JP2008151721A - フローセル型qcmセンサ - Google Patents

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卓孝 野口
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Abstract

【課題】溶液中を伝播する音波が水晶振動子面で反射するのを抑制し、かつ溶液流路内における気泡の発生や局所的な微小渦流や乱流の発生を抑制する。
【解決手段】フローセル型QCMセンサのフローセルを、電極12A面に対向する部位で溶液流路に沿って傾斜を持たせて形成した傾斜壁部位に音響整合材15を充填し、該音響整合材により形成する溶液流路壁と振動子部の面とを平行にする。
音響整合材は、試料溶液中を伝播する音波の音響インピーダンスと整合した部材とする。さらに好ましくは、透過した音波を吸収・減衰させる部材とする。音響整合材は、好ましくは、傾斜壁部位に充填する樹脂をスピンコート法で形成する。傾斜壁面は、音波を散乱・減衰させる粗面構造にする。水晶振動子は薄板化する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水晶振動子の電極表面を試料ガスや試料溶液に晒したときの水晶振動子の発振周波数の変化やインピーダンスの変化から試料の成分を検知・定量するQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサに関し、特に試料溶液成分の検知・定量の応答速度を高めるフローセル型QCMセンサに関する。
化学・生化学および電気化学の分野において、反応量や生成物質量を定量することは重要なことであるが、従来装置では極めて微量の反応量に対して十分な検出感度を得ることは難しかった。
近年、ATカット水晶振動子を用いてマイクロバランス原理を応用したケミカル及びバイオセンサーが注目を集めている。ATカット水晶振動子は、その主共振周波数が振動子の板厚と反比例する現象を呈し、その電極面に試料成分が成膜したり、あるいは物質の吸着が起きると表面に存在する物質の単位平面積当たりの重量に対応した周波数のシフトが起きる。
QCMセンサは、上記の周波数シフト現象を応用したもので、ATカット水晶振動子は広い温度範囲において周波数が安定しているため、安定した検出感度が期待でき、条件が揃えば1〜10ngの吸着物質の検出がリアルタイムで可能である。(1)式に吸着物質量と周波数シフト量の関係を示す。
Figure 2008151721
ここで、ΔF:共振周波数変化量、F:共振周波数、Δt:水晶板の厚み変化量、t:水晶板の厚み、Δm:吸着物質量、ρq:水晶の密度、μ:水晶の弾性率、A:電極面積である。
上記(1)式から分かるとおり、水晶振動子の電極(振動子部)上に吸着した物質のうち、検知・定量できるのは水晶振動子の電極上に吸着した分のみであるため、検知・定量しようとする成分に応じたレセプタは電極表面に形成させることとなる。
実際の測定では、検知・定量したい試料が溶液中に分散されている場合、上記のレセプタ装着水晶振動子を図6または図7に示すセル構造で設置することとなる。しかし、これらのセル構造では以下の問題がある。
1)図6に示す静置溶液型セルでは、レセプタと検知・定量したい試料との結合は、溶液中の試料の拡散率に律速されるため、反応速度が遅い。
2)図7に示す試料溶液強制撹絆型セルでは、撹拌により試料溶液の拡散律速を抑制する効果はあるが、溶液中の試料成分が必ずしもレセプタである水晶振動子電極上に到達するとは限らない。特に、溶液中の試料成分が希薄になるに従い撹拌効果は減少するものと考えられる。
上記の反応速度を高める方式として、フローセル型に構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この文献によるフローセル型の測定装置は、センサ本体になる水晶振動子の電極(振動子部)上に試料溶液を流入させ、この電極上を経た試料溶液を排出させる溶液流路をもつ構造とする。
特許文献1に開示されるフローセル構造は、図8に示すように、アクリル樹脂製の保持基板1上に、水晶振動子2の電極3に対応させた孔を有するシリコーンゴム製の弾性シート4が置かれ、その上に水晶振動子2とフレキシブル基板5とが重ねられる。さらに、水晶振動子2とフレキシブル基板5の上に弾性シート4と同じ形状のシリコーンゴム製の弾性シート6が重ねられる。最上部にアクリル樹脂製のフローセル蓋部7が載せられる。これらは固定ネジ8によって一体に固定される。試料溶液は、フローセル蓋部7に設けた流入口9から水晶振動子2上に注入され、流出口10から排出される。
強制撹絆型セルの測定例として、図9に示すように、検出物質にCRP(C-Reactive Protein:C−反応性蛋白)を用い、撹拌子の回転数を900rpm、溶液量9mLのバッファー溶液中に図中で示された各濃度を添加することで最小検出可能濃度を判定した。これにより、強制撹拌型セルを用いた場合には、明らかに質量付加に起因したQCMの周波数変化が観測できる。CRP濃度は1160ng/mLを10μL滴下した時点であり、これは、セル中に投入した総CRP量から換算して2.25ng/mL濃度となる。したがって、この系での最小検出可能CRP濃度は2.25ng/mLとなる。
これに対して、フローセル型では、幅4.4mm、高さ1.5mmの流路にあらかじめ1.185ng/mL濃度に調整したCRP溶液を流速400μL/minの条件で反応させたところ、図10に示すように、短時間で非常に速い反応を示した。
これらの測定例から明らかなように、フローセル構造を用いることで反応時間短縮および低濃度試料の検知・定量測定が可能となる。
特開平11−183479号公報
QCMセンサをフローセル構造へ展開する場合、Zuxuan Lin(Anal.Chem.1995,67,685−693)らにより報告されているとおり、水晶振動子の振動成分である縦波成分が溶液中を伝播し流路壁から反射することに起因した共振周波数の干渉が発生する問題がある。
共振周波数の干渉は、使用する溶液の音響インピーダンスや伝播速度と流路高さに起因する。この検証として、共振周波数30MHzの静置溶液型QCMセンサを用いてその液面の変化から反射波の影響を確認した。図11は100%エタノールの蒸発による液面の変化から反射波の影響を確認した。この測定結果は図12に示し、図11の測定結果を液面高さに対する共振周波数の変化量をプロットしたものを示す。
図11では、溶液高さの変化に対する干渉周波数の依存性が現れており、また、溶液高さ(流路高さ)が一定であっても水晶振動子の共振周波数が変化すれば干渉状態が変化することを示唆している。図12では、溶液を伝播する反射波の影響を受けないためには、QCM表面とフローセル壁をある高さ以上にする必要があることを示唆している。図12の場合は、溶液を伝播する反射波の影響を受けない液面高さは0.9mm以上となる。
このことから、反射波を抑制するには、用いる試料溶液ごとに反射波の影響が無視できる位置まで流路高さを大きくしなければならないが、これでは流路体積も大きくなってしまい、反応速度が遅くなる問題がある。
反射波の抑制方法として、流路の上壁を傾斜させて反射波を水晶振動子に戻さない方法も提案されている(例えば、特表2004−506194)。しかし、流路壁を傾斜させることは流路中に気泡を発生させる原因となり、また、気泡の発生が起こらない傾斜角に設定するには水晶振動子の構造に制約がある。
さらに、他の方法として、溶液流路の天井部や側部に、波形の突起物を形成し、反射波拡散に溶液中を伝播する振動(縦波)を拡散させる方法も提案されている(例えば、特開平2003−240695号公報)。この場合も、波形の突起物が流路中に気泡を発生させる原因となり、気泡の滞留が測定誤差を招く要因となる。また、波形の突起物は、大きさがμmオーダになる微細構造とする必要があり、流路の製造上の問題もある。
また、フローセル型QCMセンサデバイスを、例えば抗原抗体反応の速度論的解析に用いる場合、流路壁を傾斜させたことによる断面積の変化は流路内の局所的な圧力降下を引き起こし、これを起因とした局所的な微小渦流や乱流が起こり、正確な速度定数を求めることが困難となる。
本発明の目的は、溶液中を伝播する音波が水晶振動子面で反射するのを抑制し、かつ溶液流路内における気泡の発生や局所的な微小渦流や乱流の発生を抑制できるフローセル型QCMセンサを提供することにある。
本発明は、前記の課題を解決するため、振動子面に対向する部位で溶液流路に沿って形成した傾斜壁部位にシリコーン等の音響整合材を充填し、音響整合材により形成する溶液流路壁と水晶振動子面とを平行にしたもので、以下の構成を特徴とする。
(1)センサ本体の振動子部に試料溶液を流すフローセル構造を有し、該振動子部に試料溶液中の成分が吸着することによる該振動子部の共振周波数の変化またはインピーダンスの変化から試料成分を検知・定量するフローセル型QCMセンサにおいて、
前記フローセル構造は、振動子面に対向する部位で溶液流路に沿って傾斜を持たせて形成した傾斜壁部位に音響整合材を充填し、該音響整合材により形成する溶液流路壁と振動子部の面とを平行にした構成を特徴とする。
(2)前記音響整合材は、試料溶液中を伝播する音波の音響インピーダンスと整合する部材で構成したことを特徴とする。
(3)前記音響整合材は、試料溶液中を伝播する音波の音響インピーダンスと整合し、かつ音波を吸収・減衰させる部材で構成したことを特徴とする。
(4)前記音響整合材は、前記傾斜壁部位に充填する樹脂をスピンコート法で形成したことを特徴とする。
(5)前記傾斜壁面は、音波を散乱・減衰させる粗面構造にしたことを特徴とする。
(6)前記センサ本体は、圧電基板の少なくとも一方の面をエッチングにより掘り込み、この掘り込み部に試料溶液のフローセル部を構成するとともに、底面に電極の一方を形成し、他方の面に電極を形成して前記振動子部を構成したことを特徴とする。
以上のとおり、本発明によれば、振動子面に対向する部位で溶液流路に沿って形成した傾斜壁部位にシリコーン等の音響整合材を充填し、音響整合材により形成する溶液流路壁と水晶振動子面とを平行にしたため、溶液中を伝播する音波が水晶振動子面で反射するのを抑制し、かつ溶液流路内における気泡の発生や局所的な微小渦流や乱流の発生を抑制できる。
(実施形態1)
本実施形態のフローセル型QCMセンサは、図1の(a)に上面図を、(b)にA−A’線に沿った断面図を示すように、傾斜壁を形成した流路に溶液中を伝播する音波を透過させることのできる音響整合材を充填し、この音響整合材により形成する溶液流路面と水晶振動子板とを平行にすることで、溶液流路の断面積変化が起きない構造とする。この構造において溶液中を伝播する音波は、音響整合材を透過し、音響整合されていない流路の傾斜壁で反射させる。
図1の構造を説明する。圧電基板としての水晶基板11には溶液流路面に電極12Aがリード電極と共に形成され、その裏面には対向電極12Bがリード電極と共に形成されて水晶振動子が構成される。この水晶基板11上の電極12A面に試料溶液を流すための流路を形成する基板13は、電極12Aに対向する面に形成したトラック状の窪み部13Aを溶液流路とし、窪み部13Aの両端から上下方向に貫通させた孔部13B、13Cの上端を溶液の注入口INと排出口OUTとする。この流路形成基板13はパッキン14を挟んで水晶振動子面との間を封止し、注入口INから注入した試料溶液を窪み部13Aを経て排出口OUTから排出させるフローセル構造とする。
ここで、本実施形態では、窪み部13Aで形成する溶液流路に沿って、上方向に傾斜を持たせて掘り込んだ掘り込み部を形成し、この掘り込み部に音響整合材15を充填した構造とする。この音響整合材15の溶液流路側は窪み部13Aと同じ水平面を構成し、水晶振動子面と平行にする。すなわち、水晶振動子の電極12A面上に形成される溶液流路は平行(流路方向で同じ断面積)にされ、試料溶液の流れに乱れを無くした構造にされる。
上記の流路形成基板の作製方法の例を説明する。流路形成材料にはアクリル樹脂を用い、機械加工により窪み部13Aと貫通孔部13B、13Cを作製し、さらに窪み部13A面に傾斜壁をもつ掘り込み部を作製する。次に、この掘り込み部に室温硬化型のシリコーン樹脂を滴下注入(充填)する。
以上の構造にしたフローセル型QCMセンサにより、溶液中を伝播する音波が水晶振動子面に反射するのを抑制し、かつ溶液流路内における気泡の発生や局所的な微小渦流や乱流の発生を抑制することができる。このことを以下に詳細に説明する。
音波を流路壁中に透過させるには、溶液と流路壁材料の音響インピーダンスを整合させることが重要である。これについて、100%エタノールの蒸発による反射波の影響結果を例にとり、図2の(a)、(b)で説明する。まず、図2の(a)は流路壁を大気とする場合を示し、水晶振動子面より発生した音波は媒質Aであるエタノール中を伝播し、媒質Bとなる大気(1atm、20℃)との境界面に達する。ここで、100%エタノールと大気の音響インピーダンスの違いから大部分の音波は反射される。音響インピーダンス(Z)はその物質の密度(ρ)と音速度(c)を掛けた値であり、音波が異なる媒質との境界面で反射する割合は(2)式で求められる。
[数2]
R=(ZB−ZA)/(ZA+ZB) …(2)
ここで、Zは物質の固有音響インピーダンスであり、それぞれの添え字は媒質Aおよび媒質Bを表している。この反射された音波は溶液中を逆向きに伝播して水晶振動子面に戻され、水晶振動子の共振周波数と干渉する。
また、溶液中を伝播する音波は伝播距離と周波数の2乗に比例して吸収される。ここで用いた水晶振動子の共振周波数は30MHzであり、それぞれの物質の20℃における音響インピーダンスおよび試料溶液の吸収係数を表1および表2に示す。
Figure 2008151721
Figure 2008151721
この吸収係数(α)は以下の(3)式より求めることができる。
[数3]
α=(1/2d)log(I0/Id) …(3)
この(3)式は、はじめの音圧I0がd(m)先でIdに減少することを意味している。
この実験系において、反射波の影響を受けない100%エタノールの液面高さh=0.9mmの水晶振動子面に戻ってくる反射波の音圧は、発生源での音圧の約86%となる。
図2の(b)では、本実施形態の構造になるもので、流路壁を音響整合材で構成し、しかも水晶振動子面に対して傾斜して流路形成材に面した構造の場合を示す。この構造において、水晶振動子面より発生した音波は媒質Aであるエタノール中を伝播し、媒質Bとなる音響整合材の面に達する。ここで、100%エタノールと音響整合材の音響インピーダンスが整合することから、音波の大部分は音響整合材を透過し、傾斜壁になる流路形成材Cで大部分が反射する。この傾斜壁からの反射波は、音響整合材Bを透過し、さらに音響インピーダンスで整合した媒質Aを透過するが、電極面から外れた位置に伝播し、水晶振動子の共振周波数との干渉を防止できる。
なお、音響整合材Bは、それを透過する音波を吸収・減衰できるものが好ましい。この音波の吸収・減衰特性をもつ音響整合材を使用する場合、音波は音響整合材で吸収・減衰しながら流路形成材Cの傾斜面に達し、この傾斜面での音響インピーダンスの不整合で大部分が反射されるが、反射波は入射方向とは異なる方向で音響整合材Bで吸収・減衰しながら反射され、この音波の吸収・減衰によって、水晶振動子の共振周波数との干渉を一層減らすことができる。
例えば、媒質Bを透過した音波が媒質Cとの境界で反射し、水晶振動子に戻ってこないようにするために、媒質Cは音波の吸収・減衰が大きいゴム系の材料を選定することが望ましい。例えば、溶液に100%エタノールを用いた場合には、流路形成材に音響インピーダンスが100%エタノールとほぼ整合するブチルゴムを用いればよい。この100%エタノール/ブチルゴムの組み合わせによる境界反射率は24.6%である。この場合、反射波の影響を受けない流路高さhを大気中の場合の0.9mmよりも小さく設定することも可能となる。
なお、本実施形態は上記の試料溶液と音響整合材との組み合わせに限らず、例えば免疫測定を例にとって言えば、例えば試料に10%牛血清アルブミン溶液を用いた場合には、例えばシリコーンゴムを用いることが望ましい。
以上のとおり、本実施形態は、試料溶液(媒質A)と音響整合材(媒質B)の音響インピーダンスを整合させて溶液中を伝播する音波を境界面で反射させない構造とし、且つ、音響整合材中に透過した音波を第二の層である音響整合されていない流路形成材(媒質C)の傾斜壁で反射波を水晶振動子に戻さない角度に放出することで、水晶振動子との干渉を抑制できる。さらに、傾斜壁に音響整合材を充填し、この音響整合材を充填した流路壁と水晶振動子面を平行に保つことにより、単に傾斜壁を持つ溶液流路で問題となっていた「気泡の発生」、「液流の乱れ」を抑制できる。
さらに好ましくは、音響整合材により反射波を吸収・減衰させることで、水晶振動子との干渉を一層抑制できる。
なお、流路に面接合する音響整合材の寸法や厚み、および傾斜角は実際に使用する水晶振動子基板寸法、溶液高さ、流路径などにより適宜変更することは言うまでもない。
(実施形態2)
本実施形態のフローセル型QCMセンサを図3に示す。同図が図1と異なる部分は、水晶振動子の振動子部を薄板化し、音響整合材15は堀り込み部に室温硬化型のシリコーン樹脂をスピンコート法により形成した点にある。溶液流路は実施形態1と同様に傾斜壁を形成した流路形成基板13をアクリル樹脂製とする。
水晶振動子の振動子部の薄板化は、水晶基板11の溶液流路面をエッチングにより掘り込み、この掘り込み部に試料溶液のフローセル部を構成するとともに、底面に電極の一方を形成し、他方の面に電極を形成して振動子部を構成する。なお、水晶振動子の薄板化には試料溶液に晒される電極12A側を平面構成とし、対向電極12B側を堀り込む構成としてもよい。
本実施形態の具体的な構成例として、液温20℃の純水(18MΩ/cm)を試料溶液に用いた場合を図4の層構成を参照して説明する。水晶振動子には予め通液部となる深さ50μmの溝をエッチング加工により施し、これにより薄板化された表面およびその裏表面にφ2.1mmのAu電極12A、12Bを対向させて形成した。溶液流路材には、第一の層(図4では媒質Bと標記)としてシリコーンゴムを、第二の層(図4では媒質Cと標記)としてアクリル樹脂を用い、水晶振動子のAu電極上に反射波を戻さない“第二の層”の傾斜壁角度は水晶表面を基準として17.5°とした。また、水晶振動子と傾斜壁の高さは、Au電極の中心位置を基準として3.4mmとした。
なお、傾斜壁角度としては、流路の径、長さ、粗さ、溶液の種類、液粘度、流速などの種々の条件によって変更されるものであり、基本的には最小値が反射波が水晶振動子の電極面に戻らない角度、最大値が極論では90°以下となるが、構造上の制約(小型化)により最大70°程度のものが現実的な値になる。
以上の構造になる本実施形態によれば、実施形態1と同様に、溶液中を伝播する音波が水晶振動子面に反射するのを抑制し、かつ溶液流路内における気泡の発生や局所的な微小渦流や乱流の発生を抑制できる。これに加えて、本実施形態では、水晶振動子の溶液流路部分の薄板化による強度確保かつ高周波化を図るQCMセンサにおいて、特に問題となる反射波の抑制と「気泡の発生」、「液流の乱れ」を抑制できる。さらに、同じ流路断面積を得るのに、水晶基板の掘り下げで、センサ高さの削減でその小型化を図ることもできる。
さらに、音響整合材15は室温硬化型のシリコーン樹脂をスピンコート法により形成することにより、溶液流路面に突起物を無くした均一化と水晶基板面に対する平行精度を高めることができ、さらに充填加工を容易にし、溶液流路中に気泡を発生させることなく、気泡の滞留もなくなり、測定精度を高めることができる。さらに、音響整合材15をシリコーン樹脂のスピンコート法により形成することで、水晶基板との間の液漏れ防止用パッキン手段として利用することができる。
なお、音響整合材15は、製作の容易性、多様性等を考慮すると、室温硬化型のものが好ましいが、室温硬化型以外のものでもよく、例えば、シリコーン樹脂においては加熱硬化型、紫外線硬化型等のものを用いてもよい。
(実施形態3)
本実施形態のフローセル型QCMセンサを図5に示す。本実施形態に示す流路構造は、音響整合させていない第二の層であるアクリル樹脂傾斜壁の表面粗度を例えばサンドブラスト加工により粗くすることで反射波を散乱減衰させることを特徴した構造である。
図5には、実施形態1のセル構造を示したが、当然ながら実施形態2の構造を用いても同様の効果が得られる。また、この表面粗度の程度は、#100〜#4000程度の粗さが望ましい。このことを以下に説明する。
音波が媒質境界面で散乱(正確には拡散性散乱)する条件として、音波の波長に比べて無視できない大きさのランダムな凹凸のある境界面に音波が入射すると、入射音波はあらゆる方向に散乱する。したがって、境界面の凹凸が音波の波長に比べて十分に小さくなると入射音波は散乱しなくなる。#4000(凹凸の大きさ約2μm)は、例えば30MHzの音波が音響整合材(音速1140m/secのシリコーンゴムを仮定)中を伝播した場合の波長が38μmとなり、経験上散乱限界にあると判断できる。表面粗さを大きくしすぎる(<#100)と、「液流の乱れ」、「気泡の付着」が発生し、測定上好ましくない。
以上の構造になる本実施形態によれば、実施形態1と同様に、溶液中を伝播する音波が水晶振動子面に反射するのを抑制し、かつ溶液流路内における気泡の発生や局所的な微小渦流や乱流の発生を抑制できる。これに加えて、本実施形態では、境界面の凹凸によって反射波を散乱減衰させることにより、水晶基板面への干渉を一層抑制することができる。
なお、本実施形態は実施形態2に適用して同等の作用効果を得ることができる。
本発明の実施形態1を示すフローセル型QCMセンサ本体の構成図。 音響インピーダンスの整合・不整合による反射波の説明図。 本発明の実施形態2を示すフローセル型QCMセンサ本体の構成図。 実施形態2における傾斜角と高さの構成例。 本発明の実施形態3を示すフローセル型QCMセンサ本体の構成図。 従来の静置溶液型セル構造。 従来の溶液強制撹拌型セル構造。 フローセル型QCMセンサの分解斜視図。 溶液強制撹拌型セルを用いた抗原抗体反応例。 フローセル型QCMセンサを用いた抗原抗体反応例。 100%エタノールの蒸発による水晶振動子の共振周波数変化の例。 100%エタノールの液面高さに対する共振周波数の反射波依存性の例。
符号の説明
11 水晶基板
12A,12B 電極
13 流路形成基板
14 パッキン
15 音響整合材

Claims (6)

  1. センサ本体の振動子部に試料溶液を流すフローセル構造を有し、該振動子部に試料溶液中の成分が吸着することによる該振動子部の共振周波数の変化またはインピーダンスの変化から試料成分を検知・定量するフローセル型QCMセンサにおいて、
    前記フローセル構造は、振動子面に対向する部位で溶液流路に沿って傾斜を持たせて形成した傾斜壁部位に音響整合材を充填し、該音響整合材により形成する溶液流路壁と振動子部の面とを平行にした構成を特徴とするフローセル型QCMセンサ。
  2. 前記音響整合材は、試料溶液中を伝播する音波の音響インピーダンスと整合する部材で構成したことを特徴とする請求項1に記載のフローセル型QCMセンサ。
  3. 前記音響整合材は、試料溶液中を伝播する音波の音響インピーダンスと整合し、かつ、透過した音波を吸収・減衰させる部材で構成したことを特徴とする請求項1に記載のフローセル型QCMセンサ。
  4. 前記音響整合材は、前記傾斜壁部位に充填する樹脂をスピンコート法で形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフローセル型QCMセンサ。
  5. 前記傾斜壁面は、音波を散乱・減衰させる粗面構造にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフローセル型QCMセンサ。
  6. 前記センサ本体は、圧電基板の少なくとも一方の面をエッチングにより掘り込み、この掘り込み部に試料溶液のフローセル部を構成するとともに、底面に電極の一方を形成し、他方の面に電極を形成して前記振動子部を構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフローセル型QCMセンサ。
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JPWO2021005834A1 (ja) * 2019-07-10 2021-01-14

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