はこの発泡複合体の断面写真である。膜で仕切られた均一な大きさの小室に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっている。小室内の発泡体は、左から40倍、50倍、60倍、70倍に発泡していた。図2は40倍発泡の発泡複合体の断面写真である。小室は直径が約20mmの球形に近い多面体構造であり、膜は厚さが約0.24mmであり、断面のどこをとっても全部繋がった連続膜となっている。表皮と発泡体の間も切れ目なく膜が存在し、表皮と膜および、膜と発泡体はいずれも密着している。
比較のため、同じ回転成形法により、表皮と発泡体からなる発泡複合体を作った。また、表皮と発泡体は上記と同じだが、発泡体のコア中に厚さが約0.5mmで約2倍に発泡した区画状発泡体が存在する発泡複合体を作った。実施例と比較例の発泡複合体の断面構造を、図3の模式図に示す。図中(1)の比較例において、20倍に発泡した発泡体の区画を形成する、2倍に発泡した区画状発泡体には、多数の不連続部分がある。(2)の実施例では、そのような不連続部分はない。
6種類の発泡複合体を切断し、断面構造を測定した結果を表1に示す。また、発泡複合体の重量を測定し、表皮を除いたコアの見かけ比重を算出した結果、および、あらかじめ四つの側面の表皮を発泡複合体から切除し、JIS・K7208の方法に準じて圧縮強さを測定した結果を表1に示す。なお、全ての発泡複合体において圧縮破壊が起こらなかったので、降伏点(5%変形)をもって圧縮強さとした。
上記の測定とは別に、6種類の発泡複合体の臭気測定を、次の方法の感応試験で実施した。年令20歳台、40歳台、および60歳台の男女合計6人により、発泡複合体の臭気を一人でも感じた者がいた場合は臭気ありの判定、全員臭気が感じられなかった場合を臭気なしの判定として、成形から10日後、1ヵ月後、1年後の変化を測定した。その結果、実施例の4種類の発泡複合体は、いずれも10日後から1年後まで臭気なしの結果であったが、比較例の2種類の発泡複合体は、いずれも10日後から1年後まで臭気ありの結果であった。
[実施例2]
実施例1のHDPE粉末92gと二層粒状体62gとを200×200×15mmの金型に入れ回転させながら230℃で30分加熱し、次いで30分間水冷した。得られた発泡複合体は、膜で仕切られた均一な大きさの小室が1列に並び、その内部に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっていた。この発泡複合体の圧縮強度を、実施例1の方法で測定したところ、0.80kg/cm2であった。また、実施例1と同様の臭気測定を実施したが、臭気なしの結果であった。
実施例1のHDPE粉末92gと二層粒状体62gとを200×200×15mmの金型に入れ回転させながら230℃で30分加熱し、次いで30分間水冷した。得られた発泡複合体は、膜で仕切られた均一な大きさの小室が1列に並び、その内部に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっていた。この発泡複合体の圧縮強度を、実施例1の方法で測定したところ、0.80kg/cm2であった。また、実施例1と同様の臭気測定を実施したが、臭気なしの結果であった。
[実施例3]
実施例1と同じHDPE粉末と二層粒状体を使用し、回転成形法により、270×300×30mmの板状体で270×300mmの片面に、その270mmの一辺から10mm離れた位置の上下の中央に幅10mm、深さ10mm、長さ200mmの凹部を一つ、270×30mmの面の中央位置及び、300×30mmの両面の中央位置に凹部と脱着可能な合計3個の凸部を設けた発泡複合体Aを作った。また、330×330×30mmの板状体で、この330×330mmの片面四辺から10mm離れた位置に、発泡複合体Aと同じ形状の凹部を四つ設けた発泡複合体Bを作った。発泡複合体A4枚と発泡複合体B2枚を、その凹凸部を利用して組み立て、極めて丈夫で断熱性、密閉性が良く水漏れしない上、組み立て解体が容易な内容積が270×270×270mmの箱体を得た。この箱体は優れた密閉性を持ち、しかも、成形直後に密閉し、そのまま1年後に実施例1の臭気測定を実施したところ、臭気なしの判定であった。また、箱体を解体し、発泡複合体AおよびB部分の断面写真を観察したところ、いずれも、膜で仕切られた均一な大きさの小室に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっていた。
実施例1と同じHDPE粉末と二層粒状体を使用し、回転成形法により、270×300×30mmの板状体で270×300mmの片面に、その270mmの一辺から10mm離れた位置の上下の中央に幅10mm、深さ10mm、長さ200mmの凹部を一つ、270×30mmの面の中央位置及び、300×30mmの両面の中央位置に凹部と脱着可能な合計3個の凸部を設けた発泡複合体Aを作った。また、330×330×30mmの板状体で、この330×330mmの片面四辺から10mm離れた位置に、発泡複合体Aと同じ形状の凹部を四つ設けた発泡複合体Bを作った。発泡複合体A4枚と発泡複合体B2枚を、その凹凸部を利用して組み立て、極めて丈夫で断熱性、密閉性が良く水漏れしない上、組み立て解体が容易な内容積が270×270×270mmの箱体を得た。この箱体は優れた密閉性を持ち、しかも、成形直後に密閉し、そのまま1年後に実施例1の臭気測定を実施したところ、臭気なしの判定であった。また、箱体を解体し、発泡複合体AおよびB部分の断面写真を観察したところ、いずれも、膜で仕切られた均一な大きさの小室に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっていた。
[実施例4]
実施例1と同じHDPE粉末と二層粒状体を使用し、回転成形法により、一辺が300mmの正方形で厚さが30mmの板(底)の4辺に、300×500×30mmの板(側面)が繋がった板状体であって、正方形の板と矩形の板が繋がった部分に、巾5mmで深さ27mmの溝を設けた板状体を成形した。この板は、溝部で折り曲げるだけの簡単な加工で箱体となる上、元の板状体に戻すことができる。箱体側面の上面(矩形の板が正方形の板と繋がる辺の対辺となる面)の四ヶ所に200×10×10mmの凹型部を設けておき、4辺に沿って200×10×10mmの凸部を設けた300×300×30mmの板を嵌め、容器とすることができる。この容器は組み立て解体が容易で保温性が良好であり、臭気も認められないことから、給食などに好適な通いの保温箱となるものであった。
実施例1と同じHDPE粉末と二層粒状体を使用し、回転成形法により、一辺が300mmの正方形で厚さが30mmの板(底)の4辺に、300×500×30mmの板(側面)が繋がった板状体であって、正方形の板と矩形の板が繋がった部分に、巾5mmで深さ27mmの溝を設けた板状体を成形した。この板は、溝部で折り曲げるだけの簡単な加工で箱体となる上、元の板状体に戻すことができる。箱体側面の上面(矩形の板が正方形の板と繋がる辺の対辺となる面)の四ヶ所に200×10×10mmの凹型部を設けておき、4辺に沿って200×10×10mmの凸部を設けた300×300×30mmの板を嵌め、容器とすることができる。この容器は組み立て解体が容易で保温性が良好であり、臭気も認められないことから、給食などに好適な通いの保温箱となるものであった。
[実施例5]
回転成形により、表2に示す4種類の構造を持つ断熱箱を作った。1、2のものは、連続膜の小室がない箱であり、3、4の実施例と比較するために作った比較例である。箱の大きさは、いずれも外形寸法が146×146×146mmで、六つの面の厚さは約40mmである。
断熱箱の断熱性能について、断熱箱に80℃の熱水を満たし、室温25℃で放熱による水温の変化を測定し、図4に示す保温性能の経時変化を得た。コアがなく、表皮のみの構造を持つ中空のダブルウォール箱の温度低下は最も早く、これに対して、No.2〜4の発泡複合体の断熱箱は、保温性能が良好である。膜の小室内に発泡体が充満したコアを持つNo.3の発泡複合体は、保温性は若干低いが箱の強度は高く、断熱箱の寸法変化を成形後6ヶ月間測定したところ、最初の3日間は僅かな収縮が認められた(3%)が、その後収縮はなく、寸法安定性が優れていることが分かった。No.4の発泡複合体は、その吸水性を低下させることがない低倍率で表皮と膜を発泡させるとともに、発泡体の発泡倍率を40倍に高めたものであり、図4により明らかなとおり、優れた保温性能を持つものであった。
上記と同じ構造の断熱箱を、成型3日後に密封し、常温で保管し、6ヶ月後に実施例1の臭気測定を実施したところ、No.1、3、4は「臭気なし」の判定であり、No.2は、高倍率発泡体に残る有機過酸化物の分解生成物の臭気と思われる芳香がかすかに認められた。この結果から、本発明の断熱箱は、臭気を嫌う物質を保管するための丈夫で軽量な断熱箱として優れていることが分かった。
回転成形により、表2に示す4種類の構造を持つ断熱箱を作った。1、2のものは、連続膜の小室がない箱であり、3、4の実施例と比較するために作った比較例である。箱の大きさは、いずれも外形寸法が146×146×146mmで、六つの面の厚さは約40mmである。
上記と同じ構造の断熱箱を、成型3日後に密封し、常温で保管し、6ヶ月後に実施例1の臭気測定を実施したところ、No.1、3、4は「臭気なし」の判定であり、No.2は、高倍率発泡体に残る有機過酸化物の分解生成物の臭気と思われる芳香がかすかに認められた。この結果から、本発明の断熱箱は、臭気を嫌う物質を保管するための丈夫で軽量な断熱箱として優れていることが分かった。
[実施例6]
回転成形により、表3に示す5種類の構造を持つ箱型試料を成形した。1および2のものは、成形体内部に連続膜の小室のない試料であり、3〜5の実施例と比較するために作った。試料の大きさは、いずれも外形寸法が100×100×100mmである。試料の諸物性を表4に示す。圧縮強さの測定は、実施例1の方法に準じて行った。
測定結果を表4に示す。1の試料である、20倍発泡のLDPEをコアに持つ発泡複合体に対して、非発泡で不連続な0.15mm厚さの帯状LDPEがコア内に混在する試料2のものは、成形体の見かけ比重は3倍強となるものの、圧縮強さは6倍強と高い。したがって、帯状LDPEが補強体として有効であることが分かる。これに対して、約0.15mm厚さのLDPEの連続膜で小室を形成し、小室内に20倍発泡のLDPEを充満させ、小室が集合し一体化したコアに、連続膜を介して表皮を設けた本発明の試料3〜5のものは、これと同じ見かけ比重を持つものは極めて高い圧縮強さを示し、見かけ比重0.095のものも、圧縮強さが試料1の3倍強であることが分かった。また、試料1〜5を、成形後それぞれ密閉容器中常温で保管し、7日後に取り出して実施例1の臭気測定を実施したところ、1と2のものには臭気が残っていたが、3〜5のものでは臭気が認められなかった。この結果から、本発明のプラスチック発泡複合体は、丈夫で且つ臭気を嫌う用途に好適であることが分かった。
回転成形により、表3に示す5種類の構造を持つ箱型試料を成形した。1および2のものは、成形体内部に連続膜の小室のない試料であり、3〜5の実施例と比較するために作った。試料の大きさは、いずれも外形寸法が100×100×100mmである。試料の諸物性を表4に示す。圧縮強さの測定は、実施例1の方法に準じて行った。
[実施例7]
実施例1と同じ押出機および回転成形機を用い、外形が100×100×25mmの種々の試料を作成した。まず、ADCAの配合量を20PHRから30PHRに増やした以外は実施例1と同様の方法で、径4mmのロッドの上に2mm厚さのHDPEを被覆した二層のロッドを押し出し、溶融状態の二層のロッドを8mm間隔で圧縮しつつ切断し、ラビオリ状粒状体を作った。切断により接合した部分はHDPEであり、被覆層の最小厚さは0.6mmであった。これとは別に、キャタピラ式成型機を使い、二層のロッドを巻き取りつつバレル状に成形し、長さが8mm、中心の胴径と端部の径がそれぞれ4mmと8mmで、最小厚さ部分が1mmのHDPEの被覆を全面に持つバレル状粒状体を作った。また、同じ方法により、長さが8mm、胴径が8mmで、最小厚さ部分が1mmのHDPEの被覆を全面に持つ俵状粒状体を作った。この、図5に示す形状を持つ3種類の二層粒状体を、HDPE粉末58gとともに金型に投入し、実施例1と同じ条件で成形した。二層粒状体の投入量を、表5に示すとおりNo.1〜5で変化させたところ、コア中の発泡体の発泡倍率は最大70倍まで増大し、表5に示す種々の見かけ比重を持つ発泡複合体が得られた。試料の断面構造を観察した結果、いずれも、膜で仕切られた均一な大きさの小室に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっているものであり、コアとの界面に剥離はなく、小室の隔膜も均一な厚さで不連続な部分はなく、室内の発泡体にはボイドがなかった。しかし、表皮の外観を比べると、ラビオリ状粒状体を使ったものでは、局部的にコアを覆う膜の模様が透かして見えた。一方、俵状およびバレル状粒状体を使ったものでは、このようなむらはなく、表皮厚さの均一性が極めて高い。このむらが出る現象は、ラビオリ状粒状体を使ってもコアの発泡倍率が30倍未満であれば認められず、コアの発泡倍率を30倍超に高めると起こる場合があることが分かった。
比較のため、ADCAの配合量を30PHRとしたロッドを切断して作った、被覆のない粒状体を上記の二層粒状体の代わりに用い、回転成型を試みた。しかし、その結果は成形不良であり、30分間の水冷中に水が表皮を通して内部に侵入した。
また、比較のために、ラビオリ状粒状体を作ったときの二層のロッドを冷却した後、8mm間隔で切断し、端面に被覆のない二層の粒状体を作った。この二層粒状体を用い、回転成型を試みたが、上記と同様、成形不良であった。
表5のNo.1〜3の試料の、断面構造を観察した結果および、実施例1の方法に準じて圧縮強さを測定した結果を、表6に示す。No.1〜3の試料は、表5の見かけ比重の数値から明らかなように、極めて軽量であるにもかかわらず高い圧縮強さを持つことが分かる。また、成形の一ヵ月後に、実施例1の臭気測定をNo.1〜5の試料に実施したところ全て臭気なしの判定であった。
実施例1と同じ押出機および回転成形機を用い、外形が100×100×25mmの種々の試料を作成した。まず、ADCAの配合量を20PHRから30PHRに増やした以外は実施例1と同様の方法で、径4mmのロッドの上に2mm厚さのHDPEを被覆した二層のロッドを押し出し、溶融状態の二層のロッドを8mm間隔で圧縮しつつ切断し、ラビオリ状粒状体を作った。切断により接合した部分はHDPEであり、被覆層の最小厚さは0.6mmであった。これとは別に、キャタピラ式成型機を使い、二層のロッドを巻き取りつつバレル状に成形し、長さが8mm、中心の胴径と端部の径がそれぞれ4mmと8mmで、最小厚さ部分が1mmのHDPEの被覆を全面に持つバレル状粒状体を作った。また、同じ方法により、長さが8mm、胴径が8mmで、最小厚さ部分が1mmのHDPEの被覆を全面に持つ俵状粒状体を作った。この、図5に示す形状を持つ3種類の二層粒状体を、HDPE粉末58gとともに金型に投入し、実施例1と同じ条件で成形した。二層粒状体の投入量を、表5に示すとおりNo.1〜5で変化させたところ、コア中の発泡体の発泡倍率は最大70倍まで増大し、表5に示す種々の見かけ比重を持つ発泡複合体が得られた。試料の断面構造を観察した結果、いずれも、膜で仕切られた均一な大きさの小室に発泡体が充満し、小室の集合体がコアを形成し、均一な厚さの表皮と密着して一体となっているものであり、コアとの界面に剥離はなく、小室の隔膜も均一な厚さで不連続な部分はなく、室内の発泡体にはボイドがなかった。しかし、表皮の外観を比べると、ラビオリ状粒状体を使ったものでは、局部的にコアを覆う膜の模様が透かして見えた。一方、俵状およびバレル状粒状体を使ったものでは、このようなむらはなく、表皮厚さの均一性が極めて高い。このむらが出る現象は、ラビオリ状粒状体を使ってもコアの発泡倍率が30倍未満であれば認められず、コアの発泡倍率を30倍超に高めると起こる場合があることが分かった。
比較のため、ADCAの配合量を30PHRとしたロッドを切断して作った、被覆のない粒状体を上記の二層粒状体の代わりに用い、回転成型を試みた。しかし、その結果は成形不良であり、30分間の水冷中に水が表皮を通して内部に侵入した。
また、比較のために、ラビオリ状粒状体を作ったときの二層のロッドを冷却した後、8mm間隔で切断し、端面に被覆のない二層の粒状体を作った。この二層粒状体を用い、回転成型を試みたが、上記と同様、成形不良であった。
[実施例8]
プラスチック発泡複合体の有望な用途の一つに、断熱性容器があるが、従来の発泡複合体では高倍率の発泡体コアができず、しかも、発泡倍率を高めると発泡複合体の剛性が下がるため、実用化が困難であると考えられていた。要求される性能は、見掛け発泡倍率が10倍以上で剛性(5%変形させたときの圧縮強さ)が0.9kg/cm2以上であるが、このためには、コアを補強する樹脂層は樹脂の密度が0.95以上で、かつ発泡コア全体に占める樹脂の体積分率が0.05以上好ましくは、0.06以上である。
実施例7のバレル状粒状体を用い、実施例7と同様の方法で100×100×100mmの立方体試料を作製した。また、比較のため、実施例7で作った、端面に被覆のない二層の粒状体を用い、同様の試料を作製した。表皮はいずれも2mm厚さのHDPEである。表7に、得られた5種類の構造と特性を示す。表中のコア見掛け発泡倍率は、補強体(比較例)または小室の膜(実施例)を含むコアの見掛け上の発泡倍率である。剛性は、実施例1の圧縮強さと同じ、5%変形時の降伏点をもって示した。
試料1の2種類のものは、端面に被覆のない二層の粒状体を用いて作った比較例である。試料2〜5のものは、バレル状粒状体を用いて作った実施例である。
表7から明らかなとおり、比較例のものは、いずれも、軽量・高剛性の目的には達しないものであった。試料2のものは、従来の技術では、低密度の樹脂を使って成形困難とされていた、コアの見掛け発泡倍率10倍の成形が可能となったことを示す例である。
試料3〜5のものは、コアの発泡倍率がいずれも10倍を超えても、なお高い剛性を示し、軽量・高剛性の目的に十分達するものであった。
プラスチック発泡複合体の有望な用途の一つに、断熱性容器があるが、従来の発泡複合体では高倍率の発泡体コアができず、しかも、発泡倍率を高めると発泡複合体の剛性が下がるため、実用化が困難であると考えられていた。要求される性能は、見掛け発泡倍率が10倍以上で剛性(5%変形させたときの圧縮強さ)が0.9kg/cm2以上であるが、このためには、コアを補強する樹脂層は樹脂の密度が0.95以上で、かつ発泡コア全体に占める樹脂の体積分率が0.05以上好ましくは、0.06以上である。
実施例7のバレル状粒状体を用い、実施例7と同様の方法で100×100×100mmの立方体試料を作製した。また、比較のため、実施例7で作った、端面に被覆のない二層の粒状体を用い、同様の試料を作製した。表皮はいずれも2mm厚さのHDPEである。表7に、得られた5種類の構造と特性を示す。表中のコア見掛け発泡倍率は、補強体(比較例)または小室の膜(実施例)を含むコアの見掛け上の発泡倍率である。剛性は、実施例1の圧縮強さと同じ、5%変形時の降伏点をもって示した。
試料1の2種類のものは、端面に被覆のない二層の粒状体を用いて作った比較例である。試料2〜5のものは、バレル状粒状体を用いて作った実施例である。
表7から明らかなとおり、比較例のものは、いずれも、軽量・高剛性の目的には達しないものであった。試料2のものは、従来の技術では、低密度の樹脂を使って成形困難とされていた、コアの見掛け発泡倍率10倍の成形が可能となったことを示す例である。
試料3〜5のものは、コアの発泡倍率がいずれも10倍を超えても、なお高い剛性を示し、軽量・高剛性の目的に十分達するものであった。
[実施例9]
実施例1で作った二層粒状体と同じ方法で、HDPEの被覆の代わりにハイミラン1650(三井化学製 アイオノマー Znイオンタイプ MFR1.5g/min)の樹脂で被覆した二層粒状体を製造した。内法100×100×25mmの金型を使用し、金型中央部に直径7.8mm長さ65.7mmのボルトをインサートした。この金型に実施例1と同じ様にMFR1g/minのHDPE粉末58g、上記二層粒状体23.3gとを入れ、電気加熱式揺動回転成形機で230℃30分加熱し、次いで30分間冷却し発泡複合体を作った。二層粒状体は良く発泡し、発泡体を覆った膜は強靭で弾性に富み、しかもインサートした金属のボルトとよく接着した発泡複合体が得られた。
実施例1で作った二層粒状体と同じ方法で、HDPEの被覆の代わりにハイミラン1650(三井化学製 アイオノマー Znイオンタイプ MFR1.5g/min)の樹脂で被覆した二層粒状体を製造した。内法100×100×25mmの金型を使用し、金型中央部に直径7.8mm長さ65.7mmのボルトをインサートした。この金型に実施例1と同じ様にMFR1g/minのHDPE粉末58g、上記二層粒状体23.3gとを入れ、電気加熱式揺動回転成形機で230℃30分加熱し、次いで30分間冷却し発泡複合体を作った。二層粒状体は良く発泡し、発泡体を覆った膜は強靭で弾性に富み、しかもインサートした金属のボルトとよく接着した発泡複合体が得られた。
以上説明したごとく、本発明のプラスチック発泡複合体は、軽量で、しかも、これまでのプラスチック発泡体およびプラスチック発泡複合体では達成することができなかった高い機械強度を持つので、発泡体の長所である軽量、断熱性、浮揚性、耐衝撃性の要求が強い用途に広く利用できる。また、臭気がないことも相まって、食品、医療用品、乳幼児用品、精密機器、光学機器、電子部品関係の容器、収納箱、貯槽として利用可能で、繰返しの使用、長期間の使用にも耐えるものである。
1 プラスチック表皮
2 架橋ポリオレフィン発泡体
3 プラスチック膜
4 20倍に発泡した発泡体
5 2倍に発泡した区画状発泡体
6 70倍に発泡した発泡体
7 2枚の膜の接合面
8 有機過酸化物と発泡剤を配合したポリオレフィン層
9 プラスチックの被覆層
2 架橋ポリオレフィン発泡体
3 プラスチック膜
4 20倍に発泡した発泡体
5 2倍に発泡した区画状発泡体
6 70倍に発泡した発泡体
7 2枚の膜の接合面
8 有機過酸化物と発泡剤を配合したポリオレフィン層
9 プラスチックの被覆層
Claims (15)
- コアと、プラスチック表皮を持つ発泡複合体であって、
コアが、架橋ポリオレフィン発泡体を内包する、プラスチック膜からなる複数の小室が相互に接着してなる集合体からなり、
プラスチック表皮が、コアと接着していることを特徴とする、プラスチック発泡複合体。 - 架橋ポリオレフィン発泡体が、有機過酸化物と発泡剤を配合したポリオレフィンを加熱して、有機過酸化物を分解させることによりポリオレフィンをゲル化し、さらに発泡剤を分解させることにより、ゲル化したポリオレフィンを20倍超の倍率に発泡させたものである、請求項1記載のプラスチック発泡複合体。
- ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、またはこれらの2種以上の混合物であり、有機過酸化物が、ジ−t−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−t−ブチルパーオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、またはこれらの2種以上の混合物であり、有機過酸化物の配合量が0.1PHR以上である、請求項2記載のプラスチック発泡複合体。
- ポリオレフィンが、さらに、分子内に反応性二重結合を2個以上有する架橋助剤を配合したものである、請求項2または3記載のプラスチック発泡複合体。
- 小室の体積が平均2〜30cm3である、請求項1〜4いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- プラスチック膜の平均厚さが、0.05〜2mmである、請求項1〜5いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- プラスチック膜が、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アイオノマー、またはこれらの2種以上の混合物からなる膜である、請求項1〜6いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- 表皮の平均厚さが、0.8mm以上8mm以下である、請求項1〜7いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- 表皮が、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アイオノマー、またはこれらの2種以上の混合物からなる、請求項1〜8いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- プラスチック膜が、2〜5倍の倍率に発泡させた発泡体の膜である、請求項1〜9いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- 表皮が、2〜10倍の倍率に発泡させた発泡体の表皮である、請求項1〜10記載のプラスチック発泡複合体。
- コアの内部に、コアの外形と相似形の中空部分を設けた、請求項1〜11いずれか記載のプラスチック発泡複合体。
- プラスチック粉末または細粒と、これより大きな粒状体を、金型に投入し、金型を回転しながら加熱する発泡複合体の製造方法であって、
粒状体が、ポリオレフィンをゲル化させる量の有機過酸化物と、ポリオレフィンを20倍超の倍率に膨張させる量の発泡剤を配合したポリオレフィン層の全面に、プラスチックの被覆層を有する二層の粒状体であり、
金型を加熱する温度が、有機過酸化物と発泡剤が分解する温度である、請求項1〜12いずれか記載のプラスチック発泡複合体の製造方法。 - 二層の粒状体が、胴長3〜15mm、最大胴径3〜15mmの俵状粒状体またはバレル状粒状体で、プラスチック被覆層の厚さが0.3〜5mmである、請求項13記載のプラスチック発泡複合体の製造方法。
- 有機過酸化物と発泡剤を配合したポリオレフィンを、押出機を用いてロッド状に押出し、その上にプラスチックを被覆して二層のロッドとし、溶融状態にある二層のロッドを俵状、またはバレル状に成型加工することにより得た、俵状粒状体、またはバレル状粒状体、またはその混合物を用いる、請求項14記載のプラスチック発泡複合体の製造方法。
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