JP2008151739A - 温度推定方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】推定対象の温度を精度良く速やかに、かつ軽い演算処理で推定する。
【解決手段】温度推定装置50は、ヒータ3とワーク1とに関する熱伝達モデルのパラメータを記憶する記憶部と、ヒータ3の温度変化量の実測値と、熱伝達モデルに基づいて推定した値であるヒータ3の温度変化量仮推定値とワーク1の温度変化量第1仮推定値から、ワーク1の熱容量値が変化しないと見なした値であるワーク1の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定部と、ワーク1の温度変化量第2仮推定値と熱伝達モデルから熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定部と、異なるサンプリング時刻のヒータ3の温度と熱抵抗値の変化分からワーク1の温度の真値を推定する温度推定部とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】温度推定装置50は、ヒータ3とワーク1とに関する熱伝達モデルのパラメータを記憶する記憶部と、ヒータ3の温度変化量の実測値と、熱伝達モデルに基づいて推定した値であるヒータ3の温度変化量仮推定値とワーク1の温度変化量第1仮推定値から、ワーク1の熱容量値が変化しないと見なした値であるワーク1の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定部と、ワーク1の温度変化量第2仮推定値と熱伝達モデルから熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定部と、異なるサンプリング時刻のヒータ3の温度と熱抵抗値の変化分からワーク1の温度の真値を推定する温度推定部とを有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば半導体製造装置等の加熱冷却処理装置に係り、特に推定対象との間に熱抵抗を有するヒータ等の温度測定可能点の温度に基づいて、推定対象の温度を推定する温度推定方法および装置に関するものである。
半導体製造装置のように実際に加熱冷却処理する被加熱冷却物(半導体製造装置の場合はウエハ)の温度を運転中は測定できない場合、あらかじめ装置の試験運転や調整時に被加熱冷却物に温度センサを取り付け、加熱冷却処理部と被加熱冷却物に関するモデルを作成し、本運転時は、モデルに基づいて被加熱冷却物の温度を推定しながら処理を行うことが良く行われている。ただし、この手法ではモデルと実際の被加熱冷却物との間にずれが生じると、温度推定誤差が発生するという問題がある。
このような問題を解決するために、数値解析手法を用いてモデル同定をリアルタイムに行う技術(例えば、特許文献1参照)を半導体製造装置に適用することが考えられる。特許文献1に開示された技術を半導体製造装置に適用すれば、温度を知りたい場所(以下、推定対象と呼ぶ)の温度を直接測定できず、さらに本運転時に温度センサを取り付ける温度測定可能点と推定対象との間の熱抵抗や推定対象の熱容量も不明な場合に、熱抵抗値と熱容量値を係数とするモデルから算出される温度測定可能点の温度推定値と温度測定可能点の温度実測値とが一致するまで、温度測定可能点と推定対象との間の熱抵抗値、推定対象の熱容量値を逐次最小2乗法や勾配法、最尤推定法により計算して求め、計算した熱抵抗値を使って推定対象の温度を推定することができる(以下、従来技術1と呼ぶ)。このような従来技術1によれば、同定時のモデルと実際の推定対象との間にずれが存在する場合であっても、推定対象の温度を精度よく推定することができる。
また、別の推定手法を用いた技術として、地中に埋設された管路内電力ケーブルの導体温度を推定する技術が特許文献2に開示されている(以下、従来技術2と呼ぶ)。この従来技術2では、導体温度を求める目標管路内部の温度、土壌温度及び全ての管路の通電電流値を測定し、土壌熱抵抗値を基に周囲の管路からの熱影響を求めると共に各管路の通電電流値から導体の熱流値を求めることにより目標管路近傍の土壌温度変化を求め、土壌が深さ毎に本来持っている基底温度と土壌温度変化とから計算上の土壌温度を求め、この土壌温度と目標管路内の導体の熱流値とから導体温度を含む解析モデルに従って管路内の温度を算出し、管路内温度の計算値と管路内温度の実測値とを比較して、比較結果が一致する場合は解析モデルで使用した導体温度を正しい推定結果として確定し、比較結果が一致しない場合は土壌熱抵抗、基底温度及び計算に使用する熱定数を見直した後に再計算するようにしている。
しかしながら、数値解析手法を用いた熱抵抗値の同定をしながら温度推定を行う従来技術1は、熱抵抗値と熱容量値の推定初期値が不正確な場合、正確な温度推定を始めるまでに時間がかかり、かつ係数の値が求まるまで係数誤差により推定温度が不正確になるという問題点があった。また、従来技術1は、熱抵抗や熱容量などの熱定数が加熱冷却処理時に変化する場合、正確な温度推定を始めるまでに時間がかかるという問題点があった。また、一般に逐次最小2乗法などの推定収束速度の速い手法では、計算量が多くなるという問題点があった。
同様に、従来技術2においても、土壌の熱抵抗値などの熱定数の推定初期値が不正確な場合、熱定数の見直しに時間がかかり、正確な温度推定を始めるまでに時間がかかるという問題点があった。従来技術2は、管路内電力ケーブルの導体温度や土壌の熱抵抗値を算出する例であり、温度推定の精度や推定収束速度もそれほど高レベルのものは必要ないが、温度の推定精度によって被加熱冷却物の品質が大きく変わってしまうような加熱冷却処理での温度推定では、その精度および推定収束速度の向上は非常に重要な意味を持つ。すなわち、被加熱冷却物の温度が正しく推定できない場合には、適切な加熱冷却処理が行われないことになる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、推定対象の温度が直接測定できず、推定対象と温度測定可能点との間の熱抵抗や推定対象の熱容量が加熱冷却処理時に変化する場合であっても、推定対象の温度を精度良く速やかに、かつ軽い演算処理で推定することができる温度推定方法および装置を提供することを目的とする。
本発明は、推定対象との間に熱抵抗を有する温度測定可能点の温度に基づいて、前記推定対象の温度を推定する温度推定方法であって、前記温度測定可能点の温度を測定する測定ステップと、前記温度測定可能点の温度から求められる前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と、前記温度測定可能点と前記推定対象とに関する熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値と、前記熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記推定対象の温度変化量第1仮推定値とから、前記推定対象の熱容量値が変化しないと見なした値である前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定ステップと、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値と前記熱伝達モデルとから前記熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定ステップと、異なるサンプリング時刻の前記温度測定可能点の温度と前記熱抵抗値の変化分とから前記推定対象の温度の真値を推定する温度推定ステップとを有するものである。
また、本発明の温度推定方法の1構成例において、前記温度変化量推定ステップは、前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、前記推定対象の温度変化量第1仮推定値と前記推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用して、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定するようにしたものである。
また、本発明の温度推定方法の1構成例は、さらに、複数のサンプリング時刻において推定された前記推定対象の温度から求められる前記推定対象の温度変化量第3仮推定値と前記温度変化量第2仮推定値とから前記推定対象の熱容量値の変化分を推定する熱容量値変化係数推定ステップを有するものである。
また、本発明の温度推定方法の1構成例において、前記温度変化量推定ステップは、前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、前記推定対象の温度変化量第1仮推定値と前記推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用して、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定するようにしたものである。
また、本発明の温度推定方法の1構成例は、さらに、複数のサンプリング時刻において推定された前記推定対象の温度から求められる前記推定対象の温度変化量第3仮推定値と前記温度変化量第2仮推定値とから前記推定対象の熱容量値の変化分を推定する熱容量値変化係数推定ステップを有するものである。
また、本発明の温度推定装置は、前記温度測定可能点と前記推定対象とに関する熱伝達モデルのパラメータを記憶する記憶部と、前記温度測定可能点の温度を測定する温度測定部と、前記温度測定可能点の温度から求められる前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と、前記熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値と、前記熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記推定対象の温度変化量第1仮推定値とから、前記推定対象の熱容量値が変化しないと見なした値である前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定部と、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値と前記熱伝達モデルとから前記熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定部と、異なるサンプリング時刻の前記温度測定可能点の温度と前記熱抵抗値の変化分とから前記推定対象の温度の真値を推定する温度推定部とを有するものである。
また、本発明の温度推定装置の1構成例において、前記温度変化量推定部は、前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、前記推定対象の温度変化量第1仮推定値と前記推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用して、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定するものである。
また、本発明の温度推定装置の1構成例は、さらに、複数のサンプリング時刻において推定された前記推定対象の温度から求められる前記推定対象の温度変化量第3仮推定値と前記温度変化量第2仮推定値とから前記推定対象の熱容量値の変化分を推定する熱容量値変化係数推定部を有するものである。
また、本発明の温度推定装置の1構成例において、前記温度変化量推定部は、前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、前記推定対象の温度変化量第1仮推定値と前記推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用して、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定するものである。
また、本発明の温度推定装置の1構成例は、さらに、複数のサンプリング時刻において推定された前記推定対象の温度から求められる前記推定対象の温度変化量第3仮推定値と前記温度変化量第2仮推定値とから前記推定対象の熱容量値の変化分を推定する熱容量値変化係数推定部を有するものである。
本発明によれば、温度測定可能点の温度を測定する測定ステップと、温度測定可能点の温度から求められる温度測定可能点の温度変化量の実測値と、温度測定可能点と推定対象とに関する熱伝達モデルに基づいて推定した値である温度測定可能点の温度変化量仮推定値と、熱伝達モデルに基づいて推定した値である推定対象の温度変化量第1仮推定値とから、推定対象の熱容量値が変化しないと見なした値である推定対象の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定ステップと、推定対象の温度変化量第2仮推定値と熱伝達モデルとから熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定ステップと、異なるサンプリング時刻の温度測定可能点の温度と熱抵抗値の変化分とから推定対象の温度の真値を推定する温度推定ステップとを実行することにより、推定対象の温度が直接測定できず、かつ推定対象と温度測定可能点との間の熱抵抗値や推定対象の熱容量値が不明で、熱抵抗値や熱容量値が推定対象毎にばらついたり、加熱冷却処理中に熱抵抗値や熱容量値が熱伝達モデルの同定時の値から変化したりする場合であっても、推定対象の温度を精度良く速やかに推定することができる。また、本発明では、推定対象と温度測定可能点との間の熱抵抗値や推定対象の熱容量値が温度推定中に変化し続けていても、それらの変化に比べて十分速い周期で演算を実行すれば、熱抵抗値の変化や熱容量値の変化の影響を受けないため、推定対象の温度を速やかに精度良く推定することができる。また、本発明では、推定対象と温度測定可能点との間の熱抵抗値の変化を速やかに精度良く算出することができる。また、本発明では、時間軸方向にわずか数サンプリングの数値計算をするだけであり、数値解析的な処理や統計的な処理を必要としないので、計算量を非常に少なくすることができ、比較的処理能力の乏しい加熱冷却処理装置の温度制御プロセッサにおいてもリアルタイム処理に十分耐えられる程度の軽い演算で温度推定処理および熱抵抗値変化係数推定処理を行うことができる。
また、本発明では、温度測定可能点の温度変化量の実測値と温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、推定対象の温度変化量第1仮推定値と推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用することにより、推定対象の熱容量値が変化しないと見なした値である推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定することができる。
また、本発明では、推定対象の温度変化量第2仮推定値と複数のサンプリング時刻において推定された推定対象の温度から求められる推定対象の温度変化量第3仮推定値との比が熱伝達モデルの同定時から変化した、推定対象の熱容量値の変化分であることを利用することにより、推定対象の熱容量値が不明で、熱容量値が推定対象毎にばらついたり、加熱冷却処理中に熱容量値が熱伝達モデルの同定時の値から変化したりする場合であっても、推定対象の熱容量値の変化を速やかに精度良く算出することができる。また、本発明では、計算量を非常に少なくすることができ、比較的処理能力の乏しい加熱冷却処理装置の温度制御プロセッサにおいてもリアルタイム処理に十分耐えられる程度の軽い演算で熱容量値変化係数推定処理を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る加熱冷却処理装置の構成を示すブロック図である。図1において、2はワーク1を載せる熱板、3は熱板2に取り付けられたヒータ、4はヒータ3に取り付けられた温度センサ、5はコントローラ、6は環境温度センサである。コントローラ5は、温度推定装置50と、制御装置51とを有する。コントローラ5は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って以下のような処理を実行する。
以下、温度推定装置50による温度推定の原理を説明する。ヒータ3の温度をTh、推定したいワーク1の温度をTw、周囲の環境温度をTe、コントローラ5の制御装置51からヒータ3に出力されるコントローラ出力値をMV、サンプリング時間(サンプリング周期)をtsとし、ヒータ温度Thとワーク温度Twについて、温度測定可能点(ヒータ3)と推定対象(ワーク1)とに関する熱伝達モデルから式を立ててそれを離散化して整理すると、次のようになる。
Tw(n+1)=Tw(n)+ts・(a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(1)
Th(n+1)=Th(n)+ts・(c・MV(n)
−d・(Th(n)−Tw(n))) ・・・(2)
Tw(n+1)=Tw(n)+ts・(a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(1)
Th(n+1)=Th(n)+ts・(c・MV(n)
−d・(Th(n)−Tw(n))) ・・・(2)
式(1)、式(2)において、Tw(n)は時刻nにおけるワーク温度、Tw(n+1)は時刻nからサンプリング時間ts後の時刻n+1におけるワーク温度、Th(n)は時刻nにおけるヒータ温度、Th(n+1)は時刻n+1におけるヒータ温度である。また、係数a,b,c,dは、熱伝達モデルのパラメータである。この係数a,b,c,dは、装置のメンテナンス中に、ヒータ温度Th、ワーク温度Twおよび環境温度Teを時系列的に計測して、最小2乗法などを用いることにより同定した値である。なお、ヒータ温度Thと環境温度Teはメンテナンス時および本運転時のいずれにおいても測定可能であるが、ワーク温度Twはメンテナンス時のみ測定可能で、本運転中は測定不可とする。ただし、ワーク初期温度は測定可能または他の箇所の温度で近似可能とする。
また、本運転時においては、推定対象であるワーク1の熱容量値は、ワーク毎にばらつき不明であるとする。熱伝達モデルの同定時に求めた熱容量値に対して本運転中に変化した熱容量の変化分を熱容量値変化係数krとし、熱容量値変化係数krを考慮した本運転時での熱伝達モデルによる式を離散化して整理した結果は、次のようになる。
Tw(n+1)=Tw(n)+(ts/kr)・(a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(3)
Th(n+1)=Th(n)+ts・(c・MV(n)
−d・(Th(n)−Tw(n))) ・・・(4)
Tw(n+1)=Tw(n)+(ts/kr)・(a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(3)
Th(n+1)=Th(n)+ts・(c・MV(n)
−d・(Th(n)−Tw(n))) ・・・(4)
式(4)を見れば分かるように、ヒータ温度Thに関するモデル式にはワーク1の熱容量の変化は直接には現れない。ワーク温度Twに関して、時刻nまでの温度が既知あるいは適切に推定されているとするとき、時刻nから時刻n+1までのヒータ温度Thの変化に関する式は、次式となる。
同様に、ワーク温度Twに関して、時刻nまでの温度が既知あるいは適切に推定されているとするとき、時刻n+1から時刻n+2までのヒータ温度Thの変化に関する式は、次式となる。
式(5)、式(6)の中で測定不能あるいは未知なパラメータは、時刻nにおけるワーク温度の推定値ハットTw(n)(以下、同様に文字上に付した「∧」をハットと呼ぶ)、時刻n+1におけるワーク温度の推定値ハットTw(n+1)である。ハットTw(n)、ハットTw(n+1)をそれぞれ1時点先のヒータ温度を使用して推定する。すなわち、時刻n+1のヒータ温度Th(n+1)を用いて推定した、時刻nにおけるワーク温度の推定値をハットTw,rev(n)とすると、ハットTw,rev(n)は式(5)より次式のように推定することができる。
同様に、時刻n+2のヒータ温度Th(n+2)を用いて推定した、時刻n+1におけるワーク温度の推定値をハットTw,rev(n+1)とすると、ハットTw,rev(n+1)は式(6)より次式のように推定することができる。
また、式(3)から以下の式(9)が得られる。
ただし、式(7)、式(8)から時刻n+2のヒータ温度Th(n+2)を計測したときに、式(9)の左辺のハットTw(n+1)−ハットTw(n)の部分は、ハットTw,rev(n+1)−ハットTw,rev(n)として推定できる。式(9)の右辺は、ハットTw(n)が時刻n+1においてハットTw,rev(n)として推定可能であることから、結局n+2の時点で、時刻nにおける熱容量値変化係数の推定値ハットkr(n)を計算できることになる。
以上から、熱伝達モデルの同定時に求めたワーク1の熱容量値に対して本運転中の熱容量値の変化度合いが不明な場合でも、ワーク温度およびワーク熱容量値を計算できることが分かる。また、モデル式の1ステップがワーク熱容量値の変化に比べて十分短い間隔であれば、熱容量値が動的に変化しても同様の計算が可能である。
次に、本運転時において、温度測定可能点であるヒータ3と推定対象であるワーク1との間の熱抵抗値およびワーク1の熱容量値がワーク毎にばらつき不明である場合に、ワーク温度、ワーク熱容量値、ヒータ3とワーク1との間の熱抵抗値を推定する。熱伝達モデルの同定時に求めた熱抵抗値に対して本運転中に変化した熱抵抗値の変化分(正確には、熱抵抗値の逆数の変化分)を熱抵抗値変化係数mrとし、熱伝達モデルの同定時に求めた熱容量値に対して本運転中に変化した熱容量値の変化分を前記のとおり熱容量値変化係数krとして、これらの変化係数を考慮した本運転時での熱伝達モデルによる式を離散化して整理した結果は、次のようになる。
Tw(n+1)=Tw(n)+(ts/kr)・(mr・a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(10)
Th(n+1)=Th(n)+ts・(c・MV(n)
−mr・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・・(11)
Tw(n+1)=Tw(n)+(ts/kr)・(mr・a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(10)
Th(n+1)=Th(n)+ts・(c・MV(n)
−mr・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・・(11)
時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のワーク温度変化量は、同定時の熱伝達モデルに基づく推定によると次式のようになる。
Tw(n+1)−Tw(n)=ts・(1・a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(12)
式(12)に示すワーク温度変化量Tw(n+1)−Tw(n)をワーク温度変化量の第1仮推定値と呼ぶ。
Tw(n+1)−Tw(n)=ts・(1・a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(12)
式(12)に示すワーク温度変化量Tw(n+1)−Tw(n)をワーク温度変化量の第1仮推定値と呼ぶ。
また、本運転時のワーク毎の熱抵抗値および熱容量値のモデル同定時とのずれを考慮すると、2サンプリング間のワーク温度変化量は次式のようになる。
kr・(Tw(n+1)−Tw(n))=ts・(mr・a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(13)
式(13)に示すワーク温度変化量kr・(Tw(n+1)−Tw(n))をワーク温度変化量の第2仮推定値と呼ぶ。この第2仮推定値は、ワーク温度変化量の真値(Tw(n+1)−Tw(n))をkr倍したものであり、ワーク1の熱容量値が変化しない(すなわち、熱容量値変化係数krを1とする)と見なした値である。なお、この第2仮推定値は、ヒータ3とワーク1との間の熱抵抗値については変化するものとして考慮している。
kr・(Tw(n+1)−Tw(n))=ts・(mr・a・(Th(n)−Tw(n))
−b・(Tw(n)−Te(n))) ・・・(13)
式(13)に示すワーク温度変化量kr・(Tw(n+1)−Tw(n))をワーク温度変化量の第2仮推定値と呼ぶ。この第2仮推定値は、ワーク温度変化量の真値(Tw(n+1)−Tw(n))をkr倍したものであり、ワーク1の熱容量値が変化しない(すなわち、熱容量値変化係数krを1とする)と見なした値である。なお、この第2仮推定値は、ヒータ3とワーク1との間の熱抵抗値については変化するものとして考慮している。
2サンプリング間のワーク温度変化量の第1仮推定値と第2仮推定値との差は、式(12)の右辺と式(13)の右辺の差となり、次式のようになる。
ts・(1−mr)・a・(Th(n)−Tw(n)) ・・・(14)
ts・(1−mr)・a・(Th(n)−Tw(n)) ・・・(14)
同様に、時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のヒータ温度変化量は、同定時の熱伝達モデルに基づく推定によると次式のようになる。
Th(n+1)−Th(n)=ts・(c・MV(n)
−1・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・(15)
式(15)に示すヒータ温度変化量Th(n+1)−Th(n)をヒータ温度変化量の仮推定値と呼ぶ。
Th(n+1)−Th(n)=ts・(c・MV(n)
−1・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・(15)
式(15)に示すヒータ温度変化量Th(n+1)−Th(n)をヒータ温度変化量の仮推定値と呼ぶ。
また、熱抵抗値のずれを考慮すると、ヒータ温度変化量は次式のようになる。
Th(n+1)−Th(n)=ts・(c・MV(n)
−mr・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・(16)
式(16)に示すヒータ温度変化量Th(n+1)−Th(n)をヒータ温度変化量の真値と呼ぶ。
Th(n+1)−Th(n)=ts・(c・MV(n)
−mr・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・(16)
式(16)に示すヒータ温度変化量Th(n+1)−Th(n)をヒータ温度変化量の真値と呼ぶ。
2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値と仮推定値との差は、式(15)の右辺と式(16)の右辺の差となり、次式のようになる。
ts・(1−mr)・d・(Th(n)−Tw(n)) ・・・(17)
ts・(1−mr)・d・(Th(n)−Tw(n)) ・・・(17)
ここで、式(14)、式(17)を良く見ると、次式が成立することが分かる。
(ワーク温度変化量の第1仮推定値−ワーク温度変化量の第2仮推定値)
/(ヒータ温度変化量の真値−ヒータ温度変化量の仮推定値)=a/d
・・・(18)
(ワーク温度変化量の第1仮推定値−ワーク温度変化量の第2仮推定値)
/(ヒータ温度変化量の真値−ヒータ温度変化量の仮推定値)=a/d
・・・(18)
つまり、2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値を実際の測定値から求め、2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値と仮推定値との差を計算して、計算した値にa/dを乗じることで、2サンプリング間のワーク温度変化量の第1仮推定値と第2仮推定値との差を求めることができる。
同定時の熱伝達モデルに基づく2サンプリング間のワーク温度変化量の第1仮推定値は計算可能である。2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値をΔTh(n)、2サンプリング間のヒータ温度変化量の仮推定値をハットΔTh,model(n)、2サンプリング間のワーク温度変化量の第1仮推定値をハットΔTw,model(n)、2サンプリング間のワーク温度変化量の第2仮推定値をハットΔTw,tmp(n)とすると、ハットΔTw,tmp(n)は次式のように求まる。
時刻n+1におけるワーク温度の推定値ハットTw,tmp(n+1)は、時刻nにおけるワーク温度の推定値ハットTw(n)から次式のように計算することができる。
一方、式(13)において、時刻nにおけるワーク温度Tw(n)の代わりにワーク温度の推定値ハットTw(n)を用い、kr・(Tw(n+1)−Tw(n))=ハットΔTw,tmp(n)としてmrについて解くと、時刻nにおける熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)は次式で求めることができる。
式(21)は、時刻nのワーク温度推定値ハットTw(n)が確からしければ、熱容量値変化係数krが分かっていなくても、熱抵抗値変化係数mrを推定できることを示している。
次に、式(16)を用いて、時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値ΔTh(n)=Th(n+1)−Th(n)と、式(21)で求まった時刻nにおける熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)とから、時刻nにおけるワーク温度の推定値ハットTw,rev(n)を逆に求める。
さらに、次のサンプリング時刻の計測ステップで、同様に時刻n+1から時刻n+2までの2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値ΔTh(n+1)=Th(n+2)−Th(n+1)を用い、時刻n+1におけるワーク温度の推定値ハットTw,rev(n+1)を逆に求める。
温度推定の計算周期が熱抵抗値の変化速度に比べて十分速い場合は、時刻n+1における熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n+1)と時刻nにおける推定値ハットmr(n)がほぼ同じ値であるので、式(23)では時刻nにおける熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)をハットmr(n+1)の代わりに用いている。つまり、本実施の形態では、熱伝達モデル式を2サンプリング周期回す程度の短い時間では熱抵抗値は変化しないものとして、ワーク温度を推定する。
式(23)に示した時刻n+1におけるワーク温度の推定値ハットTw,rev(n+1)と式(22)に示した時刻nにおけるワーク温度の推定値ハットTw(n)との差を、式(24)のように時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のワーク温度変化量の第3仮推定値ハットΔTw,rev(n)として求める。
式(19)で求めたワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)は、ハットΔTw,tmp(n)=kr・(Tw(n+1)−Tw(n))であり、この(Tw(n+1)−Tw(n))をハットΔTw,rev(n)で置き換えて、krについて解くと、時刻nにおける熱容量値変化係数krの推定値ハットkr(n)は次式のように求めることができる。
さらに、ワーク温度変化量の第3仮推定値ハットΔTw,rev(n)が時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のワーク温度変化量の真値の推定値ハットΔTwにほぼ等しいとすると、時刻n+1におけるワーク温度の真値の推定値ハットTw(n+1)は式(24)を逆に解く次式で計算できる。
以降、同様の演算を繰り返すことにより、引き続き熱抵抗値、熱容量値、および温度推定値の各ステップの推定値が計算できる。
次に、以上のような原理に基づく温度推定装置50の動作を説明する。図2は温度推定装置50の構成例を示すブロック図である。温度推定装置50は、予め同定された熱伝達モデルのパラメータと測定データと計算データとを記憶する記憶部600と、温度測定部601と、ワーク温度変化量推定部602と、ワーク温度推定部603と、熱抵抗値変化係数推定部604と、熱容量値変化係数推定部605とを有する。
次に、以上のような原理に基づく温度推定装置50の動作を説明する。図2は温度推定装置50の構成例を示すブロック図である。温度推定装置50は、予め同定された熱伝達モデルのパラメータと測定データと計算データとを記憶する記憶部600と、温度測定部601と、ワーク温度変化量推定部602と、ワーク温度推定部603と、熱抵抗値変化係数推定部604と、熱容量値変化係数推定部605とを有する。
図3は温度推定装置50の動作を示すフローチャートである。この図3を用いて温度推定装置50の動作を説明する。
まず、温度測定部601は、本運転前の初期状態において、温度センサ4によって測定されたヒータ温度Thと、環境温度センサ6によって測定された環境温度Teと、初期状態のみ使用可能な温度センサによって測定されたワーク温度Twを取得する。記憶部600は、温度測定部601が取得したヒータ温度Thと環境温度Teとワーク温度Twを記憶する(図3ステップS10)。
まず、温度測定部601は、本運転前の初期状態において、温度センサ4によって測定されたヒータ温度Thと、環境温度センサ6によって測定された環境温度Teと、初期状態のみ使用可能な温度センサによって測定されたワーク温度Twを取得する。記憶部600は、温度測定部601が取得したヒータ温度Thと環境温度Teとワーク温度Twを記憶する(図3ステップS10)。
続いて、本運転が開始されると、温度測定部601は、現時刻n+1におけるヒータ温度Th(n+1)と環境温度Te(n+1)を取得する。記憶部600は、温度測定部601が取得したヒータ温度Th(n+1)と環境温度Te(n+1)を記憶する(ステップS11)。
次に、現時刻n+1が運転開始後の最初のサンプリング時刻の場合は(ステップS12においてNO)、ステップS13に進み、現時刻n+1が運転開始後の2回目以降のサンプリング時刻の場合は(ステップS12においてYES)、ステップS15に進む。
ここでは、最初のサンプリング時刻なので、ワーク温度変化量推定部602は、記憶部600に記憶された値を参照して、現時刻n+1のヒータ温度Th(n+1)と1サンプリング前の時刻nのヒータ温度Th(n)との差、すなわち2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値ΔTh(n)を計算し、2サンプリング間のヒータ温度変化量の仮推定値ハットΔTh,model(n)を式(15)により計算し、2サンプリング間のワーク温度変化量の第1仮推定値ハットΔTw,model(n)を式(12)により計算して、これらの計算した値から式(19)により時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)を計算する(ステップS13)。記憶部600は、このワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)を記憶する。
ここでは、最初のサンプリング時刻なので、ワーク温度変化量推定部602は、記憶部600に記憶された値を参照して、現時刻n+1のヒータ温度Th(n+1)と1サンプリング前の時刻nのヒータ温度Th(n)との差、すなわち2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値ΔTh(n)を計算し、2サンプリング間のヒータ温度変化量の仮推定値ハットΔTh,model(n)を式(15)により計算し、2サンプリング間のワーク温度変化量の第1仮推定値ハットΔTw,model(n)を式(12)により計算して、これらの計算した値から式(19)により時刻nから時刻n+1までの2サンプリング間のワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)を計算する(ステップS13)。記憶部600は、このワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)を記憶する。
このとき、現時刻n+1が運転開始後の最初のサンプリング時刻の場合には、式(12)、式(15)におけるヒータ温度Th(n)は初期状態で測定された温度、ワーク温度Tw(n)は初期状態で測定された温度または他の箇所の温度で近似された温度となる。また、式(15)におけるコントローラ出力値MV(n)は時刻nにおいて制御装置51が算出した値であるが、現時刻n+1が運転開始後の最初のサンプリング時刻の場合には、初期状態で出力された値となる。
続いて、熱抵抗値変化係数推定部604は、記憶部600に記憶されたワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)と時刻nにおけるワーク温度の推定値ハットTw(n)とヒータ温度Th(n)と環境温度Te(n)とから、式(21)により時刻nにおける熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)を計算する(ステップS14)。記憶部600は、この熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)を記憶する。なお、現時刻n+1が運転開始後の最初のサンプリング時刻の場合、ワーク温度の推定値ハットTw(n)としては初期状態で測定または他の箇所の温度で近似されたワーク温度Twが使用される。
次に、1サンプリング周期が経過して現時刻n+1が運転開始後の2回目のサンプリング時刻になった場合の動作を説明する。ステップS11の処理は上記のとおりである。
現時刻n+2が運転開始後の2回目のサンプリング時刻になった場合、ワーク温度推定部603は、2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値ΔTh(n+1)と熱抵抗値変化係数推定部604が計算した熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)とヒータ温度Th(n)とコントローラ出力値MV(n)とから、式(23)により1周期前の時刻n+1におけるワーク温度の推定値ハットTw,rev(n+1)を計算する(ステップS15)。
現時刻n+2が運転開始後の2回目のサンプリング時刻になった場合、ワーク温度推定部603は、2サンプリング間のヒータ温度変化量の真値ΔTh(n+1)と熱抵抗値変化係数推定部604が計算した熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n)とヒータ温度Th(n)とコントローラ出力値MV(n)とから、式(23)により1周期前の時刻n+1におけるワーク温度の推定値ハットTw,rev(n+1)を計算する(ステップS15)。
現時刻n+2が運転開始後の2回目のサンプリング時刻の場合、ワーク温度変化量の第3仮推定値ハットΔTw,rev(n)を式(24)により、既に求まっている時刻nのワーク温度の真値の推定値ハットTw(n)および時刻n+1のワーク温度の推定値ハットTw,rev(n+1)から計算する。またワーク温度の真値の推定値ハットTw(n+1)を式(26)から求める。記憶部600は、ワーク温度の推定値ハットTw,rev(n+1)とワーク温度の真値の推定値ハットTw(n+1)を記憶する。
次に、熱容量値変化係数推定部605は、ワーク温度変化量推定部602が計算したワーク温度変化量の第2仮推定値ハットΔTw,tmp(n)とワーク温度推定部603が計算したワーク温度変化量の第3仮推定値ハットΔTw,rev(n)とから、式(25)により2周期前の時刻nにおける熱容量値変化係数krの推定値ハットkr(n)を計算する(ステップS16)。記憶部600は、この熱容量値変化係数krの推定値kr(n)を記憶する。
以下、同様に加熱冷却処理装置の動作が停止するまで(ステップS17においてYES)、ステップS11〜S16の処理がサンプリング時刻毎に繰り返される。現時刻が運転開始後の最初のサンプリング時刻でない場合には、ヒータ温度Th(n)と環境温度Te(n)とは1サンプリング前に取得された値となり、式(12)、式(15)のワーク温度Tw(n)、式(21)、式(26)のワーク温度の真値の推定値ハットTw(n)としては1時点先のヒータ温度Th(n+1)を使って計算された値が使用される。
このような温度推定装置50の動作と並行して、コントローラ5の制御装置51は、温度推定装置50が計算した時刻nにおけるワーク温度の真値の推定値ハットTw(n)を取得し、このワーク温度の推定値が目標温度と一致するようにコントローラ出力値MVを算出し、時刻n+2以降にヒータ3にMV(n+i)として出力する(i>1)。
以上のように、本実施の形態では、ワーク1の温度が直接測定できず、かつワーク1とヒータ3との間の熱抵抗値やワーク1の熱容量値が不明で、熱抵抗値や熱容量値がワーク1毎にばらついたり、本運転中に熱抵抗値や熱容量値が熱伝達モデルの同定時の値から変化したりする場合であっても、ワーク1の温度を精度良く速やかに推定することができる。また、本実施の形態では、ワーク1とヒータ3との間の熱抵抗値の変化およびワーク1の熱容量値の変化を速やかに精度良く算出することができる。
さらに、本実施の形態では、熱抵抗値の変化量および熱容量値の変化量を知らなくても速やかにワーク温度を推定できることから、温度推定中に熱抵抗値および熱容量値が変化するような場合にも即時にワーク温度の推定が可能であり、それを利用して連続して変化している熱抵抗値および熱容量値も算出可能である。また、本実施の形態では、時間軸方向にわずか数サンプリングの数値計算をするだけであり、温度の推定演算に数値解析や統計的な演算を使用していないため、計算負荷が軽く、非力なプロセッサでも実装可能である。
図4〜図10に本実施の形態の効果を示す。図4、図5、図8は本実施の形態によるワーク温度の推定結果とワーク温度の実測値の1例を示す図であり、図6、図9は本実施の形態による熱抵抗値変化係数の推定結果と熱抵抗値変化係数の実測値の1例を示す図、図7、図10は本実施の形態による熱容量値変化係数の推定結果と熱容量値変化係数の実測値の1例を示す図である。なお、図4〜図10に示した実測値は、全てシミュレーションによって計算した値であるが、ここでは記載を簡易にするために全て実測値と呼ぶことにする。
図4〜図7の例では、ワーク1とヒータ3との間の熱抵抗値及びワーク1の熱容量値が本運転時にモデル同定時の値から変化して一定の値になった場合を想定しているが、ワーク温度の推定値ハットTwとワーク温度の実測値Twはよく一致しており、熱抵抗値変化係数の推定値ハットmrと熱抵抗値変化係数の実測値mrもよく一致しており、さらに熱容量値変化係数の推定値ハットkrと熱容量値変化係数の実測値krもよく一致しており、ワーク温度、熱抵抗値変化係数、および熱容量値変化係数を速やかに精度良く推定できていることが分かる。
また、図8〜図10の例では、ワーク1とヒータ3との間の熱抵抗値及びワーク1の熱容量値が温度推定中に変化し続ける場合を想定しているが、ワーク温度、熱抵抗値変化係数、および熱容量値変化係数の各推定値はそれぞれの実測値とよく一致しており、ワーク温度、熱抵抗値変化係数、および熱容量値変化係数を速やかに精度良く推定できていることが分かる。
本実施の形態では、ヒータ温度変化量の実測値(真値)と熱伝達モデルに基づくヒータ温度変化量の仮推定値との差が、熱伝達モデルに基づくワーク温度変化量の第1仮推定値とワーク温度変化量の第2仮推定値との差とa/dで表される一定の関係となっている。
また、本実施の形態では、ワーク1が推定対象で、ヒータ3を温度測定可能点としているが、逆にワーク温度が測定可能で、ヒータ温度が測定不能なときには、時刻nでのワーク温度推定式(式(27))に加えて、1サンプリング後のワーク温度推定式(式(28))を使用し、さらに時刻n+1における熱容量値変化係数krの推定値ハットkr(n+1)と時刻nにおける推定値ハットkr(n)がほぼ等しく、時刻n+1における熱抵抗値変化係数mrの推定値ハットmr(n+1)と時刻nにおける推定値ハットmr(n)がほぼ等しいという関係を使用して、時刻n+1におけるヒータ温度の真値の推定値ハットTh(n+1)を式(29)のように算出することができる。
誘導加熱装置などは、ワーク側で熱が発生するので、ワークを加熱源とみなすことができ、かつワーク温度を測定不可能な場合が多い。このような場合には、ワーク温度をTh、装置測定可能点の温度をTwとおき、式(29)を用いてワーク温度を推定する方法が適切である。
また、本実施の形態では、温度測定要素は、ヒータ温度、ワーク温度、環境温度のみであるが、本運転中モデルのモデル同定時からの変化がヒータ3とワーク1との間の熱抵抗値およびワーク1の熱容量値だけである場合は、熱伝達モデル式に他の測定可能なポイントを追加しても、式に対する未知量の数は変わらないので、結果として式(18)が導出できるので同じやり方が適用できる。
また、本実施の形態では、ヒータ温度は、コントローラ出力値の影響を直接受けるようにモデル化されているが、下記の式(30)のように、コントローラの出力とヒータとの間に別のモデル要素を入れてもよい。式(30)では、モデル要素pの温度をTp(n)としている。温度Tp(n)を測定可能であれば、今までの議論がそのまま使用できる。
Th(n+1)−Th(n)=ts・(c・(Tp(n)−Th(n))
−mr・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・(30)
Th(n+1)−Th(n)=ts・(c・(Tp(n)−Th(n))
−mr・d・(Th(n)−Tw(n))) ・・(30)
また、本実施の形態では、環境温度センサ6を用いて環境温度を測定しているが、環境温度が一定としてみなせる場合は、環境温度を測定せずに固定値を用いて計算しても計算方法には影響を与えない。
また、本実施の形態では、温度測定値の測定誤差を考慮していないが、温度変化トレンドや熱抵抗値変化速度に比べて十分に速いフィルタを用いて測定誤差をキャンセルした結果を温度測定値として考えれば、議論の一般性を失わない。
また、本実施の形態では、主として加熱処理について記載しているが、冷却処理にも本発明を適用可能である。
また、本実施の形態では、温度測定値の測定誤差を考慮していないが、温度変化トレンドや熱抵抗値変化速度に比べて十分に速いフィルタを用いて測定誤差をキャンセルした結果を温度測定値として考えれば、議論の一般性を失わない。
また、本実施の形態では、主として加熱処理について記載しているが、冷却処理にも本発明を適用可能である。
本発明は、半導体製造装置等の加熱冷却処理装置に適用することができる。
1…ワーク、2…熱板、3…ヒータ、4…温度センサ、5…コントローラ、6…環境温度センサ、50…温度推定装置、51…制御装置、600…記憶部、601…温度測定部、602…ワーク温度変化量推定部、603…ワーク温度推定部、604…熱抵抗値変化係数推定部、605…熱容量値変化係数推定部。
Claims (6)
- 推定対象との間に熱抵抗を有する温度測定可能点の温度に基づいて、前記推定対象の温度を推定する温度推定方法であって、
前記温度測定可能点の温度を測定する測定ステップと、
前記温度測定可能点の温度から求められる前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と、前記温度測定可能点と前記推定対象とに関する熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値と、前記熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記推定対象の温度変化量第1仮推定値とから、前記推定対象の熱容量値が変化しないと見なした値である前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定ステップと、
前記推定対象の温度変化量第2仮推定値と前記熱伝達モデルとから前記熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定ステップと、
異なるサンプリング時刻の前記温度測定可能点の温度と前記熱抵抗値の変化分とから前記推定対象の温度の真値を推定する温度推定ステップとを有することを特徴とする温度推定方法。 - 請求項1記載の温度推定方法において、
前記温度変化量推定ステップは、前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、前記推定対象の温度変化量第1仮推定値と前記推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用して、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定することを特徴とする温度推定方法。 - 請求項1又は2記載の温度推定方法において、
さらに、複数のサンプリング時刻において推定された前記推定対象の温度から求められる前記推定対象の温度変化量第3仮推定値と前記温度変化量第2仮推定値とから前記推定対象の熱容量値の変化分を推定する熱容量値変化係数推定ステップを有することを特徴とする温度推定方法。 - 推定対象との間に熱抵抗を有する温度測定可能点の温度に基づいて、前記推定対象の温度を推定する温度推定装置であって、
前記温度測定可能点と前記推定対象とに関する熱伝達モデルのパラメータを記憶する記憶部と、
前記温度測定可能点の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定可能点の温度から求められる前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と、前記熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値と、前記熱伝達モデルに基づいて推定した値である前記推定対象の温度変化量第1仮推定値とから、前記推定対象の熱容量値が変化しないと見なした値である前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を求める温度変化量推定部と、
前記推定対象の温度変化量第2仮推定値と前記熱伝達モデルとから前記熱抵抗値の変化分を推定する熱抵抗値変化係数推定部と、
異なるサンプリング時刻の前記温度測定可能点の温度と前記熱抵抗値の変化分とから前記推定対象の温度の真値を推定する温度推定部とを有することを特徴とする温度推定装置。 - 請求項4記載の温度推定装置において、
前記温度変化量推定部は、前記温度測定可能点の温度変化量の実測値と前記温度測定可能点の温度変化量仮推定値との差が、前記推定対象の温度変化量第1仮推定値と前記推定対象の温度変化量第2仮推定値との差と一定の関係にあることを利用して、前記推定対象の温度変化量第2仮推定値を推定することを特徴とする温度推定装置。 - 請求項4又は5記載の温度推定装置において、
さらに、複数のサンプリング時刻において推定された前記推定対象の温度から求められる前記推定対象の温度変化量第3仮推定値と前記温度変化量第2仮推定値とから前記推定対象の熱容量値の変化分を推定する熱容量値変化係数推定部を有することを特徴とする温度推定装置。
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