JP2008160053A - 集電体、電極および蓄電装置 - Google Patents

集電体、電極および蓄電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 不働態皮膜の影響が抑えられた集電体、電極および蓄電装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の集電体は、アルミニウムよりなる基材と、基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性ともつ導電材とが混在した接合層と、接合層上に形成され、導電材を有する導電体層と、を有し、導電体層の表面に凹凸が形成されたことを特徴とする。本発明の電極および蓄電装置は、本発明の集電体を用いてなることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アルミニウム集電体、電極およびこれらを用いてなる蓄電装置に関する。
近年、環境汚染が地球規模で大きな問題となっており、特に、ガソリン自動車の排気ガスは大気汚染の汚染源の一つとなっている。このため、排気ガスの排出量を低減させた自動車や排気ガスを出さない自動車の開発が進められている。排気ガスの排出量を低減させた自動車の一つとして、内燃機関と電気モータとを組み合わせたハイブリッド自動車がある。また、排気ガスを出さない自動車の一つとして、電気自動車がある。これらの自動車は、二次電池やキャパシタなどの蓄電装置に蓄電された電気を動力源として駆動する。
自動車に搭載される蓄電装置には、小型、軽量でありながら、瞬時に大電流を充放電することができることが求められている。すなわち、高出力密度であることが要求されている。高出力密度を得る方法のひとつに、蓄電装置を構成する各種の材質の抵抗(蓄電装置の内部抵抗)を低減する方法がある。
一般に、車両に搭載される蓄電装置は、重量エネルギー密度を向上させるために、正極および負極がシート状に形成され、同じくシート状に形成されたセパレータを介して、シート状の正極および負極が巻回あるいは積層された状態で、ケース内に納められた構成を有している。シート状の電極板は、集電体となる金属箔の表面に、活物質を含む合剤層を形成した構造をしている。
蓄電装置において、集電体には、アルミニウム箔が用いられている。アルミニウムは、表面に酸化アルミニウムよりなる不働態皮膜が形成されている。つまり、通常のアルミニウムよりなる集電体は、不働態皮膜を有している。また、蓄電装置が駆動して、アルミニウムよりなる集電体が高電位に晒されると、周囲の電解液と反応して高抵抗な皮膜が形成されることが確認された。
このように、蓄電装置には、アルミニウムよりなる集電体の表面に形成される酸化皮膜や高抵抗な皮膜により、内部抵抗が増加するという問題があった。内部抵抗が増加すると、大電流で充放電を行ったときに電圧降下を招き、この結果として、蓄電装置の出力の低下を招いていた。
酸化皮膜や高抵抗な皮膜等の不働態皮膜の問題に対して、特許文献1〜3が開示されている。
特許文献1には、アルミニウム箔の表面に、アルミニウム箔の厚みより小さな粒子径の電子導電性粒子が埋め込むことが開示されている。電子導電性粒子をアルミニウム箔に埋め込むことで、内部抵抗の増大を抑えている。
特許文献2には、集電体の表面に、メジアン径が0.8μm以下の微粒炭素が塗布することが開示されている。微粒炭素を付着することで、集電体と電極活物質あるいは電解液との界面の不働態皮膜の形成を阻止する。
特許文献3には、集電体の外部表面を、ハフニウムまたはハフニウム基合金によって形成することが開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に開示された集電体は、アルミニウム箔の表面の不働態皮膜が除去されていない(表面に酸化皮膜が形成された状態でさらなる処理を行っている)ことから、内部抵抗低下の十分な効果が得られないという問題があった。
さらに、特許文献1〜3においては、アルミニウム箔とその表面に形成される導電性の表面層とは、いずれもアルミニウム箔表面の凹凸のアンカー効果により接合されているのみであり、耐久性・信頼性に問題があった。
このような問題に対して、特許文献4には、無酸素雰囲気下でアルミニウム箔表面を研磨して酸化皮膜を除去し、無酸素雰囲気下で活物質層を形成することが開示されている。この特許文献4に開示された方法でも、活物質層とアルミニウム箔(集電体)との接合が、アンカー効果のみであり、接合力が弱いという問題があった。そして、製造された電極のアルミニウムの露出した部分の酸化が発生し、内部抵抗の増大を招くという問題があった。
また、アルミニウム箔の表面上に導電性の材料を配置するものとして、アルミニウム箔にアルミニウムカーバイドを種結晶としてカーボンウィスカを形成した製品(東洋アルミニウム株式会社製、商品名:トーヤルカーボ)がある。しかしながら、この製品は、抵抗の大きなアルミニウムカーバイドが介在しており、カーボンウィスカとアルミニウム箔とが直接結合しておらず、耐久性・信頼性に問題があった。
上記したように、従来の蓄電装置の集電体に用いられるアルミニウム箔には、表面に酸化皮膜があることにより、内部抵抗の増加や、耐久性・信頼性に懸念があった。
特開平7−22606号公報 特開2002−298853号公報 特開2004−63156号公報 特開2000−243383号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、アルミニウム表面の不働態皮膜の影響が抑えられた集電体、電極およびこの集電体や電極を用いた蓄電装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者らはアルミニウムよりなる集電体の表面に導電材が混在する接合層を形成し、その表面上に導電材を含む導電体層を形成することで上記課題を解決できることを見いだした。
すなわち、本発明の集電体は、アルミニウムよりなる基材と、基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性ともつ導電材とが混在した接合層と、接合層上に形成され、導電材を有する導電体層と、を有する集電体であって、導電体層の表面に凹凸が形成されたことを特徴とする。
本発明の電極は、アルミニウムよりなる基材と、基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性をもつ導電材とが混在した接合層と、接合層上に形成され、導電材を有する導電体層と、導電体層上に形成され、イオンを吸蔵・放出可能なもしくは酸化還元反応に伴う電子の授受が可能なまたは電荷を可逆的に蓄えることが可能な電極活物質をもつ活物質層と、を有する電極であって、導電体層の表面に凹凸が形成されたことを特徴とする。
また、本発明の蓄電装置は、上記の集電体または電極を用いてなる蓄電装置であり、請求項1〜3に記載の集電体より形成された電極または請求項4〜9に記載の電極を用いてなることを特徴とする。
本発明の集電体は、不働態皮膜による内部抵抗の上昇が抑えられ、内部抵抗の上昇による蓄電装置の出力特性の低下が抑えられる。また、接合層を有することで、導電体層の剥離が生じなくなり、耐久性・信頼性に優れた集電体となっている。そして、導電体層の表面に凹凸が形成されており、これにより導電体層上に活物質層を形成したときに活物質層に含まれる電極活物質や導電助材などが凹部に入り込み、両層の接合性が向上する。さらに、活物質層に含まれる電極活物質や導電助材と導電体層の接触面積が広くなるため、集電体が取り出すことができる電気量が増加し、この結果、出力性能に優れた蓄電装置を得られる。
本発明の電極は、不働態皮膜による内部抵抗の上昇が抑えられた集電体を用いてなる電極であり、内部抵抗の上昇による出力特性の低下が抑えられた蓄電装置を得られる。また、接合層を有することで、導電体層の剥離が生じなくなり、耐久性・信頼性に優れた電極となっている。さらに、導電体層の表面に凹凸が形成されており、これにより導電体層上に活物質層を形成したときに活物質層に含まれる電極活物質や導電助材が凹部に入り込み、両層の接合性が向上している。さらに、活物質層に含まれる電極活物質や導電助材と導電体層の接触面積が広くなるため、集電体が取り出すことができる電気量が増加し、この結果、出力性能に優れた蓄電装置を得られる。
(集電体)
本発明の集電体は、アルミニウムよりなる基材と、基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性ともつ導電材とが混在した接合層と、接合層上に形成され、導電材を有する導電体層と、を有する。
そして、導電体層の表面に凹凸が形成されている。導電体層の表面に凹凸が形成されたことで、導電体層の表面上に電極活物質を有する活物質層を形成したときに、凹凸の内部にまで活物質層が形成され、導電体層と活物質層の接合性が向上する。また、導電体層の表面に凹凸が形成されると、導電体層と活物質層の接触面積が増大し、活物質層の電極活物質での電極反応により生じた電気の移動量が増加する。この結果、この集電体を用いた蓄電装置の出力特性が向上する。
導電体層の表面の凹凸は、集電体の使用条件により異なるため一概に決定できるものではない。導電体層の表面の凹凸が小さく表面が滑らかとなると、表面の凹凸を形成する凹部の内部に活物質層に含まれる電極活物質や導電助材などが侵入しなくなり凹部の内部に活物質層を形成することが困難となる。この結果、導電体層と活物質層の接合性が低下する。また、従来の活物質層は、電極活物質粒子が分散した活物質ペーストを集電体の表面(導電体層の表面)に塗布して形成されている。導電体層の表面の凹凸が小さい(表面粗さRaが小さい)場合には、導電体層の凹凸の凹部の内部に活物質層に含まれる電極活物質や導電助材などが入らなくなり、電極反応により生じる電気を十分に取り出せなくなる。このため、導電体層の表面は、その表面粗さが、その後の活物質層の形成に用いられる電極活物質粒子の粒径(平均粒径)よりも大きいことが好ましい。
一般的に、活物質ペーストには、平均粒径が1.0μmの電極活物質が用いられており、導電体層は、表面粗さ(Ra)が1.0μm以上であることが好ましい。導電体層の表面粗さ(Ra)が1.0μm以上となることで、導電体層の表面上に、接合性に優れた活物質層を形成することができる。
導電体層の表面の凹凸が大きくなりすぎると、導電体層の表面が粗くなりすぎ、活物質層を形成するための活物質の目付量が増加する。さらに、導電体層の表面が粗くなりすぎ、十分な強度を確保できなくなる。一般的な電極は、集電体の表面上に活物質層を形成した後にプレスして活物質層の密度を上げているが、凹凸が大きくなりすぎると、このプレス時に加えられる圧力により導電体層が破損する。このため、導電体層は、表面粗さ(Ra)が3.0μm以下であることが好ましい。
すなわち、導電体層は、表面粗さ(Ra)が1.0〜3.0μmであることが好ましい。
本発明の集電体は、導電性を備えた導電材をもつ導電体層により表面が形成されている。導電体層を持つことで、有機電解液を用いた蓄電装置の電極を形成したときに、基材を構成するアルミニウムが電解液に晒されなくなり、不働態皮膜(高抵抗の皮膜)が形成されなくなる。不働態皮膜による内部抵抗の上昇が抑えられ、内部抵抗の上昇による蓄電装置の出力特性の低下が抑えられる。
また、本発明の集電体は、アルミニウムに導電材が混在する接合層を形成するときに、アルミニウム表面の酸化皮膜が除去されている。つまり、本発明の集電体は、アルミニウム表面の酸化皮膜による内部抵抗の上昇が抑えられている。
さらに、本発明の集電体は、接合層により基材と導電体層とが接合されている。接合層は、基材を構成するアルミニウムと導電体層において導電性を発揮する導電材とが混在しており、接合層と基材および基材接合層と導電体層との接合を同種の材質同士で行うことが可能となり、強固に接合される。これにより、集電体を蓄電装置に使用しても、導電体層の剥離が生じなくなり、耐久性・信頼性に優れた集電体となっている。
接合層は、基材の表面から内部に導電材が拡散して形成されたことが好ましい。基材の表面から内部に導電材が拡散すると、接合層の表面近傍は導電材を多量に含有し、表面から内部に進むにつれて導電材の含まれる割合が徐々に減少する。このような構成となることで、基材および導電体層を強固に接合することができる。また、導電材を基材に拡散させることで、基材と接合層との界面が存在しなくなり、集電体の導電性が向上する。なお、導電材は、基材を構成するアルミニウムマトリックス中に分子レベルで拡散したことが好ましい。
また、基材に導電材を拡散させて接合層を形成することで、導電材を拡散させるときに基材を構成するアルミニウムの表面に存在する酸化皮膜が除去され、酸化皮膜による内部抵抗の上昇が抑えられる。
接合層は、0.01μm以上の厚さで形成されたことが好ましい。ここで、接合層の厚さとは、導電材が含まれる部分の厚さを示す。接合層が0.01μm以上の厚さで形成されることで、基材と導電体層を接合する効果を発揮する。
基材は、30μm以下の厚さで形成されたことが好ましい。基材の厚さが30μmを超えると、集電体の厚さが厚くなりすぎる。集電体の厚さが厚くなると、蓄電装置を形成したときの電極にしめる基材の割合が多くなり、体積あたりの活物質量が減少することとなり、体積効率が低下する。
本発明の集電体において、導電材の材質は特に限定されるものではなく、蓄電装置に用いたときの電解液や使用条件等により適宜選択することができる。集電体が使用される蓄電装置の電解液や使用条件等により、アルミニウム表面に生成される不働態皮膜が異なる。たとえば、リチウムイオン電池にはLiPFを電解質として含む電解液が用いられており、このリチウムイオン電池の集電体において4V程度で生成される不働態皮膜は、フッ化アルミニウムである。このように、蓄電装置内で集電体が晒される電解液の種類や電位により生成される不働態皮膜の材質や厚さが異なる。このため、導電材の材質は、蓄電装置内で集電体が晒される電解液の種類や電位により適宜選択できる。たとえば、炭素材料、導電性セラミックス、導電性酸化物、金属材料の少なくとも一種をあげることができる。また、これらを複合して用いてもよい。
炭素材料は、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブの少なくとも一種であることが好ましい。導電性セラミックスは、チタンカーバイト、チタンナイトライドの少なくとも一種であることが好ましい。導電性酸化物は、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化亜鉛、酸化タングステンの少なくとも一種であることが好ましい。金属材料は、ニッケル、銀、金、白金の少なくとも一種であることが好ましい。
炭素材料、導電性セラミックス、導電性酸化物、金属材料がこれらの材質より選ばれることで、内部抵抗を上昇させることなく導電体層が電気伝導性を持つことが可能となる。
本発明の集電体において、基材を構成するアルミニウムは、純アルミニウムだけでなく、アルミニウム合金であってもよい。たとえば、マンガンを含むアルミニウム合金は、強度が向上しており、基材の厚さを薄くすることが可能となる。また、基材は、焼きなましなどの熱処理が施されていないことが好ましい。
本発明の集電体は、基材、接合層、導電体層を形成できる方法であれば、その製造方法が限定されるものではない。たとえば、導電材を基材に噴射して拡散させる製造方法をあげることができる。このとき、基材を構成するアルミニウムは、酸化を生じやすい金属であるため、常温以下に保持されたことが好ましい。
(電極)
本発明の電極は、アルミニウムよりなる基材と、基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性をもつ導電材とが混在した接合層と、接合層上に形成され、導電材を有する導電体層と、導電体層上に形成され、イオンを吸蔵・放出可能なもしくは酸化還元反応に伴う電子の授受が可能なまたは電荷を可逆的に蓄えることが可能な電極活物質をもつ活物質層と、を有する。
そして、本発明の電極は、導電体層の表面に凹凸が形成されている。導電体層の表面に凹凸が形成されたことで、導電体層の表面上に設けられる電極活物質を有する活物質層が凹凸の内部にまで形成され、導電体層と活物質層の接合性が向上する。また、導電体層の表面に凹凸が形成されたことで、導電体層と活物質層の接触面積が増大し、活物質層の電極活物質での電極反応により生じた電気の移動量が増加する。この結果、本発明の電極を用いた蓄電装置の出力特性が向上する。本発明の電極は、上記の集電体の導電体層上に活物質層を形成してなる電極である。
本発明の電極は、導電体層の表面に凹凸が形成されている。導電体層の表面に凹凸が形成されたことで、凹凸の内部にまで活物質層が形成され、導電体層と活物質層の接合性が向上する。また、導電体層の表面に凹凸が形成されると、導電体層と活物質層の接触面積が増大し、活物質層の電極活物質での電極反応により生じた電気の移動量が増加する。この結果、この集電体を用いた蓄電装置の出力特性が向上する。
導電体層の表面の凹凸は、電極の使用条件により異なるため一概に決定できるものではない。導電体層の表面の凹凸が小さく表面が滑らかとなると、表面の凹凸を形成する凹部の内部に活物質層を形成することが困難となる。この結果、導電体層と活物質層の接合性が低下する。また、従来の活物質層は、電極活物質粒子が分散した活物質ペーストを集電体の表面(導電体層の表面)に塗布して形成されている。導電体層の表面の凹凸が小さい(表面粗さRaが小さい)場合には、導電体層の凹凸の凹部の内部に電極活物質粒子が入らなくなり、電極反応により生じる電気を十分に取り出せなくなる。このため、導電体層の表面は、その表面粗さが、活物質層の形成に用いられる電極活物質粒子の粒径(平均粒径)よりも大きいことが好ましい。
一般的に、活物質ペーストには、平均粒径が1.0μmの電極活物質が用いられており、導電体層は、表面粗さ(Ra)が1.0μm以上であることが好ましい。導電体層の表面粗さ(Ra)が1.0μm以上となることで、導電体層の表面上に、接合性に優れた活物質層を形成することができる。
すなわち、導電体層は、表面粗さ(Ra)が1.0〜3.0μmであることが好ましい。
本発明の電極は、上記の集電体を用いてなる電極であり、上記の集電体は、アルミニウムよりなる基材の表面上に導電体層が形成されており、内部抵抗の上昇が抑えられ、かつ高い耐久性・信頼性を発揮する電極となっている。
本発明の電極は、上記の集電体を用いてなる電極であり、導電体層上に活物質層をもつ電極である。活物質層は、イオンを吸蔵・放出可能なもしくは酸化還元反応に伴う電子の授受が可能なまたは電荷を可逆的に蓄えることが可能な電極活物質をもつ。電極活物質は、本発明の電極を蓄電装置の電極として用いたときに電極反応を生じる物質である。電極活物質が生じる電極反応は、限定されるものではなく、リチウム電池の電極反応のようにイオンをその結晶構造中に吸蔵・放出する反応や、ラジカル電池のように酸化還元反応に伴う電子の授受を行う反応、電気二重層キャパシタのようにその表面に電気二重層を形成する反応をあげることができる。
本発明の電極は、正極と負極のいずれに用いてもよい。たとえば、リチウムイオン電池の電極として用いられるときには、正極であることが好ましい。
本発明の電極において電極活物質は、蓄電装置を構成したときに、イオンを吸蔵・放出する電極反応、酸化還元反応に伴う電子の授受を行う電極反応、イオンを可逆的に担持する電極反応の少なくとも一種の電極反応を生じる物質であれば特に限定されるものではない。電極活物質は、金属酸化物系化合物、ラジカル安定化合物の少なくとも一種であることが好ましい。
金属酸化物系化合物としては、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な金属酸化物系化合物であればよい。金属酸化物系化合物が、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な化合物よりなることで、本発明の電極を用いてリチウムイオン電池を形成することができる。金属酸化物系化合物としては、たとえば、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な金属酸化物系化合物にコバルト系酸化物、ニッケル系酸化物、マンガン系酸化物、鉄オリビン酸系酸化物を含む化合物やこれらの複合酸化物をあげることができる。すなわち、金属酸化物系化合物は、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な金属酸化物系化合物にコバルト系酸化物、ニッケル系酸化物、マンガン系酸化物、鉄オリビン酸系酸化物の少なくとも一種あるいはこれらの複合体を含む化合物であることが好ましい。より具体的には、LiCoO,LiNiO,LiMnO,LiMnや、LiNi1−x−yCo(MはAl,Sr,Mg,Laなどの金属元素)のようなリチウム遷移金属酸化物の一種以上、あるいはこれらの複合体をあげることができる。
ラジカル化合物は、不対電子を備えており、この不対電子が電極反応に用いられる。つまり、この不対電子が電流として集電体を介して取り出される。この結果、酸化還元反応に伴う電子の授受を行う電極反応が進行する。この電極反応を用いた蓄電装置は、電子の授受の容易さから、高出力が得られる効果を発揮する。ラジカル化合物は、電極反応に寄与する不対電子をもつ化合物であれば特に限定されるものではない。ラジカル化合物は、ニトロキシルラジカルを有する化合物、オキシラジカルを有する化合物、窒素ラジカルを有する化合物の少なくとも一種であることが好ましい。
電荷を可逆的に蓄えることが可能な電極反応としては、たとえば、キャパシタの電極において生じる反応をあげることができる。電荷を可逆的に蓄えることが可能な活物質としては、従来公知のキャパシタにおいて用いられている活物質をあげることができ、たとえば、活性炭などの炭素質材料をあげることができる。
本発明の電極において、接合層は、0.01μm以上の厚さで形成されたことが好ましい。ここで、接合層の厚さとは、導電材が含まれる部分の厚さを示す。接合層が0.01μm以上の厚さで形成されることで、基材と導電体層を接合する効果を発揮する。
基材は、30μm以下の厚さで形成されたことが好ましい。基材の厚さが30μmを超えると、集電体の厚さが厚くなりすぎる。集電体の厚さが厚くなると、蓄電装置を形成したときの電極にしめる基材の割合が多くなり、体積あたりの活物質量が減少することとなり、体積効率が低下する。
本発明の電極において、導電材の材質は特に限定されるものではなく、蓄電装置に用いたときの電解液や使用条件等により適宜選択することができる。集電体が使用される蓄電装置の電解液や使用条件等により、アルミニウム表面に生成される不働態皮膜が異なる。たとえば、リチウムイオン電池にはLiPFを電解質として含む電解液が用いられており、このリチウムイオン電池の集電体において4V程度で生成される不働態皮膜は、フッ化アルミニウムである。このように、蓄電装置内で集電体が晒される電解液の種類や電位により生成される不働態皮膜の材質や厚さが異なる。このため、導電材の材質は、蓄電装置内で集電体が晒される電解液の種類や電位により適宜選択できる。たとえば、炭素材料、導電性セラミックス、導電性酸化物、金属材料の少なくとも一種をあげることができる。また、これらを複合して用いてもよい。
炭素材料は、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブの少なくとも一種であることが好ましい。導電性セラミックスは、チタンカーバイト、チタンナイトライドの少なくとも一種であることが好ましい。導電性酸化物は、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化亜鉛、酸化タングステンの少なくとも一種であることが好ましい。金属材料は、ニッケル、銀、金、白金の少なくとも一種であることが好ましい。
炭素材料、導電性セラミックス、導電性酸化物、金属材料がこれらの材質より選ばれることで、内部抵抗を上昇させることなく導電体層が電気伝導性を持つことが可能となる。
本発明の電極において、基材を構成するアルミニウムは、純アルミニウムだけでなく、アルミニウム合金であってもよい。たとえば、マンガンを含むアルミニウム合金は、強度が向上しており、基材の厚さを薄くすることが可能となる。また、基材は、焼きなましなどの熱処理が施されていないことが好ましい。
本発明の電極は、集電体の導電体層に活物質層を形成できる方法であれば、その製造方法が限定されるものではない。たとえば、基材、接合層および導電体層をもつ集電体を製造し、導電体層上に電極活物質を含むペーストを塗布し、乾燥させて活物質層を形成する製造方法をあげることができる。活物質層は、導電体層上に電極活物質を含むペーストを塗布、乾燥させた後に押圧して圧縮してもよい。
(蓄電装置)
本発明の蓄電装置は、上記の集電体を用いてなる蓄電装置であり、請求項1〜2に記載の集電体より形成された電極を用いてなる。また、上記の電極は上記の集電体を用いてなることから、本発明の蓄電装置は、請求項3〜4に記載の電極を用いてなることが好ましい。蓄電装置とは、二次電池やキャパシタなどの電気を充放電可能な装置である。上記の集電体は、アルミニウムよりなる基材の表面上に導電体層が形成されており、不働態皮膜による充放電性能の低下が抑えられている。そして、本発明の蓄電装置は、上記の集電体を用いてなる装置であることから、内部抵抗の上昇が抑えられ、かつ高い耐久性・信頼性を発揮する。
本発明の蓄電装置は、上記した集電体以外は従来公知の蓄電装置と同様な構成とすることができる。
つまり、蓄電装置は、上記の集電体を用いて製造された電極を用いて電極体を形成し、この電極体を非水電解液とともに容器に密封した構成とすることができる。
本発明の蓄電装置は、二次電池であることが好ましい。二次電池は、充放電を繰り返すことが可能な二次電池であればその種類が特に限定されるものではなく従来公知の二次電池を用いることができる。たとえば、リチウム電池などの電解液に有機電解液を用いた二次電池をあげることができる。エネルギー密度が高いことから、二次電池は非水系二次電池であることがより好ましい。非水系二次電池としては、たとえば、リチウムイオン電池をあげることができ、リチウムイオン電池においては上記の集電体を正極の集電体に用いることが好ましい。
本発明の蓄電装置は、キャパシタであることが好ましい。キャパシタも充放電を繰り返すことが可能なキャパシタであればその種類が特に限定されるものではなく従来公知のキャパシタを用いることができる。キャパシタは、充放電時の高速応答性に優れた電気二重層型のキャパシタであることが好ましい。
また、二次電池およびキャパシタは、ひとつの電極体をもつ単電池であっても複数の単電池よりなる組電池であってもいずれでもよい。また、一つの電極体がケースに収容された単セル電池であっても、複数の電極体が一つに収容された複数セル電池であってもいずれでもよい。
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明の実施例として、アルミニウム製集電体およびリチウム電池用正極を製造した。
(実施例1)
まず、厚さ15μmのH材よりなるアルミニウム箔(日本製箔株式会社製、JIS規定の1N30材)を準備した。このアルミニウム箔は、熱処理が施されていないアルミニウム箔である。
このアルミニウム箔を多孔質ステンレス材の表面に固定した。そして、ステンレス材の裏面側から真空吸引してアルミニウム箔をステンレス材に密着させた。
セラミックス材の表面に密着したアルミニウム箔の表面に、平均粒径が1.5μmのチタンカーバイド粒子(日本新金属株式会社製)を常温の条件下で吹き付けた。また、チタンカーバイド粒子の吹きつけは、ノズルを走査してアルミニウム箔表面に50mm四方の面積にチタンカーバイド皮膜(チタンカーバイド層)が形成されるまで行われた。吹き付け時のチタンカーバイド粒子の最大流速は、400m/sであった。
これにより、本実施例の集電体が製造できた。
本実施例の集電体のチタンカーバイド皮膜の表面粗さ(Ra)を測定したところ、1.2μmであった。
本実施例の集電体の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、表面から0.3〜0.5μmの厚さでチタンカーバイド層(導電体層)が形成され、チタンカーバイドがアルミニウムに拡散(混在)してなる接合層が0.1μmの厚さで形成され、残部がアルミニウムよりなる基材層で形成されていることが確認できた。
そして、接合層は、チタンカーバイド層側から基材層側に進むにつれて含まれるチタンカーバイドの割合が徐々に減少していることが確認できた。また、チタンカーバイド層と接合層との界面ならびに接合層中のアルミニウムとチタンカーバイドの界面には不働態皮膜は確認できなかった。本実施例の集電体の断面を模式的に図1に示した。
(電極の製造)
実施例1の集電体からは、リチウム電池用正極を製造することができる。リチウム電池用正極の例を以下に示す。
(実施例1−1)
まず、実施例1と同様な方法で集電体を製造した。
つづいて、正極活物質として平均粒径が10μmのLiNiOを75.3重量部、平均粒径が50nmの導電助材としてグラファイト8.7重量部、CMCを0.9重量部、ポリエチレンオキサイド(PEO)を0.9重量部、バインダとしてPTFEを1.7重量部で準備し、水に分散させて正極合材ペーストを調製した。
調製された正極合材ペーストを集電体の表面の両面に塗布し、80℃で30分間保持して乾燥した。そして、線圧が12kNでハンドプレスした。プレスにより、集電板の表面上での電極活物質の密度が2g/cmとなった。
これにより、本実施例のリチウム電池用正極が製造できた。
(実施例1−2)
まず、実施例1と同様な方法で集電体を製造した。
つづいて、正極活物質として平均粒径が10μmの安定ラジカル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート(PTMA)を57重量部、導電助材として平均粒径が50nmのグラファイト37重量部、CMCを1.0重量部、ポリエチレンオキサイド(PEO)を1.0重量部、バインダとしてPTFEを1.7重量部で準備し、水に分散させて正極合材ペーストを調製した。
調製された正極合材ペーストを集電体の表面の両面に塗布し、70℃で40分間保持して乾燥した。そして、線圧が12kNでハンドプレスした。プレスにより、集電板の表面上での電極活物質の密度が2g/cmとなった。
これにより、本実施例のリチウム電池用正極が製造できた。
(実施例2)
アルミニウム箔の表面に吹き付けられる粒子が、平均粒径が1.5μmのグラファイト粒子であること以外は、実施例1と同様にして本実施例の集電体が製造された。
本実施例の集電体のグラファイト皮膜の表面粗さ(Ra)を測定したところ、1.4μmであった。
本実施例の集電体の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、表面から0.3〜0.5μmの厚さでグラファイト層(導電体層)が、グラファイト層の内部に0.15〜0.3μmの厚さでグラファイトがアルミニウムに拡散(混在)した接合層が、残部がアルミニウムよりなる基材層が形成されていることが確認できた。
そして、接合層においては、グラファイト層側から基材層側に進むにつれて含まれるグラファイトの割合が徐々に減少していることが電子エネルギー損失分光法(Electron Energy−Loss Spectroscopy;EELS)により確認できた。また、グラファイト層と接合層との界面ならびに接合層中のアルミニウムとグラファイトの界面には不働態皮膜は確認できなかった。
(比較例)
本比較例は、実施例1〜2の製造に用いられたアルミニウム箔よりなる。本比較例の集電体は、常温で大気中に保存されており、その表面に酸化皮膜よりなる不働態皮膜が形成されている。本比較例の集電体の表面粗さ(Ra)を測定したところ、0.0814μmであった。
上記したように、上記の各実施例の集電体は、Raが1.0以上となっており、祖面化された表面を有している。これに対し、比較例の集電体は、Raが0.0814μmとかなり小さな値をもつアルミニウム箔である。つまり、実施例の集電体は比較例の集電体よりも凹凸が形成された表面を有している。
これらの集電体を用いて、たとえば、実施例1−1の記載の方法で電極体を製造すると、実施例の集電体を用いてなる電極においては、活物質層を構成する活物質や導電助材などが導電体層の表面の凹凸の内部にまで侵入しており、この結果として活物質層と導電体層が高い接合性をもっている。対して、比較例では表面にほとんど凹凸が形成されていないため、アルミニウム箔表面に形成される活物質層は実施例の場合ほど強い接合性で接合していない。すなわち、実施例の集電体を用いてなる電極は、比較例の集電体を用いてなる電極よりも集電体と活物質層の接合性に優れた電極となっている。
さらに、導電体層の表面粗さが1.0μm以上である実施例1〜2の集電体は、活物質層の形成時に活物質ペーストを均一な厚さで簡単に塗布することができ、活物質ペーストの塗布性に優れた集電体となっていた。加えて、活物質層の密度を上昇したときに、導電体層の破損が生じないため、耐久性・信頼性に優れた集電体となった。
上記したように、各実施例の集電体は、不働態皮膜による内部抵抗の上昇が抑えられ、内部抵抗の上昇による蓄電装置の出力特性の低下が抑えられている。また、活物質層の集電体からの剥離が生じなくなり、耐久性・信頼性に優れた集電体となっている。
このように、各実施例の集電体は、リチウム電池の出力特性を低下することなく耐久性・信頼性に優れた集電体となっており、この集電体を用いた正極は、リチウム電池の出力特性を低下することなく耐久性・信頼性に優れた正極となった。また、この集電体及び正極を用いたリチウム電池は、出力特性・耐久性・信頼性に優れた電池となる。実施例の集電体及び正極を用いたリチウム電池は、たとえば、以下の製造方法を用いて製造することができる。
まず、上記の各実施例に記載の方法で正極を製造する。
負極活物質として黒鉛を、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC)を、それぞれ所定量を秤量し、分散媒の水に分散させて負極合剤ペーストを調製した。
調製された負極合剤ペーストを銅箔よりなる集電体の表面に塗布、乾燥した。これにより、銅箔の表面に負極活物質層が形成された負極が製造できた。
上記の正極および負極を、ポリエチレン製の多孔質膜よりなるセパレータを介して積層させ、電解液とともにアルミニウムよりなる電池ケース内に挿入し、ケースを封口して試験用電池が製造された。電解液は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が体積比で1:1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1mol/Lの割合となるように添加して製造できた。
実施例1の集電体の断面の構成を示した図である。

Claims (5)

  1. アルミニウムよりなる基材と、
    該基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性ともつ導電材とが混在した接合層と、
    該接合層上に形成され、該導電材を有する導電体層と、
    を有する集電体であって、
    該導電体層の表面に凹凸が形成されたことを特徴とする集電体。
  2. 前記導電体層は、表面粗さ(Ra)が1.0〜3.0μmである請求項1記載の集電体。
  3. アルミニウムよりなる基材と、
    該基材の表面上に形成され、アルミニウムと導電性をもつ導電材とが混在した接合層と、
    該接合層上に形成され、該導電材を有する導電体層と、
    該導電体層上に形成され、イオンを吸蔵・放出可能なもしくは酸化還元反応に伴う電子の授受が可能なまたは電荷を可逆的に蓄えることが可能な電極活物質をもつ活物質層と、
    を有する電極であって、
    該導電体層の表面に凹凸が形成されたことを特徴とする電極。
  4. 前記導電体層は、表面粗さ(Ra)が1.0〜3.0μmである請求項3記載の電極。
  5. 請求項1〜2に記載の集電体より形成された電極または請求項3〜4に記載の電極を用いてなることを特徴とする蓄電装置。
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