JP2008155081A - 排水処理方法及び排水処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】過酢酸及び過酸化水素含有の排水処理方法において、過酸化水素の残留を防止できる排水処理方法及び排水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の排水処理方法は、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を常温よりも高い温度に加熱した後(ステップS3、S4)、中和剤を添加して中和し(ステップS5、S6)、次に後過酸化水素分解酵素(ステップS9)を添加することにより、過酸化水素の残留を防止するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、過酢酸及び過酸化水素を含有する排水、例えば、ボトル入り飲料製造時におけるボトル滅菌用薬液タンクの洗浄排水や滅菌後のボトルリンス水を処理する排水処理方法及び排水処理装置に関する。
ボトル入り飲料製造時においてボトルの滅菌用に用いる薬液を収納した薬液タンクの洗浄排水及び滅菌後のボトルリンス水を排水としてそのまま活性汚泥等の生物処理設備に流入させると、生物処理施設内の生物が死滅するおそれがある為、従来、かかる排水を苛性ソーダでアルカリ性にした後、チオ硫酸ナトリウムを添加することにより過酸化水素を分解していた。
しかし、大量のチオ硫酸ナトリウムを用いる為、薬液使用量が増加すると共に、チオ硫酸ナトリウムが硫黄源となる為、COD値が上昇したり、硫黄臭の原因になるという問題があった。
これに対して、特許文献1には、過酸化水素を含有する排水の処理方法として、排水を中和した後に過酸化水素分解酵素を添加して処理することが開示されている。
特開平11−5096号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、排水中の過酸化水素の分解が十分でない為に、その後の処理工程である生物処理設備の生物が死滅することがあった。
特に、過酢酸及び過酸化水素を含有する排水においては、単に、排水を中和後、過酸化水素分解酵素を添加しただけでは、過酸化水素が残留してしまうことがわかった。
そこで、本発明は、過酢酸及び過酸化水素含有の排水処理方法において、過酸化水素の残留を防止できる排水処理方法及び排水処理装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決する為に、請求項1に記載された発明は、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を常温よりも高い温度に加熱した後、中和剤を添加して中和し、次に後過酸化水素分解酵素を添加することを特徴とする。
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、中和後の排水を常温以下に冷却した後、過酸化水素分解酵素を添加することを特徴とする。
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載の発明において、中和時の温度は、70℃以上であることを特徴とする。
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、過酸化水素分解酵素添加時の温度は30℃以下であることを特徴とする。
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載の発明において、中和剤は苛性ソーダであることを特徴とする。
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、過酢酸及び過酸化水素含有の排水は、ボトル入り飲料製造時におけるボトル滅菌用薬液タンクの洗浄排水及びボトルリンス水の少なくとも一方であることを特徴とする。
請求項7に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理方法を行う排水処理装置であって、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を受ける処理槽と、処理槽に設けた加熱用ジャケットと、処理槽内液を冷却器に通して循環させる循環管路とを備え、加熱用ジャケットに蒸気を供給して処理槽を加熱し、処理槽内の排水を冷却器に循環させて冷却することを特徴とする排水処理装置である。
請求項8に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理方法を行う排水処理装置であって、中和処理槽と酵素処理槽とを備え、中和処理槽では過酢酸及び過酸化水素含有の排水を受けた後に中和剤を添加して中和処理し、中和処理した後の中和処理槽内液を酵素処理槽に移して酵素処理槽で過酸化水素分解酵素を添加しており、中和処理槽は蒸気を供給して加熱する加熱用ジャケットを有し、酵素処理槽は槽内液を冷却器に通して循環させて冷却することを特徴とする排水処理装置である。
請求項9に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理方法を行う排水処理装置であって、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を受ける処理槽を備え、処理槽には、処理槽内の液を循環させる循環管路が設けてあり、循環管路には加熱用熱交換器と冷却用熱交換器とが設けてあり、循環管路を流れる液の経路を加熱用熱交換器又は冷却用熱交換器に切り替えて処理層を加熱又は冷却することを特徴とする排水処理装置である。
本発明によれば、実験の結果、過酢酸及び過酸化水素含有排水を常温よりも高い温度に加熱して高い温度で中和剤を添加して中和し、その後過酸化水素分解酵素を添加することにより、過酸化水素の残留が防止できることがわかった。
中和による過酢酸と過酸化水素の平衡は下記式(1)で示され、過酢酸分解酵素による分解反応は、下記式(2)で示される。
(化1)
CH3COOOH(過酢酸)+H2O⇔CH3COOH+H22・・・(1)
2H22+過酸化水素分解酵素⇒2H22+O2・・・・・・・・・(2)
中和剤による中和反応で式(1)は右側に移行するが、一定の平衡関係がある為に、常温(20℃〜40℃)での反応においては中和処理されない過酢酸が残る一方、加熱により平衡関係が崩れて、(1)式の反応が右に進むことがわかった。
このような平衡関係が生じるのは、ボトルの滅菌用薬剤には、過酢酸と過酸化水素の平衡を保つ安定剤が含まれている為に、一定の平衡か保たれることに起因するものと推定される。
したがって、本発明では、中和剤による中和反応を高い温度で行うことにより、(1)式の反応を右に促進して、次に、過酸化水素分解酵素で分解することにより、過酸化水素の残留を防止したものである。
過酸化水素分解酵素は、一般に常温以下で最も活性化する為、常温(20℃〜40℃)以下の温度で処理することが望ましい。特に、過酸化水素分解酵素が最も活性化する30℃以下にすれば、過酸化水素の残留を確実に防止できる。
中和剤による中和処理時の温度は、実験の結果70℃以上とすることが望ましい。70℃以上であれば、中和反応が進み(上記式(1)の平衡が右側に進む)、過酢酸の残留を防止できたからである。
中和剤は、苛性ソーダ(NaOH)が望ましい。従来、中和反応時の中和剤としてチオ硫酸ナトリウムが用いられることがあったが、苛性ソーダによれば、チオ硫酸ナトリウムを用いる場合に比較して、硫黄源の流入がなくなる為、COD値の低減を図ることができると共に硫黄臭が低減するからである。
更に、本発明によれば、中性での処理が可能であるから、従来のように中和剤を過剰添加(アルカリにする)する必要がなく、薬液使用量が少なくて済む。
本発明の方法に用いる排水処理装置においては、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を注入した処理槽を加熱及び冷却する必要があるが、処理槽に配置した加熱用ジャケットに蒸気を供給して加熱し、冷却時には槽内液を冷却器に循環させることにより、簡易で且つ効率の良い加熱及び冷却ができると共に、処理槽における温度制御が容易にできる。
また、中和処理槽(加熱処理層)と酵素処理槽(冷却処理槽)とを別に設ければ、熱量に無駄がなく省エネを図ることができる。
更に、処理槽を一つにして、処理槽内の液の循環管路に冷却用熱交換器と加熱用熱交換器と設け、循環液が冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とを選択的に通過するようにすれば、簡易な構成で且つ排水処理装置のスペースをとらずに加熱及び冷却の温度制御を簡単に且つ迅速に行うことができる。
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる排水処理方法を示すフローチャートであり、図2は第1実施の形態にかかる排水処理装置の構成を示すブロック図であり、図3は第2実施の形態にかかる排水処理装置の構成を示すブロック図であり、図4は第3実施の形態にかかる排水処理装置の構成を示すブロック図である。
まず、図2を参照して第1実施の形態に係る排水処理装置1の構成を説明する。この排水処理装置1は、ボトル入り飲料製造工場におけるボトルの滅菌用に用いる薬液を収納した薬液タンク3の洗浄排水及びボトルのリンス水を排水として処理するものであり、排水には過酢酸及び過酸化水素が含有されている。尚、以下の実施の形態では、薬液タンク3の洗浄排水における排水処理を例に用いて説明する。
排水処理装置1は、薬液タンク3と、薬液タンク3の洗浄排水が流入される処理槽5とが設けてあり、処理槽5には、薬液タンク3の排水導入管6、苛性ソーダ流入管7、酵素流入管9が接続されている。
薬液タンク3は、ボトル入り飲料製造時におけるボトルの滅菌用に用いる薬液を収納したタンクであり、薬剤濃度を調合し直す為に薬液タンク3内を一旦洗浄するときの洗浄排水を処理槽5に送出するようになっている。薬液タンク3と処理槽5との間にはクッションタンク11が設けてあり、クッションタンク11では、先に処理槽5に送出した排水の処理が完了していない場合に一時的に受けて保管する。尚、薬液タンク3及びクッションタンク11では、各タンク3、11の底部に設けたドレインから各々ポンプ13により排水を送出する。
処理槽5の周囲には加熱用ジャケット15が設けてあり、加熱用ジャケット15は蒸気配管17により供給された蒸気を流入して処理槽5を加熱する。加熱用ジャケット15に供給された蒸気(又は結露水)は排出管15aから排出される。
処理槽5は、例えば容量が約10m3 であり、底部にドレイン管4が設けてあると共に反応処理時に激しい泡立ちが生じるため密閉してある。また、処理槽5には温度計、水量計及びPH計(水素イオン濃度計)が設けてあり、これらの各測定器は制御装置(図示せず)に各測定信号を送るようになっている。更に、処理槽5内には撹拌翼19が配置されており、撹拌翼19の駆動により処理槽内液を撹拌する。
苛性ソーダの流入管7は苛性ソーダタンク21に2台の定量ポンプ23、23を介して接続されており、一方の定量ポンプ23が故障しても苛性ソーダの供給ができるようになっている。
酵素流入管9は、酵素タンク25に定量ポンプ27を介して接続されており、定量ポンプ27の吐出側には吐出量チェッカー29が設置してある。酵素は過酸化水素分解酵素(カタラーゼ)である。
一方、処理槽5には処理槽内の液を循環する循環管路31が設けてある。この循環管路31は冷却用管路であり、管路に設けたチューブ式クーラー(冷却器)33で熱交換により冷却するものである。循環管路31は、処理槽5の底部に設けた導出管31aから導出した処理槽内液をポンプ32により送出して処理槽5内の上部から処理槽5内に戻す。尚、冷却水は冷却水導入管35を循環管路31に接続してあり、冷却水を循環管路31に直接導入できるようになっている。
次に、図1及び図2を参照して第1実施の形態にかかる排水処理方法を説明する。処理か開始すると処理槽5に薬液タンク3の洗浄排水を注入する(ステップS1)。この排水は過酢酸及び過酸化水素を含有した排水である。尚、クッションタンク11内に未処理の排水が貯留してあるときには、クッションタンク11から処理槽5内に排水が注入される。
次に、撹拌機を運転して撹拌翼19により処理槽5内の撹拌を開始し(ステップS2)、蒸気供給管17から加熱用ジャケット15に蒸気を導入して(ステップS3)、処理槽5を加熱する。
処理槽5内では温度計により測定された測定信号が制御装置に常時送信されており、制御装置では、予め設定された温度に達したか否か判断する(ステップS4)。設定温度は、70℃以上であり、本実施の形態では、例えば73℃である。
処理槽5内の温度が設定温度に達したところで、苛性ソーダ流入管7から夕苛性ソーダの注入を開始して槽内液の中和反応を開始する(ステップS5)。
苛性ソーダの注入による中和反応で、槽内液が所定のPH(水素イオン濃度)、本実施例では、PH7.5〜PH8.0の中性になったところで、中和を完了し、苛性ソーダの注入を停止する(ステップS6)。
次に、処理槽5の処理槽内液の冷却を開始する(ステップS7)。冷却はポンプ32を駆動して循環管路31に処理槽5の槽内液を循環して、循環水をチューブラ式クーラー(冷却器)33により冷却する。処理槽5の槽内液温度が所定の設定温度、本実施の形態で、30℃になると冷却を停止する(ステップS8)。
そして、酵素流入管9から処理槽5内に酵素の滴下を開始する(ステップS9)。酵素による処理時間は、残留している過酸化水素の濃度にもよるが、60〜120分程度である。
処理時間経過後、濃度試験紙等で過酸化水素濃度を確認した後(ステップS10)、異常がなければ、処理槽5内の処理排水をドレイン管4か活性汚泥廃水処理設備に排出し(ステップS11)、撹拌機を停止して(ステップS12)、処理を終了する。
本実施の形態によれば、苛性ソーダ(中和剤)による中和反応を高い温度で行い、次に、過酸化水素分解酵素で分解することにより、中和反応時に残留する過酢酸を低減し、過酸化水素分解酵素で過酸化水素を確実に分解処理できるので、処理水中における過酸化水素の残留を防止できる。
過酸化水素分解酵素が最も活性化する30℃以下の温度で、酵素処理しているので、過酸化水素の残留を確実に防止できる。
本発明の排水処理装置1においては、加熱用ジャケット15に蒸気を供給して処理槽5を加熱し、冷却時には処理槽内5液を冷却器33に循環させることにより、加熱及び冷却が容易にでき、且つ処理温度の制御も容易である。
次に、本発明の排水処理装置1について他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することにより、その部分の詳細な説明を省略し、第1実施の形態と主に異なる点を説明する。
図3に第2実施の形態にかかる排水処理装置1を示す。この第2実施の形態では、処理槽を苛性処理槽5aと酵素処理槽5bとの2つを別個に分けて設け、苛性処理槽5aは加熱ジャケット15により加熱してあり、苛性処理後の層内液を苛性処理槽5aから移送管41及びポンプ43より酵素処理槽5bに送り、酵素処理するものである。その他の構成及び処理工程は上述した第1実施の形態と同様である。
この第2実施の形態によれば、第1実施の形態と同様な作用効果を奏することができると共に、加熱する苛性処理層5aと冷却する酵素処理槽5bとを別に設けているので、熱量に無駄がなく省エネを図ることができる。
図4に第3実施の形態にかかる排水処理装置を示す。この第3実施の形態にかかる排水処理装置1では、処理槽5の過熱に加熱ジャケットを設けずに、循環管路31に加熱用熱交換器39を設けて、循環管路31で処理槽内液の加熱を行う構成になっている。その他の構成及び処理工程は上述した第1実施の形態と同様である。
この第3実施の形態によれば、処理槽内液の循環管路31に冷却用熱交換器(チューブ式クーラー)33と加熱用熱交換器(チューブ式ヒーター)39を選択して循環させるようにしているので、排水処理装置1のスペースをとらずに加熱及び冷却の温度制御を簡単に且つ迅速に行うことができる。
次に、本発明の排水処理方法について、各種の実験を行ったので、その実験結果について説明する。
(実験例1)
過酢酸濃度2000ppm、過酸化水素30000ppm、液量250ml、PH1.85をサンプルとして、80℃を維持しつつ撹拌した。そして、苛性ソーダ原液を滴下してPHを7〜7.5に調整した。
次に、PH調整後のサンプルを25℃に冷却した後、この温度を保持して過酸化水素分解酵素を滴下した。酵素は、カタラーゼであり、三菱ガス化学社製の「アスクスーパーJ」G−60216を用いた。そして、酵素滴下量は、0.06mlから0.01mlの範囲で所定時間毎に分けて滴下し、合計滴下量は0.13mlであった。酵素処理時の経過時間毎の過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを測定したので、その結果を図5に示す。図5において、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
図5のグラフから明らかなように、中和処理を80℃で行ったことにより、酵素処理時には過酢酸の濃度は0となっているので、酵素処理時に残留する過酢酸がなく、約2時間後には過酸化水素濃度を0にできた。
(実験例2)
実験例1と同様に調整したものをサンプルとし、70℃を維持しつつ撹拌した。そして、苛性ソーダ原液を滴下してPHを7〜7.5に調整した。
次に、PH調整後のサンプルを冷却しないで70℃を保持したまま、実験例1と同じ過酸化水素分解酵素を滴下した。酵素滴下量は、0.06mlから0.01mlの範囲で所定時間毎に分けて滴下し、合計滴下量は0.96mlであった。酵素処理時の経過時間毎の過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを測定したので、その結果を図6に示す。図6において、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
図6から明らかなように、酵素処理時には、若干の過酢酸が残っていたが、60分後には過酢酸及び過酸化水素濃度を0にできた。
(実験例3)
実験例1と同様に調整したものをサンプルとし、60℃を維持しつつ撹拌した。そして、苛性ソーダ原液を滴下してPHを7〜7.5に調整した。
次に、PH調整後のサンプルを冷却しないで60℃を保持したまま、実験例1と同じ過酸化水素分解酵素を滴下した。酵素滴下量は、0.06mlから0.01mlの範囲で所定時間毎に分けて滴下し、合計滴下量は0.18mlであった。酵素処理時の経過時間毎の過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを測定したので、その結果を図7に示す。図7において、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
図7から明らかなように、酵素処理時には、若干の過酢酸が残っており、酵素処理終了後(105分後)にも残留過酢酸があったが、過酸化水素濃度を0にできた。
(実験例4)
実験例1と同様に調整したものをサンプルとし、50℃を維持しつつ撹拌した。そして、苛性ソーダ原液を滴下してPHを7〜7.5に調整した。
次に、PH調整後のサンプルを冷却しないで50℃を保持したまま、実験例1と同じ過酸化水素分解酵素を滴下した。酵素滴下量は、0.06mlから0.01mlの範囲で所定時間毎に分けて滴下し、合計滴下量は0.15mlであった。酵素処理時の経過時間毎の過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを測定したので、その結果を図8に示す。図8において、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
実験例4では、図8から明らかなように、実験例3と略同様な結果であった。
(実験例5)
実験例1と同様に調整したものをサンプルとし、50℃を維持しつつ撹拌した。そして、苛性ソーダ原液を滴下してPHを7〜7.5に調整した。
次に、PH調整後のサンプルを34℃に冷却し、34℃を保持したまま、実験例1と同じ過酸化水素分解酵素を滴下した。酵素滴下量は、最初に0.06mlのみを滴下し、即ち合計滴下量は0.06mlであった。そのときの経過時間毎の過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを測定したので、その結果を図9に示す。図9において、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
実験例5では、中和時の加熱温度を実験例1よりも低くし且つ酵素処理時の温度を実験例1よりも高くしたものである。図9から明らかなように、実験例5では、過酸化水素濃度は0にできたが、若干の過酢酸が残った。
(実験例6)
実験例2において、酵素滴下量を約1/4として、実験例2と同様な実験を行った。即ち合計滴下量は0.23mlであった。酵素処理時の経過時間毎の過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを測定したので、その結果を図10に示す。図10において、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
図10から明らかなように、実験例1と同様に残留過酢酸及び残留過酸化水素水濃度を0にできたと共に、酵素処理時間が42分であり、実験例1よりも短い時間で処理ができた。
(比較例)
実験例1と同様に調整したサンプルを12℃、18℃、22℃、30℃で中和し、同じ温度で酵素を滴下する比較実験を行った。いずれにおいても、一時間経過後に過酸化水素濃度は0になったが、過酢酸濃度は約2割程度減少しただけであった。
実験例1〜6から明らかなように、過酢酸及び過酸化水素含有の排水は、加熱して常温よりも高い温度で中和した後、過酸化水素分解酵素を添加すれば、中和時に加熱しない場合(比較例)より過酢酸及び過酸化水素濃度を低減することができる。
しかも、実験例1、2、6から明らかなように、中和時の加熱温度が70℃以上であれば、過酢酸及び過酸化水素濃度を共に0、あるいは0近くまで低減できる。
実験例4及び実験例5との比較から明らかなように、中和時に加熱した後、冷却して酵素を添加するときの温度を低くしたほうが、酵素による処理時間が短くて済む。特に、酵素の活性温度は一般的には30℃以下であるから、30℃以下にすれば、更に処理時間の短縮を図ることができる。
更に、上述した事項及び実験例1からも明らかなように、中和剤による中和処理温度を70℃以上とし、過酸化水素分解酵素による処理温度を30℃以下とすれば、過酢酸及び過酸化水素含有の排水から確実に過酸化水素の除去を図ることができる。
本発明の実施の形態にかかる排水処理方法を示すフローチャートである。 第1実施の形態にかかる排水処理装置の構成を示すブロック図である。 第2実施の形態にかかる排水処理装置の構成を示すブロック図である。 第3実施の形態にかかる排水処理装置の構成を示すブロック図である。 実験例1における、過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを経過時間毎に示した図であり、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。 実験例2における、過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを経過時間毎に示した図であり、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。 実験例3における、過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを経過時間毎に示した図であり、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。 実験例4における、過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを経過時間毎に示した図であり、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。 実験例5における、過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを経過時間毎に示した図であり、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。 実験例6における、過酢酸濃度と、過酸化水素濃度とを経過時間毎に示した図であり、(a)は経過時間毎の過酢酸濃度のグラフであり、(b)は経過時間毎の過酸化水素濃度のグラフである。
符号の説明
1 排水処理装置
3 薬液タンク
5 処理槽
15 加熱ジャケット
21 苛性タンク(中和剤タンク)
25 酵素タンク
33 チューブ式クーラー(冷却用熱交換器)
39 チューブ式ヒーター(加熱用熱交換器)

Claims (9)

  1. 過酢酸及び過酸化水素含有の排水を常温よりも高い温度に加熱した後、中和剤を添加して中和し、次に過酸化水素分解酵素を添加することを特徴とする排水処理方法。
  2. 中和後の排水を常温以下に冷却した後、過酸化水素分解酵素を添加することを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
  3. 中和時の温度は、70℃以上であることを特徴とする請求項2に記載の排水処理方法。
  4. 過酸化水素分解酵素添加時の温度は30℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の排水処理方法。
  5. 中和剤は苛性ソーダであることを特徴とする請求項4に記載の排水処理方法。
  6. 過酢酸及び過酸化水素含有の排水は、ボトル入り飲料製造時におけるボトル滅菌用薬液タンクの排水及びボトルリンス水の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の排水処理方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理方法を行う排水処理装置であって、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を受ける処理槽と、処理槽に設けた加熱用ジャケットと、処理槽内液を冷却器に通して循環させる循環管路とを備え、加熱用ジャケットに蒸気を供給して処理槽を加熱し、処理槽内の排水を冷却器に循環させて冷却することを特徴とする排水処理装置。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理方法を行う排水処理装置であって、中和処理槽と酵素処理槽とを備え、中和処理槽では過酢酸及び過酸化水素含有の排水を受けた後に中和剤を添加して中和処理し、中和処理した後の中和処理槽内液を酵素処理槽に移して酵素処理槽で過酸化水素分解酵素を添加しており、中和処理槽は蒸気を供給して加熱する加熱用ジャケットを有し、酵素処理槽は槽内液を冷却器に通して循環させて冷却することを特徴とする排水処理装置。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の排水処理方法を行う排水処理装置であって、過酢酸及び過酸化水素含有の排水を受ける処理槽を備え、処理槽には、処理槽内の液を循環させる循環管路が設けてあり、循環管路には加熱用熱交換器と冷却用熱交換器とが設けてあり、循環管路を流れる液の経路を加熱用熱交換器又は冷却用熱交換器に切り替えて処理層を加熱又は冷却することを特徴とする排水処理装置。
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